特許第6654769号(P6654769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654769
(24)【登録日】2020年2月4日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】塗工装置、塗工方法、電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20200217BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20200217BHJP
   B05D 1/34 20060101ALI20200217BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20200217BHJP
   H01M 4/139 20100101ALN20200217BHJP
【FI】
   B05C5/02
   B05D1/26 Z
   B05D1/34
   H01M4/04 Z
   !H01M4/139
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-29461(P2017-29461)
(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公開番号】特開2018-122283(P2018-122283A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年10月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507050001
【氏名又は名称】平井工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平井 昌夫
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−345096(JP,A)
【文献】 特開2015−195183(JP,A)
【文献】 特開2012−020214(JP,A)
【文献】 特開平01−294891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00−5/04
B05D 1/00−7/26
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される基材に対しダイから2つ以上の液体を排出することにより前記基材に2層以上を積層した塗工物を製造する塗工装置において、
ステンレスからなるダイは少なくとも3つのブロックの組み合わせからなり、各ブロックのあわせ面に液体の流路を形成し、流路に形成する液溜り部分である各マニホールドは各ブロックのあわせ面の片方のブロックのみに設けるとともに、各ブロックのあわせ面に形成される液体の流路は液溜り部であるマニホールドが設けられたブロック側に直線状に形成され、
少なくとも、各液体の液溜り部分である各マニホールドの先端部から、マニホールドからの各液体を通過させる各流路部、並びに各液体の排出部である各エッジ部にかけて、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金からなる合金粉末、又はCo−Cr−Si−B系コバルト基合金からなる合金粉末をHIP処理により直接拡散接合されたHIPライニング層を形成し、
このHIPライニング層により、特に液体によるマニホールドの先端部への損傷を防止するように構成したことを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
HIPライニング層が、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金、又はCo−Cr−Si−B系コバルト基合金に、さらにセラミックスを追加した合金粉末をHIP処理によって直接拡散接合されたHIPライニング層であることを特徴とする請求項1の塗工装置。
【請求項3】
搬送される基材に対しダイから2つ以上の液体を排出することにより前記基材に2層以上を積層した塗工物を製造する塗工方法において、
少なくとも3つのブロックの組み合わせから形成され、各ブロックのあわせ面に液体の流路を形成し、流路に形成する液溜り部分である各マニホールドは各ブロックのあわせ面の片方のブロックのみに設けるとともに各ブロックのあわせ面に形成される液体の流路は液溜り部であるマニホールドが設けられたブロック側に直線状に形成されたステンレスからなるダイを使用し、
少なくとも、各液体の液溜り部分である各マニホールドの先端部から、マニホールドからの各液体の通過部である各流路、並びに各液体の排出部である各エッジ部にかけて形成した、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金、又はCo−Cr−Si−B系コバルト基合金からなる合金粉末をHIP処理により直接拡散接合されたHIPライニング層を、各液体が通過するように構成したことを特徴とする塗工方法。
【請求項4】
搬送される集電体に対しダイから少なくともバインダ液と活物質液とを排出することにより前記集電体に前記バインダ液により形成されるバインダ層と前記活物質液により形成される活物質層を積層した電極を有する電池の製造方法において、
少なくとも3つのブロックの組み合わせからなり、各ブロックのあわせ面に液体の流路を形成し、流路に形成する液溜り部分である各マニホールドは各ブロックのあわせ面の片方のブロックのみに設けるとともに各ブロックのあわせ面に形成される液体の流路は液溜り部であるマニホールドが設けられたブロック側に直線状に形成されたステンレスからなるダイを使用し、
少なくとも、各液体の液溜り部分である各マニホールドの先端部から、マニホールドからの各液体が通過する各流路部、並びに各液体の排出部である各エッジ部にかけて形成した、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金、又はCo−Cr−Si−B系コバルト基合金からなる合金粉末をHIP処理によって直接拡散接合されたHIPライニング層を、バインダ液、活物質液が通過するように構成して電極を製造することを特徴とする電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リチウムイオン電池等で用いられる活物質ペーストを集電体上に塗布形成する塗工装置、塗工方法、電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、これまで主にノートパソコンや携帯電話といったモバイル機器で使われてきたが、近年、ハイブリッドカーや電気自動車での採用が決まり、飛躍的に需要が形成されつつある。そのため、リチウムイオン電池製造業界では量産体制の構築が急速に進んでいる。自動車分野にとっての電池への要求性能は、高容量化、高出力、サイクル安定性、コスト、占有容積、安全性などが重要視されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池を構成している部品は、大きく、正極および負極電極、セパレータ、電解液に分けることができ、その中でも電極は、集電体、活物質、バインダ、導電材といった材料から構成されている。リチウムイオン電池製造の量産体制を構築するために、工程の時間短縮、生産ラインの省スペース化を前提に、特に、自動車用電池に使用される電極の製造については、最適な塗布装置や乾燥装置が市場投入されている。
【0004】
特に、電池の製造工程における塗工工程では、一度に複数の層を塗布して、多層構成の電極シートを、完成時間を大幅に短縮して製造する塗布方法が採用されている。そして、多層構成の電極シートの製造にあたって発生する諸々な課題を解決する、例えば、特許文献1、特許文献2のような特許が存在している。特許文献1では塗工時での塗布膜の厚みのばらつきや塗工スジの発生を防止する技術について、特許文献2では目視できない塗布膜の厚さを一定に制御することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3848519号公報
【特許文献2】特許第5522025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、この多層構成の電極シートを製造する塗工工程は、ロール状に巻かれた基材である集電体となるアルミや銅の箔の上に、バインダ液、その上層に電極材料液を塗布しながら送り出す工程である。
【0007】
電池の製造で使用する電極材料液には、正極材料ではリチウム含有遷移金属酸化物が主に使用され、負極材料では炭素を黒鉛化した材料が主に使用され、バインダ液ではフッ素系の樹脂が主に使用される。また、これら以外にも様々な添加物が使用されている。
【0008】
現在、多層構成の電極シートの製造では、これらの電極材料液、バインダ液、添加物がSUS630等のステンレスで作られたダイの内部に有する液溜り部分であるマニホールド部を通過して流通部、排出部へ送り出され、集電体上に均一な塗工を実現するように構成されている。しかし、これらの電極材料液、バインダ液、添加物が、マニホールドから流通部に移動する際に、これらの電極材料液、バインダ液、添加物により、マニホールド先端部にキズや摩耗が発生し、その結果、液体の流れの均一性が乱れ、結果的に均一な塗工膜が実現出来ないという問題が存在する。にもかかわらず、このような課題を解決するための出願はいまだ見当たらない。
【0009】
そこで、本発明は上記した課題を解決するためになされたものであって、マニホールド先端部にキズや摩耗が発生しにくい塗工装置、塗工方法、電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、搬送される基材に対しダイから2つ以上の液体を排出することにより前記基材に2層以上を積層した塗工物を製造する塗工装置において、ステンレスからなるダイは少なくとも3つのブロックの組み合わせからなり、各ブロックのあわせ面に液体の流路を形成し、流路に形成する液溜り部分である各マニホールドは各ブロックのあわせ面の片方のブロックのみに設けるとともに、各ブロックのあわせ面に形成される液体の流路は液溜り部であるマニホールドが設けられたブロック側に直線状に形成され、少なくとも、各液体の液溜り部分である各マニホールドの先端部から、マニホールドからの各液体を通過させる各流路部、並びに各液体の排出部である各エッジ部にかけて、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金からなる合金粉末、又はCo−Cr−Si−B系コバルト基合金からなる合金粉末をHIP処理により直接拡散接合されたHIPライニング層を形成し、このHIPライニング層により、特に液体によるマニホールドの先端部への損傷を防止するように構成したことを特徴とする
【0011】
この形態によれば、各マニホールドの先端部から、マニホールドからの各液体を通過させる各流路部、並びに各液体の排出部である各エッジ部がHRC57〜62のHIPライニング層で形成されているので、特に液体によってマニホールドの先端部が損傷したり摩耗したりすることがすくなくなり、流路に形成する液溜り部分である各マニホールドが各ブロックのあわせ面の片方のブロックのみに設けられる構成と相まって、常に均一な塗工が実現できる。
【0014】
上記態様においては、HIPライニング層が、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金、又はCo−Cr−Si−B系コバルト基合金に、さらにセラミックスを追加した合金粉末をHIP処理によって直接拡散接合されたHIPライニング層であること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、HRC60〜65の硬さを有するHIPライニング層となり、とくにフッ素樹脂など腐食により激しい摩耗を引き起こす場合に非常に適したHIPライニング層を形成することが出来る。
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様は、搬送される基材に対しダイから2つ以上の液体を排出することにより前記基材に2層以上を積層した塗工物を製造する塗工方法において、少なくとも3つのブロックの組み合わせから形成され、各ブロックのあわせ面に液体の流路を形成し、流路に形成する液溜り部分である各マニホールドは各ブロックのあわせ面の片方のブロックのみに設けるとともに各ブロックのあわせ面に形成される液体の流路は液溜り部であるマニホールドが設けられたブロック側に直線状に形成されステンレスからなるダイを使用し、少なくとも、各液体の液溜り部分である各マニホールドの先端部から、マニホールドからの各液体の通過部である各流路、並びに各液体の排出部である各エッジ部にかけて形成した、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金、又はCo−Cr−Si−B系コバルト基合金からなる合金粉末をHIP処理により直接拡散接合されたHIPライニング層を、各液体が通過するように構成したこと、を特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の態様は、搬送される集電体に対しダイから少なくともバインダ液と活物質液とを排出することにより前記集電体に前記バインダ液により形成されるバインダ層と前記活物質液により形成される活物質層を積層した電極を有する電池の製造方法において、少なくとも3つのブロックの組み合わせから形成され、各ブロックのあわせ面に液体の流路を形成し、流路に形成する液溜り部分である各マニホールドは各ブロックのあわせ面の片方のブロックのみに設けるとともに各ブロックのあわせ面に形成される液体の流路は液溜り部であるマニホールドが設けられたブロック側に直線状に形成されステンレスからなるダイを使用し、少なくとも、各液体の液溜り部分である各マニホールドの先端部から、マニホールドからの各液体が通過する各流路部、並びに各液体の排出部である各エッジ部にかけて形成した、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金、又はCo−Cr−Si−B系コバルト基合金からなる合金粉末をHIP処理によって直接拡散接合されたHIPライニング層を、バインダ液、活物質液が通過するように構成して電極を製造すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る塗工装置、塗工方法、電池の製造方法によれば、ステンレスからなるダイにおいて、各ブロックのあわせ面に形成される液体の流路は液溜り部であるマニホールドが設けられたブロック側に直線状に形成されていても、各液体の液溜り部分である各マニホールドの先端部から、マニホールドからの各液体を通過させる各流路部、並びに各液体の排出部である各エッジ部がHIPライニング層で形成されているので、量産体制の構築を実現しつつ、特に搬送される基材上に塗布される液体により、マニホールドの先端部が損傷したり摩耗したりすることが少なくなり、常に均一な塗工が実現するとともに、耐食性や耐摩耗性が特に必要とされるダイに広く用いることができ、長時間稼働を可能とする。
【0019】
また、HIPライニング層は繰り返し研削が可能であるので、ダイの長期間使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の2層用ダイを使用した塗工装置の外観図である。
図2】ダイのHIPライニング層周辺の拡大図である。
図3】本発明の2層用のダイの組み立て前の図である。
図4】本発明で使用する3層用のダイの構成図である。
図5】従来の多層用ダイの状態を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施例においては本発明における「塗工物」の一例として、リチウムイオン電池等で用いられる電極17(図1参照)を例に挙げて説明する。
【0022】
<実施例1>
[塗工装置の説明]
図1は本発明の2層用ダイを使用した塗工装置であって、ダイ10、搬送ローラ11などを有する。ダイ10は、Aブロック1、Bブロック2、Cブロック3を組み立てて構成されている。ダイ10には、搬送ローラ11側の面に、第1排出部15と第2排出部16の2つの排出口を備える。
【0023】
図2はダイ10のHIPライニング層周辺の拡大図であるが、本実施例では、一例として、第1排出部15から結着剤であるバインダ液18を排出し、第2排出部16から電極活物質を含む負極ペースト19を排出する。
【0024】
搬送ローラ11は、集電体である銅泊12を搬送する。また、搬送ローラ11は、銅泊12に対してバインダ液18と負極ペースト19とを塗布することによりバインダ層13と負極ペースト層14とを形成した負極の電極17を搬送する。なお、銅泊12は、本発明における「基材」の一例である。
【0025】
このような構成を有する本実施例の塗工装置は、搬送ローラ11により搬送される銅泊12に対して、第1排出部15からバインダ液18を排出してバインダ層13を形成し、第2排出部16から負極ペースト19を排出してバインダ層13に重ねて負極ペースト層14を積層する。これにより、銅泊12の塗工面に対してバインダ層13と負極ペースト層14の2層を積層した電極17を製造することができ、このように製造した負極の電極17を使って電池を製造することができる。
【0026】
[ダイの説明]
一般的に、多層用のダイはブロックを組み合わせて製作される。図3には、2層用のダイ10を製作するためのAブロック1、Bブロック2、Cブルック3が図示されている。Aブロック1のボルト挿入口23からボルトを挿入し、Bブロックのボルト係合部22と係合させることにより、Aブロック1とBブロック2とを結合させ、Cブロック1のボルト挿入口20からボルトを挿入し、Bブロックのボルト係合部21と係合させることにより、Cブロック1とBブロック2とを結合させて、2層用のダイ10を製作する。
【0027】
製作された2層用のダイ10は、図2に図示しているように、Aブロック1とBブロック2との結合により、流路4、マニホールド1a、流路部6、排出部15が形成され、Bブロック2とCブロック3との結合により、流路5、マニホールド2a、流路部7、排出部16が形成される。
【0028】
Aブロックには、マニホールド1aの先端部24からブロックのエッジ部1cにかけてHIPライニング層1bを設けている。Bブロックには、AブロックのHIPライニング層に対応する部分と、マニホールド2aの先端部25からブロックのエッジ部2cとにかけてHIPライニング層2bを設けている。Cブロックには、BブロックのHIPライニング層に対応する部分にHIPライニング層3bを設けている。
【0029】
バインダ液18は流路4、マニホールド1a、流路部6を通って、排出部15から集電体(基材)12上に塗布され、バインダ層13となる。負極の電極を作る場合ではバインダ液は、一般的に導電性カーボンブラック、結着剤、水を混練、分散したものが用いられる。なお、正極の電極を作る場合も同様なものが使用される。
【0030】
負極ペースト19は流路5、マニホールド2a、流路部7を通って、排出部16からバインダ液18上に塗布され、負極ペースト層14となる。負極の電極を作る場合では負極ペーストは、一般的に炭素材、CMC、水を混練したものが用いられる。なお、正極の電極を作る場合での正極ペーストは、Li,CoO、導電性カーボンブラック、フッ素系樹脂、CMC,水を混練したものが用いられる。
【0031】
ここで、電極の製造で使用されるこれらのバインダ液、負極ペースト、正極ペーストを、SUS630等のステンレスで作られている図5に図示しているような構成のダイで使用した場合について説明する。図5に図示されているダイ210はHブロック201、Iブロック202、Jブロック203を結合したものであるが、各マニホールド204,205は各ブロックのあわせ面の両方のブロックに設ける構成である。このようなダイ210において、電極の製造で使用されるバインダ液、負極ペースト、正極ペーストを使用すると、特に、マニホールド204の先端部213、先端部214や、マニホールド205の先端部215、先端部216がバインダ液、負極ペースト、正極ペーストによって、腐食したり、キズついたり、摩耗したりする状況が起こっている。
【0032】
本発明では、各マニホールドの先端部から、マニホールドからの各液体を通過させる各流路部、並びに各液体の排出部である各エッジ部にかけて、HIPライニング層1b、2b、3bを設けるとともに、各マニホールドは各ブロックのあわせ面の片方のブロックのみに設ける構成にすることによって、特に、マニホールド1aの先端部24や、マニホールド2aの先端部25がバインダ液、負極ペースト、正極ペーストによって、腐食したり、キズついたり、摩耗したりすることを防止している。
【0033】
[HIPライニング層の説明]
ダイがバインダ液、負極ペースト、正極ペースト(以下、塗工液)によって、腐食したり、キズついたり、摩耗したりするのを防止するHIPライニング層について説明すると、本発明で採用しているHIPライニング層を形成する合金粉末は、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金からなる合金粉末、又はCo−Cr−Si−B系コバルト基合金からなる合金粉末である。このような合金粉末をHIP処理により直接拡散接合させてHIPライニング層を形成している。このような合金粉末よってできたHIPライニング層はHRC57−62であり、腐食性が強いハロゲンガス(フッ素系ガスや塩素系ガス)に対して優れた耐食性を有するダイが作成できる。
【0034】
また、腐食により激しい損耗を引き起こすような塗工液を使用する場合では、Ni−Cr−Mo−Si−B系ニッケル基合金、又はCo−Cr−Mo−Si−B系コバルト基合金からなる合金粉末を使用する。これらの合金粉末をHIP処理によって直接拡散接合させてHIPライニング層を形成する。このような合金粉末によって形成されたHIPライニング層はHRC60−65である。
【0035】
また、摩耗による損傷が激しくなる塗工液を使用する場合では、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金、又はCo−Cr−Si−B系コバルト基合金に、さらにセラミックスを追加した合金粉末を使用する。これらの合金粉末をHIP処理によって直接拡散接合させてHIPライニング層を形成する。このような合金粉末によって形成されたHIPライニング層はHRCHRC63−68である。
【0036】
ダイ10のAブロック1、Bブロック2、Cブロック3にHIPライニング層1b、2b、3bを形成する事例を説明すると、ブロック本体には、熱伝導率0.043cal/cm・s・K〔20〜200℃〕で熱膨張係数が12.2×10−6l/℃〔20〜400℃〕のJIS規格SUS329JI合金を用いた。SUS329JI合金は、フェライト・オーステナイトの二相組織のため、HIP冷却(冷却速度60〜150℃/hr)時にマルテンサイト変態又はベイナイト変態は生じない。
【0037】
HIPライニング層1b、2b、3bを形成するための合金粉末には、熱伝導率が0.035cal/cm・s・K〔20〜200℃〕で熱膨張係数が12.1×10−6l/℃〔20〜400℃〕の耐蝕耐摩耗性Ni基合金(Ni−Cr−Mo−Si−B系合金)を用いる。ライニング層を形成する際のHIP処理は、950℃、1000kgf/cmで5時間行った。
【0038】
このような作成されたAブロック、Bブロック、Cブロックを結合させてダイ10を作成した。このダイ10は腐食により激しい損耗を引き起こすような塗工液を使用した場合でも、特に、マニホールド1aの先端部24や、マニホールド2aの先端部25が塗工液によって、腐食したり、キズついたり、摩耗したりすることはなかった。
【0039】
[本実施例の効果]
本実施例によれば、ダイ10は3つのブロック1,2,3の組み合わせからなり、各ブロックのあわせ面に液体の流路4,5を形成し、流路4,5に形成する液溜り部分である各マニホールド1a、2aは各ブロックのあわせ面の片方のブロックのみに設け、少なくとも、各液体の液溜り部分である各マニホールド1a、2aの先端部24,25から、マニホールド1a、2aからの各液体を通過させる各流路部6,7、並びに各液体の排出部15,16である各エッジ部1c、2c、3cにかけて、Ni−Cr−Si−B系ニッケル基合金からなる合金粉末、又はNi−Cr−Si−B系コバルト基合金からなる合金粉末をHIP処理により直接拡散接合されたHIPライニング層を形成しているので、多様な塗工液(金属、セラミックス粉、黒鉛、カーボンブラック、化学性バインダ液、フッ素・塩素・臭素系酸化物)に対応できるダイとすることが出来、腐食性が強いハロゲン系塗工液であっても、ダイがキズついたり、摩耗したりすることを防ぐことが出来る。
【0040】
多様化する塗工液に対応し、かつ多層用のダイとして使用できるダイを使用することが出来るので、常に均一な塗工が実現するとともに、長時間稼働を可能とする。また、HIPライニング層は繰り返し研削が可能であるので、ダイの長期間使用も可能である。
【0041】
<実施例2>
次に、実施例2について説明する。第2実施例は図4に図示しているように、集電体112に対して3層の液体を塗布する構成である。そのため、3層用ダイ110は4つのブロックである、Dロブック101、Eブロック102、 Fブロック103、Gブロック104から構成されている。マニホールドはDロブック101、Eブロック102、 Fブロック103、にそれぞれ設けられている。搬送ローラ111で搬送される集電体(基材)112に塗布される3層は、例えば、バインダ層113、負極ペースト層114、保護層115であって、これらを塗布することにより、負極の電極(塗工物)116が製造される。
【0042】
保護層115は、活物質含有層を物理的或いは化学的に保護するもので、活物質含有層の外側に設けられ、保護層としてアルミナ、カルボキシルメチルセルロース、界面活性剤、水を混合分散したものが用いられる。保護層は、活物質含有層の性質により組成の異なる複数層からなる場合もある。この場合は4層以上となる。
【0043】
また、第2実施例は図4に図示しているように、Dロブック101、Eブロック102、 Fブロック103に設けられたHIPライニング層101b、102b、103bは実施例1のようにマニホールド先端部からではなく、マニホールドの内面すべてにわたって設けられている。このように構成することによって、マニホールドが摩耗したり、キズついたり、腐食したりするのを確実に防ぐことが出来る。
【0044】
図4に図示されているHIPライニング層はマニホールドに沿わせるようにHIPライニング層を形成しているが、マニホールドからエッジ部まですべてをHIPライニング層で構成してもよい。
【0045】
なお、本発明では、実施例1のBブロック2、実施例2のEブロック102、Fブロック103に図示されているような構成のHIP層も、HIPライニング層という表現を使用している。
【0046】
[その他の実施例]
前記の実施例においては、負極の電極における塗工について説明したが、正極の電極における塗工においても適用することができる。例えば、下層にバインダ液あるいは導電助剤を塗布し、上層に正極ペーストを塗布する実施例においても、前記の実施例1と実施例2を適用することができる。
【0047】
また、前記の実施例においては2層塗工、3層塗工を例に挙げたが、これに限定されず、ダイから4つ以上の液体を排出して、4つ以上の層を積層した塗工物を製造する多層塗工の例においても、本発明は適用できる。
【0048】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
1 Aブロック
1a Aブロックのマニホールド
1b AブロックのHIPライニング層
1c Aブロックのエッジ部
2 Bブロック
2a Bブロックのマニホールド
2b BブロックのHIPライニング層
2c Bブロックのエッジ部
3 Cブロック
3a Cブロックのマニホールド
3b CブロックのHIPライニング層
3c Cブロックのエッジ部
4 流路
5 流路
6 流路部
7 流路部
10 2層用ダイ
11 搬送ローラ
12 集電体(基材)
13 バインダ層
14 負極ペースト層
15 第1排出口
16 第2排出口
17 負極の電極(塗工物)
18 バインダ液(液体)
19 負極ペースト(液体)
20 ボルト挿入部
21 ボルト係合部
22 ボルト係合部
23 ボルト挿入部
24 マニホールド先端部
25 マニホールド先端部
101 Dブロック
101b DブロックのHIPライニング層
102 Eブロック
102b EブロックのHIPライニング層
103 Fブロック
103b FブロックのHIPライニング層
104 Gブロック
104b GブロックのHIPライニング層
110 3層用ダイ
111 搬送ローラ
112 集電体(基材)
113 バインダ層
114 負極ペースト層
115 保護層
116 負極の電極(塗工物)
201 Hブロック
202 Iブロック
203 Jブロック
204 マニホールド
205 マニホールド
210 2層用ダイ
211 搬送ローラ
212 集電体(基材)
213 摩耗した部分、又はキズついた部分、又は腐食した部分
214 摩耗した部分、又はキズついた部分、又は腐食した部分
215 摩耗した部分、又はキズついた部分、又は腐食した部分
216 摩耗した部分、又はキズついた部分、又は腐食した部分
図1
図2
図3
図4
図5