【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
<製造例>
キャンディダ・ユティリスCs7529株(FERM BP−1656株)の10%菌体懸濁液を10N硫酸でpH3.5に調整し、60℃、30分間加熱処理した後、遠心分離機で酵母エキスと酵母菌体残渣とに分離した。その後、酵母菌体残渣に水を加え、8重量%(乾燥物換算)の菌体懸濁液を調製した。8%濃度酵母残渣懸濁液18kgをpH7.0に調整後、セパレーター(アルファ・ラバル遠心分離機:LAPX202BGT-24-50/60)にて固形物と上清を分離し、固形物を回収した。固形物を水で懸濁し、8%濃度溶液とした。再びセパレーターで固形物と上清を分離し、固形物を回収した。固形物を水で懸濁し90℃、20分間加熱処理を行い、冷水で冷却した。その後、セパレーターで上清を回収し、大型エバポール及びエバポレーターで濃縮し、凍結乾燥させて約80gの粉末状の酵母抽出物を取得し、これをサンプル1の凝集・沈殿抑制剤とした。
このサンプル1を限外濾過膜(分画分子量50,000)で処理し、分子量50,000以下成分を取り除いたものをサンプル2の凝集・沈殿抑制剤とした。
サンプル1中のRNA含量は17.6%、食物繊維含量は15.0重量%、タンパク含量は23.9重量%であった。また、この食物繊維中に占めるマンナンの量は67.4重量%であった。
サンプル2中のRNA含量は16.7%、食物繊維含量は重量16.1%、タンパク含量は重量19.5%であった。また、この食物繊維中に占めるマンナンの量は重量61.5%であった。
【0023】
<実施例1>ブルーベリージュースの凍結融解試験
ブルーベリーは冷凍したものを使用した。冷凍ブルーベリーを80gと水300gを混合しミルミキサーで破砕した。ブルーベリー破砕液を5000 rpm、10 minで遠心分離して不溶物を除去した。上清をブルーベリージュースとして試験に用いた。このブルーベリージュースに製造例で製したサンプル1の凝集・沈殿抑制剤を全量あたり0.5%溶解させた。溶液を−20 ℃で2日間冷凍後、融解させて沈殿(凝集)を遠心分離操作により確認した。
【0024】
<実施例2>
実施例1において、サンプル1を0.2%添加したこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0025】
<比較例1>
実施例1において、サンプル1の代わりに水を添加したこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0026】
評価の結果、比較例1は凍結融解後の沈殿が多く見られたのに対し、実施例1、実施例2、この順で凍結融解後の沈殿が抑制されていた。
【0027】
<実施例3>ニンジンジュースの凍結融解試験
ニンジンを120 gと水300 gを混合しミルミキサーで破砕した。ニンジン破砕液を5000 rpm、10 minで遠心分離して不溶物を除去した。上清をニンジンジュースとして試験に用いた。このニンジンジュースにサンプル1を全量あたり0.5%溶解させた。溶液を−20 ℃で2日間冷凍後、融解させて沈殿(凝集)を遠心により確認した。
【0028】
<実施例4>
実施例3において、サンプル1を0.2%添加したこと以外は、実施例3と同様に行った。
【0029】
<実施例5>
実施例3において、サンプル1を0.05%添加したこと以外は、実施例3と同様に行った。
【0030】
<比較例2>
実施例3において、サンプル1の代わりに水を添加したこと以外は、実施例3と同様に行った。
【0031】
評価の結果、比較例2は凍結融解後の沈殿が多く見られたのに対し、実施例3、実施例4、実施例5は、この順で凍結融解後の沈殿が抑制されていた。
【0032】
<実施例6>色素溶液の凍結融解試験
色素としてサンオレンジNo.2(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を使用した。サンオレンジNo.2の0.1 %水溶液を色素溶液として、試験に用いた。サンプル1を色素溶液中に0.5%になるように量りとり、色素溶液で溶解させた。溶液を−20度で一晩冷凍した。冷凍後は室温で融解させた。融解後、各種サンプルを濾紙で濾して凝集した色素を回収した。
【0033】
<実施例7>
実施例6において、サンプル1の代わりにサンプル2を添加したこと以外は、実施例6と同様に行った。
【0034】
<比較例3>
実施例6において、サンプル1の代わりに水を添加したこと以外は、実施例6と同様に行った。
【0035】
<比較例4>
実施例6において、サンプル1の代わりにサポニンを添加したこと以外は、実施例6と同様に行った。
【0036】
<比較例5>
実施例6において、サンプル1の代わりにカラギーナンを添加したこと以外は、実施例6と同様に行った。
【0037】
<比較例6>
実施例6において、サンプル1の代わりにレシチン(太陽化学社製「サンレシチン」)を添加したこと以外は、実施例6と同様に行った。
【0038】
評価の結果、サンプル1を添加した実施例6、サンプル2を添加した実施例7は比較例3、4、5、6に比べて凍結融解後の沈殿が抑制された。また、実施例6より実施例7の方が沈殿は抑制された。
【0039】
<実施例8>全脂粉乳溶液の凍結融解試験
全脂粉乳の5%水溶液を調製して、試験に用いた。サンプル1を前記水溶液に対して0.5%になるように添加し、十分に溶解させてから−20℃で2日間凍結させた。凍結させた溶液は室温で解凍後、1.5mlチューブにサンプリングし10,000 rpmで遠心分離して沈殿(凝集物)を確認した。
【0040】
<比較例7>
実施例8において、サンプル1の代わりにアラビアガムを添加したこと以外は、実施例8と同様に行った。
【0041】
<比較例8>
実施例8において、サンプル1の代わりにレシチン(太陽化学社製「サンレシチン」)を添加したこと以外は、実施例8と同様に行った。
【0042】
<比較例9>
実施例8において、サンプル1の代わりに水を添加したこと以外は、実施例8と同様に行った。
【0043】
評価の結果、サンプル1を添加した実施例8は、比較例7、8、9と比較して凍結融解後の沈殿が抑制された。
【0044】
<実施例9>酸性乳飲料の沈殿・凝集抑制試験(スキムミルクを使用)
ショ糖5g、スキムミルク0.5g、サンプル1の凝集・沈殿抑制剤 0.25 gを量りとり、水でよく溶解して、50gへメスアップした。この溶液にクエン酸を添加してpH4.2に調整して酸性乳飲料とした。さらに、作成した酸性乳飲料をスクリューバイアルに10ml入れて蓋をしっかりしめた後に100℃(沸騰水)で10分間加熱した。加熱後は冷却した。加熱前後の沈殿・分離の様子を確認した。
【0045】
<実施例10>
実施例9において、サンプル1の代わりにサンプル2を添加したこと以外は、実施例9と同様に行った。
【0046】
<比較例10>
実施例9において、サンプル1の代わりに水を添加したこと以外は、実施例9と同様に行った。
【0047】
<比較例11>
実施例9において、サンプル1の代わりにアラビアガムを添加したこと以外は、実施例9と同様に行った。
【0048】
<比較例12>
実施例9において、サンプル1の代わりにサポニンを添加したこと以外は、実施例9と同様に行った。
【0049】
<比較例13>
実施例9において、サンプル1の代わりにレシチン(太陽化学社製「サンレシチン」)を添加したこと以外は、実施例9と同様に行った。
【0050】
評価の結果、加熱前後とも実施例9及び実施例10において酸性乳飲料中の乳成分の沈殿・凝集が抑制された。これらは2週間経っても沈殿がほとんど生じなかった。実施例9、10では増粘がなく、加熱処理をしても沈殿・凝集が抑制されていた。比較例10、11、12、13では酸性にした直後に沈殿・凝集を生じた。
【0051】
<実施例11>酸性乳飲料の沈殿・凝集抑制試験(牛乳を使用)
ショ糖5g、成分無調整牛乳2.5g、サンプル1の凝集・沈殿抑制剤 0.25 gを量りとり、水でよく溶解して50gにメスアップした。この溶液にクエン酸を添加してpH4.2に調整して酸性乳飲料とした。さらに、作成した酸性乳飲料をスクリューバイアルに10ml入れて蓋をしっかりしめた後に100℃(沸騰水)で10分間加熱した。加熱後は冷却した。加熱前後の沈殿・分離の様子を確認した。
【0052】
<実施例12>
実施例11において、サンプル1の代わりにサンプル2を添加したこと以外は、実施例11と同様に行った。
【0053】
<比較例13>
実施例11において、サンプル1の代わりに水を添加したこと以外は、実施例11と同様に行った。
【0054】
評価の結果、実施例11及び実施例12において酸性乳飲料中の乳成分の沈殿・凝集が抑制された。実施例11、12では増粘がなく、加熱処理をしても沈殿・凝集が抑制されていた。比較例13では酸性にした直後に沈殿・凝集を生じた。
【0055】
<実施例13>酸性豆乳飲料の沈殿・凝集抑制試験
ショ糖5g、調整豆乳(マルサンアイ社製)3.5g、サンプル1の凝集・沈殿抑制剤 0.25 gを量りとり、水でよく溶解して50gにメスアップした。この溶液にクエン酸を添加してpH4.2に調整して酸性豆乳飲料とした。さらに、作成した酸性豆乳飲料をスクリューバイアルに10ml入れて蓋をしっかりしめた後に100℃(沸騰水)で10分間加熱した。加熱後は冷却した。加熱前後の沈殿・分離の様子を確認した。
【0056】
<実施例14>
実施例13において、サンプル1の代わりにサンプル2を添加したこと以外は、実施例13と同様に行った。
【0057】
<比較例14>
実施例13において、サンプル1の代わりに水を添加したこと以外は、実施例13と同様に行った。
【0058】
評価の結果、実施例13及び実施例14において酸性豆乳飲料中の豆乳成分の沈殿・凝集が抑制された。実施例13、14では増粘がなく、加熱処理をしても沈殿・凝集が抑制されていた。比較例14では酸性にした直後に沈殿・凝集を生じた。
【0059】
<実施例15>各pHの酸性乳飲料の沈殿・凝集抑制試験
ショ糖5g、スキムミルク0.5g、サンプル1の凝集・沈殿抑制剤 0.25 gを量りとり、水でよく溶解して50gにメスアップした。この溶液にクエン酸を添加してpH5.0、4.8、4.4.6、4.4、4.2、4.0に調整して酸性乳飲料とした。作成した酸性乳飲料をスクリューバイアルに10ml入れて蓋をしっかりしめた後に100℃(沸騰水)で10分間加熱した。加熱後は冷却した。加熱前後の沈殿・分離の様子を確認した。
【0060】
<実施例16>
実施例15において、サンプル1の代わりにサンプル2を添加したこと以外は、実施例15と同様に行った。
【0061】
<比較例15>
実施例15において、サンプル1の代わりに水を添加したこと以外は、実施例15と同様に行った。
【0062】
評価の結果、実施例15ではpH4.2〜5.0で酸性乳飲料中の乳成分の沈殿・凝集が抑制された。実施例16でpH4.0〜5.0において酸性乳飲料中の乳成分の沈殿・凝集が抑制された。実施例15、16では増粘がなく、加熱処理をしても沈殿・凝集が抑制されていた。比較例15ではすべてのpHにおいて沈殿・凝集を生じた。