特許第6654562号(P6654562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654562
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】熱伝導性電気絶縁粒子および組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20200217BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20200217BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20200217BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20200217BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20200217BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20200217BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   H01L23/36 M
   H01L23/36 D
   C08K3/08
   C08K3/00
   C08K3/04
   C08L101/00
   H05K7/20 B
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-519996(P2016-519996)
(86)(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公表番号】特表2017-504177(P2017-504177A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】US2014059239
(87)【国際公開番号】WO2015051354
(87)【国際公開日】20150409
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 裕司
(72)【発明者】
【氏名】平原 賢志
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−124449(JP,A)
【文献】 特許第5263429(JP,B2)
【文献】 特開2012−151502(JP,A)
【文献】 特開2013−001866(JP,A)
【文献】 特開2013−122003(JP,A)
【文献】 特開2014−065769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/373
C08K 3/00
C08K 3/04
C08K 3/08
C08L 101/00
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合コアと、
絶縁層とを含む熱伝導性粒子であって、
前記複合コアが、複数のコア粒子と前記コア粒子を一緒に結合する有機バインダーとを含み、
前記コア粒子が、熱伝導性であり、炭素をベースとする粒子であり、黒鉛、又は3:2〜99:1の比の黒鉛及びフレーク状の炭素をベースとする粒子から選択され、
絶縁材料が、セリサイト、ベーマイト、タルク、マイカおよびこれらの混合物からなる群から選択され、前記複合コアの少なくとも一部をコートし、
前記熱伝導性粒子が、10mmの直径および3.0mmの高さを有する前記熱伝導性粒子のシリンダー上で500Vの印加電圧で測定された時に、少なくとも1×104Ω・cm〜1×1010Ω・cmの範囲である体積抵抗率を示す、熱伝導性粒子。
【請求項2】
複合コアを絶縁材料で少なくとも部分的にコートする工程を含む熱伝導性粒子を製造する方法であって、
前記複合コアが、複数のコア粒子と前記コア粒子を一緒に結合する有機バインダーとを含み、
前記コア粒子が、熱伝導性であり、炭素をベースとする粒子であり、黒鉛、又は3:2〜99:1の比の黒鉛及びフレーク状の炭素をベースとする粒子から選択され、
前記絶縁材料が、セリサイト、ベーマイト、タルク、マイカ、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
前記熱伝導性粒子が、10mmの直径および3.0mmの高さを有する前記熱伝導性粒子のシリンダー上で500Vの印加電圧で測定された時に、少なくとも1×104Ω・cm〜1×1010Ω・cmの範囲である体積抵抗率を示す、方法。
【請求項3】
熱伝導性粒子と、
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、アラミド樹脂、ゴム、またはこれらの混合物からなる群から選択される樹脂とを含む樹脂組成物であって、
前記熱伝導性粒子が、複合コアと絶縁層とを含み、
前記複合コアが、複数のコア粒子と前記コア粒子を一緒に結合する有機バインダーとを含み、
前記コア粒子が、熱伝導性であり、炭素をベースとする粒子であり、黒鉛、又は3:2〜99:1の比の黒鉛及びフレーク状の炭素をベースとする粒子から選択され、
絶縁材料が、セリサイト、ベーマイト、タルク、マイカ、およびこれらの混合物からなる群から選択され、前記複合コアの少なくとも一部をコートし、
前記熱伝導性粒子が、10mmの直径および3.0mmの高さを有する前記熱伝導性粒子のシリンダー上で500Vの印加電圧で測定された時に、少なくとも1×104Ω・cm〜1×1010Ω・cmの範囲である体積抵抗率を示し、
前記熱伝導性粒子が、樹脂組成物の全体積の10〜70体積%の範囲である、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年10月4日に出願された、現在係属中の特開2013−209304号公報からの優先権の利益を請求する。
【0002】
電気絶縁性でもある熱伝導性粒子、これらの粒子を含む樹脂組成物、およびそれらを製造するための方法が本明細書に説明される。
【背景技術】
【0003】
近年、LEDモジュールおよびハンドヘルドのような電子デバイスは、より小型化および統合化されるだけでなく、より大きな出力があり、それはこれらのデバイスの部品のより大きな放熱および電気絶縁を必要としている。従って、すぐれた電気絶縁性を有する熱伝導性粒子が、エレクトロニクスデバイスにおいて使用される材料の構成単位として求められている。
【0004】
国際特許出願公開第2011/027757号パンフレットには、セラミックでコートされた炭素粒子が開示されており、それらは熱伝導性であり、炭素粒子のスラリーをセラミック粒子のスラリーに加えることによってセラミック粒子が炭素粒子に付着して形成される。米国特許第5,246,897号明細書には、高速ガス流を使用して黒鉛粒子とコーティング粒子とを衝突させる機械的衝撃方法によって形成されたコートされた黒鉛粒子が開示されている。米国特許第7,588,826号明細書には、インタラクティブ機能剤の存在下で機械的溶融することによって形成されたコートされた黒鉛粒子が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
複合コアと複合コアを少なくとも部分的にコートする絶縁材料とを含む熱伝導性粒子が本明細書に説明され、そこで複合コアは、メカノフュージョン処理によって有機バインダーが一緒に結合した熱伝導性コア粒子を含有し、熱伝導性粒子の体積抵抗率は、少なくとも1×104Ω・cm〜1×1010Ω・cmの範囲である。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、アラミド樹脂、ゴム、またはこれらの混合物の他に、これらの粒子10〜70体積%を含む樹脂組成物が本明細書に説明される。また、これらの粒子を製造する方法が本明細書に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】特許請求の範囲に記載された熱伝導性粒子の断面図である。
図2】熱伝導性粒子の体積抵抗率を測定する装置の略図である。
図3】特許請求の範囲に記載された熱伝導性粒子を含む成形物の上面写真である。
図4】特許請求の範囲に記載された熱伝導性粒子を含む成形物の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の定義および略語は、説明において考察され且つ請求の範囲に記載される用語の意味を解釈するために使用されなければならない。
【0008】
定義
本明細書中で用いられるとき、用語「体積抵抗率」は、材料の電気抵抗率を指し、材料の電気絶縁能力を決定する。体積抵抗率は、端子を有する2つの電極間の透明なシリンダー内に試料炭素粒子を置くことによって測定される。本明細書の実施例において、端子を通して500Vの電圧を印加して、本明細書に説明される粒子の抵抗率を測定した。
【0009】
本明細書中で用いられるとき、粒子の用語「アスペクト比」は、粒子の最大長さをその幅、すなわち、その最大厚さで割った比を指す。
【0010】
本明細書中で用いられるとき、用語「複合コア」は、メカノフュージョンのプロセスによって有機バインダーに結合した熱伝導性コア粒子を指す。
【0011】
本明細書中で用いられるとき、用語「熱伝導性」または「熱伝導率」(しばしばk、λ、またはκと表記される)は、熱を伝導または伝達する材料の特性を指す。熱伝達は、低い熱伝導率の材料よりも高い熱伝導率の材料のほうがより大きい速度で起こる。相応して高い熱伝導率の材料はヒートシンク用途において広く使用され、低い熱伝導率の材料は断熱材として使用される。熱伝導率は典型的に熱コンダクタンスとして測定されるが、それは、特定の面積および厚さのプレートをその対向する面が1ケルビンの温度差がある時に単位時間に通過する熱量を指す。熱伝導率k、面積Aおよび厚さLのプレートについて、計算されるコンダクタンスはkA/Lであり、W/m・K単位で測定され、W/℃に等しい。
【0012】
本明細書中で用いられるとき、用語「温度拡散率」は、物品の熱伝導率を定圧での物品の密度および比熱容量で割った値を指し、物品が熱エネルギーを貯えるその能力に対して熱エネルギーを伝導する能力を評価する。それは、m2/sのSI単位を有する。温度拡散率は通常、αと表記される。式は、
【0013】
【数1】
【0014】
(式中、
kが熱伝導率(W/(m・K))であり、
ρが密度(kg/m3)であり、
pが比熱容量(J/(kg・K)))である。
【0015】
略語
本明細書中で用いられるとき、「%」は、パーセントを指す。
本明細書中で用いられるとき、「wt%」は、重量パーセントを指す。
本明細書中で用いられるとき、「vol%」は、体積パーセントを指す。
本明細書中で用いられるとき、「hrs」は時間を指し、「m」は、分を指し、「s」は秒を指す。
本明細書中で用いられるとき、「g」は、グラムを指す。
本明細書中で用いられるとき、「μm」は、ミクロンを指す。
本明細書中で用いられるとき、「nm」は、ナノメートルを指す。
本明細書中で用いられるとき、「rpm」は、回転/分を指す。
本明細書中で用いられるとき、「mm」は、ミリメートルを指す。
本明細書中で用いられるとき、「cm」は、センチメートルを指す。
本明細書中で用いられるとき、「ml」は、ミリリットルを指す。
本明細書中で用いられるとき、「V」は、ボルトを指す。
本明細書中で用いられるとき、「Ω・cm」は、オーム・センチメートルを指す。
本明細書中で用いられるとき、「W」は、ワットを指す。
本明細書中で用いられるとき、「m」は、メートルを指す。
本明細書中で用いられるとき、「K」は、ケルビンを指す。
本明細書中で用いられるとき、「mPa・s」は、ミリパスカル秒を指す。
【0016】
範囲
他の方法で明記されない限り、本明細書に示された任意の範囲は、明確にその端点を含める。量、濃度、または他の値またはパラメーターを範囲として具体的に示すことによって、このような対が本明細書において別々に開示されるかどうかに関係なく、任意の範囲上限と任意の範囲下限の任意の対から形成される全ての範囲が開示される。本明細書に説明される方法および物品は、説明において範囲を画定する時に開示された特定の値に限定されない。
【0017】
好ましい変形形態
本明細書に説明されるプロセス、組成物および物品の−好ましい変形形態であると確認されるか否かにかかわらず−材料、方法、工程、値、および/または範囲等々に関して本明細書での任意の変形形態の開示は、このような材料、方法、工程、値、範囲等々の任意の組合せを包含する任意のプロセスおよび物品を開示することを特に意図している。請求の範囲に精密かつ十分な裏付けを与えるために、このような開示された任意の組合せは、本明細書に説明されるプロセス、組成物、および物品の好ましい変形形態であることを特に意図している。
【0018】
概要
熱伝導性粒子が本明細書に説明され、それらのうちの1つが図1に要素10として示され、それは、有機バインダー12で一緒に接着されたコア粒子11と、複合コアを少なくとも部分的にコートする、絶縁材料13とで構成された複合コアを含む。
【0019】
また、本明細書に説明される熱伝導性粒子および熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、アラミド樹脂、ゴム、またはこれらの混合物を含む樹脂組成物が本明細書に説明される。
【0020】
また、複合コアを絶縁材料で少なくとも部分的にコートする方法が本明細書に説明され、そこで
複合コアが、複数のコア粒子と、コア粒子を一緒に結合する有機バインダーとを含み、
コア粒子が熱伝導性であり、金属粒子、セラミック粒子、炭素をベースとする粒子、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
絶縁材料が、セリサイト、ベーマイト、タルク、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
熱伝導性粒子が、10mmの直径および3.0mmの高さを有する前記熱伝導性粒子のシリンダー上で500Vの印加電圧で測定された時に、少なくとも1×104Ω・cm〜1×1010Ω・cmの範囲である体積抵抗率を示す。
【0021】
熱伝導性粒子
圧縮剪断混合方法を使用して複数のコア粒子を有機バインダーで結合することによって複合コアが得られ、それは所望の粒径または形状を有するように調製され得る。100体積部のコア粒子に対して有機バインダーの体積は、30〜30体積部、好ましくは26〜26体積部、より好ましくは22〜22体積部の範囲である。
【0022】
複合コアは、その厚さが0.1〜10μm、好ましくは0.5〜6μmの範囲である絶縁層で部分的にまたは完全にコートされる。100体積部の複合コアに対して絶縁材料の体積は、3〜48部、好ましくは5〜35部、より好ましくは10〜32部の範囲である。このような絶縁材料の体積濃度および絶縁コーティングの厚さは、請求の範囲に記載されたような十分な熱伝導率および所望の体積抵抗率を熱伝導性粒子に与える。
【0023】
本明細書に説明される熱伝導性粒子の平均粒径は、0.5〜300μm、好ましくは20〜250μm、より好ましくは90〜190μmの範囲である。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によってその最長軸14を測定することによって定量されてもよい。
【0024】
本明細書に説明される熱伝導性粒子のアスペクト比は、100〜100、好ましくは50〜50、より好ましくは35〜35、より一層好ましくは15〜15の範囲である。図1は、粒子の長さ(長軸14に沿う)を粒子の厚さ15で割った値としてアスペクト比を示す。本明細書に説明される熱伝導性粒子のアスペクト比は好ましくは2より大きく、好ましくは3〜約7の範囲である。熱伝導性粒子が平らな形状を有するとき、それらを樹脂で物品に成形すると、成形品に異方性熱伝導率を与えることがある。
【0025】
本明細書に説明される熱伝導性粒子の体積抵抗率は、少なくとも1×10Ω・cmΩ・cmの範囲であり、そして好ましくは1.0×104〜1.0×1018Ω・cm、より好ましくは1.0×104〜1.0×1010Ω・cmの範囲である。
【0026】
本明細書に説明される熱伝導性粒子、組成物または方法の何れかにおいて、以下の要素の何れかまたは全てを組み合わせて広範囲の数の変形形態をもたらしてもよく、それらの各々が、説明される発明として考えられる:
− コア粒子が炭素をベースとする粒子であってもよく、および/または
− 炭素をベースとする粒子が黒鉛であり、および/または
− コア粒子が、3:2〜99:1の比の天然黒鉛およびフレーク状の炭素をベースとする粒子であり、および/または
− 黒鉛とフレーク状の炭素をベースとする粒子との混合物が使用されるとき、フレーク状の炭素をベースとする粒子が、天然黒鉛の平均厚さよりも小さい平均厚さを有する;および/または
− コア粒子が、本明細書に説明される熱伝導性粒子の100体積部であり、および/または
− 有機バインダーがコア粒子の体積の3〜25体積部の範囲であり、および/または
− 絶縁材料がコア粒子の4〜48体積部の範囲であり、および/または
− 有機バインダーが熱硬化性樹脂であり、および/または
− 本明細書に説明される熱伝導性粒子の平均粒径が0.5μm〜300μmの範囲であり、および/または
− 絶縁材料が、セリサイト、ベーマイト、タルク、マイカ、およびこれらの混合物からなる群から選択され、および/または
− 本明細書に説明される熱伝導性樹脂組成物において、熱伝導性粒子は、組成物の全体積の10〜70体積%の範囲であり、および/または
− 熱伝導性樹脂組成物が熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、アラミド樹脂、ゴム、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0027】
a)複合コア
複合コアは、少なくとも100W・m-1・K-1および好ましくは800W・m-1・K-1以下の十分な熱伝導率を示す。最大値は、異方性熱伝導率を有する複合コアに対して生じる。
【0028】
コア粒子
複合コアは、金属、セラミック、または炭素またはこれらの混合物のコア粒子を含んでもよい。金属粒子には、銅、銀、ニッケル、アルミニウム、これらの合金のが含まれる。セラミック粒子には、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、およびアルミナが含まれる。炭素をベースとする粒子には、黒鉛、炭素ナノチューブ、フラーレン、グラフェン、カーボンブラック、ガラス炭素、炭素繊維、非晶質炭素、炭化ホウ素、またはこれらの混合物が含まれる。
【0029】
好ましくは、複合コアは炭素をベースとする粒子を含有する。炭素をベースとする粒子は好ましくは黒鉛を含有し、それは、天然または合成であってもよいが、その熱伝導率およびコストのため天然が好ましい。
【0030】
特に、炭素をベースとする粒子は、ほとんど球状ならびにフレーク状とも呼ばれる、板状である黒鉛の混合物を球状:フレーク状の体積比3:2〜99:1および好ましくは体積比1:1〜6:1で含む。天然黒鉛よりも薄いフレーク状の炭素をベースとする粒子には、膨張黒鉛、グラフェン、およびこれらの混合物が含まれる。膨張黒鉛は、層間空間が化学的および熱的処理によって膨張させられて、単層が積層される方向に黒鉛を膨張させて分離するフレーク状天然黒鉛である。グラフェンは、炭素原子が六方格子に整列されるフレーク状粒子である。T、天然黒鉛は厚さ数μmであり、他方、膨張黒鉛およびグラフェンは厚さ1μm未満である。
【0031】
比較的厚い天然黒鉛をフレーク状の炭素をベースとする粒子と混合することによって、ほとんど平らな熱伝導性複合コアを形成する。ほとんど平らな熱伝導性粒子を含む樹脂組成物を使用して形成された成形品は、熱伝導の異方性経路を与え、それは成形品の熱伝導率を増加させる。
【0032】
複合コアの平均粒径は、1〜150μm、好ましくは15〜100μm、より好ましくは30〜90μmの範囲である。複合コアの平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって複合コアの最長軸を測定することによって定量される。
【0033】
複合コアのアスペクト比は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらにより好ましくは5以上の範囲である。複合コアは、異なったアスペクト比を有する2つ以上のタイプの粒子を含有してもよい。
【0034】
有機バインダー
複合コアは、1種または複数種のコア粒子を有機バインダーと一緒に結合することによって所望の形状に形成されてもよい。有機バインダーは、少なくとも300の重量平均分子量を有するポリマーである。重量平均分子量は好ましくは1,000,000未満である。
【0035】
有機バインダーのタイプは特に限定されないが、好ましくは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、またはこれらの混合物であり、より好ましくは熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂には、エポキシ、ノボラック、イソチオシアネート、メラミン、尿素、イミド、芳香族ポリカルボジイミド、フェノキシ樹脂、フェノール、メタクリレート、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、尿素ウレタン、レゾール、およびシリコーン、およびこれらの混合物などが含まれる。熱硬化性樹脂は好ましくはメラミンである。
【0036】
有機バインダーは、溶液中にあるかまたは溶剤中に分散されてもよい。好ましい溶剤は水であり、有機バインダー水溶液が好ましい。
【0037】
複合コアの調製
複合コアは、コア粒子と有機バインダーとを混合してコア粒子を有機バインダーに結合および混合することによって形成されてもよい。有機バインダーは、コア粒子間の間隙を充填し、コア粒子の機械的強度を増加させる。
【0038】
コア粒子と有機バインダーとをブレンドしてコア粒子を接合する時に圧縮剪断混合を使用することができる。圧縮剪断混合は、異なった材料の複数の粒子(コア粒子と有機バインダーとの混合物)に圧縮力と剪断力を加えて、粒子を互いに結合させる方法である。
【0039】
メカノフュージョン・システム(ホソカワミクロン株式会社((Hosokawa Micron Ltd.)))またはシータ・コンポーザ・システム(徳寿工作所(Tokuju Corp.))を使用して、圧縮剪断混合を提供してもよい。メカノフュージョン・システムが使用されるとき、圧縮容器内の回転羽根がコア粒子と有機バインダーとを容器内壁に対して圧し付け、強い圧縮および剪断力を与えてコア粒子を有機バインダーと結合および混合する。
【0040】
NOB−130(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社から入手可能)などの乾式粒子複合化装置が接合のために使用されるとき、羽根と容器壁との間の間隙は3〜3mmの範囲であり、羽根の回転速度は好ましくは1,000rpm〜6,000rpm、より好ましくは1,800rpm〜4,500rpmの範囲である。
【0041】
シータ・コンポーザ・システム(徳寿工作所から入手可能なTHCモデルシータ・コンポーザ)が使用されるとき、システムの容器は一方向に回転するが、他方、容器内の楕円ロータは反対方向に回転し、容器壁とロータとの間の間隙に圧縮と剪断を加えてコア粒子を有機バインダーと結合およびするようにする。ロータと容器壁との間の間隙は3〜3mmの範囲であるとき、羽根の回転速度は、好ましくは1,000rpm〜6,000rpm、より好ましくは1,800rpm〜4,500rpmの範囲である。
【0042】
また、有機バインダーは、コア粒子と混合する前に予め溶剤で薄められてもよい。有機バインダーを溶剤で薄めることによって、炭素粒子をより少ないバインダーで結合することが可能である。溶剤が有機バインダーを溶解する限り、溶剤は任意のタイプであってもよい。溶剤には、水、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、モノエタノールアミン(MEA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、またはこれらの混合物が含まれる。溶剤は、有機バインダーが均一に分散される溶液であることが好ましい。有機バインダーが水溶性である場合、溶剤は好ましくは水である。
【0043】
コア粒子と有機バインダーとの混合の温度は特に限定されないが、有機バインダーのタイプと粘度に左右される。特に、有機バインダーが水溶液である場合、混合温度は好ましくは10℃〜80℃未満の範囲であり、より好ましくは、水の蒸発を避けるために25℃〜50℃未満の範囲である。
【0044】
有機バインダーまたは有機バインダーと溶剤との混合物の粘度は、好ましくは20℃において0.5〜1,000mPa・sの範囲である。有機バインダーと溶剤の粘度を混合中に調節することによって複合コアが所望の形状を得る場合がある。複合コアは、20℃において0.5〜100mPa・sでほとんど平らであり、100〜1,000mPa・sでより球状の形状になる。
【0045】
混合時間は、コア粒子と有機バインダーが好適に結合して互いに混じり合うように調節されてもよい。混合時間は、好ましくは1分〜30分、より好ましくは3分〜10分の範囲である。
【0046】
b)絶縁材料
本明細書に説明される熱伝導性粒子の絶縁材料は、20℃において少なくとも1×109Ω・cmおよび好ましくは1×1022Ω・cm以下の体積抵抗率を有する。適した絶縁材料は、特に限定されないが、天然または合成であってもよく、限定されないが、金属酸化物、金属炭酸塩、炭酸塩鉱物、金属窒化物、金属硫化物、リン酸塩鉱物、粘土鉱物、ケイ酸塩鉱物、ガラス材料、またはこれらの混合物が含まれる。
【0047】
金属酸化物には、酸化アルミニウム(Al23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、酸化鉄(FeO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ケイ素(SiO2)、ベーマイト(Al23・H2O)、またはこれらの混合物が含まれる。金属炭酸塩には、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、またはこれらの混合物が含まれる。炭酸塩鉱物には、方解石(多形(polymorphic)CaCO3)、あられ石(結晶CaCO3)、ドロマイト(CaMg(CO32)、ハイドロタルサイト(Mg6Al2CO3(OH)16・4(H2O))、火金石(Mg6Fe2(CO3)(OH)16・4(H2O))、マナセアイト(Mg6Al2(CO3)(OH)16・4H2O)、またはこれらの混合物が含まれる。金属窒化物には、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si34)、またはこれらの混合物が含まれる。金属硫化物には、硫化モリブデン(MoS2)、硫化タングステン(WS2)、硫化亜鉛(ZnS)、またはこれらの混合物が含まれる。リン酸塩鉱物には、燐灰石(Ca5(PO43(F、Cl、OH))、ヒドロキシアパタイト(Ca5(PO43(OH))、またはこれらの混合物が含まれる。ケイ酸塩鉱物には、単斜晶結晶性粘土のような鉱物(例えば蛇絞石((Mg、Fe)3Si25(OH)4)、葉ろう石(Al2Si410(OH)2)、カオリン粘土、セリサイト(KAl2AlSi310(OH)2)、モントモリロン石((Na、Ca)0.33(Al、Mg)2Si410(OH)2・nH2O)、クロライト群鉱物、タルク、ひる石、およびスメクタイト群鉱物)、マイカ、珪藻土(SiO2・nH2O)、またはこれらの混合物が含まれる。
【0048】
上に記載された絶縁材料の化学式は絶縁材料のいろいろなクラスに用いられてもよいので、本明細書に説明される熱伝導性粒子には化学式によって特定される任意の種類の絶縁材料が考えられる。
【0049】
適した絶縁材料には、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、タルク、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、ベーマイト、窒化ホウ素、マイカ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、硫化亜鉛、またはこれらの混合物が含まれる。より好ましい絶縁材料には、タルク、ベーマイト、セリサイト、マイカ、またはこれらの混合物が含まれる。タルクが特に好ましい。
【0050】
絶縁材料の平均粒径は好ましくは、10nm〜50μm、より好ましくは100nm〜30μm、より好ましくは300nm〜15μmである。
【0051】
熱伝導性コア粒子に対する絶縁材料の体積濃度は、約4〜約40体積パーセント、好ましくは約5〜約30体積パーセント、より好ましくは約8〜約30体積パーセント、最も好ましくは約10〜約25体積パーセントの範囲である。
【0052】
絶縁材料による複合コアのコーティング
複合コアは、好ましくは1×109〜1×1020Ω・cmの体積抵抗率を有する絶縁材料によって少なくとも部分的にコートされる。
【0053】
複合コアの形成と同様、メカノフュージョン・システムまたはシータ・コンポーザ・システムを使用して複合コアを絶縁材料でコートしてもよく、それは本質的に、圧縮および剪断力によって複合コアの表面に融着される。あるいは、異なった方法を使用して複合コアをコートすることができる。しかしながら、製造効率を最大にするために、同じシステムを使用して複合コアを形成して絶縁材料でコートすることが好ましい。好ましくは、メカノフュージョンプロセスを使用して、複合コアを形成してコートする。
【0054】
最初にコア粒子と有機バインダーとが圧縮剪断混合を受けて複合コアを形成し、絶縁材料をそれに加え、再び圧縮剪断混合を受けて本明細書に説明される熱伝導性粒子をもたらす二段法を行なうことが好ましい。複合コアが絶縁材料でコートされる温度は、好ましくは有機バインダーの硬化温度以下の範囲であり、溶剤が使用される場合、溶剤の沸点以下の範囲である。コーティング温度は好ましくは、10℃〜80℃未満、より好ましくは25℃〜50℃未満の範囲である。絶縁材料は、複合コアの表面を少なくとも部分的にコートし、それによって本明細書に説明される熱伝導性粒子をもたらす。
【0055】
さらに、複合コアを絶縁材料と圧縮剪断混合する時間は、絶縁材料が複合コアの表面に融着するように調節されてもよく、好ましくは5秒〜5分、より好ましくは、10秒〜120秒の範囲である。
【0056】
絶縁材料は好ましくは、複合コアの全表面を被覆またはコートする。あるいは、絶縁材料が複合コアの表面の十分な部分を被覆またはコートして、少なくとも1×104Ω・cmの熱伝導性粒子の体積抵抗率を維持してもよい。
【0057】
樹脂組成物
本明細書に説明される組成物は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、アラミド樹脂、ゴム、またはこれらの混合物中に分散される本明細書に説明される熱伝導性粒子を含有する。本明細書に説明される組成物は、成形物、フィルム、シート、接着剤等において使用するために十分な熱伝導率および体積抵抗率の両方を示す。例えば、本明細書に説明される組成物は絶縁フィルムとして調製されて電子部品の表面に適用されてもよく、または射出成形されてLED電球部品等の発熱電子部品用のハウジングとして使用されてもよい。
【0058】
熱可塑性樹脂に関しては、本明細書に説明される組成物において任意の適した樹脂が使用されてもよく、ポリオレフィン樹脂、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリアミド樹脂、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、および芳香族ポリアミド、ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリシクロヘキシルメチレンテレフタレート、環状ポリエステルオリゴマー、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、完全芳香族ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホ樹脂、およびポリアミド・イミド樹脂などが含まれてもよい。また、これらの樹脂を構成する成分を選択的に組み合わせることによって得られたコポリマーを使用してもよい。熱可塑性樹脂を組み合わせてもよい。好ましくは、熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂および完全芳香族ポリエステル樹脂からなる群から選択される。
【0059】
熱硬化性樹脂に関しては、本明細書に説明される組成物において任意の適した樹脂が使用されてもよく、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、イソチオシアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、芳香族ポリカルボジイミド樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、メタクリル酸樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素ウレタン樹脂、およびレゾール樹脂などが含まれてもよい。好ましくは、熱硬化性樹脂は、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、または不飽和ポリエステル樹脂を含有する。
【0060】
それが樹脂もしくはゴムを溶解するかまたはその粘度を調節する限り、任意の適した溶剤を本明細書に説明される組成物に添加してもよい。溶剤の大部分が乾燥工程において蒸発することが予想される。適した溶剤には、水、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、モノエタノールアミン(MEA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、またはこれらの混合物が含まれる。
【0061】
本明細書に説明される組成物の全体積に対する本明細書に説明される熱伝導性粒子の体積は、好ましくは10〜70体積%、より好ましくは50〜50体積%、さらにより好ましくは38〜38体積%の範囲である。十分な熱伝導率および体積抵抗率は、組成物の全体積に対する熱伝導性粒子の体積パーセントがこれらの範囲内になる時に得られる。
【0062】
本明細書に説明される組成物は、酸化防止剤、ガラス繊維、および潤滑剤などの添加剤を含有してもよい。
【0063】
本明細書に説明される組成物から製造される物品の体積抵抗率は、500Vの印加電圧で測定されたとき、好ましくは1.0×1010〜1.0×1018Ω・cm、より好ましくは1.0×1013〜1.0×1015Ω・cmの範囲である。本明細書に説明される組成物から製造される厚さ1mmの成形物の表面の熱伝導率は、レーザー閃光方法によって概算されるとき、好ましくは0.5W/mK〜10.0W/mKそしてより好ましくは1.0W/mK〜5.0W/mK以下の範囲である。
【0064】
本明細書に記載の熱伝導性粒子の製造方法
本明細書に説明される熱伝導性粒子は、それらを製造する方法のために、すなわち、以下の二段法のために、記載された体積抵抗率を示す:最初に、図1に示されるように、熱伝導性コア粒子と有機バインダーとを一緒に結合することによって複合コアを製造し、次にその後、複合コアを絶縁材料によって少なくとも部分的にコートする。複合コアを調製する工程と複合コアをコートする工程の両方とも、圧縮剪断混合によって行なわれる。
【0065】
特に、本明細書に説明される熱伝導性粒子を製造するため、
最初に、NOB−130(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社から入手可能)などの乾式粒子配合装置内で、両方とも本明細書に説明される、熱伝導性コア粒子と有機バインダーとを5分間にわたって3,000rpmの回転速度で圧縮剪断混合して複合コアを形成し、および
次に、乾式粒子配合装置内で複合コアと絶縁材料とを圧縮剪断混合して、複合コアの表面が絶縁材料によって少なくとも部分的にコートされてそれにより熱伝導性粒子を形成するようにする。
【0066】
最初の圧縮剪断混合時間は、約30秒〜約90分の範囲であってもよく、有機バインダーを溶剤中に、好ましくは水中に溶解または懸濁させて有機バインダー溶液または懸濁液を製造してもよい。第2の剪断混合時間は、30秒未満〜約10分の範囲であってもよい。
【0067】
好ましくは、次いでこれらの粒子を3時間120℃で熱処理して湿分を除いてもよい。有機バインダーがメチロールメラミンなどの熱硬化性樹脂である場合、加熱処理は、その樹脂をさらに架橋結合させる場合がある。
【0068】
次に、本明細書に説明される任意の適した樹脂またはポリマーに熱伝導性粒子を添加して、熱伝導性樹脂組成物に調製してもよい。
【実施例】
【0069】
本発明は、限定されないが、以下の実施例(E)および比較例(C)によって説明される。
【0070】
材料
− 天然黒鉛粒子−伊藤黒鉛工業株式会社(ITO Graphite Co. Ltd.)から黒鉛X−100として入手可能な60μmの平均粒径を有するフレーク黒鉛。
− メチロール(Methyol)メラミン(MM)−日本カーバイド工業株式会社(Nippon Carbide Industries Co. Inc.)からNikaresinS−176として入手可能な有機バインダー。
− 水性ポリエステル(PE)−互応化学工業株式会社(Goo Chemical)からZ730として入手可能な水溶性ポリエステル。
− ポリアミド(PA)−住友精化株式会社(Sumitomo Seika Chemicals)からPA200として入手可能なポリアミド懸濁水溶液。
− ポリスチレン(Polystrene)スルホン酸ナトリウム(SPS)−東ソー有機化学株式会社(Tosoh Organic Chemical)からPS−50として入手可能なポリスチレンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液。
− IMI FABI Co.,Ltd.からHTP Ultra5として入手可能な0.65μmの平均D50粒径を有するタルク1。
− IMI FABI Co.,Ltd.からHTP2Cとして入手可能な2.4μmの平均D50粒径を有するタルク2。
− 富士タルク工業株式会社からLMS200として入手可能な5μmの平均D50粒径を有するタルク3。
− セリサイト−Kinsei Matic,Co. Ltd.からセリサイト Jとして入手可能な1.6μmの平均D50粒径を有する微細粒マイカ。
− ヤマグチマイカ(Yamaguchi Mica)から入手可能な5μmの平均D50粒径を有するマイカ。
− Kawai Line IndustryからBMFとして入手可能な3〜5μmの平均D50粒径を有するベーマイト。
− E.I. du Pont de Nemours and Company [DuPont](Wilmington,DE)からTipure(登録商標)R108として入手可能な0.5μm超の平均D50粒径を有する二酸化チタン(TiO2)。
− 電気化学(Denki Kagaku)からSGPとして入手可能な12μmの平均D50粒径を有する窒化ホウ素(BN)。
− 三共精粉(Sankyo Seifun)からHO#100として入手可能な6μmの平均D50粒径を有する二フッ化カルシウム(CaF2)。
− 伊藤黒鉛株式会社(Ito Kokuen Co.,Ltd.)からEC300として得られる膨張黒鉛。
− DuPontからCrastin(登録商標)として入手可能なポリブチレンテレフタレート(PBT)。
【0071】
方法
体積抵抗率の測定
実施例および比較例の熱伝導性粒子の体積抵抗率は、図2のデバイス20を使用して二端子法によって測定された。両側の2つの位置において端子電極21に接続された10mmの内径を有する透明なシリンダー22に黒鉛粒子23を3.0mmの高さまで充填した。充填された量は0.2gであった。透明なシリンダー22と接触する端子電極21のうちの1つの表面の表面積は0.785cm2であった。体積抵抗率は、2つの端子間にシリンダー上で500Vの電圧を印加することによって得られた。
【0072】
本明細書に説明される熱伝導性粒子を調製する方法
以下の表に示された熱伝導性粒子の全ての実施例が方法Aを使用して製造された。比較例C1は方法Bを使用して製造された。比較例C2は方法Bを使用して製造された。
【0073】
方法A:熱伝導性粒子を製造するための2つの圧縮剪断混合工程
第1の工程は、黒鉛と有機バインダーとを圧縮剪断混合して複合コアを製造する工程であり、その後に、複合コアと絶縁材料とを圧縮剪断混合する第2の工程が行なわれる。
【0074】
天然黒鉛粒子と有機バインダーとを乾式粒子配合装置(ホソカワミクロン株式会社から入手可能なNOB−130(登録商標))内に添加し、5分間にわたって3,000rpmの回転速度で圧縮剪断混合して、複合コアを形成した。表中の有機バインダーは、溶剤として使用される量の水に特定のバインダーを溶解または懸濁させて有機バインダー溶液または懸濁液をもたらすことによって得られた。
【0075】
次に、タルク、ベーマイト、セリサイト、およびマイカなどの絶縁材料を複合コアを保有する乾式粒子配合装置に添加し、30秒間にわたって3,000rpmの回転速度で第2の圧縮剪断混合に供して、絶縁層を複合コアの表面上に部分的に形成させ、それによって熱伝導性粒子をもたらした。熱伝導性粒子を3時間にわたって120℃で熱処理して、残りの溶剤を除去した。メチロールメラミンが有機バインダーとして使用されたとき、加熱工程はメチロールメラミンをさらに架橋結合させた。
【0076】
方法B:単一の圧縮剪断混合工程:有機バインダーと絶縁材料とを予備混合し、その後に、熱伝導性コア粒子を添加し、そして次に全ての要素を圧縮剪断混合する
タルクとメチロールメラミンの水溶液とを一緒に予備混合して、タルク/メチロールアミン混合物を形成した。この予備混合は圧縮剪断工程ではなかった。次に、予備混合物を方法Aに記載された乾式粒子配合装置内に天然黒鉛粒子と共に添加し、5分間にわたって圧縮剪断混合して熱伝導性粒子を形成した。熱伝導性粒子を3時間にわたって120℃で熱処理して溶剤を取り除き、500Vの印加電圧で8×102Ω・cmの体積抵抗率を有する熱伝導性粒子をもたらした。
【0077】
この方法は、1つの圧縮剪断混合工程だけに依拠する。したがって、方法Bにおいて、最初に複合コアを製造しなかった。
【0078】
方法C:単一の圧縮剪断混合工程:有機バインダー、熱伝導性コア粒子および絶縁材料を一緒に圧縮剪断混合する
この方法は、予備混合工程を有さず、全ての要素が一緒に添加され、圧縮剪断混合された。天然黒鉛粒子、有機バインダー(メラミン水溶液)および絶縁材料(タルク)を方法Aに記載されたような乾式粒子配合装置に一緒に添加して、5分間にわたって圧縮剪断混合して熱伝導性粒子を形成した。次に、熱伝導性粒子を3時間にわたって120℃で熱処理して溶剤を取り除き、500Vの印加電圧で8×103Ω・cmの体積抵抗率を有する熱伝導性粒子をもたらした。方法Bと同様、方法Cもまた、1つの圧縮剪断工程だけに依拠し、複合コアを製造しない。
【0079】
結果
【0080】
【表1】
【0081】
表1は、同じ回転速度、硬化温度および時間を有するメカノフュージョンプロセスA、B、およびCによって調製された熱伝導性粒子の体積抵抗率を比較する。E1は、メカノフュージョンプロセスAによって調製され、メカノフュージョンプロセスAは記載された体積抵抗率の熱伝導性粒子を達成したことを示し、他方、メカノフュージョンプロセスBまたはCはC2およびC3を達成し、それらは記載された体積抵抗率を示した。
【0082】
【表2】
【0083】
表2の全ての実施例および比較例が方法Aによって調製され、長軸に沿う平均長さ131.7μmおよび平均厚さ22.5μmを有し、アスペクト比5.85をもたらした。E2〜E5の各々が、複合コアに異なった量の有機バインダーを有した。C3は有機バインダーが無く、体積抵抗率5Ω・cmを示した。これは、1.5×107Ω・cmであったE2〜E5の最小体積抵抗率と対照的である。表2は、熱伝導性コア粒子の量に対する有機バインダーの体積パーセントが3〜20の範囲であるとき、少なくとも1×104Ω・cmの記載された体積抵抗率が得られることを示す。
【0084】
また、表2は、100体積部の天然黒鉛の20体積部が膨張黒鉛で置き換えられたこと以外はE2の場合と同じ方法で形成された、複合コアに2つのタイプの黒鉛を有する熱伝導性粒子E6を示す。E6の体積抵抗率は5.5×105Ω・cmであり、E2の体積抵抗率のほとんど5倍の改良があった。
【0085】
【表3】
【0086】
表3の実施例は、絶縁材料の量を変化させること以外は表2の実施例と同じ方法で形成された。E7〜E10の各々が、異なる量の絶縁材料、すなわち、タルクを有した。C4はタルクが無かった。C4およびE7〜E10の体積抵抗率は実施例2〜6についてと同様に測定された。
【0087】
表3は、タルクの量が増加する時にE7〜E10の体積抵抗率が増加することを示す。E9のタルクの量の2倍のタルクの量を含有する、E10の体積抵抗率は、E9の体積抵抗率と同じであった。これらの結果は、絶縁材料の比較的より有効な量は、熱伝導性粒子の全体積の約10〜約20体積部の範囲であることを示す。
【0088】
【表4】
【0089】
表4の熱伝導性粒子は、タルク絶縁材料の平均粒径を変化させたこと以外は実施例2〜10の場合と同じ方法で形成された。E11は、E9の場合とほぼ同じ平均サイズのタルク粒子を有した。E11、E12、およびE13は、それぞれ650nm、2.4μm、および5.0粒径5.0μmの平均粒径のタルクを有した。したがって、E12の平均タルク粒径は、E11(E9)の平均タルク粒度の約4倍であった。E13の平均タルク粒径は、E12の平均タルク粒径の約2倍であり、E11(E8)の平均タルク粒径の約8倍の大きさであった。E11(E9)およびE12の体積抵抗率は、絶縁粒子の平均粒径に4倍の差があるにもかかわらず、ほとんど同じであった。しかしながら、E12の体積抵抗率に対してE13の体積抵抗率の減少は、タルクが絶縁材料であるとき、平均タルク粒径が600nm〜約3.0μmの範囲である時に最適な結果が達成されることを意味する。それにもかかわらず、E11〜E13の3つ全ての実施例において、熱伝導性粒子の体積抵抗率は1.0×108Ω・cmより大きく、記載された最小値の10,000倍の増加であった。
【0090】
【表5】
【0091】
表5において、それらの絶縁材料として二酸化チタン、窒化ホウ素、およびフッ化カルシウムをそれぞれ有するC5、C6、およびC7は、記載された体積抵抗率を有する熱伝導性粒子を達成しなかった。フッ化カルシウムは4.0のモース硬度を有する。窒化ホウ素は約12μmの粒径を有し、C5の酸化チタンは、約1のアスペクト比を有する球形状を有した。
【0092】
それと対照して、表5は、それらの絶縁材料としてセリサイト、マイカ、およびベーマイトをそれぞれ有するE14、E15、およびE16が少なくとも記載された値1.0×104の体積抵抗率を各々有する熱伝導性粒子を達成したことを示す。ベーマイト、セリサイト、およびマイカは全て、3.5未満のモース硬度値および約5μm以下の粒径を有する。
【0093】
【表6】
【0094】
表6は、異なった有機バインダーを有する熱伝導性粒子の体積抵抗率を示す。表6に使用された各々の有機バインダーは、500Vの印加電圧で少なくとも記載された値、1×104Ω・cmの体積抵抗率を示す熱伝導性粒子を製造した。有機バインダーとしてメチロールメラミンまたは水性ポリエステルを使用することによって、最良の体積抵抗率を有する熱伝導性粒子が得られた。
【0095】
【表7】
【0096】
表7は、熱伝導性粒子が樹脂中に分散された樹脂組成物を示し、この樹脂組成物を射出成形して物品を形成する。
【0097】
本明細書に説明される樹脂組成物を以下のように調製した:
(樹脂組成物の全体積の)67体積部のポリブチレンテレフタレート樹脂と7体積部のポリエステルエラストマーとをDSM Xplore製のMC15マイクロミキサーを使用して2分間にわたって290℃で混合した。E10からの熱伝導性粒子を(樹脂組成物の全体積の)26体積部添加してさらに30秒間290℃で撹拌して樹脂組成物を製造した。
【0098】
樹脂組成物を125℃の型の温度で射出成形して、長さ21mm、幅16mm、および厚さ1mmの成形品を製造した(図3)。成形品の表面の少なくとも1.0×1014Ω・cmの体積抵抗率がオーム計(三菱化学株式会社(Mitsubishi Chemical Corp.)製のHiresta−UP)によって測定された。さらに、成形品の射出方向の温度拡散率は、Bruker AXSモデルLFA447 NanoFlash(登録商標)を使用して15mm×15mmの面積でレーザー閃光方法によって測定され、温度拡散率が成形品の比熱および密度によって計算されたとき、1.4W/mKであった。
【0099】
この成形品の横断面を電子顕微鏡で観察したとき、黒鉛含有複合物41とその表面をコートする絶縁層42とを含有する熱伝導性粒子が図4に示されるように観察された。さらに、熱伝導性粒子は樹脂43内でほとんど平行に整列された。
以下、本明細書に記載の主な発明について列記する。
(1) 複合コアと、
絶縁層とを含む熱伝導性粒子であって、
前記複合コアが複数のコア粒子と前記コア粒子を一緒に結合する有機バインダーとを含み、
前記コア粒子が熱伝導性であり、金属粒子、セラミック粒子、炭素をベースとする粒子、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
絶縁材料が前記複合コアの少なくとも一部をコートし、
前記熱伝導性粒子が、10mmの直径および3.0mmの高さを有する前記熱伝導性粒子のシリンダー上で500Vの印加電圧で測定された時に、少なくとも1×104Ω・cm〜1×1010Ω・cmの範囲である体積抵抗率を示す、熱伝導性粒子。
(2) 前記コア粒子が炭素をベースとする粒子である、(1)に記載の熱伝導性粒子。
(3) 前記炭素をベースとする粒子が黒鉛である、(1)に記載の熱伝導性粒子。
(4) 前記コア粒子が、3:2〜99:1の比の天然黒鉛およびフレーク状の炭素をベースとする粒子であり、
前記フレーク状の炭素をベースとする粒子が、前記天然黒鉛の平均厚さよりも小さい平均厚さを有する、(1)または(2)に記載の熱伝導性粒子。
(5) 前記コア粒子が100体積部であり、
前記有機バインダーが前記コア粒子の体積の3〜25体積部の範囲であり、前記絶縁材料が前記コア粒子の4〜48体積部の範囲である、(1)または(2)に記載の熱伝導性粒子。
(6) 前記コア粒子が、3:2〜99:1の比の天然黒鉛およびフレーク状の炭素をベースとする粒子であり、
前記フレーク状の炭素をベースとする粒子が、前記天然黒鉛の平均厚さよりも小さい平均厚さを有する、(5)に記載の熱伝導性粒子。
(7) 前記有機バインダーが熱硬化性樹脂である、(1)または(2)に記載の熱伝導性粒子。
(8) 前記有機バインダーが熱硬化性樹脂である、(6)に記載の熱伝導性粒子。
(9) 前記熱伝導性粒子の平均粒径が0.5μm〜300μmの範囲である、(1)または(2)に記載の熱伝導性粒子。
(10) 前記熱伝導性粒子の平均粒径が0.5μm〜300μmの範囲である、(8)に記載の熱伝導性粒子。
(11) 前記絶縁材料が、セリサイト、ベーマイト、タルク、マイカ、およびこれらの混合物からなる群から選択される、(1)または(2)に記載の熱伝導性粒子。
(12) 前記絶縁材料が、セリサイト、ベーマイト、タルク、マイカ、およびこれらの混合物からなる群から選択される、(10)に記載の熱伝導性粒子。
(13) 複合コアを絶縁材料で少なくとも部分的にコートする工程を含む熱伝導性粒子を製造する方法であって、
前記複合コアが、複数のコア粒子と前記コア粒子を一緒に結合する有機バインダーとを含み、
前記コア粒子が熱伝導性であり、金属粒子、セラミック粒子、炭素をベースとする粒子、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
前記絶縁材料が、セリサイト、ベーマイト、タルク、マイカ、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
前記熱伝導性粒子が、10mmの直径および3.0mmの高さを有する前記熱伝導性粒子のシリンダー上で500Vの印加電圧で測定された時に、少なくとも1×104Ω・cm〜1×1010Ω・cmの範囲である体積抵抗率を示す、方法。
(14) 前記複合コアが、圧縮力および剪断力を適用して前記コア粒子を前記有機バインダーと混合させることによって形成される、(13)に記載の方法。
(15) 熱伝導性粒子と、
からなる群から選択される樹脂とを含む樹脂組成物であって、
前記熱伝導性粒子が複合コアと絶縁層とを含み、
前記複合コアが複数のコア粒子と前記コア粒子を一緒に結合する有機バインダーとを含み、
前記コア粒子が熱伝導性であり、金属粒子、セラミック粒子、炭素をベースとする粒子、およびこれらの混合物からなる群から選択され、
絶縁材料が前記複合コアの少なくとも一部をコートし、
前記熱伝導性粒子が、10mmの直径および3.0mmの高さを有する前記熱伝導性粒子のシリンダー上で500Vの印加電圧で測定された時に、少なくとも1×104Ω・cm〜1×1010Ω・cmの範囲である体積抵抗率を示し、
前記熱伝導性粒子が、樹脂組成物の全体積の10〜70体積%の範囲である、樹脂組成物。
図1
図2
図3
図4