特許第6654669号(P6654669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654669
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】フレキシブル精米方法
(51)【国際特許分類】
   B02B 3/00 20060101AFI20200217BHJP
   B02B 1/08 20060101ALI20200217BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20200217BHJP
   C12N 9/50 20060101ALN20200217BHJP
   C12N 9/42 20060101ALN20200217BHJP
   C12N 9/24 20060101ALN20200217BHJP
【FI】
   B02B3/00 D
   B02B1/08
   A23L7/10 A
   !C12N9/50
   !C12N9/42
   !C12N9/24
【請求項の数】5
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2018-138296(P2018-138296)
(22)【出願日】2018年7月24日
(65)【公開番号】特開2019-25479(P2019-25479A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2018年7月24日
(31)【優先権主張番号】201710609855.8
(32)【優先日】2017年7月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518262970
【氏名又は名称】中南林▲業▼科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林▲親▼▲録▼
(72)【発明者】
【氏名】程云▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼思明
(72)【発明者】
【氏名】林利忠
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼文▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼涛
(72)【発明者】
【氏名】肖▲華▼西
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼▲躍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】丁玉琴
【審査官】 小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−033240(JP,A)
【文献】 特開昭51−135266(JP,A)
【文献】 特開平06−209724(JP,A)
【文献】 国際公開第08/132238(WO,A1)
【文献】 特開2010−207128(JP,A)
【文献】 特開平08−000193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L7/00−7/104
B02B1/00−7/02
C12N9/00−9/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラーゼと、ガラクツロナーゼと、プロテアーゼとの複合酵素液で玄米に対して浸潤処理をした後、精米加工を行い、前記複合酵素液において、セルラーゼが50〜60wt%であり、ガラクツロナーゼが10〜30wt%であり、プロテアーゼが10〜30wt%であることを特徴とする、精米方法。
【請求項2】
前記複合酵素液は、濃度が10〜120mg/mLであって、pHが4.5〜7.5であることを特徴とする、請求項1に記載の精米方法。
【請求項3】
前記複合酵素液でスプレー浸潤して玄米含水率を≦20wt%し、環境温度を30〜40℃に制御、酵素分解時間が10〜40minであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の精米方法。
【請求項4】
浸潤処理後、まずマイクロ波で熱処理にした後、精米加工を行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の精米方法。
【請求項5】
精米加工が一段階又は二段階の精米を含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の精米方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾精米の分野に関し、具体的にはフレキシブル精米方法に関する。
【背景技術】
【0002】
籾精米加工においては、籾の水分含量が低く、表皮を碾き除く際の機械的圧力が大きいため、加工脆性が高いので、伝統的な三段階の精米過程において、米粒が折れやすく、割れやすい。これは、米の加工品質に影響することだけではなく、エネルギー消費が高い等の問題もある。また、一部の耕地には、農薬残留、重金属汚染の問題があり、水稲作物の成長過程において、それらの危害元素の多くは籾粒表皮に蓄積されている。精米過程において、精米効果を最適にできると共に、農薬残留、重金属による危害を最大限に低減できるのが、精米プロセスの重要な最適化目標である。現在、業界内においては、精米の改善効果を得るために、碾き磨く玄米の含水率が15%程度に達するように潤米を調製するのが一般的である。この方法は、精米加工脆性の改善には幾らか寄与しているが、依然として表皮の強靭による精米困難等の問題を根本的に解決できず、その1トンの米の消費電力量が30kwh以上であり、電気料金が製造費用の40%以上を占めている。
【0003】
玄米精米困難の問題を改善するために、業界内においては、水の代わりにセルロース又はキシラン酵素分解液で玄米を浸潤処理する方法が採用されている。適当な条件の下で、酵素分解反応によって構造が緻密な繊維表皮を降解軟化させた後、更に碾き磨くことで、精米圧力の低減及び砕米率の低減に対して、良好な効果を得ている。しかし、当該方法は、精米プロセスの改善、精米コストの低減、米の食用安全性の向上、米の栄養の最大限保留等の面においては、不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来の精米過程における表皮除去困難の問題について、精米プロセスを改善し、精米のコストを低減することができるフレキシブル精米方法を提供することにある。
【0005】
本発明が更に解決しようとする技術的課題は、従来の精米過程における表皮除去困難、及び農薬残留、重金属危害の低減不能等の問題について、精米プロセスを改善し、精米のコストを低減し、米の食用安全性を向上させ、米の栄養を最大限に保存することができるフレキシブル精米方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
研究によれば、玄米表皮は、主に糠層のセルロースとアラビノキシラン(Arabino xylan)の他、一部の糊粉層も含む。その糊粉層の栄養成分は豊富であり、主に複合タンパク質である。そして、土壤から吸収された危害元素の多くも糊粉層に蓄積されている。
【0007】
本発明がその技術的課題を解決するため採用する技術案は、まずセルラーゼと、ガラクツロナーゼ(galacturonase)と、プロテアーゼとの複合酵素液で玄米を浸潤処理し、そして精米加工をするフレキシブル精米方法である。
【0008】
更に、前記複合酵素液は濃度が10〜120mg/mL(好ましくは50〜90mg/mL)であり、pHが4.5〜7.5である。
【0009】
更に、前記複合酵素液においては、セルラーゼが50〜60wt%であり、ガラクツロナーゼが10〜30wt%であり、プロテアーゼが10〜30wt%である。
【0010】
更に、前記複合酵素液でスプレー浸潤して玄米含水率を≦20wt%し、環境温度を30〜40℃に制御、酵素分解時間が10〜40minである。
【0011】
更に、浸潤処理後、まずマイクロ波で熱処理し、更に精米加工を行ってもよい。
【0012】
更に、マイクロ波での熱処理は、出力が400〜800Wであり、時間が30〜200sである。
【0013】
更に、精米加工は、一段階又は二段階の精米を含む。
【0014】
本発明は、セルラーゼと、ガラクツロナーゼと、プロテアーゼとの複合酵素製剤を用いて、玄米表皮構造支持成分であるセルロース、タンパク質等を適当にほぐし、表面の硬さを改善した後、一段階又は二段階の精米プロセスでフレキシブル精米を実現する。また、本発明においても、精米後の米の貯蔵安定性と食用安全性を確保するために、酵素分解後のマイクロ波による熱処理で残留酵素の活性を喪失させると同時に、潤米の酵素分解において生じる可能性がある微生物も殺滅除去する。
【0015】
本発明は、複合酵素処理によって表皮を軟化させ、マイクロ波処理をし、一段階又は二段階の精米プロセスを行うことで、フレキシブル精米を実施し、砕米を低減し、精米のエネルギー消費を低減し、米の貯蔵安定性と食用安全性を向上させるという目的を実現する複合酵素浸潤玄米前処理のフレキシブル精米方法を提供する。
【0016】
伝統的な、元玄米を直接に精米することと比べると、砕米率が6〜12%低下し、且つエネルギー消費を8〜30%節約できる。マイクロ波処理をされた後、浸潤玄米水分含量が18〜20%から14%程度まで低減し、浸潤後の細菌集落総数(定量単位がcfu/g)が1.7×10から、1.2×10よりも低くなるように低下し、元玄米における重金属であるカドミウム、鉛の除去率が70〜85%まで達するため、米の貯蔵期の食用安全性を確保可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例と合わせて本発明について更に説明する。
【実施例】
【0018】
実施例1
(1)酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH=4.6)を用いて濃度が55mg/mLである複合酵素溶液を調製した。そのうち、セルラーゼが40wt%であり、ガラクツロナーゼが35wt%であり、プロテアーゼが25wt%である。そして、4℃の条件下で、冷蔵で置いた。
(2)玄米原料を1000g称量した。その初期含水は4wt%であり、そして、18wt%を目的含水とすることによって、スプレーされる複合酵素液が48.8gと確定した。
(3)反応温度を40℃に設定し、工程(1)で調製された複合酵素液を48.8g称量し、工程(2)で称量された玄米に均一にスプレーし、この温度条件下で、40分間(中心温度が40℃に達した時から計り始める)反応させた。
(4)工程(3)で処理された玄米について、一段階の精米をした。
【0019】
実施例2
(1)酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH=6.0)で濃度が75mg/mLの複合酵素溶液を調製した。そのうち、セルラーゼ比が50wt%、ガラクツロナーゼが25wt%、プロテアーゼが25wt%であり、そして、4℃の条件下で、冷蔵で置いた。
(2)玄米原料を1000g称量し、その初期含水が14wt%であり、そして、18wt%を目的含水とすることによって、スプレーされる複合酵素液が48.8gと確定した。
(3)反応温度を30℃に設定し、工程(1)で調製された複合酵素液を48.8g称量し、工程(2)で称量された玄米に均一にスプレーし、この温度条件下で、20分間(中心温度が30℃に達した時から計り始める)反応させた。
(4)酵素分解反応が終了した後、玄米試料をマイクロ波処理装置に移し、出力を400W、反応時間を200sにした。
(5)工程(4)で処理された玄米について、二段階の精米をした。
【0020】
実施例3
(1)炭酸−炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH=7.5)で濃度が90mg/mLの複合酵素溶液を調製した。そのうち、セルラーゼが60wt%、ガラクツロナーゼが10wt%、プロテアーゼが30wt%であり、そして、4℃の条件下で、冷蔵で置いた。
(2)玄米原料を1000g称量した。その初期含水が14.5wt%であり、そして、20wt%を目的含水とすることによって、スプレーされる複合酵素液が68.8gであることが確定した。
(3)反応温度を35℃に設定し、工程(1)で調製された複合酵素液を68.8g称量し、工程(2)で称量された玄米に均一にスプレーし、この温度条件下で、30分間(中心温度が35℃に達した時から計り始める)反応させた。
(4)酵素分解反応が終了した後、玄米試料をマイクロ波処理装置に移し、出力を800w、反応時間を80sにした。
(5)工程(4)で処理された玄米について、二段階の精米をした。
【0021】
本発明の三つの実施例と、伝統的な精米プロセスとの対照試験の結果については、表1を参照するが、比較指標は、エネルギー消費、砕米率、ビタミンB1、B2の含量、重金属のカドミウム、鉛の除去率、及び初期細菌集落総数である。
【0022】
【表1】