(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側保護カバーは、前記外側入口が配設された円筒状の胴部と、前記外側出口が配設され該胴部よりも内径の小さい有底筒状の先端部と、を有し、該先端部は該胴部よりも該先端方向側に位置しており、
前記外側保護カバー及び前記内側保護カバーは、該外側保護カバーの前記胴部と該内側保護カバーとの間の空間として前記第1ガス室を形成し、該外側保護カバーの前記先端部と該内側保護カバーとの間の空間として前記第2ガス室を形成している、
請求項7に記載のガスセンサ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
図1は配管20へのガスセンサ100の取り付け状態の概略説明図である。
図2は、
図1のA−A断面図である。
図3は、
図2のB−B断面図である。
図4は、
図3のC−C断面図である。
図5は、
図3の外側保護カバー140のC−C断面図である。なお、
図5は、
図4から第1円筒部134,第2円筒部136,先端部138及びセンサ素子110を除いた図に相当する。
図6は、
図3のD視図である。
図7は、
図3の素子室入口127周辺を拡大した部分断面図である。
【0018】
図1に示すように、ガスセンサ100は車両のエンジンからの排気経路である配管20内に取り付けられており、エンジンから排出された被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO
2等のガス成分のうち少なくともいずれか1つの濃度を検出するようになっている。このガスセンサ100は、
図2に示すように、ガスセンサ100の中心軸が配管20内の被測定ガスの流れに垂直な状態で配管20内に固定されている。なお、ガスセンサ100の中心軸が配管20内の被測定ガスの流れに垂直且つ鉛直方向に対して所定の角度(例えば45°)だけ傾いた状態で配管20内に固定されていてもよい。
【0019】
ガスセンサ100は、
図3に示すように、被測定ガス中の所定のガス濃度を検出する機能を有するセンサ素子110と、このセンサ素子110を保護する保護カバー120とを備えている。また、ガスセンサ100は、金属製のハウジング102及び外周面におねじが設けられた金属製のナット103を備えている。ハウジング102は配管20に溶接され内周面にめねじが設けられた固定用部材22内に挿入されており、さらにナット103が固定用部材22内に挿入されることでハウジング102が固定用部材22内に固定されている。これにより、ガスセンサ100が配管20内に固定されている。なお、配管20内の被測定ガスの流れる向きは、
図3における左から右に向かう方向である。
【0020】
センサ素子110は、細長な長尺の板状体形状の素子であり、ジルコニア(ZrO
2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層を複数積層した構造を有している。センサ素子110は、被測定ガスを自身の内部に導入するガス導入口111を有しており、ガス導入口111から内部に流入した被測定ガスの所定のガス濃度(NOxやO
2等の濃度)を検出可能に構成されている。本実施形態では、ガス導入口111は、センサ素子110の先端面(
図3におけるセンサ素子110の下面)に開口しているものとした。センサ素子110は、センサ素子110を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒーターを内部に備えている。このようなセンサ素子110の構造やガス濃度を検出する原理は公知であり、例えば特開2008−164411号公報に記載されている。センサ素子110は、先端(
図3の下端)及びガス導入口111がセンサ素子室124内に配置されている。なお、センサ素子110の後端から先端に向かう方向(
図3の下方向)を先端方向と称する。
【0021】
また、センサ素子110は、表面の少なくとも一部を覆う多孔質保護層110aを備えている。本実施形態では、多孔質保護層110aは、センサ素子110の6つの表面のうち5面に形成されて、センサ素子室124内に露出した表面のほとんどを覆っている。具体的には、多孔質保護層110aは、センサ素子110のうちガス導入口111が形成された先端面(
図3の下面)を全て覆っている。また、多孔質保護層110aは、センサ素子110の先端面に接続される4つの表面(
図4のセンサ素子110における上下左右の面)のうちセンサ素子110の先端面に近い側を覆っている。多孔質保護層110aは、例えば、被測定ガス中の水分等が付着してセンサ素子110にクラックが生じるのを抑制する役割を果たす。また、多孔質保護層110aは、被測定ガスに含まれるオイル成分等がセンサ素子110の表面の図示しない電極等に付着するのを抑制する役割を果たす。多孔質保護層110aは、例えばアルミナ多孔質体、ジルコニア多孔質体、スピネル多孔質体、コージェライト多孔質体,チタニア多孔質体、マグネシア多孔質体などの多孔質体からなる。多孔質保護層110aは、例えばプラズマ溶射,スクリーン印刷,ディッピングなどにより形成することができる。なお、多孔質保護層110aは、ガス導入口111も覆っているが、多孔質保護層110aが多孔質体であるため、被測定ガスは多孔質保護層110aの内部を流通してガス導入口111に到達可能である。特にこれに限定するものではないが、多孔質保護層110aの厚さは例えば100μm〜700μmである。
【0022】
保護カバー120は、センサ素子110の周囲を取り囲むように配置されている。この保護カバー120は、センサ素子110の先端を覆う有底筒状の内側保護カバー130と、内側保護カバー130を覆う有底筒状の外側保護カバー140とを有している。また、内側保護カバー130と外側保護カバー140とに囲まれた空間として第1ガス室122,第2ガス室126が形成され、内側保護カバー130に囲まれた空間としてセンサ素子室124が形成されている。なお、ガスセンサ100,センサ素子110,内側保護カバー130,外側保護カバー140の中心軸は同軸になっている。保護カバー120は、金属(例えばステンレス鋼)で形成されている。
【0023】
内側保護カバー130は、第1部材131と、第2部材135と、を備えている。第1部材131は、円筒状の大径部132と、円筒状で大径部132よりも径の小さい第1円筒部134と、大径部132と第1円筒部134とを接続する段差部133と、を有している。第1円筒部134は、センサ素子110の周囲を囲んでいる。第2部材135は、第1円筒部134よりも径が大きい第2円筒部136と、第2円筒部136よりもセンサ素子110の先端方向(
図3の下方向)に位置し円錐台を逆さにした形状の先端部138と、第2円筒部136と先端部138とを接続する接続部137と、を有している。また、先端部138の底面の中心には、センサ素子室124と第2ガス室126とに通じ、センサ素子室124からの被測定ガスの出口である円形の素子室出口138a(内側ガス孔とも称する)が1つ形成されている。素子室出口138aの径は、特に限定するものではないが、例えば0.5mm〜2.6mmである。素子室出口138aは、ガス導入口111よりもセンサ素子110の先端方向(
図3の下方向)の位置に形成されている。換言すると、素子室出口138aは、センサ素子110の後端(
図3におけるセンサ素子110の図示しない上端)から見てガス導入口111よりも遠く(
図3の下方向)に位置している。
【0024】
大径部132,第1円筒部134,第2円筒部136,先端部138は中心軸が同一である。大径部132は、ハウジング102に内周面が当接しており、これにより第1部材131がハウジング102に固定されている。第2部材135は、接続部137の外周面が外側保護カバー140の内周面と当接しており溶接などにより固定されている。なお、先端部138の外径を外側保護カバー140の先端部146の内径よりわずかに大きく形成し、先端部138を先端部146内に圧入することで、第2部材135を固定してもよい。
【0025】
第2円筒部136の内周面には、第1円筒部134の外周面に向けて突出してこの外周面に接している複数の突出部136aが形成されている。
図4に示すように、突出部136aは3個設けられ、第2円筒部136の内周面の周方向に沿って均等に配置されている。突出部136aは、略半球形状に形成されている。このような突出部136aが設けられていることで、突出部136aによって第1円筒部134と第2円筒部136との位置関係が固定されやすくなっている。なお、突出部136aは、第1円筒部134の外周面を径方向内側に向けて押圧していることが好ましい。こうすれば、突出部136aによって第1円筒部134と第2円筒部136との位置関係をより確実に固定できる。なお、突出部136aは、3個に限らず2個や4個以上としてもよい。なお、第1円筒部134と第2円筒部136との固定が安定化しやすいため、突出部136aは3個以上とすることが好ましい。
【0026】
この内側保護カバー130には、センサ素子室124への被測定ガスの入口である素子室入口127(
図3,4,7参照)が配設されている。素子室入口127は、第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面との間の筒状の隙間(ガス流路)を含んでいる。素子室入口127は、外側入口144aの配置された空間である第1ガス室122側の開口部である第1外側開口部128aと、第1外側開口部128aと同じく第1ガス室122側の開口部である第2外側開口部128bと、ガス導入口111の配置された空間であるセンサ素子室124側の開口部である素子側開口部129と、を有している。
【0027】
第1外側開口部128aは、第1円筒部134と第2円筒部136との間の筒状の隙間のうち第1ガス室122側の端部(
図3,7では上端)の開口である。第1外側開口部128aは、素子側開口部129よりもセンサ素子110の後端側(
図3の上側)に形成されている。換言すると、素子側開口部129は第1外側開口部128aよりも先端方向に位置している。そのため、外側入口144aからガス導入口111に達するまでの被測定ガスの経路中で、素子室入口127のうち第1外側開口部128aを経由して素子側開口部129に向かう流路は、センサ素子110の後端側(
図3の上側)から先端側(
図3の下側)へ向かう流路となっている。また、第1外側開口部128aを経由して素子側開口部129に向かう流路は、センサ素子110の後端−先端方向に平行な流路(
図3における上下方向の流路)となっている。
【0028】
第2外側開口部128bは、第2円筒部136の周方向に沿って等間隔に配設された複数(本実施形態では6個)の横孔である(
図4参照)。第2外側開口部128bは、第2円筒部136に配設され、第2円筒部136の外周面から内周面までを貫通している。この第2外側開口部128bは、円形(真円)に開けられた孔である。この第2外側開口部128bの各々の径は、特に限定するものではないが、例えば1mm〜2mmである。なお、本実施形態では、複数の第2外側開口部128bの径はいずれも同じ値とした。また、第2外側開口部128bの合計断面積は、例えば1mm
2以上4mm
2以下である。第2外側開口部128bの各々の断面積は、第2外側開口部128bを通過する被測定ガスの向き(本実施形態では第2円筒部136の外周面から中心軸に向かう方向)に垂直な方向の面積とする。第2外側開口部128bは、素子室入口127のうち第1外側開口部128aから素子側開口部129までの被測定ガスの経路(筒状の隙間)の途中と第1ガス室122側とを連通させている。そのため、第1外側開口部128aから素子室入口127に流入した被測定ガスと、第2外側開口部128bから素子室入口127に流入した被測定ガスとは、合流して素子側開口部129から流出するようになっている。第2外側開口部128bは、素子側開口部129よりもセンサ素子110の後端側に形成されている。そのため、外側入口144aからガス導入口111に達するまでの被測定ガスの経路中で、素子室入口127のうち第2外側開口部128bを経由して素子側開口部129に向かう流路は、センサ素子110の後端側(
図3の上側)から先端側(
図3の下側)へ向かう流路となっている。第2外側開口部128bは、第1外側開口部128aよりも外側入口144aに近い位置に配置されている。すなわち、複数の外側入口144aのうち第2外側開口部128bに最も近い外側入口144a(ここでは縦孔144c)と第2外側開口部128bとの最短距離は、複数の外側入口144aのうち第1外側開口部128aに最も近い外側入口144a(ここでは縦孔144c)と第1外側開口部128aとの最短距離よりも小さい値になっている。
【0029】
素子側開口部129は、ガス導入口111からの距離A1(
図7参照)が−1.5mm以上の位置に形成されていることが好ましい。距離A1は0mm以上としてもよいし、1.5mm超過としてもよい。なお、距離A1は、センサ素子110の後端−先端方向(
図3の上下方向)の距離であり、先端から後端へ向かう方向(
図3の上方向)を正とする。また、距離A1は、センサ素子110の後端−先端方向で、ガス導入口111の開口の端部のうち最も素子側開口部129に近い部分と、素子側開口部129の端部のうち最もガス導入口111に近い部分と、の距離とする。なお、
図3においてガス導入口がセンサ素子110の側面に開口する横穴であり、ガス導入口の開口の上端と下端との間に素子側開口部129が位置するときには、距離A1は値0mmとする。距離A1の上限は内側保護カバー130やセンサ素子室124の形状によって定まる。特に限定するものではないが、距離A1は7.5mm以下としてもよいし、5mm以下としてもよいし、2mm以下としてもよい。
【0030】
また、素子側開口部129は、センサ素子110から距離A2(
図7参照)の位置に形成されている。なお、距離A2は、センサ素子110の先端−後端方向に垂直な方向の距離である。また、距離A2は、センサ素子110の後端−先端方向に垂直な方向で、センサ素子110のうち最も素子側開口部129に近い部分と、素子側開口部129の端部のうち最もセンサ素子110に近い部分と、の距離とする。距離A2が大きいほど、センサ素子110と素子側開口部129とが離れるため、センサ素子110の冷えを抑制する効果が高まる傾向になる。特に限定するものではないが、距離A2は例えば0.6mm〜3.0mmである。また、素子側開口部129は、センサ素子110の後端から先端へ向かう方向に開口し且つセンサ素子110の後端−先端方向に平行に開口している。すなわち、素子側開口部129は、
図3,7の下方向(真下)に開口している。そのため、センサ素子110は、素子側開口部129から素子室入口127を仮想的に延長した領域(
図3,7における素子側開口部129の真下の領域)以外の位置に、配置されている。これにより、素子側開口部129から流出した被測定ガスがセンサ素子110の表面に直接当たることを抑制でき、センサ素子110の冷えを抑制できる。
【0031】
第1外側開口部128aは、外側入口144aから距離A3(
図7参照)の位置に形成されている。なお、距離A3は、センサ素子110の先端−後端方向(
図3,7の上下方向)の距離であり、距離A1と同様に先端から後端へ向かう方向を正とする。また、距離A3は、センサ素子110の後端−先端方向で、外側入口144aの開口の端部のうち最も第1外側開口部128aに近い部分と、第1外側開口部128aの端部のうち最も外側入口144aに近い部分と、の距離とする。なお、本実施形態では、外側入口144aとして縦孔144cが形成されており、
図3の上下方向で第1外側開口部128aに最も近いのは縦孔144cの上端(第1ガス室122側の開口面)である。そのため、
図7に示すように縦孔144cの上端と第1外側開口部128aとの距離が距離A3となる。なお、第1外側開口部128aは、距離A3が0以上の値や正の値となる位置に形成されていてもよいし、0以下の値や負の値となる位置に形成されていてもよい。例えば、外側入口144aが、
図3の上下方向で第1外側開口部128aよりも上側に位置するように側部143aに配設された横孔を有しており、この横孔と第1外側開口部128aとの上下方向の距離が縦孔144cと第1外側開口部128aとの上下方向の距離よりも小さい場合には、距離A3は負の値になる。ただし、距離A3は値0以上であることが好ましい。換言すると、第1外側開口部128aは、外側入口144aの少なくとも1以上よりもセンサ素子の後端側(
図3の上側)にあることが好ましい。本実施形態では、縦穴144cの上端と同じかそれよりも上側に第1外側開口部128aが位置することが好ましい。また、距離A3は3mm以上であることがより好ましい。
【0032】
第2外側開口部128bは、外側入口144aから距離A6(
図7参照)の位置に形成されている。距離A6は、距離A3と同様にセンサ素子110の先端−後端方向(
図3,7の上下方向)の距離であり、先端から後端へ向かう方向を正とする。なお、距離A6は、第2外側開口部128bまでの距離である点以外は距離A3と同じ定義とする。そのため、本実施形態では、
図7に示すように縦孔144cの上端と第2外側開口部128bとの距離が距離A6となる。なお、第2外側開口部128bは、距離A6が0以上の値や正の値となる位置に形成されていてもよいし、0以下の値や負の値となる位置に形成されていてもよい。特に限定するものではないが、距離A3は例えば−3mm以上3mm以下である。距離A3は、−2mm以上としてもよいし、−1mm以上としてもよいし、2mm以下としてもよいし、1mm以下としてもよい。第2外側開口部128bの位置は、距離A6が距離A3よりも絶対値が小さくなるように定められていてもよい。本実施形態では、第1外側開口部128aよりも第2外側開口部128bが先端方向に位置しており、距離A6は距離A3よりも絶対値が小さくなっている。
【0033】
第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面とは、素子側開口部129において円筒の径方向に距離A4だけ離れており、第1外側開口部128aにおいて円筒の径方向に距離A5だけ離れている。また、第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面とは、突出部136aと第1円筒部134とが接触する部分(
図4に示した断面)において距離A7だけ離れている。距離A4,距離A5,距離A7は、特に限定するものではないが、例えばそれぞれ0.3mm〜2.4mmである。距離A4,距離A5の値を調整することで、素子側開口部129の開口面積や第1外側開口部128aの開口面積を調整することができる。本実施形態では、距離A4,距離A5,距離A7は等しいものとし、素子側開口部129の開口面積と第1外側開口部128aの開口面積とが等しいものとした。なお、本実施形態では、距離A4(距離A5,距離A7)は、第1円筒部134の外径と第2円筒部136の内径との差の半分の値と同じである。また、素子側開口部129と第1外側開口部128aとの上下方向の距離、すなわち素子室入口127の上下方向の距離L1は、特に限定するものではないが、例えば0mm超過6.6mm以下である。素子側開口部129と第2外側開口部128bとの上下方向の距離、すなわち素子室入口127の上下方向の距離L2は、特に限定するものではないが、例えば0mm超過5mm以下である。距離L2は3mm以下としてもよいし、1mm以下としてもよい。
【0034】
外側保護カバー140は、
図3に示すように、円筒状の大径部142と、大径部142に接続しており大径部142よりも径の小さい円筒状の胴部143と、有底筒状で胴部143よりも内径の小さい先端部146とを有している。また、胴部143は、外側保護カバー140の中心軸方向(
図3の上下方向)に沿った側面をもつ側部143aと、胴部143の底部であり側部143aと先端部146とを接続する段差部143bと、を有している。なお、大径部142,胴部143,先端部146の中心軸はいずれも内側保護カバー130の中心軸と同一である。大径部142は、ハウジング102及び大径部132に内周面が当接しており、これにより外側保護カバー140がハウジング102に固定されている。胴部143は、第1円筒部134,第2円筒部136の外周を覆うように位置している。先端部146は、先端部138を覆うように位置していると共に、内周面が接続部137の外周面と当接している。先端部146は、外側保護カバー140の中心軸方向(
図3の上下方向)に沿った側面を有し外径が側部143aの内径よりも小さい側部146aと、外側保護カバー140の底部である底部146bと、を有している。先端部146は、胴部143よりも先端方向側に位置している。この外側保護カバー140は、胴部143に形成され被測定ガスの外部からの入口である複数(本実施形態では6個)の外側入口144aと、先端部146に形成され被測定ガスの外部への出口である複数(本実施形態では6個)の外側出口147aとを有している。
【0035】
外側入口144aは、外側保護カバー140の外側(外部)と第1ガス室122とに通じる孔である(第1外側ガス孔とも称する)。外側入口144aは、段差部143bに等間隔に形成された複数(本実施形態では6個)の縦孔144cを有している(
図3〜6)。なお、外側入口144aは、外側保護カバー140の側部(ここでは胴部143の側部143a)には配設されていない。この外側入口144a(縦孔144c)は、円形(真円)に開けられた孔である。この6個の外側入口144aの径は、特に限定するものではないが、例えば0.5mm〜2mmである。外側入口144aの径は、1.5mm以下としてもよい。なお、本実施形態では、複数の縦孔144cの径はいずれも同じ値とした。
【0036】
外側入口144aの縦孔144cと第2外側開口部128bとは、外側保護カバー140の周方向にずれて位置していることが好ましい。これについて
図8を用いて説明する。
図8は、縦孔144cの存在領域B1と第2外側開口部128bの存在領域B2とを示す説明図である。
図8は、外側保護カバー140の中心軸に垂直な平面(例えば
図4と同じ平面)に、縦孔144c,第2外側開口部128b,及び中心軸を外側保護カバー140の軸方向に沿って投影した図である。そして、投影した平面(例えば
図8)において、投影した中心軸(以下、中心点ともいう)から外側保護カバー140の径方向を見たときに、投影した縦孔144cが存在する領域を存在領域B1とし、投影した第2外側開口部128bが存在する領域を存在領域B2とする。
図8では、存在領域B1,B2をハッチングされた領域として示した。
図8に示すように、存在領域B1は、中心点から引いた縦孔144cの両側の接線で囲まれた縦孔144cを含む領域であり、縦孔144cの数と同じく存在領域B1は6個存在する。存在領域B2についても同様であり、第2外側開口部128bの数と同じく存在領域B2は6個存在する。縦孔144cと第2外側開口部128bとは、外側保護カバー140の周方向にずれて位置していること、すなわち、このように定義された存在領域B1と存在領域B2とが重複していないことが好ましい。本実施形態では、
図8に示すように、存在領域B1と存在領域B2とが重複しないように縦孔144cと第2外側開口部128bとが配置されている。本実施形態では、それに加えて、外側入口144aの縦孔144cと第2外側開口部128bとは、
図4,
図8に示すように、内側保護カバー130及び外側保護カバー140の周方向に沿って交互に等間隔に位置するように形成されている。すなわち、
図4,
図8における縦孔144cの中心と内側保護カバー130及び外側保護カバー140の中心軸とを結んだ線と、その縦孔144cに隣接する第2外側開口部128bの中心と内側保護カバー130及び外側保護カバー140の中心軸とを結んだ線と、のなす角が30°(360°/12個)となっている。ただし、縦孔144cと第2外側開口部128bとが交互に等間隔に位置していなくとも、存在領域B1と存在領域B2とが重複しないように縦孔144cと第2外側開口部128bとを配置することはできる。また、「存在領域B1と存在領域B2とが重複しない」は、存在領域B1と存在領域B2とが
図8のように外側保護カバー140の周方向に離間している場合と、存在領域B1と存在領域B2とが周方向に接している場合とを含む。
【0037】
第2外側開口部128bは、外側入口144aの延長上の領域に開口していないことが好ましい。外側入口144aの延長上の領域とは、外側入口144aの中心軸に沿った方向から仮想的に指向性をもつ光を照射したときに、その光が到達する領域とする。また、第2外側開口部128bが外側入口144aの延長上の領域に開口していないとは、その光が第2外側開口部128b内に到達しないことを意味する。本実施形態では、外側入口144aの延長上の領域とは、縦孔144cの真上の領域である。したがって、
図3,7からわかるように、本実施形態の第2外側開口部128bは、外側入口144aの延長上の領域に開口していない。
【0038】
外側出口147aは、外側保護カバー140の外側(外部)と第2ガス室126とに通じる孔である(第2外側ガス孔とも称する)。この外側出口147aは、先端部146の底部146bに外側保護カバー140の周方向に沿って等間隔に形成された複数(本実施形態では6個)の縦孔147cを有している(
図3,5,6参照)。なお、外側出口147aは、外側保護カバー140の側部(ここでは先端部146の側部146a)には配設されていない。この外側出口147a(縦孔147c)は、円形(真円)に開けられた孔である。この6個の外側出口147aの径は、特に限定するものではないが、例えば0.5mm〜2.0mmである。外側出口147aの径は、1.5mm以下としてもよい。なお、本実施形態では、複数の外側出口147aの径はいずれも同じ値であるものとした。
【0039】
外側保護カバー140及び内側保護カバー130は、胴部143と内側保護カバー130との間の空間として第1ガス室122を形成している。より具体的には、第1ガス室122は、段差部133,第1円筒部134,第2円筒部136,大径部142,側部143a、段差部143bにより囲まれた空間である。センサ素子室124は、内側保護カバー130により囲まれた空間である。外側保護カバー140及び内側保護カバー130は、先端部146と内側保護カバー130との間の空間として第2ガス室126を形成している。より具体的には、第2ガス室126は、先端部138と先端部146とに囲まれた空間である。なお、先端部146の内周面が接続部137の外周面と当接しているため、第1ガス室122と第2ガス室126とは直接には連通していない。
【0040】
ここで、ガスセンサ100が所定のガス濃度を検出する際の保護カバー120内の被測定ガスの流れについて説明する。配管20内を流れる被測定ガスは、まず、複数の外側入口144a(縦孔144c)の少なくともいずれかを通って第1ガス室122内に流入する。次に、被測定ガスは、第1ガス室122から第1外側開口部128aと第2外側開口部128bとの少なくとも一方を経て素子室入口127に流入し、素子室入口127を経て素子側開口部129から流出して、センサ素子室124に流入する。素子側開口部129からセンサ素子室124内に流入した被測定ガスは、少なくとも一部がセンサ素子110のガス導入口111に到達する。被測定ガスがガス導入口111に到達してセンサ素子110の内部に流入すると、この被測定ガス中の所定のガス濃度(例えばNOxやO
2等の濃度)に応じた電気信号(電圧又は電流)をセンサ素子110が発生させ、この電気信号に基づいてガス濃度が検出される。また、センサ素子室124内の被測定ガスは、素子室出口138aを通って第2ガス室126に流入し、そこから複数の外側出口147aの少なくともいずれかを通って外部に流出する。なお、センサ素子110は、所定の温度を保つように内部のヒーターの出力が例えば図示しないコントローラによって制御される。
【0041】
ここで、上記のように素子室入口127は第1外側開口部128aと第2外側開口部128bとを有している。そのため、外側入口144aから流入した被測定ガスが素子室入口127を通過する流路としては、第1外側開口部128aを経由して素子側開口部129に至る流路(第1流路とも称する)と、第2外側開口部128bを経由して素子側開口部129に至る流路(第2流路とも称する)とが存在する。そして、上記のように第2外側開口部128bは第1外側開口部128aよりも外側入口144aに近い位置に配置されており、第2外側開口部128bは外側入口144aから第1外側開口部128aを経由したガス導入口111までの被測定ガスの最短経路よりも短い経路が存在するように配設されている。換言すると、外側入口144aから第1外側開口部128aを経由したガス導入口111までの被測定ガスの最短経路長(第1最短経路長P1とも称する)よりも、外側入口144aから第2外側開口部128bを経由したガス導入口111までの被測定ガスの最短経路長(第2最短経路長P2とも称する)の方が経路長が短くなっている。なお、第1,第2最短経路長P1,P2は、いずれも、外側入口144aのうち外側の開口面から、ガス導入口111の外側の開口面までの被測定ガスの流路の最短経路の長さとする。また、外側入口144aが複数ある場合は、各々の外側入口144aからのガス導入口111までの最短経路長のうち最も短い経路長を、第1最短経路長P1とする。第2最短経路長P2についても同様とする。
【0042】
本実施形態の第1最短経路長P1について詳細に説明する。本実施形態では、外側保護カバー140は外側入口144aとして縦孔144cを備えている。また、本実施形態では、
図4に示すように、ガス導入口111の開口面は長方形状をしており、且つ内側保護カバー130及び外側保護カバー140の中心軸よりも
図4の上方にずれて位置するものとした。以上の点と、縦孔144c,ガス導入口111及び第1外側開口部128aの位置関係とから、本実施形態では、
図4に示す6個の縦孔144cのうち、
図4の左上に位置する縦孔144cから第1外側開口部128aを経由してガス導入口111に至るまでの最短経路長が、保護カバー120の第1最短経路長P1となる。なお、本実施形態では、
図4の右上に位置する縦孔144cから第1外側開口部128aを経由してガス導入口111に至るまでの最短経路長も同じ値(=第1最短経路長P1)となる。
図9は、
図4における第1最短経路長P1の経路に沿ったE−E断面の一部を拡大した断面図である。なお、
図4のE−E断面は、
図4の左上に位置する縦孔144cとガス導入口111の左上の端部とを通る断面である。また、
図9に示す縦孔144cは
図4の左上に位置する縦孔144cである。
図9に示すように、縦孔144cの外側の開口面のうち第1外側開口部128aに最も近い端部C1(
図9では右端)から、第1外側開口部128aを経由してガス導入口111の外側の開口面の端部C2(
図9では左端)までの最短経路(折れ線PL1)の長さが、第1最短経路長P1となる。なお、第1最短経路長P1は、多孔質保護層110aを無視して定めるものとする。例えば
図9では、折れ線PL1で表される経路のうち素子側開口部129からガス導入口111までの経路は、多孔質保護層110aを無視して、素子側開口部129とセンサ素子110の左下端部とを結んだ直線と、センサ素子110の左下端部とガス導入口111の開口面の左端とを結んだ直線と、で表される経路として定められている。
【0043】
本実施形態の第2最短経路長P2について詳細に説明する。
図10は、第2最短経路長P2の経路に沿ったF−F断面の位置を示す断面図であり、
図11は、
図10のF−F断面の一部を拡大した断面図である。なお、
図10は
図4と同じ断面図に、F−F断面の位置を示したものである。また、
図11に示す縦孔144cは
図10の最も左に位置する縦孔144cである。外側入口144a(ここでは縦孔144c),ガス導入口111及び第2外側開口部128bの位置関係から、本実施形態では、
図10に示す6個の縦孔144cのうち、
図10の最も左に位置する縦孔144cから
図10の左上の第2外側開口部128bを経由してガス導入口111に至るまでの最短経路長が、保護カバー120の第2最短経路長P2となる。なお、本実施形態では、
図10の最も右に位置する縦孔144cから
図10の右上の第2外側開口部128bを経由してガス導入口111に至るまでの最短経路長も同じ値(=第2最短経路長P2)となる。
図11に示すように、縦孔144cの外側の開口面のうち第2外側開口部128bに最も近い端部C3(
図11では右端)から、第2外側開口部128bを経由してガス導入口111の外側の開口面の端部C4(
図11では左端)までの最短経路(折れ線PL2)の長さが、第2最短経路長P2となる。なお、第2最短経路長P2も、第1最短経路長P1と同様に、多孔質保護層110aを無視して定めるものとする。
【0044】
このように、第1最短経路長P1よりも第2最短経路長P2が小さくなるように配設された第2外側開口部128bが存在することで、被測定ガスが低流速(例えば4m/s以下)であっても、外側入口144aから流入した被測定ガスは第2外側開口部128bを経由して(すなわち第2流路を経由して)ガス導入口111に比較的短時間で到達できる。これにより、例えば第2外側開口部128bが存在しない場合と比較して、被測定ガスの低流速時のセンサ素子110の応答性の低下を低減することができる。なお、被測定ガスの高流速時すなわち流量が多い場合には、第2外側開口部128bを経由する第2流路に加えて第1外側開口部128aを経由する第1流路が存在することで、素子室入口127を通過する際に被測定ガスの流量や流速が減少しにくくなる。そのため、本実施形態のガスセンサ100では、例えば第1外側開口部128aが存在しない場合と比べて、被測定ガスが高流速の場合の応答性の低下も低減できる。なお、第1外側開口部128aが存在しない代わりに、例えば第2外側開口部128bの径を大きくすることで高流速の場合の応答性の低下を低減することも考えられる。ただし、この場合は、第2外側開口部128bの径を大きくしすぎると水が第2外側開口部128bを通過してセンサ素子110に到達し、センサ素子110の保温性が低下する場合がある。本実施形態のガスセンサ100では、第1外側開口部128aと第2外側開口部128bとが共に存在することで、保温性の低下を抑制しつつ高流速の場合の応答性の低下を低減することができる。
【0045】
なお、第2最短経路長P2は、例えば5.0mm以上11.0mm以下とすることが好ましい。第2最短経路長P2が11.0mm以下では、低流速時の応答性の低下を低減する効果がより確実に得られる。また、第2最短経路長P2が5.0mm以上であることで、第2最短経路長P2が小さすぎることによる不具合を低減できる。このような不具合としては、例えば、外側入口144aから流入した外部の被毒物質や水分がセンサ素子110に到達しやすくなること、被測定ガスによりセンサ素子110が冷えやすくなること、又はセンサ素子110の冷えを防止するために必要なヒーターの出力が増加すること、などが挙げられる。また、第2最短経路長P2は10.5mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、9.5mm以下がさらに好ましく、9.0mm以下が一層好ましく、8.5mm以下がより一層好ましい。第2最短経路長P2が小さいほど、低流速時の応答性の低下を低減する効果が高くなりやすい。第2最短経路長Pは6.0mm以上としてもよい。第1最短経路長P1は、第2最短経路長P2よりも大きければよいが、例えば11.0mm超過としてもよく、13.0mm以上としてもよく、20.0mm以下としてもよい。また、第1最短経路長P1と第2最短経路長P2との差(P1−P2)は、3mm以上としてもよく、5mm以上としてもよく、6mm以上としてもよい。また、差(P1−P2)は、10mm以下としてもよい。
【0046】
なお、本実施形態では、上記のようにガス導入口111の形状や位置などの関係から、
図10の最も左及び最も右に位置する縦孔144c以外の4個の縦孔144cの各々から第2外側開口部128bを経由してガス導入口111に至るまでの最短経路長は、第2最短経路長P2よりもわずかに大きい値になる。このように複数の縦孔144cの各々からの第2外側開口部128bを経由した最短経路長が異なる場合、最短経路長が5.0mm以上11.0mm以下である縦孔144cの数が多い方が好ましい。本実施形態では、
図10の最も左及び最も右に位置する縦孔144cからの第2最短経路長P2だけでなく、複数の縦孔144cの各々からの第2外側開口部128bを経由した最短経路長のいずれもが、5.0mm以上11.0mm以下であるものとした。
【0047】
以上詳述した本実施形態のガスセンサ100によれば、内側保護カバー130が有する第2外側開口部128bは、素子室入口127のうち第1外側開口部128aから素子側開口部129までの被測定ガスの経路の途中と第1ガス室122側とを連通させて、外側入口144aから第1外側開口部128aを経由したガス導入口111までの被測定ガスの最短経路(第1最短経路長P1)よりも短い経路(第2最短経路長P2の経路)が存在するように配設されている。このような第2外側開口部128bが存在することで、被測定ガスの低流速時の応答性の低下を低減することができる。また、第1外側開口部128aが存在することで、被測定ガスが高流速の場合の応答性の低下も低減できる。
【0048】
また、第2外側開口部128bは、外側入口144aの延長上の領域に開口していないため、外側入口144aから外側保護カバー140内に水が侵入したとしても、その水は第2外側開口部128b内には到達しにくい。これにより、センサ素子110に水が付着しにくくなり、センサ素子110の保温性が向上する。
【0049】
また、外側保護カバー140は、側部143aと段差部143b(底部)とを有する円筒状の胴部143を有し、外側入口144aは、外側保護カバー140の胴部143の段差部143bに配設された縦孔144cを有する。そして、外側保護カバー140の中心軸に垂直な平面に縦孔144c,第2外側開口部128b,及び中心軸を投影し、投影した中心軸から外側保護カバー140の径方向を見たときに、投影した縦孔144cと第2外側開口部128bとが重複していない。すなわち、
図8において存在領域B1に重複する存在領域B2が存在しない。これにより、外側入口144aが有する縦孔144cと第2外側開口部128bとが外側保護カバー140及び内側保護カバー130の周方向に比較的離れて位置することになり、縦孔144cから外側保護カバー140内に水が侵入したとしても、その水は第2外側開口部128b内には到達しにくい。これにより、センサ素子110に水が付着しにくくなり、センサ素子110の保温性が向上する。また、本実施形態では、第2外側開口部128bは横孔であるが、このような場合に第2外側開口部128bと縦孔144cとが周方向で比較的近くに位置すると、縦孔144cを通過する被測定ガスの流れと第2外側開口部128bを通過する被測定ガスの流れとが干渉して、被測定ガスがガス導入口111に到達するまでの時間が長くなり応答性が低下する場合がある。存在領域B1に重複する存在領域B2が存在しないように縦孔144c及び第2外側開口部128bを配置することで、このような応答性の低下を低減することができる。
【0050】
また、外側保護カバー140は、側部143aと段差部143b(底部)とを有する円筒状の胴部143を有し、側部143aには外側入口144aが配設されていない。ここで、胴部143の側部143aに外側入口144a(例えば横孔)が配設されていると、この横孔から外側保護カバー140内に水が侵入しやすくなる場合がある。側部143aに外側入口144aが配設されていないことで、このような水の侵入量を低減できる。本実施形態では、第2外側開口部128bは横孔であるため、
図3の上方に開口している第1外側開口部128aと比較して第2外側開口部128bから水が侵入しやすい傾向にあるため、側部143aに外側入口144aを配設しない意義が高い。
【0051】
さらに、内側保護カバー130は、素子側開口部129が先端方向に向けて開口するように素子室入口127を形成している。そのため、素子側開口部129から流出した被測定ガスがセンサ素子110の表面(ガス導入口111以外の表面)に垂直に当たることを抑制したり、センサ素子110の表面上を長い距離通過してからガス導入口111に到達することを抑制したりできる。これにより、センサ素子110の冷えを抑制できる。しかも、素子側開口部129の開口の向きを調整することでセンサ素子110の冷えを抑制しており、内側保護カバー130内の被測定ガスの流量や流速を減らしているわけではないため、ガス濃度検出の応答性の低下も低減できる。これらにより、センサ素子110の応答性と保温性とを両立することができる。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうることは言うまでもない。
【0053】
例えば、保護カバー120の形状は上述した実施形態に限られない。保護カバー120の形状や素子室入口127,素子室出口138a,外側入口144a,外側出口147aの形状,個数,配置などは、適宜変更してもよい。例えば、素子室入口127は第1部材131と第2部材135との隙間を含んでいるが、これに限られない。素子室入口は、センサ素子室124への入口であり、第1最短経路長P1よりも第2最短経路長P2が小さくなるように形成された第1外側開口部128a,第2外側開口部128b及び素子側開口部129を有していればどのような形状であってもよい。例えば素子室入口は内側保護カバー130に形成された貫通孔であってもよい。なお、素子室入口が貫通孔である場合も、素子室入口がセンサ素子110の後端側から先端側へ向かう流路を形成していてもよい。例えば素子室入口が縦孔や
図3の上下方向から傾斜した孔を有していてもよい。また、素子側開口部が先端方向に向けて開口していてもよい。また、素子室入口127の数は1つに限らず複数でもよい。素子室出口138a,外側入口144a,外側出口147aについても、孔に限らず保護カバー120を構成する複数の部材の隙間であってもよいし、各々の数は1以上であればよい。また、外側入口144aは縦孔144cを有するものとしたが、縦孔と、側部143aに形成された横孔と、側部143aと段差部143bとの境界の角部に形成された角孔と、のいずれか1以上を有するものとしてもよい。素子室入口127,素子室出口138a,外側出口147aについても、同様に横孔,縦孔,角孔のいずれか1以上を有するものとしてもよい。ただし、上述したように外側入口144aについては横孔を有さない、すなわち外側入口144aは側部143aには配設されていないことが好ましい。また、外側入口144aが縦孔,横孔,及び角孔のいずれか1以上を有する場合において、外側保護カバー140の中心軸に垂直な平面に外側入口144a,第2外側開口部128b,及び中心軸を投影し、投影した中心軸から外側保護カバー140の径方向を見たときに、投影した外側入口144aと第2外側開口部128bとが重複しないように、外側入口144aと第2外側開口部128bとを配置してもよい。
【0054】
横孔の一例について説明する。
図12,
図13は、外側入口144aが側部143aに形成された複数(ここでは6個)の横孔144bを有し、外側出口147aが側部146aに形成された複数(ここでは3個)の横孔147bを有する場合の断面図及び斜視図である。
図12,13に示した外側保護カバー140では、外側入口144aは、6個の横孔144bと6個の縦孔144cとを有している。横孔144b及び縦孔144cは、外側保護カバー140の周方向に沿って、横孔144bと縦孔144cとが交互に等間隔に位置するように形成されている。外側出口147aは、3個の横孔147bと、3個の縦孔147cとを有している。横孔147b及び縦孔147cは、外側保護カバー140の周方向に沿って、横孔147bと縦孔147cとが交互に等間隔に位置するように形成されている。
【0055】
角孔の一例について説明する。
図14は、外側出口147aが複数の角孔147dを有する場合の断面図である。図視するように、
図14の先端部146に配設された外側出口147aは、縦孔147cに代えて、側部146aと底部146bとの境界の角部に位置する複数の角孔147dを有している。角孔147dは、外側保護カバー140の周方向に沿って等間隔に6個(
図14では4個のみ図示)配設されている。角孔147dは、角孔147dの外部開口面(
図14左下拡大図の直線a)と底部146bの底面(下面)(
図14左下拡大図の直線b)とのなす角θが10°〜80°の範囲の値であってもよい。
図14では、なす角θは45°としている。なお、上述した実施形態における側部143aと段差部143bとの境界の角部に角孔が形成されている場合も、その角孔の外部開口面と段差部143bの底面(下面)とのなす角θが10°〜80°の範囲の値であってもよい。
【0056】
上述した実施形態では、突出部136aは第2円筒部136の内周面に形成されているが、これに限られない。第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面との少なくとも一方の面に、他方の面に向けて突出してその面に接する複数の突出部が形成されていればよい。また、上述した実施形態では、
図3,4に示すように、第2円筒部136のうち突出部136aが形成されている部分の外周面は内側に窪んでいるが、これに限らず外周面が窪んでいなくてもよい。また、突出部136aは半球形状に限らずどのような形状であってもよい。なお、第1円筒部134の外周面及び第2円筒部136の内周面に突出部136aが形成されていなくてもよい。
【0057】
上述した実施形態では、素子室入口127は第1円筒部134の外周面と第2円筒部136の内周面との間の筒状の隙間としたが、これに限られない。例えば、第1円筒部の外周面と第2円筒部の内周面との少なくとも一方に凹部(溝)が形成されており、素子室入口は、凹部により形成された第1円筒部と第2円筒部との隙間を含んでいてもよい。
図15は、変形例の素子室入口227を示す断面図である。
図15に示すように、第1円筒部234の外周面と第2円筒部236の内周面とは接しており、第1円筒部234の外周面には複数(
図15では4個)の凹部234aが等間隔に形成されている。素子室入口227は、この凹部234aと第2円筒部236の内周面との間の隙間を有しており、この隙間の上端が第1外側開口部128a(図示省略)となり、下端が素子側開口部129(図示省略)となっている。また、第2外側開口部128bは、この凹部234aと第2円筒部236の内周面との間の隙間と、第1ガス室122と、を連通するように第2円筒部236に形成された横孔である。
【0058】
上述した実施形態では、素子室入口127は、センサ素子110の後端−先端方向に平行な流路(
図3における上下方向に平行なの流路)を含んでいたが、これに限られない。例えば、素子室入口は、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれてセンサ素子110に近づくように後端−先端方向から傾斜した流路を含んでいてもよい。
図16は、この場合の変形例のガスセンサ300の縦断面図である。
図16では、ガスセンサ100と同じ構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
図16に示すように、ガスセンサ300は、内側保護カバー130に代えて内側保護カバー330を備えている。内側保護カバー330は、第1部材331と、第2部材335と、を備えている。第1部材331は、第1部材131と比べて、第1円筒部134を備えない代わりに、円筒状の胴部334aと、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれて縮径する円筒状の第1円筒部334bと、を備えている。第1円筒部334bは、センサ素子110の後端側の端部で胴部334aと接続されている。第2部材335は、第2部材135と比べて、第2円筒部136及び接続部137を備えない代わりに、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれて縮径する円筒状の第2円筒部336を備えている。第2円筒部336は、先端部138と接続されている。第1円筒部334bの外周面と第2円筒部336の内周面とは接しておらず、素子室入口327は両者により形成される隙間を含んでいる。素子室入口327は、この隙間の第1ガス室122側の開口部である第1外側開口部328aと、この隙間のセンサ素子室124側の開口部である素子側開口部329と、を有している。また、素子室入口327は、第1円筒部334bの外周面と第2円筒部336の内周面との隙間のうち第1外側開口部328aから素子室入口327までの被測定ガスの経路の途中と第1ガス室122とを連通させる横孔である第2外側開口部328bを複数(
図16では2個のみ図示)有している。この
図16のガスセンサ300においても、外側入口144aから第1外側開口部328aを経由したガス導入口111までの被測定ガスの最短経路長よりも、外側入口144aから第2外側開口部328bを経由したガス導入口111までの被測定ガスの最短経路長の方が小さくなっており、上述した実施形態と同様に被測定ガスの低流速時の応答性の低下を低減する効果が得られる。また、この素子室入口327は、第1円筒部334b及び第2円筒部336の形状によって、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれてセンサ素子110に近づくように(内側保護カバー330の中心軸に近づくように)後端−先端方向から傾斜した流路を含んでいる。同様に、素子側開口部329は、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれてセンサ素子110に近づくように後端−先端方向から傾斜して開口している(
図16の拡大図参照)。このように素子室入口327が傾斜した流路を含む場合や素子側開口部329が傾斜して開口している場合、素子側開口部329からセンサ素子室124に流出する被測定ガスの流れる向きはセンサ素子110の後端−先端方向から傾斜した向きになる。これにより、上述した実施形態の素子室入口127や素子側開口部129と同様の効果が得られる。すなわち、被測定ガスがセンサ素子110の表面(ガス導入口111以外の表面)に垂直に当たることを抑制したり、センサ素子110の表面上を長い距離通過してからガス導入口111に到達することを抑制したりできる。これにより、センサ素子110の冷えを抑制できる。また、
図16では、素子室入口327の幅は、センサ素子110の後端側から先端側に向かうにつれて狭くなっている。そのため、素子側開口部329の開口面積は第1外側開口部328aの開口面積よりも小さい。換言すると、素子室入口327は、
図7を用いて説明した距離A5よりも距離A4の方が小さくなっている。これにより、被測定ガスが第1外側開口部328aから流入して素子側開口部329から流出することで流入時と比べて流出時の被測定ガスの流速が高まる。そのため、ガス濃度検出の応答性を向上させることができる。第2外側開口部328bから流入して素子側開口部329から流出する被測定ガスについても、流入時と比べて流出時の被測定ガスの流速が高まるため、同様の効果が得られる。なお、
図16では、素子室入口327がセンサ素子110の後端−先端方向から傾斜した流路を含んでおり、素子側開口部329がセンサ素子110の後端−先端方向から傾斜して開口し、且つ素子側開口部329の開口面積が第1外側開口部328aの開口面積よりも小さくなるようにしているが、これらの3つの特徴のうち1以上を省略してもよいし、ガスセンサがこれらの3つの特徴のうち1以上の特徴を有するようにしてもよい。なお、変形例のガスセンサ300における距離A1は、
図16に示すように、ガス導入口111から素子側開口部329の下端までの上下方向の距離となる。
【0059】
上述した実施形態では、外側入口144aと素子室入口127との間の被測定ガスの流路は第1ガス室122のみとしたが、これに限られない。第1ガス室122は、外側入口144aと素子室入口127との間の被測定ガスの流路の少なくとも一部であればよい。例えば、保護カバー120が内側保護カバー130及び外側保護カバー140の他に両者の間に配置された中間保護カバーを備えており、外側入口144aと素子室入口127との間の被測定ガスの流路が複数のガス室を含んでいてもよい。同様に、上述した実施形態では、外側出口147aと素子室出口138aとの間の被測定ガスの流路は第2ガス室126のみとしたが、これに限られない。第2ガス室126は、外側出口147aと素子室出口138aとの間の被測定ガスの流路の少なくとも一部であればよい。
【0060】
上述した実施形態では、ガス導入口111は、センサ素子110の先端面(
図3におけるセンサ素子110の下面)に開口しているものとしたが、これに限られない。例えば、センサ素子110の側面(
図4におけるセンサ素子110の上下左右の面)に開口していてもよい。
【0061】
上述した実施形態では、センサ素子110は多孔質保護層110aを備えているが、多孔質保護層110aを備えていなくてもよい。
【実施例】
【0062】
以下には、ガスセンサを具体的に作製した例を実施例として説明する。実験例2が本発明の実施例に相当し、実験例1が比較例に相当する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実験例1]
図12,13に示したように外側入口144aが6個の横孔144bと6個の縦孔144cとを有し、外側出口147aが側部146aに形成された3個の横孔147b及び3個の縦孔147cを有する点、及び素子室入口127が第2外側開口部128bを備えない点以外は、
図3〜7に示したガスセンサ100を実験例1とした。具体的には、内側保護カバー130の第1部材131は、板厚が0.3mm、軸方向長さが10.2mm、大径部132の軸方向長さが1.8mm、大径部132の外径が14.4mm、第1円筒部134の軸方向長さが8.4mm、第1円筒部134の内径が7.88mmとした。第2部材135は、板厚が0.3mm、軸方向長さが11.5mm、第2円筒部136の軸方向長さが4.5mm、第2円筒部136の内径が9.7mm、先端部138の軸方向長さが4.9mm、先端部138の底面の径が3.0mmとした。素子室入口127に関して、距離A1は0.59mm、距離A2は2.1mm、距離A3は3.1mm、距離A4,A5,A7はいずれも0.61mm、距離L1は4mmとした。素子室出口138aの径は1.5mmとした。外側保護カバー140は、板厚が0.4mm、軸方向長さが24.35mm、大径部142の軸方向長さが5.85mm、大径部142の外径が15.2mm、胴部143の軸方向長さが8.9mm(胴部143の上端から段差部143bの上面までの軸方向長さが8.5mm)、胴部143の外径が14.6mm、先端部146の軸方向長さが9.6mm、先端部146の外径が8.7mmとした。外側入口144aは、径1mmの横孔144bを6個、径1mmの縦孔144cを6個、それぞれ交互に等間隔(隣接する孔のなす角が30°)に形成した。外側出口147aは、径1mmの横孔147bを3個、径1mmの縦孔147cを3個、それぞれ交互に等間隔(隣接する孔のなす角が60°)に形成した。保護カバー120の材質は、SUS301Sとした。また、ガスセンサ100のセンサ素子110は、幅(
図4における左右長さ)が4mm、厚さ(
図4における上下長さ)が1.5mmとした。多孔質保護層110aはアルミナ多孔質体とし、厚さは400μmとした。第1最短経路長P1は11.7mmとした。
【0064】
[実験例2]
図3〜11に示したガスセンサ100を実験例2とした。実験例2では、外側入口144aは横孔144bを備えず、縦孔144cの径は実験例1と同じ1mmとした。実験例2では、外側出口147aは横孔147bを備えず、縦孔147cの径は実験例1と同じ1mmとした。第1外側開口部128aと縦孔144cとの距離A3は4.9mmとした。第2外側開口部128bと縦孔144cとの距離A6は1.1mmとした。距離L1は4.3mmとし、距離L2は0.5mmとした。それ以外は実験例2と同じ寸法とした。第1最短経路長P1は13.1mmとした。第2最短経路長P2は6.7mmとした。
【0065】
[応答性の評価]
実験例1,2のガスセンサについて、センサ素子のガス濃度検出の応答性を評価した。まず、実験例1のガスセンサを
図1,2と同様に配管に取り付けた。なお、実験例1のガスセンサの取り付けの向きは、配管内の被測定ガスの流れの向きが
図12における左から右方向となる向きとした。大気に酸素を混合して任意の酸素濃度に調節したガスを被測定ガスとし、この被測定ガスを配管内に流速V=8m/sで流した。そして、配管内に流す被測定ガスの酸素濃度を22.9%から20.2%に変化させた場合における、センサ素子の出力の時間変化を調べた。酸素濃度を変化させる直前のセンサ素子の出力値を0%、酸素濃度の変化後にセンサ素子の出力が変化して安定したときの出力値を100%として、出力値が10%を越えたときから90%を越えるまでの経過時間をガス濃度検出の応答時間(sec)とした。この応答時間が短いほどガス濃度検出の応答性が高いことを意味する。この応答時間の測定を、実験例1のガスセンサの取り付けの向きを変えて複数回測定した。具体的には、被測定ガスの流れの向きが
図8における左から右方向となる取り付けの向きを0°として、ガスセンサを外側保護カバー140の中心軸を中心に回転させて取り付けの向きを0°〜360°まで30°ずつ変化させて、それぞれの取り付けの向きに対する応答時間を測定した。なお、0°と360°は、ガスセンサの取り付けの向きは同じ状態である。なお、同じ取り付けの向きについて応答時間の測定を複数回行った。さらに、配管内に流す被測定ガスの酸素濃度を20.2%から22.9%に変化(上述した酸素濃度の変化と逆の変化)させた場合についても、同様に取り付けの向きを0°〜360°まで変化させ且つ同じ取り付けの向きについても応答時間の測定を複数回行った。そして、全ての応答時間の平均値を実験例1における流速V=8m/sにおける応答時間とした。実験例2についても、同様に配管への取り付けの向き,酸素濃度の変化の方向を変えてそれぞれの場合について応答時間を複数回測定し、全ての応答時間の平均値を実験例2における流速V=8m/sにおける応答時間とした。なお、実験例2では、被測定ガスの流れの向きが
図4における左から右方向となる取り付けの向きを0°とした。
【0066】
実験例1,2について、上記と同様に流速V=1,2,4,6,10m/sの場合における応答時間も測定した。ただし、これらの場合の応答時間は、ガスセンサの取り付けの向きを変えずに、配管内に流す被測定ガスの酸素濃度を下降(22.9%から20.2%に変化)させた場合と上昇(20.2%から22.9%に変化)させた場合との応答時間を測定し、その平均値を各流速Vに対応する応答時間とした。取り付けの向きは、実験例1では0°とし、実験例2では30°とした。
【0067】
実験例1,2について、外側保護カバーの外側入口及び外側出口の径及び個数,第2外側開口部128bの有無、及び各流速Vにおける応答時間を、表1にまとめて示す。また、実験例1,2についての流速Vと応答時間との関係を示すグラフを
図17に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1及び
図17に示すように、実験例1,2のいずれにおいても流速Vが低いほど応答時間が増加する傾向が見られるが、第2外側開口部128bを有する実験例2は、実験例1と比べて流速Vが低い場合(4m/s以下)における応答時間が短かった。また、流速Vが低い場合に限らず、いずれの流速Vにおいても、第1外側開口部128a及び第2外側開口部128bを有する実験例2の応答時間は、実験例1の応答時間以下であった。