(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記車両には、前記選択した基準走行パターンに従って前記空気量調整バルブを制御した後で、車両の走行位置に対応した車体上下加速度等の走行データを順次記録する走行データ蓄積部が設けられており、
前記制御部は、前記走行データ蓄積部で記録した走行データの車体上下加速度が、予め定めた基準加速度を上回っている場合に、前記基準走行パターンを書き換える見直し処理を行う、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両サスペンション装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される鉄道車両の振動制御システムは、軌道の特定区間において、車体と台車間の上下方向の減衰力を変更する空気ばねの絞りを制御して車両の乗り心地を改善するだけのものであり、例えば、乗客数に応じて車体重量が変化した場合については考慮されていない。
例えば、乗客が多い混雑時の車両、又は乗客が少ない閑散時の車両では、車体と台車間の上下方向の減衰力を変更するだけでは十分な乗り心地の改善が期待できず、この点において改良が期待されていた。
また、車両の乗り心地改善のために、フルアクティブな制御機構を導入することも考えられるが、このような制御機構の導入には、空圧・油圧などの駆動装置が別に必要になり、システム及び装置の複雑化、全体重量の増加、エネルギ消費量の増大などの問題点が新たに発生する。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、既存の構成の一部を利用した簡易な機構によって、乗客数に応じて車体重量が変化した場合にも、車両の乗り心地を容易に改善することができる、車両サスペンション装置及び車両サスペンション装置におけるばね剛性変更方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、車両の台車と車体との間に設けられた空気ばねと、この空気ばねに圧縮空気を供給する空気源を有するメイン空気タンクと、前記空気ばねに連通された補助空気タンクと、該補助空気タンクに連通される空気流路を開閉して前記空気ばねのばね剛性を変更する空気量調整バルブと、前記車体の重量を検出する車体重量検出手段と、
前記車両の走行位置、車体重量に対する目標ばね剛性を定めた基準走行パターンの設定を複数記憶するデータベースと、前記車体重量毎に前記目標ばね剛性を得るための空気量調整バルブの動作パターンが定められた空気量調整バルブの動作パターン情報を記憶する記憶部と、前記車両が駅に停車して乗客の乗り降りが終了した時に前記車体重量検出手段が検出した前記車体の重量と、前記駅から次の停車駅までの走行経路とに基づいて前記基準走行パターンの何れかを選択し、選択した前記基準走行パターンに基づいて、前記走行経路における所定の前記走行位置ごとに目標ばね剛性を決定し、該目標ばね剛性と前記空気量調整バルブの動作パターン情報とに基づいて、前記空気量調整バルブを制御する制御部と、を具備することを特徴とする。
【0009】
上記発明では、空気ばねに連通される補助空気タンクと、該補助空気タンクに連通される空気流路を開閉して空気ばねのばね剛性を変更する空気量調整バルブと、車体の重量を検出する車体重量検出手段とを設け、制御部からの制御指示に基づき、車両の走行位置及び車体重量検出手段で検出された車体重量とに基づき、空気量調整バルブを制御するようにした。
例えば、車体上下加速度が大きくなる車両の走行位置と、車体の重量速度との関係において、空気量調整バルブを制御して空気ばねのばね剛性を下げるような制御を行うことで、停車駅にて乗客数に応じて車体重量が変化した場合にも、車体の上下加速度の上昇を抑えて、車両の乗り心地を改善することが可能となる。
また、本発明では、空気ばねに連通される補助空気タンクと、該補助空気タンクに連通される空気流路を開閉して空気ばねのばね剛性を変更する空気量調整バルブとを設けるという既存の構成の一部を利用した簡易な機構により、車両の乗り心地を改善することができ、全体のシステム及び構成が複雑化することを防止できる効果を有する。
【0010】
また、本発明によれば、前記補助空気タンクは前記メイン空気タンクに対して直列又は並列となるように複数設置されており、前記空気量調整バルブは、これら補助空気タンクに通じる各空気流路の途中にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、補助空気タンクをメイン空気タンクに対して直列又は並列となるように複数設置するとともに、これら補助空気タンクに通じる各空気流路の途中にそれぞれ空気量調整バルブを設けるようにしたので、該空気量調整バルブを選択的に動作することにより、空気タンクにおいて複数パターンの空気容量を得ることができ、空気ばねのばね剛性を多様に設定することが可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、前記補助空気タンクは異なる容量を有しかつ前記メイン空気タンクに対して並列となるように複数設置されており、前記空気量調整バルブは、これら補助空気タンクに通じる各空気流路の途中にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記発明では、異なる容量からなる複数の補助空気タンクをメイン空気タンクに対して並列に設置するとともに、これら補助空気タンクに通じる各空気流路の途中にそれぞれ空気量調整バルブを設けるようにしたので、該空気量調整バルブを選択的に動作することにより、空気タンクにおいて複数パターンの空気容量を得ることができ、空気ばねのばね剛性を多様に設定することが可能となる。
また、補助空気タンクをメイン空気タンクに対して直列となるように複数設置した場合と比較して、より多くのパターンの空気容量を得ることができる。
【0014】
また、本発明によれば、前記制御部には、車両の走行位置、該車両の走行位置に対応した車体上下加速度、及び該車両の車体重量に基づき、目標となるばね剛性を定めた基準走行パターンが予め複数記憶されており、前記制御部は、前記車体重量検出手段で検出された車体重量と前記基準走行パターンとに基づいて選択した前記基準走行パターンで定められた目標となるばね剛性に基づいて、前記車両の対応する走行位置にて前記空気量調整バルブを開閉して空気タンク全体の容量を調整することを特徴とする。
【0015】
上記発明では、制御部に、車両の走行位置、該車両の走行位置に対応した車体上下加速度、及び該車両の車体重量等に基づき、目標となるばね剛性を定めた基準走行パターンを複数記憶した上で、該制御部において、車体重量検出手段で検出された車体重量に基づき、これら複数の基準走行パターンの中から合致する基準走行パターンを選択し、該基準走行パターンで定められた目標となるばね剛性に基づき、車両の対応する走行位置にて空気量調整バルブを開閉して空気タンク全体の容量を調整するようにした。
そして、このような制御を行うことで、乗客数に応じて車体重量が変化した場合にも、車両の対応する走行位置にて空気タンク全体の容量を調整することができ、これにより車体の上下加速度の上昇を抑えて、車両の乗り心地を改善することが可能となる。
また、本発明では、事前に決めた基準走行パターンに従って空気ばねの空気容量を変更する制御を行うため、演算負荷が小さく、演算装置を簡略化することができ、この点においても、全体のシステム及び構成が複雑化することを防止できる効果を有する。
【0016】
また、本発明によれば、前記基準走行パターンは、前記車体の上下加速度が大きくなる場合に、空気ばねの剛性を低下させるように空気量調整バルブを制御することを特徴とする。
【0017】
上記発明では、制御部に複数設定した基準走行パターンを、車体の上下加速度が大きくなる場合に、空気ばねの剛性を低下させるように空気量調整バルブを制御する内容とすることで、乗客数に応じて車体重量が変化した場合にも、車体の上下加速度の上昇を抑えて、車両の乗り心地を有効に改善することが可能となる。
【0018】
また、本発明によれば、前記空気ばねに通じる空気流路の途中には、該空気流路の流路抵抗を調整する減衰力調整バルブが設けられており、前記制御部は、予め定めた基準走行パターンの減衰目標値に基づき前記減衰力調整バルブの動作制御を行うことを特徴とする。
【0019】
上記発明では、空気ばねに通じる空気流路の途中に、該空気流路の流路抵抗を調整する減衰力調整バルブを設け、かつ制御部にて、予め定めた基準走行パターンの減衰目標値に基づき該減衰力調整バルブの動作制御を行うようにしたので、空気容量を増減することにより空気ばねのばね剛性を調整するという制御と併用すれば、車両の乗り心地を改善する効果をより高めることができる。
【0020】
また、本発明によれば、前記車両には、前記選択した基準走行パターンに従って前記空気量調整バルブを制御した後で、車両の走行位置に対応した車体上下加速度等の走行データを順次記録する走行データ蓄積部が設けられており、前記制御部は、前記走行データ蓄積部で記録した走行データの車体上下加速度が、予め定めた基準加速度を上回っている場合に、前記基準走行パターンを書き換える見直し処理を行うことを特徴とする。
【0021】
上記発明では、車両に設けた走行データ蓄積部に、選択した基準走行パターンに従って空気量調整バルブを制御した後で、車両の走行位置に対応した車体上下加速度等の走行データを順次記録するようにした。そして、制御部にて、走行データ蓄積部で記録した走行データの車体上下加速度が、予め定めた基準加速度を上回っている場合に、基準走行パターンを書き換える見直し処理を行うようにしたので、車両又は軌道の経年変化により車体上下加速度が上昇することを抑えることができる。
また、このような見直し処理により、再度、一から基準走行パターンを作成し直す手間が必要なく、全体の管理コストを低下させることができる。
【0022】
また、本発明の車両サスペンション装置におけるばね剛性変更方法によれば、車両の台車と車体との間に位置する空気ばねに、圧縮空気を供給する空気源を有するメイン空気タンクとともに補助空気タンクを設ける工程と、該補助空気タンクに連通される空気流路に該空気流路を開閉して前記空気ばねのばね剛性を変更する空気量調整バルブを設ける工程と、
前記車両が駅に停車して乗客の乗り降りが終了した時に前記車体の重量を検出する工程と、
前記車体の重量を検出する工程で検出された車体重量と、前記駅から次の停車駅までの走行経路と、に基づいて前記車両の走行位置、車体重量に対する目標ばね剛性を定めた複数の基準走行パターンの中から何れかを選択し、選択した前記基準走行パターンに基づいて、前記走行経路における所定の前記走行位置ごとに目標ばね剛性を決定する工程と、前記車体重量と、前記目標ばね剛性と、前記車体重量毎に前記目標ばね剛性を得るための空気量調整バルブの動作パターンが定められた空気量調整バルブの動作パターン情報と、に基づいて、前記空気量調整バルブを制御する工程と、を具備することを特徴とする。
【0023】
上記発明では、車体上下加速度が大きくなる車両の走行位置と、車体の重量速度との関係において、空気量調整バルブを制御して空気ばねのばね剛性を下げるような制御を行うことで、乗客数に応じて車体重量が変化した場合にも、車体の上下加速度の上昇を抑えて、車両の乗り心地を改善することが可能となる。
また、本発明では、空気ばねに連通される補助空気タンクと、該補助空気タンクに連通される空気流路を開閉して空気ばねのばね剛性を変更する空気量調整バルブとを設けるという既存の構成の一部を利用した簡易な機構により、車両の乗り心地を改善することができ、全体のシステム及び構成が複雑化することを防止できる効果を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、車体上下加速度が大きくなる車両の走行位置と、車体の重量速度との関係において、空気量調整バルブを制御して空気ばねのばね剛性を下げるような制御を行うことができ、停車駅にて乗客数に応じて車体重量が変化した場合にも、車体の上下加速度の上昇を抑えて、車両の乗り心地を改善することが可能となる。
また、本発明では、空気ばねに連通される補助空気タンクと、該補助空気タンクに連通される空気流路を開閉して空気ばねのばね剛性を変更する空気量調整バルブとを設けるという既存の構成の一部を利用した簡易な機構により、車両の乗り心地を改善することができ、全体のシステム及び構成が複雑化することを防止できる効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について
図1〜
図5を参照して説明する。
図1は本発明が適用される自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT:Automated Guideway Transit)の車両1であって、側壁となるガイドウェイ(図示略)に沿うように走行される。この車両1は、乗客を収容する車体2には車両サスペンション装置100が設けられている。
【0027】
以下、この車両サスペンション装置100について
図1及び
図2を参照して詳細に説明する。乗客を収容する車体2の下部には、ゴムタイヤ3を有する台車4が設けられており、該台車4と車体2との間には所定のばね定数を付与するための空気ばね5が設けられている。
【0028】
この空気ばね5には、圧縮空気を供給するコンプレッサからなる空気源6Aを有するメイン空気タンク6が接続されている。
この空気ばね5では、所定のばね定数で車体2を支持するとともに、図示しないレベリングバルブを介して、車体重量に応じてメイン空気タンク6から送り込まれる空気の量が調整されることで、駅到着時において車体2内の床面高さを一定に維持して、プラットホ―ムとの間に段差が生じないようにしている。なお、レベリングバルブとは、車体の重量に応じて空気ばねに送り込む空気の量を調整し、床面の高さを一定に維持する機構のことをいう。
【0029】
このメイン空気タンク6は、
図2に示されるように空気流路7を介して空気ばね5に接続されているものであって、該空気流路7から分岐した空気流路8〜10の途中には補助空気タンク11〜13が直列に設けられている。
また、これら各空気流路8〜10には、補助空気タンク11〜13に連通される空気流路8〜10を開閉して空気ばね5のばね剛性を変更する空気量調整バルブ14〜16がそれぞれ設置されている。
そして、これら空気量調整バルブ14〜16を順次開閉することにより、空気ばね5における空気ばね体積を増大してそのばね剛性を変更することができる。
【0030】
ここで、空気ばね5のばね剛性は、空気ばね作用面積及び空気ばね圧力に比例する一方で、空気ばね体積と反比例する関係にある。また、走行中に床面の高さを一定に保つ必要はない。そこで、路面の不整によって生じる車体2の揺れの振動数が車体2の固有振動数と一致する場合にその値を変化させ、車体2の固有振動数をずらすことができれば、共振を避けて振動を低減し、乗り心地を向上することができる。
【0031】
空気ばね5のばね剛性を変更するに際しては、現状からばね剛性を大きくすること、及びばね剛性を小さくすることが考えられるが、ばね剛性を大きくすると、車体2の固有振動数が乗り心地影響を与えやすい周波数に移行するため、乗り心地が悪化すると考えられる。このため、本例では、空気量調整バルブ14〜16を順次開閉することにより、走行条件によって空気ばね5の体積を大きくし、ばね剛性を小さくする制御を行うようにする。
なお、このような空気量調整バルブ14〜16の開閉制御は、制御部20からの制御信号に基づき、車体2の床面の高さを一定に保つ必要がない駅間走行時に行うようにする。
【0032】
次に、制御部20の具体的構成及び制御内容について説明する。
図2のブロック図に示すように、制御部20の入力側には、位置検出手段S1で検出された車両位置を示す位置データ(イ)、車両1の車体2に設置された車体上下加速度センサS2で検出された車体上下加速度データ(ロ)、車体重量検出手段S3で検出された車体重量データ(ハ)がそれぞれ入力される。
【0033】
そして、この制御部20の走行パターンデータベース20Aには、車両1の走行位置、該車両1の走行位置に対応した車体上下加速度、及び該車両1の車体重量に対する、複数段階のばね剛性の中から定めた目標となるばね剛性(目標ばね剛性)を定めた基準走行パターンが多数記録されている。例えば、3段階(「剛性1」〜「剛性3」)のばね剛性の中から目標ばね剛性を設定することが定められているとして、車体上下加速度が所定の閾値「加速度1」以下であれば、ある走行位置、及び車体重量に対しては最も剛性が高い「剛性3」が設定され、同じ走行位置でも車体重量がより軽く、車体上下加速度が「加速度1」より大きく「加速度2」以下であれば、次に剛性が高い「剛性2」が設定される、といった具合に、基準走行パターンには、走行位置ごとの車体上下加速度、車体重量、目標ばね剛性が設定されている。
【0034】
これら基準走行パターンは、車両1を用いた実測及び実測に基づく計算により得られるものである。また、図示しない記憶部には、予め定めた特定の走行位置にて、車体上下加速度と車体重量との相関関係がどのようになるかを事前調査した結果に基づき、車体重量毎に、目標ばね剛性を得るための「空気量調整バルブ14〜16の動作パターン」情報が記録されている。例えば、目標ばね剛性「剛性3」が設定された走行位置、車体重量に対しては、「空気量調整バルブ14〜16全閉」などの動作パターンが割り当てられ記録されている。
【0035】
車両1が走行する経路は毎回変わらず、また、その経路内の同じ位置を走行する車両1の走行スピードも変わらない。車体上下加速度は、走行位置における路面の凸凹などの状態と各走行位置を通過する際の車体重量に関係すると考えられる。つまり、基準走行パターンは、車両1の走行位置と車体重量によって一意に決まる。そこで、制御部20は、これら基準走行パターンのいずれかを、駅停車時にて車体重量検出手段S3から検出した車体重量データ(ハ)と、駅を出発してから次の停車駅まで走行する経路に基づき選択して、最適な目標となるばね剛性値を得るための「空気量調整バルブ14〜16の動作パターン」を決定し、該動作パターンに基づき、空気ばね5のばね体積を最適値とすべく空気量調整バルブ14〜16を順次開閉することができる。
【0036】
具体的には、乗客が少なく車体重量が減少して車体上下加速度が大きくなると推定される場合には、例えば、空気量調整バルブ14〜16を全て開として車体2のばね剛性を小さくする制御を行う「空気量調整バルブ14〜16の動作パターン」が設定されている。また、乗客が多く車体重量が増加して車体上下加速度が小さくなると推定される場合には、空気量調整バルブ14〜16を選択的に開として(例えば、空気量調整バルブ14が開で空気量調整バルブ15・16は閉、又は空気量調整バルブ14・15が開で空気量調整バルブ16は閉、又は空気量調整バルブ14〜16を全閉として)、車体2のばね剛性をより大きくする制御を行う「空気量調整バルブ14〜16の動作パターン」が設定されている。
【0037】
次に、
図3(A)及び
図3(B)を参照して、車両走行時において空気ばね5の空気体積を変更するための制御内容を示すフローチャートについてステップ順に説明する。
これらフローチャートの中で、
図3(A)に示すものは車両1の走行前に事前に準備しておくステップ1〜2、
図3(B)に示すものは車両1の走行時に適用されるステップ3〜7である。前提として、走行パターンデータベース20Aには、走行位置、走行位置に対応した車体上下加速度、及び車両1の車体重量の実測値の情報が蓄積されているとする。
【0038】
《ステップ1》
まず、制御部20が、走行パターンデータベース20Aに蓄積された走行位置、走行位置に対応した車体上下加速度、及び車両1の車体重量の組み合わせに対する、目標ばね剛性を取得する。例えば、図示しない記憶部に予め車体上下加速度の大きさの範囲毎に目標ばね剛性が定められた情報が記録されていて、制御部20が、記憶部から、この情報に基づく目標ばね剛性を読み込んで取得してもよい。あるいは、制御部20が、管理者又は運転手から、ある走行位置、車体上下加速度、車体重量の組み合わせに対する目標ばね剛性の入力を受け付け、その目標ばね剛性を取得してもよい。次のステップ2に進む。
【0039】
《ステップ2》
制御部20は、取得した目標ばね剛性について、走行パターンデータベース20Aに記録された走行位置、車体上下加速度、車体重量の組み合わせに対して、ステップ1で取得した目標ばね剛性を対応付けて記録する。これにより、基準走行パターンの設定が完了する。なお、基準走行パターンの設定は、車体上下加速度が所定の閾値以上の場合についてのみ行い、他の走行区間、車体上下加速度、車体重量の組み合わせに対しては、一律に所定の目標ばね剛性(初期値)を設定するようにしてもよい。
【0040】
次に、
図3(B)を参照して車両1の走行時に適用されるステップ3〜7について説明する。なお、以下のステップは、駅に停車している車両1が次の駅に到着するまでの間の通常走行時に適用される。
【0041】
《ステップ3》
車両1が停車している駅にて乗客の乗り降りが終了した場合において、制御部20は、車体2と台車4との間に設けられた車体重量検出手段S3から車体重量データ(ハ)を取り込む。なお、駅に車両が停止している場合には、前述した空気量調整バルブ14〜16は全て閉としておく。
【0042】
《ステップ4》
制御部20は、車両1の走行中に、位置検出手段S1で検出された車両位置を示す位置データ(イ)を随時取り込む。制御部20は、この位置データ(イ)とステップ3で得た車体重量データ(ハ)を条件として、ステップ2で設定した基準走行パターン群の中から条件を満たす基準走行パターンを選択する。
【0043】
《ステップ5》
車両1が駅を出発し、通常走行に移行した場合に、制御部20は、ステップ4で選択した基準走行パターンと、記憶部に記録された上述の「空気量調整バルブ14〜16の動作パターン」情報とに基づき、特定の走行位置において、該車両1の車体2が目標となるばね剛性となるように空気量調整バルブ14〜16を開閉動作する。
ここで、該動作パターンには、以下のような動作となる内容が設定されていてもよい。例えば、乗客が少なく車体重量が減少して車体上下加速度が大きくなると予想される場合には、選択した基準走行パターンに基づき、空気量調整バルブ14〜16を全て開として車体2のばね剛性を小さくする制御を行い、また、乗客が多く車体重量が増加して車体上下加速度が小さくなると予想される場合には、選択した基準走行パターンに基づき、空気量調整バルブ14〜16を開放しない又は選択的に開とする動作を行わせ、車体2のばね剛性を調整する。これにより車両1の乗り心地を一定に保つものである。
【0044】
そして、このような車体2の空気ばね5のばね剛性を小さくする制御を行うことにより、例えば、
図4に符号a1及びb1に示すように、車体2に生じる振動数の周波数とともに周波数応答を小さくでき、共振が発生する恐れのある振幅の大きい周波数帯から離調させることができて、応答のピーク値を小さくすることができる。その結果、軌道路面の不整によって、車体2に共振が発生し上下加速度が大きくなっていた区間において、上下方向の振動を抑えることができ、乗り心地が改善する。
【0045】
《ステップ6》
車両1が次の停車駅に近づいて来たか否かを判定し、YESの場合に次のステップ7に進む。
【0046】
《ステップ7》
空気量調整バルブ14〜16を全て閉として、車体2の床面を本来の高さに戻した後、空気ばね5の体積変更によりばね剛性を調整する上記の処理を終了する。
【0047】
以上詳細に説明したように本実施形態に示される車両サスペンション装置100では、空気ばね5に連通される補助空気タンク11〜13と、該補助空気タンク11〜13に連通される空気流路8〜10を開閉して空気ばね5のばね剛性を変更する空気量調整バルブ14〜16と、車体2の重量を検出する車体重量検出手段S3とを設け、制御部20からの制御指示に基づき、車両1の走行位置及び車体重量検出手段S3で検出された車体重量とに基づき、空気量調整バルブ14〜16を制御するようにした。
これにより、車体上下加速度が大きくなる車両1の走行位置と、車体2の重量との関係において、空気量調整バルブ14〜16を制御して空気ばね5の体積を増加させてばね剛性を下げるような制御を行う。停車駅にて乗客数に応じて車体重量が変化した場合にも、車体2の上下加速度の上昇を抑えて、車両1の乗り心地を改善することが可能となる。
【0048】
具体的には、空気ばね5のタンク容積を大きくすることにより、車体2の固有振動数が小さくなり、振幅の大きい周波数帯から振幅が小さく乗り心地が悪化しない周波数の方向の離調できるため、応答における振幅のピーク値を小さくすることができる。これにより、路面の不整によって、車体2に共振が発生し上下加速度が大きくなっていた区間において、上下方向の振動を抑えることができ、乗り心地を改善することができる。
【0049】
また、上記車両サスペンション装置100では、制御部20に、車両1の走行位置、該車両1の走行位置に対応した車体上下加速度、及び該車両1の車体重量に基づき、目標となるばね剛性を定めた基準走行パターンを複数記憶した上で、該制御部20において、車体重量検出手段S3で検出された車体重量に基づき、これら複数の基準走行パターンの中から合致する基準走行パターンを選択し、該基準走行パターンで定められた目標となるばね剛性に基づき、車両1の対応する走行位置にて空気量調整バルブ14〜16を開閉して空気タンク全体の容量を調整するようにした。
そして、このような制御を行うことで、乗客数に応じて車体重量が変化した場合にも、車両1の対応する走行位置にて空気タンク全体の容量を調整することができ、これにより車体2の上下加速度の上昇を抑えて、車両1の乗り心地を改善することが可能となる。
【0050】
そして、上記車両サスペンション装置100では、事前に決めた基準走行パターンに従って制御を行うため、演算負荷が小さく、演算装置を簡略化することができる。また、駅出発時に次の駅までの基準走行パターンを決めるため、走行中に本機能に関係するセンサにトラブルがあっても、安全性を確保することができる。また、必要な区間でのみ本車両サスペンション装置100を駆動させることができるため、低コストで運用が可能となる。
【0051】
また、上記車両サスペンション装置100では、空気ばね5に連通される補助空気タンク11〜13と、該補助空気タンク11〜13に連通される空気流路8〜10を開閉して空気ばね5のばね剛性を変更する空気量調整バルブ14〜16とを設けるという、既存の構成の一部を利用した簡易な機構により、車両1の乗り心地を改善することができ、全体のシステム及び構成が複雑化することを防止できる効果を有する。
【0052】
なお、上記実施形態では、複数の補助空気タンク11〜13をメイン空気タンク6に対して直列となるように設置した。しかし、これに限定されず、
図5に示されるように、容量の異なる複数の補助空気タンク21〜22(本例では2個の補助空気タンク)をメイン空気タンク6に対して並列に配置し、かつ該補助空気タンク21〜22に通じる各空気流路23〜24の途中にそれぞれに空気量調整バルブ25〜26を設けても良い。
そして、
図5に示される車両サスペンション装置100では、容量の異なる複数の補助空気タンク21〜22をメイン空気タンク6に対して並列に設置したので、これら補助空気タンク21〜22に通じる各空気量調整バルブ25〜26を選択的に動作することにより、複数パターンの空気容量を得ることができ、空気ばね5のばね剛性を多様に設定することが可能となる。例えば、
図5の例では、空気量調整バルブ26を開とし空気量調整バルブ25を閉とする、空気量調整バルブ25を開とし空気量調整バルブ26を閉とする、空気量調整バルブ25、及び空気量調整バルブ26を共に開とする、という順に空気容量を増加させることができる。すなわち、容量の異なる補助空気タンク21〜22を並列に接続した本例では、補助空気タンク11〜13をメイン空気タンク6に対して直列となるように複数設置した場合と比較して、より多くのパターンの空気容量を得ることができ、空気ばね5の体積を細かく設定することができる。なお、複数の補助空気タンクを並列に接続した場合であっても、各補助空気タンクの容量は同じであってもよい。
【0053】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について
図6〜
図9を参照して説明する。
図6に示される車両サスペンション装置101が、第1実施形態の車両サスペンション装置100と構成を異にする点は、空気ばね5に関する構造である。
すなわち、第2実施形態に示される車両サスペンション装置101では、空気ばね5の手前に位置する空気流路7の途中に、流路抵抗を調整する減衰力調整バルブ30が設けられている。
この減衰力調整バルブ30は、
図6に示されるように、絞り径が複数段階(例えば、3段階)に変更可能な可変オリフィス30Aを有するものであり、該可変オリフィス30Aの切り替えにより、空気流路7にて複数の減衰力を設定可能とする。具体的には、この減衰力調整バルブ30では、オリフィスの径を小さくすれば減衰力が大きくなり、径を大きくすれば減衰は小さくなる。また、減衰力調整バルブ30では可変オリフィス30Aを経由しないことで減衰力を発生させない制御も選択可能である。減衰力を発生させることで車体2の振動の振幅を小さくすることができる。
【0054】
第1実施形態に示される車両1では、空気ばね5による減衰効果が得られないために、これまでは、台車4及び車体2間の減衰性能をオイルダンパによって実現していた。
しかし、第2実施形態の車両サスペンション装置101に示されるように、空気ばね5に通じる空気流路7に可変オリフィス30Aを新たに設けることにより、空気ばね5でも減衰を得ることができる。
そして、このような径を変更できる可変オリフィス30Aを導入すれば、オイルダンパの省略又は装置規模の縮小を可能とした上で、減衰特性の変更が可能となる。
【0055】
なお、この減衰力調整バルブ30による減衰制御は、上記補助空気タンク11〜13及び空気量調整バルブ14〜16を用いたばね剛性の制御に追加して行うものであって、単独で行うものではない。
しかし、車両1に共振が発生する恐れがない場合には、減衰力調整バルブ30による減衰制御のみを行っても良い。
【0056】
また、この減衰力調整バルブ30による減衰制御は、制御部20にて予め定められた、基準走行パターンの中の減衰目標値に基づき行われる。
また、この減衰目標値に対しては、特に、車体加速度が大きくなる区間において、減衰目標値が得られるように、「車両重量に応じた減衰力調整バルブ30の動作パターン」が図示しない記憶部に記録されている。具体的には、ここでの減衰目標値は、例えば、特開2011−84194号公報及び特開平7−172129号公報等に示されるカルノップ制御を用いて決定する場合には、第1実施形態に示される、事前の車両走行により得られる車両位置、車体加速度、車体重量を示すデータ(イ)〜(ハ)とともに、
図6で示される、車体上下速度センサS4で検出されたデータ(ニ)及び台車上下速度センサS5で検出されたデータ(ホ)を基に求めることができる。なお、このような減衰力制御は、第1実施形態に示されるばね剛性の制御と同様、車体2の床面の高さを一定に保つ必要はない駅間の走行時に行うようにする。また、本実施形態の走行パターンデータベース20Aには、走行位置、走行位置に対応した車体上下加速度、及び車両1の車体重量、車体上下速度、台車上下速度、減衰目標値の情報が含まれる。
【0057】
次に、
図7(A)及び(B)を参照して、車両走行時において空気ばね5の減衰特性を変更するための制御内容を示すフローチャートについてステップ順に説明する。
これら制御内容を示すフローチャートの中で、
図7(A)に示すものは車両1の走行前に事前に準備しておくステップ11〜12、
図7(B)に示すものは車両1の走行時に適用されるステップ13〜17である。前提として、走行パターンデータベース20Aには、走行位置、走行位置に対応した車体上下加速度、及び車両1の車体重量、車体上下速度、台車上下速度の実測値の情報が蓄積されているとする。
【0058】
《ステップ11》
まず、制御部20が、走行パターンデータベース20Aに蓄積された走行位置、走行位置に対応した車体上下加速度、車両1の車体重量、車体上下速度、台車上下速度の組み合わせに対する、減衰目標値を取得する。例えば、図示しない記憶部に、車体上下加速度と車体重量と車体上下速度と台車上下速度の組み合わせ毎に予め減衰目標値が定められた情報が記録されていて、制御部20が、記憶部から、この情報に基づく減衰目標値を読み込んで取得してもよい。あるいは、制御部20が、管理者又は運転手から、ある走行位置、車体上下加速度、車体重量、車体上下速度、台車上下速度の組み合わせに対する減衰目標値の入力を受け付け、その減衰目標値を取得してもよい。次のステップ12に進む。
【0059】
《ステップ12》
制御部20は、取得した減衰目標値について、走行パターンデータベース20Aに記録された走行位置、車体上下加速度、車体重量、車体上下速度、台車上下速度の組み合わせに対して、ステップ11で取得した減衰目標値を対応付けて記録する。これにより、基準走行パターンの設定が完了する。なお、基準走行パターンの設定は、車体上下加速度が所定の閾値以上の場合についてのみ行い、他の走行区間、車体上下加速度、車体重量、車体上下速度、台車上下速度の組み合わせに対しては、一律に所定の減衰目標値(初期値)を設定するようにしてもよい。なお、基準走行パターンには、第1実施形態と同様、走行位置、車体上下加速度、車体重量に対応付けて目標ばね剛性の情報が含まれている。
なお、第1実施形態と同様、基準走行パターンは、走行位置と車体重量によって一意に決まる。
【0060】
次に、
図7(B)を参照して車両1の走行時に適用されるステップ13〜17について説明する。なお、以下のステップは、駅に停車している車両1が次の駅に到着するまでの間の通常走行時に適用される。
【0061】
《ステップ13》
車両1が停車している駅にて乗客の乗り降りが終了した場合において、車体2と台車4との間に設けられた車体重量検出手段S3から車体重量データ(ハ)を取り込む。なお、駅に車両が停止している場合には、前述した減衰力調整バルブ30は非作動としておく。
【0062】
《ステップ14》
制御部20は、車両1の走行中に、位置検出手段S1で検出された車両位置を示す位置データ(イ)を随時取り込む。制御部20は、この位置データ(イ)とステップ13で得た車体重量データ(ハ)を条件として、ステップ12で設定した基準走行パターン群の中から条件を満たす基準走行パターンを選択する。
【0063】
《ステップ15》
車両1が駅を出発し、通常走行に移行した場合に、ステップ14で選択した基準走行パターンと、記憶部に記録された上述の「車両重量に応じた減衰力調整バルブ30の動作パターン」情報とに基づき、特定の走行位置において、該車両1の車体2が目標となる減衰目標値となるように減衰力調整バルブ30の可変オリフィス30Aを操作する。
ここで、該動作パターンには、以下のような動作となる内容が設定されていてもよい。例えば、乗客が少なく車体重量が減少して車体上下加速度が大きくなると推定される場合には、選択した基準走行パターンに基づき、減衰力調整バルブ30において小径の可変オリフィス30Aを選択し、また、乗客が多く車体重量が増加して車体上下加速度が小さくなると推定される場合には、選択した基準走行パターンに基づき、減衰力調整バルブ30を作動しない又は減衰力調整バルブ30において大径の可変オリフィス30Aを選択し、車体2の減衰力を調整する。これにより車両1の乗り心地を一定に保つものである。
【0064】
あるいは、車体上下加速度が大きくなると推定される場合にカルノップ制御を用いて減衰力調整バルブ30の最適な径を選択するために、動作パターンには、以下のような動作となるような内容が設定されていてもよい。つまり、基準走行パターンに含まれる車体上下速度と台車上下速度に基づいて、例えば、車体が上向きの速度で、車体と台車の間に張力が加わるような状態の場合(車体2は上向きの速度で、台車4は下向きの速度など)、制御部20は、可変オリフィス30Aを絞る動作を行う。つまり、この場合、制御部20は、小径の可変オリフィス30Aを選択する。また、例えば、車体が上向きの速度で、車体と台車の間に圧縮力が加わるような場合、制御部20は、減衰力を小さく設定する。つまり、この場合、制御部20は、例えば、大径の可変オリフィス30Aを選択する。
【0065】
また、車体が下向きの速度で、車体と台車の間に張力が加わるような場合、制御部20は、カルノップ制御に基づいて、減衰力を小さく設定し、例えば、大径の可変オリフィス30Aを選択する。また、車体が下向きの速度で、車体と台車の間に圧縮力が加わるような場合、制御部20は、カルノップ制御に基づいて、減衰力を大きく設定し、例えば、小径の可変オリフィス30Aを選択する。
【0066】
そして、以上のような減衰力調整バルブ30による減衰制御を行うことにより、例えば、
図8に符号b2に示すように、車体2の周波数応答を小さくでき、応答における振幅のピーク値を小さくすることができる。
【0067】
《ステップ16》
車両1が次の停車駅に近づいて来たか否かを判定し、YESの場合に次のステップ17に進む。
【0068】
《ステップ17》
減衰力調整バルブ30の動作を解除して(可変オリフィス30Aを圧縮空気が通過しない設定にして)、上記の処理を終了する。
【0069】
以上詳細に説明したように第2実施形態に示される車両サスペンション装置101では、空気ばね5に通じる空気流路7の途中に流路抵抗を調整する減衰力調整バルブ30を設け、かつ制御部20にて、予め定めた基準走行パターンの減衰目標値に基づき該減衰力調整バルブ30の動作制御を行うようにしたので、空気容量を増減することにより空気ばね5のばね剛性を調整するという制御と併用することで、車両1の乗り心地を改善する効果をより高めることができる。
また、本実施形態の車両サスペンション装置101では、減衰力調整バルブ30の可変オリフィス30Aにて絞りによって減衰を得ることができることから、車体2及び台車4間の上下振動に対応したオイルダンパの省略又は規模の縮小が可能となる。
【0070】
また、本実施形態の車両サスペンション装置101では、減衰力調整バルブ30にて可変オリフィス30Aを採用することにより、減衰特性の制御が可能となり、特に、車体2の固有振動数付近の周波数での加振力が大きい区間において、減衰係数を高めることにより、車体2の共振による上下振動を抑えることができ、乗り心地が改善する。
また、本実施形態の車両サスペンション装置101では、事前に決めた基準走行パターンの減衰目標値に従って制御を行うため、演算負荷が小さく、演算装置を簡略化することができる。また、駅出発時に次の駅までの基準走行パターンを決めるため、走行中に本装置に関係するセンサにトラブルがあっても、減衰効果及びばね剛性を可変にすることによる揺れを抑制する効果を得ることができる。また、必要な区間でのみ装置を駆動させればよく、低コストで運用が可能となるものである。
【0071】
なお、第2実施形態の車両サスペンション装置101においても、複数の補助空気タンク11〜13をメイン空気タンク6に対して直列となるように設置した。しかし、これに限定されず、
図9に示されるように、容量の異なる複数個の補助空気タンク21〜22(本例では2個の補助空気タンク)をメイン空気タンク6に対して並列に配置し、かつ該補助空気タンク21〜22に通じる各空気流路23〜24の途中にそれぞれに空気量調整バルブ25〜26を設ける構成としても良い。
【0072】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について
図10及び
図11を参照して説明する。
第3実施形態に示される車両サスペンション装置102が、第1及び第2実施形態の車両サスペンション装置100・101と構成を異にするのは、予めの走行試験により設定した基準走行パターンを、通常走行時に得た走行データに基づき定期的、又は走行データが一定量以上蓄積できたときに書き換えるようにした点である。
【0073】
車両1には、選択した基準走行パターンに従って空気量調整バルブ14〜16を制御した後で、車両1の走行位置に対応した車両位置、車体加速度、車体重量を示すデータ(イ)〜(ハ)、車体上下速度を示すデータ(ニ)及び台車上下速度を示すデータ(ホ)等の走行データを順次記録する走行データ蓄積部20Bが設けられており、制御部20は、走行データ蓄積部20Bで記録した走行データの車体上下加速度が、予め定めた基準加速度を上回っている場合に、該走行データに基づき、基準走行パターンを書き換える見直し処理を行うようにしている。
【0074】
図11を参照して制御部20による見直し処理についてステップ毎に説明する。
なお、以下に示す基準走行パターンの見直し処理は走行中の列車上で行っても良いし、列車管理室などの別の場所で行っても良い。また、見直し処理は、他の場所に設置されたコンピュータ装置が、走行データ蓄積部20Bに記録されたデータに基づいて行ってもよい。
【0075】
《ステップ20》
基準走行パターンに従って空気量調整バルブ14〜16及び減衰力調整バルブ30を動作させている場合において、常時、車両位置、車体加速度、走行速度、車体重量、車体上下速度、台車上下速度といった走行データ(イ)〜(ホ)を取り込み、かつ該走行データ(イ)〜(ホ)を蓄積する。
【0076】
《ステップ21》
ステップ20で蓄積したデータ数が一定の値になったか否かを判断し、YESの場合に次のステップ22に進む。
なお、このステップ21では、ステップ20で蓄積したデータ数が一定の値になったか否かを判断せず、基準走行パターン設定後一定の期間が経過したか否かを判断しても良い。
【0077】
《ステップ22》
ステップ20で蓄積した車体加速度に基づき、閾値を超える車体加速度が生じている区間において車体加速度への寄与が高い周波数を特定する。
【0078】
《ステップ23》(基準走行パターンにおける目標ばね剛性の確認)
ステップ20で得られた車体加速度を用いて周波数分析する。
《ステップ24》
ステップ23で分析した車体加速度のピーク周波数が、車両1の上下振動の固有振動数と近いと判断した場合には、共振が生じていると考えられるため、空気ばね5のばね剛性を1段階小さくして、周波数の離調を図るための新たな基準走行パターンを作成する。
【0079】
《ステップ25》(基準走行パターンにおける減衰特性の確認)
車体上下速度、台車上下速度といった走行データを用いて、減衰力調整バルブ30の可変オリフィス30Aによる減衰制御が有効か否かを判断し、閾値を超える車体加速度が生じている区間において、当該走行データに基づき、カルノップ制御により減衰力の大小を切り替えた新たな基準走行パターンを作成する。
【0080】
《ステップ26》
ステップ24〜25で作成した新基準走行パターンに基づき、車両1を実際に走行させる、又は走行シミュレーションを実施(ステップ20〜25の処理を繰り返し)、車体加速度の閾値が達成できるまで、空気ばね5のばね剛性を順に小さくする、あるいは、減衰力調整バルブ30の絞り径を調整して減衰力を大きくする。
【0081】
《ステップ27》
ステップ26にて車体加速度の閾値が達成された新基準走行パターンを、新たな基準走行パターンに確定して、以前の基準走行パターンを書き換える。
【0082】
以上詳細に説明したように第3実施形態に示される車両サスペンション装置102では、車両1に設けた走行データ蓄積部20Bに、選択した基準走行パターンに従って空気量調整バルブ14〜16及び減衰力調整バルブ30を制御した後で、車両1の走行位置に対応した車体上下加速度等の走行データを順次記録するようにした。
そして、制御部20にて、走行データ蓄積部20Bで記録した走行データの車体上下加速度が、予め定めた基準加速度を上回っている場合に、目標値に達するように基準走行パターンを書き換える見直し処理を行うようにしたので、車両1又は軌道の経年変化により車体上下加速度が上昇することを抑えることができる。
また、このような見直し処理により、再度、改めて基準走行パターンを作成し直す手間が必要なく、全体の管理コストを低下させることができる。
【0083】
すなわち、第3実施形態に示される車両サスペンション装置102では、定期的に基準走行パターンを見直すことができるため、適切な基準走行パターンによる運行が可能となる。また、上記見直し処理をプログラム化することにより、走行路面の経年変化などによって、路面の状態が変化した場合にも、パターン検討の手間が低減できるとの効果を得ることができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0085】
本発明は、自動案内軌条式旅客輸送システムであるAGT(Automated Guideway Transit)に適用可能な車両サスペンション装置及び車両サスペンション装置におけるばね剛性変更方法に関する。
【0086】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。