(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654736
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】結像およびレーザ通信を複合したシステム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/118 20130101AFI20200217BHJP
【FI】
H04B10/118
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-520791(P2019-520791)
(86)(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公表番号】特表2020-504918(P2020-504918A)
(43)【公表日】2020年2月13日
(86)【国際出願番号】FR2017052654
(87)【国際公開番号】WO2018073507
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年6月11日
(31)【優先権主張番号】1660213
(32)【優先日】2016年10月21日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517342903
【氏名又は名称】エアバス・ディフェンス・アンド・スペース・エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】スプランドゥイ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】プランシュ,ジル
【審査官】
後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−087028(JP,A)
【文献】
実開昭60−167451(JP,U)
【文献】
特開2000−321536(JP,A)
【文献】
特開2000−068934(JP,A)
【文献】
特開2005−031449(JP,A)
【文献】
特開2000−216462(JP,A)
【文献】
特開平04−016029(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02388646(EP,A1)
【文献】
特開2006−87105(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/096405(WO,A1)
【文献】
特表2007−511968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/118
H04B 7/185
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像とレーザ信号による通信とのための複合されたシステムであって、
少なくとも1次ミラー(1)と2次ミラー(2)とを備え、少なくとも1次ミラーおよびその次の2次ミラー上のシーンから受けた放射線の反射によって、指向方向(DP)に位置する前記シーンの像を焦点面(PF)に形成するように構成された望遠鏡(10)と、
前記望遠鏡(10)の前記焦点面(PF)に配置され、前記シーンの像を捕捉することが可能なイメージセンサ(5)と、
レーザ送信信号を生成するように構成されたレーザ放射線源(6)とを備え、
結像とレーザ信号による通信とのための複合された前記システムは、前記望遠鏡の前記指向方向が、人工衛星のフレームに対して一定になるように、該フレーム上に固定されるように設けられ、
前記レーザ放射線源(6)は、少なくとも前記2次ミラー(2)およびその次に前記1次ミラー(1)によって、前記レーザ送信信号を構成するレーザ放射線が反射されるよう、前記システムの外部のレーザ通信受信機(R)に向かって放射するように構成されることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記望遠鏡(10)は、3次ミラー(3)をさらに含み、前記1次ミラー(1)次に2次ミラー(2)その次に3次ミラー上と連続する前記シーンから受けた前記放射線を反射させることによって、前記望遠鏡の前記焦点面(PF)に該シーンの像を形成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、
前記システムの外部の前記レーザ通信受信機(R)に向かって放射するために、前記レーザ送信信号を構成する前記レーザ放射線が、前記3次ミラー(3)によって反射されることなく、前記2次ミラー(2)その次に前記1次ミラー(1)によって反射されるように構成され、
前記レーザ送信信号を構成する前記レーザ放射線は、前記1次ミラーおよび前記2次ミラーによって反射される放射線に対しては有効であって、前記3次ミラーによって反射される放射線に対しては有効でない前記望遠鏡(10)の中間焦点面(PI)に向かって導光される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは、
前記システムの外部の前記レーザ通信受信機(R)に向かって放射するために、前記レーザ送信信号を構成する前記レーザ放射線が、前記3次ミラー(3)、次に前記2次ミラー(2)、その次に前記1次ミラー(1)によって連続的に反射されるように構成され、
前記レーザ送信信号を構成する前記レーザ放射線が、前記望遠鏡(10)の前記焦点面(PF)における前記イメージセンサ(5)から離れた位置に導光されるように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは、前記望遠鏡(10)における2次焦点面(PS)と呼ばれる前記焦点面(PF)の画像を生成するように構成された焦点面複製素子(7)をさらに含み、
前記システムの外部の前記レーザ通信受信機(R)に向かって放射されるよう、前記システムは、
前記レーザ送信信号を構成するレーザ放射線が、前記焦点面複製素子(7)によってイメージセンサ(5)上に光学的に重畳された、前記2次焦点面(PS)上の位置に導光されるように構成され、
前記レーザ放射線源(6)によって生成された前記レーザ送信信号の前記レーザ放射線が、前記焦点面複製素子によって前記3次ミラー(3)に向けられ、その後、連続的に、前記3次ミラーによって反射され、次に前記2次ミラー(2)によって反射され、その次に前記1次ミラー(1)によって反射されるように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記焦点面複製素子(7)は、ミラーまたはダイクロイックプレートを備え、
前記ミラーまたは前記ダイクロイックプレートは、
前記レーザ送信信号の前記レーザ放射線および前記シーンから受けた前記放射線のうちの一方を反射するように構成され、
前記ミラーまたは前記ダイクロイックプレートによって反射されることなく、前記レーザ送信信号の前記レーザ放射線および前記シーンから受けた前記放射線のうちのもう一方を送信するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、外部レーザ通信信号を受信する経路をさらに備え、
前記受信する経路は受信検出器を備え、
前記受信する経路は、前記システムの外部の前記レーザ通信受信機(R)によって放射された前記外部レーザ通信信号の放射線が、前記受信検出器に到達する前に、少なくとも前記1次ミラー(1)次に前記2次ミラー(2)によって反射されるように構成される、
請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、
前記システムによって放射された前記レーザ送信信号の前記レーザ放射線、および、前記システムの外部の前記レーザ通信受信機(R)によって放射された、前記受信検出器に到達する前記外部レーザ通信信号の前記放射線が、伝播の方向と反対に移動しながら前記望遠鏡(10)内の同一の光路をたどるように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
地球の周りの軌道上に配置される人工衛星(100)であって、
結像とレーザ信号による通信とのための複合された、請求項1から8のいずれか1項に記載のシステムであって、前記望遠鏡(10)の前記指向方向(DP)が前記人工衛星(100)のフレーム(101)に対して一定になるように、該フレーム上に固定される、システムと、
衛星配向手段(11)と、
前記レーザ送信信号の放射方向(DE)を目標方向に向けるために前記衛星配向手段(11)を制御するように構成され、それによって、前記結像とレーザ信号による通信とのための複合されたシステムが前記レーザ送信信号を前記目標方向に放射するようにする、姿勢および軌道制御システム(12)と、を備え、さらに、
ジオロケーション信号を受信し、受信した前記ジオロケーション信号に基づいて前記人工衛星(100)の位置を計算するように構成されたジオロケーション装置(14)と、
前記ジオロケーション装置(14)によって計算された人工衛星(100)の位置と、前記人工衛星の外部の前記レーザ通信受信機(R)の座標とに基づいて、前記目標方向を計算するように構成され、それによって、前記目標方向が、前記人工衛星から前記レーザ通信受信機に向くようにする、モジュール(13)とを備える、人工衛星(100)。
【請求項10】
前記ジオロケーション装置(14)は、GPS装置である、請求項9に記載の人工衛星(100)。
【請求項11】
前記人工衛星の位置を計算するための前記ジオロケーション装置(14)の精度および前記衛星配向手段(11)の精度は、前記レーザ送信信号の前記放射方向(DE)が前記望遠鏡(10)に対して一定に維持されつつ、前記人工衛星から放射された前記レーザ送信信号が前記人工衛星の外部の前記レーザ通信受信機(R)によって受信されるように調整される、請求項9または10に記載の人工衛星(100)。
【請求項12】
前記人工衛星は、前記人工衛星の外部の前記レーザ通信受信機(R)によって放射された外部のレーザ信号に基づいて動作する、目標捕捉および追跡検出器を備えず、
前記人工衛星の位置を計算するための前記ジオロケーション装置(14)の精度および前記衛星配向手段(11)の精度は、前記衛星配向手段が、前記レーザ送信信号の前記放射方向(DE)を前記目標方向に向けるように制御されたときに、前記人工衛星から放射された前記レーザ送信信号が前記人工衛星の外部の前記レーザ通信受信機によって受信されるように調整される、請求項11に記載の人工衛星(100)。
【請求項13】
地球の周りの軌道上にある、請求項9から12のいずれか1項に記載の人工衛星(100)に導入される、レーザ信号による通信の方法であって、前記方法は、
/1/ ジオロケーション信号を受信し、受信した前記ジオロケーション信号から前記人工衛星の位置を計算するステップと、
/2/ ステップ/1/で計算された前記人工衛星(100)の前記位置、および、前記人工衛星の外部の前記レーザ通信受信機(R)の座標から、前記人工衛星から前記レーザ通信受信機に向かって放射されるレーザ送信信号の前記目標方向を計算するステップと、
/3/ 計算された前記目標方向にしたがって、前記人工衛星(100)を配向し、前記レーザ通信受信機(R)に向けて前記レーザ送信信号を放射するために前記レーザ放射線源(6)を作動させるステップと、を含み、
ステップ/1/は、前記人工衛星(100)の軌道上での1回の公転の間に複数回実行され、
ステップ/2/およびステップ/3/は、ステップ/1/の最新の実行で計算された前記人工衛星の前記位置を使用して実行される、方法。
【請求項14】
前記人工衛星(100)の軌道高度は、2000km未満であり、
前記レーザ通信受信機(R)は、地球の表面上か、または、2000km未満の異なる軌道高度にある別の地球人工衛星上か、または、静止軌道上にある別の人工衛星上に配置される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像とレーザ通信とが複合されたシステム、該システムを運ぶ人工衛星、および、レーザ信号による通信の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球の周りの軌道にある人工衛星と、地球上または別の人工衛星上に配置され得るレーザ通信受信機との間のレーザ信号による通信は、周知である。一般に、レーザ信号による通信専用の端末が人工衛星に搭載されている。このようなレーザ通信端末は、通常、レーザ放射線源と、レーザ通信制御装置と、レーザ放射を外向きに放出するための光学系と、CPAで示される粗調整配向アセンブリと、FPAで示される微調整配向アセンブリとを備える。放射光学系は、一般に、1次ミラーおよび2次ミラーを含む少なくとも2つのミラーを有する望遠鏡である。粗調整配向アセンブリおよび微調整配向アセンブリは、レーザ通信受信機に向かって指向するように決定される目標方向に従って、端末の放射方向をリアルタイムで指向し、維持するために使用される。そうするために、放射の方向は、軌道データの伝播に基づいてリアルタイムで推定され、該起動データは、地上から人工衛星へ周期的に、例えば、その軌道内の人工衛星の公転周期毎に1回、または1日に1回、ロードされる。換言すれば、衛星座標は、別々の時間に更新され、次いで、目標方向は、レーザ通信受信機の座標と、レーザ送信信号が放射される人工衛星の直近の位置とに基づいて計算される。レーザ送信信号が放射されている間の人工衛星の前記直近の位置、次いでこれらの信号の放射のための目標方向は、衛星座標の最新の更新から計算される。これらの計算は、通常、遠い星から相対的に固定された基準フレームを意味する慣性座標系において行われる。
【0003】
周知の方法では、粗調整配向アセンブリは、2軸ジンバルを含み、2軸ジンバルの上にレーザ通信端末の光学部品が取り付けられるか、または、端末の出力ミラーが取り付けられる。このような粗調整配向アセンブリは、2つの回転軸を有する支持体と、2つの発動機と、必要なコントローラとから構成される。
【0004】
また、周知の方法で、微調整配向アセンブリは、レーザ放射線源とレーザ放射を外方に放出するための光学系との間にある経路であって、レーザ送信信号のレーザ放射の経路に配置された小さな可動ミラーを含む。この可動ミラーは、端末の視野方向を安定させるために、端末内の、発光経路および受光経路に共通する経路である、レーザ送信信号の経路の一部に配置される。このようにして、同じ視野方向に存在する干渉を除去することが可能である。これを行うために、微調整配向アセンブリはまた、アクチュエータと、可動ミラーを方向付けるための追加のコントローラとを備える。
【0005】
さらに、やはり公知の方法で、人工衛星に搭載されたレーザ通信端末は、目標捕捉追跡システム、すなわちATSをさらに備える。このような目標捕捉追跡システムの機能は、人工衛星から放出された信号の送信先である遠隔レーザ通信受信機を、まず検出し、次いで追跡することである。そのようなシステムは、アレイベースの画像検出器を含み、レーザ送信信号の放射方向と遠隔受信機によって放射されたレーザ信号の受信方向との間に生じる偏差に対して、微調整配向アセンブリを少なくとも調整することを制御することができる。
【0006】
文献EP1635485は、人工衛星の姿勢および軌道の制御システムに改良が行われたことを示しており、これにより、人工衛星に搭載されるレーザ通信端末のための粗調整配向アセンブリをなくすことができる。次いで、装置によるレーザ放射の発光のための光学系は、この光学系の光軸がフレームに対して一定になるように、人工衛星のフレームに堅固に固定される。次いで、人工衛星全体を配向することと、微調整配向アセンブリを使用することとの両方によって、端末によるレーザ送信信号の放射方向が目標方向に調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1635485号明細書(2008年10月15日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
人工衛星は、一般に光学部分に望遠鏡を用いて、地球の表面の画像を人工衛星に搭載された撮像機器によって捕捉するような撮像ミッションに、一般的に使用される。レーザ信号の送信による通信は、地球上または別の衛星上に配置され得る遠隔受信機への画像データの送信によく適している。これは、低電力消費で非常に高速なデータ転送を可能にする。しかし、特に配向アセンブリおよび関連する制御システムに起因する、光通信システムの複雑さおよびコストによって、この技術の使用は制限される。
文献EP2388646は、人工衛星に搭載されるように構成され、そして、指定された目標領域の像に加えて、該システムの遠方にあるレーザ放射線源の像を結ぶことによって、視野方向の変化を検出するように構成された結像システムを開示する。目標領域から発せられた放射線およびレーザ放射線源から発せられた放射線の両放射線は、1次ミラーおよび2次ミラーの同じ順序にしたがって、該システムの望遠鏡内で、反射される。
【0009】
この状況に鑑みて、本発明の目的は、上述の人口衛星において、重量、コストおよび発射コスト増加の一因となる、構成要素の数を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述のまたはその他の目的のうちの少なくとも1つを達成するために、本発明の第1の態様は、結像とレーザ信号による通信とのための複合されたシステムを提供する。該システムは、
少なくとも1次ミラー(1)と2次ミラー(2)とを備え、少なくとも1次ミラーおよびその次の2次ミラー上のシーンから受けた放射線の反射によって、望遠鏡の指向方向に位置する前記シーンの像を該望遠鏡の焦点面に形成するように構成された該望遠鏡と、
前記望遠鏡の前記焦点面に配置され、前記シーンの像を捕捉することが可能なイメージセンサと、
レーザ送信信号を生成するように構成されたレーザ放射線源とを備えている。
【0011】
本発明によれば、前記レーザ放射線源は、少なくとも前記2次ミラーおよびその次に前記1次ミラーによって、前記レーザ送信信号を構成するレーザ放射線が反射されるよう、前記システムの外部のレーザ通信受信機に向かって放射するように構成される。言い換えれば、同じ望遠鏡の1次ミラーおよび2次ミラーは、結像する機能、および、レーザ送信信号を放射する機能の2つの機能のために使用される。機能のこの組み合わせによって、結像機能専用の第1の望遠鏡とは別に、レーザ送信信号を放射する機能専用の特別な望遠鏡を設けることを撤廃できる。
【0012】
一般に、本発明では、前記望遠鏡は、3次ミラーをさらに含んでいてもよく、前記1次ミラー次に2次ミラーその次に3次ミラー上と連続する前記シーンから受けた前記放射線を反射させることによって、前記望遠鏡の前記焦点面に該シーンの像を形成するように構成されていてもよい。特に、前記望遠鏡は、地球観測衛星の結像機能に一般的に使用されるように、コルシュタイプであってもよい。
【0013】
1次ミラー、2次ミラー、および3次ミラーを有する本発明のこのような実施形態では、システムは、前記システムの外部の前記レーザ通信受信機に向かって放射するために、前記レーザ送信信号を構成する前記レーザ放射線が、前記3次ミラーによって反射されることなく、前記2次ミラーその次に前記1次ミラーによって反射されるように構成されてもよい。これを行うために、前記レーザ送信信号を構成する前記レーザ放射線は、前記1次ミラーおよび前記2次ミラーによって反射される放射線に対しては有効であって、前記3次ミラーによって反射される放射線に対しては有効でない前記望遠鏡の中間焦点面に向かって導光されてもよい。
【0014】
あるいは、1次ミラー、2次ミラー、および3次ミラーを有する本発明の他の実施形態では、システムは、前記システムの外部の前記レーザ通信受信機に向かって放射するために、前記レーザ送信信号を構成する前記レーザ放射線が、前記3次ミラー、次に前記2次ミラー、その次に前記1次ミラーによって連続的に反射されるように構成されてもよい。この場合、前記システムは、前記レーザ送信信号を構成する前記レーザ放射線を、前記イメージセンサから離れた、焦点面上の位置に導光するように構成されてもよい。レーザ放射線を特定の位置に導くことは、この放射線源から決定された位置まで、レーザ放射線を導入および/または導光するための任意の手段を意味すると理解される。前記任意の手段は、とりわけ、光源がレーザダイオードである場合に、前記位置に該光源を配置することを含む。あるいは、前記任意の手段は、レーザ放射線源から決定された位置までの光路の少なくとも一部について光ファイバによってレーザ放射線を導光することを含む。あるいは、前記任意の手段は、場合によって少なくともミラー、半反射プレートまたはレーザ放射線を光源から決定された位置に伝達する屈折面に基づく任意の光学システムを含む。
【0015】
あるいは、システムは、前記望遠鏡における2次焦点面と呼ばれる前記焦点面の画像を生成するように構成された焦点面複製素子をさらに含んでいてもよい。前記システムは、前記レーザ送信信号を構成するレーザ放射線が、前記焦点面複製素子によってイメージセンサ上に光学的に重畳された、前記2次焦点面上の位置に導光されるように構成されてもよい。そうして、前記レーザ放射線源によって生成された前記レーザ送信信号の前記レーザ放射線は、前記焦点面複製素子によって前記3次ミラーに向けられ、その後、連続的に、前記3次ミラーによって反射され、次に前記2次ミラーによって反射され、その次に前記1次ミラーによって反射される。これにより、前記システムの外部の前記レーザ通信受信機に向かって放射される。本発明のこのような実施形態では、焦点面複製素子は、ミラーまたはダイクロイックプレートを備えていてもよい。前記ミラーまたは前記ダイクロイックプレートは、前記レーザ送信信号の前記レーザ放射線および前記シーンから受けた前記放射線のうちの一方を反射するように構成され、前記ミラーまたは前記ダイクロイックプレートによって反射されることなく、前記レーザ送信信号の前記レーザ放射線および前記シーンから受けた前記放射線のうちのもう一方を送信するように構成されている。
【0016】
必要であれば、前記システムは、外部レーザ通信信号を受信する経路をさらに備えてもよい。そのような前記受信する経路は、受信検出器を備え、該受信する経路は、前記システムの外部の前記レーザ通信受信機によって放射された前記外部レーザ通信信号の放射線が、前記受信検出器に到達する前に、少なくとも前記1次ミラー次に前記2次ミラーによって反射されるように構成されてもよい。したがって、望遠鏡の少なくとも1次ミラーおよび2次ミラーは、前記受信する経路とも共有される。有利なことには、前記システムは、前記システムによって放射された前記レーザ送信信号の前記レーザ放射線、および、前記システムの外部の前記レーザ通信受信機によって放射された、前記受信検出器に到達する外部信号の前記放射線が、伝播の方向と反対に移動しながら前記望遠鏡内の同一の光路をたどるように構成されてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様は、地球の周りの軌道上に配置される人工衛星を提供する。該人工衛星は、
結像とレーザ信号による通信とのための複合された、本発明の第1の態様によるシステムであって、前記望遠鏡の前記指向方向が前記人工衛星のフレームに対して一定になるように、該フレーム上に固定される、システムと、
衛星配向手段と、
前記レーザ送信信号の放射方向を目標方向に向けるために前記衛星配向手段を制御するように構成され、それによって、前記結像とレーザ信号による通信とのための複合されたシステムが前記レーザ送信信号を前記目標方向に放射するようにする、姿勢および軌道制御システムと、を備える。
【0018】
このような衛星では、望遠鏡の指向方向はフレームに対して一定であるので、粗調整配向アセンブリは設けられない。結像機能のための望遠鏡の指向方向は、衛星配向手段のみを使用して調整される。レーザ送信信号の放射方向は、同じ衛星配向手段を使用して調整されてもよいが、場合によっては、放射されたレーザ送信信号のレーザ放射線の光路内で、結像とレーザ信号による通信とのために複合された前記システム内に存在し得る微調整配向アセンブリをさらに使用することもできる。
【0019】
本発明のさらなる特徴によれば、前記人工衛星は、さらに、
ジオロケーション信号を受信し、受信した前記ジオロケーション信号に基づいて前記人工衛星の位置を計算するように構成されたジオロケーション装置と、
前記ジオロケーション装置によって計算された人工衛星の位置と、前記人工衛星の外部の前記レーザ通信受信機の座標とに基づいて、前記目標方向を計算するように構成され、それによって、前記目標方向が、前記人工衛星から前記レーザ通信受信機に向くようにする、モジュールとを備えている。
【0020】
場合によっては、前記人工衛星のジオロケーション装置は、GPS装置、または本発明の人工衛星とは無関係に配備された任意の他のジオロケーション装置であってもよい。
【0021】
本発明の第2の態様による人工衛星の改良によれば、前記人工衛星の位置を計算するための前記ジオロケーション装置の精度および前記衛星配向手段の精度は、前記レーザ送信信号の前記放射方向が前記望遠鏡に対して一定に維持されつつ、前記人工衛星から放射された前記レーザ送信信号が前記人工衛星の外部の前記レーザ通信受信機によって受信されるように調整されてもよい。言い換えれば、人工衛星に搭載された本発明のシステムは、いかなる微調整配向アセンブリも有していなくてもよい。そして、レーザ送信信号の放射方向は、衛星配向手段を使用することによってのみ調整される。
【0022】
有利には、微調整配向アセンブリが使用されない場合、前記人工衛星は、前記人工衛星の外部の前記レーザ通信受信機によって放射された外部のレーザ信号に基づいて動作する、目標捕捉および追跡システムを備えずに済む。この場合、前記人工衛星の位置を計算するための前記ジオロケーション装置の精度および前記衛星配向手段の精度は、前記衛星配向手段が、前記レーザ送信信号の前記放射方向を前記目標方向に向けるように制御されたときに、前記人工衛星から放射された前記レーザ送信信号が前記人工衛星の外部の前記レーザ通信受信機によって受信されるように調整される。したがって、人工衛星に搭載されるレーザ信号による通信システムは、とりわけ、簡素である。
【0023】
最後に、本発明の第3の態様は、地球の周りの軌道上にある、本発明の第2の態様による人工衛星に導入される、レーザ信号による通信の方法を提供する。この通信の方法は、
/1/ ジオロケーション信号を受信し、受信した前記ジオロケーション信号から前記人工衛星の位置を計算するステップと、
/2/ ステップ/1/で計算された前記人工衛星の前記位置、および、前記人工衛星の外部の前記レーザ通信受信機の座標から、前記人工衛星から前記レーザ通信受信機に向かって放射されるレーザ送信信号の前記目標方向を計算するステップと、
/3/ 計算された前記目標方向にしたがって、前記人工衛星を配向し、前記レーザ通信受信機に向けて前記レーザ送信信号を放射するために前記レーザ放射線源を作動させるステップと、を含む。
【0024】
本発明によれば、ステップ/1/は、前記人工衛星(100)の軌道上での1回の公転の間に複数回実行され、ステップ/2/およびステップ/3/は、ステップ/1/の最新の実行で計算された前記人工衛星の位置を使用して実行される。人工衛星の座標を得るためにジオロケーションを使用し、その軌道上で人工衛星の1回の公転の間にジオロケーション動作を数回繰り返すことにより、粗調整指向機構および場合によっては微調整配向アセンブリまでもを撤廃するのに十分な精度を保って人工衛星の位置を提供する。場合によっては、さらに、目標捕捉および追跡システムも、同様に撤廃することができる。
【0025】
本発明による方法が適用される使用において、人工衛星の軌道高度は2000km(キロメートル)未満であってもよく、レーザ通信受信機は、地球の表面上か、または、2000km未満の軌道高度にある別の地球人工衛星上か、または、静止軌道上にある別の人工衛星上に配置されてもよい。
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、いくつかの非限定的な例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、3ミラー望遠鏡の入力光場の領域を示す。
【
図2】
図2〜
図5は、結像とレーザ信号による通信とのための複合されたシステムにおける、本発明の4つの異なる実施形態それぞれについての光線を示す図である。
【
図3】
図2〜
図5は、結像とレーザ信号による通信とのための複合されたシステムにおける、本発明の4つの異なる実施形態それぞれについての光線を示す図である。
【
図4】
図2〜
図5は、結像とレーザ信号による通信とのための複合されたシステムにおける、本発明の4つの異なる実施形態それぞれについての光線を示す図である。
【
図5】
図2〜
図5は、結像とレーザ信号による通信とのための複合されたシステムにおける、本発明の4つの異なる実施形態それぞれについての光線を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明による人工衛星のいくつかの装置を概略的に示す。
【0028】
明確にするために、これらの図に示される要素の寸法は、それらの実際の寸法または実際の寸法比に対応しない。さらに、異なる図に示される同一の参照番号は、同一の素子または同一の機能を有する素子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、最初に、
図2〜
図4において、1次ミラーに対応する1、2次ミラー対応する2、3次ミラーに対応する3の符号で示される3つのミラーを有する望遠鏡10について詳細に説明される。1次ミラー1は、概ね凹面であり、2次ミラー2は凸面であってもよく、3次ミラー3は凹面である。このような望遠鏡では、望遠鏡の入力光場内に含まれる遠方のシーンの像を捕捉するために、望遠鏡の焦点面PFにイメージセンサを配置するための複数の可能性が提供される。第1の可能性は、カセグレン(Cassegrain)視野と呼ばれる領域に、望遠鏡の光軸に近接してイメージセンサを配置することからなる。第2の可能性は、コルシュ(Korsch)視野と呼ばれる、望遠鏡の光軸に対して中心がずれた領域にイメージセンサを配置することからなる。周知の方法では、3ミラー望遠鏡の構成は、カセグレン視野と比較して、コルシュ視野において優れた画質を提供する。さらに、コルシュ視野は、カセグレン視野よりも広い。これらの理由のために、コルシュ構成は、結像に広く使用されている。
【0030】
図1において、参照符号L3は、3ミラー望遠鏡の入力光場の外周境界を示す。L1は、カセグレン視野の周囲境界であり、L2は、コルシュ視野の内側境界である。換言すれば、コルシュ視野は、境界L2とL3との間に含まれる。イメージセンサ5は、コルシュ視野に対応する焦点面PFの領域内に、例えば、望遠鏡の焦点面PF内の画像のスクロール速度Vに垂直に配向された線形センサの形態で配置される。したがって、送信信号を生成するために使用される光源からのレーザ放射線は、3つの位置のうちの1つにおいて、本発明による望遠鏡の光場に導入されてもよい。3つの位置とは、すなわち、
図2に示す実施形態に対応するカセグレン視野の像の内側にある位置E1、
図3に示す実施形態に対応するコルシュ視野の像内のイメージセンサ上に重畳される位置E2、および、
図4に示す実施形態に対応するコルシュ視野の像内にあるがイメージセンサに関してオフセットされる位置E3の3つである。
【0031】
このような3ミラー望遠鏡では、指向方向DPに位置する遠方のシーンから発せられる結像放射線は、最初に1次ミラー1によって反射され、次に2次ミラー2によって反射され、その次に3次ミラー3によって反射され、イメージセンサ5上に収束する。この結像放射線に対応する光線は、図では単一の矢印で示されている。2次ミラー2と3次ミラー3との間の結像放射線の光路において、屈折鏡4が用いられてもよい。
図1の「A」または
図2〜
図5の「A−A」は、焦点面PFに垂直なカセグレン場の光軸を示す。
【0032】
レーザ送信信号を生成するために使用されるレーザ放射線源は、6の符号で示される。これは、例えば、レーザダイオード、またはレーザ放射線を放出するファイバからの出力であってもよい。以下では、ソース6は、事実上、局所化されているか、または事実上局所化されていると仮定することができる。このレーザ放射線に対応する光線は、図において二頭矢印で示されている。
【0033】
本発明によれば、少なくとも1次ミラー1および2次ミラー2は、レーザ送信信号を受信するように意図された遠隔受信機に向けて該レーザ送信信号を放射するために付加的に使用される。周知の方法では、このような信号は、非常に速い伝送速度で非常に長い距離にわたってデータを伝送するために使用される。
【0034】
図2に示す本発明の第1の実施形態では、レーザ放射線源6は、3次ミラー3を除く1次ミラー1および2次ミラー2によって形成される望遠鏡10の中間焦点面の内側の、カセグレン視野の像内に配置される。したがって、その放射方向は、光軸A−Aと同一直線上にある。したがって、PIで示される中間焦点面は、カセグレン視野内で、1次ミラー1の前方の遥か遠方に位置するシーンの要素と、ミラー1およびミラー2を介して、光学的につながっている。こうして、レーザ通信受信機が光軸A−Aに沿って望遠鏡10の前方の遥か遠方に配置されると、光源6によって生成されてレーザ送信信号を構成するレーザ放射線は、最初に2次ミラー2によって反射され、次に1次ミラー1によって反射され、次いで平行ビームFの形態にて遠隔受信機の方向に伝播する。したがって、本発明のこの特定の実施形態では、DEで示されるレーザ送信信号の放射方向は、1次ミラー1の前の望遠鏡10のカセグレン場の光軸A−Aに平行である。
【0035】
図3に示す本発明の第2の実施形態において、
図1および
図2に関して説明したコルシュ型望遠鏡を示す。局在化または効果的に局在化されたレーザ放射線源6は、2次焦点面PSに配置される。3つのミラー1、2および3を通る、該2次焦点面PSの光軸は、イメージセンサ5を含むために使用される焦点面PFの光軸と同一直線上にある。この目的のために、7の符号で示される焦点面複製素子が、3次ミラー3とイメージセンサ5との間の放射線の経路に配置されてもよい。こうして、レーザ放射線源6を、2次焦点面PSにおける、素子7によってイメージセンサ5の点の像の上に重畳される位置に配置することができるという点で、2次焦点面PSは焦点面PFとは異なっている。光源6がこのようにしてイメージセンサ5の中央の像の上に素子7によって重畳されると、レーザ送信信号の放射方向DEは、望遠鏡の指向方向DPと一致する(
図3では矢印DPおよび矢印DEは平行である)。例えば、光源6によって生成されたレーザ放射線が1.55ミクロンに等しい波長を有し、イメージセンサ5が感応する放射線が可視光範囲内にある場合、焦点面複製素子7はダイクロイックプレートであってもよい。あるいは、焦点面複製素子7は、絞りを備えたミラーであってもよい。該絞りは、2つの放射線のうちの一方、すなわち、イメージセンサ5に向けられた放射線、および、光源6によって生成された放射線のいずれか一方を反射し、該2つの放射線のビームの、素子7における横断面の寸法に応じて、もう一方の放射線を、該絞りを介して送信するためのものである。
【0036】
最後に、
図4に示される本発明の第3の実施形態では、再び
図1および
図2のコルシュ望遠鏡を使用する。第3の実施形態では、レーザ放射線源6は、望遠鏡10の焦点面PFにおいて、イメージセンサ5からずれた該焦点面内の位置に配置することができる。例えば、光源6は、
図4の平面から外側の位置に対応している位置であって、焦点面PF内のイメージセンサ5の中央の右側の位置に配置されてもよい。この場合、放射方向DEは、
図4の平面に対して斜めであるが(矢印DEは、平行でないラインエッジを有しているが)、
図4の平面における成分は、指向方向DPに平行になっている。
【0037】
使用される望遠鏡のタイプに関して、本発明の大部分を実証するために、
図5を参照して、カセグレンタイプの望遠鏡10について説明する。このような望遠鏡は、2つのミラー、すなわち、凹面である1次ミラー1と凸面である2次ミラー2のみを有する。望遠鏡10の焦点面PFを複製するために素子7を再び使用することによって、イメージセンサ5を望遠鏡の光軸A−A上に配置することができる。その一方、素子7によって形成される光軸A−Aの像と、同じく素子7によって形成される2次焦点面PSとの間の交点に、レーザ放射線源6を配置することができる。このような構成では、結像機能のための望遠鏡10の指向方向DPと、レーザ送信信号の放射方向DEとは、共に光軸A−Aに一致する。
【0038】
図2〜
図5を参照して説明した、結像とレーザ信号による通信とのための複合システムに係る4つの実施形態では、1次ミラー1および2次ミラー2は、結像機能およびレーザ信号放射機能によって共有される。さらに、
図3および
図4の実施形態においては、3次ミラー3も、上述の両方の機能によって共有される。両方の機能によって共有されるミラーは、レーザ放射線源6と共に、レーザ信号による通信の放射経路を形成する。この放射経路は、さらに、
図6においてCTRLとしてラベル付けされ、符号60で示されているレーザ通信制御部を備えている。
【0039】
状況に応じて、レーザ通信信号を受信するための経路(図示せず)を追加して、レーザ信号通信のための放射および受信を行う端末を構成してもよい。特に、受信経路と放射経路との2つの経路において反対方向である伝播方向にレーザ放射線を集束し、送信するために同じミラーを使用する際に、該2つの経路を組み合わせることは、ただちに本発明の一部というわけではなく、当業者に知られているレーザ信号通信端末から得ることができる。有利なことには、遠隔受信機に向けられた送信信号のために光源6によって生成されるレーザ放射線の光路と、遠隔受信機から来る外部信号とは、望遠鏡内では反対方向に移動するが同一である光路をたどることができる。こうして、受信経路は、結像機能およびレーザ送信信号の放射機能によって共有される、望遠鏡のミラーと、受信された外部レーザ信号の放射線がミラーによって集束される受信センサと、受信機能専用のレーザ通信制御部60の一部とによって形成される。
【0040】
図6を参照すると、人工衛星100は、今説明した実施形態の1つに基づき得る、結像とレーザ信号による通信とのためのシステムを運ぶ。望遠鏡10およびイメージセンサ5は、人工衛星のフレーム101上に堅固に固定され、その結果、結像機能のための指向方向DPは、人工衛星100全体に対して一定となる。したがって、指向方向DPは、人工衛星100全体を方向付けることによって、像において捕捉されるべきシーンに向けられる。これを行うために、人工衛星100は、衛星配向手段と呼ばれる、それ自体の方向を変更するための手段11と、SCAOとラベル付けされた姿勢および軌道制御システム12とを備えている。例えば、手段11は、CMGタイプ(「制御モーメントジャイロ」)、またはリアクションホイールタイプ、またはこれらの組み合わせとすることができる。姿勢および軌道制御システム12は、当業者に知られているモデルであってもよい。通常、姿勢および軌道制御システムは、人工衛星の位置および向きを識別するために慣性座標系を使用する。慣性座標系は、遠い星に対して固定された基準フレームを意味する。符号50は、望遠鏡10とイメージセンサ5とを用いて行われる各撮影により生成された画像のためのデータ処理および記憶ユニットを示している。このデータ処理および記憶ユニット50は、
図6において、「コンピュータおよび記憶装置」とラベル付けされている。
【0041】
本発明による望遠鏡10の少なくとも一部を使用するレーザ信号放射端末は、粗調整配向アセンブリを有していない。なぜなら、望遠鏡10は、人工衛星100のフレーム101に堅固に固定されており、配向可能な出力ミラーを有していないからである。
【0042】
レーザ放射線源6は望遠鏡10に対して固定されているが、レーザ送信信号の放射方向DEは、微調整配向アセンブリを使用することによって、人工衛星100のフレーム101に対して可変であってもよい。このような微調整配向アセンブリは、光源6と、レーザ放射線を外側に放射するために使用される望遠鏡10の一部分との間に光学的に配置されてもよい。しかし、このような不図示の微調整配向アセンブリは、本発明では任意であり、人工衛星100に搭載されるレーザ信号放射端末には設けられないことが好ましい。したがって、微調整配向アセンブリがない場合、レーザ送信信号の放射方向DEは、衛星配向手段11を使用することによってのみ調整することができる。人工衛星100から遥か遠方にあるレーザ通信受信機によって、レーザ送信信号が実際に受信されるためには、衛星配向手段11のみを使用することによる放射方向DEの調整は、十分に正確でなければならない。以下の2点の誤差の助長は、人工衛星全体を配向することによって達成される放射方向DEの調整の精度を低下させ得る。
【0043】
/i/遠隔受信機を狙ってレーザ送信信号を向かわせるときの実際の方向に関して、該レーザ送信信号が放射されるべき目標方向を決定するときに生じる第1の誤差助長。
【0044】
/ii/人工衛星100の基準方位として与えられる目標方向と、衛星配向手段11によって実際に生成される放射方向DEとの間に生じる第2の誤差助長。
【0045】
許容可能な誤差の総計は、レーザ信号の目的地であるレーザ通信受信機で測定される、望遠鏡10によって放射されるレーザビームFの直径に依存する。人工衛星100は、地球の表面上の像を捕捉する役割を担うので、その軌道高度は低く、典型的には400km〜2000kmである。次に、2つの異なる構成を使用して、捕捉された像に対応するデータをレーザ通信によって送信することができる。
【0046】
構成1:データは、地球上に配置されたレーザ通信受信機、または低い高度の軌道上に配置されている別の人工衛星に送信される。いずれの場合でも、伝送距離は、典型的には、5000km未満である。
【0047】
構成2:データは、静止衛星上に配置されたレーザ通信リレーに送信される。この場合、伝送距離は、静止軌道の高度と同様であり、その意味するところは、33,000kmと40,000kmとの間くらいである。
【0048】
構成1では、レーザ送信信号の放射方向DEについての配向誤差の総計は、20μrad(マイクロラジアン)以下でなければならない。
【0049】
既存の姿勢および軌道制御システムおよび衛星配向手段は、慣性座標系において決定される目標方向に対して、10μrad未満の誤差で人工衛星を配向するために使用される。上記の誤差助長/ii/に対応するこの誤差は、微調整配向アセンブリが存在しなくても許容される。
【0050】
レーザ信号で狙うレーザ通信受信機の座標は、一般に、地球基準座標系において非常に高い精度で把握されており、該座標の慣性システムへの変換によって、問題が引き起こされることはない。この場合、誤差助長/i/は、主として、レーザ送信信号が放射される瞬間の人工衛星100の位置を計算することから生じる。
【0051】
従来すなわち本発明が起こる前までは、レーザ送信信号の放射の瞬間の人工衛星100の位置は、人工衛星の前の位置に基づいて計算され、この測定値は、その軌道上の人工衛星の公転毎に1回、典型的には低い高度の軌道については90分毎に1回、またはほぼ90分毎に更新されるだけであった。放射の瞬間における人工衛星の位置は、人工衛星の実際の位置について直近に更新された測定値から計算された。しかし、この計算は、誤差助長/i/の主要部分の原因となっている。その結果、目標方向と、レーザ通信受信機が放射の瞬間に位置する実際の方向との間で、誤差が1000μrad(マイクロラジアン)に達し得るような誤差が生じる。このような誤差は、結像機能において像を結合するのに問題はないが、レーザ信号による通信に要求される精細さとは両立しない。(放射方向DEの配向誤差の総量は、20μrad以下である。)
誤差助長/i/を低減するために、本発明のさらなる特徴によれば、ジオロケーション装置14(
図6)およびレーザ送信信号の目標放射方向を計算するためのモジュール13も人工衛星100に搭載される。装置14は、一群のジオロケーション衛星201〜206から来るジオロケーション信号のための受信機と、受信されたジオロケーション信号から人工衛星100の位置を導出するための計算機とを備える。例えば、ジオロケーション装置14としては、GPS(Global Positioning System(全地球測位システム)の頭字語)システム、または、地球の周りに展開される任意の他のジオロケーションシステムが採用されてもよい。こうして、ジオロケーション装置14によって提供される人工衛星100の位置精度は、数メートル以内であり、ジオロケーションによって決定されるこの位置は、必要に応じた頻度で更新されてもよいし、または、レーザ送信信号の放射シーケンスごとにリアルタイムで決定されてもよい。したがって、古すぎる測定位置から新しい衛星位置を計算することに起因する誤差助長/i/をほぼ完全に回避することが可能である。
【0052】
MODとラベル付けされたモジュール13は、最後に実行されたジオロケーションから導出された衛星位置100の座標を受信する。これらの座標は、通常、地球基準座標系で表される。レーザ送信信号の次の放射時点における人工衛星100の座標は、これらから、例えば、再び地球基準座標系において導出されるが、最後に実行されたジオロケーションの時点と放射時点との間の時間は、人工衛星100の移動量の計算が無視できるほどの誤差しか引き起こさない程度に十分に短い。こうして、モジュール13は、同じ将来の放射の瞬間におけるレーザ通信受信機の衛星座標と同様に、将来の放射の瞬間における衛星座標100を慣性基準システムに変換し、そして、慣性座標系における目標放射方向を推定する。このようにして生まれた誤差助長/i/は、レーザ送信信号の目標放射方向に関して、ほんの数マイクロラジアンであり、これは、構成1および2におけるレーザ通信信号のための上記の要件に適合する。
【0053】
モジュール13によってそのように計算された目標方向は、姿勢および軌道制御システム12に送信され、該システムは、レーザ送信信号の放射の瞬間における目標方向に人工衛星100を配向するように配向手段11を制御する。本質的に、レーザ送信信号の放射方向DEを得るために要求される精度は、既存のジオロケーションシステムの精度と、衛星位置がジオロケーションによって決定される場合に、衛星位置のほぼ継続的な更新が可能であることとによって実現される。
【0054】
こうして、望遠鏡10およびイメージセンサ5を用いて以前に捕捉された像に対応するデータは、処理および記憶ユニット50によってレーザ通信制御部60に送られる。そして、後者は、人工衛星100がその軌道上の選択された放射位置にあって、放射方向DEが衛星配向手段11によって目標方向にもたらされた場合に、レーザ放射線源6を作動させることによって送信を行う。
【0055】
レーザ送信信号の放射方向DEの精度が、特に上述した構成2に対して、および上述したような本発明による人工衛星100に対して、なお不十分である場合、結像とレーザ信号による通信とのための複合されたシステムのレーザ通信部分において、2つの以下の追加デバイスのうちの少なくとも1つを人工衛星100に搭載してもよい。
【0056】
−目標捕捉および追跡システム:このようなシステムは、遠隔レーザ通信受信機から受信した通信信号のレーザ放射線に感応する光素子のアレイを有する検出器を備えている。これらの受信信号は、同様に、ビーコン信号、制御信号、またはデータ信号であってもよい。アレイベースの検出器は、望遠鏡10の焦点面PF内に配置されるか、あるいは、適切に配置された焦点面複製素子を使用して生成される2次焦点面内に配置される。こうして、受信信号のレーザ放射線が検出される検出器アレイの点と、放射方向DEに対応する基準点との間の差を、姿勢および軌道制御システムに渡されるフィードバックパラメータとして用いることができる。リアルタイムフィードバックによるこのような動作は、レーザ通信受信機の実際の方向に対する放射方向DEの精度を改善する。
【0057】
−微調整配向アセンブリ:このようなアセンブリによれば、衛星配向手段11によって実行される調整に加えて、小さな寸法の可動ミラーに基づき、非常に短い一定の反応時間でリアルタイムで放射方向DEを調整することが可能となる。
【0058】
まず、目標捕捉および追跡システムを追加し、それによって微調整配向アセンブリを用いずに放射方向DEに必要な精度を達成するには不十分である場合にのみ、その次に、微調整配向アセンブリを追加することが好ましい。一般に、微調整配向アセンブリの可動ミラーの向きは、遠隔レーザ通信受信機からのレーザ放射線が受信される点の、目標捕捉および追跡システムのアレイベース検出器上の偏差に従って制御される。
【0059】
本発明による、結像とレーザ信号による通信とのための複合されたシステムにおける、これら2つの追加デバイスの各々の実施は、結像装置から独立している、周知であると仮定されるレーザ通信端末において使用される実施と同一である。このため、これらの2つのオプションの装置の実施態様については、ここでは再び説明しない。
【0060】
最後に、
図7は、符号Tで示された、中心に点CTを有する地球を示す。人工衛星100は、高度が低い軌道の範囲内で、軌道O100上を移動する。ジオロケーション衛星201〜206は、それらの数に限定されるものではないが、人工衛星100とは独立して、その軌道O100における人工衛星100の任意の位置をカバーすることができる一群を形成する。人工衛星100は、その軌道O100内のある位置で、いくつかのジオロケーション衛星からジオロケーション信号、例えば、人工衛星201、205および206のそれぞれによって送信される信号G201、G205およびG206を受信する。参照符号Rは、地球上に位置する場合のレーザ通信受信機を示す。次に、本発明の実施態様により、人工衛星100は、受信機Rに向かって、満足な受信品質を得るのに十分な放射方向の精度を伴うレーザビームFの形態にてレーザ送信信号を放射することができる。
【0061】
最後に、本発明は、レーザ通信受信機Rが高度が低い軌道上の別の人工衛星上にある場合、または静止衛星上にある場合に、同様の方法で実施することができることに留意されたい。
【0062】
本発明は、望遠鏡が、結像に有用な少なくとも2つのミラー、すなわち放射ビームの集束を変化させるミラーを有する限り、使用される望遠鏡の種類とは無関係であることにも留意されたい。
【0063】
最後に、目標捕捉および追跡システムおよび微調整配向アセンブリの使用は任意であり、本発明の好ましい実施形態は、そのような装置を全く含まないことに留意されたい。