(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記拡開防止体は、略C字形状の帯体であり、前記管状体の外周面には、前記拡開防止体を嵌着するための外周凹部が凹設されていることを特徴とする請求項5に記載の保護装置。
上端及び下端で開口し、植物の幹の外周を包囲する管状体に取り付けられて、前記管状体と前記幹との間の隙間に所定の動物や昆虫等の防除対象生物が侵入することを防止するための侵入防止体であって、
前記管状体の内周面に装着可能に形成され、周方向の一部で切断された環状の帯状部と、
前記帯状部の内周面全周から内方に延伸する前記複数の棒状突起体と、を備え、
前記複数の棒状突起体が前記防除対象生物の通過を規制可能な間隔で前記帯状部内周面に配置されていることを特徴とする侵入防止体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、苗木などの植物の幹は、単純な円柱形状のみならず、様々な特異な形状を有し得る。例えば、幹表面に凹凸があったり、幹が屈曲している。しかしながら、特許文献1の防除具では、突出片が上下方向にしか変位できない薄い平板状の舌片からなる。それ故、当該防除具が幹の特異な形状に対応しきれず、防除具と幹との間の隙間に防除対象生物の侵入を許す虞があった。例えば、幹表面に凹みがある場合、凹みに対向する突出片が幹表面に当接することなく、上方にめくり上がるように変形しない(又は不十分に変形する)ことがある。このような場合、凹みに対向する突出片と、上方にめくり上がるように変形した隣接する突出片との間に比較的大きな隙間が形成されて、該隙間から防除対象生物の侵入を許す虞があった。また、特許文献1の防除具では、その上端で幹と防除具との間の隙間を塞ぐように、複数の平板状の舌片が上方にめくれ上がるように可撓変形する。それ故、上端の隙間の大部分が舌片に覆われ、防除具内部に熱がこもって、幹が意図せずに温められる虞があった。例えば、冬場において外気温が低くなると、苗木は活動休止して休眠する。これに対し、幹を覆う防除具によって、苗木の幹が環境温度よりも高い温度で保温されることとなる。そして、苗木の幹の根元が、冬場の自然環境よりも高温に維持されて、苗木の休眠が妨げられる。本来、休眠すべき時期に苗木が活動を再開することにより、苗木の生長に変調をきたし、結果的に枯死につながる虞があった。他方、夏場においては、防除具内部において苗木の幹が非常に高温に曝されることになることから、同様に苗木の生長に変調をきたし、結果的に枯死につながる虞があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、被覆した幹への温度による影響を抑えつつ、従来よりも確実に防除対象生物からの被害を抑えることが可能な保護装置、及び、該保護装置に用いられる侵入防止体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の保護装置は、植物の幹に取り付けられて、所定の動物や昆虫等の防除対象生物から植物を保護するための保護装置であって、
上端及び下端で開口し、幹の外周を包囲可能な中空筒形状を有する管状体と、
管状体内部に配置され、管状体の内周面から突出する複数の棒状突起体を有する侵入防止体と、を備え、
幹が管状体に外挿された状態で、複数の棒状突起体が、防除対象生物の通過を規制可能な間隔で幹周囲を包囲するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の保護装置は、請求項1に記載の保護装置において、管状体は、幹に径方向外方から取付可能な分割片として構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の保護装置は、請求項2に記載の保護装置において、管状体は、周方向の一部に開口を形成するように分割片がヒンジで連結されて拡開可能に形成されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の保護装置は、請求項3に記載の保護装置において、侵入防止体は、周方向の一部で切断された環状の帯状部と、帯状部の内周面全周から突出する複数の棒状突起体と、を備え、
帯状部は、切断部が拡開するようにヒンジ部を介して変形可能であり、
帯状部のヒンジ部及び切断部が、管状体のヒンジ及び開口にそれぞれ重なり合うように配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の保護装置は、請求項2から4のいずれか一項に記載の保護装置において、管状体に装着され、分割片の離隔又は分離を防止する拡開防止体をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の保護装置は、請求項5に記載の保護装置において、拡開防止体は、略C字形状の帯体であり、管状体の外周面には、拡開防止体を嵌着するための外周凹部が凹設されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の保護装置は、請求項1から6のいずれか一項に記載の保護装置において、侵入防止体は、管状体に脱着可能な別体として構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の保護装置は、 請求項7に記載の保護装置において、管状体の内周面には、侵入防止体を収容するための内周凹部が凹設されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の保護装置は、請求項1から8のいずれか一項に記載の保護装置において、管状体は、防鼠成分を含有する材料で形成されてなることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の保護装置は、請求項1から9のいずれか一項に記載の保護装置において、侵入防止体は、管状体の上端、下端、又は、上端及び下端の両方に配置されてなることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の侵入防止体は、上端及び下端で開口し、植物の幹の外周を包囲する管状体に取り付けられて、管状体と幹との間の隙間に所定の動物や昆虫等の防除対象生物が侵入することを防止するための侵入防止体であって、
管状体の内周面に装着可能に形成され、周方向の一部で切断された環状の帯状部と、
帯状部の内周面全周から内方に延伸する複数の棒状突起体と、を備え、
複数の棒状突起体が防除対象生物の通過を規制可能な間隔で帯状部内周面に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の保護装置によれば、幹を外挿する管状体の内部には、その内周面から延伸し、任意の方向に傾動可能な複数の棒状突起体を有する侵入防止体が設けられている。そして、幹が管状体に外挿されて複数の棒状突起体が幹外周に当接したとき、各棒状突起体が幹の外周形状に応じて個別に任意の方向に傾動変形可能である。つまり、各棒状突起体は、その対向する幹外周の凹凸や屈曲に応じて、上下左右の全方向に個別に変位可能であることから、複数の棒状突起体が全体として幹の外周形状に合うように変形する。それ故、隣接する棒状突起体間に比較的大きな隙間ができることを抑えられる。その結果として、複数の棒状突起体が、防除対象生物の通過を規制可能な間隔で幹周囲を包囲し、管状体内周面と幹外周面との間の隙間に防除対象生物が侵入することを確実に防止することができる。また、侵入防止体が複数の棒状突起体で構成されていることから、管状体の上端又は下端における通風性が確保され、熱が管状体内部にこもることが抑えられる。したがって、本発明の保護装置は、被覆した幹に温度面から影響を与えることを抑えつつ、従来よりも確実に防除対象生物からの被害を抑えることが可能である。
【0019】
請求項2に記載の保護装置によれば、請求項1の発明の効果に加え、管状体が幹に径方向外方から取付可能な分割片からなることにより、分割片で幹を挟み込んで、管状体に幹を容易に外挿させることができる。
【0020】
請求項3に記載の保護装置によれば、請求項2に発明の効果に加え、分割片がヒンジで連結されてなることにより、ヒンジを介して分割片を拡開させて分割片の内側に幹を挟み込み、分割片を閉じることにより、管状体に幹を容易に外挿させることができる。
【0021】
請求項4に記載の保護装置によれば、請求項3の発明の効果に加え、侵入防止体の帯状部が管状体の内周面に取着された状態で、帯状部のヒンジ部及び切断部が、管状体のヒンジ及び開口にそれぞれ重なり合うように配置されている。これにより、重なり合った帯状部のヒンジ部及び管状体のヒンジを介して、侵入防止体及び管状体を一緒に拡開変形させ、管状体及び侵入防止体の両方に幹を同時的に外挿させることができる。すなわち、幹への保護装置の取付容易性が向上する。
【0022】
請求項5に記載の保護装置によれば、請求項2から4のいずれか一項の発明の効果に加え、分割体が合わさった管状体に拡開防止体を装着することにより、管状体としての形態を簡単に維持することができる。
【0023】
請求項6に記載の保護装置によれば、請求項5の発明の効果に加え、拡開防止体を管状体の外周凹部に嵌め込むことにより、拡開防止体を管状体に簡単に装着することができる。
【0024】
請求項7に記載の保護装置によれば、請求項1から6のいずれか一項の発明の効果に加え、侵入防止体が管状体に脱着可能な別体として構成されていることにより、管状体及び侵入防止体のいずれか一方が損傷等しても、各部材を個別に交換することができる。
【0025】
請求項8に記載の保護装置によれば、請求項7の発明の効果に加え、管状体の内周凹部に侵入防止体を嵌着することにより、侵入防止体を管状体に簡単に装着することができる。
【0026】
請求項9に記載の保護装置によれば、請求項1から8のいずれか一項の発明の効果に加え、管状体が防鼠成分を含有する材料で形成されてなることにより、主にネズミ等の小動物に対する忌避効果が発揮される。
【0027】
請求項10に記載の保護装置によれば、請求項7から9のいずれか一項の発明に加え、侵入防止体が管状体の上端、下端、又は、上端及び下端の両方に配置されてなることにより、管状体の端部で防除対象生物の侵入を阻止することができる。
【0028】
請求項11に記載の侵入防止体によれば、管状体の内周面に装着可能に形成された環状の帯状部の内周面全周から内方に延伸するように、任意の方向に傾動可能な複数の棒状突起体が突出形成されている。そして、幹を外挿する管状体に該侵入防止体が取り付けられて、複数の棒状突起体が幹外周に当接したとき、各棒状突起体が幹の外周形状に応じて個別に任意の方向に傾動変形可能である。つまり、各棒状突起体は、その対向する幹外周の凹凸や屈曲に応じて、上下左右の全方向に個別に変位可能であることから、複数の棒状突起体が全体として幹の外周形状に合うように変形する。それ故、隣接する棒状突起体間に比較的大きな隙間ができることを抑えることができる。その結果として、複数の棒状突起体が、防除対象生物の通過を規制可能な間隔で幹周囲を包囲し、管状体内周面と幹外周面との間の隙間に防除対象生物が侵入することを確実に防止することができる。また、侵入防止体が複数の棒状突起体を備えてなることから、管状体の上端又は下端における通風性が確保され、熱が管状体内部にこもることが抑えられる。したがって、本発明の侵入防止体は、管状体に装着されることで、被覆した幹に温度面から影響を与えることを抑えつつ、従来よりも確実に防除対象生物からの被害を抑えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0031】
本発明の一実施形態の保護装置100は、植物の幹に取り付けられて、植物に被害をもたらす防除の対象とする所謂「防除対象生物」から植物を保護するものである。以下に説明する本実施形態の保護装置100では、保護対象の「植物」をリンゴの苗木又は若木とし、且つ、「防除対象生物」をネズミとしている。「防除対象生物」のネズミは、体長約10cm程度の小動物である。一般に、ネズミは、その習性により、リンゴの苗木や若木の幹の根元付近の樹皮をかじることが知られている。そして、リンゴの苗木や若木は、その幹がかじられることで、枯死してしまうことが多い。本実施形態の保護装置100は、主にネズミである小動物の被害からリンゴの苗木を保護するように構成されている。ただし、本発明の技術的思想は、リンゴの苗木・若木に限らない他の果樹、樹木、野菜、草花等の植物、及び、ネズミに限らない他の動物(例えば、ウサギ、鹿など)、鳥類(例えば、キツツキなど)、昆虫(例えば、カミキリムシ等)等の防除対象生物にも適用可能であり、本発明は以下に説明する実施形態に限定されないことは云うまでもない。また、本発明の「幹」は、樹木の主幹に限らず、植物の茎や、主幹から分岐した大小の枝をも含む概念である。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態の保護装置100の概略斜視図である。
図2は、該保護装置100の概略平面図である。
図3(a)〜(c)は、該保護装置100の正面図、側面図及び背面図である。
図4は、該保護装置100のA−A断面図及びB−B断面図である。
【0033】
図1乃至
図3に示すとおり、保護装置100は、上端及び下端で開口し、植物(リンゴの苗木又は若木)の幹Tの外周を包囲可能な中空筒形状を有する管状体110と、該管状体110の上端で内部に配置され、管状体110の内周面から中心軸に向かって延びる複数の棒状突起体125を有する侵入防止体120と、管状体110の外周面に装着された拡開防止体130とを備えてなる。
図4に示すように、侵入防止体120が管状体110内部上端に配置され、拡開防止体130が管状体110の外周面に装着されている。以下、本実施形態の保護装置100を構成する各構成部材(管状体110,侵入防止体120,拡開防止体130)をそれぞれ説明する。
【0034】
まず、
図5乃至
図7を参照して、本実施形態の保護装置100の一構成要素である管状体110について説明する。
図5は、管状体110の斜視図である。
図6(a),(b)は、管状体110の閉口状態及び開口状態の平面図である。
図7(a)〜(c)は、管状体110の正面図、背面図及び側面図である。
【0035】
図5に示すとおり、管状体110は、合成樹脂製の波付可撓管を加工したものである。すなわち、管状体110は、上端及び下端で開口した軸方向に延びる中空筒形状を有している。また、管状体110の外周面及び内周面には、軸方向に交互に山部及び谷部が連続的に形成されている。そして、管状体110の外周面の山部と内周面の谷部とが表裏一体の関係にある。本実施形態では、管状体110の外周面の(山部間の)谷部を外周凹部114と定め、内周面の(山部間の)谷部を内周凹部115と定めた。
【0036】
また、管状体110は、幹Tに径方向外方から取付(外挿)可能であるように、円筒を縦軸方向に二分割した一対の分割体111,111を組み合わせてなる。管状体110の背面において、一対の分割体111,111は、周方向の一端でヒンジ113によって回動式に連結されている(
図6、
図7(c)参照)。ヒンジ113は、管状体110の周方向の一部で平面視略W字状に屈折して形成されている。そして、該ヒンジ113は、管状体110の軸方向全体において、軸方向に沿って連続的且つ直線的に延在している。なお、本実施形態の管状体110では、分割体111,111及びヒンジ113は、合成樹脂で一体成形されてなる。
【0037】
各分割体111は、ヒンジ113の周方向の反対側に開口縁部112を有する。管状体110の正面において、各開口縁部112は、管状体110の縦軸方向に沿って連続的且つ直線的に延在している(
図6及び
図7(a)参照)。換言すると、一対の分割体111,111(開口縁部112,112)は、管状体110を縦軸方向に沿って切断することによって形成され得る。管状体110の当初形態では、対向する開口縁部112,112が互いに近接又は当接し、管状体110が周方向にほぼ閉塞されている。そして、一対の分割体111,111がヒンジ113を介して回動することで、開口縁部112,112が互いに離隔して拡開する(
図6(a)、(b)参照)。すなわち、管状体110が拡径変形することにより、開口縁部112,112間に開口116が形成され得る。開口116は、管状体110の周方向の一部であり、且つ、ヒンジ113の反対側に位置する。他方、管状体110が拡開した状態から、管状体110がヒンジ113を介して縮径変形することで開口116が閉塞され得る。
【0038】
本実施形態の管状体110は、ネズミに対する忌避効果を発揮すべく、防鼠成分を含有する材料(合成樹脂)で形成されてなる。具体的には、管状体110は、マイクロカプセル化されたカプサイシン類又はシクロヘキシミド等の防鼠成分を含有する合成樹脂成形体である。そして、防鼠成分を含むマイクロカプセルを合成樹脂に混入したことによって、ネズミに対する忌避効果を維持することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、管状体110の寸法は、リンゴの苗木Pの根元付近を被覆可能に定められている。より具体的には、管状体110の長さが約600〜700mmであり、径が約50〜60mmである。しかしながら、管状体の寸法は、保護対象の植物や樹木の種類、被覆する箇所や目的等に応じて、任意に選択され得る。また、本発明の管状体は、防鼠成分を含有しなくてもよく、一般的な合成樹脂や、金属などの他の材料で構成されてもよい。
【0040】
図8及び
図9を参照して、本実施形態の保護装置100の一構成要素である侵入防止体120について説明する。
図8は、侵入防止体120の斜視図である。
図9(a)〜(d)は、侵入防止体120の平面図、正面図、背面図及び側面図である。
【0041】
図8及び
図9に示すとおり、侵入防止体120は、周方向の一部で切断された環状の帯状部121と、該帯状部121の内周面全周から延伸する複数の棒状突起体125と、を備える。
【0042】
帯状部121は、管状体110の内周凹部115に内側から収容又は嵌着可能な大きさで構成されている。つまり、帯状部121の外径が管状体110の内周凹部115の内径に対応し、且つ、帯状部121の幅が内周凹部115の(縦軸方向の)幅に対応している。好ましくは、帯状部121の外径を内周凹部115の内径よりも僅かに大きくすることで、弾性的に縮径変形させた帯状部121を内周凹部115に一体的に保持することが可能となる。
【0043】
また、帯状部121の周方向の一部において、環体を切断するように切断部122が設けられている。つまり、帯状部121の周方向の両端部は、切断部122を隔てて僅かに離間している。他方、帯状部121の周方向の一部であって、切断部122の反対側にヒンジ部123が形成されている。すなわち、帯状部121は、ヒンジ部123を介して周方向の両端部を近接又は離隔する方向に弾性変形可能である。該ヒンジ部123は、帯状部121に一体的に形成され、略W字形状に屈折している。該ヒンジ部123は、管状体110のヒンジ113に重合可能な形状を有している。すなわち、管状体110と同様に、帯状部121は、ヒンジ部123を介して、切断部122を拡開させるように拡径変形可能である。
【0044】
複数の棒状突起体125は、防除対象生物(ネズミ)の通過を規制可能な間隔で、帯状部121の内周面の周方向全体から略中心に向けて突出形成されている。各棒状突起体125は、若干先細りした小径の錐体(針状体)であるが、一様の径を有する細長い柱体等であってもよい。また、棒状突起体125の先端は樹皮を傷つけないように丸まっている。各棒状突起体125は、所定の長さを有し、任意の方向に弾性的に傾動可能である。特には、各棒状突起体125は、ある程度の剛性を有していることから、その根元を中心に傾動変形し易い。本実施形態では、複数の棒状突起体125は、ほぼ一定の間隔(約5mm)で周方向に規則的に並んでいる。他方、
図9(e)に示すように、複数の棒状突起体125は幅方向に段違いに配置されている。すなわち、隣接する棒状突起体125では、その根元の位置及び延伸方向が上下に僅かに相違している。このように、複数の棒状突起体125が幅方向にオフセットして配置されていることにより、様々に湾曲する幹Tの自然形状により柔軟に対応可能となる。
【0045】
そして、複数の棒状突起体125の先端によって、帯状部121の中心に幹Tを内挿するための略円形の挿通部126が形成されている。各棒状突起体125は、管状体110への装着時に幹Tの外周面に当接可能な長さを有していることが好ましい。換言すると、挿通部126に幹Tを挿通したときに各棒状突起体125の先端を幹Tの外周面に当接させるべく、略円形の挿通部126の径は植物の幹Tよりも小さく定められることが好ましい。本実施形態では、挿通部126の径は、約30〜35mm程度である。
【0046】
なお、本実施形態では、棒状突起体125の長さは、約10〜20mmであり、その径は約2〜3mmである。しかしながら、本発明の棒状突起体は上記寸法に限定されず、その寸法は任意に選択され得る。また、本実施形態では、侵入防止体120は、合成樹脂によって一体成形されてなる。つまり、帯状部121及び棒状突起体125は一体的に形成されている。しかしながら、本発明の侵入防止体の帯状部と棒状突起体を別の素材(例えば、合成樹脂と金属)で形成してもよく、本実施形態に限定されることはない。
【0047】
図10及び
図11を参照して、本実施形態の保護装置100の一構成要素である拡開防止体130について説明する。
図10は、拡開防止体130の斜視図である。
図10(a)〜(d)は、拡開防止体130の平面図、正面図、背面図及び側面図である。
【0048】
図10及び
図11に示すように、拡開防止体130は、略C字形状の帯体であり、管状体110の外周凹部114に装着され、分割片111,111の拡開(又は分離)を防止するように機能する。拡開防止体130は、平面視円弧状に湾曲した曲板状の挟持板131と、該挟持板131の内周面から突出した突条132とを備えてなる。本実施形態では、拡開防止体130は、合成樹脂で一体成形されたものであるが、その材質は任意に選択され得る。
【0049】
挟持板131は、その両端部が近接又は離隔する方向に弾性変形可能である。該挟持板131は、管状体110を外周面から把持可能な長さを有し、その円弧角が少なくとも180度よりも大きい。また、該挟持板131の幅は、外周凹部114の幅よりも大きい。他方、突条132は、挟持板131の全周に亘って周方向に連続して突出している。該突条132は、挟持板131の幅方向の略中央に位置し、その幅は挟持版131の幅よりも小さい。特には、挟持板131の幅は、管状体110の外周凹部114に収容又は嵌入可能に定められ、外周凹部114の幅よりも僅かに小さい。そして、該突条132の周方向の略中央には、変形補助部133が凹設されている。該変形補助部133は、挟持板131の拡径及び縮径方向への弾性変形を補助するようにも機能する。さらに、挟持板131の周方向先端近傍の外周面は、作業者による挟持板131の取り扱いの滑り止めとなるように、凹凸加工されている。
【0050】
以上の各構成部材の説明を踏まえて、保護装置100の構成をより詳細に説明する。
【0051】
図1及び
図4(b)に示すように、管状体110の上端の内周凹部115に侵入防止体120が収容され、管状体110上端開口からの防除対象生物の侵入を防いでいる。
図4(a)に示すように、内周凹部115において、侵入防止体120の帯状部121外周面が管状体110の内周面に当接している。より詳細には、帯状部121のヒンジ部123及び切断部122が、管状体110のヒンジ113及び開口縁部112にそれぞれ重なり合うように配置されている。このとき、帯状部121が若干縮径方向に弾性変形していることから、その弾性復帰力で帯状部121外周面が管状体110内周面に対して付勢されている。また、
図4(b)に示すように、管状体110の内周面の山部間に形成された内周凹部115に帯状部121が嵌まっているので、帯状部121の縦軸方向の移動が規制されている。このように、侵入防止体120は管状体110に一体的に保持されている。それ故、管状体110に拡開防止体130を装着しない状態では、管状体110及び侵入防止体120が同時に拡開するように変形可能である。
【0052】
また、
図3に示すように、2つの拡開防止体130が管状体110の外周面に装着されている。2つの拡開防止体130は、管状体110の上端側及び下端側に互いに離隔して配置されている。
図4(a)に示すように、拡開防止体130の挟持板131内面が管状体110の山部外周面に当接し、管状体110の外周方向を周方向の半分を超えて覆っている。このとき、挟持板131が若干拡径方向に弾性変形していることから、その弾性復帰力で挟持板131内周面が管状体110外周面に対して付勢されている。そして、
図4(b)に示すように、突条132が山部間に形成された外周凹部114に収容されている。これにより、拡開防止体130の管状体110に対する縦軸方向の移動が規制されている。このように、拡開防止体130は管状体110に一体的に保持されている。すなわち、拡開防止体130が管状体110の外周面に装着されることで、管状体110及び侵入防止体120が拡開しない形態に維持され得る。本実施形態では、管状体110が波付可撓管からなることから、構造上、各分割片111の開口縁部112同士が完全に合致又は接合することが困難である。換言すると、各分割片111の開口縁部112同士が僅かにずれた状態で、開口116が閉塞される。すなわち、管状体110の表面に防除対象生物が侵入不可能な小さなスリット(又は隙間)が形成されるので、管状体110内外における通気性が向上する。これにより、管状体110内部に熱がこもる程度を軽減可能である。
【0053】
そして、各構成部材が組み合わされた保護装置100では、
図4(a)に示すように、その上端において、防除対象生物の通過を規制すべく、管状体110の内周面から複数の棒状突起体125が突出し、該複数の棒状突起体125の先端によって幹Tを挿通するための円形の挿通部126が定められている。
【0054】
続いて、
図12及び
図13を参照して、各構成部材で保護装置100を組み立てつつ、該保護装置100をリンゴの苗木の幹Tに取り付ける方法を説明する。
【0055】
図12は、保護装置100の分解斜視図である。
図12に示すように、管状体110、侵入防止体120及び拡開防止体130が別体として構成され、管状体110に侵入防止体120及び拡開防止体130を装着することにより、保護装置100が完成する。
【0056】
まず、
図12に示すように、管状体110の開口116を拡開し、該開口116を介して管状体110内部に侵入防止体120を配置する。このとき、侵入防止体120を若干縮径するように変形させ、ヒンジ113及びヒンジ部123が重なるようにして、侵入防止体120を内周凹部115に収容する。収容後、侵入防止体120を弾性復帰させることで、侵入防止体120の帯状部121外周面が内周凹部115内周面に付着する。なお、本実施形態では、管状体110の最も上端側の内周凹部115が選択されたが、適宜変更可能である。
【0057】
そして、
図13(a)に示すように、一体となった管状体110及び侵入防止体120を同時に拡径変形させて、開口116(及び切断部122)を幹Tの径よりも大きく拡開させる。次いで、拡開した管状体110を径方向外方から幹Tに近接移動させ、該開口116を介して、幹Tを侵入防止体120の挿通部126に配置する。幹Tを管状体110(及び侵入防止体120)の内側に配置した後、開口116を閉塞させるように、管状体110及び侵入防止体120を縮径変形させる。続いて、
図13(b)に示すように、複数の拡開防止体130を管状体110の径方向外方から装着することにより、管状体110の開口116が閉塞した状態が維持される。こうして、保護装置100がリンゴの苗木の幹Tに取り付けられ、保護構造10が構築される。
【0058】
図14は、本実施形態の保護装置100をリンゴの苗木の幹Tに装着した保護構造10の斜視図である。
図15は、該保護構造10の概略縦断面図である。
図16は、該保護構造10のD−D断面図である。
【0059】
図14に示すように、保護構造10では、リンゴの苗木の幹Tの根元に保護装置100が取り付けられている。より詳細には、管状体110が幹Tを内挿し、その根元を外周から覆っている。そして、管状体110に拡開防止体130が取着されて、幹T表面が外部に露出することなく、開口116が閉塞された状態が維持されている。また、苗木及び保護装置100の傍らには、支柱Pが立設されている。該支柱Pと苗木の幹Tに紐が括り付けられている。
【0060】
管状体110の下端は、
図15に示すように、土壌に埋め込まれることによって閉塞されている。つまり、管状体110の下端開口が土で閉塞されることにより、管状体110の下端からのネズミの侵入が防止される。このとき、管状体110の凹凸形状が土壌に食い込むため、管状体110が土壌から抜け難くなる。
【0061】
他方、管状体110の上端近傍に侵入防止体120が配置され、該侵入防止体120の複数の棒状突起体125によって、管状体110の上端からのネズミの侵入が規制されている。特に、リンゴの主要産地である積雪が多い地域では、苗木の根元に積もった雪の上からネズミが管状体110内部に侵入することが想定されるが、管状体110の上端に侵入防止体120を配置したことで、本保護装置100はネズミの侵入を効果的に防いでいる。
【0062】
図16に示すように、複数の棒状突起体125の先端に形成された挿通部126に幹Tが貫通配置されている。また、各棒状突起体125の先端が幹Tの外周面に当接するように配置されている。各棒状突起体125は、必要に応じて上下左右方向に傾動した姿勢で、幹Tの樹皮を傷つけない程度の力で幹T表面に当接する。そして、剛性を有する棒状突起体125が幹T表面にある程度の力で当接することにより、棒状突起体125と幹Tとの当接部分において摩擦力が発生する。それ故、棒状突起体125が管状体110内周面と幹T表面との間で張設されたように延伸し、その当接した姿勢が十分に維持され得る。つまり、管状体110の上端から侵入しようとするネズミを棒状突起体125で強固にはね返すことができる。また、本実施形態の保護構造10では、管状体110が防鼠成分を含んでいることから、ネズミを苗木から遠ざける忌避効果が発揮される。さらには、保護構造10において、図示しないが、管状体110又は苗木の根元を取り囲むように、土壌に防鼠シート(カプサイシン等の防鼠成分を含むマイクロカプセルを含有する樹脂シート)を任意に敷設することにより、より一層効果的にネズミから苗木を保護することが可能である。
【0063】
また、侵入防止体120が配置された位置では、管状体110(又は帯状部121)の内周面と幹Tの外周面との間に細長い複数の棒状突起体125が存在するだけである。管状体110の上端が完全に開放された状態と比べて、平面において、全ての棒状突起体125が管状体110内周面と幹T外周面との間の隙間を占める面積が非常に少ないことが明らかである。よって、管状体110内部の熱が、棒状突起体125間の隙間を通って管状体110の上端開口から逃げることができる。さらには、複数の棒状突起体125が上下にオフセットし、同一平面上の棒状突起体125の占有面積が相対的に小さくなることから、本実施形態の保護装置100は、管状体110内部に熱がこもらないよう、より一層配慮されている。そして、上述した開口縁部112間のスリット(ずれ)も管状体110内部から熱を逃がすことに貢献している。
【0064】
図16は、幹Tの断面を理想的に円形状に表したものであるが、
図17は、自然形状として様々な形状を取り得る幹Tの一例を示している。例えば、
図17(a)に示した幹T1は、表面に瘤のような隆起を有する。
図17(a)では、幹T1の隆起に対向する棒状突起体125の任意の方向(上下左右)への傾動量が大きくなるように、棒状突起体125先端が幹T1表面に当接する。例えば、
図17(b)に示した幹T2は、幹Tよりも太く、且つ、部分的に凹んでいる。
図17(b)では、棒状突起体125が、幹T2の太い径に対応するように任意の方向に傾動した状態で幹T2表面に当接している。他方、表面が凹んだ箇所では、その傾動の度合いが少なくなるように棒状突起体125が幹T2表面に当接している。すなわち、例示したように、棒状突起体125は、上下左右に自在に傾動可能であることから、幹の自然形状に応じて任意の角度で傾動した状態で幹表面に当接可能である。これにより、ネズミが通過可能な隙間を作ることなく、管状体110へのネズミの侵入をより確実に防ぐことができる。
【0065】
図18は、本実施形態の保護装置100の別の使用例を示している。
図18に保護構造10’及び保護装置100’では、管状体110の上端及び下端の両方に侵入防止体120,120が取り付けられている。そして、管状体110の下端が土壌の上に載置されている。すなわち、土壌が固く管状体110の一部を地中に埋設できない場合には、管状体110の下端に侵入防止体120を配置することで、管状体110の下端開口からのネズミの侵入を効果的に防止することができる。なお、図示しないが、特定の状況においては、管状体110の下端のみに侵入防止体120が配置されてもよい。
【0066】
以下、本発明に係る一実施形態の保護装置100の作用効果について説明する。
【0067】
本実施形態の保護装置100によれば、管状体110の上端及び/又は下端に侵入防止体120が配置され、幹Tを外挿する管状体110の内部には、その内周面のほぼ全周から中心側に向かって延伸する複数の棒状突起体125が形成されている。棒状突起体125は、所定の剛性を有し、任意の方向に弾性的に傾動可能である。そして、幹Tが管状体110に外挿されて複数の棒状突起体125が幹Tの外周面に当接したとき、各棒状突起体125が幹Tの外周形状に応じて個別に任意の方向に傾動変形可能である。つまり、各棒状突起体125は、その対向する幹Tの外周の凹凸や屈曲に応じて、上下左右の全方向に個別に変位可能であることから、複数の棒状突起体125が全体として幹Tの外周形状や様々な幹Tの外径に合うように変形する。それ故、隣接する棒状突起体125間に比較的大きな隙間ができることが抑えられる。その結果として、複数の棒状突起体125が、防除対象生物であるネズミの通過を規制可能な間隔で幹T周囲を包囲し、管状体110内周面と幹T外周面との間の隙間にネズミが侵入することを確実に防止することができる。また、侵入防止体120が複数の棒状突起体125で構成されていることから、従来のように平板状の舌片で上端開口を閉塞した場合と比べて、管状体110の上端又は下端における通風性が確保され、熱が管状体110内部にこもることが抑えられる。したがって、本実施形態の保護装置100は、被覆した幹Tに温度面から影響を与えることを抑えつつ、従来よりも確実に防除対象生物からの被害を抑えることが可能である。
【0068】
[変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。なお、変形例において、三桁で示される構成要素において下二桁が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0069】
(1)本発明の保護装置は、上記実施形態の保護装置100に限定されない。例えば、
図19は、本発明の別実施例の保護装置200を示している。
図19に示すように、保護装置200は、完全に分離した分割体211,211からなる管状体210と、該管状体210内部に配置され、管状体210の内周面から一体的に突出する任意の方向に傾動可能な複数の棒状突起体225を有する侵入防止体220と、分割体211,211を連結する拡開防止体230とを備えてなる。すなわち、保護装置200では、上記実施形態の保護装置100と異なり、管状体210と(複数の棒状突起体225からなる)侵入防止体220とが一体的に形成されている。さらに、管状体210の内周面及び外周面に凹凸が設けられていない。当該保護装置200が植物の幹に取り付けられると、幹が管状体210に外挿された状態で、複数の棒状突起体225が、防除対象生物の通過を規制可能な間隔で幹周囲を包囲するように構成されていることから、本発明の保護装置の作用効果を十分に発揮することが可能である。すなわち、当業者であれば、本発明の技術的範囲内で保護装置の各構成要素の形状や形態を任意に改変可能であることは言うまでもない。
【0070】
(2)本発明の保護装置の拡開防止体は、上記実施形態に限定されず、例えば、紐やゴムバンドに変更されてもよい。あるいは、拡開防止体として、分割片の開口縁部に、両者を結合するための係合爪等を一体的に設けてもよい。
【0071】
(3)本発明が意図する防除対象生物は、上記実施形態のネズミに限定されない。すなわち、本発明の保護装置は、棒状突起体の隙間等を変更することで種々の生物に対応可能である。例えば、防除対象生物を昆虫とした場合、棒状突起体の本数を増やして、その間隔を短くすることで、昆虫が管状体内へ侵入して、植物に被害を与えることを防ぐことができる。あるいは、防除対象生物を子鹿などの比較的大きな動物とした場合、棒状突起体の本数を減らし、その強度を高めるべく棒状突起体の径を太くすることで、植物への被害防ぐことができる。また、保護装置の大きさを変更することで、大木や草木などにも対応可能である。
【0072】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。