特許第6654477号(P6654477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654477
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】ホウ素含有化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
   C07F5/02 DCSP
【請求項の数】3
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-51226(P2016-51226)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2016-172728(P2016-172728A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2018年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-53872(P2015-53872)
(32)【優先日】2015年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】郷田 隼
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−514043(JP,A)
【文献】 特開2016−174100(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/181705(WO,A1)
【文献】 ChemCatChem,2015年,7,2108−2112
【文献】 J. Am. Chem. Soc.,2010年,132,2548−2549
【文献】 Organic Letters,2016年,18,720−723
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(5);
【化1】
(式中、点線の円弧は、同一又は異なって、実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表す。実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。Q及びは、それぞれ、炭素数1の炭素であ。R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子、環構造の置換基となる1価の置換基、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素環基又は2価の芳香族複素環基、又は、直接結合を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。11が結合する環構造及びR12が結合する環構造は、それぞれ、ベンゼン環である。Rは、水素原子、環構造の置換基となる1価の置換基、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素環基又は2価の芳香族複素環基、又は、直接結合を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。Rが結合する環構造は、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、又は、フェナントリジン環である。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、1価の置換基、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素環基又は2価の芳香族複素環基、又は、直接結合を表す。RとRとは、互いに結合して二重線で表される骨格部分と共に環構造を形成していない。nは、1〜4の整数である。nは、0又は1である。が1の場合、Yは、置換基を有していてもよい、n価の芳香族炭化水素環基又はn価の芳香族複素環基、又は、直接結合を表し、n個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、R11、R12、R、R、又は、Rのいずれか1箇所で結合していることを表す)で表されることを特徴とするホウ素含有化合物。
【請求項2】
前記nは、2〜4の整数であり、前記nは、1であることを特徴とする請求項に記載のホウ素含有化合物。
【請求項3】
前記Rは、芳香環を有する1価の置換基を表すことを特徴とする請求項1又は2に記載のホウ素含有化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素含有化合物に関する。より詳しくは、有機EL素子材料や有機半導体の材料等の有機電子デバイス材料として好適に用いることができるホウ素含有化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素原子を構造中に有するホウ素含有化合物は、ホウ素原子の分子軌道における電子状態に起因する電子的特性から有機電子デバイス材料として注目されているものである。例えば、電子受容性等の特性が必要とされる有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子の電子輸送/注入材料もしくは正孔阻止材料等や有機電子デバイスのn型半導体材料として期待されている。特に有機EL素子は、ディスプレイとしての種々の優れた特性を有することから、より一層の高性能化を実現できる材料の開発が盛んに進められている。
【0003】
このような用途に利用できるホウ素含有化合物は、その電子的な特性に起因して安定な構造とすることが困難であり、そのために電子デバイス材料用途に実際に用いることができるものが限られているというのが現状である。
このような状況下、ホウ素含有化合物を次世代の有機電子デバイス材料として活用するために、ホウ素原子に起因する優れた特有の性質を発揮させつつ、安定的に取り扱うことが可能な新規化合物の開発が進められている。
【0004】
これまで、有機電子デバイス材料としての利用を目指して検討が行われているホウ素含有化合物としては、例えば、不対電子を持ちホウ素と配位結合可能な元素を含み、特定の構造を有する有機ホウ素含有化合物である有機EL素子材料が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、窒素がホウ素へ分子内配位した構造を含み、特定の構造を有する構成単位を1〜400個鎖状に結合した構造を有する有機ホウ素系π電子系化合物を電子輸送材料として用いることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更には、特定の構造を有するホウ素原子含有化合物が開示されている(例えば、特許文献3〜5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4600288号公報
【特許文献2】国際公開第2006/070817号公報
【特許文献3】特開2013−53123号公報
【特許文献4】特許第5504454号公報
【特許文献5】特許第5553149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホウ素含有化合物は、ホウ素原子がその分子軌道に空軌道を有し、それによって最高被占軌道(HOMO)や最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位が低いという、ホウ素原子の電子状態に由来する特性を有する。特にLUMOのエネルギー準位が低いことに起因して、上記のように有機EL素子の材料やn型半導体の材料としての用途が期待されている。例えば、りん光発光を利用した有機EL素子の一般的な構成、すなわち、透明電極から形成される陽極、ホール(正孔)輸送層、りん光発光層(発光ドーパント、りん光ホスト材料)、電子輸送層、正孔阻止層、Mg、Al、Ca等から形成される陰極といった構成において、電子輸送層や正孔阻止層にLUMOのエネルギー準位が低い材料を使用すれば、有機EL素子としての性能が向上することになる。
一方で、ホウ素含有化合物における課題は、ホウ素原子が空軌道を有することに伴って、安定な化合物が少ないということである。安定な化合物でありながら、HOMO、LUMOのエネルギー準位を下げることができれば、有機電子デバイス材料としての用途に有用である。そのような化合物のバリエーションを増やすことは、有機EL素子やn型半導体等の有機電子デバイスの分野で当該化合物をデバイス材料として用いる場合において大きな技術的意義がある。
【0007】
上述のように、ホウ素原子に起因する優れた特有の性質を発揮させながら、安定的に取り扱うことができるホウ素含有化合物の開発を目指して種々の構造を有するホウ素含有化合物が検討されているが、今後、有機EL素子材料やn型半導体等の有機電子デバイス材料の開発の中では、様々な特性が要求されることになると考えられ、そのような有機電子デバイス材料として、安定で更に種々の特性に優れたホウ素含有化合物の開発が期待されている。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、有機EL素子材料やn型半導体等の有機電子デバイス材料として好適なホウ素含有化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、有機電子デバイス材料に好適に用いることができるホウ素含有化合物の開発を行う中でその構造について種々検討したところ、ホウ素含有化合物を安定的な化合物とするためには、ホウ素原子に対して窒素原子が配位した構造を有するようにすればよいことに着目した。そして、そのような構造の化合物について種々検討し、下記式(1)で表されるような特定の構造を有する化合物を合成した。本発明者らは、この化合物が、ホウ素原子を有することに起因してHOMO、LUMOのエネルギー準位が低く、また、安定な化合物であることから、有機EL素子材料や有機半導体の材料等の有機電子デバイス材料として好適に用いることができる化合物であることを見出し、上記課題を見事に解決することができることに想到し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明は、下記式(1);
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、点線の円弧は、ホウ素原子又は実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表し、該環構造は、同一又は異なって、1つの環から構成される単環構造であってもよく、複数の環から構成される縮環構造であってもよい。実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。Qは、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しており、置換基を有していてもよい。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、環構造の置換基となる1価の置換基、2価の基、又は、直接結合を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、1価の置換基、2価の基、又は、直接結合を表す。RとRとは、互いに結合して二重線で表される骨格部分と共に環構造を形成していない。nは、1〜4の整数である。nは、0又は1である。nが1の場合、Yは、n価の連結基、又は、直接結合を表し、n個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、R、R、R、又は、Rのいずれか1箇所で結合していることを表す。)で表されることを特徴とするホウ素含有化合物である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0013】
<本発明のホウ素含有化合物>
まず、本発明のホウ素含有化合物について、以下に説明する。
本発明のホウ素含有化合物は、下記式(1);
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、点線の円弧は、ホウ素原子又は実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表し、該環構造は、同一又は異なって、1つの環から構成される単環構造であってもよく、複数の環から構成される縮環構造であってもよい。実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。Qは、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しており、置換基を有していてもよい。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、環構造の置換基となる1価の置換基、2価の基、又は、直接結合を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、1価の置換基、2価の基、又は、直接結合を表す。RとRとは、互いに結合して二重線で表される骨格部分と共に環構造を形成していない。nは、1〜4の整数である。nは、0又は1である。nが1の場合、Yは、n価の連結基、又は、直接結合を表し、n個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、R、R、R、又は、Rのいずれか1箇所で結合していることを表す。)で表される構造を有する化合物である。
【0016】
本発明のホウ素含有化合物は、ホウ素原子に対して窒素原子が配位した構造であることに加え、上記式(1)で表される剛直な環構造を有することにより、高い安定性を有する化合物である。また、本発明のホウ素含有化合物は、各種溶剤への溶解性が良好であり、塗布等により良好な塗膜を容易に形成することができるものである。更に、本発明のホウ素含有化合物は、ホウ素上の置換基が特定の環構造であるため、LUMOのエネルギー準位が低くなり、有機EL素子としての性能に優れると考えられる。
先ず、上記式(1)におけるY以外の構造部分について説明する。
【0017】
上記式(1)において、点線の円弧は、ホウ素原子又は実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表している。該実線で表される骨格部分は、該実線に沿って点線が併記されている部分である。該環構造は2つあり、該環構造のそれぞれを、本明細書中、Rが結合している環、Rが結合している環と呼ぶ。
上記式(1)において、実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。
【0018】
上記式(1)において、窒素原子からホウ素原子への矢印は、窒素原子がホウ素原子へ配位していることを表す。ここで、配位しているとは、窒素原子がホウ素原子に対して配位子と同様に作用して化学的に影響していることを意味する。
【0019】
上記式(1)において、Qは、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しているものであって、置換基を有していてもよい。これは、Qが、該環構造の一部として組み込まれていることを表している。
上記式(1)におけるQとしては、下記一般式(2−1)〜(2−8);
【0020】
【化3】
【0021】
で表される構造が挙げられる。なお、一般式(2−2)は、実線で結ばれる一対の炭素原子(C−C)に水素原子が2つ結合し、更に3つの原子が結合する構造であるが、当該水素原子以外の、該一対の炭素原子に結合する3つの原子は、いずれも水素原子以外の原子である。上記一般式(2−1)〜(2−8)の中でも、式(2−1)、式(2−7)、式(2−8)のいずれかが好ましい。より好ましくは、式(2−1)である。すなわち、Qが、炭素数1の連結基を表すこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0022】
上記式(1)において、Rが結合している環は、芳香族性を有しない環であってもよいが、芳香環であることが好ましい。また、Rが結合している環は、1つの環から構成される単環構造であってもよいが、複数の環から構成される縮環構造であることが好ましく、例えば後述する式(5)で表されるホウ素含有化合物のように、少なくとも3つの環から構成される縮環構造であることがより好ましい。更に、Rが結合している環は、環内にホウ素原子以外のヘテロ元素を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0023】
上記式(1)において、Rが結合している環は、芳香族性を有しない含窒素複素環であってもよいが、本発明のホウ素含有化合物を安定化し、電子デバイス用材料として優れた性能を発現する観点から、含窒素芳香族複素環であることが好ましい。該含窒素芳香族複素環としては、例えば、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、フェナントリジン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環が挙げられる。これらはそれぞれ、下記一般式(3−1)〜(3−17)で表される。なお、下記一般式(3−1)〜(3−17)中の*印は、Rと結合する炭素原子が、*印の付された炭素原子のいずれか1つと結合することを表している。また、式(3−1)〜(3−17)で表される環は、*印の付された炭素原子を除く位置で他の環構造と縮環していてもよい。これらの中でも、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、フェナントリジン環のように6員環を含む含窒素複素芳香族環が好ましい。Rが結合している環は、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、又は、キノリン環であることがより好ましく、ピリジン環であることが更に好ましい。
【0024】
【化4】
【0025】
上記式(1)において、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、環構造の置換基となる1価の置換基、2価の基、又は、直接結合を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子、1価の置換基、2価の基、又は、直接結合を表す。R、Rにおける環構造の置換基となる1価の置換基、R、Rにおける1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、置換基を有していてもよいアリール基、芳香族複素環由来の1価の基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、シリル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、チオール基、エポキシ基、アシル基、置換基を有していてもよいオリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アゾ基、スタニル基、置換基を有していてもよいアリールホスフィノ基、置換基を有していてもよいアルキルホスフィノ基、アリールホスフィニル基、置換基を有していてもよいアルキルホスフィニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルフィニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルフィニル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基;メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基等のアルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基等のアリールスルホニルオキシ基;ベンジルスルホネート基等のアリールアルキルスルホニルオキシ基、ボリル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アリールスルホネート基、アルデヒド基、アセトニトリル基等が挙げられる。
【0026】
上記式(1)において、RとRとは、互いに結合して二重線で表される骨格部分と共に環構造を形成していない。該環構造は、その骨格部分に配位結合を有するものを含む。
【0027】
上記のものの中でも、R、R、R、Rとしては、水素原子;ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオール基、エポキシ基、アミノ基、アゾ基、アシル基、アリル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、シアノ基、シリル基、スタニル基、ボリル基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等の反応性基;炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基;アリール基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アリール基;オリゴアリール基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、オリゴアリール基;1価の複素環基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、1価の複素環基;1価のオリゴ複素環基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、1価のオリゴ複素環基;アリールオキシ基;アリールチオ基;アリールアルキル基;アリールアルコキシ基;アルケニル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アルケニル基;アルキニル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アルキニル基;アルキルアミノ基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アルキルアミノ基;アリールアミノ基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アリールアミノ基;アリールホスフィノ基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アリールホスフィノ基;アリールホスフィニル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アリールホスフィニル基;アリールスルホニル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルコキシ基、アリール基、複素環基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基又は該反応性基で置換された、アリールスルホニル基のいずれかが好ましい。
としては、上記式(1)において二重線で表される骨格部分の炭素原子に直接結合する原子が酸素原子以外の原子であることが更に好ましい。
、R、R、Rとしては、特に好ましくは、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シリル基;アルキルアミノ基;アリールアミノ基;ボリル基;スタニル基;炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基;アリール基;オリゴアリール基;1価の複素環基;1価のオリゴ複素環基;アリールホスフィニル基;アリールスルホニル基のいずれかである。
【0028】
上記R、R、R、Rにおける2価の基としては、例えば、上述した1価の置換基から水素原子が1つ脱離したものを使用できる。
、Rは、同一又は異なって、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。また、上記1価の置換基の環構造に対する結合位置は、特に制限されない。
【0029】
上記式(1)において、R、R、及び、Rの少なくとも1つが、環構造の置換基となる電子輸送性の1価の置換基を表すことが好ましい。R、R、Rとして電子輸送性の置換基を有することで、本発明のホウ素含有化合物は、電子輸送性に優れた材料となる。中でも、R及びRの少なくとも1つが電子輸送性の1価の置換基を有することがより好ましい。
上記電子輸送性の1価の置換基は、芳香環を有することが好ましい。例えば、R及びRの少なくとも1つが、芳香環を有する1価の置換基を表すことが好ましい。芳香環を有する1価の置換基としては、例えば、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環等の環内に炭素−窒素二重結合(C=N)を有する窒素原子含有複素環由来の1価の基;一つ以上の電子求引性置換基を有するベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環等の環内に炭素−窒素二重結合を有しない芳香族炭化水素環または芳香族複素環由来の1価の基;ジベンゾチオフェンジオキシド環、ジベンゾホスホールオキシド環、シロール環等が挙げられる。
なお、上記電子求引性置換基としては、−CN、−COR、−COOR、−CHO、−CF、−SOPh、−PO(Ph)等が挙げられる。ここで、Rは、水素原子又は1価の炭化水素基を表す。
上記電子輸送性の1価の置換基は、中でも、環内に炭素−窒素二重結合を有する窒素原子含有複素環由来の1価の基、環内に炭素−窒素二重結合を有しない芳香族複素環由来の1価の基のように、芳香族複素環を有することが好ましい。
これらの中でも、電子輸送性の1価の置換基は、環内に炭素−窒素二重結合を有する窒素原子含有芳香族複素環を有することがより好ましい。該環内に炭素−窒素二重結合を有する窒素原子含有芳香族複素環は、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環であることが好ましく、ピリジン環であることがより好ましい。
本発明のホウ素含有化合物の電子移動度を高める観点からは、上記式(1)において、Rが結合している環は、含窒素芳香族複素環であり、Rが、芳香環を有する1価の置換基を表すことが特に好ましい。中でも、Rが結合している環は、ピリジン環であり、Rが、ベンゼン環を表すことが最も好ましい。
【0030】
上記R、R、R及びRにおける置換基(R、R、R及びRが表す基の置換基)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;塩化メチル基、臭化メチル基、ヨウ化メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ヒドロキシ基;チオール基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;アゾ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜40のアルキル基を有するモノ又はジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基等のアリールアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、フェニルエチニル基等の炭素数2〜20のアルキニル基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、ピレニルオキシ基等のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロフェニル基等のパーフルオロ基及び更に長鎖のパーフルオロ基;ジフェニルボリル基、ジメシチルボリル基、ビス(パーフルオロフェニル)ボリル基、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラニル基等のボリル基;アセチル基、ベンゾイル基等のカルボニル基;アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基等のスルホニル基;アルキルスルホニルオキシ基;アリールスルホニルオキシ基;ホスフィノ基;ジエチルホスフィニル基、ジフェニルホスフィニル基等のホスフィニル基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリフェニルシリル基等のシリル基;シリルオキシ基;スタニル基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基等で置換されていてもよい、フェニル基、2,6−キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、フェナンスレニル基等のアリール基(置換されていてもよい芳香族炭化水素環基);ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基等で置換されていてもよい、チエニル基、フリル基、シラシクロペンタジエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、アクリジニル基、キノリル基、キノキサロイル基、フェナンスロリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基等のヘテロ環基(置換されていてもよい芳香族複素環基);カルボキシル基;カルボン酸エステル基;エポキシ基;イソシアノ基;シアネート基;イソシアネート基;チオシアネート基;イソチオシアネート基;カルバモイル基;N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基等のN,N−ジアルキルカルバモイル基;ホルミル基;ニトロソ基;ホルミルオキシ基;等が挙げられる。
中でも、上記R、R、Rにおける置換基が、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基といった芳香環を有する基であることが好ましい。
例えば、上記式(1)におけるR、R及びRの少なくとも1つが、上記芳香族炭化水素環や芳香族複素環を構成する炭素原子の1つに更に芳香環が結合したものであることが好ましい。該芳香族炭化水素環や芳香族複素環を構成する炭素原子の1つに更に結合した芳香環としては、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられる。該芳香族炭化水素環基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオレニル基が好ましい。該芳香族複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、ピリミジル基、チアゾール基、イミダゾール基が好ましい。
なお、上述した置換基は、ハロゲン原子やアルキル基、アリール基、ヘテロ環基等で更に置換されていてもよく、例えば炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、フェニル基、又は、ピリジル基で置換されていることが好ましい。更に、これらの置換基がお互いに任意の場所で結合して環を形成していてもよい。
【0031】
以下では、上記式(1)におけるY、n、nについて説明する。
上記nは、1〜4の整数である。nは、0又は1である。nが1の場合、Yは、n価の連結基、又は、直接結合を表し、n個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、R、R、R、又は、Rのいずれか1箇所で結合していることを表す。
【0032】
上記式(1)において、nが1である場合、nは0であり、上記式(1)におけるY以外の構造部分のみからなる化合物となる。
本発明のホウ素含有化合物の熱安定性を向上する観点からは、上記式(1)において、nは、2〜4の整数であり、nは、1であることが好ましい。
上記式(1)において、nが2である場合、上記式(1)におけるY以外の構造部分が2つ存在することになる。ここで、Yが2価の連結基である場合、2つ存在するY以外の構造部分が2価の連結基であるYを介して結合することになる。Yが直接結合である場合、2つ存在するY以外の構造部分が直接結合することになる。
上記式(1)で表される化合物において、nが3以上である場合、Yはn価の連結基であり、上記式(1)におけるY以外の構造部分がn個存在し、それらが連結基であるYを介して結合することとなる。
【0033】
なお、Yがn価の連結基である場合、Yはn個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、R、R、R、又は、Rのいずれか1箇所で結合しているが、これは、Y以外の構造部分のYとの結合部位は、n個存在するY以外の構造部分それぞれに独立であって、全て同一部位であってもよいし、一部が同一部位であってもよいし、全て異なる部位であってもよい、ということを意味している。当該結合位置は特に制限されないが、n個存在するY以外の構造部分の全てが、R、R、又は、Rで結合していることが好ましい。
また、n個存在するY以外の構造部分の構造は、全て同一であってもよいし、一部が同一であってもよいし、全て異なっていてもよい。
【0034】
上記式(1)におけるYが、n価の連結基である場合、該連結基としては、例えば、置換基を有していてもよい鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、置換基を有していてもよいヘテロ元素を含む基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基が挙げられる。これらの中でも、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基といった芳香環を有する基であることが好ましい。すなわち、上記式(1)におけるYは、芳香環を有するn価の連結基を表すこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
更に、Yは、上述した連結基が複数組み合わさった構造を有する連結基であってもよい。
【0035】
上記鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基としては、下記一般式(4−1)〜(4−8)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記一般式(4−1)、(4−7)がより好ましい。
上記へテロ元素を含む基としては、下記一般式(4−9)〜(4−13)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記一般式(4−12)、(4−13)がより好ましい。
【0036】
上記芳香族炭化水素環基としては、下記一般式(4−14)〜(4−20)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記一般式(4−14)、(4−19)、(4−20)がより好ましい。
【0037】
上記芳香族複素環基としては、下記一般式(4−21)〜(4−33)のいずれかで表される基であることが好ましい。これらの中でも、下記一般式(4−24)、(4−32)がより好ましい。
【0038】
【化5】
【0039】
上記鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、ヘテロ元素を含む基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が有する置換基としては、上述した式(1)において、上記R、R及びRが有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、Yにおける鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、ヘテロ元素を含む基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、ジアリールアミノ基が好ましい。より好ましくは、アルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、ジアリールアミノ基である。
上記Yにおける鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基、ヘテロ元素を含む基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が置換基を有する場合、置換基が結合する位置や数は特に制限されない。
【0040】
上述したように、上記式(1)において、Rが結合している環は、少なくとも3つの環から構成される縮環構造であることがより好ましい。すなわち、本発明のホウ素含有化合物が、下記式(5);
【0041】
【化6】
【0042】
(式中、点線の円弧は、同一又は異なって、実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表す。Qは、実線で表される骨格部分における連結基であり、少なくとも一部が点線の円弧部分と共に環構造を形成しており、置換基を有していてもよい。R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子、環構造の置換基となる1価の置換基、2価の基、又は、直接結合を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。nが1の場合、Yは、n価の連結基、又は、直接結合を表し、n個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、R11、R12、R、R、又は、Rのいずれか1箇所で結合していることを表す。実線で表される骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印、Q、R、R、R、n、及び、nは式(1)と同様である。)で表されることがより好ましい。
【0043】
上記式(5)において、点線の円弧は、実線で表される骨格部分と共に環構造が形成されていることを表している。該実線で表される骨格部分は、該実線に沿って点線が併記されている部分である。該環構造は3つあり、該環構造のそれぞれを、本明細書中、R11が結合している環、R12が結合している環、Rが結合している環と呼ぶ。
上記式(5)において、実線で表される骨格部分における点線部分は、点線で結ばれる1対の原子が二重結合で結ばれていてもよいことを表す。
【0044】
上記式(5)において、R11、R12が結合している環は、芳香族性を有しない環であってもよいが、本発明のホウ素含有化合物を安定化する観点から、芳香族炭化水素環、芳香族複素環等の芳香環であることが好ましい。該芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、トリフェニレン環、ピレン環、フルオレン環、インデン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、インドール環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環が挙げられ、これらはそれぞれ、下記式(6−1)〜(6−32)で表される。これらの中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾチオフェン環が好ましい。より好ましくは、ベンゼン環である。
【0045】
【化7】
【0046】
上記式(5)において、Rが結合している環は、上述した式(1)のRが結合している環と同様である。
上記式(5)において、R11及びR12は、それぞれ、上述した式(1)のRと同様である。
上記式(5)において、Qは、上述した式(1)のQと同様である。例えば、上記Q及びQの少なくとも一方が、炭素数1の連結基を表すことが好ましい。
【0047】
なお、上記式(5)において、Yがn価の連結基である場合、Yはn個存在するY以外の構造部分とそれぞれ独立に、R11、R12、R、R、又は、Rのいずれか1箇所で結合しているが、これは、Y以外の構造部分のYとの結合部位は、n個存在するY以外の構造部分それぞれに独立であって、全て同一部位であってもよいし、一部が同一部位であってもよいし、全て異なる部位であってもよい、ということを意味している。当該結合位置は特に制限されないが、n個存在するY以外の構造部分の全てが、R、R、又は、Rで結合していることが好ましい。
また、n個存在するY以外の構造部分の構造は、全て同一であってもよいし、一部が同一であってもよいし、全て異なっていてもよい。
【0048】
本発明のホウ素含有化合物が、下記式(7−1)〜(7−3);
【0049】
【化8】
【0050】
(式中、窒素原子からホウ素原子への矢印、点線の円弧、実線で表される骨格部分における点線部分、Q、R11、R12、R、R、R、及び、Yは式(5)と同様である。)のいずれかで表されるホウ素含有化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。これにより、熱安定性が向上する。中でも、本発明のホウ素含有化合物が、上記式(7−2)で表されることがより好ましい。
【0051】
本発明のホウ素含有化合物は、例えば、特許第5553149号公報に記載の方法に基づいて製造することができる。すなわち、下記反応式で示されるように、式(I)で表されるアルキン化合物を出発物質とし、これをハロゲン化ホウ素化合物BXと反応させて式(II)で表されるアルケン化合物を得、更に、これを式(i)又は式(ia)で表されるマグネシウム元素含有化合物と反応させて、式(III)又は式(IIIa)で表される化合物を製造する。なお、この環化する反応は、特願2013−202578号に記載の方法と同様の方法を用いている。この式(III)又は式(IIIa)で表される化合物が有するハロゲン原子Xを、t−BuLi等のリチオ化剤でハロゲン−リチウム交換を行い、求電子剤と反応させることにより水素原子や1価の置換基に置換したり、特許第5553149号公報に記載されるように水素原子又は1価の置換基に置換したりして、式(1)又は式(5)で表される本発明のホウ素含有化合物を得ることができる。また、下記反応式中、Xは、同一又は異なって、ヨウ素原子、臭素原子、又は、塩素原子を表す。点線の円弧は、式(i)で表されるマグネシウム元素含有化合物以外の化合物では、上述した式(1)と同様であり、式(i)で表されるマグネシウム元素含有化合物では、式(III)で表される化合物のホウ素原子と共に環構造を形成している点線の円弧の構造部位と対応しており、該構造部位と結合している末端の2つのMgXが、互いに結合して環構造を形成しておらず、式(III)で表される化合物のホウ素原子と入れ替わるものである。また、実線で表される骨格部分における点線部分、窒素原子からホウ素原子への矢印、Q、R、R、R、R、Y、n、及び、nは、上述した式(1)と同様である。Q、R11、R12は、上述した式(5)と同様である。式(1)又は式(5)におけるR2aは、式(III)又は式(IIIa)におけるRと同一であってもよいが、式(III)又は式(IIIa)におけるRが例えばハロゲン原子Xを表す場合は、これが水素原子や1価の置換基に置換されて、式(1)又は式(5)におけるRと同一となっていてもよい。
【0052】
【化9-1】
【0053】
【化9-2】
【0054】
また本発明のホウ素含有化合物は、上述した式(III)又は式(IIIa)で表される化合物であって、単量体(nが1、nが0である単量体)であるものを二量体化して得ることも可能である。例えば、本発明のホウ素含有化合物は、下記反応式により得ることができる。
【0055】
【化10】
【0056】
また本発明のホウ素含有化合物は、上記単量体を用いて下記反応式により得ることも可能である。なお、下記反応式で用いられるYやRXは、従来公知の方法で得ることができる。
【0057】
【化11】
【0058】
<本発明のホウ素含有化合物の特性>
本発明のホウ素含有化合物は、安定な化合物でありながら、HOMO、LUMOのエネルギー準位が低く、また、良好な膜、特には塗布膜、を作製することが可能なものであり、有機EL素子材料やn型半導体等の有機電子デバイス材料等として好適に用いることができるものである。
【発明の効果】
【0059】
本発明のホウ素含有化合物は、上述の構成よりなり、安定な化合物でありながら、HOMO、LUMOのエネルギー準位が低い等の特性を有し、更に、塗布により塗膜を形成することができることから、有機EL素子材料やn型半導体等の有機電子デバイス材料等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「モル%」を意味するものとする。
【0061】
実施例において合成した化合物についての各種測定は、以下のように行った。
H−NMR測定)
試料をテトラメチルシランを含有する重クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴装置(Varian600MHz)により測定した。
【0062】
(LUMOエネルギー準位評価)
電気化学測定システムALS電気化学アナライザー605B(ビー・エー・エス株式会社製)を用いて、試料を過塩素酸テトラブチルアンモニウムの0.1Mテトラヒドロフラン(THF)溶液、またはジクロロメタン(CHCl)溶液に溶解させ、作用極に活性炭電極、対極に白金電極、参照極にAg/Agを用いた三電極セルにてサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。走査範囲は1.5V〜3.0Vで、走査速度は100mV/sとした。
【0063】
実施例1
【0064】
【化12】
【0065】
3つ口フラスコにマグネシウム(1.23g,50.5mmol)を入れ反応容器内を窒素雰囲気下にした後、ジエチルエーテル(50mL)を入れ、ヨウ素をひとかけら投入し、着色がなくなるまで撹拌した。これに2,2’−ジブロモビフェニル(7.5g,24mmol)を加え、室温で10時間、50℃で1時間撹拌しグリニャール(Grignard)試薬を調整した。この反応溶液にトルエン(204mL)を入れ、−78℃に冷却後、ホウ素含有化合物1(8.8g,20.4mmol)を加えた。室温まで昇温し、終夜撹拌した。水で反応を停止させ、2N塩酸を加えた後、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、粗生成物を得た。この粗生成物をトルエンから再結晶することにより、目的のホウ素含有化合物2を2.72g(6.4mmol,収率32%)得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=8.02(t,J=7.9Hz,1H),7.95(td,J=1.0,8.2Hz,1H),7.73−7.69(m,3H),7.44−7.34(m,2H),7.31−7.23(m,2H),7.15−7.11(m,3H),7.08(ddd,J=1.3,5.8,7.3Hz,1H),7.06−7.02(m,4H).
【0066】
【化13】
【0067】
100mL2つ口フラスコにホウ素含有化合物2(2.72g,6.4mmol)、1,4−フェニレンジボロン酸(480mg,2.9mmol)、Pd(PBu(160mg,0.32mmol)を入れ、窒素雰囲気下にした後、THF(32mL)を入れて溶解させた。この反応溶液にリン酸三カリウム(2.50g,11.8mmol)の水溶液(6mL)を加え、還流させながら2日間撹拌した。室温まで放冷し、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過した。濾液を濃縮し、得られる残渣にトルエンを加えて濾過して白色固体Aを得た。濾液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して白色固体Bを得た。白色固体Aと白色固体Bを合わせてトルエンから再結晶し、ホウ素含有化合物3を590mg(0.78mmol,収率27%)得た。
CV測定によるホウ素含有化合物3の還元電位(E1/2)は、−2.26Vであり、有機EL用電子輸送材料等としてLUMOのエネルギー準位が充分に低いことを示唆している。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=7.87(ddd,J=1.5,7.2,8.4Hz,2H),7.81−7.71(m,6H),7.58−7.47(m,6H),7.30(t,J=7.5Hz,4H),7.14(d,J=6.7Hz,4H),7.09−6.93(m,16H).
【0068】
実施例2
【0069】
【化14】
【0070】
シュレンクフラスコにホウ素含有化合物2(422mg,1.0mmol)を入れ、反応容器内を窒素雰囲気下にした後、THF(5.0mL)を入れ溶解させた。これを−78℃に冷却し、t−BuLi(1.61M,ペンタン溶液,1.24mL,2.0mmol)をゆっくり加えた。−78℃で2時間撹拌後、水を数滴加え、撹拌しながら室温まで昇温した。
1時間後、水を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過して濃縮し、残渣をシリカゲルショートカラムに通した。集めた溶液を濃縮し、得られる白色固体をメタノールで洗浄し、ホウ素含有化合物4を209mg(0.61mmol,61%)得た。
CV測定によるホウ素含有化合物4の還元電位(E1/2)は、−2.22Vであり、有機EL用電子輸送材料等としてLUMOのエネルギー準位が充分に低いことを示唆している。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=7.84−7.80(m,1H),7.79(d,J=7.3Hz,2H),7.64(d,J=5.6Hz,1H),7.56(d,J=8.2Hz,1H),7.40(s,1H),7.32−7.26(m,4H),7.15−7.07(m,3H),7.04−7.00(m,2H),7.00−6.96(m,2H),6.92(ddd,J=1.2,5.9,7.3Hz,1H).
【0071】
実施例3
【0072】
【化15】
【0073】
100mL2つ口ナスフラスコに、ホウ素含有化合物2(3.1g,7.2mmol)を入れ、反応容器内を窒素雰囲気下にした後、THF(36mL)を加え、−78℃に冷却した。
この溶液にt−BuLi(1.61Mペンタン溶液,9.0mL,14.5mmol)をゆっくり加え、1時間撹拌した。2−メトキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(3.5mL、21.7mmol)を加え、−78℃で1時間撹拌後、室温まで昇温し終夜撹拌した。
この反応溶液に水を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を濃縮し得られた残渣をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルショートカラムに通した後、溶液を濃縮した。残渣にヘキサンを加え、析出する固体を濾取し、ホウ素含有化合物5を1.6g(3.1mmol,47%)得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=8.01(d,J=8.4Hz,1H),7.83(dt,J=(8.2,7.4,1.6,1.2Hz,1H),7.67(d,J=7.6Hz,2H),7.62(d,J=5.6Hz,1H),7.19−7.23(m,2H),6.97−7.09(m,9H),6.92(t,J=6.6Hz,1H).
【0074】
【化16】
【0075】
100mL2つ口ナスフラスコにホウ素含有化合物5(2.2g,4.6mmol)、6,6’−ジブロモ−2,2’−ビピリジン(0.60g,1.9mmol)、Pd(PBu(78mg,0.15mmol)を入れ、反応容器内を窒素雰囲気下にした後、THF(24mL)を入れ、溶解させた。これにKPO水溶液(1.70g,8.0mmol,4mL)を加え、還流させながら終夜加熱撹拌した。室温まで放冷後、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。
濾液を濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルショートカラムに通した。溶液を濃縮し得られた組生成物をトルエンから再結晶し、ホウ素含有化合物6を420mg(0.50mmol,26%)得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=8.49(d,J=7.6Hz,2H),8.25(d,J=8.4Hz,2H),7.91(t,J=7.2,6.8Hz,2H),7.79(d,J=5.6Hz,2H),7.69−7.74(m,6H),7.16−7.29(m,10H),7.05−7.09(m,6H),6.91−6.99(m,10H).
CV測定によるホウ素含有化合物6の還元電位(Epc)は、−2.32Vであり、有機EL用電子輸送材料等としてLUMOのエネルギー準位が充分に低いことを示唆している。
【0076】
実施例4
【0077】
【化17】
【0078】
200mL2つ口ナスフラスコに1,4−ジブロモベンゼン(6.4g,26.9mmol)、Pd(PPh(519mg,0.45mmol)を入れ、反応容器内を窒素雰囲気下にした。これにトルエン(67mL)を入れて溶解させた後、6−(トリブチルスタニル)−2,2’−ビピリジン(4.0g,9.0mmol)を加え、還流させながら終夜加熱撹拌した。室温まで放冷した後、反応溶液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、6−(4−ブロモフェニル)−2,2’−ビピリジンを2.2g(7.0mmol,78%)得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=8.69−8.70(m,1H),8.60(d,J=8.0Hz,1H),8.39(dd,J=8.0,0.8Hz,1H),8.03(d,J=8.4Hz,2H),7.83−7.91(m,2H),7.74(dd,J=8.4,1.2,0.8Hz,1H),7.63(d,J=8.8Hz,2H),7.32−7.35(m,1H).
【0079】
【化18】
【0080】
100mL2つ口ナスフラスコにホウ素含有化合物5(2.0g,4.2mmol)、6−(4−ブロモフェニル)−2,2’−ビピリジン(0.93g,3.0mmol)、Pd(PBu(77mg,0.15mmol)を入れ、反応容器内を窒素雰囲気下にした後、THF(30mL)を入れ、溶解させた。これにKPO水溶液(1.78g,8.4mmol,4.2mL)を加え、還流させながら終夜加熱撹拌した。室温まで放冷後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。
濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しホウ素含有化合物7を460mg(0.80mmol,27%)得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=7.72(d,J=4.0Hz,1H),8.68(d,J=7.6Hz,1H),8.42(d,J=7.6Hz,1H),8.28(d,J=7.6Hz),7.73−7.95(m,7H),7.57(dd,J=6.8,2.0Hz,2H),7.49(d,J=8.0Hz,1H),7.35(t,J=6.4,6.0Hz,1H),7.26−7.30(m,2H),7.15(d,J=6.8Hz,2H),7.08(t,J=7.2,6.8Hz,2H),6.86−6.99(m,6H).
CV測定によるホウ素含有化合物7の還元電位(Epc)は、−2.40Vであり、有機EL用電子輸送材料等としてLUMOのエネルギー準位が充分に低いことを示唆している。
【0081】
実施例5
【0082】
【化19】
【0083】
3つ口フラスコに5―ブロモ−2−(フェニルエチニル)ピリジン(7.75g,30mmol)を入れ、反応容器内を窒素雰囲気下にした後、ジクロロメタン(150mL)を入れ、−78℃に冷却した。三臭化ほう素の1.0Mジクロロメタン溶液(45mL,45mmol)をゆっくりと滴下し、−78℃で1時間撹拌した後、室温で終夜撹拌した。0℃にて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し濾過した。濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでホウ素含有化合物8を11.0g(21.6mmol,収率72%)得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=8.96(d,J=1.8Hz,1H),8.30(d,J=8.7Hz,1H),8.09(d,J=7.5Hz,2H),7.74(d,J=8.5Hz,1H),7.52−7.41(m,3H).
【0084】
【化20】
【0085】
3つ口フラスコにマグネシウム(1.64g,67.3mmol)を入れ反応容器内を窒素雰囲気下にした後、ジエチルエーテル(64mL)を入れ、ヨウ素をひとかけら投入し、着色がなくなるまで撹拌した。1,2-ジブロモエタン(0.1mL)を加えさらに30分撹拌した。これに2,2’−ジブロモビフェニル(10.0g,32.1mmol)を加え、室温で終夜撹拌後、45℃で1時間撹拌しGrignard試薬を調整した。この反応溶液にトルエン(270mL)を入れ、−78℃に冷却後、ホウ素含有化合物8(14.7g,28.9mmol)を加えた。室温まで昇温し、終夜撹拌した。水で反応を停止させ、2N塩酸を加えた後、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより目的のホウ素含有化合物9を7.2g(14.4mmol,収率50%)得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=8.09(dd,J=2.1,8.8Hz,1H),7.84(d,J=8.8Hz,1H),7.78(d,J=1.5Hz,1H),7.73(d,J=7.6Hz,2H),7.43−7.34(m,2H),7.29(dt,J=1.5,7.3Hz,1H),7.27(s,1H),7.16−7.11(m,3H),7.10−7.01(m,4H).
【0086】
【化21】
【0087】
2つ口フラスコに、4−メトキシフェニルボロン酸(364mg,2.4mmol)、ホウ素含有化合物9(501mg,1.0mmol)、Pd(PBu(26mg,0.05mmol)を入れ、反応容器内を窒素雰囲気下にした。これにTHF(12mL)、KPO水溶液(2.0M,2.9mL,5.8mmol)を入れ、還流させながら終夜加熱撹拌した。室温まで放冷後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過して濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルショートカラムに通して溶出液を濃縮した後、この残渣にメタノールを加え、析出した固体を濾取し、ホウ素含有化合物10を400mg(0.72mmol,72%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=7.93(dd,J=8.6,2.0,1.6Hz,1H),7.81(dd,J=2.0,0.8Hz,1H),7.74(d,J=7.6Hz,2H),7.45(d,J=8.8Hz,1H),7.34(dd,J=6.6,2.4,2.0Hz,2H),7.21−7.25(m,4H),7.13(d,J=6.4Hz,2H),6.98−7.06(m,4H),6.84−6.90(m,7H).
CV測定によるホウ素含有化合物10の還元電位(Epc)は、−2.27Vであり、有機EL用電子輸送材料等としてLUMOのエネルギー準位が充分に低いことを示唆している。
【0088】
実施例6
【0089】
【化22】
【0090】
300mL3つ口フラスコにマグネシウム(943mg,38.8mmol)を入れ反応容器内を窒素雰囲気下にした後、ジエチルエーテル(35mL)を入れ、ヨウ素をひとかけら投入し、色がなくなるまで撹拌した。さらに1,2−ジブロモエタン(0.1mL)を加え、30分撹拌した。これに2,2’−ジブロモビフェニル(5.5g,17.6mmol)を加え、室温で15時間、50℃で2時間撹拌しGrignard試薬を調製した。この反応溶液にトルエン(160mL)を入れ、−78℃に冷却後、ホウ素含有化合物11(7.30g,15.2mmol)を加えた。室温まで昇温し、6時間撹拌した後、水と3N塩酸を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ濾過した。濾液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、ホウ素含有化合物12を3.93g(8.32mmol,収率52%)得た。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=8.52(d,J=8.8Hz,1H),8.19(d,J=8.8Hz,1H),7.87(d,J=8.1Hz,1H),7.78(d,J=7.6Hz,2H),7.40(dt,J=1.0,7.4Hz,1H),7.37−7.32(m,1H),7.32−7.29(m,1H),7.29−7.25(m,2H),7.16−7.11(m,2H),7.11−7.06(m,3H),7.03−6.93(m,4H).
【0091】
【化23】
【0092】
内部を窒素雰囲気下にした100mL2つ口ナスフラスコに、塩化亜鉛のTHF溶液(0.5M,6.0mL,3.0mmol)とTHF(10mL)を入れ、4−メチルフェニルマグネシウムブロミドのTHF溶液(1.0M,3.0mL,3.0mmol)を0℃にてゆっくり加えた後、室温で1時間撹拌し、塩化4−メチルフェニル亜鉛を調製した。これにホウ素含有化合物12(944mg,2.0mmol)とPd(PBu(51mg,0.10mmol)を加えた。室温で20時間撹拌後、50℃で4時間撹拌した。この反応溶液を室温まで放冷後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過して濾液を濃縮した。残渣にメタノールを加えて析出固体を濾取し、目的のホウ素含有化合物13を643mg(1.33mmol,66%)得た。
CV測定によるホウ素含有化合物13の還元電位(E1/2)は、−1.86Vであり、有機EL用電子輸送材料等としてLUMOのエネルギー準位が充分に低いことを示唆している。
H−NMR(600MHz,CDCl):δ=8.25(d,J=8.8Hz,1H),7.81(d,J=7.6Hz,2H),7.74−7.77(m,1H),7.60(d,J=8.8Hz,1H),7.23−7.33(m,9H),6.97−7.04(m,4H),6.79−6.89(m,3H),6.71−6.73(m,2H),2.42(s,3H).