(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654735
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】複数のスペクトル測定バンドを有する分光光度装置
(51)【国際特許分類】
G01J 3/36 20060101AFI20200217BHJP
G01J 3/42 20060101ALI20200217BHJP
G01J 3/22 20060101ALI20200217BHJP
G01J 3/04 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
G01J3/36
G01J3/42 U
G01J3/22
G01J3/04
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-518279(P2019-518279)
(86)(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公表番号】特表2019-530876(P2019-530876A)
(43)【公表日】2019年10月24日
(86)【国際出願番号】FR2017052672
(87)【国際公開番号】WO2018069598
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2019年5月30日
(31)【優先権主張番号】1659920
(32)【優先日】2016年10月13日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517342903
【氏名又は名称】エアバス・ディフェンス・アンド・スペース・エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】パステルナク,フレデリック
【審査官】
横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−510964(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/137880(WO,A1)
【文献】
特開2004−233341(JP,A)
【文献】
特表2019−523874(JP,A)
【文献】
PASCAL, V. et al.,AN IMPROVED MICROCARB DISPERSIVE INSTRUMENTAL CONCEPT FOR THE MEASUREMENT OF GREENHOUSE GASES CONCENTRATION IN THE ATMOSPHERE,Proceedings of SPIE,2014年,Vol.105633,p.105633K-2 - p.105633K-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−4/04
G01J 7/00−9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスペクトル測定バンドを有する分光光度装置(100)であって、
入射瞳(PE)と、出力焦点面(PF)とを有する望遠鏡(10)であって、前記入射瞳を通って前記望遠鏡に入射する放射を前記出力焦点面に集束させるように適合された前記望遠鏡(10)と、
前記望遠鏡(10)の前記出力焦点面(PF)上に重ね合わされる入射口を有する分光光度計(20)であって、スペクトル拡散部品(24)と、前記分光光度計の前記入射口と光学的に共役であるアレイ検出器(26)と、を含み、前記検出器は、前記スペクトル拡散部品によって生成されるスペクトル拡散の方向に平行な第1の検出方向(D1)に延在し、第1の検出方向に垂直な第2の検出方向(D2)にも延在する光電面を有する前記分光光度計(20)と、を備え、
前記分光光度装置(100)は、さらに、
前記望遠鏡(10)の前記入射瞳(PE)に配置され、前記スペクトル測定バンドに対しそれぞれ専用の独立したサブ瞳を形成する複数の開口(O1〜O4)を有する瞳マスク(17)と、
瞳分離プリズム(31〜34)であって、前記瞳分離プリズムすべてにおいて共通のプリズム屈折方向(X)に対応する前記サブ瞳を通る放射の部分を各瞳分離プリズムが屈折させるように前記開口(O1〜O4)に対して1対1で配置され、他のすべての瞳分離プリズムのプリズム屈折の大きさと異なるプリズム屈折の大きさを有し、前記第2の検出方向(D2)が、前記望遠鏡および前記分光光度計を通る前記プリズム屈折方向に光学的に対応するように、前記分光光度計(20)が前記瞳分離プリズムに対して配向される、前記瞳分離プリズム(31〜34)と、
複数のスリット(41〜44)であって、前記スリットの長手方向が前記望遠鏡(10)を通る前記プリズム屈折方向(X)に光学的に対応するように前記分光光度計(20)の前記入射口に配置され、それぞれが、前記瞳マスク(17)の前記開口(O1〜O4)の1つと、前記瞳分離プリズム(31〜34)の1つとを通って、前記望遠鏡を通る、前記望遠鏡の指向方向(DP)から生ずる前記放射のそれぞれの部分を受光するように、前記スリットが互いにオフセットされる、前記スリット(41〜44)と、
それぞれが前記スペクトル測定バンドの1つを決定するフィルタの第1のセット(27)であって、前記第1のセットのフィルタは、前記検出器(26)の前記光電面の前に配置され、前記瞳マスク(17)の前記開口(O1〜O4)の1つを通り前記望遠鏡(10)に入射する前記放射の部分を用いて前記分光光度計(20)により形成される、前記スリット(41〜44)の1つのみの像上に前記第2の検出方向に沿って重ね合わされる検出開口内で、前記第1のセットのフィルタのそれぞれが有効であり、それぞれのフィルタの前記検出開口は第1の検出方向(D1)に延在する、前記フィルタの第1のセット(27)と、を備える、分光光度装置。
【請求項2】
前記スペクトル測定バンドへの1対1の対応をも有する少なくとも1つのフィルタの第2のセットであって、同一のスペクトルバンドに対応する前記第1のセットのフィルタおよび各前記第2のセットのフィルタが、前記瞳マスク(17)の前記開口(O1〜O4)の1つのみを通り前記望遠鏡(10)に入射する前記放射の同一の部分により横断されるように、前記瞳分離プリズム(31〜34)に、または、前記分光光度計の前記入射口と前記スペクトル拡散部品(24)との間の前記分光光度計(20)の内側に配置される、前記フィルタの第2のセットをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記望遠鏡(10)の前記出力焦点面(PF)または望遠鏡の中間像面(PI)に近接して配置される少なくとも1つのフィールドマスクをさらに備え、各フィールドマスクは、前記スリット(41〜44)に対応するか、または前記スリットに重ね合わせられた像と共役する開口を有し、前記像は、前記瞳マスク(17)の前記開口(O1〜O4)を通り前記望遠鏡に入射する前記放射を用いて、前記フィールドマスクと前記望遠鏡の前記出力焦点面との間に構成される前記望遠鏡の一部によって形成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記スリット(41〜44)に対して1対1で配置され、前記スリットから到来するすべての放射部分のそれぞれが前記瞳マスク(17)の前記開口(O1〜O4)の1つを通って前記望遠鏡に入射した後に前記放射部分を、前記スペクトル拡散部品上で互いに重ね合わせるように適合された、瞳位置合わせプリズムと呼ばれる追加のプリズムセット(51〜54)をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記スペクトル拡散部品(24)は回折格子であり、前記分光光度計は、前記瞳マスク(17)の前記開口(O1〜O4)を通って前記望遠鏡に入射した前記放射が前記回折格子によって反射されるように配置される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記望遠鏡内の前記放射の伝播方向に対して前記望遠鏡(10)の前記入射瞳(PE)の上流に配置された偏光スクランブラ(15)をさらに備え、前記偏光スクランブラは、前記瞳マスク(17)の前記開口(O1〜O4)の1つを通る前記放射の各部分において異なる偏光を混合するのに適している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
瞳マスク(17)内の少なくともN個の開口(O1〜O4)、N個の瞳分離プリズム(31〜34)、N個のスリット(41〜44)およびN個のフィルタを備え、N個のスペクトルバンドにおける同時分光光度測定を可能にし、Nは2以上12以下の整数、好ましくは4以上8以下の整数である、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記瞳マスク(17)は、追加の開口(O5)を有し、前記装置(100)は、結像システム(60)と、前記望遠鏡(10)の射出瞳(PS)内に配置されたビーム分割部品(19)とをさらに含み、前記ビーム分割部品は、前記瞳マスク(17)の前記開口(O1〜O4)を通って前記望遠鏡に入射した放射の部分が前記スリット(41〜44)の方向に伝送されると同時に、前記瞳マスクの前記追加の開口を通って前記望遠鏡に入射した放射の追加の部分が前記結像システムに伝送されるように適合される、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
地球の大気中の測定領域内に存在する化学成分を測定する方法であって、
請求項1から8のいずれか1項に記載の複数のスペクトル測定バンドを有する分光光度装置(100)を、衛星(S)に搭載するステップ1と、
前記衛星(S)を地球(T)の周りの軌道に配置し、前記衛星が前記測定領域上を飛行するようにするステップ2と、
前記望遠鏡(10)の前記指向方向(DP)を前記測定領域に向けるステップ3と、
前記望遠鏡(10)の前記指向方向(DP)を前記測定領域に向けた状態を維持しながら、前記分光光度計(20)の前記検出器(26)を作動させ、前記検出器の画素からの読み出し信号を捕捉し、前記読み出し信号は、前記分光光度計(20)を通り、前記スリット(41〜44)と1対1で光学的に関連付けられた前記検出器の光電面内の幾何学的バンド(B1〜B4)内で個々に、前記スペクトル測定バンドの1つにおける前記測定領域から生じる前記放射のスペクトル強度分布を提供するステップ4と、を含む方法。
【請求項10】
前記衛星(S)は、前記望遠鏡(10)の前記指向方向(DP)が、ステップ4の間、前記衛星の天底方向に重ね合わされるように配向される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記衛星(S)は、前記プリズム屈折方向(X)が、ステップ4の間、前記出力焦点面(PF)において前記望遠鏡(10)によって形成される前記測定領域の像の進行方向に垂直であるように配向される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
装置(100)の前記スペクトル測定バンドの少なくとも1つが、二酸化炭素またはエーロゾル化合物などの少なくとも1つのガス状炭素化合物の吸収線を含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスペクトル測定バンドを有する分光光度装置、および地球の大気中に存在する化学成分を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球の気候システムの進化をよりよく理解するために、宇宙ミッションは、地球の大気、海洋、および大陸の間で生じる炭素化合物の流れを特徴付けるように計画される。このために、分光光度測定は、地球の周りの軌道にある人工衛星から、ガス状炭素化合物、特に二酸化炭素(CO
2)またはエーロゾル化合物などの温室効果化合物の吸収線を含むスペクトルバンドで行われなければならない。しかし、ミッションのコストを低減しながら最大量の情報を得るためには、使用される分光光度装置は、分光光度測定を同時に行うことができるスペクトルバンドの数と、分光光度装置の重量、サイズ、および価格との間の最適な妥協点を提供しなければならない。
【0003】
2014年に発売されたOCO2計器では、3つの高分解能分光計を用いて二酸化炭素(CO2)の3つの吸光バンドを分析し、それらを共用望遠鏡によって供給する。
【0004】
MicroCarb機器の場合、CNES(ICSO 2014「Improved Microcarb concept」Pascal Veronique et al.)は、重要な大気成分を分析するために、回折エシェル格子分光計を高次回折で使用して複数の狭いスペクトルバンドをカバーすることを提案した。異なる次数の回折が焦点面の画像に重ね合わされるので、それらを分離するためのシステムを実施することが必要となる。より簡単でよりコンパクトな装置を得るために、また多数のスペクトルバンドをカバーするために、CNESは、光路に挿入された交差格子を使用することによってスペクトルバンドを分離することを提案した。この格子は、主エシェル格子によって規定されるスペクトル分散の方向に対して垂直な方向に波長を拡散させることを可能にする。次いで、主格子の分散の各次数は、検出器のアレイの列上に投影され、次の次数は、垂直方向にシフトされる。したがって、2つのアレイ検出器上のすべてのスペクトルバンドを2つの垂直方向に捕捉することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このコンセプトは、複数のスペクトルバンドを観察することを可能にし、さらに、バンド外の波長を自然に排除する。しかし、ミッションの対象となるスペクトルバンドが隣接していない場合、スペクトル分散の全範囲は、検出器アレイの利用可能な表面を超えることがある。この効果を少なくとも部分的に補償するために、CNESはまた、検出器アレイ表面上へより遠い波長を「シフトバック」するように、複数の次数のための交差格子を使用することを提案した。しかし、回折次数の重ね合わせが再び起こり、同様にゴーストの危険性も生じ、これらは交差格子の初期の利点を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
測定の精度を維持または改善しながら、このタイプの機器のコンパクトさをさらに改善するために、本発明の第1の態様は、複数のスペクトル測定バンドを有する分光光度装置を提供する。該分光光度装置は、以下を備える。
【0007】
入射瞳と、出力焦点面とを有する望遠鏡であって、入射瞳を通って望遠鏡に入射する放射を出力焦点面に集束させるように適合された望遠鏡。
【0008】
望遠鏡の出力焦点面上に重ね合わされる入射口を有する分光光度計であって、スペクトル拡散部品と、分光光度計の入射口と光学的に共役であるアレイ検出器(26)と、を含む分光光度計。
【0009】
検出器は、スペクトル拡散部品によって生成されるスペクトル拡散の方向に平行な第1の検出方向に延在し、第1の検出方向に垂直な第2の検出方向にも延在する光電面を有する。
【0010】
本発明に係る分光光度装置は、さらに、以下を備える。
【0011】
望遠鏡の入射瞳に配置され、スペクトル測定バンドに対しそれぞれ専用の独立したサブ瞳を形成する複数の開口を有する瞳マスク。
【0012】
瞳分離プリズムであって、瞳分離プリズムすべてにおいて共通のプリズム
屈折方向に対応するサブ瞳を通る放射の部分を各瞳分離プリズムが
屈折させるように開口に対して1対1で配置され、他のすべての瞳分離プリズムのプリズム
屈折の大きさと異なるプリズム
屈折の大きさを有し、第2の検出方向が、望遠鏡および分光光度計を通るプリズム
屈折方向に光学的に対応するように、分光光度計が瞳分離プリズムに対して配向される、瞳分離プリズム。
【0013】
可能な限り湾曲した複数のスリットであって、スリットの長手方向が望遠鏡を通るプリズム
屈折方向に光学的に対応するように分光光度計の入射口に配置され、それぞれが、瞳マスクの開口の1つと、瞳分離プリズムの1つとを通って、望遠鏡を通る、望遠鏡の指向方向から生ずる前記放射のそれぞれの部分を受光するように、スリットが互いにオフセットされる、スリット。
【0014】
それぞれがスペクトル測定バンドの1つを決定するフィルタの第1のセットであって、第1のセットのフィルタは、検出器の光電面の前に配置され、瞳マスクの開口の1つを通り望遠鏡に入射する放射の部分を用いて分光光度計により形成される、スリットの1つのみの像上に第2の検出方向に沿って重ね合わされる検出開口内で、第1のセットのフィルタのそれぞれが有効であり、それぞれのフィルタの検出開口は第1の検出方向に延在する、フィルタの第1のセット。
【0015】
これにより、本発明に係る分光光度装置では、各スペクトル測定バンドは、望遠鏡の入射瞳に配置された瞳マスクの開口の1つ、瞳分離プリズムおよび瞳マスクのこの開口に関連付けられたスリット、ならびにアレイ検出器の前に配置されたフィルタの1つによって決定される。したがって、分光光度装置は、単一の望遠鏡、単一の分光光度計、および単一の検出器を備え、これらは、すべてのスペクトル測定バンドにおいて共有される。このため、分光光度装置の重量、寸法及び価格は、分光光度測定を同時に行うことができる複数のスペクトルバンドに対して低減される。
【0016】
瞳孔分離プリズムの下流では、全てが、あたかも各バンドが異なる観察方向に関連しているかのように生じる。異なるバンドの位置合わせは、瞳分離プリズムで行われる。
【0017】
したがって、アレイ検出器の光電面の別々の部分は、アレイ検出器の光電面のそれら部分の前に配置されるフィルタによって画定されるスペクトルバンドに1対1で割り当てられる。これにより、フィルタリングが大幅に簡略化され、スペクトル拡散部品の上流に配置された特定のフィルタを補うことができるので、フィルタリングがより効率的になる。
【0018】
したがって、本発明の装置は、検出器のアレイ上にスペクトルバンドを配置する際の選択の自由を可能にし、より多くのバンドに適応することを容易にし、良好なバンド間除去を可能にし、迷光除去における優れた性能を可能にする。瞳の寸法は、特に回折の均質性の目的のために、各バンドに対して独立して適合されてもよい。最後に、望遠鏡の像面湾曲が分光光度計の像面湾曲を補償することが可能である。
【0019】
したがって、分光光度測定の結果において、別々のスペクトルバンドに属する放射部分の間で混合または蓄積は発生しない。
【0020】
ここで述べる本発明の装置の改良は、任意であり、互いに独立して、または組み合わせて実施することができる。
【0021】
スペクトルバンドの1つと、異なるスペクトルバンド専用の検出器の部分との間で、例えば、装置内の放射の漂遊反射により、依然として生じる可能性がある放射の伝達をさらに低減するために、装置は、スペクトル測定バンドに1対1の対応をも有する少なくとも1つのフィルタの第2のセットをさらに備えることができる。この第2のセットのフィルタは、瞳孔分離プリズムに、または分光光度計の入射口とスペクトル拡散部品との間の分光光度計の内部に配置されてもよい。そのうえ、同一のスペクトルバンドに対応する第1のセットのフィルタと、各第2のセットのフィルタとが、瞳マスクの開口の1つのみを通り望遠鏡に入射する放射の同一の部分によって横断される。
【0022】
再び、スペクトルバンドの1つと、異なるスペクトルバンド専用の検出器の部分との間で生じる可能性がある放射の伝達を低減する目的で、装置は、望遠鏡の出力焦点面または望遠鏡の中間像面に近接して配置される少なくとも1つのフィールドマスクを備えてもよい。各フィールドマスクは、スリットに対応するか、またはスリットに重ね合わされた像を有する開口を有し、これらの像は、瞳マスクの開口を通り望遠鏡に入射する放射を用いて、フィールドマスクと望遠鏡の出力焦点面との間に構成される望遠鏡の一部によって形成される。
【0023】
スペクトル拡散部品のサイズを低減するために、装置は、スリットに対して配置される、瞳位置合わせプリズムと呼ばれる追加のプリズムセットをさらに備えてもよい。そのうえ、これらの瞳位置合わせプリズムは、スリットから到来するすべての放射部分のそれぞれが瞳マスクの開口の1つを通って望遠鏡に入射した後に、該放射部分を、スペクトル拡散部品上で互いに重ね合わせるように適合される。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、スペクトル拡散成分は回折格子であってもよい。そのうえ、分光光度計は、瞳マスクの開口を通って望遠鏡に入射した放射が回折格子によって反射されるように配置されてもよい。さらにより好ましくは、特に分光光度計により占有される空間をさらに低減するために、回折格子は、近リトロー(near−Littrow)と呼ばれる構成を有してもよい。このような構成では、回折格子に入射する放射と、該格子から出射する放射とは、これらの光路の少なくとも一部に近い光路を有する。特に、回折格子に入射する放射と、同じ回折格子から出射する放射とは、入射する放射に対するコリメート機能および出射する放射に対する集束機能を有する、分光光度計の同じミラーによって反射される。
【0025】
有利なことには、装置は、望遠鏡内の放射の伝播方向に対して望遠鏡の入射瞳の上流に配置された偏光スクランブラをさらに備えることができる。このような偏光スクランブラは、瞳マスクの開口の1つを通る放射の各部分において異なる偏光を混合する。
【0026】
一般に、本発明に係る装置は、瞳マスク内の少なくともN個の開口、N個の瞳分離プリズム、N個のスリット、および各フィルタのセット内のN個のフィルタ、ならびに必要に応じてN個の瞳位置合わせプリズムを備え、N個のスペクトルバンドにおいて同時に分光光度測定を可能にすることができてもよく、Nは、2以上12以下の整数、好ましくは4以上8以下の整数である。
【0027】
望遠鏡は、3ミラー型であってもよい。
【0028】
本発明の別の任意の改良によれば、瞳マスクは、追加の開口を有し、装置は、結像システムと、望遠鏡の射出瞳に配置されるビーム分割部品とをさらに含むことができる。ビーム分割部品は、瞳マスクの開口を通って望遠鏡に入射した放射の部分がスリットの方向に伝送されると同時に、瞳マスクの追加の開口を通って望遠鏡に入射した放射の追加の部分が結像システムに伝送される(この点でこのように呼ばれる)ように適合される。したがって、装置の望遠鏡は、分光光度計および任意の結像経路により共有され得る。
【0029】
さらに、本発明の第2の態様は、地球の大気中の測定領域内に存在する化学成分を測定するための方法を提供し、前記方法は、以下のステップを含む。
【0030】
本発明の第1の態様に係る複数のスペクトル測定バンドを有する分光光度装置を衛星に搭載するステップ1と、
衛星を地球の周りの軌道に配置し、衛星が測定領域上を飛行するようにするステップ2と、
望遠鏡の指向方向を測定領域に向けるステップ3と、
望遠鏡の指向方向を測定領域に向けた状態を維持しながら、分光光度計の検出器を作動させ、検出器の画素からの読み出し信号を捕捉し、これらの読み出し信号は、分光光度計を通り、スリットと1対1で光学的に関連付けられた検出器の光電面内の幾何学的バンド内で個々に、スペクトル測定バンドの1つにおける測定領域から生じる放射のスペクトル強度分布を提供するステップ4。
【0031】
好ましくは、衛星は、望遠鏡の指向方向が、ステップ4の間に衛星の天底方向に重ね合わされるように配向されてもよい。したがって、測定は、衛星と陸地または海洋表面との間に位置する大気の垂直柱に正確に関係することができる。
【0032】
再び好ましくは、衛星は、プリズム
屈折方向が、ステップ4の間、出力焦点面において望遠鏡によって形成される測定領域の像の進行方向に垂直であるように配向されてもよい。このような向きは、進行による画像ぼけの影響を制限しながら、天底に向けられた視線の場合に、経路に垂直に隣接する複数の測定点を捕捉することを可能にする。
【0033】
最後に、特に、地球表面上で発生している炭素化合物の流れを特徴付けることを意図した宇宙ミッションの場合、装置のスペクトル測定バンドの少なくとも1つは、二酸化炭素またはエーロゾル化合物などの少なくとも1つのガス状炭素化合物の吸収線を含んでもよい。
【0034】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、いくつかの非限定的かつ例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明に係る、複数のスペクトル測定バンドを提供する分光光度装置の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る分光光度装置に使用することができ、瞳分離プリズムに関連する瞳マスクの可能な構成を示す。
【
図3】
図3は、本発明に係る分光光度計のための望遠鏡の出力焦点面における図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る分光光度装置に使用されるアレイ検出器の光電面の使用を示す。
【
図5】
図5は、
図3に対応する斜視図であり、瞳位置合わせプリズムの実施態様を示す。
【
図6】
図6は、衛星に搭載された、本発明に係る分光光度装置の使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
明確さのために、これらの図に表される要素の寸法は、実際の寸法または実際の寸法比に対応しない。さらに、異なる図面における同一の参照番号は、同一の要素または同一の機能を有する要素を示す。
【0037】
図1によれば、本発明に係る分光光度装置100は、望遠鏡10と分光光度計20とを備えている。Aで示される有向実線は、放射の伝播方向に従うように配向された装置100の光軸を示す。
【0038】
望遠鏡10は、当業者に知られているモデルの1つ、例えば、図示のような3ミラーモデルであってもよい。特に、それは、Korsch望遠鏡であってもよい。文字Eは望遠鏡10に入射する放射の入射口を示し、DPは望遠鏡10の指向方向を示し、PFは望遠鏡10の出力焦点面を示し、他の参照符号は以下の意味を有する。
【0039】
11, 12、13 それぞれ、望遠鏡10の一次、二次、三次ミラー
15 任意の偏光スクランブラ
16 任意の
方向転換ミラー
PE 望遠鏡10の入射瞳
PS 望遠鏡10の射出瞳
17 入射瞳PEに配置された瞳マスク
18 任意のフィールドマスク
19 射出瞳PSに配置された任意のビーム分割部品
周知の方法で、望遠鏡10は、指向方向DPにおいて、入射口Eから非常に離れて位置するシーンの中間像を形成してもよい。そして、この中間像は、望遠鏡10の中間焦点面PIにおいて、図示されたタイプの望遠鏡における一次ミラー11と二次ミラー12との間に配置される。
【0040】
偏光スクランブラ15および
方向転換ミラー16は任意であり、望遠鏡10の入射口Eに配置される。これらの2つの光学部品のうちの1つのみを装置100で使用することが可能である。それらの実施態様は、当業者にも知られているので、それらを再度説明する必要はない。
【0041】
示されている本発明の例示的な実施形態では、入射瞳PEは、入射口Eを通って望遠鏡10に入射する放射の伝播方向において一次ミラー11の上流に位置している。射出瞳PSは、3つのミラー11、12、および13の連続の後の入射瞳PEの像である。
【0042】
望遠鏡10における光学的共役の原理により、遠隔源から指向方向DPに発生し、入射口Eを通って望遠鏡に入射する放射ビームは、出力焦点面PFに集束される。
【0043】
瞳マスク17は、入射瞳PE内に配置され、入射瞳PE内に分布するいくつかの独立した開口を有する。入射瞳PEにおけるこれらの開口の位置および寸法は、装置100の異なる実施形態間で、特に、放射の放射測定基準、スペクトル基準、およびサイズ制約、並びにビームが妨害されずに望遠鏡10を通過することを可能にすることに基づいて、変化し得る。
図2において、O1〜O4は、本明細書の説明のために使用される、4つの分光光度測定バンドを有する装置100のための、瞳マスク17の4つの開口を示す。以下に説明するように、瞳マスク17の開口O1〜O4は、分光光度測定のスペクトルバンドに1対1で専用化される。
図2に示す追加の開口O5は、任意であり、瞳分離プリズムを有しておらず、分光光度測定のスペクトルバンドに対応しておらず、その有用性については後述する。したがって、瞳マスク17の開口の各々は、入射瞳PE内に独立したサブ瞳を形成する。
【0044】
瞳分離プリズムは、瞳マスク17の開口O1〜O4の各々に対して1対1で配置され、4つのスペクトル測定バンドの考察される実施例について、
図2の参照番号31〜34によって示される。瞳分離プリズム31〜34の各々は、瞳マスクの対応する開口を完全に覆い、その結果、この開口を通過する放射ビームは、プリズムの頂角および向きに従ってプリズムによって完全に
屈折される。瞳分離プリズム31〜34からの
屈折された出射ビームは、
図1および
図2において破線で表され、
屈折されたビームは、参照番号F1〜F4で示されている。瞳分離プリズム31〜34によって生成される
屈折は、
図2にXで示される少なくとも1つの方向で互いに異なる。そして、瞳マスク17の開口O1〜O4の1つを通過する全ての放射ビームF1〜F4は、出力焦点面PFの別々の位置の各々に収束し、これらの位置は、瞳分離プリズム31〜34によって生成されるビーム
の屈折によって決定される。出力焦点面PFにおけるこれらの収束位置は、ミラー11、12、および13上の反射による方向Xに対応する方向xに平行にオフセットされる。この理由から、方向Xおよびxは、共にプリズム
屈折方向と呼ぶことができる。
【0045】
装置100の改良によれば、第1のフィールドマスク18は、中間焦点面Pl内に配置されてもよい。この第1のフィールドマスク18は、ミラー12および13による光学的共役によって、出力焦点面PFに配置され、以下に説明されるスリットに対応する開口を有する。このような第1のフィールドマスク18は、必要に応じて追加の開口O5を含む、瞳マスク17の開口O1〜O4から到来する放射ビームの有用な部分の遮断を回避する周辺マージンを有し、指向方向DPの周りの装置100の画角を制限する。
【0046】
射出瞳PS内に配置される任意の部品19は、放射ビームF1〜F4を
折り返しのための単純なミラーであってもよい。しかし、瞳マスク17が追加の開口O5を有する場合、部品19は、
図2においてF5で示されるこの追加の開口O5から到来する放射ビームを、開口O1〜O4から到来する他のビームF1〜F4とは別に、補助結像システム60に向かって方向付けるように適合されてもよい。このため、この説明の一般的な部分では、部品19はビーム分割部品と呼称される。これもまた任意である結像システム60は、指向方向DPにあるシーンの、望遠鏡10によって形成された像を取り込むことができる。例えば、ビーム分割部品19は、ミラー11、12、および13によって形成される、追加の開口O5からの像の位置に、射出瞳PS内に位置する開口O’を有する平面ミラーであってもよい。
図1に示す本発明の特定の実施形態では、ビーム分割部品19と結像システム60との間にて補助
折り返しミラー61が使用される。瞳マスク17の追加の開口O5、ビーム分割部品19、および適用可能な場合には補助
折り返しミラー61を有する結像システム60から構成される結像経路は、本発明に必須ではなく、本発明の原理にも関連しないことを思い出されたい。この結像経路が設けられる場合、例えば、追加の開口O5を通って望遠鏡10に入射する放射ビームF5の通過領域にて偏光スクランブラ15に穴を設けることによって、追加の開口O5における偏光スクランブラ15の効果を排除することが有利であり得る。
【0047】
スリットマスク40が望遠鏡10の出力焦点面PFに配置されている。したがって、
図3は、マスク40の平面図である。これは、スリットの外側の放射を通さず、また、これは、装置100のスペクトルバンドと同数のスリットを含む。参照番号41〜44で示されるスリットは、瞳分離プリズム31〜34による
屈折後に瞳マスク17の開口O1〜O4からそれぞれ到来する放射ビームの収束領域に配置される。したがって、スリット41〜44は、プリズム
屈折方向xに沿って互いにオフセットされており、また、この方向において、実質的に長手方向に配向されている。したがって、x方向に平行なスリット41〜44間のオフセットは、瞳分離プリズム31〜34の頂角によって決定される。全てのスリット41〜44は、好ましくは、同じ長さを有するが、方向xに沿った2つの連続したスリットは、連続したスリットを形成するように一緒になる可能性がある。
【0048】
スリット41〜44は、分光光度計20による像面湾曲に従うように、わずかに湾曲することが可能である。この場合、分光光度計20の像面湾曲は、望遠鏡10によって生成される同一の像面湾曲によって
補償されてもよい。
【0049】
別のフィールドマスク(図示せず)が、放射の伝播方向においてスリットマスク40の上流、スリットマスク40の前方数ミリメートルに配置されてもよい。この別のフィールドマスクは、スリット41〜44に対応する開口を有し、指向方向DPの周りの装置100の画角に追加の制限を提供する。
【0050】
分光光度計20は、当業者に知られているタイプのうちの1つであってもよいが、分光光度計の寸法を縮小するためには、近リトロー構成が特に有利である。例えば、
図1に示すように、分光光度計20は、スリット41〜44を出る放射ビームF1〜F4をコリメートするための3つのミラー21、22、および23と、反射によって動作するブレーズド回折格子24と、アレイ像検出器26とを含むことができる。ブレーズド回折格子24は、本明細書の一般的な部分で述べたスペクトル拡散部品を形成する。近リトロー構成では、スリット41〜44から出るビームF1〜F4は、スリット41〜44から回折格子24に到達するために移動した光路に近いが、放射の伝播方向が逆である光路に沿って、回折格子24によって一連のミラー21〜23に向かって反射される。そして、スリット41〜44は、分光光度計20によって検出器26の光電面上に結像される。格子24は、スリット41〜44を出る放射ビームF1〜F4の回折を生成し、その結果、検出器26上の各スリット41〜44からの像が、スペクトル広がり方向と呼ばれる共通の方向に平行に拡散する。分光光度計20は、スペクトル広がり方向が、分光光度計20によって検出器26上に形成されるプリズム
屈折方向xの像に垂直であるように、瞳分離プリズム31〜34に対して配向される。
図4は、このようにして検出器26の光電面上に現れる像の内容を示す。これは、各々が分光光度計20を通り、スリット41〜44のうちの1つの画像から生じる4つの幾何学的バンドB1〜B4からなる。したがって、各幾何学的バンドは、対応するスリットからの画像に基づいており、スペクトル広がり方向に平行に延びている。幾何学的バンドB1〜B4は、瞳分離プリズム31〜34によって生成されるプリズム
屈折に従って、スペクトル広がり方向に垂直に、互いに対してオフセットされる。スペクトル広がり方向は、この説明の一般的な部分では第1の検出方向と呼ばれ、
図4ではD1で示されている。D2で示され、第2の検出方向と呼ばれる、D1に垂直な方向は、プリズム
屈折方向xと光学的に共役である。
【0051】
検出器26の光電面上にそのように形成された幾何学的バンドB1〜B4の、分光光度測定のスペクトルバンドへの割り当ては、フィルタの第1のセットと呼ばれるフィルタのセット27によって達成される。セット27のフィルタは、検出器26の光電面の直前に維持され、各フィルタは、対応する幾何学的バンド全体をカバーする。したがって、幾何学的バンドB1〜B4の1つにおいて検出器26によって検出される放射は、この幾何学的バンドをカバーするこのセット27のフィルタのスペクトルバンド幅に制限される。検出器26の光電面の1つの画素から検出方向D1の次の画素への遷移は、これらの画素が下に位置するフィルタのスペクトルバンド内の波長の変化に対応する。従って、幾何学的バンドB1〜B4の1つの中の検出方向D1に平行な、検出器26の同じ列の画素を読み取ることは、この幾何学的バンドに対応するスペクトルバンドにおける放射のスペクトル強度分布の評価を提供する。同時に、分光光度測定の1つのスペクトルバンドから別のスペクトルバンドへの遷移は、幾何学的バンドを変化させるための検出方向D2に沿った移動に対応する。検出器26では、指向方向DPの周りの装置100の画角は、スリット41〜44の長さによって制限されるが、検出方向D2に沿った選択によって補足的に制限されてもよく、その画素は、幾何学的バンドB1〜B4の各々の中で実際に読み取られる。おそらく、検出方向D2に整列された、選択された画素から到来するが、幾何学的バンドB1〜B4の同じバンドに属する読み出し信号は、信号対雑音比を増加させるために一緒に加算されてもよい。好ましくは、空間情報を提供し、それによって大気中の隣接する列における測定を提供する、隣接する画素の複数のグループが定義され得る。したがって、各バンドにp個の画素があり、大気中のq個の列の測定が望まれる場合、それぞれp/q個の隣接画素のq個のグループを定義すれば十分である(例えば、p=300、q=3の、100個の隣接する画素のグループのそれぞれは、大気中の3つの列の測定を提供する)。
【0052】
あるいは、第1のセット27のフィルタのスペクトル特性と同一のスペクトル特性を有する追加のフィルタのセットを、望遠鏡10の入射瞳PEおよびスリット41〜44に、またはこれらの2つの位置のうちの1つだけに配置してもよい。このような追加のフィルタは、入射瞳PEに配置されると、瞳マスク17の開口O1〜O4の各々に1対1で割り当てられる。例えば、それらは、瞳分離プリズム31〜34によって担持されてもよい。もちろん、開口O1〜O4の各々に割り当てられた追加のフィルタは、この開口を出て装置100を通って検出器26に進む放射ビームF1〜F4のうちの1つに応じて、第1のセット27のフィルタと同一であるか、または互換性がなければならない。同じ状態は、スリット41〜44に、またはその近くに配置された追加のフィルタにも当てはまる。
【0053】
図1はさらに、一方ではスリットマスク40を、他方ではフィルタのセット27を有する検出器26を、ミラー21に対して反対方向かつ横方向にシフトするために使用される、2つの任意の
方向転換ミラー25aおよび25bを示す。したがって、回折格子24に向かう放射ビームF1〜F4の経路に沿って、
方向転換ミラー25aはスリットマスク40とミラー21との間に配置され、回折格子24から戻る放射ビームF1〜F4の経路に沿って、
方向転換ミラー25bはミラー21とフィルタのセット27との間に配置される。このような構成は、特に分光光度計20が、二次的な熱放射から保護するクライオスタットに含まれる場合に、妨害の問題を解決する。望遠鏡10の三次ミラー13を出る放射ビームF1〜F4が横切るクライオスタットの光学窓は、望遠鏡10の射出瞳PSと出力焦点面PFとの間に配置することができる。このようなクライオスタット窓は、
図1に参照番号30で示されている。
【0054】
望遠鏡10の入射瞳PE内のサブ瞳のオフセットのために、検出器26上に幾何学的バンドB1〜B4を形成する放射ビームF1〜F4は、回折格子24において互いに横方向に距離を置いてもよい。この場合、ビーム間のこれらの距離は、回折格子24が、問題のある空間を占めるほど大きな寸法を有することを必要とし、場合によっては、製造するには大きすぎることがある。この問題を解決するために、
図5に示されている、瞳位置合わせプリズムと呼ばれる追加のプリズム51〜54を、スリット41〜44に対して、好ましくは分光光度計20の側に、1対1で配置してもよい。すなわち、瞳位置合わせプリズム51〜54は、検出器26の光電面上の幾何学的バンドB1〜B4の位置を変化させないが、回折格子24で放射ビームF1〜F4を互いに重ね合わせること、または少なくともそれらを互いに接近させることを可能にする。これにより、回折格子24を小型化することができる。適切な場合には、瞳位置合わせプリズム51〜54の各々は、瞳位置合わせプリズムが配置されるスリットに対応するスペクトル測定バンドと相関して、上述のような追加のフィルタを有してもよい。任意選択的に、各瞳位置合わせプリズムは、望遠鏡の射出サブ瞳に対応する、瞳マスク17の開口O1〜O4から望遠鏡10によって形成される像上により正確に分光光度計20の入射瞳を重ね合わせるために、わずかに傾斜してもよい。
【0055】
プリズム51〜54の面上での望ましくない反射から生じる迷光成分を抑制するために、プリズム51〜54の数ミリメートル内で、放射の伝播方向に対して瞳位置合わせプリズム51〜54の下流に開口28を有するマスクを配置することもできる。
【0056】
フィルタによって決定される装置100の分光光度測定のスペクトルバンドは、近赤外線に位置してもよい。これらのスペクトルバンドは、例えば、バンドB1については[757.8nm;767.5nm]、バンドB2については[1593.8nm;1717.2nm]、バンドB3については[2018.8nm;2048.5nm]、バンドB4については[1782.4nm;1707.0nm]であってもよい。これらのスペクトルバンドは、特に、地球表面で生じる炭素化合物のガス流を特徴付けるための宇宙ミッションに適合される。
【0057】
装置100の光学部品には、再び例として、以下の数値を採用することもできる。
【0058】
望遠鏡10の焦点距離:約122mm
望遠鏡10の入射瞳の寸法:約40×26mm
2
スリット41〜44の各々の寸法:約0.05mm×1.30mm、検出方向D2に沿う幾何学的バンドB1〜B4の各々について約100ピクセルの幅を生成する
回折格子24の寸法:約80mm×54mm
回折格子24の線密度:1ミリメートルあたり60.39本、以下の回折次数を生成:バンドB1について40、バンドB2について19、バンドB3について15、およびバンドB4について18
回折格子24のブレーズ角:67.30°
回折格子24への放射の入射角:70.30°
近リトロー構成の分光光度計20の焦点距離:243nm
アレイ検出器26のサイズ:1000×1000ピクセル
検出方向D1に沿う幾何学的バンドB1〜B4の各々の長さ:約1000ピクセル
瞳分離プリズム31〜34の頂角:幾何学的バンドB1を生成するプリズム31について20.41°、幾何学的バンドB2を生成するプリズム32について6.82°、幾何学的バンドB3を生成するプリズム33について6.66°、および幾何学的バンドB4を生成するプリズム34について18.63°、検出方向D2に沿って、2つの隣接する幾何学的バンドB1〜B4の間に約150ピクセルの間隔を生成する。
【0059】
これらの条件下で、装置100は、70kg以下の質量と、900mm×620mm×450mm以下の寸法とを有してもよく、分光光度計を収容するが、望遠鏡10の入射口Eの周りに配置されるバッフルを除くクライオスタットを含む。
【0060】
最後に、
図6は、人工衛星上での、今説明した装置100の使用を示す。衛星Sは、地球Tを周回している。装置100の使用中、人工衛星Sは、好ましくは、指向方向DPが地球Tの中心CTに向かうように方向付けられる。したがって、指向方向DPは、図示のように、天底に向かうように方向付けられる。さらに、プリズム屈折方向Xが、TSで示される地面に沿った人工衛星Sの経路に垂直であるように、衛星Sは、好ましくは、相応に配向された指向方向DPの周りを回転する。換言すれば、望遠鏡10によって出力焦点面PFに形成される地球表面の像は、x方向に垂直な方向に進む。このようにして、地球の大気中に含まれる炭素化合物を指向方向DPに沿って特徴付けるために、4つのスペクトルバンドにおいて分光光度測定を同時に得ることができる。同時に得られる測定は、同時性がアレイ検出器26の画素読み出し制約によってのみ制限される測定を意味すると理解される。
【0061】
本発明は、上記で詳述した実施形態に関連してその二次的な態様を変更することによって再現することができることを理解されたい。特に、任意の数のスペクトル測定バンドを有する分光光度装置を得るように適合させることができる。最後に、与えられた数値は、単に非限定的な例として提供されたことを思い出すであろう。