【実施例1】
【0012】
図1は屋外設置用パッケージ形圧縮機の全体構造を示す図である。
図1において、パッケージ形圧縮機は、機械室5と、冷却室9とを備えており、これらは、騒音の機外への伝播を抑えるための防音カバー10で覆われている。
【0013】
機械室5は、土台となるベース1上に圧縮空気を生成する圧縮機本体2と、この圧縮機本体2を駆動するモータ3と、電気部品を収納する電気箱4により構成されている。冷却室9は、圧縮空気を冷却するためのエアークーラ6、潤滑油を冷却するためのオイルクーラ7、それらの冷却のための冷却空気を吸込む冷却ファン8で構成されている。
【0014】
防音カバー10は、圧縮機本体2、モータ3、エアークーラ6、オイルクーラ7、冷却ファン8を覆う筐体を構成しており、騒音源となり得る構成を覆うことで防音効果が得られている。冷却ファン8は、機械室5に設けた吸気口50から外気を取り込み、一旦機械室5を通過させて吸気ダクト11から冷却空気を取り込んでいるので機械室5内の温度上昇を低く抑えることができるメリットがある。
【0015】
圧縮機本体2は雌雄一体のロータ12を有しており、機械室内から吸込みフィルタ13、吸込み絞り弁14を介して吸気した空気をロータ12で圧縮するようになっている。このときロータ12の冷却及びロータ12間のシールのために圧縮機本体2内には潤滑油が噴霧されるようになっており、この潤滑油と混合された圧縮空気はその後、オイルセパレータ15によって更に潤滑油と分離されて配管16を介してエアークーラで冷却されて吐出配管17よりユーザーに供給されるようになっている。一方、オイルケース18内の潤滑油はロータ12の一次側、二次側の圧力差を利用して配管2a、配管3aを介して圧縮機本体へ送られ、再度ロータに噴霧されるようになっている。
【0016】
ここで、エアークーラ6による圧縮空気の冷却、及び、オイルクーラ7による潤滑油の冷却は、冷却ファン8によって機械室5に設けた吸気口50からの外気を一旦機械室5を通過させて機械室5内の換気をした後、吸気ダクト11から取り込んだ冷却空気を各クーラに通過させることによる熱交換にて行っている。
【0017】
さらに、クーラと熱交換した空気は、機械室5に設けた吸気口50に回り込み再度吸込まれることがないように、天井側の防音カバーに設けられた冷却室上部の排気口19より上方に排気される。
【0018】
すなわち、筐体の側面(防音カバー10)において、筐体の内外を連通する開口部を吸気口50として機械室内に外気を取り込み、筐体の天井面の開口部を排気口19として、筐体の上方から排気されることで、筐体内の冷却を図っている。
【0019】
屋外設置用パッケージ式圧縮機の特徴としては、排気口19への雨水の侵入を防止するため、排気口の上部には排気室20が設けており、エアークーラ6、オイルクーラ7を通過した冷却風は遮蔽板21を通過し排気口22に送風される。遮蔽板21により排気室20への雨水の侵入を最小限に抑えている。排気口22より侵入する雨水は一旦ダクト23で受け、溝24を通過し、排水路25、排水穴26を介してベース下に排水される。また、機械室5に設けた吸気口50への水の侵入を抑えるため、パッケージ左側にはスペース27が設置されており、スペース27に設けた吸気口60より侵入した雨水は排水穴28よりベース下に排水される。また吸気口50にはフィルタ29が設置されている。
【0020】
一般的な空気圧縮機の容量制御は、吐出配管17に備えた圧力センサ30により、ユーザー側の使用空気量(以降、負荷率)を以下の方法で把握し制御を行っている。
【0021】
モータを一定速度で駆動する場合:圧縮機の負荷運転中、圧力センサ30がある一定の圧力Paに達した場合、吸込み絞り弁14の弁板を閉じ、オイルケース18内の圧力を大気と連通した電磁弁(図示せず)によって放気し無負荷運転を行う。圧力がある所定の圧力Pbまで下降した場合、放気を止め、吸込み絞り弁14の弁板を開き、負荷運転を再開する。負荷運転と無負荷運転のサイクル時間がある一定間隔時間以下になった場合、モータの運転を停止し自動停止モードになる。
【0022】
モータを可変速制御する場合:ある所定の圧力Paにモータの回転数を制御する。このときのモータの回転数によって負荷率を算出する。モータの回転数制御範囲が最小状態を継続し、ある所定の圧力Pcに達した際、モータの運転を停止し自動停止モードになる。自動停止後、圧力がPbまで下降した場合、モータの速度が可変しない場合と同様に負荷運転を再開する。
【0023】
空気圧縮機は圧縮した空気を機外に送り出す際、吐出配管17出口側に設置したエアードライヤー(図示せず)の露点温度を確保するため、圧縮空気は吐出配管17を通過する時点である所定の温度以下に抑える必要がある。吸込み口31に吸入される空気の温度を検知するために機械室5内に温度センサ32を備え、温度センサ32の値が上限値を超える場合、表示部33よりユーザーに周囲温度の換気やフィルタ清掃の警報を表示する構成となっている。
【0024】
吸込み口31に流入する空気の温度が高くなると圧縮空気の温度の他に圧縮空気に注入される潤滑油の温度も高くなり潤滑油の寿命を早めることになる。パッケージ型圧縮機の使用周囲温度(例:0℃〜40℃)は、一般的に機外付近の温度を示しており、運転中、機械室5は圧縮機本体2やモータ3、オイルケース18の放熱により機外に対し温度が高くなる(例:10℃上昇)。そのため、ユーザーに周囲温度の低下を促すためには、温度センサ32の設置する位置はできるだけ外気に近い開口部付近に設けることが望ましい。
【0025】
一般的に運転中の場合、ある一定の負荷率において機外と機内の温度差は一定であり、運転停止中の場合は機外と機内の温度差はほとんどないと考えられるが、屋外の設置の場合は太陽光のふく射熱により機械室内の温度が上昇するため、日射状況により温度差が左右される。また、機械室の温度上昇は開口部よりも遠い位置で最も高くなると考えるため、温度センサ32も開口部よりも遠い位置に設置するのが望ましいが、開口部との温度差が予測できていれば、開口部に近い場所に設置することも可能である。
【0026】
また、機械室5に備えたモータ3と電気箱4、冷却室9に備えた冷却ファンを駆動するファンモータ34と表示部33は、それぞれ使用上限温度が決められているため、これら部品は冷却風の流路に配置された構造になっており、冷却風量については空気圧縮機の負荷や使用温度が最も高い場合において各部品の使用上限温度を超えないよう設定している。
【0027】
図2は本実施例に係る屋外設置用パッケージ形圧縮機の冷却ファン可変速制御式の制御構成を示したものである。
図2において、二点鎖線は各部屋の区分けを示したものであり、実線は配線を示している。
【0028】
電気箱4にはファンインバータ35と制御基板36を備え、それぞれユーザー側電気設備37より電源が供給されており、ユーザー側電気設備37よりブレーカー(図示せず)によって電源供給のON/OFFの切り替えが行われている。圧縮機運転中は、ファンインバータ35と接続した制御基板36内の制御装置からファンインバータ35に運転周波数指示が送られ、ファンインバータ35より配線39を通じて冷却室9内のファンモータ34の回転数制御を行う。
【0029】
以下ファンモータ34の回転数制御について説明する。制御基板36は機械室5内に設けた吐出温度センサ40が配線41により接続され吐出温度がある一定の温度Taになる様、ファンインバータ35へ回転周波数の指示を送信している。吐出温度センサ40は潤滑油の温度が比較的高くなるような、空気圧縮直後の位置(
図1)に配置される。Taの温度は潤滑油の使用上限温度より低く、所定の圧力においてドレンが発生しない温度よりも高くなるよう設定されている。これによって、冷却ファンは圧縮機運転中常に全速で運転することなく、圧縮機の負荷率が少ない場合は、冷却ファンの回転数を抑えることで、消費電力の低減や騒音低減を図っている。
【0030】
表示部33は制御基板36に配線42により接続され、運転・停止等を操作するための操作部を備えている。運転操作時、制御基板38により電磁接触器(図示せず)またはインバータ(図示せず)によりモータ3を駆動し圧縮機本体2の運転を開始する。
【0031】
本実施例においては、圧縮機の運転停止中に係るものであり、運転停止中でも表示部33、制御基板36、ファンインバータ35が通電している構成とする。そして、運転停止中でも、温度センサ32からの温度情報によって機内温度が上昇することを検知し、ファンモータ38を運転し機内換気を行う。これにより太陽光のふく射熱等による機内温度上昇を抑制することができる。また、ファンモータ34の回転数制御を行うことにより電力と騒音を最小限に抑えることが可能である。
【0032】
次に、運転停止中におけるファンモータ34の制御フローを説明する。
図3は本実施例における
図2の制御構成における制御処理内容を表すフローチャートである。
【0033】
図3において、まず、運転停止モードに切り替えられた時に、ステップ100に進みタイマtm1をカウントアップする。次にステップ101に進み機内温度センサが断線しているか否かを判定する。機内温度センサが断線していない場合は、次のステップ102に進み機内温度T0が機内上限温度T1以上かどうかを判定して、T1以上であればステップ103に進みファンインバータの運転をONにする。
【0034】
機内温度T0が機内上限温度T1を超えていない場合は、再度ステップ101に戻り機内温度センサ断線の判定を行う。ステップ103の後、ステップ105に進みファンインバータ運転ON後タイマtm3をカウントアップする。続いてステップ106に進みtm3がファンインバータ運転ON後タイマ閾値tm4まで経過したか判定を行い。tm4まで経過しない場合は再度ステップ106を繰り返しtm3がtm4まで経過したかどうか判定を行う。
【0035】
Tm4まで経過した場合はステップ107に進み、機内温度T0がファンインバータ運転開始時の機内温度T1との温度差が温度差閾値△T以上であるかを判定し、△T以上であると判定した場合は次のステップ108に進み、T1>T0であるかどうかを判定する。T1>T0と判定した場合はファンインバータの運転により機内温度の低下を図ることができたと判断し、次のステップ110に進みファンの可変速制御を開始する。
【0036】
この時制御目標値として機内温度:T3として設定する。T3は、例えば機内上限温度T1が45℃の場合、制御のハンチングを防ぐため2℃程度裕度を付けて43℃程度に設定するのが望ましい。ステップ107とステップ108のいずれもNOの場合は機内温度の改善ができていないと判定し、ステップ109に進み表示部にて機内温度上昇またはフィルタ目詰まりによる清掃指示を表示する。
【0037】
ステップ110の後、次のステップ111に進みファンインバータの周波数が最低周波数かどうかを判定する。最低周波数でない場合は111のステップを繰り返す。最低周波数に達した場合、次のステップ112に進み最低周波数開始のタイマtm5をカウントアップする。
【0038】
次にステップ113に進み、tm5がタイマ閾値tm6に達したかどうかを判定する。tm6まで経過しない場合はステップ113を繰り返す。タイマ閾値tm6に達したと判定した場合、ステップ114に進みファンインバータの運転をOFFにする。
【0039】
また、ステップ101において機内温度センサ断線と判定した場合は、あらかじめ運転停止中に機内温度センサの断線表示をするかどうか設定しておくことで、断線表示を設定した場合は、ステップ116に進み表示部にて断線警報を表示する。断線表示しないと選択した場合は、機内温度センサに代わり、吐出温度センサを代用しステップ102へ進むことが可能である。吐出温度センサを代用する場合は、運転停止直後は高温になっているため、あらかじめ運転停止から機内温度と同じになるまでの時間を計測し、その時間をtm2として設定しておき、ステップ117による判定を行う。
【0040】
機内温度センサを代用するセンサとしては、吐出温度センサに限らず、冷却室と機械室との温度差が予測できる位置であれば他に設置した温度センサでも代用が可能である。
【0041】
以上のように、本実施例は、空気を圧縮する圧縮機本体と、圧縮機本体を駆動するモータと、圧縮空気を冷却するための冷却ファンと、冷却ファンを駆動するファンモータと、これらを覆い外気と連通する開口部を有する筐体と、を備えたパッケージ形圧縮機であって、筐体内部に備えた機内温度を検知するための温度センサと、機内温度に応じてファンモータを制御する制御装置を有し、制御装置は、圧縮機運転停止時において、温度センサで検知した機内温度が所定の値以上の場合、冷却ファンの運転を開始するように制御する。
【0042】
また、ファンモータを制御するファンインバータを有し、制御装置は、圧縮機運転停止時において、温度センサで検知した機内温度が所定の値以上の場合、ファンインバータを制御して冷却ファンの運転を開始し、機内温度が所定値まで低下したことを判断してファンインバータの可変速制御を開始する。
【0043】
これにより、屋外設置において、防水、防塵構造を確保しつつ、機内温度の上昇を抑制し、電気部品の寿命低下を低減するパッケージ形圧縮機を提供することができる。
【実施例2】
【0044】
本実施例は、実施例1におけるファンインバータを用いず、冷却ファンをON/OFF制御する場合について説明する。
【0045】
図4は
図2に対しファンインバータ35を構成しない場合の制御構成を示したものである。
図4において、
図2と同じ機能を持つ構成については同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0046】
図4において、リレー43を介してファンモータ34とユーザー側電源設備37が接続され、制御基板36によりリレー43を操作する構成となっている。これにより、ファンモータ34のON/OFF制御を行う。
【0047】
次に、本実施例における、運転停止中でのファンモータ34の制御フローについて説明する。
図5は本実施例における冷却ファンON/OFF制御式の制御フローチャートである。
図5において、実施例1の
図3と異なる点は、ステップ110からステップ113に代わりステップ119を追加した点である。その他は同じであるので、その説明は省略する。
【0048】
図5において、あらかじめ温度閾値T4を設定しておき、ステップ108でT1>T0の場合、ステップ119に移行し、T4>T0かどうかの判定を行う。否の場合、ステップ107に戻る。T4>T0の場合、ステップ114に進み冷却ファンの運転をOFFにする。T4は、T3と同様に、T1に対しある程度裕度もって低くした温度が望ましい。
【0049】
また、実施例1,2に共通して、
図3、
図5において、ステップ102以降において機内温度センサが断線した時は以下制御を行う。
冷却ファン運転中:一旦冷却ファンを停止しステップ115に進む。
冷却ファン停止中:ステップ115に進む。
【0050】
また、運転停止状態は操作部に備えたSTOPボタン(図示せず)によって判定する他、自動停止中の場合でも運転停止と判定することが可能である。自動停止中の場合は、負荷運転再開時に運転中と判断し通常の制御に戻るようになっている。また、故障時に停止している場合でも、2次災害になるかどうかを判定して本実施例の制御に移行することが可能である。
【0051】
さらに、
図1の機外温度センサ44を備えることにより、機内温度センサとの温度差でファンインバータもしくはファンの運転ON/OFFを実施することが可能である。機外と機内の温度差を把握することで例えば機外温度T5が20℃の場合、T0−T5=△T2の温度差がある値以上になった際、ファンインバータ、ファンの運転を開始することにより、△T2の値はT1−T5より低く抑えることが可能である。機内温度、機外温度共にT1を超える場合は、ステップ103に進まず、ステップ109に進み、周囲温度大の警報、故障表示をすることが可能である。
【0052】
さらに本実施例は給油式圧縮機を一例に説明したが、給水式圧縮機でも適用可能である。また空気以外の例えば窒素等の気体を圧縮する圧縮機でも適用可能である。
【0053】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。