特許第6654563号(P6654563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654563
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】論理演算処理が可能な電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   G08C 25/00 20060101AFI20200217BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20200217BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20200217BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   G08C25/00 F
   G05B23/02 302R
   G08C19/00 U
   G08C17/00 Z
   G08C19/00 G
【請求項の数】25
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-523748(P2016-523748)
(86)(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公表番号】特表2016-529596(P2016-529596A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】US2014039752
(87)【国際公開番号】WO2014209529
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】13/930,700
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】マクガイアー, チャド マイケル
(72)【発明者】
【氏名】オース, ケリー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シュナーレ, セオドア ヘンリー
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−527493(JP,A)
【文献】 特開2009−118054(JP,A)
【文献】 特開2012−249947(JP,A)
【文献】 特開2006−204024(JP,A)
【文献】 特表2008−504790(JP,A)
【文献】 米国特許第5148158(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 17/00−17/02
G08C 19/00−19/48
G08C 25/00−25/04
G05B 23/00−23/02
H04Q 9/00− 9/16
G01R 31/36−31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス変数を計測してセンサ信号を生成するプロセスセンサと、
ワイヤレスフィールドデバイスの内部空間を形成するハウジングと、
前記内部空間に収容され、前記センサ信号を処理するトランスミッタと、
前記内部空間に収容された電力モジュールとを備え、
前記電力モジュールは、
エネルギ貯蔵素子と、
ローカル電源との接続機構と、
前記エネルギ貯蔵素子の第1出力電圧を検出する第1電圧センサと、
前記ローカル電源の第2出力電圧を検出する第2電圧センサと、
前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の診断報告を前記トランスミッタに供給するプロセッサとを備え、
前記診断報告は、前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧に基づく前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方の識別情報を含み、
前記プロセッサは、電圧特性のデータベースを用い、当該電圧特性のデータベースにおける前記エネルギ貯蔵素子の電圧特性及び前記ローカル電源の電圧特性の少なくとも一方に、前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧の少なくとも一方の電圧特性を照合することにより、前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方を識別する
ことを特徴とするワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項2】
前記診断報告は、前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧に基づき、前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源のいずれかにおける故障の前兆または実際の故障を示す故障報告を含むことを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項3】
前記故障報告は、前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方から出力される電圧における予期しない低下に対応するものであることを特徴とする請求項2に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項4】
前記電力モジュールは、機械読み取り可能なメモリを更に備え、
前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方の前記識別情報は、前記メモリから取得した前記エネルギ貯蔵素子の識別情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項5】
前記診断報告は、前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧に基づき予測される前記エネルギ貯蔵素子の残存使用可能期間を含むことを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項6】
前記ローカル電源は、周囲温度の計測結果を生成する温度センサを更に備え、
前記エネルギ貯蔵素子の前記残存使用可能期間は、更に前記周囲温度の計測結果に基づき予測される
ことを特徴とする請求項5に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項7】
前記電力モジュールは、前記ローカル電源との前記接続機構から優先的に電力を取り出し、電力要求を満たす上で前記ローカル電源からの電力が使用不可能または不十分であるときに、前記エネルギ貯蔵素子から補足的に電力を取り出すことを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項8】
前記電力モジュールは、前記ローカル電源を内蔵することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項9】
前記ローカル電源は、前記電力モジュールの外に配置され、前記電力モジュールの外部電源用端子を介し、前記電力モジュールに接続されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項10】
前記ハウジングとの間で収容部を形成するカバーを更に備え、
前記電力モジュールは、前記収容部の中に収容される
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項11】
前記電力モジュールは、着脱可能に前記収容部の中に収容されることを特徴とする請求項10に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項12】
前記エネルギ貯蔵素子は、バッテリまたはスーパーキャパシタであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項13】
前記ローカル電源は、エネルギ捕集装置であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項14】
前記電力モジュールは、前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方からの電力を調整する電力コンディショナを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項15】
前記電力コンディショナは、前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方からの電力を整流または変換することを特徴とする請求項14に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項16】
前記トランスミッタは、前記センサ信号及び前記診断報告を、制御システムまたは監視システムに送信することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスフィールドデバイス。
【請求項17】
ローカル電源との接続機構及びエネルギ貯蔵素子を有したプロセス変数トランスミッタに用いる電力モジュールのための電力監視及び診断方法であって、
前記電力モジュール内において前記ローカル電源の第1出力電圧と前記エネルギ貯蔵素子の第2出力電圧とを検出する工程と、
前記ローカル電源及び前記エネルギ貯蔵素子の出力電圧に応じて故障または状態変化の通知を生成する工程と、
前記第1出力電圧と前記第2出力電圧とに基づき、前記エネルギ貯蔵素子の残存使用可能期間を見積もる工程と、
前記第1出力電圧と前記第2出力電圧の少なくとも一方に基づき、前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方を識別する工程と、
見積もった前記残存使用可能期間と前記故障または状態変化の通知と前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方の識別情報とを含む診断報告を送信する工程とを備え、
前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方を識別する工程では、電圧特性のデータベースを用い、当該電圧特性のデータベースにおける前記エネルギ貯蔵素子の電圧特性及び前記ローカル電源の電圧特性の少なくとも一方に、前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧の少なくとも一方の電圧特性を照合することにより、前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方を識別する
ことを特徴とする電力監視及び診断方法。
【請求項18】
前記エネルギ貯蔵素子の残存使用可能期間を見積もる前記工程は、
前記エネルギ貯蔵素子の予測消耗率と残存充電量とを見積もる工程と、
見積もった前記予測消耗率と前記残存充電量とから、前記エネルギ貯蔵素子の前記残存使用可能期間を求める工程とを備える
ことを特徴とする請求項17に記載の電力監視及び診断方法。
【請求項19】
前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方を識別する工程は、前記第1出力電圧に基づき、前記ローカル電源を識別する工程を備えることを特徴とする請求項17に記載の電力監視及び診断方法。
【請求項20】
前記第1出力電圧に基づき、前記ローカル電源を識別する前記工程は、電圧特性のデータベースを用いた前記ローカル電源の識別情報に、前記第1出力電圧の電圧特性を照合する工程を備えることを特徴とする請求項19に記載の電力監視及び診断方法。
【請求項21】
前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方を識別する工程は、前記エネルギ貯蔵素子を識別する工程を備えることを特徴とする請求項17に記載の電力監視及び診断方法。
【請求項22】
前記エネルギ貯蔵素子を識別する前記工程は、電圧特性のデータベースを用いた前記エネルギ貯蔵素子の識別情報に、前記第2出力電圧の電圧特性を照合する工程を備えることを特徴とする請求項21に記載の電力監視及び診断方法。
【請求項23】
前記エネルギ貯蔵素子を識別する前記工程は、前記エネルギ貯蔵素子の識別情報を含んで保管された前記電力モジュールの識別情報を取得する工程を備えることを特徴とする請求項21に記載の電力監視及び診断方法。
【請求項24】
前記予測消耗率は、検出温度に基づくものであることを特徴とする請求項18に記載の電力監視及び診断方法。
【請求項25】
プロセス変数を計測してセンサ信号を生成するプロセスセンサと、
ワイヤレスフィールドデバイスの内部空間を形成するハウジングと、
前記内部空間に収容され、前記センサ信号を処理するトランスミッタと、
前記内部空間に収容された電力モジュールとを備え、
前記電力モジュールは、
前記電力モジュールが優先的に電力を取り出すローカル電源との接続機構と、
電力要求を満たす上で前記ローカル電源からの電力が使用不可能または不十分であるときに、補足的に電力を取り出すエネルギ貯蔵素子と、
前記エネルギ貯蔵素子の第1出力電圧を検出する第1電圧センサと、
前記ローカル電源の第2出力電圧を検出する第2電圧センサと、
前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧に基づく前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方の識別情報を含む診断報告を前記トランスミッタに供給するプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、電圧特性のデータベースを用い、当該電圧特性のデータベースにおける前記エネルギ貯蔵素子の電圧特性及び前記ローカル電源の電圧特性の少なくとも一方に、前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧の少なくとも一方の電圧特性を照合することにより、前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方を識別する
ことを特徴とするワイヤレスフィールドデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね産業プロセス用のフィールドデバイスに関し、具体的には、産業プロセス用のワイヤレスフィールドデバイスに電力を供給するハイブリッド電力モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
「フィールドデバイス」という用語は、圧力、温度、及び流量といったパラメータを計測したり制御したりするプロセス管理デバイスを広範に包含するものである。多くのフィールドデバイスは、産業プロセス変数を検出または操作するトランスデューサと、コントロールルームにあるコンピュータなどの遠隔制御デバイスや遠隔監視デバイスとの間の通信中継装置として作動するトランスミッタとなる。例えば、センサの出力信号は、遠隔制御デバイスや遠隔監視デバイスと有効な通信を行うには不十分であるのが一般的である。トランスミッタは、センサからの信号を受け取り、この信号を長距離の通信に一層適した形式(例えば、変調された4−20mA電流ループ信号、またはワイヤレスプロトコル信号)に変換して、変換後の信号を遠隔制御デバイスや遠隔監視デバイスに送信することにより、このような問題を解消する。
【0003】
フィールドデバイスは、圧力、温度、粘度、及び流量を含む、産業プロセスの様々なパラメータを監視したり制御したりするために用いられる。別のフィールドデバイスは、バルブ、ポンプ、及びその他の産業プロセス用ハードウエアを作動させる。一般的に、それぞれのフィールドデバイスは、アクチュエータ及びセンサの少なくとも一方と、センサ信号や制御信号を受け取って処理する電子回路と、各フィールドデバイスや産業プロセスのパラメータを遠隔地から監視できるように、処理したセンサ信号を送信する電子回路とを収容する密封容器を備えている。大規模な製造設備では、広い範囲にわたり分散配置された多くのフィールドデバイスを用いるのが一般的である。通常、これらのフィールドデバイスは、共通の制御デバイスや監視デバイスと通信を行うことにより、産業プロセスを集中的に監視したり、制御したりすることができるようになっている。
【0004】
フィールドデバイスでは、集中制御システムや集中監視システムとの通信に、ワイヤレストランシーバを用いるようになりつつある。ワイヤレスデバイスにより、有線デバイスの適用範囲を超え、電線の敷設が困難であって有線デバイスの設置には費用がかかるような場所にまで、プロセス制御システムやプロセス監視システムの適用範囲が拡大される。ワイヤレスデバイスは、交流120V商用電源や電力供給型データ通信線といった電力設備との直接的な接続によって電力の供給を受けることがある。しかしながら、近くに電力設備がなかったり、機器やトランスデューサが作動する必要のある苛酷な場所には電力設備を容易に設置することができなかったりすることが多い。このため、フィールドデバイスは、長寿命バッテリの場合のように電力を貯えるか、或いは太陽電池パネルの場合のように電力を生成するような、容量が限られた電源から局所的に電力が供給されることが多い。バッテリは、5年以上にわたる継続使用が期待され、フィールドデバイスの寿命程度まで継続して使用できることが好ましい。局所的に設けられた電源は、容量が限られているので、低消費電力の電子回路や高周波無線の使用が、多くのワイヤレスフィールドデバイスにとって必須となる場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くのフィールドデバイスは、フィールドデバイスの密封容器の中にバッテリを収容している。別のフィールドデバイスでは、太陽電池パネルや、振動発電装置もしくは熱電発電装置のようなエネルギ捕集装置、または近隣の電力供給網といった外部電源からの電力を利用する。ワイヤレスフィールドデバイスへの電力供給方法は、それぞれで異なる配線用端子接続を求められるのが一般的である。一部または全体がバッテリ電力で作動するフィールドデバイスは、付属のバッテリとの接続点となる端子ブロックを組み込むのが一般的である。これに対し、電力供給網を利用して作動するフィールドデバイスは、電力供給網との配線接続を行う端子ブロック(一般的にネジ止め端子を用いる)や、電力供給網からの電力をフィールドデバイスで使用できるように調整する端子ブロックを備える。多くの場合、端子ブロックを着脱可能として、各電源専用の端子ブロックに交換することにより、単一のフィールドデバイスで様々な電源に対応できるようになっている。太陽電池パネルや振動エネルギ捕集装置など、別の種類のローカル電源モジュールは、いずれも異なる端子ブロックを使用する可能性がある。
【0006】
ワイヤレスフィールドデバイスは、検出したパラメータに対応した周期的な信号を供給する。バッテリ駆動型のトランスミッタは、一般的に、バッテリ交換の間の5年以上にわたって作動することが期待される。用途によっては、既存のシステムでも、4秒に一度といった頻度で送信を行いつつ、このような期間にわたって作動することが可能である。多くの産業用途について、より迅速なシステムの更新が望ましいものの、より多くの電力が必要となり、バッテリの寿命を大幅に短縮することになる。
【0007】
太陽電池パネルや振動エネルギ捕集装置または熱電発電装置のようなエネルギ捕集装置は、設置場所や用途に大きく依存した電力を生成する。振動エネルギ捕集装置は、例えば大きな振幅の連続的な振動を伴う場所では、非常に有効なエネルギ供給源となり得るが、振幅の小さな振動や、断続的な振動を伴う場所では、実用的でないか、或いは不十分な場合がある。更に、一般にバッテリやスーパーキャパシタは、放電している間は電力を供給し続けるが、エネルギ捕集装置は、電力生成に予期せぬ減少が生じる可能性があり、周囲の環境条件に応じて電力量が変動することになる。例えば、太陽電池パネルは、暗闇では電力を生成せず、振動エネルギ捕集装置は、取り付けられる構造物(例えば、モータ)が静止している場合、電力を生成しない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プロセスセンサ、ハウジング、トランスミッタ、及び電力モジュールを備えたワイヤレスフィールドデバイスを対象とするものである。プロセスセンサは、プロセス変数を計測してセンサ信号を生成するように構成される。ハウジングは、ワイヤレスフィールドデバイスの内部空間を形成する。トランスミッタは、この内部空間に収容され、センサ信号を処理するように構成される。電力モジュールは、前記内部空間に収容され、エネルギ貯蔵素子と、ローカル電源との接続機構と、前記エネルギ貯蔵素子の第1出力電圧を検出する第1電圧センサと、前記ローカル電源の第2出力電圧を検出する第2電圧センサと、これらエネルギ貯蔵素子及びローカル電源の診断報告をトランスミッタに供給するプロセッサとを備える。そして、診断報告は、前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧に基づく前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方の識別情報を含む。プロセッサは、電圧特性のデータベースを用い、当該電圧特性のデータベースにおける前記エネルギ貯蔵素子の電圧特性及び前記ローカル電源の電圧特性の少なくとも一方に、前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧の少なくとも一方の電圧特性を照合することにより、前記エネルギ貯蔵素子及び前記ローカル電源の少なくとも一方を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ワイヤレスフィールドデバイスを含むプロセス制御・監視システムの典型例を示す図である。
図2a図1のワイヤレスフィールドデバイスの概要を示すブロック図である。
図2b】本発明に係るもう1つのワイヤレスフィールドデバイスの概要を示すブロック図である。
図3図1のワイヤレスフィールドデバイスの分解斜視図である。
図4a図1のワイヤレスフィールドデバイスの電力モジュールを一方向から見た分解斜視図である。
図4b図1のワイヤレスフィールドデバイスの電力モジュールを図4aとは異なる方向から見た分解斜視図である。
図5図1のワイヤレスフィールドデバイスの診断及び故障検知方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、産業用のワイヤレスフィールドデバイスに用いる電力モジュールに関する。一実施形態において、電力モジュールは、バッテリまたはスーパーキャパシタのようなエネルギ貯蔵素子と、エネルギ捕集装置のような外部電源のための電力調整回路との両方を備えている。電力モジュールは、エネルギ貯蔵素子からの電圧の計測値と、外部電源からの電圧の計測値とを個別に処理し、その電圧情報を用いて生成した診断報告を、ワイヤレスフィールドデバイス、或いは制御または監視システム(以下、制御または監視システムを総称して制御・監視システムという)に供給する。
【0011】
図1は、ワイヤレスフィールドデバイス12(アンテナ14を有する)、トランスデューサ16、プロセス接続部18、プロセス配管20、ローカル電源22、及び電源接続線24を備えた計測または制御箇所10を示している。ワイヤレスフィールドデバイス12は、アンテナ14を介し、制御・監視システム26に接続される。
【0012】
プロセス配管20は、流動するプロセス流体Fを案内する。ワイヤレスフィールドデバイス12は、このプロセス流体のパラメータを計測する1以上のセンサから信号を受け取り、処理して送信するように構成されたプロセストランスミッタとすることができる。これに代え、ワイヤレスフィールドデバイス12は、制御・監視システム26からの信号に応答して、バルブまたはポンプなどのプロセスアクチュエータに指令するように構成されたワイヤレスコントローラであってもよい。トランスデューサ16は、プロセス接続部18を介してプロセス流体Fと接するセンサまたはアクチュエータの1つである。プロセス接続部18は、個々の産業用途と、トランスデューサ16が計測または操作するパラメータとに応じ、プロセス流体Fの流動に対して並列的に設けられてもよいし、直列的に設けられてもよい。図1には単一のトランスデューサ16が示されているが、計測または制御箇所10の実施形態として、ワイヤレスフィールドデバイス12に接続された複数のセンサ及び複数のアクチュエータの少なくとも一方を備えていてもよい。
【0013】
一実施形態においてトランスデューサ16は、ワイヤレスフィールドデバイス12が処理を行って制御・監視システム26への送信を行うために、ワイヤレスフィールドデバイス12に計測結果を供給するセンサである。別の実施形態では、トランスデューサ16がアクチュエータであって、ワイヤレスフィールドデバイス12が制御・監視システム26から受け取った信号に応答し、トランスデューサ16がプロセス流体における変化を操作する。以下の説明では、トランスデューサ16がセンサからなる実施形態に焦点を当てるが、当業者は、アクチュエータにも同様に本発明を適用可能であることを理解しうるものである。
【0014】
トランスデューサ16は、プロセス接続部18を介してプロセス配管20に固定され、流量、粘度、温度、または圧力など、プロセス流体の1以上のパラメータを計測する。図示した実施形態において、トランスデューサ16は、ワイヤレスフィールドデバイス12の内部に収容されているが、これに代わる実施形態として、トランスデューサをワイヤレスフィールドデバイス12から分離して配置し、電線でワイヤレスフィールドデバイス12と接続するようにしてもよい。トランスデューサ16からのセンサ信号は、(例えば、アナログ電圧値またはデジタル信号として)ワイヤレスフィールドデバイス12内の処理及び伝送用電子回路に送信される(図2a及び図2b参照)。トランスデューサ16の具体的構成は、検出するパラメータに応じて変更することができ、プロセス配管20内のプロセス流体F中にトランスデューサ16が延設されるように、プロセス接続部18が構成される場合もある。ワイヤレスフィールドデバイス12は、トランスデューサ16からプロセス信号を受信して、(必要に応じ)デジタル化し、アンテナ14を介して、プロセス情報を含むプロセスメッセージを制御・監視システム26に送信する。アンテナ14は、単一のアンテナとして図示されているが、配列された複数の多様なアンテナで構成してもよい。ワイヤレスフィールドデバイス12は、制御・監視システム26に信号を直接送信してもよいし、メッシュ型ネットワークまたはハブアンドスポーク型ネットワークを間に介して制御・監視システム26に信号を送信してもよい。一実施形態として、ワイヤレスフィールドデバイス12は、WirelessHART(登録商標、IEC62591)プロトコル、またはFieldbus(登録商標、IEC61158)プロトコルを用いてもよい。制御・監視システム26は、フィールドデバイスネットワーク内の複数のフィールドデバイスからのセンサデータの受信、及びこれらフィールドデバイスへのアクチュエータデータの送信の少なくとも一方を行う集中システムとすることができる。また、制御・監視システム26は、フィールドデバイスネットワークと共に現場に配置されてもよいし、遠隔設置されたコントロールルームに配置されてもよい。
【0015】
ワイヤレスフィールドデバイス12は、後に詳述するように、トランスデューサ16からの(または、アクチュエータの場合、トランスデューサ16への)信号を処理して送信する電子回路を備えている。信号の処理及び送信は、いずれもエネルギを必要とし、当該エネルギは、図2a及び図2bに関して後述するように、電力モジュールによって供給される。この電力モジュールは、バッテリまたはスーパーキャパシタなどの内蔵のエネルギ貯蔵素子と、電源接続線24を介したローカル電源22への接続機構との両方を備える。ローカル電源22は、例えば、太陽電池パネルや、振動エネルギ捕集装置もしくは熱電発電装置などのエネルギ捕集装置、または商用電力供給網とすることができる。図1では、ワイヤレスフィールドデバイス12の外に設けられた外部電源として、ローカル電源22が示されているが、一実施形態として、図2bに関して後述するように、ローカル電源22がワイヤレスフィールドデバイス12の内部に組み込まれていてもよい。
【0016】
図2a及び図2bは、ローカル電源22がワイヤレスフィールドデバイス12の外部にある場合(図2a)、及びローカル電源22がワイヤレスフィールドデバイス12の内部にある場合(図2b)の、それぞれのワイヤレスフィールドデバイス12の実施形態を示す図である。図2aの実施形態と図2bの実施形態とは、電力モジュール120の構成のみが相違しており、図2aにおいては電力モジュール120Aとして、また図2bにおいては電力モジュール120Bとして示されている。ここで、「電力モジュール120」の呼称は、電力モジュール120Aと電力モジュール120Bとの区別を必要としない場合に、これら電力モジュール120A及び電力モジュール120Bを同等に指し示すために用いている。
【0017】
図2a及び図2bは、制御・監視システム26からの信号に基づいてプロセス機器を操作する実施形態ではなく、センサ信号を受け取って、制御・監視システム26に送信する実施形態に関するものである。上述したように、電力モジュール120は、これらのうちのいずれかの形式のシステムに適用可能なだけでなく、両方の機能を有したフィールドデバイスにも適用可能である。
【0018】
図2aは、ワイヤレスフィールドデバイス12の概要を示すブロック図であり、アンテナ14、トランスデューサ16、ケーシング、即ちハウジング100、トランシーバ102、信号プロセッサ104、HART(登録商標)モデム105、デジタル信号コンディショナ106、アナログ・デジタルコンバータ108、アナログ信号コンディショナ110、給電コントローラ112、カバー116、端子ブロック118、及び電力モジュール120Aの一実施形態を示している。電力モジュール120Aは、エネルギ貯蔵素子122、外部電源用端子124(端子ネジ126を有する)、電力コンディショナ128、電圧センサ130、電力プロセッサ132、HARTモデム133、メモリ134、及び温度センサ136を備えている。電源接続線24は、電線ダクト138を通り、ローカル電源22を外部電源用端子124の端子ネジ126に接続する。図2bは、これに代わるワイヤレスフィールドデバイス12の実施形態の概要を示すブロック図であって、電力モジュール120Aが電力モジュール120Bに置き換えられている。電力モジュール120Bは、ローカル電源22が内部に組み込まれているので、外部電源用端子124、端子ネジ126、電源接続線24、及び電線ダクト138を設ける必要がない。これ以外の部分については、図2a及び図2bに示した実施形態において同一となっている。図示した実施形態において、電力モジュール120は、ハウジング100とカバー116とによって形成される収容部R内に収容されている。
【0019】
ワイヤレスフィールドデバイス12は、過激な温度及び過酷な環境に曝される可能性がある。従って、ワイヤレスフィールドデバイス12は、内部領域Iに電子回路を収納して保護するためのケーシング、即ちハウジング100を備えている。ハウジング100は、硬質で耐久性のある筐体であって、トランシーバ102、信号プロセッサ104、デジタル信号コンディショナ106、アナログ・デジタルコンバータ108、アナログ信号コンディショナ110、及び給電コントローラ112を劣化または損傷から保護するべく密封してもよい。ハウジング100は、カバー116と接合されて収容部Rを形成し、収容部Rは、電力モジュール120などの着脱可能な構成部品を収容して保護する。ハウジング100及びカバー116は、同様に密封状態を形成することにより、有害な環境による影響から、収容部R内の構成部品を保護することができる。一実施形態として、ハウジング100とカバー116との間のシールにより、内部領域I内の構成部品(即ち、トランシーバ102、信号プロセッサ104、デジタル信号コンディショナ106、アナログ・デジタルコンバータ108、アナログ信号コンディショナ110、及び給電コントローラ112)を適切に保護することも可能であって、ハウジング100とカバー116との組み合わせにより、カバー116が取り付けられている限りは、環境によるダメージから構成部品を保護することができるので、ハウジング100が内部領域Iを完全に取り囲んでいる必要はない。
【0020】
一実施形態として、トランシーバ102は、アンテナ14を介してワイヤレス信号を送受信する送受信機である。信号プロセッサ104は、マイクロプロセッサなどの論理演算処理可能なデータプロセッサである。図示した実施形態において、HARTモデム105は、HARTモデム133が生成した振幅変調電流信号からの、診断信号または状態信号の抽出、またはその逆を行うように構成された変調器または復調器である(後述)。端子ブロック118は、例えば、ハンドヘルドの診断装置を取り付けるためのHART接続機構が設けられるようにしてもよい。別の実施形態として、HARTモデム105及びHARTモデム133は、例えば、I2C(登録商標)、またはシリアル周辺インターフェース(SPI)バスなど、別の適切なデータ通信回線に置き換えてもよい。デジタル信号コンディショナ106は、デジタル化されたセンサ信号に対して機能するデジタルフィルタを備えており、このデジタルフィルタは、制御・監視システム26から送られる診断プログラムまたは指令に応答して、信号プロセッサ104が整合を行えるようにしてもよい。デジタル信号コンディショナ106は、例えば、アナログ・デジタルコンバータ108が生成した未加工のデジタル信号からの、ノイズの濾過、または必要な信号の抽出を行うようにしてもよい。アナログ・デジタルコンバータ108は、元々の検出された変数に対応するトランスデューサ16からのアナログセンサ信号をデジタル化することが可能なコンバータである。一実施形態(アクチュエータシステムのような場合)において、アナログ・デジタルコンバータ108は、上記構成に代えて、または上記構成に加えて、信号プロセッサ104からのデジタル信号を、トランスデューサ16に送信するためのアナログ信号に変換することが可能なデジタル・アナログコンバータを備えていてもよい。アナログ信号コンディショナ110は、一般的なアナログ信号コンディショナであって、例えば、トランスデューサ16から受け取った信号から、必要な1以上の周波数領域を分離するバンドパスフィルタ処理を行うようにすることができる。給電コントローラ112は、端子ブロック118から電力を取り込むように構成された、一般的な配電装置である。一実施形態において、給電コントローラ112は、電力品質及び電力障害の可能性を監視するための手段として、アナログの診断報告信号を端子ブロック118から受け取るようにすることができる。別の実施形態として、給電コントローラ112は、HARTモデム105及びHARTモデム133を介し、或いは類似のデータバスを介し、信号プロセッサ104と排他的に通信を行うようにしてもよい。信号プロセッサ104は、この診断報告を処理し、診断報告信号に基づき、少なくとも部分的にトランスデューサ16を制御するか、或いは、トランシーバ102及びアンテナ14を介し、単に診断報告を制御・監視システム26に転送して、記録保管または更なる処理の少なくとも一方を行えるようにしてもよい。給電コントローラ112は、ローカル電源22及びエネルギ貯蔵素子122の少なくとも一方から端子ブロック118を介して電力を受け取り、この電力を、必要に応じて、トランシーバ102、信号プロセッサ104、デジタル信号コンディショナ106、アナログ・デジタルコンバータ108、アナログ信号コンディショナ110、及びワイヤレスフィールドデバイス12において電力を必要とするような別の構成部品のいずれかに供給する。
【0021】
作動中、アナログ信号コンディショナ110は、トランスデューサ16からプロセス信号を受け取り、フィルタ処理を行う。トランスデューサ16は、図1に示すように、ワイヤレスフィールドデバイス12の内部に配置されてもよいし、外部に設けられて、電線でアナログ信号コンディショナ110と接続するようにしてもよい。フィルタ処理されたプロセス信号は、アナログ・デジタルコンバータ108によってデジタル化され、更に、信号プロセッサ104によって処理を行う前に、デジタル信号コンディショナ106によってフィルタ処理される。ワイヤレスフィールドデバイス12の一実施形態では、特に、トランスデューサ16からの信号が予め調整されている場合、デジタル信号コンディショナ106及びアナログ信号コンディショナ110の一方または両方を省略してもよい。同様に、アナログ・デジタルコンバータ108は、トランスデューサ16がデジタル信号を供給する実施形態の場合に不要となる。トランシーバ102、信号プロセッサ104、デジタル信号コンディショナ106、アナログ・デジタルコンバータ108、及びアナログ信号コンディショナ110は、それぞれ別個の構成部品として説明したが、一実施形態において、これら構成部品の一部または全ての機能を、共用マイクロプロセッサなどの共用ハードウエアで実行するようにしてもよい。また、ワイヤレスフィールドデバイス12は、オペレータがワイヤレスフィールドデバイス12と直接的にやりとりできるようにするための、例えば表示画面及び入力用キーの少なくとも一方を有したローカルオペレータインターフェース(図示せず)を備えていてもよい。ワイヤレスフィールドデバイス12において電力を必要とするような別の構成部品と同様に、このようなローカルオペレータインターフェースも、給電コントローラ112から電力を受け取ることになる。
【0022】
ワイヤレスフィールドデバイス12において電力を必要とする構成部品は、給電コントローラ112から電力を受け取る。一方、給電コントローラ112は、端子ブロック118を介して電力モジュール120から電力を受け取る。端子ブロック118は、電力モジュール120に接続して、電力モジュール120から電力を受け取るように構成された配電部品である。ワイヤレスフィールドデバイス12の内蔵電子回路に応じ、端子ブロック118は、交流電力または直流電力を受け取る。一実施形態において、端子ブロック118は、収容部R内における電力モジュールの固定に用いられる。端子ブロック118は、永続的にワイヤレスフィールドデバイス12に固定されるようにしてもよいし、必要に応じて交換可能として、別の電源との接続を行えるようにするモジュール式の構成部品とすることもできる。
【0023】
電力モジュール120は、エネルギ貯蔵素子122とローカル電源22との双方からの電力を供給するハイブリッド装置となっている。図2aの実施形態に示すように、電力モジュール120Aは、エネルギ貯蔵素子122、外部電源用端子124(端子ネジ126を有する)、電力コンディショナ128、2つの電圧センサ130、電力プロセッサ132、HARTモデム133、メモリ134、及び温度センサ136を備える。一方、図2bの実施形態では、外部電源用端子124に代えて、ローカル電源22を電力モジュール120B内に組み込んでいるので、外部電源用端子124及び端子ネジ126がない。エネルギ貯蔵素子122は、コンデンサ、スーパーキャパシタ、充電式バッテリ、一次電池(充電できないバッテリ)、またはそれ以外の一般的な小型のエネルギ貯蔵素子とすることができる。電力コンディショナ128は、コンデンサ、スイッチング回路、フィルタ部品、及び電圧制限用部品と電流制限用部品との少なくとも一方を備えていてもよい。外部電源用端子124は、図2aに示す実施形態のように、電源接続線24が端子ネジ126を介して電気的に接続固定される導電板または金具などの受電端子である。これに代わる実施形態として、電源接続線24は、別の手段により、外部電源用端子124に挿入または接続されるようにしてもよい。
【0024】
図2a及び図2bでは、エネルギ貯蔵素子122が単体の素子として示されているが、電力モジュール120の一実施形態として、同一形式または異なる形式の複数の別個の電力セルを備えていてもよい。電力コンディショナ128は、エネルギ貯蔵素子122と、外部電源用端子124(図2a)またはローカル電源22(図2b)との双方から電力を受け取る。電力コンディショナ128は、複数の電源から同時に電力を受け取ってもよいし(例えば、エネルギ貯蔵素子122からの電力供給を伴う、ローカル電源22からの電力供給)、別々に電力を受け取ってもよい(例えば、ローカル電源22を使用可能なときには、ローカル電源22からの電力のみ、また外部の電源を使用できないときには、エネルギ貯蔵素子122からの電力を、ワイヤレスフィールドデバイス12に供給)。2つの電圧センサ130は、エネルギ貯蔵素子122と、外部電源用端子124(図2a)またはローカル電源22(図2b)とからの出力に関する電圧計測値を電力プロセッサ132に供給する。電圧センサ130は、それぞれの電源によって電力コンディショナ128に供給される電圧の高さに対応したデジタルまたはアナログ信号を生成し、それにより、それぞれの電源からの電力の使用の可否を示す電圧トランスデューサである。電力プロセッサ132は、検出されたこれらの電圧を用いてローカル電源22及びエネルギ貯蔵素子122を評価し、電力供給における実際の異常や異常の兆候、または変動を診断して、端子ブロック118、及びHARTモデム133並びにHARTモデム105を介し、信号プロセッサ104に診断報告を送信する。一実施形態として、この診断報告によって、(例えば、製造番号、または形式区分を用い)ローカル電源22及びエネルギ貯蔵素子122のそれぞれの識別を行い、いずれかの電源から供給される電圧における予期しない降下を通知し、現状または予測される条件のもとでのエネルギ貯蔵素子122の残存する電力及び使用可能期間の少なくとも一方を推定するようにしてもよい。
【0025】
一実施形態において、電力プロセッサ132は、特有の電圧信号(例えば、特定の電源または電源形式に対応した周波数スペクトル)に基づき、外部電源用端子124の識別を行う。エネルギ貯蔵素子122は、特に、当該エネルギ貯蔵素子122が交換可能な部品(例えば、市販のバッテリセル)であるような電力モジュール120の実施形態の場合、その電圧出力に基づいて、同様に識別または区分することができる。エネルギ貯蔵素子122が永続的に電力モジュール120に組み込まれる場合、電力プロセッサ132は、機械読み取り可能なメモリバンクであるメモリ134から電源IDを取り出すことにより、エネルギ貯蔵素子122を識別する。また、メモリ134は、個々の電源IDまたは電源形式について電圧特性をマッピングしたデータベースと、故障状態または警報状態を診断メッセージにおいて端子ブロック118から信号プロセッサ104及び制御・監視システム26の少なくとも一方に報告するための特定の電圧条件をマッピングしたデータベースとの少なくとも一方も記憶している。
【0026】
一実施形態において、電力プロセッサ132は、電圧センサ130が検出した電圧であるエネルギ貯蔵素子122の出力電圧と、電力プロセッサ132によって得られたエネルギ貯蔵素子122の識別情報、またはメモリ134から得たエネルギ貯蔵素子122の識別情報とに基づき、当該エネルギ貯蔵素子122から使用可能な残存電力を見積もる。この残存電力の見積もりは、信号プロセッサ104及び制御・監視システム26の少なくとも一方への診断報告に含めるようにしてもよいし、現在の使用条件、使用条件の履歴、及び予測される使用条件の少なくとも1つを用い、エネルギ貯蔵素子122の電力を使い切るまでの予測時間に対応した残存使用可能期間の見積もりを得るために使用してもよい。一実施形態において、この残存使用可能期間の見積もりは、エネルギ貯蔵素子122近傍の周囲温度を示す温度計測値を電力プロセッサ132に供給する温度センサである温度センサ136を設けることによって改善される。化学バッテリの消耗率は、特に温度に大きく依存するものであって、温度センサ136を設けることにより、電力プロセッサ132は、著しく精度が向上した消耗率の見積もり、即ちバッテリの残存使用可能期間の見積もりを行うことが可能となる。一実施形態において、メモリ134は、電圧センサ130が検出した、それまでの電圧値の記録を保管することにより、電力プロセッサ132が、履歴の傾向に基づき、エネルギ貯蔵素子122の故障または条件の変化を認識して残存使用可能期間を予測できるようにしてもよい。例えば、電力プロセッサ132は、記録保管された電圧データから、ローカル電源22が、半分の期間だけワイヤレスフィールドデバイス12に電力の全てを供給している(例えば、ローカル電源22が、50%の運転サイクルで作動しているモータに設けられた振動エネルギ捕集装置の場合)と判定することが可能であり、ローカル電源22から供給される電力の現状の使用可否に関わらず、ローカル電源で予測される利用可能状態を考慮した消耗率に基づき、エネルギ貯蔵素子122の残存使用可能期間を見積もることができる。
【0027】
外部電源用端子124、電力コンディショナ128、2つの電圧センサ130、電力プロセッサ132、HARTモデム133、メモリ134、及び温度センサ136は、別個の構成部品として示されているが、様々な実施形態として、これら構成部品のうちのいずれかを組み合わせ、共通のプリント配線基板や、同様の単一構成部品に組み込むようにしてもよい。
【0028】
電力コンディショナ128は、ローカル電源22用に定められた一般的な電力調整を行う小型の部品である。電力コンディショナ128は、例えば、電圧及び電流の少なくとも一方を制限して、ワイヤレスフィールドデバイス12の構成部品を保護する。また、電力コンディショナ128は、ローカル電源22が交流電源である場合に、必要であればAC/DCコンバータを組み入れるようにしてもよい。電力コンディショナ128は、プリント配線基板216の一部として構成されてもよいし、プリント配線基板216に取り付けられる別個の構成部品であってもよい。
【0029】
電力モジュール120は、2つの電力供給源であるエネルギ貯蔵素子122及びローカル電源22から端子ブロック118にエネルギを供給する。背景技術の部分で述べたように、エネルギ捕集装置や太陽電池パネルのような外部電源は、供給可能な電力が制限されることが多い。ローカル電源22の一実施形態では、制限されるものの実質的に一定の電力を供給することが可能であるが、当該電力は、信号プロセッサ104、アナログ信号コンディショナ110、デジタル信号コンディショナ106、アナログ・デジタルコンバータ108、及び特にトランシーバ102を常に駆動するには不十分である。ローカル電源22の別の実施形態として、更に大きな電力を供給可能であるが、電力に信頼性がない場合がある。これらのいずれの実施形態においても、電力モジュール120は、ローカル電源22からの電力を、エネルギ貯蔵素子122からの貯蔵電力で補足し、ワイヤレスフィールドデバイス12において電力を使用する構成部品の電力要求を満たす。ワイヤレスフィールドデバイス12の周囲の環境及び用途に応じ、ワイヤレスフィールドデバイス12が消費する全電力は、多少に関わらず、エネルギ貯蔵素子122またはローカル電源22から供給することができる。ローカル電源22からの電力が比較的少なめまたは信頼性に欠ける場合、ワイヤレスフィールドデバイス12は、エネルギ貯蔵素子122から優先的に電力を受け取り、ローカル電源22からの補足的な電力によって、エネルギ貯蔵素子122の使用可能期間を延ばすことになる。ローカル電源22からの電力が比較的多めで信頼性がある場合、ワイヤレスフィールドデバイス12は、ローカル電源22から優先的に電力を受け取り、エネルギ貯蔵素子122からの補足的な電力により、ローカル電源22からの電力における何らかの遮断または低下への補充がなされることになる。
【0030】
図1に関して上述したとおり、ローカル電源22は、様々な形態をとることができる。一例を示すと、ローカル電源22として作動する振動エネルギ捕集装置は、モータが作動している間(例えば、50%の運転サイクルにより、半分の期間)、ワイヤレスフィールドデバイス12の実質的に全ての電力要求を満たすことができる。モータが作動していないときは、電力モジュール120が、代わりにエネルギ貯蔵素子122からの電力を供給することになる。もう1つの実施形態では、ローカル電源22として作動する熱電エネルギ捕集装置が電力を供給するが、この電力は、連続的であるが微弱であって、信号プロセッサ104、デジタル信号コンディショナ106、アナログ信号コンディショナ110、及びアナログ・デジタルコンバータ108を作動させるには十分であるが、信号を送信中のトランシーバ102を作動させるには不十分である。このような場合には、送信の際の補足電力をエネルギ貯蔵素子122から供給することができる。ローカル電源22が、更に微弱な電力しか供給できなくなった場合には、エネルギ貯蔵素子122が常時全ての構成部品に電力を供給するように要求することもできる。このような場合には、ローカル電源22を含めることにより、エネルギ貯蔵素子122の予想される作動可能期間を延長して交換までの期間を延ばすことが可能となる。3つ目の実施形態では、電力供給網への直接的な接続によってローカル電源22が構成される。このような場合、正常な状態である間は、外部電源により、ワイヤレスフィールドデバイス12の全ての構成部品に十分に電力が供給されることになる。電力供給網が停電した場合、または電力供給網の接続に障害が生じた場合には、エネルギ貯蔵素子122がバックアップ電源として機能することになり、中断することなくワイヤレスフィールドデバイス12を継続して作動させることができる。
【0031】
図2a及び図2bにおいて、端子ブロック118と電力モジュール120とは、別個の構成部品として示されているが、一実施形態として、端子ブロック118と電力モジュール120との機能をまとめて単一の着脱可能な構成部品とし、収容部R内でワイヤレスフィールドデバイス12に装着することも可能であり、そのような単一の構成部品は、ワイヤレスフィールドデバイス12の個々の様式、及びローカル電源22の個々の形式の双方に合致するように選定される。
【0032】
図3は、アンテナ14、ケーシング、即ちハウジング100、カバー116、端子ブロック118、電力モジュール120、エネルギ貯蔵素子122、電線ダクト138、端子ブロック取付ネジ140、端子ブロック取付ネジ孔142、電源取付部144、及び電源コネクタ146を備えた、ワイヤレスフィールドデバイス12の一実施形態の分解斜視図である。
【0033】
図2a及び図2bに関して上述したように、給電コントローラ112は、ワイヤレスフィールドデバイス12において電力を使用する全ての構成部品に電力を供給する。給電コントローラ112は、端子ブロック118が所定の位置に固定されているときに当該端子ブロック118と電気的に接続された電源コネクタ146を介し、端子ブロック118から電力を受け取る。電源コネクタ146は、例えば、端子ブロック118に設けられた凹部またはジャックに接続されるように対応して設けられた複数の導電ピンを備えていてもよい。更に、電源コネクタ146は、(図2a及び図2bに関して上述したように)診断報告を電力モジュール120から給電コントローラ112に中継する。この診断報告は、デジタル信号及びアナログ信号のいずれであってもよい。図3に示すように、端子ブロック118は、電源コネクタ146に接した状態で、端子ブロック取付ネジ140によって固定される。端子ブロック取付ネジ140は、ハウジング100に形成された端子ブロック取付ネジ孔142に締め付けられることにより、端子ブロック118を着脱可能に固定するネジである。端子ブロック取付ネジ140によって端子ブロック118が固定されるように図示しているが、これに代わる実施形態として、差込ピンもしくはねじ込みピン、または係合もしくは嵌合などによる別の手段を、端子ブロック118の固定に用いるようにしてもよい。これに代わる実施形態として、端子ブロック118は、収容部R及び内部空間Iが共有するハウジング100の壁面に永続的に固定または取り付けられる固定式の構成部品であってもよい。端子ブロック118は、1以上の端子を介して交流電力または直流電力を受電するように構成される。この端子は、電力モジュール120に隣接する平坦な導電性接点の形態をとるようにしてもよい。また、図示した実施形態において、端子ブロック118は、HARTモデム105とHARTモデム133との間でやりとりするHART信号を中継するように構成されている。
【0034】
この実施形態によれば、電力モジュール120は、電源取付部144を用いて端子ブロック118に固定される。電源取付部144は、端子ブロック118に突設されたスリーブが取り囲む電気接点として示されており、このスリーブが電力モジュール120に係合または嵌合することにより、電力モジュール120との電気的接続が行われる。別の実施形態として、電源取付部144は、任意の一般的な電気的接続を行いながら、電力モジュール120を端子ブロック118に固定するためのフック、ネジ、ラッチ、またはそれ以外の一般的な固定手段を備えていてもよい。電源取付部144は、カバー116がない状態にあるとき(例えば、収容部R内の構成部品の着脱を行うためにカバー116を取り外したとき)、電力モジュール120を保持する。但し、図4a及び図4bに関して後述するように、カバー116により、端子ブロック118への電力モジュール120の保持を補助するようにしてもよい。端子ブロック118は、必要であれば、電力調整を行って電圧または電流を調整し、電力モジュール120から受け取った電力を変換または整流するようにしてもよい。電力モジュール120は、ローカル電源22及びエネルギ貯蔵素子122の少なくとも一方からの電力を供給する。電力モジュール120から供給される電力は、ローカル電源22のみから、またはエネルギ貯蔵素子122のみから出力されたものであってもよいし、これらの双方を組み合わせて出力されたものであってもよい。一実施形態として、エネルギ貯蔵素子122は、コンデンサまたは充電式バッテリなどの充電可能な電源であってもよく、ローカル電源22からの電力で充電されるようにしてもよい。
【0035】
図2a及び図2bに関して上述したように、エネルギ貯蔵素子122は、一般的なバッテリまたはスーパーキャパシタであってもよい。エネルギ貯蔵素子122は、係合またはその他の一般的な固定機構を用いて電力モジュール120に着脱可能に組み付けられるようになっている。別の実施形態として、エネルギ貯蔵素子122は、電力モジュール120内に完全に格納されるようにしてもよいし、着脱は可能及び不可能のいずれであってもよい。
【0036】
電力モジュール120は、ローカル電源22からの電力を受電する電源接続線24のための接続部を備えている。この接続部は、端子ネジ126(図2a及び図4a参照)、または外部電源用端子124への電気的接続を行うための任意の同様な取付手段を備えていてもよい。端子ネジ126は、電源接続線24の1以上の電線をプリント配線基板216に接続固定するために用いられる導電性の固定部材である。電源接続線24がフックまたは環状部を有する場合、端子ネジ126及びプリント配線基板216は、これらのフックまたは環状部を接続して、電源接続線24を電力モジュール120に固定する。電源接続線24の形式に応じて(即ち、ローカル電源22に対応して)、端子ネジ126は、プラグ、クリップ、またはその他の取付手段に置き換えることができる。図3では、外部に設ける実施形態としてのローカル電源22に電力モジュール120を接続するための端子ネジ126が示されているが、これに代え、電力モジュール120がローカル電源22b(図2b参照)を備えるようにしてもよい。このようなローカル電源22bは、電力モジュール120内に配置してもよいし、カバー116の内側に嵌め込むようにして、電力モジュール120の外側に取り付けてもよい。
【0037】
図2a及び図2bに示す実施形態について上述したように、カバー116は、密封状態でハウジング100に接合することにより、収容部R内の構成部品(例えば、端子ブロック118及び電力モジュール120)を保護する。電力モジュール120は、カバー116の内側にあって、端子ブロック118と接した状態で、収容部Rの内側にぴったり嵌め込まれている。ローカル電源22は、電源接続線24を介して電力モジュール120に接続されており(図2a及び図2b参照)、電源接続線24は、電線ダクト138を通って収容部R内に延び、端子ネジ126(または類似の固定部材)に固定される。上述したとおり、電力モジュール120は電力コンディショナ128を備え、この電力コンディショナ128は、ワイヤレスフィールドデバイス12において電力を必要とする構成部品が使用できるように、ローカル電源22及びエネルギ貯蔵素子122からの電力を調整する。電力モジュール120は、電源コネクタ146を介し、信号プロセッサ104及び制御・監視システム26の少なくとも一方に診断報告を供給する。
【0038】
図4a及び図4bは、電力モジュール120の一実施形態を異なる2方向から見た分解斜視図である。電力モジュール120は、エネルギ貯蔵素子122、端子ネジ126、ケーシング前部202、ケーシング後部204、柱状端子206、エネルギ貯蔵素子用取付部材208、摩擦嵌合部210、支持部212、固定用環状部214、及びプリント配線基板216を備えている。
【0039】
この実施形態において、電力モジュール用ケーシング200は、プリント配線基板216を取り囲むと共に、ワイヤレスフィールドデバイス12の収容部Rの中に、端子ネジ126及びエネルギ貯蔵素子122をしっかりと支持する硬質の保護用収納部材である。図示した実施形態において、プリント配線基板216は、外部電源用端子124、電力コンディショナ128、電圧センサ130、電力プロセッサ132、メモリ134、及び温度センサ136が全て設けられた回路基板またはマイクロプロセッサ基板である。これに代わる実施形態として、これら構成部品の一部または全部は、電力モジュール用ケーシング200内に収容された個別の部品であってもよい。
【0040】
柱状端子206は、プリント配線基板216にある電力コンディショナ128から、ケーシング前部202の摩擦嵌合部210を通って延設され、端子ブロック118の電源取付部144(図3参照)との電気的接続を形成する導電性の柱状部材である。摩擦嵌合部210は、ケーシング前部202の接続部材であって、電源取付部144の中に延びて、電源取付部144と機械的に結合することにより、電力モジュール120を端子ブロック118に固定する。摩擦嵌合部210は、電源取付部144にしっかりと結合するための1以上のスナップリングまたは同等の部材を備えていてもよい。
【0041】
この実施形態において、エネルギ貯蔵素子用取付部材208は、一般的な嵌め込み式のバッテリケース、またはエネルギ貯蔵素子122を固定するための同等の手段である。エネルギ貯蔵素子用取付部材208は、ケーシング後部204に固定され、エネルギ貯蔵素子122の機械的な保持及び電気的接続の両方を行う。上述したように、エネルギ貯蔵素子122は、専用のエネルギ供給素子、既製のバッテリ、スーパーキャパシタ、または同等の任意のエネルギ貯蔵素子とすることができる。エネルギ貯蔵素子用取付部材208の大きさ及び形状は、選定されたエネルギ貯蔵素子122の形式に応じて変更することができる。エネルギ貯蔵素子用取付部材208により、エネルギ貯蔵素子122とプリント配線基板216にある電力コンディショナ128との電気的接続がなされる。
【0042】
ケーシング後部204は、プリント配線基板216から離間する方向に延設された実質的に硬質の部材の支持部212を備えており、この支持部212は、収容部R内にぴったり嵌まり込むようにしてカバー116(図3参照)に組み付けられる。このような嵌合により、摩擦嵌合部210を電源取付部144に位置決めして保持することが容易になる。図示した実施形態において、支持部212は、ケーシング後部204の最も外側の面から隆起した環状隆起部である固定用環状部214を備えている。固定用環状部214は、カバー116の内側に相補的に設けられたリングまたは波形ばね(図示せず)に接合する大きさを有しており、これにより、振動に抗して、電力モジュール120を端子ブロック118とカバー116との間に固定する。端子ネジ126は、ケーシング後部204を貫通してプリント配線基板216内まで延在することにより、電源接続線24とローカル電源22との電気的接続をもたらす。ローカル電源22が収容部R内に収納されるようなワイヤレスフィールドデバイス12の実施形態(図2bに関して上述したローカル電源22bを参照)については、プリント配線基板216とローカル電源22との直接的な接続(ローカル電源22が電力モジュール120内に設けられる場合)、またはエネルギ貯蔵素子用取付部材208と同様の考え方でローカル電源22との着脱可能な接続(ローカル電源22が着脱可能に電力モジュール120に取り付けられる場合)を行うことにより、端子ネジ126を省略してもよい。これに代えて、ケーシング後部204とカバー116との間に収納された完全に別個のローカル電源22にプリント配線基板216を接続するために、端子ネジ216または類似の取付部材を用いるようにしてもよい。この最後に述べた実施形態の場合、支持部212を縮小して、ローカル電源22のための空間を設けるようにしてもよい。
【0043】
ローカル電源22を収容部Rの中に収容するか否かに関わらず、ローカル電源22から優先的に電力を取り出し、ローカル電源22からの電力が使用できないとき、またはワイヤレスフィールドデバイス12の電力要求を満たすには不十分であるときには、エネルギ貯蔵素子122から補足的に電力を取り出すような電気的接続が、電力モジュール120によって得られる。個々の用途または設置場所により、ローカル電源22及びエネルギ貯蔵素子122のいずれかが、ワイヤレスフィールドデバイス12が必要とする電力の大部分を供給することになることもあるが、可能であれば、エネルギ貯蔵素子122が枯渇する前に、ワイヤレスフィールドデバイス12がローカル電源22から電力を取り出すようにするのが好ましい。それぞれの電源からの電力は、必要に応じて電力コンディショナ128が調整し、必要であれば、ローカル電源22及びエネルギ貯蔵素子122からの電力が変換または整流される。このようにして、電力モジュール120は、ローカル電源22からの電力の使用の可能性が変動しても、エネルギ貯蔵素子122の使用可能期間を延長しつつ、ワイヤレスフィールドデバイス12に必要な電力を継続的に供給することができる。
【0044】
図5は、ローカル電源22及びエネルギ貯蔵素子122の電力供給状態を監視する方法300のフローチャートである。より具体的には、電力モジュール120によって診断報告が集められ、信号プロセッサ104及び制御・監視システム26の少なくとも一方に送信される方法の一実施形態が、方法300によって示されている。
【0045】
図2a及び図2bに関して上述したように、電力プロセッサ132は、エネルギ貯蔵素子122の出力電圧と、外部電源用端子124またはローカル電源22の出力電圧とを監視するが、それぞれの電源の識別情報と、エネルギ貯蔵素子122について予測される残存エネルギまたは残存使用可能期間と、ローカル電源22またはエネルギ貯蔵素子122における故障または状態変化を示す故障通知または警報とのうちの少なくとも1つを報告するのが好ましい。図示した実施形態において、電力プロセッサ132は、まず初めに、電力モジュール120の電力モジュールIDを、メモリ134から取得する(ステップS1)。この電力モジュールIDには、製造番号、容量、または型式などのエネルギ貯蔵素子122の識別情報が含まれる。次に、電力プロセッサ132は、ローカル電源22についても、その出力電圧特性(例えば、振幅、またはフーリエ変換された周波数特性)を、メモリ134に格納された特性データベースに保管されている特性と照合することによって識別を行う(ステップS2)。エネルギ貯蔵素子122が、一体組込部品ではなく、着脱可能な部品であるような電力モジュール120の実施形態では、エネルギ貯蔵素子122についても、メモリ134から直接的に識別情報を取得するのではなく、検出した電圧特性に基づいて、同様に識別を行うようにしてもよい。電力プロセッサ132は、検出したエネルギ貯蔵素子122の出力電圧の瞬時値、及びある期間のエネルギ貯蔵素子122の出力電圧の変化の少なくとも一方を、ステップS1で取得した識別情報に付随してメモリ134内にある予測値と比較することにより、エネルギ貯蔵素子122の出力電圧が異常であるか否かの判定を行う(ステップS3)。エネルギ貯蔵素子122が、閾値を下回る電力欠乏状態を示す低電圧、または完全放電状態の前兆となる低電圧などの、異常な出力電圧を示している場合、電力プロセッサ132は、エネルギ貯蔵素子122の故障の通知を生成する(ステップS4)。一実施形態として、電力プロセッサ132は、エネルギ貯蔵素子122の様々な状態(例えば、短絡、バッテリ50%放電状態、バッテリ90%放電状態、閾値を上回る予期せぬ急速消耗など)に対応して、複数の異なるエネルギ貯蔵素子警報の通知を生成することができるようにしてもよい。電力プロセッサ132は、同様に、検出した外部電源用端子124の出力電圧(図2aの実施形態の場合)、または検出したローカル電源22の出力電圧(図2bの実施形態の場合)に基づき、ローカル電源22の出力電圧、またはある期間におけるローカル電源22の出力電圧の変化が異常であるか否かを判定する(ステップS5)。異常な出力電圧は、例えばローカル電源22の故障、またはローカル電源22からの電力が不十分であることに対応したものとすることができる。エネルギ貯蔵素子122の場合のように、電力プロセッサ132は、ローカル電源22における様々な故障または変化についての通知を生成する(ステップS6)。エネルギ貯蔵素子122及びローカル電源22の故障または警報の通知は、メモリ134に保管される。これらの通知は、一時的に保管するだけであってもよいし、後に詳細な診断を行うためにメモリ134に記録を残すようにしてもよい。
【0046】
また、電力プロセッサ132は、2つの電圧センサ130から得たそのときの電流計測値及び電圧計測値の履歴と、ステップS1及びステップS2で得たローカル電源22及びエネルギ貯蔵素子122の識別情報と、温度センサ136から得た計測値とに基づき、エネルギ貯蔵素子122の残存充電量と予測される消耗率とを見積もることにより、エネルギ貯蔵素子122の予測される残存使用可能期間を算出するのが好ましい(ステップS7)。次に、電力プロセッサ132は、見積もった残存使用可能期間と、故障または警報の通知とを含む診断報告を、信号プロセッサ104及び制御・監視システム26の少なくとも一方に、端子ブロック118を介して送信する(ステップS8)。一実施形態として、この診断報告には、ステップS1及びステップS2で得た識別情報と、ステップS7で得た残存充電量及び予測される消耗率の見積もり結果とを含めるようにしてもよい。診断報告は、例えば、電力プロセッサ132が端子ブロック118に供給する電圧調整値を含むようにしてもよい。
【0047】
具体的な実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であると共に、均等物で本発明の各構成要素を置き換えることが可能であることが当業者に理解されよう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況やものを本発明の教示に適合させるための様々な変形が可能である。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内に包含される全ての態様を含むものである。
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5