特許第6654476号(P6654476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654476
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】車両用ディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/097 20060101AFI20200217BHJP
   F16D 65/095 20060101ALI20200217BHJP
   F16F 1/20 20060101ALI20200217BHJP
   F16B 21/18 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   F16D65/097 B
   F16D65/095 G
   F16F1/20
   F16B21/18 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-51139(P2016-51139)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-166544(P2017-166544A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛将
(72)【発明者】
【氏名】六川 明浩
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−033130(JP,A)
【文献】 実開昭56−093527(JP,U)
【文献】 特開昭52−140771(JP,A)
【文献】 特開平05−180250(JP,A)
【文献】 特開昭59−062733(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第01219778(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/00−21/20
F16D 49/00−71/04
F16F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータの外側を跨いで配設されるキャリパボディのブリッジ部に、摩擦パッドを抜き差しする天井開口部を内外に貫通して設け、該天井開口部をディスク軸方向に貫通してキャリパボディに架設される複数のハンガーピンを摩擦パッドのパッド吊下げ片に挿通して、前記ディスクロータの両側部に一対の摩擦パッドを対向配置し、該一対の摩擦パッドのディスク半径方向外側面に弾接して、該一対の摩擦パッドをディスクロータ内方へ付勢するパッドスプリングを備えた車両用ディスクブレーキにおいて、
前記パッドスプリングは、前記一対の摩擦パッドの車両前進時におけるディスク回入側をディスクロータ内方へ付勢する第1パッドスプリング部材と、前記一対の摩擦パッドの車両前進時におけるディスク回出側をディスクロータ内方へ付勢する第2パッドスプリング部材とで構成され、
前記第1パッドスプリング部材は、前記一対の摩擦パッドのディスク回入側に弾接する第1弾接片と、該第1弾接片から延出し、ディスク回出側の前記ハンガーピンに係止される第1係止部を有する第1スプリング片とを備え、
前記第2パッドスプリング部材は、前記一対の摩擦パッドのディスク回出側に弾接する第2弾接片と、該第2弾接片から延出し、ディスク回入側の前記ハンガーピンに係止される第2係止部を有する第2スプリング片とを備え、
前記第1パッドスプリング部材と前記第2パッドスプリング部材とは、互いに重ならない状態で組み付けられることを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【請求項2】
前記第1スプリング片と前記第2スプリング片のいずれか一方のスプリング片は、組み付け状態で、前記天井開口部のディスク軸方向中央部に延出し、前記第1スプリング片と前記第2スプリング片のいずれか他方のスプリング片は、組み付け状態で、前記いずれか一方のスプリング片を挟んで延出する一対のスプリング片で構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項3】
前記第1スプリング片と前記第2スプリング片のいずれか一方のスプリング片の幅寸法と、前記第1スプリング片と前記第2スプリング片のいずれか他方の一対のスプリング片の幅寸法を合計した寸法とは等しいことを特徴とする請求項2記載の車両用ディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や自動二・三輪車等の走行車両に用いられる車両用ディスクブレーキに係り、詳しくは、ハンガーピンを用いて摩擦パッドを吊持する形式の車両用ディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
一対の摩擦パッドを、キャリパボディにハンガーピンを用いて吊持する形式の車両用ディスクブレーキにあっては、摩擦パッドのディスク半径方向外側に板状のパッドスプリングを縮設し、摩擦パッドをパッドスプリングによって、ディスク内方へ付勢し、摩擦パッドが走行振動でガタついたり、制動時にディスク半径方向外側に浮き上がることがないようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−202661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のようなディスクブレーキでは、組み付け時に、一対の摩擦パッドとパッドスプリングとをキャリパボディの所定の位置に配置し、パッドスプリングを摩擦パッド側に撓ませながら、キャリパボディに形成されたハンガーピンの挿通孔と摩擦パッドに形成されたハンガーピンの挿通孔とに亘ってハンガーピンを挿通させなければならないことから、組み付け作業に手間が掛かっていた。
【0005】
そこで本発明は、組み付け作業に手間が掛からない車両用ディスクブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキは、ディスクロータの外側を跨いで配設されるキャリパボディのブリッジ部に、摩擦パッドを抜き差しする天井開口部を内外に貫通して設け、該天井開口部をディスク軸方向に貫通してキャリパボディに架設される複数のハンガーピンを摩擦パッドのパッド吊下げ片に挿通して、前記ディスクロータの両側部に一対の摩擦パッドを対向配置し、該一対の摩擦パッドのディスク半径方向外側面に弾接して、該一対の摩擦パッドをディスクロータ内方へ付勢するパッドスプリングを備えた車両用ディスクブレーキにおいて、前記パッドスプリングは、前記一対の摩擦パッドの車両前進時におけるディスク回出側をディスクロータ内方へ付勢する第1パッドスプリング部材と、前記一対の摩擦パッドの車両前進時におけるディスク回入側をディスクロータ内方へ付勢する第2パッドスプリング部材とで構成され、前記第1パッドスプリング部材は、前記一対の摩擦パッドのディスク回出側に弾接する第1弾接片と、該第1弾接片から延出し、ディスク回入側の前記ハンガーピンに係止される第1係止部を有する第1スプリング片とを備え、前記第2パッドスプリング部材は、前記一対の摩擦パッドのディスク回入側に弾接する第2弾接片と、該第2弾接片から延出し、ディスク回出側の前記ハンガーピンに係止される第2係止部を有する第2スプリング片とを備え、前記第1パッドスプリング部材と前記第2パッドスプリング部材とは、互いに重ならない状態で組み付けられることを特徴としている。
【0007】
また、前記第1スプリング片と前記第2スプリング片のいずれか一方のスプリング片は、組み付け状態で、前記天井開口部のディスク軸方向中央部に延出し、前記第1スプリング片と前記第2スプリング片のいずれか他方のスプリング片は、組み付け状態で、前記いずれか一方のスプリング片を挟んで延出する一対のスプリング片で構成されていると好ましい。
【0008】
さらに、前記第1スプリング片と前記第2スプリング片のいずれか一方のスプリング片の幅寸法と、前記第1スプリング片と前記第2スプリング片のいずれか他方の一対のスプリング片の幅寸法を合計した寸法とが等しいと好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用ディスクブレーキによれば、摩擦パッドとハンガーピンとをキャリパボディに組み付けた後、天井開口部から、第1スプリング部材と第2スプリング部材とを組み付けることができることから、従来のように、パッドスプリングを摩擦パッド側に撓ませながら、ハンガーピンをキャリパボディと摩擦パッドとに亘って挿通させる必要がなくなり、組み付け性の向上を図ることができる。
【0010】
また、第1スプリング片と第2スプリング片のいずれか一方のスプリング片を、組み付け状態で、前記天井開口部のディスク軸方向中央部に延出させ、いずれか他方のスプリング片をいずれか一方のスプリング片を挟んで延出する一対のスプリング片で構成したことにより、狭いスペースでも第1スプリング部材と第2スプリング部材とを良好に配置させることができる。さらに、前記いずれか一方のスプリング片の幅寸法と、前記いずれか他方の一対のスプリング片の幅寸法を合計した寸法とを等しく形成したことにより、同等の剛性を確保しつつ、第1スプリング片と第2スプリング片とに力を良好に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図2のI−I断面図である。
図2】本発明の一形態例を示す車両用ディスクブレーキの平面図である。
図3】同じく車両用ディスクブレーキの正面図である。
図4】本発明の一形態例を示すパッドスプリングとハンガーピンの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図4は本発明の車両用ディスクブレーキの一形態例を示す図で、矢印Aは、車両前進時に車輪と一体に回転するディスクロータの回転方向であり、以下で述べるディスク回出側及びディスク回入側とは車両前進時におけるものとする。
【0013】
本形態例の車両用ディスクブレーキ1は、ディスクロータ2を挟んで対向配置される一対の作用部3a,3aと、ディスク回入側とディスク回出側とに設けられた一対のブリッジ部3b,3bとを一体に形成したモノコック構造のキャリパボディ3を有している。
【0014】
作用部3a,3aには、ディスクロータ2側が開口したシリンダ孔3cが3個ずつ対向するようにそれぞれ設けられている。各シリンダ孔3c内には、ピストン4がピストンシールを介して液密に収容されており、6ポットのピストン対向型に形成され、各シリンダ孔3cの底部と各ピストン4の底面との間には、作動液が供給される液圧室がそれぞれ画成されている。また、ディスク回出側に配置されるシリンダ孔3c,3cの液圧室は、ディスクロータ2を跨いで配置される液通管5にて接続され、ディスク回入側に配置されるシリンダ孔3c,3cの液圧室には、ブリューダ孔がそれぞれ形成され、該ブリューダ孔にブリューダスクリュ5a,5aが螺着されている。
【0015】
一方の作用部3aのディスク回入側及びディスク回出側には、ディスク半径方向の取付ボルト挿通孔が設けられ、この取付ボルト挿通孔に挿通した取付ボルト6,6を車体側に設けられているブラケット7に螺着することにより、キャリパボディ3が車体に取り付けられる。
【0016】
シリンダ孔3cの開口側には、ディスクロータ2を挟むようにライニング8aと裏板8bとからなる摩擦パッド8がそれぞれ対向配置されている。この摩擦パッド8は、ディスクロータ2の外周を跨いでディスク軸方向に架け渡された一対のハンガーピン9,9によって吊持され、ディスク回入側及びディスク回出側にそれぞれ設けられたトルク受け面3d,3dの間でディスク軸方向に移動可能となっている。
【0017】
キャリパボディ3のディスク外周側には、作用部3a,3aとブリッジ部3b,3bとに囲まれた天井開口部3eが形成されている。天井開口部3eは、摩擦パッド8をリテーナ10を介してトルク受け面3d,3d間に挿入するための開口部となるもので、摩擦パッド8,8をディスクロータ2の両側部に差し込み可能な大きさの略矩形に形成されている。また、摩擦パッド8,8のディスク半径方向外側には、摩擦パッド8,8のディスク半径方向外側面に弾接して、摩擦パッド8,8をディスクロータ内方へ付勢するパッドスプリング11が設けられている。
【0018】
パッドスプリング11は、摩擦パッド8,8のディスク回入側をディスクロータ内方へ付勢する第1パッドスプリング部材12と、摩擦パッド8,8のディスク回出側をディスクロータ内方へ付勢する第2パッドスプリング部材13とで構成されている。第1パッドスプリング部材12は、ディスクロータ2を跨いで配置され、摩擦パッド8,8のディスク回入側のディスク半径方向外側面に弾接する第1弾接片12aと、第1弾接片12aから延出する第1スプリング片12bとを備え、第1スプリング片12bの先端部に、ディスク回出側のハンガーピン9に係止される第1係止部12cが形成されている。第2パッドスプリング部材13は、ディスクロータ2を跨いで配置され、摩擦パッド8,8のディスク回出側のディスク半径方向外側面に弾接する第2弾接片13aと、第2弾接片13aから延出する一対の第2スプリング片13b,13bとを備え、各第2スプリング片13bの先端部に、ディスク回入側のハンガーピン9に係止される第2係止部13cがそれぞれ形成されている。
【0019】
第1スプリング片12bは、組み付けた際に天井開口部3eのディスク軸方向中央部に位置し、第1弾接片12aから、漸次、ディスク半径方向外側に傾斜して延出する基端側スプリング部12dと、該基端側スプリング部12dの先端部から、ディスク半径方向内側に折曲され、ディスク回入側のハンガーピン9のディスクロータ側面を通過して、ディスク回出側のハンガーピン9に向けて延出する先端側スプリング部12eとを有し、先端側スプリング部12eの先端部をディスク半径方向外側に湾曲させながら折り返して前記第1係止部12cが形成される。
【0020】
第2スプリング片13b,13bは、組み付けた際に第1スプリング片12bを挟んだ状態で延出し、第2弾接片13aから、漸次、ディスク半径方向外側に傾斜してそれぞれ延出する基端側スプリング部13d,13dと、該基端側スプリング部13d,13dの先端部から、ディスク半径方向内側に折曲され、ディスク回出側のハンガーピン9のディスクロータ側面を通過して、ディスク回入側のハンガーピン9に向けて延出する先端側スプリング部13e,13eとを有し、各先端側スプリング部13eの先端部をディスク半径方向外側に湾曲させながら折り返して前記第2係止部13cがそれぞれ形成される。また、第2スプリング片13bの幅寸法は、第1スプリング片12bの幅寸法の1/2の寸法にそれぞれ形成されており、第1スプリング片12bの幅寸法と第2スプリング片13b,13bの幅寸法を合計した寸法とは等しくなっている。
【0021】
上述のように形成された車両用ディスクブレーキ1によれば、摩擦パッド8,8とハンガーピン9とをキャリパボディ3に組み付けた後、天井開口部3eのディスク回入側から第1パッドスプリング部材12の第1スプリング片12bを差し込み、先端側スプリング部12eをディスク回入側のハンガーピン9のディスクロータ側面とディスク回出側のハンガーピン9のディスクロータ側面とに当接させ、第1係止部12cをディスク回出側のハンガーピン9に係止させ、第1弾接片12aを摩擦パッド8,8のディスク回入側のディスク半径方向外側面に弾接させる。さらに、天井開口部3eのディスク回出側から第2パッドスプリング部材13の第2スプリング片13b,13bを差し込み、先端側スプリング部13e,13eをディスク回出側のハンガーピン9のディスクロータ側面とディスク回入側のハンガーピン9のディスクロータ側面とにそれぞれ当接させ、第2係止部13c,13cをディスク回入側のハンガーピン9にそれぞれ係止させ、第2弾接片13aを摩擦パッド8,8のディスク回出側のディスク半径方向外側面に弾接させる。また、この組み付け状態で、第1スプリング片12bを第2スプリング片13b,13bで挟んだ状態となり、第1パッドスプリング部材12と第2パッドスプリング部材13とが重なることはない。
【0022】
このように、本形態例では、摩擦パッド8,8とハンガーピン9とをキャリパボディ3に組み付けた後に、天井開口部3eを介して、第1パッドスプリング部材12と第2パッドスプリング部材13とを容易に組み付けることができることから、組み付け性の向上を図ることができる。また、第1パッドスプリング部材12と第2パッドスプリング部材13とは、第2スプリング片13b,13bで第1スプリング片12bを挟んだ状態で組み付けられることから、狭いスペースでも第1パッドスプリング部材12と第2パッドスプリング部材13とを良好に配置させることができる。さらに、第2スプリング片13bの幅寸法を、第1スプリング片12bの幅寸法の1/2の寸法に形成したことにより、第1スプリング片12bの幅寸法と第2スプリング片13b,13bの幅寸法を合計した寸法とが等しくなり、同等の剛性を確保しつつ、第1スプリング片12bと第2スプリング片13bとに力を良好に分散させることができる。
【0023】
尚、本発明は上述の形態例に限るものではなく、第2スプリング片を、組み付けた際に天井開口部のディスク軸方向中央部に位置する1本のスプリング片で形成し、第1スプリング片を、第2スプリング片を挟む2本のスプリング片で係止したものでもよい。また、第1スプリング片や第2スプリング片の形状や幅寸法は任意で、上述の形態例に限るものではない。さらに、本発明のキャリパボディは、モノコック構造の6ポットのピストン対向型に限るものではなく、分割タイプのキャリパボディでもよく、ピストンの数も任意である。
【符号の説明】
【0024】
1…車両用ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパボディ、3a…作用部、3b…ブリッジ部、3c…シリンダ孔、3d…トルク受面、3e…天井開口部、4…ピストン、5…液通管、5a…ブリューダスクリュ、6…取付ボルト、7…ブラケット、8…摩擦パッド、8a…ライニング、8b…裏板、9…ハンガーピン、10…リテーナ、11…パッドスプリング、12…第1パッドスプリング、12a…第1弾接片、12b…第1スプリング片、12c…第1係止部、12d…基端側スプリング部、12e…先端側スプリング部、13…第2パッドスプリング部材、13a…第2弾接片、13b…第2スプリング片、13c…第2係止部、13d…基端側スプリング部、13e…先端側スプリング部
図1
図2
図3
図4