(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654564
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】高表面積の機能性材料被覆構造体
(51)【国際特許分類】
C04B 38/06 20060101AFI20200217BHJP
B01J 23/52 20060101ALI20200217BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20200217BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20200217BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20200217BHJP
C01B 33/12 20060101ALI20200217BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20200217BHJP
B22F 3/11 20060101ALI20200217BHJP
C22C 1/08 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
C04B38/06 DZNM
B01J23/52 M
B01J32/00
B01J35/02 J
B01J35/02 A
B01J35/10
C01B33/12 Z
C23C28/00 A
B22F3/11 B
C22C1/08 D
【請求項の数】26
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-524298(P2016-524298)
(86)(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公表番号】特表2016-531066(P2016-531066A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】US2014044939
(87)【国際公開番号】WO2014210608
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年6月27日
(31)【優先権主張番号】61/840,991
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジョアンナ・アイゼンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】タニア・シャーマン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ボーゲル
(72)【発明者】
【氏名】マサイアス・コル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・アイゼンバーグ
【審査官】
谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/078351(WO,A2)
【文献】
Jeong Ho Ryu et al,Fabrication of Ag nanoparticles-coated macroporous SiO2 structure by using polystyrene spheres,Materials Chemistry and Physics,2007年,vol.101 ,p.486-491
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/06
C04B 35/00−35/84
B01J 21/00−38/74
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造体の作製方法であって、
ナノ材料修飾犠牲粒子を得るために、1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料を犠牲粒子の表面に付着させること、ここで、複数のナノメーターサイズの機能性材料が前記犠牲材料の代表寸法の5%未満の寸法を有し、
前記ナノ材料修飾犠牲粒子を集合体へ配列させること、ここで、該集合体は、前記ナノ材料修飾犠牲粒子間に空孔の相互接続間隙空間を有する、ナノ材料修飾犠牲粒子の配列を含み、
前記の空孔の相互接続間隙空間を満たす材料で前記集合体を充填すること、
空孔の相互接続ネットワークを規定する固体材料の相互接続ネットワークを含む、相互接続多孔質ネットワーク構造体を形成するために、前記犠牲粒子を除去すること、を含み、
前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、前記空孔の相互接続ネットワークと、前記空孔の相互接続ネットワークを規定する前記の固体材料の相互接続ネットワークとの間の界面に主に存在する、該作製方法。
【請求項2】
前記犠牲粒子がコロイド粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記相互接続多孔質ネットワーク構造体が、50%より大きい空孔率を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、金、パラジウム、白金、銀、銅、ロジウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、鉄、コバルト、ニッケルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、シリコン、ゲルマニウム、スズ、III族元素またはV族元素がドープされたシリコン、III族元素またはV族元素がドープされたゲルマニウム、III族元素またはV族元素がドープされたスズ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、ベリリア、シリカ、アルミナ、貴金属酸化物、白金族金属酸化物、チタニア、ジルコニア、ハフニア、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化クロム、スカンジウム、イットリウム、ランタン及び希土類酸化物、トリウム、ウラン酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、貴金属および他の金属、ヘテロポリ酸またはそれらの組み合わせを含む、混合金属酸化物(MMOs)を含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、純粋および混合金属硫化物、他のカルコゲニド、窒化物、他のプニクチドおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、化学反応触媒を含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記の固体材料の相互接続ネットワークが、結晶性逆オパール構造である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記の固体材料の相互接続ネットワークが、不規則性相互接続構造である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記固体材料は、アルミナ、シリカ、チタニア、無機ゾルゲル由来酸化物、ポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、デンドリチックポリマー、超分子ポリマー、金属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記犠牲粒子は、ポリスチレン(PS)コロイド粒子、シリカ粒子、アクリル粒子、アルキルアクリレート粒子、置換アルキルアクリレート粒子、ポリ(ジビニルベンゼン)粒子、ポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、デンドリチックポリマー、超分子ポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記の固体材料のネットワークと前記の空孔のネットワークとの間の界面に主として存在する連続シェルを形成するための成長溶液を用意することをさらに含む、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
犠牲粒子の表面に付着した前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料を成長させる成長溶液を用意することをさらに含む、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料の成長がナノシェルを形成する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記の配列と前記の充填が同時に行われる、請求項1〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記の配列と前記の充填が、エマルションテンプレート法を用いて行われる、請求項1〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記の固体材料の相互接続ネットワークと前記の空孔の相互接続ネットワークとの間の界面に主として存在する、前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料に追加の機能性材料を用意することをさらに含む、請求項1〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
空孔の相互接続ネットワークを規定する固体材料の相互接続ネットワークであって、前記の固体材料の相互接続ネットワークが結晶性逆オパール構造を有する該固体材料の相互接続ネットワークと、
前記の空孔の相互接続ネットワークと、前記の空孔の相互接続ネットワークを規定する前記の固体材料の相互接続ネットワークとの界面に主として存在するナノ粒子とを含み、
前記ナノ粒子が、前記の空孔の相互接続ネットワークの代表寸法の5%未満の寸法を有する、相互接続多孔質ネットワーク構造体。
【請求項21】
前記ナノ粒子は、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、混合金属酸化物ナノ粒子、金属硫化物ナノ粒子、金属カルコゲニドナノ粒子、金属窒化物ナノ粒子、金属プニクタイドナノ粒子およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20記載の相互接続多孔質ネットワーク構造体。
【請求項22】
前記ナノ粒子は、金、パラジウム、白金、銀、銅、ロジウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、鉄、コバルト、ニッケル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20記載の相互接続多孔質ネットワーク構造体。
【請求項23】
前記ナノ粒子は、シリコン、ゲルマニウム、スズ、III族元素またはV族元素がドープされたシリコン、III族元素またはV族元素がドープされたゲルマニウム、III族元素またはV族元素がドープされたスズ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20記載の相互接続多孔質ネットワーク構造体。
【請求項24】
前記ナノ粒子は、化学反応触媒を含む、請求項20記載の相互接続多孔質ネットワーク構造体。
【請求項25】
前記ナノ粒子は、シリカ、アルミナ、ベリリア、貴金属酸化物、白金族金属酸化物、チタニア、ジルコニア、ハフニア、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化クロム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリア、および希土類酸化物、トリウムおよびウラン酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20〜24のいずれか1つに記載の相互接続多孔質ネットワーク構造体。
【請求項26】
前記固体材料は、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、ハフニア、無機ゾルゲル由来酸化物、ポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、分岐ポリマー、星状ポリマー、デンドリチックポリマー、超分子ポリマー、金属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20〜25のいずれか1つに記載の相互接続多孔質ネットワーク構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
著作権表示
本特許明細書は、著作権保護の対象となる内容を含む場合がある。米国特許商標庁の特許ファイルまたは記録にある通りに第三者が特許文献または特許明細書を複製することには著作権所有者は異議を唱えるものではないが、それ以外は、いずれかおよびすべての著作権を留保する。
【0002】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2013年6月28日に出願された、米国特許出願第61/840,991号の先出願日の利益を主張するものであり、出典明示により、そのすべての内容が本明細書に組み入れられる。
【0003】
出典明示による組み入れ
本明細書に記載の発明の日付の時点における技術水準として当業者に知られている該技術水準をより十分に説明するため、本明細書で引用されたすべての特許、特許出願および刊行物は、出典明示により、そのすべての内容が本明細書に組み入れられる。
【0004】
本発明の分野
本出願は、機能性材料で被覆された高表面積構造体に関する。さらに詳しくは、本出願は、触媒用途、光学用途、抗菌用途、センシング用途等に有用な、機能性材料で被覆された高表面積構造体に関する。
【背景技術】
【0005】
多くの様々な用途で、機能性材料が用いられている。一般的に、この機能性材料を活性にするには、この機能性材料を対象材料(例えば、反応物や分析物)に接触させる必要がある。特に、もし固体支持体が必要であり、機能性材料が固体支持体に添加されても、機能性材料を完全に包み込む固体支持体材料の中にほとんどの機能性材料が埋め込まれてしまったり、あるいは別の理由(凝集、化学的状態の変化、または両方)で十分に活性な状態ではないため、多くの機能性材料が接触不能の状態であった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施形態では、本開示は、多孔質構造の作製方法に関する。本方法は、ナノ材料修飾犠牲粒子を得るために、1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料を犠牲粒子の表面に付着させること、ここで、複数のナノメーターサイズの機能性材料が前記犠牲材料の代表寸法の7.75%未満の寸法を有し;前記ナノ材料修飾犠牲粒子を集合体へ配列させること、ここで、該集合体は、前記ナノ材料修飾犠牲粒子間に空孔の相互接続間隙空間を有する、ナノ材料修飾犠牲粒子の配列を含み;前記の空孔の相互接続間隙空間を満たす材料で前記集合体を充填すること;および空孔の相互接続ネットワークを規定する固体材料の相互接続ネットワークを含む、相互接続多孔質ネットワーク構造体を形成するために、前記犠牲粒子を除去することを含み;前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、空孔の相互接続ネットワークを規定する前記の固体材料の相互接続ネットワークの表面上に主に存在する。
【0007】
ある実施形態では、前記犠牲粒子はコロイド粒子を含む。
【0008】
ある実施形態では、前記相互接続多孔質ネットワーク構造体は50%より大きい空孔率を有する。
【0009】
ある実施形態では、前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、金、パラジウム、白金、銀、銅、ロジウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、鉄、コバルト、ニッケルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
ある実施形態では、前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、シリコン、ゲルマニウム、スズ、III族元素またはV族元素がドープされたシリコン、III族元素またはV族元素がドープされたゲルマニウム、III族元素またはV族元素がドープされたスズ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0011】
ある実施形態では、前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、ベリリア、シリカ、アルミナ、貴金属酸化物、白金族金属酸化物、チタニア、ジルコニア、ハフニア、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化クロム、スカンジウム、イットリウム、ランタンおよび希土類酸化物、トリウム、ウラン酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
ある実施形態では、前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、貴金属および他の金属、ヘテロポリ酸またはそれらの組み合わせを含む、混合金属酸化物(MMOs)を含む。
【0013】
ある実施形態では、前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、純粋および混合金属硫化物、他のカルコゲニド、窒化物、他のプニクチドおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
ある実施形態では、前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料が、化学反応触媒を含む。
【0015】
ある実施形態では、前記の固体材料の相互接続ネットワークが、結晶性逆オパール構造である。
【0016】
ある実施形態では、前記の固体材料の相互接続ネットワークが、不規則性相互接続構造である。
【0017】
ある実施形態では、前記固体材料は、アルミナ、シリカ、チタニア、無機ゾルゲル由来酸化物、ポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、デンドリチックポリマー、超分子ポリマー、金属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
ある実施形態では、前記犠牲粒子は、ポリスチレン(PS)コロイド粒子、シリカ粒子、アクリル粒子、アルキルアクリレート粒子、置換アルキルアクリレート粒子、ポリ(ジビニルベンゼン)粒子、ポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、デンドリチックポリマー、超分子ポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
ある実施形態では、本方法は、前記の固体材料のネットワークと前記の空孔のネットワークとの間の界面に主として存在する連続シェルを形成するための成長溶液を用意することをさらに含む。
【0020】
ある実施形態では、本方法は、犠牲粒子の表面に付着した前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料を成長させる成長溶液を用意することをさらに含む。
【0021】
ある実施形態では、前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料の成長がナノシェルを形成する。
【0022】
ある実施形態では、前記の配置と前記の充填が同時に行われる。
【0023】
ある実施形態では、前記の配置と前記の充填が、エマルションテンプレート法を用いて行われる。
【0024】
ある実施形態では、本方法は、前記の固体材料の相互接続ネットワークと前記の空孔の相互接続ネットワークとの間の界面に主として存在する、前記の1つ以上のナノメーターサイズの機能性材料に追加の機能性材料を用意することをさらに含む。
【0025】
ある実施形態において、本開示は、空孔の相互接続ネットワークを規定する固体材料の相互接続ネットワークであって、前記の相互接続固体材料が結晶性逆オパール構造を有する固体材料の相互接続ネットワークと、空孔の相互接続ネットワークを規定する前記の固体材料の相互接続ネットワークの表面に主として存在するナノ粒子とを含む、相互接続多孔質ネットワーク構造体に関する。
【0026】
ある実施形態では、前記ナノ粒子は、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、混合金属酸化物ナノ粒子、金属硫化物ナノ粒子、金属カルコゲニドナノ粒子、金属窒化物ナノ粒子、金属プニクタイドナノ粒子およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
ある実施形態では、前記ナノ粒子は、金、パラジウム、白金、銀、銅、ロジウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、鉄、コバルト、ニッケル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0028】
ある実施形態では、前記ナノ粒子は、シリコン、ゲルマニウム、スズ、III族元素またはV族元素がドープされたシリコン、III族元素またはV族元素がドープされたゲルマニウム、III族元素またはV族元素がドープされたスズ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
ある実施形態では、前記ナノ粒子は、化学反応触媒を含む。
【0030】
ある実施形態では、前記ナノ粒子は、シリカ、アルミナ、ベリリア、貴金属酸化物、白金族金属酸化物、チタニア、ジルコニア、ハフニア、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化クロム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリア、および希土類酸化物、トリウムおよびウラン酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0031】
ある実施形態では、前記固体材料は、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、ハフニア、無機ゾルゲル由来酸化物、ポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、分岐ポリマー、星状ポリマー、デンドリチックポリマー、超分子ポリマー、金属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0032】
ある実施形態では、前記の固体材料のネットワークと前記の空孔のネットワークとの間の界面に主として存在する連続シェルを形成することを含むまで、前記ナノ粒子の大きさを成長させる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することで、目的および利点が明らかになるであろう。なお、全体を通して、同じ部分には同じ参照符号を付けた。
【0034】
【
図1】
図1は、ある実施形態に基づくもので、空気/固体界面のみに存在するナノ粒子を有する、相互接続多孔質ネットワーク構造体の作製方法を示す模式図である。
【0035】
【
図2】
図2A−2Cは、ある実施形態に基づくもので、犠牲粒子として球状コロイド粒子を用いること、および空気/固体界面のみに存在するナノ粒子を有する、相互接続多孔質ネットワーク構造体を形成するための結合方法を用いることの例である。
【0036】
【
図3】
図3A−3Cは、ある実施形態に基づくもので、異なるサイズの金属ナノ粒子で修飾されたコロイド粒子の画像を示す。
【0037】
【
図4】
図4A−4Iは、ある実施形態に基づくもので、ナノ粒子の大きさに応じて得られる長距離秩序の変化の程度を示す。
【0038】
【
図5】
図5A−5Cは、ある実施形態に基づくもので、相互接続多孔質構造の空気/固体界面に存在する金属ナノ粒子の成長を示す。
【0039】
【
図6】
図6A−6Bは、ある実施形態に基づくもので、空気/固体界面のみに存在する2つの異なるナノ粒子を有する階層的な相互接続多孔質ネットワーク構造体の形成方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
犠牲テンプレート集合体から合成された三次元(3D)相互接続多孔質構造は、明確に定義された空孔サイズを有する高表面積と、多孔質ネットワークのアクセシビリティとを有する、高度の相互接続空孔を提供する。それらの構造は、センシングと触媒の用途に対する有望な候補である。機能性ナノ粒子を相互接続多孔質構造体に導入することで、光学特性、センシング特性、および触媒特性等の所望の特性を付与できる。一般的に、そのような粒子は、予備成形された多孔質ネットワークにナノ粒子(例えば金属粒子)を含む溶液を浸透させることにより導入することができ、あるいは、ポリマーコロイド、マトリックス材料(例えばシリカ)、およびナノ粒子を同時に集合させる、三相コーアセンブリー堆積法により導入することができる。前者では、ナノ粒子の低い表面密度と弱い界面接着が観察され、後者では、ナノ粒子の多くがマトリックス材料内部に完全に埋め込まれた状態にあり、金属ナノ粒子のいくつかの小部分が空気/固体界面に位置できるようにするためには、多くの担持量が必要であった。
【0041】
本願は、例えば逆オパール構造等の空孔の相互接続構造を規定する、相互接続固体材料の表面上へのナノ粒子分布の正確な制御を提供する。特に、空孔の相互接続ネットワークを規定する相互接続固体材料ネットワークの空気/固体界面に金属ナノ粒子を配置することができるので、ナノ粒子の高いアクセシビリティが得られ、かつ触媒、センサ、および表面増強ラマン分光(SERS)の基材としてのそれらの有効利用性を顕著に高めることができる。
【0042】
本明細書で用いられる場合、“相互接続構造体”は、少なくとも2つの異なる連続相を有する構造体を意味している。“相互接続多孔質ネットワーク構造体”は、少なくとも1つの連続空孔相と、少なくとも1つの連続固体材料相とを有する構造体を意味している。
【0043】
ある実施形態では、相互接続多孔質ネットワーク構造体は、立方最密充填構造(例えば74%)に近い、70体積%を超える空孔率を有している。ある実施形態では、相互接続多孔質ネットワーク構造体は、立方構造または六方構造またはランダム構造のように、50または53体積%より大きい空孔率を有している。ある実施形態では、空孔率は80%より大きく、または80%より90%より大きい(例えば、固体材料内部により大きい空孔率を付与できるメソポーラスシリカを用いることにより)。ある実施形態では、相互接続多孔質ネットワーク構造体は、空孔直径のバラツキが5%未満である正確に制御された空孔サイズを有している。
【0044】
図1は、ナノ粒子を連続固体の表面上に主に配置するための(すなわち、相互接続多孔質ネットワーク構造体の空気−固体界面に主に)模式図である。
図1に示すように、犠牲粒子が用意され、それらは、ナノ粒子に付着することができる官能基を既に有していてもよく、あるいは必要に応じてその官能基を付与することができる。図に示すように、犠牲粒子の形状は、球状またはランダム等、特に限定されない。犠牲粒子の別の形状は、当業者には容易に明らかであろう。
【0045】
図2Aは、ナノ粒子に付着可能な官能基を有する球状コロイド粒子(例えば、ポリスチレン“PS”)が形成される1つの例を示している。
図2Aの模式図は、1つの例示であり、PS表面にカルボキシル基が付与され、次に2−アミノエタンチオールで修飾することで、コロイド表面にチオール官能基が導入される。
【0046】
次に、
図1に示すように、犠牲粒子の表面にナノ粒子を結合させることができる。ある実施形態では、結合させる材料の種類に応じて、共有結合(例えば、チオール基を介する金属ナノ粒子の結合)、供与結合(例えば、広範囲の無機配位子または有機配位子との錯体形成、あるいは有機金属部分を介する錯体形成)または反対に荷電したコロイドとナノ粒子との間の静電引力等の種々の結合機構を用いて、1つ以上の機能性材料で犠牲材料の表面を修飾することができる。
図2Aは、ポリスチレン(PS)コロイド粒子が犠牲粒子として用いられ、そのコロイドの表面に(例えばPS)に官能基(例えばチオール基)を介して金ナノ粒子が共有結合している例を示している。
【0047】
図2Bは、Au−S共有結合を介してナノ粒子が表面に結合したポリスチレン(PS)の一例を示している。
図2Bでは、金ナノ粒子の平均直径は約12nmであり、PSコロイド粒子の平均直径は約480nmである。
【0048】
図2Aと
図2Bでは、具体例として、PSコロイド粒子と金ナノ粒子が記載されているが、多くの別の種類の材料を用いることができる。例えば、ある実施形態では、シリカ粒子、ポリメチルメタクリレート粒子(PMMA)、他のアクリレート、アルキルアクリレート、置換アルキルアクリレート、架橋PSまたはPMMA粒子又はポリ(ジビニルベンゼン)粒子を犠牲粒子として用いることができる。異なる構造の他のポリマー、ランダムおよびブロックポリマー、分岐ポリマー、星状ポリマー、デンドリチックポリマー、超分子ポリマー等を犠牲粒子として用いることができる。これら犠牲粒子の大きさは、約50nmから約数十または約数百ミクロンの範囲である。いくつかの例示的な大きさは、特定の光学特性または重力の影響を大きく受けない向上した集合特性のいずれかを提供するために、100nmから約1000nmである。ある実施形態では、大きさは、約100nmから約500nmの範囲である。当業者には明らかであるように、他の犠牲粒子を用いることもできる。
【0049】
ある実施形態では、ナノ粒子は、金属(例えば、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、コバルト、鉄、ニッケル、オスミウム、イリジウム、レニウム、銅、クロム、バイメタル、金属合金等、およびそれらの組み合わせ)ナノ粒子、半導体(例えば、シリコン、ゲルマニウム等、純粋なものまたはIII族元素またはV族元素の元素または化合物でドープされたもの、およびそれらの組み合わせ)ナノ粒子、金属酸化物(例えば、V
2O
5、シリカ、アルミナ、貴金属酸化物、白金族金属酸化物、チタニア、ジルコニア、ハフニア、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化レニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化クロム、スカンジウム、イットリウム、ランタン酸化物及び希土類酸化物、トリウム酸化物およびウランの酸化物等)ナノ粒子、金属硫化物ナノ粒子、またはそれらの組み合わせを含む。
【0050】
ある実施形態では、所望のナノ粒子の選択は、特定の所望の特性を付与できることに基づいて行うことができる。例えば、PdまたはPt、他の貴金属粒子または金属酸化物粒子は、触媒特性を付与でき、一方、Ag、銅または酸化物(例えばV
2O
5)ナノ粒子は、抗菌特性を付与できる。他のナノ粒子、半導体特性のための半導体ナノ粒子、磁気特性のための磁性ナノ粒子、および/または光学特性のための量子ドット等も必要に応じて用いることができる。
【0051】
ある実施形態では、1より大きい異なる種類のナノ粒子をコロイド粒子上に用意できる。例えば、PdとPtの両方の(または、触媒活性金属の別の二元、三元または高次の所望の組合せ)ナノ粒子を、異なる反応物に対して異なる触媒特性を付与するために用意することができる。そのようなナノ材料修飾コロイド粒子は、第1ナノ粒子(例えばPd)と第2ナノ粒子(例えばPt)の混合物と、並びに追加のナノ粒子あるいはそれらの前駆体と、コロイド粒子を反応させることで形成することができる。あるいは、そのようなナノ材料修飾コロイド粒子は、第1のタイプのナノ粒子またはそれらの前駆体と、次いで第2のタイプのナノ粒子またはそれらの前駆体と順次反応させることで形成することができる。そのような複数の官能基を付与する多くの異なる方法は、当業者には容易に理解できる。
【0052】
ある実施形態では、
図1に示すように、犠牲粒子に結合させた後で、ナノ粒子の量および/または大きさを必要に応じてさらに増加させることができる。ある実施形態では、成長溶液を添加することで、ナノ粒子の大きさをさらに大きくすることができる。ある実施形態では、犠牲粒子の周囲にシェル(または完全に近いシェル)が形成されるように、成長溶液を用意することができる。例えば、
図3は、平均直径が480nmである、金ナノ粒子修飾PSコロイド粒子のTEM画像を示している。これらの例では、
図2に記載されているのと同じ方法を用いて、直径が2nmまでの小さな金ナノ粒子でPSコロイド粒子を修飾後、金ナノ粒子成長溶液を導入することで金ナノ粒子の大きさが増加した。
図3Aは、直径が約2nmである金ナノ粒子を示している。コロイド粒子への結合の後で成長溶液を適用すると、
図3Bと
図3Cに示すように、金ナノ粒子の直径は徐々に増加し、より高密度に被覆された表面または表面上のシェルが得られる。
【0053】
図1に示すように、ある実施形態では、所望のナノ粒子修飾犠牲粒子に対して追加の機能を付与することができる。例えば、サスペンション中および/または最終的な埋め戻し材料(以下に詳細に記載されている)と一緒の場合のナノ粒子修飾犠牲粒子の安定性を向上させること、あるいは追加の機能を付与することが望ましい。例えば、最終的な埋戻し相互接続固体材料に対してより適合性がある材料で、ナノ粒子修飾犠牲粒子を被覆することができる。その具体例には、最終的な埋戻し相互接続固体材料がチタニアまたはアルミナの場合、シリカでナノ粒子を被覆する例が含まれる。別の具体例には、最終的な埋戻し相互接続固体材料をシリカゾルゲル材料を用いて形成する場合、チタニアまたはアルミナでナノ粒子を修飾する例が含まれる。さらに別の具体例には、金属酸化物ゾルゲル材料との縮合を促進させるため、ナノ粒子上にシラン基を付与する化学的官能基化を行う例が含まれる。当業者には、多くの別の例が容易に理解できるであろう。
【0054】
ある実施形態では、例えば1nmから数十nmの、多くの異なる大きさのナノ粒子を用いることができるが、犠牲粒子の周囲を形成するナノ粒子および/またはシェルは、犠牲粒子の特徴寸法(例えば、直径、最長寸法、最短寸法等)の約7.75%未満である。例えば、犠牲粒子の周囲を形成するナノ粒子および/またはシェルは、複数の図に示すように犠牲粒子の大きさが400nmである場合、31nm未満である。ある実施形態では、犠牲粒子の周囲を形成するナノ粒子および/またはシェルは、犠牲粒子の直径の5%、2%、または1%未満である。ある実施形態では、犠牲粒子の周囲を形成するナノ粒子および/またはシェルは、100、40、20、15または10nm未満である。ある実施形態では、犠牲粒子の周囲を形成するナノ粒子および/またはシェルは、約20nm未満、約15nm未満、または約10nm未満である。ある実施形態では、犠牲粒子の周囲を形成するナノ粒子および/またはシェルは、約5nm未満、または約2nm未満、または約1nm未満である。ある実施形態では、犠牲粒子の周囲を形成するナノ粒子および/またはシェルは、約1nmと約100nmの間である。ある実施形態では、犠牲粒子の周囲を形成するナノ粒子および/またはシェルは、15nm未満である。ある実施形態では、犠牲粒子の周囲を形成するナノ粒子は、15nm未満である。ある実施形態では、犠牲粒子の周囲を形成するシェルは、厚さが、20、15、または10nmより小さい。一般的に、ナノ粒子またはシェルが犠牲粒子に結合しているか否かによらず、これらの構造は、“ナノ材料修飾犠牲粒子”と呼ばれる。
【0055】
次に、
図1に示すように、オパール構造等の集合体を形成するために、ナノ材料修飾犠牲粒子を用いることができる。ある実施形態では、ナノ材料修飾犠牲粒子間にある、空孔の相互接続間隙空間、を有する所望の集合体の中に、ナノ材料修飾犠牲粒子を配置することができる。ある実施形態では、そのような集合体は、結晶構造(例えば、オパール構造)、ガラス構造(例えば、ガラス状短距離秩序)を有するか、あるいは完全に不規則である(例えば、短距離秩序も長距離秩序もない)。
【0056】
図2Cの模式図は、シリカ前駆体Si(OEt)
4の存在下で二相自己集合プロセスを用いる金修飾PSコロイドの一例を示している。しかし、集合体を形成するための多くの異なる方法を用いることができ、例えば、その方法には、溶液からの複合コロイドの自己集合、ドロップキャスティング、スピンコーティング、マイクロ流体デバイス、エマルションテンプレーティング、噴霧塗布、噴霧乾燥、溶液中の誘導凝集、または予備成形粉末の粉砕またはミリング等の工学的方法、ゾルゲル材料の浸透または原子層堆積(ALD)が含まれる。
【0057】
次に、
図1に示すように、ナノ材料修飾犠牲粒子間にある間隙空間を埋戻すことができる材料で、その集合体を埋戻すことができる。別の実施形態では、ナノ材料修飾犠牲粒子間にある間隙空間を埋戻すことができる材料と組合せ、
図2Cに示すいわゆるコーアセンブリー法を用いて集合体を形成できる。また、
図2Cは、ある具体例を示し、そこでは、マトリックス材料(例えば、金属酸化物またはシリカのゾルゲル溶液)の存在下で、ナノ粒子修飾犠牲コロイドがオパール構造へと集合し、該マトリックス材料は、熱処理により犠牲粒子を除去した後、ナノ粒子修飾コロイドナノ粒子間の間隙空間を充填して、逆オパール構造を形成する。
【0058】
図1に示すように、空気/ネットワーク界面に優先的に位置するナノ粒子を有する、相互接続多孔質ネットワークを形成するように、犠牲粒子を除去することができる。
図2Cは、一例を示し、そこでは、上記のオパール構造の形成と埋戻しの後で、500℃で焼成して、相互接続固体材料と相互接続空孔の界面(すなわち、コロイド粒子が使用されるべき領域)に主として存在する金ナノ粒子、を有する逆オパールを製造する。しかし、犠牲粒子と、相互接続多孔質ネットワーク構造体のために形成される固体材料の種類に応じて、多くの異なるテンプレートを用いることができる。例えば、ポリスチレンを犠牲材料として用い、シリカを相互接続固体ネットワーク構造体として用いた場合、犠牲粒子の完全分解温度(例えば400℃)を超える温度であって、固体材料(SiO
2)の分解温度よりも低い温度で行うことができる。この場合、犠牲粒子を除去する温度は、例えば500℃である。
【0059】
相互接続多孔質ネットワーク構造体に用いることができる固体材料の種類には特に制限はない。ある実施形態では、相互接続多孔質ネットワーク構造体は、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、他の酸化物(例えば、無機ゾルゲル由来酸化物、混合酸化物)、異なる構造のポリマー、ランダムおよびブロックポリマー、分岐ポリマー、星状ポリマー、デンドリチックポリマー、超分子ポリマー、金属、およびそれらの組合せを含む。例えば、シリカ前駆体とポリマーの組合せからは、増加した空孔率を有するメソポーラスシリカが生成する。ある実施形態では、反応、固化、あるいは重合して固体材料を形成する前駆体を用いることができる。電気めっき等の別の技術を用いることもできることは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0060】
ある実施形態では、相互接続ネットワーク構造体のための材料の選択は、所望の特性に基づいて行うことができる。例えば、チタニアまたはジルコニアを用いると、所望の光触媒特性および/または電気特性を付与できる。マトリックス材料としてポリマーを用いると、ソフトでダイナミックなネットワーク構造体を得ることが可能である。
【0061】
理論に拘束されることを望むものではないが、犠牲粒子(例えば、ポリスチレン)上の、ナノ粒子(例えば、金金属ナノ粒子)またはナノシェル(例えば、金金属ナノ粒子の結合後に成長した金シェル)は、犠牲粒子間の相互接続構造の形成を防止することが予想される(例えば、ポリスチレン部分は互いに接触しない)。この場合、犠牲粒子を十分に除去できることを可能にする相互接続通路が犠牲粒子間には欠如しているので、充填材料の存在下で犠牲粒を除去できるとは、当業者は予想しえなかったであろう。しかし、犠牲粒子自身が互いに接触しないかもしれないという事実に関わらず、十分に小さいナノ粒子またはナノシェルを用いることで、意外にも、犠牲粒子の除去が可能となり、相互接続空孔が得られることが見いだされた。
【0062】
さらに、別の予想外の結果として、犠牲粒子が除去される時、ナノ粒子またはナノシェル(成長した場合)は、犠牲粒子とともに除去されることなく固体材料上に移動することが可能で、その結果、それらが固体材料の表面(すなわち、相互接続固体材料と相互接続空孔の間の界面)に主として存在する、という結果が得られた。さらに、犠牲粒子の除去工程の間、ナノ粒子は互いに凝集することがなく、相互接続多孔質ネットワーク構造体の全体に十分に分散した状態で概ね存在している。
【0063】
さらに、
図4は、
図2Bおよび
図3A−3Cに示す種々の複合PSコロイドを用いた、規則的な逆オパール相互接続多孔質ネットワーク構造体の形成を示している。
図4A−4Cは、直径5nm未満の微小AuNPs(金シード)で修飾されたPSコロイド(
図3A参照)を用いた時の規則的な逆オパール構造を示している。逆オパールの結晶規則性は、モアレ縞(これらは見ることのできる複数の線である)の存在により視認することができ、モアレ縞は小さすぎて画像では解像できない個々のコロイドの周期的な配列を示すものである。ある実施形態では、欠陥数の少ない、長距離秩序を有する逆オパール構造が非常に望ましい。例えば、長距離秩序を有する逆オパール構造は、クラック等の欠陥を有意の量含むことなく、少なくとも100ミクロン、少なくとも1mm、またはさらに少なくとも1cmにまで及ぶ、非常に規則的な構造を提供する。理論に拘束されることを望むものではないが、他の条件は欠陥および/または不規則性が大きい構造をもたらすものであるが、長距離秩序を有する逆オパール構造の形成を可能とする特定のプロセスパラメータが存在する。例えば、直径が5nm未満、3nm未満、あるいはさらに2nm未満のナノ粒子等の微小金属ナノ粒子で修飾されたPSコロイド粒子を用いることで、長距離秩序を有する逆オパール構造を得ることができる。
【0064】
これに対し、より大きなナノ材料で修飾されたコロイド粒子は、より規則性の低い構造を与える。
図4D―Fは、約450nmの大きさを有し、ナノ粒子で修飾された
図3Bに示されるPSコロイドを用いる、相互接続多孔質ネットワーク構造体の形成を示している。
図4G−Iは、12nmまでの直径を有する金ナノ粒子で修飾されたPSコロイドを用いて製造された逆オパール構造を示している。また、PSコロイドの周囲にさらに金シェルを成長させると(
図3Cに示すように)、コロイドディスパーションの安定性が低下し、約3〜4時間後にコロイド沈殿が生じた。
【0065】
しかしながら、規則性は低下するが、大きさの異なるナノ粒子(または異なる量の機能性材料)は、固体材料と空孔の界面に機能性材料が精密に配置された、相互接続多孔質ネットワーク構造体を形成することができる。
【0066】
ある実施形態では、空気/ネットワーク界面に存在する機能性材料の量を、相互接続多孔質ネットワーク構造体の形成後にさらに増加させることができる。
図3に示すように、相互接続多孔質ネットワーク構造体の相互接続空孔を通してナノ粒子成長溶液を導入することにより、所望の機能性材料のシェルを形成することができる。
図5に示す例は、空気/逆オパール界面に金ナノ粒子を有する逆オパール構造にAuOH/CH
2O溶液を導入することにより、空気/逆オパール界面に金シェルを形成する。
【0067】
図5Aは、金シード修飾PSコロイドから製造された逆オパールのSEM画像を示している。
図5Bは、金塩溶液に12時間浸漬後の同じサンプルのSEM画像を示している。同様に、
図5Cは、金塩溶液に48時間浸漬後の同じサンプルのSEM画像を示している。図に示すように、時間を長くすると、空気/固体界面での金の存在が増加するが、これは、特に後方散乱電子像(ESBと表示された画像)における、金の高い電子密度に起因するより大きな信号により裏付けられる。
【0068】
本明細書に記載された現在のアプローチは、従来のアプローチよりも優れた利点を提供する。機能性材料を空気/マトリックス界面に精密に配置することにより、所望の反応(例えば、触媒)へのそれらの接近しやすさを増加させるとともに、高度の形態制御を行うことで、得られる複合多孔質構造体を非常に効率的にする。例えば、空気/固体界面に多くの金属ナノ粒子を存在させることで、空気/固体界面の周囲に比較的均一なシェルを形成することを可能にする。
【0069】
したがって、本開示は、短距離秩序または長距離秩序を有する、逆オパール構造表面等の相互接続多孔質ネットワーク構造体、の界面上にナノ粒子を精密に局在させる合成アプローチを提供する。ある実施形態では、前記のネットワーク構造体は不規則構造であってもよい。そのような構造は、吸着成分の存在を通してのネットワーク構造体の光学特性の調整だけでなく、制御された反応性を有する高効率の多孔質機能性材料の形成を可能にする。また、空気/ネットワーク界面での金ナノ粒子のアクセシビリティは、逆オパール構造の所定の位置におけるナノ粒子のさらなる成長を可能にする。本方法は、高レベルの合成自由度を提供するとともに、明確な形態、組成および構造−特性関係を有する、「ヘテロ複合体」(マルチ複合体)逆オパール構造の新規なタイプの生成をもたらす、複合粒子の構造パラメータの顕著な制御を可能とする。
【0070】
表面接触可能な(surface accessible)機能性ナノ粒子を有する、そのようなハイブリッド、多孔質ネットワーク構造体の利用可能性は、光学素子(フォトニック結晶)、異種触媒および生体触媒、センシング、表面増強ラマン散乱用途、光触媒、電極材料、太陽電池特性の向上等を含む種々の用途に広がる可能性がある。
【0071】
多くの異なる修飾は、当業者の技術範囲内にある。ある実施形態では、空気/ネットワーク界面に位置する所望のナノ粒子またはナノシェルを有する相互接続多孔質ネットワーク構造体を一旦形成し、触媒用の分子複合体、センシング用の刺激応答分子等の所望の特性を付与するために、さらなる修飾を行うことができる。所望の機能を付与する所望の官能基をその上に配置することができる。
【0072】
別の実施形態では、本明細書に記載された相互接続多孔質ネットワーク構造体は、所望の用途に応じて様々な異なる形状に作製することができる。例えば、前記の構造体は、フィルム、破片(例えば、フレーク、デブリ)、球状集合体および粉末の形状に作製することができる。
【0073】
ある実施形態では、空孔率の程度を増加させることができる。ある実施形態では、二元またはより高次の粒子混合物を用いることができる。ある実施形態では、マトリックス材料としてメソポーラス材料を用いることができる。
【0074】
いくつかの別の実施形態では、
図6に示すように、マイクロメータ領域の大きさを有する相互接続多孔質ネットワーク構造体の超構造体を作製することにより、階層的材料を製造することができる。一例として、
図6Aは、相互接続多孔質ネットワーク構造体の球状上部構造体を作製するために、埋戻し材料存在下で、ナノ材料修飾コロイドディスパーションのエマルションテンプレート法を用いることができる。ある実施形態では、異なる種類のナノ粒子(例えば、“PS@A”および“PS@B”)を含む上部構造体を作製できる。次に、異なるナノ粒子を有する1種または複数種の上部構造体のいずれかを用いることにより、これらのミクロンスケールの上部構造体ユニットを、結晶配列または不規則配列へとさらに集合させることができる。例えば、
図6Bに示すように、構造物の異なる場所で異なる機能性ナノ粒子を有する多成分システムを作製することができる。これにより、1つのユニットの中で、複数の触媒プロセスが可能となる。さらに、結果として、階層的、多孔質材料が得られ、それは、最初の空孔からミクロンスケールの多孔質要素の集合体により生じる空隙に至るまで、複数の長さスケールに亘って空隙を有し、より良好な拡散またはより良好な液体流(すなわち、詰まりがより少ない)を可能とする。
【0075】
本明細書の記載と実施形態を参照することにより、本発明の実施に際し、本発明の本質から逸脱することなく、変形および等価な置換を行うことができることを当業者は理解するであろう。したがって、本明細書は、上記の明記された実施形態により限定されるものではない。