特許第6654485号(P6654485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社TOZENの特許一覧

<>
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000002
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000003
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000004
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000005
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000006
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000007
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000008
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000009
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000010
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000011
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000012
  • 特許6654485-吊下げ式防振具 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654485
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】吊下げ式防振具
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20200217BHJP
   F16F 15/067 20060101ALI20200217BHJP
   F16B 41/00 20060101ALI20200217BHJP
   F24F 1/0047 20190101ALI20200217BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20200217BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   F16F15/08 M
   F16F15/067
   F16B41/00 B
   F24F1/0047
   F24F13/20
   F16B1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-61343(P2016-61343)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-172746(P2017-172746A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】502173361
【氏名又は名称】株式会社TOZEN
(74)【代理人】
【識別番号】100080115
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 和壽
(72)【発明者】
【氏名】室井 仁志
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 孝浩
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−127438(JP,A)
【文献】 特開2013−096650(JP,A)
【文献】 特開2008−020170(JP,A)
【文献】 特開2013−064427(JP,A)
【文献】 特開2014−055714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
F16B 41/00
F16F 15/067
F24F 1/0047
F24F 13/20
F16B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調室内機などの振動機器の側面に取り付けられる金具本体と、該金具本体の上端部から水平に屈曲して延びる取付片と、該取付片の先端部から下方に屈曲して延びる折曲片とを有し、前記折曲片の下端から取付片の中央部に至る吊りボルト用の取付用切欠溝が形成され、該取付用切欠溝に吊りボルトが取り付けられる振動機器用の耳金に装着される吊下げ式防振具であって、
前記耳金の取付片に水平方向から挿入して装着される脱落防止部材と、該部材に吊りボルトを挿通可能に設けられて振動機器の振動を吸収する筒状の防振材と、を備え、
前記脱落防止部材は、所定の間隔で平行に対向する矩形状の第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部と、この第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部の短辺の一方の端部を接続する接続部と、を有し、断面略コ字状に形成されており、第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部の相対向する位置に吊りボルトを挿通する穴が形成され、前記筒状の防振材が前記脱落防止部材に第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部のいずれかの水平プレート部の穴と同心状に設けられていることを特徴とする吊下げ式防振具。
【請求項2】
防振材は、その上部が弾性樹脂又は弾性ゴムからなっている請求項1に記載の吊下げ式防振具。
【請求項3】
防振材が設けられる側の水平プレート部の穴の周りに凹所が形成され、該凹所に防振材の上部が該穴を経て受け入れられている請求項2に記載の吊下げ式防振具。
【請求項4】
脱落防止部材の第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部に形成された穴は、同心状の円形の穴である請求項1ないし3のいずれかに記載の吊下げ式防振具。
【請求項5】
防振材は、コイルスプリング、筒型ゴム、ゴムブッシュのいずれかである請求項1ないし4のいずれかに記載の吊下げ式防振具。
【請求項6】
防振材が上部を凹所に受け入れられた状態で該上部の頂面は脱落防止部材の、防振材が設けられる側の水平プレート部の内面とほぼ面一となっている請求項1ないし5のいずれかに記載の吊下げ式防振具。
【請求項7】
脱落防止部材の第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部のいずれかに耳金への装着時に耳金の取付片に挿入されると該取付片をフィット可能に押さえる押さえ片が設けられている請求項1ないし6のいずれかに記載の吊下げ式防振具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吊下げ式防振具に関し、さらに詳しくは空調室内機などの振動機器を吊下げる吊下げボルトに介装されて振動機器の振動の伝播を防止する防振具であって、吊りボルトへの取り付け施工を迅速、かつスムーズに行えるとともに、脱落防止も確実に行えて、安全性の高い防振具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
天井に設置する空調室内機などの振動機器は、吊りボルトに該振動機器の側面に取り付けた耳金を引っ掛けて吊り下げる構造になっている。この耳金には丸穴と比べて施工性を考慮した切り欠き溝と、その切り欠き溝から吊りボルトが脱落するのを防止する折り返しがある。
【0003】
前記のような構造の耳金の場合、直接吊りボルトをナットで固定する場合は支障ないが、振動による影響を低減させるためゴム防振材、スプリング防振材などの筒状の防振材を使用することがあり、このような防振材の使用によって該防振材のたわみを利用した防振効果を得られるが、地震時の揺れにより前記折り返しを越えて切り欠き溝から振動機器が吊りボルトごと脱落するという問題があった。
【0004】
このような問題に対する課題解決のための先行技術文献としては、出願人による調査によれば、特開2014−55714号公報(特許文献1)がある。
【0005】
この特許文献1は、脱落防止具に関するもので、その請求項1と図3,4の記載によれば、平行に対向する1対の水平プレート2,3と、前記1対の水平プレートの一端である第1端部同士を接続する接続部4と、前記1対の水平プレートを、それぞれ前記第1端部と反対側に位置する第2端部から第1端部に向かう方向に延びる切欠部5によって、二股に分かつことで形成される分岐板部2a,2bと、前記分岐板部の少なくとも一つに、上下方向に対向する分岐板部に向かって突出して形成される第1の突出部6と、を備え、前記第1の突出部は、前記第2端部から第1端部へ向かう方向に沿って徐々にその突出量を大きくする傾斜を有し、当該傾斜の頂点と上下方向に対向する分岐板部との隙間が、吊り金具80の水平取り付け板80aの板厚より小さく形成され、前記一対の水平プレートは、前記吊り金具の取り付け板80aと折り曲げ片80bとの間に、前記一対の水平プレートで前記吊り金具の水平取り付け板80aを挟み込むように挿入し、前記取付け用切り欠き溝80cの開口部に前記第1の突出部が達することで係止するようになっている(参考に図面符号を付した)。
【0006】
しかし、この脱落防止具では、筒状の防振材を用いるものではなく、直接ボルトナットで取り付けるものであるため0003に記載したような問題が解決できていなかった。また、それに加え、脱落防止のための機構が複雑で、その製作が容易でないとともに、施工性も必ずしもよくないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−55714号公報(請求項1、図3,4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明は、前記従来の問題を解決し、吊りボルトに迅速、かつスムーズに取り付けることができ、施工性を向上させることができるとともに、防振効果を維持しつつ地震時に吊り下げる空調室内機等の振動機器が落下する事故を確実に防ぐことができ安全性の高い吊下げ式防振具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、空調室内機などの振動機器の側面に取り付けられる金具本体と、該金具本体の上端部から水平に屈曲して延びる取付片と、該取付片の先端部から下方に屈曲して延びる折曲片とを有し、前記折曲片の下端から取付片の中央部に至る吊りボルト用の取付用切欠溝が形成され、該取付用切欠溝に吊りボルトが取り付けられる振動機器用の耳金に装着される吊下げ式防振具であって、前記耳金の取付片に水平方向から挿入して装着される脱落防止部材と、該部材に吊りボルトを挿通可能に設けられて振動機器の振動を吸収する筒状の防振材と、を備え、前記脱落防止部材は、所定の間隔で平行に対向する矩形状の第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部と、この第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部の短辺の一方の端部を接続する接続部と、を有し、断面略コ字状に形成されており、第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部の相対向する位置に吊りボルトを挿通する穴が形成され、前記筒状の防振材が前記脱落防止部材に第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部のいずれかの水平プレート部の穴と同心状に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吊下げ式防振具において、防振材は、その上部が弾性樹脂又は弾性ゴムからなっている。請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の吊下げ式防振具において、防振材が設けられる側の水平プレート部の穴の周りに凹所が形成され、該凹所に防振材の上部が該穴を経て受け入れられている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の吊下げ式防振具において、脱落防止部材の第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部に形成された穴は、同心状の円形の穴である。請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の吊下げ式防振具において、防振材は、コイルスプリング、筒型ゴム、ゴムブッシュのいずれかである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の吊下げ式防振具において、防振材が上部を凹所に受け入れられた状態で該上部の頂面は脱落防止部材の、防振材が設けられる側の水平プレート部の内面とほぼ面一となっている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の吊下げ式防振具において、脱落防止部材の第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部のいずれかに耳金への装着時に耳金の取付片に挿入されると該取付片をフィット可能に押さえる押さえ片が設けられている。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の発明によれば、前記耳金の取付片に水平方向から挿入して装着される脱落防止部材と、該部材に吊りボルトを挿通可能に設けられて空調室内機の振動を吸収する筒状の防振材と、を備え、前記脱落防止部材は、所定の間隔で平行に対向する矩形状の第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部と、この第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部の短辺の一方の端部を接続する接続部と、を有し、断面略コ字状に形成されており、第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部の相対向する位置に吊りボルトを挿通する穴が形成され、前記防振材が前記脱落防止部材に第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部のいずれかの水平プレート部の穴と同心状に設けられているので、前記防振材の作用によって確実に防振効果を発揮することができる効果がある。
【0015】
また、耳金に装着する場合、脱落防止部材の第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部をその挿入部から耳金の取付片に挿入して吊りボルトに迅速、かつスムーズに取り付けることができ、施工性を向上させることができる。また、吊りボルトへの取り付け後に地震が発生した場合でも、吊りボルトが耳金の取付用切欠溝から脱落するのを防止することができるので、従来のような地震の揺れによる脱落事故を確実に防止することができる。また、構造も簡素であるため、製作が容易であるのに加え、吊りボルトに対する作業も効率よく行なえ、取り付け作業の省力化を図ることができ、室内空調機などの振動機器の設置コストも下げることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、防振材は、その上部が弾性樹脂又は弾性ゴムからなっているので、脱落防止部材を金属製とした場合にも、金属と樹脂又はゴムとを有機的に組み合わせて結合させることが可能となる。請求項3に記載の発明によれば、防振材が設けられる側の水平プレート部の穴の周りに防振材の上部を該穴を経て受け入れ可能な凹所が形成されているので、凹所への穴からの挿入(圧入)が容易であり、取り扱いが便利なものとなる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、脱落防止部材の第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部に形成された穴は、同心状の円形の穴であり、従来のような切り欠き溝でないので、製作が容易で、コストを下げることができる。請求項5に記載の発明によれば、防振材は、防振材は、コイルスプリング、筒型ゴム、ゴムブッシュのいずれかであるので、必要によって任意の防振材を選択して使用することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、防振材が上部を凹所に受け入れられた状態で該上部の頂面は脱落防止部材の、防振材が設けられる側の水平プレート部の内面とほぼ面一となっているので、脱落防止部材の耳金への挿入による取り付け作業を容易に行うことができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、脱落防止部材の第1の水平プレート部及び第2の水平プレート部のいずれかに耳金への装着時に耳金の取付片に挿入されると該取付片をフィット可能に押さえる押さえ片が設けられているので、耳金への装着時のぐらつきをなくしフィット効果を発揮して安定した取り付け作業を行うことが可能となり、かつ仮り止めの効果も発揮して作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明に係わる吊下げ式防振具の一実施の形態の使用状態を示す全体説明図である。
図2図1のX部を拡大して示す半部破断の正面図である。
図3】同上の平面図である。
図4】同上の防振具を構成する脱落防止部材の正面図である。
図5】同上の脱落防止部材の平面図である。
図6】同上の脱落防止部材の底面図である。
図7】同上の脱落防止部材の側面図である。
図8】同上の脱落防止部材にコイルスプリングを取り付けた状態を示す半部破断の正面図である。
図9】同上の防振材付き脱落防止部材を空調室内機側の耳金に取り付ける作業中の斜視図である。
図10】同上の耳金に取り付けられた脱落防止部材を吊りボルトに取り付ける作業中の分解斜視図である。
図11】防振材の別の例を示す半部破断の正面図である。
図12】防振材のさらに別の例を示す半部破断の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、一実施の形態に係わる吊下げ式防振具の使用状態(取付状態)を示す説明図である。同図において、ACは振動を発生させる振動機器としての室内空調機であり、この室内空調機ACは四隅を構造躯体である上階の床のコンクリートスラブCSに垂下して設けられた吊りボルトBで吊り下げられて支持されている。吊りボルトBは、全ねじボルトが使用されている。Dは天井を示す。
【0023】
図1のX部を拡大して示す図2,3において、1は防振具で、この防振具1は、前述の吊りボルトBに介装され、後述の防振材付き脱落防止部材を介して空調室内機ACを弾性支持することで、該空調室内機から発生する振動のうち、主にその上下振動成分を吸収して、振動がコンクリートスラブCSへ伝播しないように防止する機能を有している。
【0024】
防振具1が取り付けられる空調室内機AC用の耳金Eは、図9にも示すように室内機本体の側面に取り付けられる金具本体E1と、該金具本体の上端から水平に屈曲して延びる取付片E2と、該取付片の先端から下方に屈曲して延びる折曲片E3とを有し、折曲片E3の下端から取付片E2の中央部に至る吊りボルトB用の取付用切欠溝Fが平面視略T字状に形成され、該取付用切欠溝に吊りボルトBが取り付けられるが、それ自体は一般的に用いられているものである。耳金Eの形状において、取付片E2は必ずしも金具本体E1の上端から延びる必要はなく、上端部であれば多少その位置は変更可能である。
【0025】
防振具1は、脱落防止部材2と、筒状の防振材としてのコイルスプリング3とが一体となった構造となっている。すなわち、防振具1は、耳金Eの金具本体E1と折曲片E3との間の取付片E2に水平方向から挿入して装着されて脱落防止機能を有する金属製の脱落防止部材2と、該部材に吊りボルトBを挿通可能に設けられて空調室内機ACの振動を吸収する金属製のコイルスプリング3と、を備えている。
【0026】
脱落防止部材2は、図4〜7に示すように所定の間隔で平行に対向する矩形状の水平プレート部2a及び水平プレート部2bと、この水平プレート部及び水平プレート部の短辺の一方の端部を接続する接続部2cと、を有し、断面略コ字状に形成されている。接続部2cと反対側となる水平プレート部2a及び水平プレート部2bの短辺の他方の端部は開口しており、その開口端は外向きに拡開した挿入部2dに形成されている。挿入部2dを拡開形状に形成しているのは取付片E2への挿入を容易にするためである。この例では、挿入部2dは正面視で水平線に対して片側15°程度の角度で外向きに屈曲して形成されている。また、平面視で水平プレート部2a及び水平プレート部2bの隅角部は長辺の延長線に対して片側15°程度の角度で内向きに屈曲して形成されている。これは角部をなくして作業者が傷つかないようにするためであるが、ほかにアール状に形成してもよい。
【0027】
水平プレート部2a及び水平プレート部2bの中央部に吊りボルトBを挿通する円形の穴5,6がそれぞれ相対向する位置に同心状に形成されている。水平プレート部2b側の穴6が水平プレート部2a側の穴5より大径となっている。さらに、この穴6を挟むようにその両側の穴6の周りの水平プレート部2bの短辺方向には外側に凸となる段差形成部7を一体に形成してなる方形状の凹所8が形成され、該凹所にコイルスプリング3の上部を受け入れ可能になっている。凹所8の凹み深さは、コイルスプリング3が上部を凹所8に受け入れられた状態で該上部の頂面が脱落防止部材2の水平プレート部2bの内面とほぼ面一となるように設定されて形成されている。
【0028】
また、水平プレート部2aの穴5の近くには耳金Eへの装着時に耳金Eの取付片E2に挿入すると該取付片をフィット可能に押さえる押さえ片9が切り起こしにより一体に設けられている。押さえ片9は、水平プレート部2aと接している基端側が該プレート面に対して30°程度の角度で屈曲し、それから延びる先端側が該プレート面とほぼ平行に屈曲した下向き片となっている。この押さえ片9は前記のようなフィット作用のほかに仮り止めの作用もある。なお、押さえ片9と水平プレート部2bとの間隔は挿入する取付片E2の厚さとの関係において適宜好ましい任意の値に設定される。
【0029】
コイルスプリング3は、図8に示すようにコイル径が脱落防止部材2から離れるに従って、即ち、下方に行くに従って、徐々に小さくなっていくように形成されたテーパコイルスプリングとなっている。このテーパコイルスプリングのバネ定数は、空調室内機ACが発生させる約20Hz付近の振動数と共振しない範囲(例えば、14Hz以下好ましくは約3〜6Hz)のものに設定されている。また、コイルスプリング3は上部にゴムキャップ10が設けられ、該キャップには吊りボルトBを挿通可能な円形の穴11が形成されている。そしてコイルスプリング3はこのゴムキャップ10を介して脱落防止部材2に装着され、穴5,6及び穴11に挿通された吊りボルトBに、この吊りボルトBと螺合する上部ナット12と下部ナット13(図10)で止め付けられ、空調室内機ACから伝達される振動を吸収して吊りボルトBへ伝達しないようにしている。止め付けるナット12,13は、図示するように、振動等で経時的に緩まないように二重ナットとなっている。図10で15はゴムブッシュである。
【0030】
ゴムキャップ10は、エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム(EPDM樹脂)などの弾性樹脂(ゴム材)からなり、その上部の外周に係合溝16が形成され、下部がコイルスプリング3の上部を覆う袋状(キャップ状)に形成されている。このゴムキャップ10は、上部の係合溝16が、脱落防止部材2の凹所8を形成する水平プレート部2bにある穴6に下から圧入して挿入することによって該穴の縁に係合し、これにより上部を凹所8に位置させて収納されている。また、コイルスプリング3の上部を覆うことにより、コイルスプリングの上部の水平方向の位置ズレを防止している。
【0031】
ゴムキャップ10の下方にはコイルスプリング3の下部を覆うゴムブーツ17が設けられている。ゴムブーツ17は、弾性樹脂(ゴム材)からなり、全体として逆円錐台形状で、上方が開口してコイルスプリング3の全体を覆う袋状(ブーツ状)に形成されているとともに、ゴムキャップ10への嵌め込み代17aの下から底面に亘ってコイルスプリング3の伸縮に追従可能なように蛇腹部17bが形成され、その底部17cには、ナットなどの金属部品との摺接による磨耗を防ぐため、補強用の平座金17dが嵌め込まれている。この平座金17dは、吊りボルトBが挿通可能な孔が穿設されている。
【0032】
このゴムブーツ17は、コイルスプリング3を収納してゴムキャップ10の下部の内側に嵌め込まれるとともに、前述した吊りボルトの下端に下部ナット13で止め付けられており、コイルスプリング3の伸縮性を阻害せずに、吊りボルトBとコイルスプリング3との間に介在することで吊りボルトBへの振動の伝達を低減する。また、コイルスプリング3の外側全体を覆うことで、異物を挟んで防振効果を阻害することを防止し、安全性を向上させている。
【0033】
なお、実施の形態では、ゴムブーツ17でコイルスプリング3の外側全部を覆うような形状としたが、必ずしもこのような形状ではなく、ゴムキャップ10とゴムブーツ17とが互いにコイルスプリング3を半分ずつ覆うような形状としてもよい。
【0034】
<取り付け手順>
脱落防止部材2に防振材であるコイルスプリング3を取り付けるには、コイルスプリング3の上部を覆うゴムキャップ10の上部を脱落防止部材2の水平プレート部2bにある穴6に下から圧入して挿入する。そして、この挿入によりゴムキャップ10の上部が凹所8に入り込み、係合溝16が穴6の縁に係合すると、ゴムキャップ10の上部が凹所8に位置して収納され、コイルスプリング3が脱落防止部材2に取り付けられた状態になる。この状態を示すのが図8であり、これからこの防振材付きの脱落防止部材2を空調室内機ACの側面に取り付けられた耳金Eへの装着と吊りボルトBへの取り付けに進むことになる。なお、脱落防止部材2とコイルスプリング3の取り付けは、以下に説明する防振具1の取り付けには事前に必要なため、予め取り付けて組み付けておくのが便利である。
【0035】
図9,10と図1等を用いて防振具1の取り付け手順について説明する。
まず、図1,10に示すように構造躯体であるコンクリートスラブCSから垂下している吊りボルトBの下端部に上部ナット12を螺合して取り付ける。次に、図9に示すようにコイルスプリング3がゴムキャップ10とゴムブーツ17で被覆されて取り付けられた脱落防止部材2を、空調室内機ACの側面に取り付けられた耳金Eの取付片E2に向けて接近させ(図示では空調室内機ACを省略)、その開口する挿入部2D側から矢印で示すように取付片E2を水平プレート部2aと水平プレート部2bで挟むように手差しで水平方向より挿入する。そして、取付片E2が押さえ片9を押し上げるようにして接続部2c側に至ると、図2に示すようにその先端が水平プレート部2aの内面に接するように押し上げられた押さえ片9の作用により水平プレート部2bの内面とコイルスプリング3のゴムキャップ10の上端面とにフィットした状態となる。そして、両水平プレート部2a,2bの内面間に挿入位置するようになると、仮の取り付け(仮り止め)が完了する。その後、図10に示すようにブッシュ15を脱落防止部材2の水平プレート部2a,2bの穴5,6に下端凸部を嵌入して装着したうえ、この脱落防止部材2のブッシュ15、コイルスプリング3へ順次に吊りボルトBを通し、下部ナット13を吊りボルトBの下端から螺合して取り付け、レベルを調整した後、下部ナット13や上部ナット12で締結する。この両ナットによる締め付け固定が終わると、防振具1の取り付けが完了する。なお、ブッシュ15は、ここでは使用したが、必須のものではなく、必要に応じて使用する。
【0036】
<作用効果>
以上説明した実施の形態に係る吊下げ式防振具1によれば、防振材であるコイルスプリング3の作用によって確実に防振効果を発揮することができる。
【0037】
また、ゴムキャップ10とゴムブーツ17がコイルスプリング3全体を覆っているので、コイルスプリング3を設置して下部ナット13を締め付ける際に誤ってコイル同士の間に手や工具等の異物を挟んでしまうことがなくなる。そのため異物を挟むことによる防振効果の阻害を防止し、取り付け作業の安全性を向上させることができる。
【0038】
また、コイルスプリング3によって防振効果を発揮することが可能な防振具1は、脱落防止部材2を有し、前記のような従来から用いられている耳金Eの場合であっても、耳金Eの取付片E2に水平プレート部2aと水平プレート部2bを挿入部2dから差し込み、かつ該両プレート部に設けた穴5,6等へ吊りボルトBを挿通する構造であるため、使用している状態で地震が発生した場合でも、吊りボルトBが耳金Eの取付用切欠溝Fから脱落するのを防止することができ、従来のような地震の揺れによる脱落事故を確実に防止することができる。
【0039】
しかも、この脱落防止のための機構である脱落防止部材2の構造は複雑でなく、簡素な構造のため、製作が容易であるのに加え、吊りボルトBへの取り付け等も迅速、かつスムーズに行うことができ、その施工性もきわめてよい。
【0040】
更に、防振具1を吊りボルトBに装着する作業も効率よく行なえ、防振具1の取り付け作業の省力化を図ることができ、室内空調機ACの設置コストも下げることができる。
【0041】
<別の実施例1>
図11は、防振材の他の例であり、この例では前記のようなコイルスプリング3に代え、筒型ゴム21を採用している。筒型ゴム21は筒状本体22を有し、該本体の軸方向の中心部には吊りボルトBを挿通するための円形の穴23が形成されているとともに、上部の外周に係合溝24が形成されている。取り付けに際しては、コイルスプリング3の場合とほぼ同様であり、筒状本体22の上部を水平プレート部2bにある穴6に下から圧入して挿入し、この挿入により上部が凹所8に入り込み、係合溝24が穴6の縁に係止すると、上部が凹所8に位置して収納された状態になる。このような筒型ゴム21を使用した場合でもコイルスプリング3の場合と同様な作用効果が得られる。
【0042】
<別の実施例2>
図12は、防振材のさらに別の例であり、この例では前記のようなコイルスプリング3に代え、ゴムブッシュ26を採用している。ゴムブッシュ26は筒型ゴム21に比べて軸方向の長さ、すなわち全高が低くなった本体27の軸方向の中心部に吊りボルトBを挿通する円形の穴28が形成されているとともに、上部の外周に係合溝29が形成されている。ゴムブッシュ26の取り付けは、前記筒型ゴム21の場合とほぼ同様である。このゴムブッシュ26を使用した場合でもコイルスプリング3や筒型ゴム21の場合と同様な作用効果が得られる。
【0043】
なお、実施の形態に係る吊下げ式防振具として図面で示した各構成部材の形状や構造等も、あくまでも好ましい一例を示すものであり、特許請求の範囲内で適宜設計変更が可能であることは云うまでもない。例えば、実施の形態では防振材をその上部が凹所に受け入れるようにして脱落防止部材に設けたが、そのほかに防振材の上部を脱落防止部材の水平プレート部に直接接着により設けてもよいし、あるいは加硫接着やカシメ等により設けてもよい。また、空調室内機も振動機器の一例であり、これ以外の振動機器を対象としてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 吊下げ式防振具
2 脱落防止部材
2a 水平プレート部(第1の水平プレート部)
2b 水平プレート部(第2の水平プレート部)
2c 接続部
2d 挿入部
3 コイルスプリング(防振材)
5,6 穴
7 段差形成部
8 凹所
9 押さえ片
10 ゴムキャップ
11 穴
12,13 ナット
16 係合溝
17 ゴムブーツ
21 筒型ゴム(防振材)
26 ゴムブッシュ(防振材)
AC 室内空調機(振動機器)
CS コンクリートスラブ
B 吊りボルト
D 天井
E 耳金
E1 金具本体
E2 取付片
E3 折曲片
F 取付用切欠溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12