(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654523
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】バックドリル加工の深さ測定方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20200217BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20200217BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20200217BHJP
B26F 1/16 20060101ALI20200217BHJP
B26D 7/00 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
H05K3/46 X
H05K3/46 W
H05K3/46 N
B23Q17/00 A
B23Q17/20 A
B26F1/16
B26D7/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-148266(P2016-148266)
(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公開番号】特開2018-18963(P2018-18963A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀田恭平
(72)【発明者】
【氏名】時永勝典
(72)【発明者】
【氏名】薗田耕平
(72)【発明者】
【氏名】荒木裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】高光秀幸
【審査官】
ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−122825(JP,A)
【文献】
特開2005−116945(JP,A)
【文献】
特表2007−509487(JP,A)
【文献】
特開2008−218925(JP,A)
【文献】
特開平08−130379(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0338457(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
B23Q 17/00
B23Q 17/20
B26D 7/00
B26F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックドリル加工された穴を有する基板を接地されているテーブルに載置し、前記バックドリル加工において導電メッキ部が除去された部分の径より小さく導電メッキ部が除去されていない部分の径より大きい径の接触部を備える工具であって導電性を有するものを前記基板のバックドリル加工された穴に挿入し、前記接触部が前記穴に残された導電メッキ部に接触して前記基板に形成された前記導電メッキ部と電気的に接続された検査用の穴を介して電流が流れ始める時点を検出し、当該検出時点に基づいてバックドリル加工の深さを検出することを特徴とするバックドリル加工の深さ測定方法。
【請求項2】
基板にドリルでバックドリル加工を行う場合には当該ドリルを保持し前記バックドリル加工において導電メッキ部が除去された部分の径より小さく導電メッキ部が除去されていない部分の径より大きい径の接触部を備える工具であって導電性を有するものを保持することができるスピンドルと、バックドリル加工された前記基板を載置するためのテーブルであって接地されているものと、前記スピンドルと前記テーブルを互いに水平方向に相対移動させる水平駆動部と、前記スピンドルと前記テーブルを互いに垂直方向に相対移動させる垂直駆動部と、前記スピンドルに保持された前記工具がバックドリル加工された穴に挿入されて前記接触部が前記穴に残された導電メッキ部に接触して前記基板に形成された前記導電メッキ部と電気的に接続された検査用の穴を介して流れる電流を検出する電流検出部と、前記水平駆動部と前記垂直駆動部を制御する全体制御部であって前記電流検出部での検出時点に基づいてバックドリル加工の深さを検出するものとを備えることを特徴とするバックドリル加工の深さ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックドリル加工が行われた多層基板に対してバックドリル加工の深さを測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層プリント基板のLSI(大規模集積回路)等の電子部品を実装するために、内層にある所定の導体配線層と接続するための端子として、貫通穴を形成し、それに導電メッキを施している。しかしながら、その貫通穴のメッキ部が目的とする導体配線層までの距離よりも長いため、その長すぎる部分(以下、スタブという)を短くしなければ、インピーダンス不整合や信号遅延、波形なまりが発生するという問題がある。
【0003】
そこで、メッキした後に前記貫通穴の径より僅かに大きな径のドリルで、前記導体配線層の手前までバックドリル加工(スタブ除去加工)し、スタブとなるメッキ層を取り除くことが必要である。
【0004】
バックドリル加工では、いかに余分なスタブを取り除くことが出来るかが重要であり、高精度な深さ制御を実現するために、例えば特許文献1と2に開示される技術があるが、基板に凹凸があったり層が多くなったりすると、必ずしも目標通りの深さに加工されているとは限らない。従って、あたためてバックドリル加工の深さを測定する必要が生じるが、特許文献1と2ではその点についての言及はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-4585号公報
【特許文献2】特開2014-113662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、バックドリル加工が行われた基板に対してバックドリル加工の深さを測定できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なバックドリル加工の深さ測定方法は、バックドリル加工された穴を有する基板を接地されているテーブルに載置し、前記バックドリル加工において導電メッキ部が除去された部分の径より小さく導電メッキ部が除去されていない部分の径より大きい径の接触部を備える工具であって導電性を有するものを前記基板のバックドリル加工された穴に挿入し、前記接触部が前記穴に残された導電メッキ部に接触して前記基板に形成された前記導電メッキ部と電気的に接続された検査用の穴を介して電流が流れ始める時点を検出し、当該検出時点に基づいてバックドリル加工の深さを検出する。
【0008】
また、本願において開示される発明のうち、代表的なバックドリル加工の深さ測定装置は、基板にドリルでバックドリル加工を行う場合には当該ドリルを保持し前記バックドリル加工において導電メッキ部が除去された部分の径より小さく導電メッキ部が除去されていない部分の径より大きい径の接触部を備える工具であって導電性を有するものを保持することができるスピンドルと、バックドリル加工された前記基板を載置するためのテーブルであって接地されているものと、前記スピンドルと前記テーブルを互いに水平方向に相対移動させる水平駆動部と、前記スピンドルと前記テーブルを互いに垂直方向に相対移動させる垂直駆動部と、前記スピンドルに保持された前記工具がバックドリル加工された穴に挿入されて前記接触部が前記穴に残された導電メッキ部に接触して前記基板に形成された前記導電メッキ部と電気的に接続された検査用の穴を介して流れる電流を検出する電流検出部と、前記水平駆動部と前記垂直駆動部を制御する全体制御部であって前記電流検出部での検出時点に基づいてバックドリル加工の深さを検出するものとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バックドリル加工が行われた基板に対してバックドリル加工の深さを測定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例を説明するための図である。
【
図2】
図1におけるバックドリル加工の深さを測定するための深さ測定工具の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
図1は、本発の一実施例を説明するための図である。
図1において、1はプリント基板に穴あけを行う場合に当該プリント基板が載置されるテーブルであり、接地されている。2はプリント基板に穴あけを行う場合にドリルを保持し回転させるスピンドル、3はテーブル1を水平な2次元方向(図において、左右方向と紙面に垂直な方向)に移動させスピンドル2に対して水平方向の相対移動を行わせるテーブル水平駆動部、4はスピンドル2を垂直方向に移動させテーブル1に対して垂直方向の相対移動を行わせるスピンドル垂直駆動部、5はスピンドル2の先端側に図示を省略するシリンダを介して契合しているプレッシャフットであり、スピンドル2が降下する場合、途中までは共に移動し、それ以後はスピンドル2と独立に垂直方向に移動できるようになっている。プレッシャフット5の下端には、プリント基板に穴あけを行う場合にその上面を押し付けるためのブッシュ6が取付けられている。
【0012】
7はスピンドル2と連結されたずれ検出器である。このずれ検出器7は、スピンドル2とプレッシャフット5とを共に降下させた場合、スピンドル2と共に降下し、ブッシュ6がプリント基板の上面位置に到達し、プレッシャフット5だけがそれ以上降下できなくなって、スピンドル2とプレッシャフット5が垂直方向に互いにずれた時を検出し、例えばプログラム制御の処理装置によって実現される全体制御部8へ検出信号を出力するものである。
【0013】
プリント基板に穴あけを行う場合、テーブル水平駆動部3やスピンドル垂直駆動部4が全体制御部8によって制御されるようになっている。穴あけを行うための制御機構としては、他に種々の要素と接続線を有するが、以上までは穴あけ装置として良く知られている構成である。
【0014】
11はテーブル1の上に載置されたバックドリル加工の深さを測定すべき多層のプリント基板である。12はバックドリル加工された貫通穴、13と14は内部配線層、15は貫通穴12の上部表面に形成された上部外層端子、16は貫通穴12の下部表面に形成された下部外層端子、17は内部配線層13と14を接続する導電メッキ部である。ここの構造は、貫通穴12の全長にわたって内側に導電メッキが施された後、最上位側にある内部配線層13の位置よりも上側部分及び最下位側にある内部配線層14の位置よりも下側部分がバックドリル加工によって除去され、内部配線層13と14間に導電メッキ部17が残された形になっている。プリント基板11の回路形成のためのエリアである回路用領域18には、このような貫通穴12が多数形成されている。
【0015】
19はプリント基板11の本来の回路形成のためのエリアでない検査用領域20に形成された検査用貫通穴である。この検査用貫通穴19に形成された導電メッキ部21は上部外層端子22、下部外層端子23及び内部配線層24と接続されている。貫通穴12の導電メッキ部17が接続された最上位側の内部配線層13あるいは最下位側にある内部配線層14は、特定の検査用貫通穴20に形成された導電メッキ部21と接続された内部配線層24と同じであるか電気的接続されており、その上部外層端子22と下部外層端子23に接続されている。検査用領域19にはこのような検査用貫通穴20がいくつか形成されており、それぞれ回路用領域18のいずれかの貫通穴12の導電メッキ部17と接続されている。
【0016】
次に、バックドリル加工の深さを測定する場合について説明する。9はバックドリル加工の深さを測定するための深さ測定工具で、スピンドル2で保持できる構造になっている。
深さ測定工具9は、例えば、
図2の断面模式図に示すように、円形の導体から成り、先端部91と中央部92とスピンドル2で保持する後端部(シャンク部)93を含む。中央部92の径は、
図1における貫通穴12の導電メッキ部17が残っているバックドリル非加工部分の径より大きく、導電メッキ部17が除去されたバックドリル加工部分の径より小さくなっている。従って、深さ測定工具9がバックドリル加工された貫通穴12に挿入された場合、残されている導電メッキ部17に中央部92の先端部91付近が接触するまでは、すり抜ける形となる。
【0017】
貫通穴12のバックドリル加工の深さを測定する場合、全体制御部8の制御の下で、以下のように動作する。
先ず、テーブル水平駆動部3によりテーブル1を水平な2次元方向に移動させ、貫通穴12の座標データに基づき、深さ測定工具9を貫通穴12の上方位置に合わせる。ここで、電源線25からスピンドル2の駆動用モータに電流検出用の電源を供給すると、駆動用モータには固定子と回転子間に静電容量が存在するので、深さ測定工具9は所定の電位に保たれる。次に、スピンドル2を回転させない状態で、スピンドル垂直駆動部4によりスピンドル2を降下させていく。ブッシュ6がプリント基板11の上面位置に到達し、プレッシャフット5だけがそれ以上降下できなくなって、ずれ検出器7でスピンドル2とプレッシャフット5が垂直方向に互いにずれた時を検出すると、全体制御部8はその時のスピンドル垂直駆動部4での送り位置P1を貫通穴12の座標データとともに記憶部10に記憶しておく。
【0018】
スピンドル垂直駆動部4によりスピンドル2がさらに降下すると、深さ測定工具9の先端部91が貫通穴12の導電メッキ部17と導通するようになり、そこで電源線25から深さ測定工具9、内部配線層13、内部配線層24、検査用貫通穴20の導電メッキ部21及び下部外層端子23を経由して接地されているテーブル1に電流が流れ始めるようになる。
ここで、電流検出部26が電源線25に流れる電流を検出すると、電流検出部26の検出信号を受けた全体制御部8はスピンドル垂直駆動部4のそれ以上の送りを止めるとともに、その時のスピンドル垂直駆動部4での送り位置P2を貫通穴12のバックドリル加工最終位置と決定し、貫通穴12の座標データとともに記憶部10に格納する。その後、全体制御部8は今回検出の送り位置P2と先に記憶しておいた送り位置P1とに基づいて貫通穴12のバックドリル加工の深さを算出し、貫通穴12の座標データとともに記憶部10に格納する。
プリント基板11に形成された他の貫通穴12の場合も、同様にして、貫通穴12のバックドリル加工の深さを算出し、その座標データとともに記憶部10に格納する。
【0019】
以上により、貫通穴12の最上位側にある内部配線層13の位置よりも上側部分のバックドリル加工の深さを測定することができる。最下位側にある内部配線層14の位置よりも下側部分のバックドリル加工の深さを測定する場合は、プリント基板11の上下を反転させ、上記と同様に行えばよい。
【0020】
以上の実施例によれば、プリント基板11の各貫通穴12について、バックドリル加工の深さを測定でき、そのデータを記憶部10に格納することができる。
【0021】
なお、以上の実施例においては、プリント基板11の上面位置の送り位置P1を各貫通穴毎に検出することにしたが、上面位置の変動が少ないことが判っているなら、特定の貫通穴の上面位置を代表としてバックドリル加工の深さを算出するようにしてもよい。
【0022】
また、以上の実施例においては、スピンドル2の駆動用モータに電流検出用の電源を供給することにより、スピンドル2側から深さ測定工具9を所定の電位に保つようにしたが、別な手段で測定工具9を所定の電位に保つようになっていてもよい。
【0023】
また、
図2に示した深さ測定工具9では、中央部92の径は一定としたが、先端部91付近以外は小さくなっていてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1:テーブル 2:スピンドル 3:テーブル水平駆動部 4:スピンドル垂直駆動部
5:プレッシャフット 5:ブッシュ 7:ずれ検出部 8:全体制御部
9:深さ測定工具 10:記憶部 11:プリント基板 12:貫通穴
13、14、24:内部配線層 15、22:上部外層端子、
16、23:下部外層端子 17、21:導電メッキ部 18:回路用領域、
19:検査用領域 20:検査用貫通穴 25:電源線 26:電流検出部