特許第6654520号(P6654520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654520
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】歯科用プライマー
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/30 20200101AFI20200217BHJP
【FI】
   A61K6/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-131022(P2016-131022)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-2650(P2018-2650A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】菅原 彩香
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏治
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−152106(JP,A)
【文献】 特開2013−144658(JP,A)
【文献】 特開昭62−063506(JP,A)
【文献】 特開昭61−257904(JP,A)
【文献】 特開昭60−197609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K6/00−6/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルカプトベンゾイミダゾール化合物、銅化合物、(メタ)アクリレート及び有機溶媒を含み、水を実質的に含まず、
前記メルカプトベンゾイミダゾール化合物は、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−tert−ブチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−メトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−ベンジルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−フェニルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−フルオロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−クロロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−クロロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−ブロモクロロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−ブロモベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチル−6−エトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エチル−6−クロロベンゾイミダゾール及び2−メルカプト−5−ベンゾイミダゾールカルボン酸からなる群より選択される一種以上の化合物であり、
前記有機溶媒の含有量が30〜90質量%であることを特徴とする歯科用プライマー。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレートは、酸基を有する(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1に記載の歯科用プライマー。
【請求項3】
シランカップリング剤をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用プライマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用プライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用プライマーは、歯科用接着剤、歯科用セメント等を歯面に塗布する前に予め歯面に塗布することで、歯面に対する接着性を向上させることができる。また、歯面の他に、金属、セラミックス、レジン等の様々な材料の補綴物に、歯科用接着剤、歯科用セメント等を塗布する場合があるが、歯科用プライマーに様々な成分を添加することで、補綴物に対する接着性を向上させることができる。
【0003】
特許文献1には、酸基を有する(メタ)アクリレートと、水と、水溶性で揮発性の有機溶剤と、バナジウム化合物とを含む歯科用プライマーが開示されている。
【0004】
特許文献2には、a)鉄化合物、銅化合物およびコバルト化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の金属化合物、b)酸性基を持つ重合性モノマーおよびc)水、又は水と水混和性有機溶媒を含有することを特徴とする、歯質表面を処理するためのプライマー組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−280630号公報
【特許文献2】特開平8−40819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水を実質的に含まず、保存安定性に優れる歯科用プライマーが望まれている。
【0007】
例えば、水の代わりに、エタノール、アセトン等の有機溶媒を用いると、歯科用プライマーがバナジウム化合物を含む場合、保存安定性が低下する。
【0008】
また、水の代わりに、エタノール、アセトン等の有機溶媒を用いると、沈降が発生するため、銅化合物を含む歯科用プライマーを製造することができない。
【0009】
そこで、本発明の一態様は、水を実質的に含まず、保存安定性に優れる歯科用プライマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、歯科用プライマーにおいて、メルカプトベンゾイミダゾール化合物、銅化合物、(メタ)アクリレート及び有機溶媒を含み、水を実質的に含まず、前記メルカプトベンゾイミダゾール化合物は、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−tert−ブチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−メトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−ベンジルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−フェニルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−フルオロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−クロロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−クロロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−ブロモクロロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−ブロモベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチル−6−エトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エチル−6−クロロベンゾイミダゾール及び2−メルカプト−5−ベンゾイミダゾールカルボン酸からなる群より選択される一種以上の化合物であり、前記有機溶媒の含有量が30〜90質量%である
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、水を実質的に含まず、保存安定性に優れる歯科用プライマーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
<歯科用プライマー>
歯科用プライマーは、メルカプトベンゾイミダゾール化合物、銅化合物、(メタ)アクリレート及び有機溶媒を含み、水を実質的に含まない。
【0014】
本願明細書及び特許請求の範囲において、水を実質的に含まないとは、水の含有量が0.5質量%以下であることを意味する。歯科用プライマー中の水の含有量が0.5質量%以下であることにより、歯科用プライマーがシランカップリング剤を含む場合に、シランカップリング剤の分解を抑えることができる。
【0015】
歯科用プライマー中の水の含有量は、0.4質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%以下であることが特に好ましい。
【0016】
ここで、歯科用プライマーは、化学重合開始剤における酸化剤を含む歯科用接着剤や歯科用セメント(例えば、特開2010−229165号公報、特開2010−215824号公報参照)と組み合わせて用いることが好ましい。
【0017】
<メルカプトベンゾイミダゾール化合物>
本願明細書及び特許請求の範囲において、メルカプトベンゾイミダゾール化合物とは、メルカプトベンゾイミダゾール又はメルカプトベンゾイミダゾール誘導体を意味する。
【0018】
メルカプトベンゾイミダゾール化合物は、歯科用プライマーの製造時に沈降が発生するのを抑制することができる。
【0019】
メルカプトベンゾイミダゾール化合物の具体例としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−tert−ブチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−メトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−ベンジルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−フェニルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−フルオロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−クロロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−クロロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4−ブロモクロロベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−ブロモベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチル−6−エトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エチル−6−クロロベンゾイミダゾール2−メルカプト−5−ベンゾイミダゾールカルボン酸等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−エチルベンゾイミダゾールが好ましい。
【0020】
歯科用プライマー中のメルカプトベンゾイミダゾール化合物の含有量は、0.5〜5質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中のメルカプトベンゾイミダゾール化合物の含有量が0.5質量%以上であることにより、歯科用プライマーの製造時に沈降の発生を抑制することができ、5質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用プライマーとしての性能が向上する。
【0021】
<銅化合物>
本願明細書及び特許請求の範囲において、銅化合物は、後述する化学重合開始剤における還元剤又は光重合促進剤として機能する。
【0022】
銅化合物としては、特に限定されないが、アセチルアセトン銅(II)、4−シクロヘキシル酪酸銅(II)、酢酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、グルコン酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム銅(II)、塩化銅(II)、硝酸銅(II)、酢酸銅(II)、アクリル酸銅(II)、メタクリル酸銅(II)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0023】
歯科用プライマー中の銅化合物の含有量は、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.1〜0.3質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の銅化合物の含有量が0.05質量%以上であることにより、歯科用プライマーの保存安定性を向上させることができ、0.5質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用プライマーとしての性能が向上する。
【0024】
<(メタ)アクリレート>
本願明細書及び特許請求の範囲において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各種モノマー、オリゴマーあるいはプレポリマーを意味し、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個以上有する。また、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、メタクリロイルオキシ基及び/又はアクリロイルオキシ基を意味する。
【0025】
(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオン、2,2−ビス−4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−フェニルプロパン、N,N'−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、2,2'−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなるウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなるウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
歯科用プライマー中の(メタ)アクリレートの含有量は、0.5〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の(メタ)アクリレートの含有量が0.5質量%以上であることにより、歯科用プライマーの接着性が向上し、70質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用プライマーとしての性能が向上する。
【0027】
(メタ)アクリレートとして、酸基を有する(メタ)アクリレートを使用することもできる。
【0028】
酸基を有する(メタ)アクリレートは、本実施形態の歯科用プライマーに、歯質や、歯科用修復物の材料であるジルコニア、アルミナ等のセラミックスや、貴金属を含む合金に対する接着性を付与する効果がある。
【0029】
酸基を有する(メタ)アクリレートは、リン酸基、チオリン酸基又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましく、例えば、1分子中にリン酸基、チオリン酸基又はカルボキシル基を1個又は複数個有する(メタ)アクリレートを使用できる。
【0030】
リン酸基又はチオリン酸基は、カルボキシル基よりも強い酸性を示すことから、歯面のスメアー層を溶解させる効果や歯質を脱灰させる効果が高く、特に、エナメル質に対して、接着性を向上させる効果が高い。
【0031】
リン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。中でも、接着性の向上及び(メタ)アクリレート自体の安定性の点から、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートが特に好ましい。
【0032】
チオリン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンチオホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンチオホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンチオホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンチオホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンチオホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデシルジハイドロジェンチオホスフェート、14−(メタ)アクリロイルオキシテトラデシルジハイドロジェンチオホスフェート、15−(メタ)アクリロイルオキシペンタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンチオホスフェート、17−(メタ)アクリロイルオキシヘプタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、18−(メタ)アクリロイルオキシオクタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、19−(メタ)アクリロイルオキシノナデシルジハイドロジェンチオホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンチオホスフェート等が挙げられる。中でも、接着性の向上及び(メタ)アクリレート自体の安定性の点から10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェートが特に好ましい。
【0033】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリット酸無水物、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。中でも、接着性の向上の点から、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物が特に好ましい。
【0034】
なお、酸基を有する(メタ)アクリレートは、二種以上併用してもよい。
【0035】
歯科用プライマー中の酸基を有する(メタ)アクリレートの含有量は、2〜30質量%であることが好ましく、4〜20質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の酸基を有する(メタ)アクリレートの含有量が2質量%以上であることにより、歯科用プライマーの接着性が向上し、30質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用プライマーとしての性能が向上する。
【0036】
(メタ)アクリレートとして、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤を使用することもできる。
【0037】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤としては、特に限定されないが、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0038】
歯科用プライマー中の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤の含有量は、0.5〜5質量%であることが好ましく、1.5〜3質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤の含有量が0.5質量%以上であることにより、歯科用プライマーの接着性が向上し、5質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用プライマーとしての性能が向上する。
【0039】
<有機溶媒>
有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブ、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、エタノール、アセトン、イソプロパノール、ブタノールが好ましい。
【0040】
歯科用プライマー中の有機溶媒の含有量は、30〜90質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の有機溶媒の含有量が30質量%以上であることにより、歯科用プライマーの乾燥性を向上させることができ、90質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用プライマーとしての性能が向上する。
【0041】
<化学重合開始剤における還元剤>
本実施形態の歯科用プライマーは、化学重合開始剤における還元剤をさらに含んでいてもよい。
【0042】
このとき、歯科用プライマーは、化学重合開始剤における酸化剤を含まない。歯科用プライマー中に化学重合開始剤における酸化剤と還元剤が存在すると、(メタ)アクリレートの重合が開始しやすくなり、歯科用プライマーの保存安定性が低下するためである。
【0043】
(メタ)アクリレートの重合開始方法としては、特に限定されないが、熱、可視光、電磁波(赤外線、紫外線、X線等)、電子線等により、重合開始に必要なエネルギーを供給する方法が挙げられる。
【0044】
ただし、(メタ)アクリレートの重合開始方法によらず、本実施形態の歯科用プライマーが化学重合開始剤における還元剤をさらに含むことにより、(メタ)アクリレートの重合開始に必要なエネルギーを大きく下げることができ、かつ重合反応の制御が容易になる。
【0045】
化学重合開始剤における還元剤としては、特に限定されないが、アミン化合物、スルフィン酸類、チオ尿素類、システイン類、アスコルビン酸類等を挙げることができる。
【0046】
アミン化合物としては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、トリエチルアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン化合物、N−フェニルグリシン等を挙げることができる。
【0047】
スルフィン酸類としては、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホニルフルオライド、o−トルエンスルホニルイソシアネート、p−アセトアミドベンゼンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
チオ尿素類としては、チオ尿素及びチオ尿素の誘導体が挙げられる。
【0049】
チオ尿素の誘導体としては、エチレンチオ尿素、N−メチルチオ尿素、N−エチルチオ尿素、N−プロピルチオ尿素、N−ブチルチオ尿素、N−ラウリルチオ尿素、N−フェニルチオ尿素、N−シクロヘキシルチオ尿素、N,N−ジメチルチオ尿素、N,N−ジエチルチオ尿素、N,N−ジプロピルチオ尿素、N,N−ジ−ブチルチオ尿素、N,N−ジラウリルチオ尿素、N,N−ジフェニルチオ尿素、N,N−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、N−アセチルチオ尿素、N−ベンゾイルチオ尿素、1−アリル−3−(2−ヒドロキシエチル)−2−チオ尿素、1−(2−テトラヒドロフルフリル)−2−チオ尿素等を挙げることができる。
【0050】
システイン類としては、システイン及びシステインの誘導体が挙げられる。
【0051】
システインの誘導体としては、システインメチル、システインエチル、N−メチルシステイン、N−エチルシステイン、N−アセチルシステイン、N,N−ジメチルシステイン、N,N−ジエチルシステイン、N,N−ジアセチルシステイン、グルタチオン等を挙げることができる。
【0052】
アスコルビン酸類としては、アスコルビン酸及びアスコルビン酸の塩が挙げられる。
【0053】
アスコルビン酸の塩としては、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カリウム等を挙げることができる。
【0054】
なお、化学重合開始剤における還元剤は、二種以上併用してもよい。
【0055】
歯科用プライマー中の化学重合開始剤における還元剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の化学重合開始剤における還元剤の含有量が0.1質量%以上である場合、又は、10質量%以下である場合は、歯科用プライマーの接着性がさらに向上する。
【0056】
<光重合開始剤>
化学重合開始剤における還元剤に代えて、又は、化学重合開始剤における還元剤と共に、光重合開始剤を用いることもできる。歯科用プライマーが光重合開始剤を含むことにより、光を照射することにより硬化する特性を歯科用プライマーに与えることができる。
【0057】
光重合開始剤としては、特に限定されないが、ケトン系化合物、α−ジケトン系化合物、ケタール系化合物、アントラキノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾインアルキルエーテル系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物等が挙げられる。
【0058】
ケトン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0059】
α−ジケトン系化合物としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、アセナフテンキノン、9,10−フェナントラキノン等が挙げられる。
【0060】
ケタール系化合物としては、例えば、ベンジルケタール、ジアセチルケタール、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルビス(β−フェニルエチル)ケタール、ベンジルビス(2−メトキシエチル)ケタール、4,4'−ジメチル(ベンジルジメチルケタール)等が挙げられる。
【0061】
アントラキノン系化合物としては、例えば、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン等が挙げられる。
【0062】
チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキシド、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド等が挙げられる。
【0063】
ベンゾインアルキルエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0064】
アシルホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0065】
歯科用プライマー中の光重合開始剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の光重合開始剤の含有量が0.1質量%以上であることにより、歯科用プライマーの接着性が向上し、10質量%以下であることにより、歯科用プライマーの保存安定性が向上する。
【0066】
なお、光重合開始剤を用いる場合、光重合促進剤を併用してもよい。
【0067】
光重合促進剤としては、特に限定されないが、N,N−ジメチル−p−トルイジン、トリエタノールアミン、トリルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の3級アミン、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3,5−トリエチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸等のバルビツール酸誘導体等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0068】
歯科用プライマー中の光重合促進剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜1質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の光重合促進剤の含有量が0.1質量%以上である場合、又は、5質量%以下である場合は、歯科用プライマーの接着性がさらに向上する。
【0069】
<その他のシランカップリング剤>
歯科用プライマーは、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の何れも有さないその他のシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0070】
その他のシランカップリング剤としては、特に限定されないが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルチオプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルチオペンチルトリメトキシシラン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0071】
歯科用プライマー中のその他のシランカップリング剤の含有量は、0.5〜5質量%であることが好ましく、1.5〜3質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中のその他のシランカップリング剤の含有量が0.5質量%以上であることにより、歯科用プライマーの接着性が向上し、5質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用プライマーとしての性能が向上する。
【0072】
<その他の成分>
歯科用プライマーは、重合禁止剤、フィラーをさらに含んでいてもよい。
【0073】
重合禁止剤としては、特に限定されないが、ジブチルヒドロキシトルエン、2,6−t−ブチル−2,4−キシレノール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0074】
歯科用プライマー中の重合禁止剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜1質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中の重合禁止剤の含有量が0.1質量%以上である場合、又は、5質量%以下である場合は、歯科用重合性プライマーの保存安定性が向上する。
【0075】
フィラーは、有機フィラー及び無機フィラーのいずれであってもよいが、無機フィラーであることが好ましい。
【0076】
無機フィラーとしては、特に限定されないが、シリカ粉末、ヒュームドシリカ、アルミナ粉末、ガラス粉末(例えば、バリウムガラス粉末、フルオロアルミノシリケートガラス粉末)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0077】
無機フィラーは、必要に応じて、シランカップリング剤等の表面処理剤で処理されていてもよい。
【0078】
歯科用プライマー中のフィラーの含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましい。歯科用プライマー中のフィラーの含有量が0.1質量%以上である場合、又は、20質量%以下である場合は、歯科用プライマーの接着性がさらに向上する。
【実施例】
【0079】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0080】
<実施例1〜8>
表1に示す配合[質量%]で、酸基を有さないメタクリレート、酸基を有するメタクリレート、シランカップリング剤、有機溶媒、銅化合物、メルカプトベンゾイミダゾール化合物、重合禁止剤を混合することにより、プライマーを作製した。
【0081】
<比較例1、2>
表2に示す配合[質量%]で、酸基を有さないメタクリレート、酸基を有するメタクリレート、有機溶媒、銅化合物又はバナジウム化合物、重合禁止剤を混合することにより、プライマーを作製した。
【0082】
なお、表1、2における略称の意味は、以下の通りである。
【0083】
UDMA:ジ−2−メタクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
MDTP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート
VAA:バナジルアセチルアセトナート
MBI:2−メルカプトベンゾイミダゾール
MMBI:2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
次に、プライマーの保存安定性及び接着性を評価した。
【0084】
<保存安定性>
各実施例及び比較例のプライマーを高密度ポリエチレン製の容器に入れて密封し、温度60℃の環境下で2週間放置した後の変化を目視により確認した。保存安定性の判定基準は、以下のとおりである。
【0085】
○:プライマーのゲル化又は変色が確認された場合
×:プライマーのゲル化及び変色の何れも確認されなかった場合
<接着性>
牛歯象牙質を#320耐水研磨紙により研磨し、平坦にした研磨面に、直径が2.5mmの穴が開いている厚さが100μmのポリテトラフルオロエチレン製のシールを貼り付け、被着面の面積を規定した。引張試験用治具として、#120耐水研磨紙により研磨した後、サンドブラスト処理を行った、直径が10mmのステンレスロッドを使用した。牛歯象牙質の被着面に各実施例及び比較例のプライマーを塗布し、10秒間放置した後、エアーブローにより乾燥させた。
【0086】
ステンレスロッドに歯科用セメントとしての、ジーセムセラスマート(ジーシー社製)の練和物を適量塗布し、これを牛歯象牙質の被着面に圧接した。余剰のセメントを探針で除去した後、温度37℃、湿度95%RHの環境下で1時間放置し、さらに37℃の蒸留水中に23時間浸漬して試験体とした。
【0087】
得られた試験体について、精密万能試験機オートグラフAG−I(島津製作所社製)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張試験を実施し、引張接着強さの平均値を求めた。接着性の判定基準は、以下のとおりである。
【0088】
○:引張接着強さの平均値が8MPa以上である場合
×:引張接着強さの平均値が8MPa未満である場合
表1、2に、プライマーの保存安定性及び接着性の評価結果を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表1、2から、実施例1〜8のプライマーは、保存安定性が高いことがわかる。
【0092】
これに対して、比較例1では、メルカプトベンゾイミダゾール化合物を添加していないため、沈降が発生し、プライマーを作製することができなかった。
【0093】
比較例2のプライマーは、バナジルアセチルアセトナートを含むため、保存安定性が低い。