特許第6654515号(P6654515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6654515赤外線遮蔽シート、赤外線遮蔽合わせガラス用中間膜並びに赤外線遮蔽合わせガラス及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654515
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】赤外線遮蔽シート、赤外線遮蔽合わせガラス用中間膜並びに赤外線遮蔽合わせガラス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20200217BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20200217BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20200217BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20200217BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20200217BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20200217BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   G02B5/28
   G02B5/26
   C03C27/12 D
   C03C27/12 L
   G02B5/22
   B32B7/023
   B32B27/20 Z
   B60J1/00 H
【請求項の数】22
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-118781(P2016-118781)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-223827(P2017-223827A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 幸広
(72)【発明者】
【氏名】有福 達治
(72)【発明者】
【氏名】海老原 頌子
(72)【発明者】
【氏名】野原 彰浩
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−224921(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/199872(WO,A1)
【文献】 特開2000−044883(JP,A)
【文献】 特開昭62−165646(JP,A)
【文献】 特表2002−509279(JP,A)
【文献】 特開2007−148330(JP,A)
【文献】 特開2015−230477(JP,A)
【文献】 特開2016−090976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 5/26
G02B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、ダイヤモンド、ホウ化物、及び窒化物からなる群より選択される少なくとも一種の微粒子を含有した高屈折率樹脂層と、
酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも一種の微粒子を含有した低屈折率樹脂層とが交互に積層した積層膜と
赤外吸収色素を含有する赤外吸収色素層を備える赤外線遮蔽シートにおいて、
前記赤外吸収色素層は、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを含有し、
前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜2500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以上であり、前記低屈折率樹脂層が、550nm以上前記任意波長以下の任意の波長において前記高屈折率樹脂層よりも低い屈折率を示し、かつ可視光透過率70%以上、L*a*b*表色系でb*の値が10以下、全日射透過率が54.8%以下であることを特徴とする赤外線遮蔽シート。
【請求項2】
前記高屈折率樹脂層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜1500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以下であり、前記低屈折率樹脂層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜1500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以上である請求項1に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項3】
前記低屈折率樹脂層が、780nm〜2500nmの任意波長において前記高屈折率樹脂層よりも低い屈折率を示し、前記高屈折率樹脂層の少なくとも1層、及び/または前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層の、780nm〜2500nmの任意波長における光学厚さのQWOT係数が、1.5以上である請求項1または請求項2に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項4】
前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の各々の表面抵抗が、1kΩ/□以上であり、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の層数の合計が、3以上であり、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の各々の780nm〜1500nmの任意波長における光学厚さが195nm〜375nmである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項5】
前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の各々の表面抵抗が、1kΩ/□以上であり、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の層数の合計が、4以上である請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項6】
可視光透過率が50%以上であり、ヘイズが8%以下である請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項7】
前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、アンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、ガリウムドープ酸化亜鉛、酸素欠乏酸化タングステン、及びセシウムドープ酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも一種の微粒子を含む請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項8】
前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、シリカ微粒子を含む請求項6〜請求項7のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項9】
前記シリカ微粒子が、中空シリカ微粒子である請求項8に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項10】
前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、前記群より選択される少なくとも一種の非中空微粒子を含み、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、中空微粒子を含む請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項11】
前記高屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率が、前記高屈折率樹脂層全体に対して95重量%以下である請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項12】
前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率が、前記低屈折率樹脂層全体に対して95重量%以下である請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項13】
前記赤外線吸収色素が下記の化1又は化2で示される化合物より選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート。
【化1】
[上記の化1にて、X、Yはそれぞれ独立して低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホンアミド基を表す。m及びnはいずれも平均値であり、m、nはそれぞれ0以上12以下、かつ、mとnとの和は0以上12以下である。]
【化2】
[上記の化2にて、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、Rはそれぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、炭化水素オキシ基、エステル基からなる群より選ばれる原子または官能基を表す。]
【請求項14】
透明支持体をさらに備え、前記透明支持体上に前記積層膜及び赤外線吸収色素からなる層が形成されている請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シートの製造方法であって、前記高屈折率樹脂層、前記低屈折率樹脂層、赤外線吸収色素からなる層を塗布により形成する工程を含むことを特徴とする赤外線遮蔽シートの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シートと、前記赤外線遮蔽シートの少なくとも一方の最外層の上に形成された中間膜とを備える合わせガラス用中間膜。
【請求項17】
前記中間膜が、ポリビニルブチラールを含む請求項16に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の合わせガラス用中間膜と、複数のガラス板とを備え、前記複数のガラス板間に前記合わせガラス用中間膜が挿入されている合わせガラス。
【請求項19】
前記ガラス板の少なくとも1種がグリーンガラスである請求項18に記載の合わせガラス。
【請求項20】
前記グリーンガラスの可視光透過率が70%以上90%以下である請求項19に記載の合わせガラス。
【請求項21】
前記合わせガラスの可視光透過率が70%以上、L*a*b*表色系でb*の値が10以下である請求項18〜請求項20に記載のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項22】
請求項18〜請求項21に記載のいずれか1項に記載の合わせガラスを含む窓用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的に赤外線を吸収及び反射するとともに透明性に優れ、低ヘイズ性の新たな赤外線遮蔽シート及びその製造方法並びにその用途(ガラス用中間膜、合わせガラス、及び窓用部材)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーや地球環境問題の観点から、空調機器の負荷を軽減することが求められている。例えば、住宅や自動車の分野では、太陽光からの赤外線を遮蔽できる赤外線遮蔽材料を窓ガラスへ敷設し、室内や車内の温度を制御することが求められている。
【0003】
赤外線遮蔽性を有する材料は様々あるが、特許文献1では、赤外線領域の特定波長の光線を反射させるために、相対向する少なくとも2枚のガラス基板間に、高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層された多層膜(誘電体多層膜)からなる赤外線反射フィルムと、アンチモンドープ錫酸化物等の赤外線を遮蔽する導電性超微粒子を均一に分散させてなる機能性合わせ中間膜(微粒子膜)とを積層した高断熱合わせガラスが開示されている。この高断熱合わせガラスは、誘電体多層膜と微粒子膜とを別々に成膜する必要があるため、製造コストの問題がある。
【0004】
特許文献2では、赤外線領域の特定波長の光線を反射させるために、第1のガラス板と第2のガラス板との間に、高屈折率無機質材料層と低屈折率無機質材料層とが交互に積層された積層被膜(誘電体多層膜)と、ITO(スズドープ酸化インジウム)等の赤外線遮蔽性微粒子が分散配合された中間膜(微粒子膜)とを積層した車両窓用合わせガラスが開示されている。この車両窓用合わせガラスは、誘電体多層膜と微粒子膜とを別々に成膜する必要があるため、製造コストの問題がある。
【0005】
特許文献3では、ガラス基板上に、透明導電層と赤外線領域における屈折率が透明導電層の屈折率より相対的に高い高屈折率層とが交互に積層された断熱ガラスが開示されている。しかし、この断熱ガラスは、赤外線領域の低屈折率層として導電体のみからなる層が用いられているため、携帯電話電波、テレビ電波、GPS(全地球測位システム)電波等の電波の送受信を室内外で行うための電波透過性能が求められるシステムに対しては使用できないという問題がある。さらに、この断熱ガラスは、導電体のみからなる層を形成するためにスパッタ等の真空設備が必要なため、製造コストの問題がある。
【0006】
特許文献4では透明支持体上に屈折率が波長によって異なる層を積層し、赤外吸収色素を組み合わせた赤外線遮蔽シートが開示されている。しかし、この赤外線遮蔽シートに用いられる赤外吸収色素の色相に関する記載が無く、実施例で使用している色素では黄色が強い為、外観上受け入れにくい。
【0007】
特許文献5では高屈折率樹脂層と低屈折率樹脂層を交互に積層した赤外線遮熱シートが開示されている。しかし、この赤外線遮熱シートに銅ナフタロシアニンまたはKAYASORB IR−750を赤外吸収色素として使用し、さらにグリーンガラスを備えることによって、性能が従来よりも向上することを示している具体的な記載および実施例がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−220262号公報
【特許文献2】国際公開第2007/020791号パンフレット
【特許文献3】特開2010−202465号公報
【特許文献4】特開2015−127274号公報
【特許文献5】特開2014−224921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、可視光領域における透明性、電波透過性、赤外線遮蔽性、製造コスト、色相を大幅に改善した新たな赤外線遮蔽シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、従来技術のこのような問題に対して鋭意検討した結果、微粒子を含有した高屈折率樹脂層と、微粒子を含有した低屈折率樹脂層とが交互に積層した積層膜を備える赤外線遮蔽シートにおいて、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜2500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以上であり、前記低屈折率樹脂層が、550nm以上前記任意波長以下の任意の波長において前記高屈折率樹脂層よりも低い屈折率を示す構成とすることに加え、可視光透過率70%以上、L*a*b*表色系でb*の値が10以下の赤外線吸収色素からなる層(以下、赤外吸収色素層)を組合わせることで透明性、電波透過性を有し、かつ製造コスト、赤外線遮蔽性、外観が大幅に改善された新たな赤外線遮蔽シートを実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の赤外線遮蔽シートは、
(1)微粒子を含有した高屈折率樹脂層と、微粒子を含有した低屈折率樹脂層とが交互に積層した積層膜と可視光透過率70%以上、L*a*b*表色系でb*の値が10以下の赤外線吸収色素からなる層をさらに備える赤外線遮蔽シートにおいて、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜2500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以上であり、前記低屈折率樹脂層が、550nm以上前記任意波長以下の任意の波長において前記高屈折率樹脂層よりも低い屈折率を示すことを特徴とする赤外線遮蔽シート、
(2)前記高屈折率樹脂層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜1500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以下であり、前記低屈折率樹脂層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜1500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以上である(1)に記載の赤外線遮蔽シート、
(3)前記低屈折率樹脂層が、780nm〜2500nmの任意波長において前記高屈折率樹脂層よりも低い屈折率を示し、前記高屈折率樹脂層の少なくとも1層、及び/または前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層の、780nm〜2500nmの任意波長における光学厚さのQWOT係数が、1.5以上である(1)または(2)に記載の赤外線遮蔽シート、
(4)前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の各々の表面抵抗が、1kΩ/□以上であり、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の層数の合計が、3以上であり、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の各々の780nm〜1500nmの任意波長における光学厚さが195nm〜375nmである(1)〜(3)のいずれか1項に記載の赤外線遮蔽シート、
(5)前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の各々の表面抵抗が、1kΩ/□以上であり、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の層数の合計が、4以上である(1)〜(4)の何れか一項に記載の赤外線遮蔽シート、
(6)可視光透過率が50%以上であり、ヘイズが8%以下である(1)〜(5)の何れか一項に記載の赤外線遮蔽シート、
(7)前記高屈折率樹脂層の少なくとも1層が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、ダイヤモンド、ホウ化物、及び窒化物からなる群より選択される少なくとも一種の微粒子を含む(1)〜(6)の何れか一項に記載の赤外線遮蔽シート、
(8)前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも一種の微粒子を含む(1)〜(7)の何れか一項に記載の赤外線遮蔽シート、
(9)前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、アンチモンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、ガリウムドープ酸化亜鉛、酸素欠乏酸化タングステン、及びセシウムドープ酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも一種の微粒子を含む(1)〜(8)のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート、
(10)前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、シリカ微粒子を含む(8)〜(9)のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート、
(11)前記シリカ微粒子が、中空シリカ微粒子である(10)に記載の赤外線遮蔽シート、
(12)前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、前記群より選択される少なくとも一種の非中空微粒子を含み、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、中空微粒子を含む(8)〜(10)のいずれか1項に記載の赤外線遮蔽シート、
(13)前記高屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率が、前記高屈折率樹脂層全体に対して95重量%以下である(1)〜(12)のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート、
(14)前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率が、前記低屈折率樹脂層全体に対して95重量%以下である(1)〜(13)のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート、
(15)前記赤外線吸収色素が下記の化1又は化2で示される化合物より選択される少なくとも1種である(1)〜(14)のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート、
【0012】
【化1】
[上記の化1にて、X、Yはそれぞれ独立して低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホンアミド基を表す。m及びnはいずれも平均値であり、m、nはそれぞれ0以上12以下、かつ、mとnとの和は0以上12以下である。]
【0013】
【化2】
[上記の化2にて、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、Rはそれぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、炭化水素オキシ基、エステル基からなる群より選ばれる原子または官能基を表す。]
(16)透明支持体をさらに備え、前記透明支持体上に前記積層膜及び赤外線吸収色素からなる層が形成されている(1)〜(15)のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シート、
(17)(1)〜(16)のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シートの製造方法であって、前記高屈折率樹脂層、前記低屈折率樹脂層、赤外線吸収色素からなる層を塗布により形成する工程を含むことを特徴とする赤外線遮蔽シートの製造方法、
(18)(1)〜(16)のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽シートと、前記赤外線遮蔽シートの少なくとも一方の最外層の上に形成された中間膜とを備える合わせガラス用中間膜、
(19)前記中間膜が、ポリビニルブチラールを含む(18)に記載の合わせガラス用中間膜、
(20)(18)または(19)に記載の合わせガラス用中間膜と、複数のガラス板とを備え、前記複数のガラス板間に前記合わせガラス用中間膜が挿入されている合わせガラス、
(21)前記ガラス板の少なくとも1種がグリーンガラスである(20)に記載の合わせガラス、
(22)前記グリーンガラスの可視光透過率が70%以上90%以下である(20)または(21)に記載の合わせガラス、
(23)前記合わせガラスの可視光透過率が70%以上、L*a*b*表色系でb*の値が10以下である(20)〜(22)に記載のいずれか1項に記載の合わせガラス、
(24)(20)〜(23)に記載のいずれか1項に記載の合わせガラスを含む窓用部材、
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の赤外線遮蔽シートは、赤外線の広い領域に対して良好な吸収特性に加え反射特性を有し且つ、電波透過性、透明性、製造コストに優れ、低ヘイズ性であり、赤外線遮蔽性能を効果的に大幅に向上させることができる。本発明の赤外線遮蔽シートを住宅や自動車の窓ガラスに敷設した場合に住宅や自動車の冬季暖房費低減効果および夏期温度低減効果を両方ともに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】地表へ到達する太陽光のエネルギーを示すグラフである。
図2】本発明の実施形態に係る合わせガラス用中間膜の一例を模式的に示す断面図である。
図3図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の一例に係る赤外線遮蔽シートを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の赤外線遮蔽シートは、微粒子を含有した高屈折率樹脂層と、微粒子を含有した低屈折率樹脂層とが交互に積層した積層膜と可視光透過率70%以上、L*a*b*表色系でb*の値が10以下の赤外線吸収色素からなる層をさらに備える赤外線遮蔽シートにおいて、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜2500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以上であり、前記低屈折率樹脂層が、550nm以上前記任意波長以下の任意の波長において前記高屈折率樹脂層よりも低い屈折率を示すものである。前記構成によれば、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜2500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以上であるので、550nmの波長における低屈折率樹脂層の少なくとも1層とそれに隣接する高屈折率樹脂層との屈折率差を小さくしながら、780nm〜2500nmの任意波長における低屈折率樹脂層の少なくとも1層とそれに隣接する高屈折率樹脂層との屈折率差を大きくすることができる。その結果、良好な可視光透過率と良好な赤外線遮蔽性とを併せ持つ赤外線遮蔽シートを実現できる。また、前記構成によれば、微粒子を含有した高屈折率層及び微粒子を含有した低屈折率層が何れも樹脂層であるため、塗布等により容易に製造することが可能であり製造コストの低減を図ることができる。また、前記構成によれば、微粒子を含有した高屈折率層、微粒子を含有した低屈折率層及び赤外吸収色素層が何れも樹脂層であるため、電波透過性を有する赤外線遮蔽シートを実現できる。なお、本出願書類中において、「赤外線領域」とは、波長780nm〜2500nmの領域を示す。
【0017】
前記低屈折率樹脂層は、全ての層が550nmの波長での屈折率から780nm〜1500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以上であってもよい。また、本発明の赤外線遮蔽シートにおいて、前記高屈折率樹脂層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜1500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以下であり、前記低屈折率樹脂層が、550nmの波長での屈折率から780nm〜1500nmの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以上であってもよい。これにより、550nmの波長における低屈折率樹脂層と高屈折率樹脂層との屈折率差を小さくしながら、780nm〜1500nmの任意波長における低屈折率樹脂層と高屈折率樹脂層との屈折率差をさらに大きくすることができる。その結果、良好な可視光透過率を維持しながら、さらに良好な赤外線遮蔽性を持つ赤外線遮蔽シートを実現できる。
【0018】
前記赤外線遮蔽シートは、透明支持体をさらに備え、前記透明支持体上に前記積層膜が形成されていることが好ましい。
【0019】
本発明の一例に係る赤外線遮蔽シートは、図4に示すように、透明支持体20上に、微粒子を含有した高屈折率樹脂層21と、微粒子を含有した低屈折率樹脂層22とが交互に積層した積層膜23を備え、積層膜とは反対側の透明支持体20に赤外線吸収色素層24を備えている。なお、図4に示す例では、高屈折率樹脂層21及び低屈折率樹脂層22の層数の合計が偶数(8)であり、積層膜23における透明支持体20側の端の層が低屈折率樹脂層22となっているが、高屈折率樹脂層21及び低屈折率樹脂層22の層数の合計を奇数(例えば7)とし、積層膜23における透明支持体20側の端の層が高屈折率樹脂層21となるようにしてもよい。また、積層膜と赤外線吸収色素層を透明支持体に備える順番は特に制限無く、例えば透明支持体上に積層膜を備え、更に赤外線吸収色素層を備える事ができ、更に目的に応じて透明支持体を剥離して使用することもできる。
【0020】
赤外線遮蔽シートを窓用部材として用いる場合、入射光(例えば太陽光)に対して積層膜、赤外吸収色素層の順番で配置させる事で、耐久性をより向上させるのに好適だが、これに限らない。
【0021】
前記透明支持体としては、種々の樹脂フィルム、ガラス等を用いることができる。前記樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する)フィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」と略記する)フィルム等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム;三酢酸セルロースフィルム;ポリアミドフィルム;ポリイミドフィルム等を用いることができる。
【0022】
本発明中、赤外線遮蔽シートの高屈折率樹脂層と低屈折率樹脂層とを交互に積層してなる積層膜は、赤外線領域における両者の屈折率差と、高屈折率樹脂層の屈折率の絶対値とが赤外線反射機能を決定するのに重要となる。即ち、屈折率差、屈折率の絶対値とも、大きい方が赤外線反射機能は大きくなる。
【0023】
本発明において、少なくとも隣接した2層(高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層)の屈折率差が、積層膜が反射させる赤外線波長(780nm〜2500nmの赤外線領域から任意に設定される波長)において、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましく、0.35以上であることが特に好ましい。
【0024】
隣接した2層の屈折率差が、積層膜が反射させる赤外線波長において0.1未満の場合は、赤外線反射率を所望の値にするためには積層数が多くなり、可視光透過率が低下し、また製造コストが増加するため、好ましくない。
【0025】
ここで、図1に示すように地表に到達する太陽光の赤外線領域はエネルギーの山がいくつかあり、太陽光の赤外線領域を遮蔽したい場合は、これらエネルギーの山を効率的に遮蔽することが重要となる。そこで、本願発明者らが、鋭意検討した結果、高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層の少なくとも1層の光学膜厚の、780nm〜2500nmの任意波長におけるQWOT係数を1.5以上にすることで、太陽光の赤外線領域を効率的に遮断できることを見出した。ここで、光学厚さのQWOT(quarter wave optical thickness)係数は、nd=λ/4のときを1とする。
ここで、nは高屈折率樹脂層又は低屈折率樹脂層の屈折率を表し、dは高屈折率樹脂層又は低屈折率樹脂層の幾何学厚さを表し、λは積層膜が反射させる赤外線波長(780nm〜2500nmの赤外線領域から任意に設定される波長)を表す。
【0026】
本発明の赤外線遮蔽シートでは、前記低屈折率樹脂層が、780nm〜2500nmの任意波長において前記高屈折率樹脂層よりも低い屈折率を示すことが好ましい。また、本発明の赤外線遮蔽シートとしては、前記低屈折率樹脂層が、波長780nm〜2500nmの任意波長において前記高屈折率樹脂層よりも低い屈折率を示し、前記高屈折率樹脂層の少なくとも1層、及び/または前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層の、780nm〜2500nmの任意波長における光学厚さのQWOT係数が、1.5以上である構成の赤外線遮蔽シートが好ましい。これにより、太陽光の赤外線領域のエネルギーの山を効果的に反射でき、赤外線をより効率的に遮蔽することができる。
【0027】
前記構成の赤外線遮蔽シートにおいて、前記任意波長における光学厚さのQWOT係数が1.5以上である層に隣接する高屈折率樹脂層又は低屈折率樹脂層の少なくとも1層は、前記任意波長における光学厚さのQWOT係数が1以上であることが好ましい。これにより、前記任意波長より短波長側の赤外線領域(例えば780nm以上1000nm未満)の赤外線をより効率的に遮蔽することができる。また、前記構成の赤外線遮蔽シートは、前記任意波長における光学厚さのQWOT係数が1である高屈折率樹脂層を少なくとも1層含み、かつ前記任意波長における光学厚さのQWOT係数が1である低屈折率樹脂層を少なくとも1層含むことが好ましい。これにより、前記任意波長付近の波長の赤外線を効率的に遮蔽することができる。また、前記構成の赤外線遮蔽シートにおいて、前記任意波長は、780nm〜1500nmの任意波長であることが好ましい。これにより、赤外線をより効率的に遮蔽することができる。
【0028】
高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層のうちで光学厚さのQWOT係数が1.5以上である層を除く層については、積層膜が反射させる赤外線波長λは、一般的に、下記式(1)で与えられる。
+n=λ/2 …(1)
ここで、n及びdは高屈折率樹脂層の屈折率及び幾何学厚さをそれぞれ表し、n及びdは低屈折率樹脂層の屈折率及び幾何学厚さそれぞれ表す。
【0029】
なお、高屈折率樹脂層の光学厚さ(屈折率nと幾何学厚さdとの積)及び低屈折率樹脂層の光学厚さ(屈折率nと幾何学厚さdとの積)は、各々がλ/4の整数倍となるよう、互いに同一にしてもよい。即ち、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の各々の780nm〜1500nmの任意波長における光学厚さ(例えば1200nmの波長における光学厚さ)が195nm〜375nmであってもよい。これにより、良好な可視光透過率と良好な赤外線遮蔽性とを併せ持つ赤外線遮蔽シートを実現できる。
【0030】
また、積層膜が反射させる赤外線波長λは、780nm〜2500nmであればよいが、780nm〜1500nmであることがより好ましい。積層膜が反射させる赤外線波長λが780nm未満の場合は、積層膜が反射させる赤外線波長λが可視光領域の波長になるため、赤外線遮蔽シートの可視光透過率が低下するので、好ましくない。また、積層膜が反射させる赤外線波長λが1500nmを超えると、低屈折率樹脂層に含有される微粒子による吸収があるので、赤外線遮蔽効果が薄れるため、好ましくない。
【0031】
本発明の赤外線遮蔽シートにおける高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層の層数の合計(多層膜の層数)は、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層の層数の合計が3未満であると、赤外線の反射機能が不十分である。また、高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層の層数の合計が3以上である場合、高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層の層数の合計は、3〜30であることがより好ましく、3〜20であることがさらに好ましく、3〜15であることが特に好ましい。また、高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層の層数の合計が4以上である場合、高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層の層数の合計は、4〜30であることがより好ましく、4〜20であることがさらに好ましく、4〜15であることが特に好ましい。高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層の層数の合計が30を超えると、製造コストの増加、可視光透過率の低下、耐久性の低下、並びに高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層からなる多層膜の応力増加による赤外線遮蔽シートのカールが問題となるので、好ましくない。
【0032】
赤外線遮蔽シートの光学性能としては、可視光透過率が高く、全日射透過率が低いものが理想的であるが、一般的には両者は比例関係にあり、どちらの性能を重視するかにより光学性能を決定することになる。種々検討した結果、本発明の赤外線遮蔽シートを住宅や自動車の窓ガラスに敷設した場合に住宅や自動車の内部の照明コスト並びに冬季の暖房コストの上昇を最小限にするためには、本発明の赤外線遮蔽シートの可視光透過率は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。前記赤外線遮蔽シートの全日射透過率は、赤外線をより効果的に遮蔽するために、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。さらに、赤外線遮蔽シートのヘイズは、透明性を損なわないものとする必要があり、8%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
高屈折率層と低屈折率層との屈折率差を利用した塗布による高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した多層膜を作製する場合、従来の技術では高屈折率樹脂層に屈折率が高い誘電体微粒子(酸化チタン微粒子等)を含有させ、低屈折率樹脂層に屈折率が低い誘電体微粒子(シリカ微粒子等)を含有させていた(例えば、特開2012−93481号公報)。可視光領域から赤外線領域にわたって前記誘電体微粒子の屈折率は概ね一定であり、可視光領域から赤外線領域にわたって前記低屈折率樹脂層の屈折率も概ね一定である。
【0034】
しかし、本願発明者らは鋭意検討した結果、可視光領域の550nmの波長での屈折率から赤外線領域の780nm〜2500nmの任意波長(特に780nm〜1500nmの任意波長)における屈折率を差し引いた値が0.1以上である、微粒子を含有する低屈折率樹脂層を発見し、さらに前記微粒子を含有する低屈折率樹脂層が赤外吸収能も有していることから、前記微粒子を含有する低屈折率樹脂層を、微粒子を含有する高屈折率樹脂層(特に550nmの波長での屈折率から780nm〜1500nmでの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以下である高屈折率樹脂層、例えば従来の技術に使用されている酸化チタン等の誘電体微粒子を含有する高屈折率樹脂層)を組み合わせることで、従来の技術より効率的に赤外線領域の光を遮蔽することが可能となることを見出した。
【0035】
前記条件が満たされる前記高屈折率樹脂層に含有される微粒子は、可視光領域の光吸収が少なく、赤外線領域で高屈折率を示す微粒子が適している。そのような微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、ダイヤモンド等の誘電体からなる誘電体微粒子を例示することができる。これらのうち、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、及びダイヤモンドの少なくとも一種の誘電体微粒子が好適である。また、上に挙げた誘導体からなる誘電体微粒子以外に、赤外線領域で高屈折率を示し、かつ、赤外吸収能を有する電気伝導性の金属酸化物微粒子として、ホウ化物の微粒子、窒化物の微粒子を例示することができる。ホウ化物の微粒子、窒化物の微粒子としては、具体的には、六ホウ化ランタンの微粒子、窒化チタンの微粒子が好適である。前記高屈折率樹脂層の少なくとも1層は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、ダイヤモンド、ホウ化物、及び窒化物からなる群より選択される少なくとも一種の微粒子を含むことが好ましい。
【0036】
これら赤外線領域で高屈折率を示す微粒子は、単独で用いられてもよく、2種類以上を併用しても良く、さらに積層膜中の各々の高屈折率樹脂層において別々の微粒子を用いても構わない。
【0037】
また、少なくとも1層の低屈折率樹脂層に含有される微粒子は、可視光領域の光吸収が少なく、赤外線領域で良好な光吸収を有し、かつ屈折率が高屈折率樹脂層に含有される微粒子よりも相対的に低い屈折率を有しているものが適している。そのような微粒子としては、赤外線領域にプラズマ波長を持っている電気伝導性の金属酸化物微粒子が挙げられる。そのような金属酸化物微粒子としては、具体的には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン等の金属酸化物の微粒子を例示することができる。これらのうち、可視光領域における光吸収性の少ない酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化タングステンの少なくとも1種からなる群より選択される少なくとも一種の微粒子が好ましく、それらの中でも酸化インジウムの微粒子がさらに好ましい。
【0038】
また、これらの金属酸化物微粒子の電気導電性を向上させるために、これらの金属酸化物微粒子に対して、第三成分(第三の元素;ドーパント)をドープすることが好ましい。酸化スズの微粒子に対してドープされるドーパントとしては、アンチモン(Sb)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等が挙げられ、酸化インジウムの微粒子に対してドープされるドーパントとしては、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、アンチモン、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)等が挙げられ、酸化亜鉛の微粒子に対してドープされるドーパントとしては、アルミニウム、ガリウム、インジウム(In)、スズ、アンチモン、ニオブ等が挙げられ、酸化タングステンの微粒子に対してドープされるドーパントとしては、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、タリウム(Tl)、インジウム、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、鉄(Fe)、スズ、アルミニウム、銅(Cu)等が挙げられる。また、これらの金属酸化物微粒子の電気導電性を向上させるために、第三成分を酸素欠陥にすることも好ましい。すなわち、これらの金属酸化物微粒子に酸素欠陥を持たせてもよい。酸化タングステンの微粒子に対して酸素欠陥を持たせた金属酸化物微粒子としては、WO(但し、2.45≦x≦2.999)等の組成式で表される酸素欠陥酸化タングステン(酸素欠乏酸化タングステン)の粒子等が挙げられる。第三成分をドープしたか、または酸素欠陥を持たせた金属酸化物微粒子の中でも、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(以下、適宜「ITO」と略記する)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸素欠乏酸化タングステン、及びセシウムドープ酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも一種の微粒子が好ましく、スズドープ酸化インジウムがより好ましい。
【0039】
さらに、前記金属酸化物微粒子は、60MPaで圧縮した際の粉体抵抗が、100Ω・cm以下であることが好ましく、10Ω・cm以下であることがより好ましく、1Ω・cm以下であることがさらに好ましい。60MPaで圧縮した際の粉体抵抗が100Ω・cmより高い微粒子を用いた場合、微粒子のプラズマ共鳴に由来する吸収が2500nmより大きくなり、赤外線遮蔽効果が低減する。なお、粉体抵抗の測定法としては、粉体抵抗測定システムMCP−PD51型(株式会社三菱化学アナリテック製)を用いる方法が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0040】
また、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層は、非中空微粒子(中実微粒子)、特に酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも一種の非中空微粒子を含む場合において、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層(非中空微粒子を含む層と同じでも異なっていてもよい)が中空微粒子を含むことが好ましく、低屈折率である中空微粒子(特に前記非中空微粒子より低屈折率である中空微粒子)を含むことがより好ましい。これにより、赤外線遮蔽シートの赤外線遮蔽効果をさらに向上させることができる。
【0041】
前記中空微粒子としては、中空シリカ微粒子、中空アクリルビーズ(中空アクリル樹脂微粒子)等の公知の中空微粒子を用いることができる。前記非中空微粒子としては、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化タングステンの少なくとも1種からなる群より選択される少なくとも一種の非中空微粒子が好ましく、アンチモンドープ酸化スズ、ITO、ガリウムドープ酸化亜鉛、酸素欠乏酸化タングステン、及びセシウムドープ酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも一種の非中空微粒子がより好ましい。
【0042】
前記中空微粒子の空孔率は、10体積%〜90体積%であることが好ましい。前記中空微粒子の空孔率が10体積%未満である場合は、中空微粒子内の空孔による微粒子の屈折率が低下する効果が小さくなり、中空微粒子を低屈折率樹脂層に用いることによる効果が小さくなる。また、中空微粒子の空孔率が90体積%より高い場合、中空微粒子の機械的強度が低下し、前記中空微粒子が中空の状態を保てなくなるので、好ましくない。
【0043】
前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子として金属酸化物非中空微粒子等の非中空微粒子と中空微粒子とを組み合わせる場合、低屈折率樹脂層に含有される微粒子のうち非中空微粒子の割合は、10重量%〜90重量%であることが好ましく、20重量%〜90重量%であることがより好ましい。非中空微粒子の割合が10重量%未満の場合は、非中空微粒子による赤外線吸収能が不足するので、好ましくない。また、非中空微粒子の割合が90重量%より多い場合は、中空微粒子の割合が少なくなり、好ましくない。
【0044】
また、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が、前述した電気伝導性の金属酸化物微粒子(以下、「電気伝導性微粒子」と称する)(特に、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも一種の微粒子)を含む場合、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層(電気伝導性の金属酸化物微粒子を含む層と同じでも異なっていてもよい)が、低屈折率の誘電体微粒子を含むことができる。前記誘電体微粒子としては、シリカ微粒子、フッ化マグネシウム微粒子等を用いることができる。さらに、前記誘電体微粒子として、中空誘電体微粒子も用いることができる。前記中空誘電体微粒子としては、例えば、中空シリカ微粒子、中空アクリルビーズ等の中空誘電体微粒子を挙げることができる。前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層が電気伝導性の金属酸化物微粒子(特に、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化タングステンからなる群より選択される少なくとも一種の微粒子)を含む場合に、前記低屈折率樹脂層の少なくとも1層(電気伝導性の金属酸化物微粒子を含む層と同じでも異なっていてもよい)がシリカ微粒子、特に中空シリカ微粒子を含むことで、前記低屈折率樹脂層の屈折率を下げて赤外線をより効果的に遮蔽することができる。
【0045】
低屈折率樹脂層全体として電気伝導性微粒子と誘電体微粒子(特に中空誘電体微粒子)とを組み合わせて使用する場合、低屈折率樹脂層全体に含有される微粒子のうち、電気伝導性微粒子の割合は10重量%〜90重量%であることが好ましく、20重量%〜90重量%であることがより好ましい。電気伝導性微粒子の割合が10重量%未満の場合は、金属酸化物による赤外線吸収能が不足するので、好ましくない。電気伝導性微粒子の割合が90重量%より多い場合は、誘電体微粒子(特に中空誘電体微粒子)の割合が少なくなり、好ましくない。
【0046】
低屈折率樹脂層に用いる微粒子(電気伝導性微粒子、誘電体微粒子、中空微粒子等)は、単独で用いてもよく、2種類以上で用いてもよい。低屈折率樹脂層に2種類以上の微粒子を用いる場合、異なる種類の微粒子を別の低屈折率樹脂層に含有させてもよく、異なる種類の微粒子を同じ低屈折率樹脂層に含有させてもよい。
【0047】
さらに、本発明の赤外線遮蔽シートの前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子は、平均一次粒子径または平均分散粒子径が、300nm以下であることが好ましく、1nm〜200nmであることがより好ましい。前記微粒子の平均一次粒子径または平均分散粒子径が300nmより大きくなると、赤外線遮蔽シートのヘイズが高くなり、赤外線遮蔽シートを通した視認性が劣ってしまう。なお、本明細書において、「微粒子の平均一次粒子径」は、分散前の微粒子の平均粒子径を意味し、「微粒子の平均分散粒子径」は、分散工程後の分散中の微粒子の平均粒子径を意味するものとする。前記平均一次粒子径は、BET(ブルナウアー−エメット−テラー)法で測定された比表面積より算出されたものである。前記平均分散粒子径を測定する粒子径分布測定装置は、特に限定されないが、「ナノトラックUPA−EX150」(日機装株式会社製)であることが好ましい。
【0048】
前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層からなる積層膜では遮蔽できない赤外領域の光を遮蔽するために、赤外線吸収色素からなる層を組み合わせることで更に赤外遮蔽性が向上した赤外線遮蔽シートを作製することができる。前記赤外線吸収色素からなる層は、780nm〜2000nmの波長の光を選択的に吸収するものであることが好ましい。また、透明性を確保する為に、赤外吸収色素層の可視透過率は70%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。さらに外観上好ましい色相とする為に、赤外吸収色素層のL*a*b*表色系でb*の値は10以下が好ましく、8以下がより好ましい。b*値が10より大きくなると、不快に感じる色相となり好ましくない。尚、L*a*b*表色系とはJIS Z8781で採用されている表色系のことである。
【0049】
前記可視光透過率、b*値を満たす赤外吸収色素であれば特に限定されないが、前記の化1〜化2が例示できる。また前記可視光透過率、b*値を満たすよう赤外吸収色素を混合しても構わない。
【0050】
前記の化1にて、X、Yはそれぞれ独立して低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホンアミド基を表す。m及びnはいずれも平均値であり、m、nはそれぞれ0以上12以下、かつ、mとnとの和は0以上12以下である。また、本発明において置換アミノ基は特に限定されないが、例えば低級アルキル基又は置換したアミノ基が含まれる。また、低級アルキル基、低級アルコキシ基は、それぞれ直鎖状または分岐状の炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基を指す。
【0051】
前記の化2にて、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、Rはそれぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、炭化水素オキシ基、エステル基からなる群より選ばれる原子または官能基を表す。Rにおける、置換位置及び置換個数、置換基の種類は特に限定されるものではなく、2個以上の置換基を持つ場合は2種類以上の置換基を混在させることが可能である。 脂肪族炭化水素基としては、飽和又は不飽和の直鎖、分岐状の炭化水素基が挙げられ、その炭素数は1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、4〜18がさらに好ましい。ここで、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐のアルキル基の例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、アリル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−セチル基、n−ヘプタデシル基、n−ブテニル基等が挙げられる。好ましくは飽和の直鎖アルキル基である。特にn−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−セチル基が好ましい。
脂環式炭化水素基としては、飽和又は不飽和の環状の炭化水素基が挙げられ、環状の炭化水素基の例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等の炭素数3〜12の環状の炭化水素基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ベンゾピレニル基などが挙げられ、さらには、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基、インドレニル基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基、ピリドニル基などの複素環基、ベンゾキノリル基、アントラキノリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基のような縮合系複素環基が挙げられる。これらのうち好ましいものはフェニル基、ナフチル基、ピリジル基及びチエニル基であり、特にフェニル基が好ましい。
炭化水素オキシ基としては、上記脂肪族炭化水素基を含む炭化水素オキシ基が挙げられる。エステル基としては、上記脂肪族炭化水素基を含むエステル基が挙げられる。
【0052】
赤外線遮蔽シートの赤外線遮蔽性能、平滑性、低ヘイズ、電波透過性を満たすために、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子を適切に分散させることは重要である。同様の理由で色素を分散させて使用する場合は適切に分散させることが重要である。微粒子の分散方法として、サンドミル、アトライター、ボールミル、ホモジナイザー、ロールミル、ビーズミル等を用いる方法が好ましい。これらの中でも、ビーズミルを用いる方法が特に好ましい。ビーズミルを用いた場合、ビーズミルの周速は3m/s〜10m/sであることが好ましい。ビーズミルの周速が3m/sより低くなると、微粒子を十分に分散できず、ビーズミルの周速が10m/sより高くなると、特に低屈折率樹脂層に含有される微粒子(特に電気伝導性微粒子)の表面が傷つけられ、赤外線吸収性能が低下する。分散エネルギーの適正な範囲は、分散に用いる装置、前記高屈折率樹脂層、前記低屈折率樹脂層及び赤外吸収色素層に含有される樹脂バインダー、分散時の微粒子濃度等によって若干異なるが、比較的低い分散エネルギーで微粒子を分散させた方が良い。さらに、微粒子を分散させる処理を行った後に粗粒子が残る場合は、更に濾過、遠心分離等の処理で粗粒子を除くことが好ましい。
【0053】
前記高屈折率樹脂層、低高屈折率樹脂層及び赤外吸収色素層は、溶媒中に樹脂バインダーを溶解させると共に微粒子を分散させてなる分散液を透明支持体等の物体の表面に塗布した後、溶媒を蒸発させる方法で形成することができる。前記分散液中への微粒子の分散に使用する溶媒とは、特に限定されるものではないが、水、有機溶媒、又は、水及び有機溶媒の混合物を使用できる。前記有機溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル等)、エーテル系溶媒(イソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等)、グリコール系溶媒(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等)、グリコールエーテル系溶媒(メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、グリコールエステル系溶媒(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等)、グライム系溶媒(モノグライム、ジグライム等)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム等)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等)、ピリジン、テトラヒドロフラン、スルホラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。分散に使用する溶媒は、好ましくは、水、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、及び炭化水素系溶媒からなる群より選択される少なくとも一種の溶媒であり、より好ましくは、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びアセチルアセトンからなる群より選択される少なくとも一種の溶媒である。
【0054】
微粒子又は赤外吸収色素を溶媒中に分散させる際には、溶媒に分散剤を添加してもよい。前記分散剤としては、脂肪酸塩(石けん)、α−スルホ脂肪酸エステル塩(MES)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルキル硫酸塩(AS)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)、アルキル硫酸トリエタノール等の低分子陰イオン性(アニオン性)化合物;脂肪酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(APE)、ソルビトール、ソルビタン等の低分子非イオン系化合物;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジニウムクロリド等の低分子陽イオン性(カチオン性)化合物;アルキルカルボキシルベタイン、スルホベタイン、レシチン等の低分子両性系化合物;ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸系単量体との共重合体塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等に代表される高分子水系分散剤;ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン等の高分子非水系分散剤;ポリエチレンイミン、アミノアルキルメタクリレート共重合体等の高分子カチオン系分散剤が代表的なものであるが、本発明で使用される微粒子に好適に適用されるものであれば、ここに例示したような形態のもの以外の構造を有するものを排除しない。
【0055】
前記溶媒に添加する分散剤としては、具体的な商品名を挙げると、次のようなものが知られている。すなわち、前記分散剤として、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17(以上、いずれも共栄社化学株式会社製)、ソルプラスAX5、ソルプラスTX5、ソルスパース9000、ソルスパース12000、ソルスパース17000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース54000、ソルシックス250(以上、いずれも日本ルーブリゾール株式会社製)、EFKA4008、EFKA4009、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4060、EFKA4080、EFKA7462、EFKA4020、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4400、EFKA4401、EFKA4402、EFKA4403、EFKA4300、EFKA4320、EFKA4330、EFKA4340、EFKA6220、EFKA6225、EFKA6700、EFKA6780、EFKA6782、EFKA8503(以上、いずれもBASFジャパン株式会社製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPN411、フェイメックスL−12(以上、いずれも味の素ファインテクノ株式会社製)、TEXAPHOR−UV21、TEXAPHOR−UV61(以上、いずれもBASFジャパン株式会社製)、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−106、DISPERBYK−108、DISPERBYK−111、DISPERBYK−116、DISPERBYK−130、DISPERBYK−140、DISPERBYK−142、DISPERBYK−145、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−180、DISPERBYK−182、DISPERBYK−192、DISPERBYK−193、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2020、DISPERBYK−2025、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2070、DISPERBYK−2155、DISPERBYK−2164、BYK220S、BYK300、BYK306、BYK320、BYK322、BYK325、BYK330、BYK340、BYK350、BYK377、BYK378、BYK380N、BYK410、BYK425、BYK430(以上、いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスパロン1751N、ディスパロン1831、ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン1934、ディスパロンDA−400N、ディスパロンDA−703−50、ディスパロンDA−725、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−7301、ディスパロンDN−900、ディスパロンNS−5210、ディスパロンNVI−8514L、ヒップラードED−152、ヒップラードED−216、ヒップラードED−251、ヒップラードED−360(以上、いずれも楠本化成株式会社)、FTX−207S、FTX−212P、FTX−220P、FTX−220S、FTX−228P、FTX−710LL、FTX−750LL、フタージェント212P、フタージェント220P、フタージェント222F、フタージェント228P、フタージェント245F、フタージェント245P、フタージェント250、フタージェント251、フタージェント710FM、フタージェント730FM、フタージェント730LL、フタージェント730LS、フタージェント750DM、フタージェント750FM(以上、いずれも株式会社ネオス製)、AS−1100、AS−1800、AS−2000(以上、いずれも東亞合成株式会社製)、カオーセラ2000、カオーセラ2100、KDH−154、MX−2045L、ホモゲノールL−18、ホモゲノールL−95、レオドールSP−010V、レオドールSP−030V、レオドールSP−L10、レオドールSP−P10(以上、いずれも花王株式会社製)、エバンU103、シアノールDC902B、ノイゲンEA−167、プライサーフA219B、プライサーフAL(以上、いずれも第一工業製薬株式会社製)、メガファックF−477、メガファック480SF、メガファックF−482、(以上、いずれもDIC株式会社製)、シルフェイスSAG503A、ダイノール604(以上、いずれも日信化学工業株式会社製)、SNスパース2180、SNスパース2190、SNレベラーS−906(以上、いずれもサンノプコ株式会社製)、S−386、S−420(以上、いずれもAGCセイミケミカル株式会社製)等が例示できる。
【0056】
前記高屈折率樹脂層や低屈折率樹脂層は、樹脂バインダー中に微粒子が分散されたものである。前記樹脂バインダーとしては、微粒子を分散維持できる樹脂であれば、特に制限はなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。赤外吸収色素層の樹脂バインダーも同様である。
【0057】
前記熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、(直鎖状でない)低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンモノマー)・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、アクリル樹脂(メタクリル樹脂)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、PET樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリフルオロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂(ポリサルフォン樹脂)、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、前記熱可塑性樹脂は、これらの樹脂の2種以上を混合させたものであっても良い。
【0058】
前記熱硬化性樹脂としては、加熱により硬化可能な官能基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基を有する硬化性化合物が挙げられる。また、前記光硬化性樹脂としては、光照射により硬化可能な官能基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、マレイミド基、(メタ)アクリル基等の不飽和二重結合含有基を有する樹脂が挙げられる。
【0059】
上記環状エーテル基を有する硬化性化合物としては、特に限定されず、例えば、脂環式エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、反応速度や汎用性の観点から、脂環式エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキセタン樹脂が好適である。上記脂環式エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、2、2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ポリオキシプロピレンビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、上記脂環式エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂として、その他に、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等も挙げられる。
【0060】
上記エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロンN−740、エピクロンN−770、エピクロンN−775(以上、いずれもDIC株式会社製)、エピコート152、エピコート154(以上、いずれも三菱化学株式会社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;エピクロンN−660、エピクロンN−665、エピクロンN−670、エピクロンN−673、エピクロンN−680、エピクロンN−695、エピクロンN−665−EXP、エピクロンN−672−EXP(以上、いずれもDIC株式会社製)等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;NC−3000P(日本化薬株式会社製)等のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂;EP1032S50、EP1032H60(以上、いずれも三菱化学株式会社製)等のトリスフェノールノボラック型エポキシ樹脂;XD−1000−L(日本化薬株式会社製)、エピクロンHP−7200(DIC株式会社製)等のジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂;エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン850、エピクロン860、エピクロン4055(以上、いずれもDIC株式会社製)等のビスフェノールA型エポキシ化合物;エピコート807(三菱化学株式会社製)、エピクロン830(DIC株式会社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;RE−810NM(日本化薬株式会社製)等の2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂;ST−5080(新日鐵化学株式会社製)等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂;EP−4000、EP−4005(以上、いずれも株式会社ADEKA製)等のポリオキシプロピレンビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0061】
上記脂環式エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、セロキサイド2021、セロキサイド2080、セロキサイド3000(以上、いずれもダイセル・オルネクス株式会社製)等が挙げられる。また、上記オキセタン樹脂の市販品として、例えば、エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上、いずれも宇部興産株式会社製)等が挙げられる。これらの環状エーテル基を有する硬化性化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記不飽和二重結合含有基を有する光硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、マレイミド基、(メタ)アクリル基等の基を有する樹脂が挙げられ、それらの基を有する樹脂の中でも、反応性や汎用性の面より(メタ)アクリル基を有する樹脂が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル基とは、アクリル基又はメタクリル基のことをいう。
【0063】
前記の(メタ)アクリル基を有する樹脂としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物との反応物であるハーフエステル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬株式会社製の、KAYARAD HX−220、KAYARAD HX−620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンとの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば日本化薬株式会社製のKAYARAD DPHA等)、モノグリシジル化合物又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのことを言い、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のことを言う。
【0064】
モノグリシジル化合物又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートに用いられるグリシジル化合物(モノグリシジル化合物又はポリグリシジル化合物)としては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、ブロモ化ビスフェノールA、ブロモ化ビスフェノールF、ブロモ化ビスフェノールS、ブロモ化フェノールノボラック、ブロモ化クレゾールノボラック、クロロ化ビスフェノールS、クロロ化ビスフェノールA等のポリフェノール類のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
【0065】
これらモノグリシジル化合物又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートは、モノグリシジル化合物又はポリグリシジル化合物のエポキシ基(グリシジル基)に当量の(メタ)アクリル酸をエステル化反応させる事によって得ることができる。この合成反応は、一般的に知られている方法により行うことができる。例えば、レゾルシンジグリシジルエーテルにその当量の(メタ)アクリル酸を、触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)及び重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)と共に添加して、例えば80℃〜110℃でエステル化反応を行う。こうして得られた(メタ)アクリル化レゾルシンジグリシジルエーテルは、ラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂である。なお、本明細書において、(メタ)アクリル化とは、アクリル化又はメタクリル化のことを言い、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基のことを言う。
【0066】
また、本発明の赤外線遮蔽シートに含有される樹脂バインダーには、前記樹脂バインダーが光硬化性樹脂である場合には、必要に応じて光重合開始剤を加えることができ、前記樹脂バインダーが熱硬化性樹脂である場合には、必要に応じて熱硬化剤を加えることができる。前記光重合開始剤としては、光照射により、光硬化性樹脂中の不飽和二重結合やエポキシ基等を重合反応させるためのものであれば特に制限は無く、例えば、カチオン重合型光重合開始剤やラジカル重合型光重合開始剤が挙げられる。前記光重合開始剤としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア907」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア2959」)、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社(Merck KGaA)製「ダロキュア953」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1116」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア1173」)、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア651」)等のベンゾイン化合物、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3、3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン(日本化薬株式会社製「カヤキュアーMBP」)等のベンゾフェノン化合物;チオキサントン、2−クロルチオキサントン(日本化薬株式会社製「カヤキュアーCTX」)、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン(日本化薬株式会社製「カヤキュアーRTX」)、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン(日本化薬株式会社製「カヤキュアーCTX」)、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製「カヤキュアーDETX」)、2,4−ジイソプロピルチオキサントン(日本化薬株式会社製「カヤキュアーDITX」)等のチオキサントン化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社製「ルシリンTPO」)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
上記光重合開始剤として、上記ベンゾフェノン化合物や上記チオキサントン化合物を用いる場合には、光重合反応を促進させるために、反応助剤を併用することが好ましい。上記反応助剤としては、特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ミヒラーケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン化合物が挙げられる。また、前記熱硬化剤としては、加熱により熱硬化性樹脂中の不飽和二重結合やエポキシ基等を反応させ、架橋させるためのものであれば特に制限は無く、例えば酸無水物、アミン類、フェノール類、イミダゾール類、ジヒドラジン類、ルイス酸、ブレンステッド酸塩類、ポリメルカプトン類、イソシアネート類、ブロックイソシアネート類等が挙げられる。
【0068】
前記高屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率は、前記高屈折率樹脂層全体に対して、40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましく、70重量%以上であることが特に好ましく、90重量%以上であることが最も好ましい。前記高屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率が40重量%より少なくなると、前記高屈折率樹脂層において樹脂バインダーの屈折率が支配的となり、効果的に赤外領域の光を反射することができない。また、前記高屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率は、前記高屈折率樹脂層全体に対して、95重量%以下であることが好ましい。前記高屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率が95重量%より多くなると、前記高屈折率樹脂層における樹脂バインダーの割合が少なくなるため、シート状に作製することが困難となる。
【0069】
前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率は、前記低屈折率樹脂層全体に対して、40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましく、70重量%以上であることが特に好ましく、90重量%以上であることが最も好ましい。前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率が40重量%より少なくなると、前記低屈折率樹脂層において樹脂バインダーの屈折率が支配的となり、前記赤外線遮蔽シートの赤外反射性能が低くなる。また、前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率は、前記低屈折率樹脂層全体に対して、95重量%以下であることが好ましい。前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率が95重量%より多くなると、前記低屈折率樹脂層における樹脂バインダーの割合が少なくなるため、シート状に作製することが困難となる。さらに、前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率が95重量%より多くなると、前記低屈折率樹脂層に含有される微粒子が電気伝導性微粒子である場合、微粒子同士が繋がるため、前記赤外線遮蔽シートの電波透過性能が低くなる。
【0070】
前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の表面抵抗は、1kΩ/□(10Ω/□)以上であることが好ましく、10kΩ/□(10Ω/□)以上であることがより好ましく、1000kΩ/□(10Ω/□)以上であることがさらに好ましい。前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の表面抵抗が1kΩ/□より低いと、前記赤外線遮蔽シートが電波を透過し難くなるので、好ましくない。
【0071】
また、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の各々の表面の最大高低差(表面粗さ)は、70nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。凝集微粒子がなくなるまで微粒子を分散液中に分散させてから分散液を塗布(塗工)して前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層を形成すると、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の各々の表面の最大高低差を好ましい最大高低差にすることができる。また、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層が70nmを超える表面粗さ(表面の最大高低差)を持つと、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の表面で、入射した赤外光の散乱が起きてしまい、良好な反射性能を前記赤外線遮蔽シートに付与できなくなる。
【0072】
本発明の赤外線遮蔽シートを製造する方法は、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層を塗布により形成する工程を含むことが好ましい。本発明の赤外線遮蔽シートは、高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層を形成するための塗布液を、公知の塗布方式から適宜選択した塗布方式により透明支持体等の支持体上に塗布し、乾燥する工程を含む方法で製造することが好ましい。前記塗布液の塗布方式としては、特に限定されず、ワイヤーバーコーター等のバーコーター、スピンコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーター、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター等のコーティング装置を使用する方法が挙げられるが、前記高屈折率樹脂層及び前記低屈折率樹脂層の表面の平滑性のために、好ましくはバーコーター、スピンコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター等の薄膜作製に適したコーティング装置を使用する方法が好ましい。
【0073】
また、目的に応じて、赤外線遮蔽シートの上に、粘着層、ハードコート層、等の機能層を積層させて赤外線遮蔽シートとしても構わない。さらに、前記高屈折率樹脂層、前記低屈折率樹脂層や赤外吸収色素層中に、若しくは必要に応じて積層される前記機能層中に、必要に応じ、例えば、赤外線吸収色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0074】
〔合わせガラス用中間膜〕
本発明の合わせガラス用中間膜は、本発明の赤外線遮蔽シートと、前記赤外線遮蔽シートの少なくとも一方の最外層の上に形成された中間膜とを備えることを特徴とする。本発明の合わせガラス用中間膜は、本発明の赤外線遮蔽シートの両方の最外層の上にそれぞれ形成された第一及び第二の中間膜を含むことが、合わせガラス化の容易化の観点から好ましい。
【0075】
本発明の合わせガラス用中間膜は、第一の中間膜に加えて第二の中間膜を含むことが好ましい。通常の合わせガラス用中間膜では、前記赤外線遮蔽シートの両側の前記第一及び第二の中間膜の膜厚は同じであるが、本発明は、そのような態様の合わせガラス用中間膜に限定されず、前記第一および第二の中間膜の厚さが異なる合わせガラス用中間膜とすることもできる。また、前記第一および第二の中間膜の組成についても、同じであっても異なっていてもよい。
【0076】
第一および第二の中間膜を含む合わせガラス用中間膜を加熱しながら圧着する工程の前後における熱収縮率は、そのときの加熱温度の範囲において1〜20%であることが好ましく、2〜15%であることがより好ましく、2〜10%であることが特に好ましい。第一および第二の中間膜の厚みは、100〜1000μmであることが好ましく、200〜800μmであることがより好ましく、300〜500μmであることが特に好ましい。また、第一および第二の中間膜は、複数のシートを重ねることによって厚膜化してもよい。
【0077】
また、第一および第二の中間膜の脆性の基準としては、引張り試験による破断伸びが100〜800%であることが好ましく、100〜600%であることがより好ましく、200〜500%であることが特に好ましい。
【0078】
前記中間膜は、ポリビニルブチラールを含むことが好ましい。前記第一および第二の中間膜は、樹脂中間膜であることが好ましい。前記樹脂中間膜は、ポリビニルアセタール系を主成分とするポリビニルアセタール系の樹脂フィルムであることが好ましい。前記ポリビニルアセタール系の樹脂フィルムとしては、特に制限はなく、例えば特開平6−000926号公報や特開2007−008797号公報等に記載のものを好ましく用いることができる。前記ポリビニルアセタール系の樹脂フィルムの中でも、本発明ではポリビニルブチラール樹脂フィルム(ポリビニルブチラールフィルム)を用いることが好ましい。前記ポリビニルブチラール樹脂フィルムは、ポリビニルブチラールを主成分とする樹脂フィルムであれば、特に定めるものは無く、広く公知の合わせガラス用中間膜に使用されているポリビニルブチラール樹脂フィルムを採用できる。その中でも、本発明では、前記中間膜は、ポリビニルブチラールを主成分とする樹脂中間膜またはエチレンビニルアセテートを主成分とする樹脂中間膜であることが好ましく、ポリビニルブチラールを主成分とする樹脂中間膜であることが特に好ましい。なお、主成分である樹脂とは、前記樹脂中間膜の50質量%以上の割合を占める樹脂のことをいう。
【0079】
前記第一および第二の中間膜は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、例えば、熱線遮蔽用の微粒子及び遮音用の微粒子、可塑剤等を挙げることができる。前記の熱線遮蔽用の微粒子及び遮音用の微粒子としては、例えば、無機微粒子、金属微粒子を挙げることができる。このような微粒子を、樹脂中間膜である第一または第二の中間膜等の弾性体内に分散混在せしめることにより、遮熱の効果を得られる。同時に、このような構成により、音波の伝搬を阻害し、振動減衰効果を得ることが好ましい。また、微粒子の形状は、球状が望ましいが、真球でなくともよい。また、微粒子の形状を変える処理をしてもよい。また、微粒子は、中間膜、好ましくはポリビニルブチラール(以下、「PVB」と略記する)からなる中間膜内で分散していることが望ましい。微粒子は、適当なカプセルに入れて中間膜中に添加することや、分散剤とともに中間膜中に添加することもよい。前記第一および第二の中間膜が樹脂成分を含む場合の微粒子の添加量は、特に制限はないが、樹脂成分100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましい。
【0080】
前記無機微粒子としては、炭酸カルシウム微粒子、アルミナ微粒子、カオリンクレー、珪酸カルシウム微粒子、酸化マグネシウム微粒子、水酸化マグネシウム微粒子、水酸化アルミニウム微粒子、炭酸マグネシウム微粒子、タルク粉、長石粉、マイカ粉、バライト粉、炭酸バリウム微粒子、酸化チタン微粒子、シリカ微粒子、ガラスビ−ズ等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、混合して用いられてもよい。
【0081】
また、前記熱線遮蔽微粒子としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)微粒子、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)微粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)微粒子、スズドープ酸化亜鉛微粒子、ケイ素ドープ酸化亜鉛微粒子、アンチモン酸亜鉛微粒子、6ホウ化ランタン微粒子、6ホウ化セリウム微粒子、金微粉、銀微粉、白金微粉、アルミニウム微粉、鉄微粉、ニッケル微粉、銅微粉、ステンレス微粉、スズ微粉、コバルト微粉及びこれらを含む合金粉末等が挙げられる。前記遮光剤としては、カーボンブラック、赤色酸化鉄等が挙げられる。前記顔料としては、黒色顔料カーボンブラックと赤色顔料(C.I.Pigment Red)と青色顔料(C.I.Pigment Blue)と黄色顔料(C.I.Pigment Yellow)との4種を混合してなる暗赤褐色の混合顔料等が挙げられる。
【0082】
前記可塑剤としては、特に限定されず、この種の中間膜用の可塑剤として一般的に用いられている公知の可塑剤を用いることができる。前記可塑剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(4G7)、オリゴエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(NGO)などが好適に用いられる。前記中間膜が樹脂中間膜である場合、これらの可塑剤は、一般に、前記樹脂中間膜の主成分である樹脂(好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂)100質量部に対して25〜70質量部の範囲で用いられる。
【0083】
本発明の合わせガラス用中間膜を製造する方法は、本発明の赤外線遮蔽シートと中間膜とを順に積層した後に、前記中間膜と前記赤外線遮蔽シートとを熱接着する工程を含むことが好ましい。熱接着の方法としては、特に制限はなく、赤外線遮蔽シート/中間膜の積層体(赤外線遮蔽シート上に中間膜を重ねたもの)に加熱体を押し当てる熱圧着や、レーザー照射による加熱での熱融着等を採用することができる。その中でも、本発明の合わせガラス用中間膜を製造する方法では、中間膜に対して赤外線遮蔽シートを熱接着する工程が、中間膜に対して赤外線遮蔽シートを熱圧着する工程(熱圧着工程)であることが好ましい。
【0084】
熱圧着の方法としては、特に制限はないが、例えば80〜140℃の加熱体を赤外線遮蔽シート/中間膜の積層体に押し当てる方法が好ましい。前記加熱体は、平面の加熱体でも曲面の加熱体でもよく、ローラーでもよい。熱圧着には、複数の加熱ローラーや、加熱可能な平面の挟圧面等を用いることができ、これらを組み合わせて用いてもよい。また、熱圧着は、前記赤外線遮蔽シート/中間膜の積層体の両方の面に対して行っても、片面のみに行ってもよく、その場合は、熱圧着に用いるローラーの一方が加熱していないローラーや挟圧面等であってもよい。これらの中でも本発明の合わせガラス用中間膜を製造する方法としては、前記熱圧着工程で加熱ローラーを用いることが好ましく、加熱ローラーと非加熱ローラーとを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0085】
通常、中間膜は、貼着の際に空気が逃げ易いように、表面がエンボス加工などにより粗面状態にされている。貼り合わせた面は、被着面に倣って平滑になり、光学性能が良くなるが、もう一方の面は、ガラス板等に貼り合わせるために粗面状態を保持する必要がある。従って、熱圧着ローラーのうち中間膜に接する側のローラーの表面を粗面状態にして、中間膜の粗面状態を保つようにすることが好ましい。すなわち、中間膜の少なくとも一方の表面がエンボス加工されてあり、エンボス加工された表面が本発明の赤外線遮蔽シートと接するように積層することが好ましい。また、熱圧着後に、中間膜における赤外線遮蔽シートと接していない面を積極的にエンボス加工してもよい。
【0086】
なお、赤外線遮蔽シートの作製時に使用した透明支持体は、前記熱接着工程前後で剥離してもよいし、剥離せずに合わせガラス用中間膜の一部としても良い。
【0087】
本発明の合わせガラス用中間膜を製造する方法は、第一の中間膜が積層された赤外線遮蔽シートの反対面に第二の中間膜を積層する工程を含むことが好ましい。すなわち、本発明の合わせガラス用中間膜は、第一の中間膜に加えて第二の中間膜を有することが好ましい。本発明の一例に係るガラス用中間膜は、図2に示すように、本発明に係る赤外線遮蔽シート2と、赤外線遮蔽シート2の一方の面上に形成された第一の中間膜3と、赤外線遮蔽シート2の他方の面上に形成された第二の中間膜3’とを備えている。赤外線遮蔽シート2と第二の中間膜3’とは隣接していてもよいし、それらの間に他の構成層を含んでいてもよいが、赤外線遮蔽シート2と第二の中間膜3’とは隣接していることが好ましい。これら第二の中間膜や他の構成層は、第一の中間膜と赤外線遮蔽シートとの熱圧着工程と同様の方法で赤外線遮蔽シートに熱圧着されることが好ましい。
【0088】
前記赤外線遮蔽シート及び前記中間膜を含む合わせガラス用中間膜は、加工に際し、刃物を用いて切断したり、レーザー、ウオータージェットや熱によって切断したりしてもよい。
【0089】
〔合わせガラス〕
本発明の合わせガラスは、本発明の合わせガラス用中間膜と、複数のガラス板(2枚のガラス板)を有し、前記複数のガラス板(少なくとも2枚のガラス板)の間に前記合わせガラス用中間膜が挿入されていることを特徴とする。また、本発明の合わせガラスは、任意のサイズに好ましく裁断することができる。
【0090】
本発明の合わせガラスの用途は、特に制限はないが、住宅や自動車等の窓ガラス用であることが好ましい。本発明の窓用部材は、本発明の合わせガラスを含んでいる。
【0091】
合わせガラス用中間膜を、第一のガラス板及び第二のガラス板とそれぞれ積層する方法は、特に制限はなく、公知の方法により2枚のガラス板の間に挿入して積層することができる。
【0092】
2枚のガラス板に合わせガラス用中間膜が挟持された積層体の合わせガラスは、ガラス板/第一の中間膜/赤外線遮蔽シート/第二の中間膜/ガラス板の順に積層された構成となる。
【0093】
図3は、本発明に係る、ガラス板に挟持された合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスの構造の一例を示す概略図である。本発明の一例に係る合わせガラスは、図2に示す合わせガラス用中間膜(第一の中間膜3、赤外線遮蔽シート2、及び第二の中間膜3’)と、複数のガラス板5及び5’とを備え、ガラス板5が第一の中間膜3に隣接し、ガラス板5’が第一の中間膜3に隣接するように、前記複数のガラス板5及び5’間に前記合わせガラス用中間膜が挿入されている。
【0094】
赤外線遮蔽シート2の端部が、ガラス板5および5’の端部および第一の中間膜3および第二の中間膜3’の端部よりも内側にあってもよい。また、ガラス板5および5’の端部と、第一の中間膜3および第二の中間膜3’の端部とは、同じ位置であっても、いずれかが突出していてもよい。
【0095】
また、ガラス板5および5’にガラス用中間膜(第一の中間膜3、赤外線遮蔽シート2、及び第二の中間膜3’の積層体)が挟持された合わせガラスは、図3に示すように、赤外線遮蔽シート2の端部が、ガラス板5および5’の端部および中間膜3および3’の端部と同じ位置にあってもよい。一方、合わせガラスは、赤外線遮蔽シート2の端部がガラス板5および5’の端部および第一の中間膜3および第二の中間膜3’の端部よりも突出した構成であってもよい。
【0096】
ガラス板5および5’に挟持されたガラス用中間膜(第一の中間膜3、赤外線遮蔽シート2、及び第二の中間膜3’の積層体)において、赤外線遮蔽シート2と第一の中間膜3、および赤外線遮蔽シート2と第二の中間膜3’は、それぞれ、隣接していてもよいし、それらの間に他の構成層を有していてもよい。
【0097】
本発明の合わせガラスを製造する方法では、ガラス板が曲率を有さないガラスであっても、曲面ガラスであってもよい。また、合わせガラス用中間膜を挟持する2枚のガラス板は、厚みが異なっていてもよく、着色されていてもよい。特に、遮熱性を目的として自動車のフロントガラス等に用いる場合は、合わせガラスの可視光透過率がJIS R 3211で定められている70%を下回らない程度にガラス板中に金属などの着色成分を混入させてもよく、一般的にはガラス板にグリーンガラスを用いることで効果的に遮熱性を向上させることができる。グリーンガラスの色濃度については、添加する金属成分の量を調整したり、厚みを調整したりすることで、目的に合った濃度に調節することが好ましい。本発明の合わせガラス用中間膜と組み合わせるグリーンガラスの可視光透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。さらに外観上好ましい色相とする為に、合わせガラスのL*a*b*表色系でb*の値は10以下が好ましく、8以下がより好ましい。b*値が10より大きくなると、不快に感じる色相となり好ましくない。また、本発明の合わせガラスの可視光透過率は好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。さらに外観上好ましい色相とする為に、合わせガラスのL*a*b*表色系でb*の値は10以下が好ましく、8以下がより好ましい。b*値が10より大きくなると、不快に感じる色相となり好ましくない。
【0098】
前記グリーンガラスは本発明の合わせガラス用中間膜の両面に配置しても良いし、片面に配置しても良い。片面に配置する場合は、入射光に対して積層膜よりも室内側に配置するのが好ましい。
【0099】
本発明の合わせガラスを製造する方法は、ガラス板に挟持された本発明の合わせガラス用中間膜を加熱しながら圧着する工程を含むことが好ましい。
【0100】
ガラス板に挟持された本発明のガラス用中間膜とガラス板との貼りあわせは、例えば、真空バッグなどで減圧下において、温度80〜120℃、時間30〜60分で予備圧着した後、オートクレーブ中、1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度で貼り合せ、2枚のガラス板にガラス用中間膜が挟まれた合わせガラスとすることができる。
【0101】
加熱圧着終了後、放冷の仕方については特に制限はなく、適宜圧力を開放しながら放冷して、合わせガラスを得てもよい。本発明の合わせガラスを製造する方法では、加熱圧着終了後、圧力を保持した状態で降温を行うことが、得られる合わせガラスのシワや割れをさらに改善する観点から好ましい。
【0102】
本発明の合わせガラスを製造する方法では、圧力を保持した状態で降温を行った後、次いで圧力を開放する工程を含むことが好ましい。具体的には、圧力を保持した状態で降温を行った後、オートクレーブ内の温度が40℃以下になった後に圧力を開放して降温することが好ましい。
【実施例】
【0103】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。実施例及び比較例において、「部」は重量部を意味する。
【0104】
〔実施例1〕
(高屈折率樹脂層の作製)
平均一次粒子径35nmである酸化チタン微粒子(商品名「TTO−51A」、石原産業株式会社製)1.4部、KAYARAD DPHA0.4部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア907」)0.05部、及び分散剤(商品名「DISPERBYK−2001」、ビック・ケミージャパン株式会社製)0.3部をトルエン7部中に加え、ビーズミルを用いて周速10m/sにて分散させ、高屈折率樹脂層Bを形成するための高屈折率樹脂塗布液Bを作製した。酸化チタン微粒子の平均分散粒子径は、45nmであった。
【0105】
次いで、高屈折率樹脂塗布液をPET基材にワイヤーバーコーターにて塗布し、100℃で2分間乾燥させることによってトルエンを蒸発させた後、UV照射によって高屈折率樹脂層を作製した。高屈折率樹脂層に含有される微粒子の含有率は、高屈折率樹脂層B全体に対して65重量%である。作製した高屈折率樹脂層の550nmの波長及び1000nmの波長での屈折率を分光エリプソメータ(商品名「M−2000」、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社製)にて測定し、550nmの波長での屈折率から1000nmの波長での屈折率を差し引いた値Δnを求めた。また、作製した高屈折率樹脂層の表面抵抗を表面抵抗計(株式会社三菱化学アナリテック製、商品名「ハイレスタUP」及び商品名「ロレスタGP」)を用いて測定した。
【0106】
(低屈折率樹脂層Aの作製)
非中空微粒子である平均一次分散粒子径25.6nm、60MPaで圧縮した際の粉体抵抗0.8Ω・cmであるスズドープ酸化インジウム微粒子(商品名「ITO−R」、CIKナノテック株式会社製)1.4部、KAYARAD DPHA 0.4部、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(商品名「ルシリンTPO」、光重合開始剤、BASFジャパン株式会社製)0.05部、アミノアルキルメタクリレート共重合体分散剤(商品名「DISPERBYK−167」、ビック・ケミージャパン株式会社製)0.3部を、溶媒としての1−メトキシ−2−プロパノール(以下、「PGM」と表記する)7部中に加え、ビーズミルを用いて周速10m/sにて分散させ、低屈折率樹脂層Aを形成する為の低屈折率樹脂塗布液Aを作製した。スズドープ酸化インジウム微粒子の平均分散粒子径は、40nmであった。
【0107】
次いで、低屈折率樹脂塗布液AをPET基材にワイヤーバーコーターにて塗布し、100℃で2分間乾燥させることによってPGMを蒸発させた後、UV照射によって低屈折率樹脂層Aを作製した。低屈折率樹脂層Aに含有される微粒子の含有率は、低屈折率樹脂層A全体に対して93重量%である。作製した低屈折率樹脂層Dの550nmの波長及び1000nmの波長での屈折率を分光エリプソメータ(商品名「M−2000」、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社製)にて測定し、550nmの波長での屈折率から1000nmの波長での屈折率を差し引いた値Δnを求めた。また、作製した低屈折率樹脂層Aの表面抵抗を、高屈折率樹脂層の表面抵抗の測定と同様にして測定した。
【0108】
(低屈折率樹脂塗布液Bの作製)
KAYARAD DPHA0.4部及びイルガキュア184 0.05部をMEK4部に溶解した溶液中に、中空シリカ微粒子(商品名「スルーリア1110」、平均一次粒子径50nm、固形分濃度20重量%、日揮触媒化成株式会社製、分散媒:メチルイソブチルケトン)3部を分散させ、低屈折率樹脂層Fを形成するための低屈折率樹脂層塗布液Fを調製した。
【0109】
次いで、低屈折率樹脂塗布液AをPET基材にワイヤーバーコーターにて塗布し、100℃で2分間乾燥させることによってPGMを蒸発させた後、UV照射によって低屈折率樹脂層Bを作製した。低屈折率樹脂層Bに含有される微粒子の含有率は、低屈折率樹脂層A全体に対して60重量%である。作製した低屈折率樹脂層Dの550nmの波長及び1000nmの波長での屈折率を分光エリプソメータ(商品名「M−2000」、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社製)にて測定し、550nmの波長での屈折率から1000nmの波長での屈折率を差し引いた値Δnを求めた。また、作製した低屈折率樹脂層Bの表面抵抗を、高屈折率樹脂層の表面抵抗の測定と同様にして測定した。
【0110】
(積層膜の作製)
積層膜が反射させる光の波長を1000nmに設定し、PET基材(商品名「コスモシャインA4100」、東洋紡株式会社製;以下、適宜、単に「PET基材」と表記する)上に、各層の、1000nmの波長における光学厚さ及びそのQWOT係数が表1の値になるように、作製した高屈折率樹脂塗布液、低屈折率樹脂塗布液A、低屈折率樹脂塗布液Bを適宜希釈して塗布することにより各層を表1の順番(表「層」の数値は、その層がPET基材から遠い方から数えて何番目の層であるかを示す)で積層し、高屈折率樹脂層及び低屈折率樹脂層の層数の合計が8である積層膜を作製した。なお、各層は、表1の「樹脂層」の欄に記載の樹脂層を形成するための塗布液をワイヤーバーコーターにて塗布し、100℃で2分間乾燥させることによって溶媒を蒸発させた後、UV照射によって作製した。また、表1では各層の、550nmの波長での屈折率(表中では「屈折率n(550nm」と表記する)、1000nmの波長での屈折率(表中では「屈折率n(1000nm)」と表記する)、550nmの波長での屈折率から1000nmの波長での屈折率を差し引いた値Δn、及び表面抵抗の測定結果も併せて示す。
【0111】
【表1】
【0112】
(赤外吸収色素層の作製)
銅(II)2,3−ナフタロシアニン(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)0.03部、KAYARAD DPHA 0.2部、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(商品名「ルシリンTPO」、光重合開始剤、BASFジャパン株式会社製)0.01部、アミノアルキルメタクリレート共重合体分散剤(商品名「DISPERBYK−167」、ビック・ケミージャパン株式会社製)0.06部を、溶媒としてのメチルエチルケトン(以下、「MEK」と表記する)3部中に加え、ビーズミルを用いて周速10m/sにて分散させ、赤外吸収色素層を形成する為の赤外吸収色素含有塗布液Aを作製した。
【0113】
次いで、赤外吸収色素含有塗布液Aを前記作製した積層膜の反対側(積層膜が配置されている反対側のPET基材上)にワイヤーバーコーターにて幾何学厚さが4μmとなるよう塗布し100℃で2分間乾燥させることによって溶媒を蒸発させた後、UV照射によって赤外吸収色素層を作製し、本発明の一実施例に係る赤外線遮蔽シートを作製した。
【0114】
〔実施例2〕
(合わせガラス用中間膜の作製)
作製した実施例1の赤外線遮蔽シートの積層膜側に第一の中間膜であるPVBフィルムを重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体の表面側及び裏面側に配置された2つのラミネート用加熱ローラーで、全周(4辺)の赤外線遮蔽シートの端部から1mm以下の位置の積層体を挟圧し、赤外線遮蔽シートと第一の中間膜とを熱圧着して貼り合わせた。このとき、ラミネート用加熱ローラーは、第一の中間膜の裏面のエンボスをつぶさないように中間膜側のラミネートローラーの温度を25℃とし、逆に第一の中間膜の赤外線遮蔽シート側表面のエンボスを十分につぶして第一の中間膜と赤外線遮蔽シートとの接着性を高めるように赤外吸収色素層側のラミネート用加熱ローラーの温度を120℃とした。その後、赤外線遮蔽シートにおける第一の中間膜が貼り合わされた面の裏面上に、第二の中間膜であるPVBフィルムを積層し、実施例1の赤外線遮蔽シートを含む合わせガラス用中間膜を作製した。
【0115】
(合わせガラス化)
前記作製した実施例1の赤外線遮蔽シートを用いた合わせガラス用中間膜を、ガラス板(フロート板ガラス FL3、セントラル硝子株式会社製)/第一の中間膜/赤外線遮蔽シート/第二の中間膜/ガラス板の順序となるように重ね合わせて、2枚のガラス板に合わせガラス用中間膜が挟持された(2枚のガラス板間に合わせガラス用中間膜が挿入された)積層体を製造した。ここで、2枚のガラス板の端部と第一及び第2の中間膜の端部とは同じ位置であった。また、前記ガラス板として、厚さが3mmのガラス板を用いた。得られた、2枚のガラス板に合わせガラス用中間膜が挟持された積層体を、真空下、95℃で30分予備圧着を行った。予備圧着後、ガラス板に挟持された積層体をオートクレーブ内で1.3MPa、120℃の条件で加熱しながら圧着処理し、合わせガラスを作製した。
【0116】
〔実施例3〕
実施例2で使用した合わせガラス用中間膜を用いて、ガラス板(フロート板ガラス FL3、セントラル硝子株式会社製)/第一の中間膜/赤外線遮蔽シート/第二の中間膜/グリーンガラス板(グリーンラル MFL3、セントラル硝子株式会社製)の順序となるように重ね合わせて、実施例2と同様に合わせガラスを作製した。
【0117】
〔実施例4〕
実施例1で使用した赤外吸収色素を特開平08−207459記載の化合物、4,11,−ジアミノ−3−チオキソ−2,3,−ジヒドロ−1H−ナフト[2,3−f]イソインドール−1,5,10−トリオンに変更した以外は実施例1と同様にして赤外線遮蔽シートを作製した。作製した赤外線遮蔽シートを実施例2と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0118】
〔比較例1〕
(赤外吸収色素合成例)
スルホラン120部に、ナフタル酸無水物15.9部、尿素29部、モリブデン酸アンモニウム0.40部、及び塩化バナジル(V)3.5部を加え、これらの混合物を200℃まで昇温し、同温度で11時間反応させた。反応終了後、反応後の混合物を65℃まで冷却し、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する)100部を加え、析出固体をろ過分離した。得られた固体をDMF50部で洗浄し、ウェットケーキ20.3部を得た。得られたウェットケーキをDMF100部に加え、80℃に昇温し、同温度で2時間撹拌した。析出固体をろ過分離し、水200部で洗浄し、ウェットケーキを18.9部得た。得られたウェットケーキを水150部に加え、90℃に昇温し、同温度で2時間撹拌した。析出固体をろ過分離し、水200部で洗浄してウェットケーキ16.1部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、赤外吸収色素を12.3部得た。
【0119】
前記合成した赤外吸収色素0.02部、KAYARAD DPHA1部、イルガキュア184 0.05部、及びアミノアルキルメタクリレート共重合体分散剤0.01部をトルエン7部中に加え、ビーズミルを用いて周速10m/sにて分散させ、赤外吸収色素層を形成するための赤外吸収色素含有塗布液Bを作製した。
【0120】
実施例1で使用した赤外吸収色素含有塗布液Aを前記作製した赤外吸収色素含有液Bに変更した以外は実施例1と同様にして赤外線遮蔽シートを作製した。
【0121】
〔比較例2〕
実施例2と同様に、比較例1で作製した赤外線遮蔽シートを使用して、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0122】
実施例1〜実施例4および比較例1、2の赤外線遮蔽シート及び合わせガラスの可視光透過率、ヘイズ、全日射透過率(Tts)、及びb*値を以下の方法で測定した。
【0123】
(赤外線遮蔽シートの可視光透過率の測定)
分光光度計(株式会社島津製作所、商品名「UV−3100」)を用いて、JIS R 3106に準拠して、得られた赤外線遮蔽シートの波長380nm〜780nmにおける可視光透過率を測定した。
【0124】
(赤外線遮蔽シートの全日射透過率(Tts)の測定)
全日射透過率(Tts;Total Solar Transmittance)は太陽からの熱的エネルギー(全日射エネルギー)のうち、どの程度の熱的エネルギーが測定対象となる材料を透過するかという尺度である。赤外線遮蔽シートの全日射透過率(Tts)は、ISO13837に定義されている測定方法及び計算式にて算出した。算出された赤外線遮蔽シートの全日射透過率の数値が小さいほど、赤外線遮蔽シートを透過する全日射エネルギーが小さいことを示し、赤外線遮蔽シートの熱線遮蔽性が高いことを示す。
尚、分光光度計で透過率、反射率を測定する際、入射光は積層膜側より入射させた。
【0125】
(赤外線遮蔽シートのヘイズの測定)
ヘーズメーター(有限会社東京電色製、商品名「TC−HIIIDPK」)を用いて、JIS K 6714に準拠して、得られた赤外線遮蔽シートのヘイズを測定した。
【0126】
(b*値の測定)
可視光透過率で測定した波長380nm〜780nmにおけるb*値をJIS Z8781に準拠して、光源D65下での値を算出した。
【0127】
実施例1〜実施例4および比較例1、2の赤外線遮蔽シート及び合わせガラスの可視光透過率、ヘイズ、全日射透過率、及びb*値の測定結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
表2より、本発明の実施例1に係る赤外線遮蔽シートは、550nmの波長での屈折率から780nm〜2500nmの任意波長(具体的には1000nmの波長)における屈折率を差し引いた値が0.1以上(具体的には0.24)である低屈折率樹脂層を含むことにより、波長780nm〜1500nmの領域の赤外線を効率的に反射し、波長1500nm〜2500nm領域の赤外線を吸収している。
【0130】
前記に加え、b*値が10以下の赤外吸収色素を組み合わせる事で、比較例1と比べて透過率を維持しつつ全日射透過率(Tts)、色相が大幅に改善されていた。
【0131】
実施例2、4で作製した合わせガラスの性能を評価したところ、比較例2と比べて良好な色相を示しかつ、ヘイズが0.5%以下である透明な遮熱ガラスとして働く事が確認された。
【0132】
さらに実施例3より、熱線遮蔽シートとグリーンガラスを組み合わせる事で、透過率を70%以上に維持しつつ全日射透過率(Tts)が大幅に改善されていた。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明によれば、微粒子、赤外吸収色素の赤外線吸収能に加え屈折率差を利用した赤外線反射能を付与する事で、従来の赤外線遮蔽シートと比較して、色相を改善しつつ、赤外線による温度上昇を抑えることを見出した。これにより、本発明の赤外線遮蔽シートを住宅や自動車の窓ガラスに敷設した場合に、住宅や自動車の空間の温度上昇を抑え、住宅や自動車の空調機器の負荷を軽減し、省エネルギーや地球環境問題に貢献できる。さらに、本発明の赤外線遮蔽シートは、赤外線領域の光を選択的に遮蔽できるので、建造物用の窓用部材、車両用の窓用部材、冷蔵、冷凍ショーケースの窓ガラス、IRカットフィルター、偽造防止等に利用可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 合わせガラス用中間膜
2 赤外線遮蔽シート(透明支持体を含んでもよい)
3、3’ 中間膜
4 合わせガラス
5、5’ ガラス板、グリーンガラス
20 透明支持体
21 高屈折率樹脂層
22 低屈折率樹脂層
23 積層膜
24 赤外吸収色素層
【0135】
本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
図1
図2
図3
図4