特許第6654510号(P6654510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654510
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】高圧配電線接続器
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/24 20180101AFI20200217BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20200217BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20200217BHJP
   H02G 1/12 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   H01R4/24
   H02G7/00
   H02G15/08 050
   H02G1/12 017
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-104453(P2016-104453)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-212105(P2017-212105A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛永 和真
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−501763(JP,A)
【文献】 特開平05−152012(JP,A)
【文献】 実開昭50−091091(JP,U)
【文献】 特開2015−095418(JP,A)
【文献】 特開2001−332315(JP,A)
【文献】 実開平04−105461(JP,U)
【文献】 特開2002−281630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/24
H01R 4/50
H02G 1/12
H02G 7/00
H02G 15/08
F16G 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の導体部の回りに絶縁性の被覆部が形成されてなる電線を把持するための接合・離反可能な一対のホルダと、該一対のホルダに把持された前記電線の被覆部を除去する切り刃を有する皮剥き金具と、を備えた高圧配電線接続器であって、
前記一対のホルダは、導電材料で形成されているとともに、
前記電線が係合可能な一対の電線案内溝と、
前記一対の電線案内溝間に、該電線案内溝とほぼ平行するように設けられ前記皮剥き金具が挿入可能な皮剥き金具案内溝と、
前記一対のホルダを結合するための結合手段と、を備え、
前記皮剥き金具は、導電材料で形成されているとともに、前記切り刃は、先端が前記電線案内溝に係合された電線の外周面の一部に当接可能であり、先端から離れるに従って電線から遠ざかる方向に傾斜するように形成され、
前記切り刃の先端が進む方向へ前記皮剥き金具が移動されることで前記電線の被覆部を剥ぐようにして切削可能に構成されていることを特徴とする高圧配電線接続器。
【請求項2】
前記一対のホルダには、前記皮剥き金具が挿入可能な金具案内溝が2本形成され、
前記皮剥き金具は、前記2本の金具案内溝にそれぞれ挿入可能に2本設けられ、各皮剥き金具が前記切り刃の先端が進む方向へ移動されることで、各電線案内溝に係合されている電線の被覆部を切削可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧配電線接続器。
【請求項3】
先端がクサビ状に形成され、前記一対の電線案内溝と交差する方向に移動可能な一対の抜け止め部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧配電線接続器。
【請求項4】
前記一対の電線案内溝は、少なくとも一方の端部が、係合された電線を前記皮剥き金具案内溝から遠ざかる方向へ誘導可能な湾曲部を有するように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高圧配電線接続器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧の電力を供給する架空高圧配電線を接続するために使用する高圧配電線接続器に関し、特に電線表面の絶縁被覆材を除去して導体同士を接続させるのに好適な高圧配電線接続器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道においては、強風による倒木や飛来物接触等により架空高圧配電線が切断された場合、一方の電線端部表面の被覆材を電気工事用のナイフで剥ぎ取って銅線からなる導体部を露出させてから、割入れ線の一方の端部に蓄力コネクタと呼ばれる金具で接続してロープ等で引き上げた後、シメラーで仮弛みを取り、断線した他方の電線端部表面の被覆材を剥ぎ取って、割入れ線の他方の端部に蓄力コネクタで接続する仮復旧作業を行なっている。
【0003】
しかしながら、蓄力コネクタは、本来、張力のかからない箇所での銅線同士の接続に用いられるものであり、耐張力は保証されていない。また、高圧配電線は導体部の周りに比較的硬い絶縁被覆材(以下、単に被覆材と称する)が被着されている構造であるため、蓄力コネクタを用いた復旧では、接続の準備作業でこの被覆材を削ぎ落とさなければ導体同士の接続ができない。そのため、従来は電気工事用のナイフを使用して被覆材をそぎ落としているが、取り扱いが困難であり、安全面にも課題がある。
【0004】
一方、電線表面の被覆材を除去して内部の導体部に接続する器具に関する発明として、例えば特許文献1に開示されているものがある。この発明に係る器具(接続クランプの接触電極)は、端面に複数の切り刃を放射状に設けた円筒状の部材(接触電極)を、接続クランプと称する金具の先端に回転可能に装着して、電線をクランプ用の金具で把持した状態で接触電極を回転させることによって、切り刃で電線表面の被覆材を切削して導体部を露出させるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−281630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている発明の器具は、主として分岐線を接続するために開発されたもので、断線した配電線同士を割入れ線を介して接続するとともに、高い張力をかけるのには適していない。また、特許文献1の発明に係る器具にあっては、電線表面の被覆材が固い場合には、電動モータを用いて切り刃を有する円筒状の部材(接触電極)を回転させる必要があるので、工具の取り扱いが面倒であるとともに、削り残しや削り過ぎを回避するのに熟練を必要とする。さらに、導体部との接触は、円筒状の部材(接触電極)の端面と導体部の外周の一部のみであるため、接触抵抗を充分に小さくすることができないという課題がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、断線した高圧配電線端部の被覆材の除去および導体部同士の接続作業を、熟練を要することなく誰でも簡単に行えるとともに、電気的な導通状態を作り出すことができる高圧配電線接続器を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、高圧配電線の導体部同士を、張力のある状態で接続を継続することが可能である高圧配電線接続器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、
線状の導体部の回りに絶縁性の被覆部が形成されてなる電線を把持するための接合・離反可能な一対のホルダと、該一対のホルダに把持された前記電線の被覆部を除去する切り刃を有する皮剥き金具と、を備えた高圧配電線接続器であって、
前記一対のホルダは、導電材料で形成されているとともに、
前記電線が係合可能な一対の電線案内溝と、
前記一対の電線案内溝間に、該電線案内溝とほぼ平行するように設けられ前記皮剥き金具が挿入可能な皮剥き金具案内溝と、
前記一対のホルダを結合するための結合手段と、を備え、
前記皮剥き金具は、導電材料で形成されているとともに、前記切り刃は、先端が前記電線案内溝に係合された電線の外周面の一部に当接可能であり、先端から離れるに従って電線から遠ざかる方向に傾斜するように形成され、
前記切り刃の先端が進む方向へ前記皮剥き金具が移動されることで前記電線の被覆部を剥ぐようにして切削する構成とした。
【0009】
上記した手段によれば、一対のホルダの電線案内溝に電線を係合させてから、切り刃を有する皮剥き金具を皮剥き金具案内溝へ挿入して、ハンマー等の工具を用いて金具を移動させると、切り刃によって電線の被覆部の一部が剥がされると同時に、導電材からなる皮剥き金具およびホルダによって電気的な導通状態が作り出されるため、断線した高圧配電線端部の被覆材の除去および導体部同士の接続作業を、熟練を要することなく誰でも簡単に行うことができる。また、皮剥き金具の切り刃が、被覆部の一部が剥がされた導体部の表面に軸方向の広い範囲に亘って接触するとともに、皮剥き金具案内溝に挿入された皮剥き金具はホルダとの接触面積が大きいため、電線とホルダとの間の電気的な接触抵抗を充分に小さくすることができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記一対のホルダには、前記皮剥き金具が挿入可能な金具案内溝が2本形成され、前記皮剥き金具は、前記2本の金具案内溝にそれぞれ挿入可能に2本設けられ、各皮剥き金具が前記切り刃の先端が進む方向へ移動されることで、各電線案内溝に係合されている電線の被覆部を切削可能に構成されているようにする。
これにより、1本の金具によって2本の電線の被覆部を同時に切削するものに比べて小さな力で作業を行うことができ、作業効率が向上する。
【0011】
また、望ましくは、先端がクサビ状に形成され、前記一対の電線案内溝と交差する方向に移動可能な一対の抜け止め部材を備えるように構成する。
このように構成することにより、接続作業終了後に接続された2本の電線に張力を与えた際に電線案内溝から電線が抜けてしまうのを防止することができる。
ここで、例えば、前記一対の抜け止め部材には移動可能な方向に沿って長穴を形成し、前記一対のホルダには前記長穴に係合するピンを設けて、一対のホルダを分離もしくは開いた際に、抜け止め部材がホルダから脱落しないようにする構造を設けると良い。
【0012】
また、望ましくは、前記一対の電線案内溝は、少なくとも一方の端部が、係合された電線を前記皮剥き金具案内溝から遠ざかる方向へ誘導可能な湾曲部を有するように形成する。
これにより、接続作業終了後に接続された2本の電線に張力を与えた際に、2本の電線がそれぞれ90度湾曲されることで摩擦力が高まるため、電線が抜けるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、断線した高圧配電線端部の被覆材の除去および導体部同士の接続作業を、熟練を要することなく誰でも簡単に行えるとともに、電気的な導通状態を作り出すことができる。また、高圧配電線の導体部同士を張力のある状態で接続を継続することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る高圧配電線接続器の一実施形態を示す平面図である。
図2図1の実施形態の高圧配電線接続器の側面図である。
図3図1の実施形態の高圧配電線接続器を構成する上ホルダおよび下ホルダの内側の構造を示す図である。
図4図1の実施形態の高圧配電線接続器を構成するカッタ兼導電金具(皮剥き金具)の斜視図である。
図5図4のカッタ兼導電金具の反対側の面を示す斜視図である。
図6】(A),(B),(C)は、押えクサビの詳細を示す斜視図、断面図および側面図である。
図7図1の高圧配電線接続器に高圧配電線の端部と割入れ線の端部を係合させ、カッタ兼導電金具を一部挿入した状態を示す正面図である。
図8図7の状態からカッタ兼導電金具を押し込んだ状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は(A)におけるB−B線に沿った断面図である。
図9図1の実施形態の高圧配電線接続器で高圧配電線の端部と割入れ線の端部を接続して張力を与えた状態を示す図である。
図10図1の実施形態の高圧配電線接続器の他の使用例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1および図2は本発明の実施形態に係る高圧配電線接続器10の組み立て状態を示す正面図および側面図、図3は本体11を開いた状態を示す図である。
図1図3に示すように、本実施形態の高圧配電線接続器10は、本体11を構成する上ホルダ11Aおよび下ホルダ11Bと、該上ホルダ11Aと下ホルダ11Bとによって構成される空間に挿入される切り刃を有する一対の棒状のカッタ兼導電金具12Aおよび12Bと、本体11の両側部に挿入される一対の押えクサビ13Aおよび13Bと、上ホルダ11Aおよび下ホルダ11Bを接合した状態で結合する6個の六角穴付きボルト14とを備える。上ホルダ11Aおよび下ホルダ11Bとカッタ兼導電金具12A,12Bは、導電性の良く高圧配電線の導線と同一素材である銅もしくは銅合金等の金属で形成されている。
【0016】
上ホルダ11Aおよび下ホルダ11Bは、対向する内側面に、カッタ兼導電金具12A,12Bを案内する一対の真っ直ぐなカッタ案内溝15a,15bと、高圧配電線を案内する一対の湾曲した電線案内溝16a,16bがそれぞれほぼ平行するように形成されている。そして、電線案内溝16a,16bの両端の側壁はそれぞれほぼ90度方向を変換して本体11の側方へ向かうように湾曲されている。さらに、電線案内溝16a,16bは、カッタ案内溝15a,15bの外側位置に形成されており、カッタ案内溝15a,15bの一部と電線案内溝16a,16bの一部が連通するように構成されている。
【0017】
また、上ホルダ11Aには結合用のボルト14を挿通可能な6個のボルト挿通孔17aが形成され、下ホルダ11Bには結合用のボルト14の雄ネジ部が螺合可能な6個の雌ネジ部17bが形成されている。ボルト挿通孔17aの入り口側には、結合用のボルト14の頭部が入る大径穴が設けられており、結合用のボルト14を雌ネジ部17bへ螺合させて上ホルダ11Aと下ホルダ11Bを結合させた状態で、上ホルダ11Aの表面から結合用のボルト14の頭部が突出しないように構成されている。
【0018】
また、上ホルダ11Aおよび下ホルダ11Bの内側面には、押えクサビ13A,13Bを収納し案内する一対のクサビ収納溝18a,18bが形成されているとともに、該クサビ収納溝18a,18bには、押えクサビ13A,13Bに形成されている長穴13a,13bと係合して、本体11を分解した際にホルダ11A,11Bからこれらの部品が抜け落ちるのを防止するための抜止め用ピン19A,19Bが植設されている。押えクサビ13A,13Bは、内側の先端が鋭角をなすように形成されているとともに、後端部はホルダ11A,11Bから突出するような長さに形成され、後端は平坦面をなすように形成されている。
【0019】
図4および図5は、本実施形態に係る高圧配電線接続器10を構成するカッタ兼導電金具12A,12Bの詳細を示す斜視図であり、それぞれ異なる側から見た様子を示している。以下、図4において主として見える面を表面、図5において主として見える面を裏面として説明する。
図4および図5に示すように、カッタ兼導電金具12A,12Bは、表面と裏面にそれぞれ長手方向に沿って断面がほぼ半円形をなす溝21a,21bがそれぞれ設けられている。このうち表面側の溝21aは、ほぼ中央を境にして、一方(図4の右方)は作業対象の高圧配電線の絶縁材からなる被覆部の外径に対応して内径が大きく、他方(図4の左方)は高圧配電線の導体部の外径に対応して内径が小さくなるように形成されている。
【0020】
また、カッタ兼導電金具12A,12Bのほぼ中央には、表面側の溝21aと裏面側の溝21bとを連通する開口部22が設けられ、この開口部22の中央側の縁部に切り刃23が設けられている。この切り刃23は、断面ほぼ半円形の溝21aの底部に形成されており、上方から見た場合に半円形もしくは半楕円形をなしている(図2参照)。
カッタ兼導電金具12A,12Bは、図1および図2に示すように、表面側が外側を向き、裏面側が内側を向くようにして背中合わせの状態で、ホルダ11A,11Bのカッタ案内溝15A,15B内に移動可能に挿入される。
【0021】
図6(A),(B),(C)は、電線の抜け止め部材としての押えクサビ13Aおよび13Bの詳細を示す斜視図、断面図および側面図である。
図6に示すように、押えクサビ13A,13Bは、先端が鋭角をなすように形成されているとともに、ホルダ11A,11Bのクサビ収納溝18A,18Bに設けられている抜止め用ピン19A,19Bと係合する長穴13a,13bが形成されている。また、押えクサビ13A,13Bは、図6(C)に示すように、先端が傾きを有するように形成されている。作業対象の高圧配電線の導体部が、複数(例えば7本)の銅線がねじれを有した状態で束ねられているので、銅線のねじれ角に対応した角度を有するように、押えクサビ13A,13B先端の稜線の傾きが設定されている。これにより、押えクサビ13A,13Bをハンマー等で叩いて内側へ押し込んだ際に、図8(B)に示すように、先端が高圧配電線の銅線同士がなす溝に食い込むことで、高圧配電線の軸方向への移動すなわち本体11内からの抜けが防止されるようになっている。
【0022】
次に、図7および図8を用いて、本実施形態の高圧配電線接続器10の使用方法および機能について説明する。
以下、一例として、本実施形態の高圧配電線接続器10を用いて、断線した高圧配電線の切断側端部に割入れ線の端部を接続する場合について説明する。
先ず、図3に示すように、ホルダ11Aと11Bを分離するとともに押えクサビ13A,13Bを外側へ移動させた状態で、一方のホルダ11Aの電線案内溝16A,16B内に、断線した高圧配電線31の切断側端部と割入れ線32の端部をそれぞれ半分ほど嵌入させる。また、ホルダ11Aのカッタ案内溝15A,15B内に、カッタ兼導電金具12A,12Bを挿入する。この時、図7に示すように、カッタ兼導電金具12A,12Bの切り刃23が高圧配電線31と割入れ線32の被覆部の外周に当接した状態となる。
【0023】
続いて、ホルダ11Aの上にホルダ11Bを被せて接合させ、結合用のボルト14をボルト挿通孔17に挿入して雌ネジ部に螺合させてホルダ11Aと11Bを結合させる。なお、カッタ兼導電金具12A,12Bは、ホルダ11Aと11Bを結合した後で挿入しても良い。その後、ホルダ11Aと11Bの外部へ突出している押えクサビ13A,13Bの後端をハンマーで叩いて、先端を高圧配電線31と割入れ線32の導体部を覆っている被覆部に食い込ませる。
【0024】
次に、カッタ兼導電金具12A,12Bの先端(図7では上端)をハンマーで叩いて、カッタ兼導電金具12A,12Bを本体11内部へ押し込む。すると、切り刃23が高圧配電線31と割入れ線32の被覆部に斜めに食い込んで徐々に切断し、切断された被覆部31a,32aは、図8(A)に示すように、カッタ兼導電金具12A,12Bの裏面側の溝21b内へ入り込んで行くことで導体部の一部がむき出しの状態にされるとともに、導体部の表面にカッタ兼導電金具12A,12Bが接触している状態になる。
【0025】
このとき、カッタ兼導電金具12A,12Bおよび本体11を構成するホルダ11A,11Bが導電材料で形成されているため、高圧配電線31と割入れ線32の電気的な導通が図られる。また、カッタ兼導電金具12A,12Bの頭部が本体11の上面と一致する位置まで挿入させると、被覆部の適正な切削と胴体部と金具との電気的に充分な接触が得られるように、カッタ兼導電金具12A,12Bの長さや切り刃23の角度が設定されているため、熟練を要することなく誰でも容易かつ確実に作業を行うことができる。
【0026】
上記のようにして、断線した一方の高圧配電線31への割入れ線32の接続が終了すると、高圧配電線31および割入れ線32をロープ等で引き上げた後、シメラー等で張力を与えた状態で、上述した手順の作業を行なって、割入れ線32の他端と断線した他方の高圧配電線の端部同士を他の高圧配電線接続器10を用いて接続する。
図9には、接続が完了した状態の接続部分の状態が示されている。図9から分かるように、本実施形態の高圧配電線接続器10を使用した接続によれば、高圧配電線31と割入れ線32とが、高圧配電線接続器10に挟まれている箇所で90度曲がるような状態で張力が作用する。
【0027】
そのため、従来の蓄力コネクタを用いて、高圧配電線31と割入れ線32とが平行な状態で接続する方法に比べて強い張力に耐える、つまり耐張力のある状態で接続することができるようになるという利点がある。
また、上記のような作業の仕方を実施すれば、カッタ兼導電金具12A,12Bを本体11内へ挿入させる際に、ハンマーでカッタ兼導電金具12A,12Bを上から下へ叩くことができるため、作業がやりやすいという利点がある。
【0028】
なお、本実施形態の高圧配電線接続器10は、図10に示すように、ホルダ11A,11Bに対してカッタ兼導電金具12A,12Bを、下方から挿入してハンマーで叩くことで、被覆材のそぎ落としと電気的に導通を行うようにすることもできる。このようにすれば、カッタ兼導電金具12A,12Bの頭部を大きくしておくことで、高圧配電線31と割入れ線32に張力が作用した際に、カッタ兼導電金具12A,12Bがストッパの作用をして、高圧配電線31と割入れ線32が本体11から抜けにくくすることができる。
また、このように、ホルダ11A,11Bに対してカッタ兼導電金具12A,12Bを下方(切断端部側)から挿入する場合にも、高圧配電線接続器10を180度ねじることで、カッタ兼導電金具12A,12Bをハンマーで上から下へ叩いて接続を行うことができる。ただし、作業中ねじれ状態を維持する必要があるので、図7に示すように、カッタ兼導電金具12A,12Bを上方から挿入する方が、作業性の観点からは望ましい。
【0029】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、高圧配電線の抜けを防止するために一対の押えクサビ13A,13Bを設けているが、それほど強い張力をかける必要がない場合等においては押えクサビ13A,13Bを省略することも可能である。また、前記実施形態においては、押えクサビ13A,13Bを高圧配電線とほぼ直交する方向を向くように配設しているが、さらに高圧配電線の抜けを強力に防止したい場合には、先端が内側に向かって下り傾斜するような角度をつけて押えクサビ13A,13Bを配設するようにしても良い。
【0030】
さらに、カッタ兼導電金具12A,12Bを打ち込んで接続が完了した状態で、カッタ兼導電金具12A,12Bの先端が本体11から突出する部位にピンを挿入できる孔を設けて、該孔にピンを挿入することで金具の抜け止めを行えるような構成にしても良い。
また、外形が同じであって、高圧配電線が挿入される溝21aの大きさ(径)が異なる複数のカッタ兼導電金具12A,12Bを用意しておいて、異なる径の高圧配電線に対して1つの接続器で対応できるように構成することも可能である。
さらに、前記実施形態では、カッタ兼導電金具を2本設けているが、カッタ兼導電金具12Aと12Bとを一体化して、2つの切り刃を有する1本の金具として構成するようにしても良い。
【0031】
また、前記実施形態では、本体11を構成するホルダ11A,11Bを分離可能な部品として構成しているが、ホルダ11A,11Bの一方の側部に蝶番を付けて開閉可能な構成にすることも可能である。
さらに、上ホルダ11Aのボルト挿通孔17aへ結合用のボルト14を挿通させた後、該ボルトの雄ネジ部と頭部との間にCリング等を係合させて、上ホルダ11Aとホルダ11Bを分離もしくは開いた状態にしたときに、ボルト14が自重で上ホルダ11Aから脱落するのを防止できるような構成にしてもよい。なお、この場合、上ホルダ11Aの内面のボルト挿通孔17a周縁に、Cリングが係合可能な大きさの凹部を形成して、接合状態でホルダ11Aと11Bとの間に隙間が生じるのを回避する構成とする。
【符号の説明】
【0032】
10 高圧配電線接続器
11 本体
11A 上ホルダ
11B 下ホルダ
12A,12B カッタ兼導電金具(皮剥き金具)
13A,13B 押えクサビ
15A,15B カッタ案内溝(皮剥き金具案内溝)
16A,16B 電線案内溝
23 切り刃
31 高圧配電線
32 割入れ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10