特許第6654710号(P6654710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654710
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/185 20060101AFI20200217BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20200217BHJP
   B41J 2/075 20060101ALI20200217BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   B41J2/185 101
   B41J2/17 103
   B41J2/075
   B41J2/14
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-555070(P2018-555070)
(86)(22)【出願日】2017年12月8日
(86)【国際出願番号】JP2017044105
(87)【国際公開番号】WO2018105714
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】特願2016-238636(P2016-238636)
(32)【優先日】2016年12月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松下 雄彦
(72)【発明者】
【氏名】岡野 守
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 光雄
(72)【発明者】
【氏名】有馬 崇博
【審査官】 長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−000979(JP,A)
【文献】 特開平05−000518(JP,A)
【文献】 特開昭57−057673(JP,A)
【文献】 特表昭63−500508(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0332449(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して被印字媒体に印字を行うためのノズルと、吐出されたインクを静電力で偏向させる偏向電極を収容する印字ヘッドを有するインクジェット記録装置であって、
浮遊するインクを静電力で吸引するインク吸引部を備え
該インク吸引部を前記印字ヘッド内部に備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置であって、
前記浮遊するインクは被印字媒体に一度接触したインクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置であって、
前記インク吸引部の先端は、高電圧源と電気的に接続された前記偏向電極の先端部分であるインク偏向部の先端より前記ノズルのインク吐出方向に突き出していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記インク吸引部は電極であり、高電圧源に電気的に接続されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記インク吸引部の前記ノズルのインク吐出方向であって前記印字ヘッドのヘッドカバーの外側にインク吸着部材が設けられていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記インク吸引部の前記ノズルのインク吐出方向に絶縁体を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記インク吸引部は前記印字ヘッドのヘッドカバーより外部に突き出していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記インク偏向部と前記インク吸引部とが同一の高電圧源に接続されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記インク偏向部と前記インク吸引部とが一体であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記インク吸引部は電極であり、表面に絶縁体が被覆されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
インクを吐出して被印字媒体に印字を行うためのノズルと、吐出されたインクを静電力で偏向させる偏向電極を収容する印字ヘッドを有するインクジェット記録装置であって、
浮遊するインクを静電力で吸引するインク吸引部を備え、
前記インク吸引部の前記ノズルのインク吐出方向であって前記印字ヘッドのヘッドカバーの外側にインク吸着部材が設けられ、
該インク吸着部材は取り替え可能な構造で設けられていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから連続的にインクを噴出し、被印字媒体上に印字を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、印字ヘッドのインク吐出口からインクを飛翔させて印字を行うため、被印字媒体に対して非接触に印字を行うことができる。しかし、印字ヘッドと被印字媒体との距離が近接する場合には、インクが被印字媒体に衝突した際に印字ヘッド側に跳ね返り、印字ヘッドの表面が汚れるという場合がある。また、跳ね返ったインクは帯電しているため、印字ヘッド内部の偏向電極に引き付けられ、電極を汚す恐れがあり、印字品質が低下する可能性がある。これを解決するための背景技術として、US2010/0207976公開公報(特許文献1)がある。特許文献1には、印字ヘッドのカバーの端面に、インクを吐出するインク吐出口と、インク吐出口の周囲に設けられた多数の穴を有し、印字ヘッドの根元部から前記多数の穴に向けて空気を送り込むことにより、空気を穴から排出させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US2010/0207976公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、印字ヘッドの内部から外部に向けて空気の流れができるので、被印字媒体からのインクミストが印字ヘッドを汚すことを防止することができる。しかし、コンティニアス方式のインクジェット記録装置では、印字ヘッド内でインクが飛翔する間にインクに含まれる溶剤が揮発するため、特許文献1に記載の構成をとると、溶剤の揮発が多くなるとともに、揮発した溶剤を印字ヘッド内から外部に多量に排出することになる。そのため、インク中の溶剤揮発が進むことにより、循環するインクの濃度が高くなるため、揮発した分の溶剤を補給することが必要になり、ランニングコストが増大する。また、揮発した溶剤の機外排出量が多くなり、環境に悪影響を及ぼすという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、溶剤の揮発量を増加させることなく、浮遊するインクによる印字ヘッド内外部の汚染を抑制することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、インクを吐出して被印字媒体に印字を行うためのノズルと、吐出されたインクを静電力で偏向させる偏向電極を収容する印字ヘッドを有するインクジェット記録装置であって、浮遊するインクを静電力で吸引するインク吸引部を備える構成とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶剤の揮発量を増加させることなく、浮遊するインクによる印字ヘッド内外部の汚染を抑制することができるインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1におけるインクジェット記録装置の印字ヘッドの外観図及び構成図である。
図2】実施例1における印字ヘッドの上部偏向電極の構成図である。
図3】実施例2におけるインクジェット記録装置の印字ヘッドの断面図である。
図4】従来のインクジェット記録装置の外観を示す概略図である。
図5】従来のインクジェット記録装置の構成を説明する概略図である。
図6】従来の印字ヘッドの外観及びヘッドカバーを取外した際の外観を示す図である。
図7】従来のインクジェット記録装置で印字する際のインクミスト発生状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の前提となる従来のインクジェット記録装置の概要及び本発明の課題について図を用いて説明する。
【0010】
図4は従来のインクジェット記録装置の概略構成図である。図4において、インクジェット記録装置本体(以降、本体と称す)100の内部には記録装置の制御系やインク循環系を有し、扉105を開閉することによって保守作業ができるようになっている。また、本体100からはヘッドケーブル103が伸びている。
【0011】
このヘッドケーブル103は、本体100から印字ヘッド101にインクを送る配管と、印字ヘッド101から本体100にインクを回収する配管と、印字ヘッド101への電気信号を送る配線を内包している。
【0012】
さらに、本体100には、ユーザが印字内容や印字仕様等を入力するためのタッチパネル式の液晶パネル104を有する。インクジェット記録装置が稼動しているときは、この液晶パネル104にインクジェット記録装置の制御内容や運転状況等が表示される。
【0013】
印字ヘッド101の外装はステンレス製であり、その内部にはインク粒子を生成し、インク粒子の飛翔を制御する印字部が収められている。印字ヘッド101の内部で作成されたインク粒子は、底面に設けられたスリット102から吐出し、図示しない被印字媒体上に付着して画像を形成する。
【0014】
次に、インクジェット記録装置のインク循環系と印字部の概略構成について図5を用いて説明する。図5において、インク供給経路21は、インクを収容するインク容器1、インクを圧送する供給ポンプ2、インク圧力を調節する調圧弁3、供給インクの圧力を表示する圧力計4、インク中の異物を捕らえるフィルタ5から成り、ノズル6にインクを供給する。
【0015】
ノズル6には圧電素子が付いており、70kHz程度の正弦波を圧電素子に印加することによって、ノズル6の終端に存在するオリフィスから噴出しているインクが飛翔中に粒子に分裂する。
【0016】
帯電電極7には、記録信号源(図示せず)が接続されており、帯電電極7に記録信号電圧を印加することによって、ノズル6より規則的に噴射するインク粒子8を帯電させる。上部偏向電極9は高電圧源(図示せず)と接続された偏向電極であって、下部偏向電極10は接地されるので、上部偏向電極9と下部偏向電極10との間に静電界が形成される。帯電したインク粒子8は静電界中を通過する間にインク粒子8自身が有する帯電量に応じて偏向され、図示しない被印字媒体上に付着し、画像を形成する。
【0017】
インク回収経路22は、ガター11、回収ポンプ12から成り、帯電電極7で帯電されずに前記静電界中を通過する間に偏向されなかったインク粒子8は、ガター11で回収されてインク容器1へ戻り、再利用される。なお、インク回収経路22は印字ヘッド101の内部に形成されるので、外面から目視できない位置に存在する。
【0018】
図6(a)は従来の印字ヘッド101の外観を示している。印字ヘッド101には、ノズル、帯電電極、偏向電極等の印字に使用する部品が搭載されており、インクが飛翔するスリット102を有するヘッドカバー32で上記部品が覆われている。
【0019】
図6(b)は従来の印字ヘッド101からヘッドカバー32を外した状態を示している。図5を用いて説明したように、印字ヘッド101のベース部材31の上にノズル6、帯電電極7、上部偏向電極9、下部偏向電極10、ガター11が搭載されている。ノズルから連続的に噴出する帯電インク液滴は、ヘッドカバー32のスリット102から飛翔して被印字媒体に付着する。
【0020】
図7は従来のインクジェット記録装置で印字する際のインクミスト発生状態を示す図であり、インクジェット記録装置で被印字媒体の表面に印字している状態を示している。固定された印字ヘッド101と対向する位置で被印字媒体40がB方向に搬送されることによって、被印字媒体上文字や記号などが印字される。
【0021】
このとき、印字ヘッド101のスリット102から吐出するインク粒子の速度や印字ヘッド101と被印字媒体表面との距離によって、被印字媒体に着弾し一度接触したインクが跳ね返ることがある。また、跳ね返るインクはミスト状になり、浮遊するインクであるインクミスト60が発生する。このインクミストの量は印字ドットの間隔が狭いほど多くなる。印字ヘッドと被印字媒体との距離が短い場合、印字ヘッド内で帯電されたインクミスト60は、金属製のヘッドカバー32に付着しやすい。すなわち、ヘッドカバー32の表面の図7におけるA面に、跳ね返ったインクミストにより汚れが付着する。その汚れは被印字媒体の搬送方向側に偏って存在する。また、インクミストはスリット102を通ってヘッドカバー32内に侵入する。ヘッドカバー32内には上部偏向電極9と下部偏向電極10があり、これらによって形成される静電界が存在するので、帯電したインクミストは上部偏向電極9に近づき、その端部に付着する。そのため、上部偏向電極9にインクミスト60が付着すると、上部偏向電極9と下部偏向電極10で形成される電界の向きと大きさが変化し、飛翔するインク液滴が所定の方向に飛翔しなくなるので、被印字媒体上の付着位置が変わり、印字品質が低下するという問題があった。
【0022】
以下、これらの問題を解決するための本実施例の構成について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
本実施例は、浮遊するインクを静電力で吸引するインク吸引部を備えた構成について説明する。
【0024】
図1は本実施例におけるインクジェット記録装置の印字ヘッドを示す図である。図1(a)は印字ヘッド101の外観を示し、ヘッドカバー210で覆われており、後述するホルダ230を有し、ホルダ230は後述するインク吸着部材240を保持している。図1(b)は印字ヘッド101からホルダ230を外した状態を示し、図1(c)は印字ヘッドからヘッドカバー210を取り外した状態を示し、図1(d)は、図1(b)に示すA―A断面図であり、印字ヘッド101のインク吸引部252近傍の断面を示している。
【0025】
図1(c)に示すように、印字ヘッド101には、ノズル6、帯電電極7、上部偏向電極250、下部偏向電極10、ガター11等の印字に使用する部品が搭載されており、図1(b)に示すように、インクが飛翔するスリット211を有するヘッドカバー210で上記部品が覆われている。
【0026】
ヘッドカバー210はステンレス製であり図は省略するが印字ヘッド101にローレットネジで取り付けられ、取り付け時には接地状態となる。
【0027】
ヘッドカバー210には絶縁カバー220とホルダ230が取り付けられている。絶縁カバー220の材質は、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、フッ素樹脂などの絶縁体であり、ヘッドカバー210のスリット211近傍の穴212にねじ(図省略)で固定されている。
【0028】
上部偏向電極250は、インク偏向部251とインク吸引部252が一体で構成され、ステンレス製部材をプレス加工により成形されたものである。他の成形例として、インク偏向部251とインク吸引部252は異なる部材であり、電気的に接続されるようにそれらの部材を溶接やねじ締結により一体化したものでもよい。上部偏向電極250の固定方法については、図は省略するが、ねじ締結により印字ヘッド101に固定され、電線を通じて高電圧源に電気的に接続される。運転中は高電圧源により上部偏向電極250には直流1〜7kV程度の高圧が供給され、ユーザがタッチパネル式の液晶パネル104の操作により所望の印字文字高さに応じて電圧を調整可能となっている。
【0029】
ここで、インク吸引部252はインク偏向部251とは異なる部材であって、一体化されていないものであっても、インク吸引部252がインク偏向部251と同様に高電圧源に電気的に接続されていればよい。その場合、インク吸引部252には運転中、インク偏向部251に印加される電圧と同極性の直流高圧が供給される。
【0030】
図1(d)に示すように、インク吸引部252の白抜きの矢印で示すノズルのインク吐出方向には絶縁カバー220が配置されている。絶縁カバー220の設置により、運転中に指などがインク吸引部252に接触し感電することを防止するとともに、絶縁カバー220部分で静電遮蔽されずにインク吸引部252と被印字媒体40との間に電界を発生させる。その電界による静電力によりインクミストは引き寄せられ、インクミストがスリット211に侵入することを抑制することができる。したがって、印字ヘッド内の上部偏向電極250を汚すことが低減される。このことから、上部偏向電極250と下部偏向電極10で形成される電界の向きと大きさが変化しないので、インク液滴が所定の方向に飛翔し、印字品質の低減を抑制することができる。また、インク吸引部252を印字ヘッド内に配置し、更にインク偏向部251と一体として上部偏向電極250を構成したことにより、印字ヘッドの大型化を防ぐことができる。
【0031】
インク吸引部252の先端は、インク偏向部251の先端よりノズルのインク吐出方向に突き出していることが望ましい。それによりインク吸引部252の先端と被印字媒体40との距離がインク偏向部251の先端と被印字媒体40との距離より小さくなるため、インク吸引部252と被印字媒体40との間に発生する電界がインク偏向部251と被印字媒体40の間に発生する電界より大きくなり、インクミストを引き寄せる作用が強くなる。また、インク吸引部252に供給される電圧が高いほどインク吸引部252と被印字媒体40との間に発生する電界が大きくなり、インクミストを引き寄せる作用が強くなる。
【0032】
図1(a)に示すように、ホルダ230はステンレス製でありヘッドカバー210を挟み込むように係合され、ホルダの係合部の弾性力により保持される。ホルダ230にはインク吸着部材240が固定されている。インク吸着部材240は紙やナイロンシート、フッ素樹脂シートなどが用いられ、ホルダ230に粘着テープやクリップなどの取り替え可能な構造で固定される。インク吸着部材240は、インク吸引部252からノズルのインク吐出方向であって、ヘッドカバーのインク吐出面より外側に設置される。それにより、電界により引き寄せたインクミストをインク吸着部材240上に吸着させる。従来の印字ヘッドではインクミストはヘッドカバーの表面や上部偏向電極などに付着、蓄積し、清掃を行う際には溶剤を用いて洗浄する必要があったが、本実施例ではインクミストは主にインク吸着部材に蓄積するため、溶剤を用いずともインク吸着部材を交換することでほとんどの汚れを除去することができる。インク吸着部材240はホルダ230に粘着テープやクリップなどで固定されるため、交換が簡単であるが、ホルダ230をなくして、直接ヘッドカバー210に固定してもよい。
【0033】
図2を用いて、本実施例における上部偏向電極250の一例について説明する。図2において、上部偏向電極250はインク偏向部251とインク吸引部252で構成され、インク吸引部252にはその表面に絶縁体253が被覆されている。被覆は、絶縁体塗料をインク吸引部252の表面に塗布し乾燥固着させたり、インサート成形によりインク吸引部252の周りに熱可塑性の絶縁体を射出充填し冷却固化させて形成される。この構成により、インク吸引部252の先端付近の一部とヘッドカバー210との接近によりその間の電界が大きくなり、特に電界が最も高まるインク吸引部252の表面近傍で空気の絶縁耐圧を超えるような大きい電界が発生する場合に、表面近傍の空気を絶縁体に置換することでコロナ放電の発生を抑制することができる。
【0034】
なお、インク偏向部251をノズルのインク吐出方向にスリット211の近傍まで延長し、かつ、インク偏向部251がスリット211の長手方向においてスリット211よりも外側まで延長して、インク偏向部251がインク吸引部を兼用するようにしても良い。
【0035】
以上のように、本実施例によれば、溶剤の揮発量を増加させることなく、浮遊するインクを静電力で吸引することで、浮遊するインクによる印字ヘッド内外部の汚染を抑制することができるインクジェット記録装置を提供することができる。
【実施例2】
【0036】
本実施例は実施例1にかかる構成を変更し、上部偏向電極250と絶縁カバー220を一部変更した例について説明する。図3は本実施例におけるインクジェット記録装置の印字ヘッドの断面図である。図3において、図1と同じ機能については同じ符号を付し、その説明は省略する。図3は印字ヘッド101のインク吸引部300近傍の断面を示している。図3において、上部偏向電極250のインク吸引部300は、ノズルのインク吐出方向に、ヘッドカバー210より外部に突き出しており、絶縁カバー320はインク吸引部300を覆っている。それにより実施例1よりインク吸引部300と被印字媒体40との距離を小さくなり、インク吸引部300と被印字媒体40との間に発生する電界が大きくなり、インクミストを引き寄せる作用が強くなる効果がある。
【0037】
なお、絶縁カバーとヘッドカバーを一体とし、ヘッドカバーを外すと同時に絶縁カバーも外せる構成としてもよい。これにより、ヘッドカバー取外し/装着時のメンテナンス性を向上することが出来る。また、ヘッドカバーを外すと、安全のために、インク吸引部に接続されている高電圧源がOFFになる構成としてもよい。
【0038】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
6:ノズル、7:帯電電極、8:インク粒子、9、250:上部偏向電極、10:下部偏向電極、11:ガター、32、210:ヘッドカバー、40:被印字媒体、60:インクミスト、100:インクジェット記録装置本体、101:印字ヘッド、102、211:スリット、103:ヘッドケーブル、220、320:絶縁カバー、230:ホルダ、240:インク吸着部材、251:インク偏向部、252、300:インク吸引部、253:絶縁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7