特許第6654771号(P6654771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォンダツィオーネ イルックス イスティトゥート ナツィオナレ デイ トゥモリの特許一覧 ▶ ウニベルシタ’デグリ・ストゥディ・ディ・ミラノの特許一覧

特許6654771癌の治療のための治療薬としての4−オキソ−n−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド誘導体である化合物またはその薬学上許容される塩、それらを用いた組合せ医薬、および、医薬組成物
<>
  • 特許6654771-癌の治療のための治療薬としての4−オキソ−n−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド誘導体である化合物またはその薬学上許容される塩、それらを用いた組合せ医薬、および、医薬組成物 図000011
  • 特許6654771-癌の治療のための治療薬としての4−オキソ−n−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド誘導体である化合物またはその薬学上許容される塩、それらを用いた組合せ医薬、および、医薬組成物 図000012
  • 特許6654771-癌の治療のための治療薬としての4−オキソ−n−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド誘導体である化合物またはその薬学上許容される塩、それらを用いた組合せ医薬、および、医薬組成物 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654771
(24)【登録日】2020年2月4日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】癌の治療のための治療薬としての4−オキソ−n−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド誘導体である化合物またはその薬学上許容される塩、それらを用いた組合せ医薬、および、医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 251/60 20060101AFI20200217BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20200217BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20200217BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200217BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20200217BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20200217BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20200217BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20200217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200217BHJP
   C07C 251/58 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   C07C251/60CSP
   A61K31/196
   A61K31/167
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K45/00
   A61K31/07
   A61P35/04
   A61P43/00 121
   C07C251/58
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-515241(P2017-515241)
(86)(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公表番号】特表2017-533185(P2017-533185A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】EP2015071178
(87)【国際公開番号】WO2016042010
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2018年9月14日
(31)【優先権主張番号】MI2014A001603
(32)【優先日】2014年9月17日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517090336
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ イルックス イスティトゥート ナツィオナレ デイ トゥモリ
(73)【特許権者】
【識別番号】508020502
【氏名又は名称】ウニベルシタ’デグリ・ストゥディ・ディ・ミラノ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITA’ DEGLI STUDI DI MILANO
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ダイドーネ,マリア グラツィア
(72)【発明者】
【氏名】アピエルト,バレンティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ティベリオ,パオラ
(72)【発明者】
【氏名】ダラバーレ,サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】ムッソ,ロアナ
(72)【発明者】
【氏名】ニコリーニ,エリサ
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−509430(JP,A)
【文献】 特表2007−529494(JP,A)
【文献】 特表2005−510447(JP,A)
【文献】 ZHOU,H. et al.,J.Nutr.Biochem.,1991年,Vol.2,p.122-131
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩:
【化1】

[式中:
Xは、−COOHまたはNHであり;
Rは、直鎖もしくは分岐鎖のC−C10アルキレン鎖であり;かつ
は、H、直鎖もしくは分岐鎖のC−C10アルキル、アリール、またはRCO−であり、ここで、Rは、直鎖もしくは分岐鎖のC−C10アルキルである]。
【請求項2】
Xは−COOHである、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩。
【請求項3】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、有機アミンまたはアミノ酸との、請求項2に記載の式(I)の化合物の塩。
【請求項4】
ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムまたはマグネシウムとの、請求項3に記載の式(I)の化合物の塩。
【請求項5】
XはNHである、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩。
【請求項6】
Rは直鎖もしくは分岐鎖のC−Cアルキレン鎖である、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩。
【請求項7】
はHである、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩。
【請求項8】
ナトリウム2−[3−[(1E,3E,5E,7E)−9−(4−ヒドロキシアニリノ)−3,7−ジメチル−9−オキソ−ノナ−1,3,5,7−テトラエニル]−2,4,4−トリメチル−シクロヘキサ−2−エン−1−イリデン]アミノ]オキシアセテート(化合物1a);
ナトリウム2−[3−[(1E,3E,5E,7E)−9−(4−ヒドロキシアニリノ)−3,7−ジメチル−9−オキソ−ノナ−1,3,5,7−テトラエニル]−2,4,4−トリメチル−シクロヘキサ−2−エン−1−イリデン]アミノ]オキシブチレート(化合物1b);
ナトリウム2−[3−[(1E,3E,5E,7E)−9−(4−ヒドロキシアニリノ)−3,7−ジメチル−9−オキソ−ノナ−1,3,5,7−テトラエニル]−2,4,4−トリメチル−シクロヘキサ−2−エン−1−イリデン]アミノ]オキシヘキサノエート(化合物1c)
からなる群から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
医薬としての使用のための、請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩。
【請求項10】
抗腫瘍薬としての使用のための、請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩。
【請求項11】
固形または血液系の(転移性および非転移性)腫瘍の治療における、請求項10に記載の使用のための式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩。
【請求項12】
乳癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌、中皮腫および他の肉腫、神経芽腫、リンパ腫、白血病および黒色腫の治療における、請求項11に記載の使用のための式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩。
【請求項13】
請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の式(I)の化合物と、抗有糸分裂薬、標準的な化学療法に使用される化合物、天然もしくは合成のレチノイド類、エピジェネティック薬、または(腫瘍性もしくは非腫瘍性)標的特異的医薬からなる群から選択される1種以上の医薬との組合せ医薬
【請求項14】
式(I)の化合物および前記のさらなる医薬は、同時にまたは任意の順序で逐次的に投与される、請求項13に記載の組合せ医薬
【請求項15】
有効成分としての請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の式(I)の化合物の少なくとも1つ、および薬学上許容される担体および/または溶出剤を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−オキソ−フェンレチニド誘導体、それらを含有する処方物、ならびに癌の予防および治療における、単独でまたは他の化合物と組み合わせてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
レチノイド類は、ビタミンA(レチノール)の天然および合成の誘導体であり、増殖、分化およびアポトーシスなどの様々な細胞プロセスを調節する。合成レチノイドであるフェンレチニド、すなわち、N−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド(4−HPR)(非特許文献1)は、新生物発生前障害(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)および新生物性障害(非特許文献5;非特許文献6)に対して有望な結果を与えた全トランス型レチノイン酸(ATRA)の非毒性類似体である(非特許文献7)。in vitroで行われた研究では、4−HPRは、増殖を阻害し、様々な組織型の腫瘍細胞株においてアポトーシスを誘導することが示され、活性酸素種(ROS)の生成およびその結果としての酸化ストレスなどの様々な機構が提案されている(非特許文献8;非特許文献9)。
【0003】
4−オキソ−N−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミドまたは4−オキソ−4−HPRは、4−HPRの天然極性代謝産物であり、4−HPR治療を受けた患者の血漿サンプル中および4−HPR処理した癌細胞の培地中で同定された(非特許文献10)。4−オキソ−4−HPRは、様々な癌細胞株(すなわち、神経芽腫、卵巣癌および乳癌細胞株)において抗増殖作用およびアポトーシス作用を誘発し、細胞増殖の阻害において4−HPRよりも2〜4倍効果的である。興味深いことに、4−オキソ−4−HPRはまた、4−HPR耐性癌細胞においても効果的であり、4−HPRと組み合わせると相乗作用を示す(非特許文献11)。分子研究では、4−オキソ−4−HPRの抗腫瘍作用は少なくとも2つの独立した作用機序によるものであることが示されている:1)4−オキソ−4−HPRは、4−HPRおよび他のレチノイド類とは異なり、チューブリン重合を阻害し、異常な紡錘体形成(すなわち、中心体複製が欠如した多極組織化)と組み合わさって有糸分裂期に著しい細胞蓄積を引き起こす。2)一方、4−HPRと同様に、4−オキソ−4−HPRは、小胞体(ER)ストレス応答、Jun N末端キナーゼ(JNK)の活性化および胎盤骨形成タンパク質(PLAB)のアップレギュレーションを含むROS関連シグナル伝達カスケードを介してアポトーシスを引き起こす(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。
【0004】
4−オキソ−4−HPRが少なくとも2つの無関係の機構を介して作用するこの能力は、レチノイドが親薬物よりも強力であり得ることを説明することができ、おそらく薬剤耐性の発生を妨げることを可能とした。さらに、この特有の作用様式は、4−オキソ−4−HPRが、4−HPRよりも効率的に、種々のタイプのヒト腫瘍を標的とすることを可能にし得る。加えて、4−オキソ−4−HPRと他の抗微小管薬(ビンカアルカロイドおよびタキサンなど、これらは高い毒性を有し、耐性は容易に発生する)または従来の化学療法薬との併用療法は、これらの薬剤の用量の低減、従って、それらの副作用の軽減を可能とした。
【0005】
しかしながら、4−オキソ−4−HPRは溶解度が極めて低く、in vivoで行われた実験では、極めて低い、しかも変動の大きいレチノイドの血漿濃度が見出され、結果の再現性およびその臨床使用の可能性は低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nagy L. et al.,Cell Death Differ 5:11−19;1998年
【非特許文献2】Chiesa F. et al.,Int J Cancer 115:625−629;2005年
【非特許文献3】Moglia D. et al., Cancer Lett 110:87−91;1996年
【非特許文献4】Tradati N et al.,1994年
【非特許文献5】Veronesi U. et al.,Ann Oncol 17:106−171;2006年
【非特許文献6】De Palo G. et al.,Gynecol Oncol 86:24−27;2002年
【非特許文献7】Veronesi U. et al.,J Natl Cancer Inst 91:1847−1856;1999年
【非特許文献8】Hail N. et al.,Apoptosis 11:1677−1694;2006年
【非特許文献9】Appierto V. et al.,Carcinogenesis 30:824−831;2009年
【非特許文献10】Villani M.G. et al.,Clin Cancer Res 10:6265−75;2004年
【非特許文献11】Villani M.G. et al.,Cancer Res 66:3238−47;2006年
【非特許文献12】Appierto V. et al.,Oncogene;26:3952−62;2007年
【非特許文献13】Appierto V. et al.,Carcinogenesis 30:824−31;2009年
【非特許文献14】Tiberio P. et al., PLoS One;5(10):el3362;2010年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による誘導体は、4−オキソ−4−HPRの細胞傷害活性および作用機序を維持しながら、生液中での高い溶解度、従って、より良好なバイオアベイラビリティを有する。
【0008】
本発明は、下記の式(I)を有する化合物およびその薬学上許容される塩に関し
【0009】
【化1】
【0010】
式中:
Xは、−COOHまたはNH、好ましくは、−COOHであり;
Rは、直鎖もしくは分岐鎖のC−C10アルキレン鎖、好ましくは、直鎖もしくは分岐鎖のC−Cアルキレン鎖、より好ましくは、−CHであり;
は、H、直鎖もしくは分岐鎖のC−C10アルキル、好ましくは、C−C、アリール、またはRCO−であり、ここで、Rは、直鎖もしくは分岐鎖のC−C10アルキル、好ましくは、C−C、またはアリールである。
【0011】
「直鎖もしくは分岐鎖のC−C10アルキレン鎖」とは、1〜10個の炭素原子を有する二価のアルキル鎖、例えば、−(CH−(式中、nは1〜10の整数である)、または分枝鎖、例えば、−CH−CH(CH)−CH−、−CH(CH)−CH−、−CH(CH)−CH−CH−などを意味する。
【0012】
前記「アルキレン鎖」は、1つ以上の置換基、例えば、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノなどで置換されていてよい。
【0013】
Rは、好ましくは、C−Cアルキレン直鎖、より好ましくは、−CH−である。
【0014】
用語「直鎖もしくは分岐鎖のC−C10アルキル」とは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を指す。
【0015】
用語「直鎖もしくは分岐鎖のC−Cアルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシルなどを指す。
【0016】
前記「アルキル」は、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノなどの1つ以上の置換基で置換されていてよい。
【0017】
用語「アリール」とは、6〜14個の炭素原子および単一の環(フェニルなど)、または複数の環、例えば、ナフチル、フェナントレニル、ビフェニルなどを有する芳香族炭素環式基を指す。前記「アリール」は、ヒドロキシル、ハロゲン、ハロアルキル、シアノ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシなどから選択される1〜3つの置換基を有することができる。
【0018】
は好ましくは、Hである。
【0019】
Xが−COOHである式(I)の化合物の薬学上許容される塩は、無機塩基との塩、例えば、水酸化物ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムもしくはマグネシウム、または適当な有機アミンもしくはアミノ酸との塩、例えば、アルギニンもしくはプロカインの塩などのいずれかである。ナトリウム塩が特に好ましい。
【0020】
Xが−NHである式(I)の化合物の薬学上許容される塩は、適当な酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、酢酸またはp−トルエンスルホン酸との塩である。
【0021】
好ましい化合物は以下である:
化合物1a:
ナトリウム2−[3−[(1E,3E,5E,7E)−9−(4−ヒドロキシアニリノ)−3,7−ジメチル−9−オキソ−ノナ−1,3,5,7−テトラエニル]−2,4,4−トリメチル−シクロヘキサ−2−エン−1−イリデン]アミノ]オキシアセテート(ナトリウム4−アミノオキシアセテート−4−HPR);
化合物1b(LOM1098):
ナトリウム2−[3−[(1E,3E,5E,7E)−9−(4−ヒドロキシアニリノ)−3,7−ジメチル−9−オキソ−ノナ−1,3,5,7−テトラエニル]−2,4,4−トリメチル−シクロヘキサ−2−エン−1−イリデン]アミノ]オキシブチレートまたはブタノエート(ナトリウム4−アミノオキシブチレート−4−HPR);
化合物1c(LOM1133):
ナトリウム2−[3−[(1E,3E,5E,7E)−9−(4−ヒドロキシアニリノ)−3,7−ジメチル−9−オキソ−ノナ−1,3,5,7−テトラエニル]−2,4,4−トリメチル−シクロヘキサ−2−エン−1−イリデン]アミノ]オキシヘキサノエート(ナトリウム4−アミノオキシヘキサノエート−4−HPR);
【0022】
本発明は、全ての可能な立体異性体およびそれらのラセミ混合物または光学活性混合物を含む。
【0023】
本発明による化合物は、増殖性の高い腫瘍の治療のために特に興味深い抗有糸分裂活性を示す。さらに、本発明による化合物は、4−オキソ−4−HPRの二重作用機序を維持し、従って、薬剤耐性の腫瘍を治療するために使用することができる。
【0024】
本発明による化合物は、種々の腫瘍に対して、具体的には、限定されるものではないが、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌、中皮腫および他の肉腫、神経芽腫、リンパ腫、白血病ならびに黒色腫を含む、活発に増殖する固形および血液系の(転移性もしくは非転移性)腫瘍ならびに/または薬剤耐性腫瘍に対して抗腫瘍薬として使用することができる。
【0025】
臨床試験では、レチノール誘導体(フェンレチニドなど)は従来の化学療法薬よりも毒性が低いことが見出されており、ナトリウム4−アミノオキシアセテート−4−HPR塩(1a)を用いてin vivoで得られた予備データも、この化合物の毒性が重篤でないことを示していると思われる。
【0026】
本発明のさらなる目的は、本発明による化合物と、他の化合物との、例えば、他の抗有糸分裂薬(チューブリン脱重合または安定化)との、標準的な化学療法に使用される化合物(白金誘導体など)との、他のレチノイド類(特に、4−HPR)との、エピジェネティック薬(特に、HDAC阻害剤)との、(腫瘍性または非腫瘍性の)特異的標的に対する薬物(HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブなど)との組合せである。
【0027】
本発明のさらなる目的は、有効成分としての式(I)の少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つの薬学上許容される担体および/または希釈剤とを含む医薬組成物である。この薬学上許容される担体または希釈剤は、推奨される投与方法および当業者に利用可能な標準的な製薬技術ノウハウに基づいて選択される。
【0028】
本発明による組成物は、動物への投与に好適な生体適合性のある担体、例えば、生理食塩水などと、場合により、賦形剤、安定剤または希釈剤などの補助剤とを含むことができる。
【0029】
このような医薬組成物は、好ましくは、経口投与、直腸投与、経皮投与または非経口投与用の単位用量の形態で調製される。本発明による化合物は、患者の体重、年齢および健康状態、治療の頻度および任意の付随する治療に基づいて、当業者によって決定可能な治療上有効な量で投与される。
【0030】
他の薬剤と併用する場合、本発明による化合物は、同時にまたは任意の順序で逐次的に投与することができる。
【0031】
ナトリウム4−アミノオキシアセテート−4−HPR(塩1a)は、腫瘍細胞(固形および血液系腫瘍の両方に由来する)の増殖を阻害する十分な能力を有し、これは、卵巣癌および乳癌細胞株においてならびに腹膜中皮腫、神経芽腫およびリンパ腫の細胞において、親薬物である4−オキソ−4−HPRと同等であることを実証した(表1)。作用機序の分析は、塩1aが、2つの独立した経路:ROSの生成(アポトーシス促進作用)および有糸分裂期での細胞周期停止(抗チューブリン活性)を活性化することによって細胞死を誘導する、4−オキソ−4−HPRの固有の特徴を保持することを示した(図1)。さらに、併用療法を用いた予備実験は、塩1aが、種々の組織型の腫瘍細胞株において、パクリタキセル、シスプラチンおよび4−HPRとの相乗活性を有することを示している(図2)。
【0032】
塩1aが、親化合物よりも高い溶解度/バイオアベイラビリティを有するかどうかを確かめるために、in vivo実験をマウスモデルで行った。結果は、この塩が、親化合物よりもはるかに溶解しやすく、4−オキソ−4−HPRよりも最大60倍高い血漿レベルに達し、変動が少ないことを示している(表2)。さらに、4−オキソ−4−HPRで処置したマウスで観察された接種部位の近位での化合物の蓄積は、この塩で処置したマウスでは見られなかった。塩1aの血漿レベルを決定するための実験の際に、この化合物は60mg/kgおよび100mg/kgの1日用量で投与した場合、動物に対して高い毒性を有さないことも見出された。
【0033】
ヒト中皮腫(STO)、卵巣癌(IGROV−1)および乳癌(MDA−MB−231)の細胞を異種移植したマウスにおいて、塩1aの抗腫瘍活性をin vivoで評価した。中皮腫細胞に対する塩1aの活性を第1の実験で評価した:この実験は、(おそらく、対照群のマウスにおける腫瘍増殖の変動性が高いことにより)統計学的有意には達しなかったが、この化合物の活性傾向を示した(図3a)。卵巣モデルに関しては、60mg/kgおよび90mg/kgの用量で、塩1aは、重篤な毒性の明らかな徴候が一切なく、IGROV−1細胞を接種したマウスの生存を有意に高めた(p<0.01)、(図3b)。最後に、乳癌モデルに関しては、重篤な毒性の明らかな徴候がなく、塩1aの90mg/kgの用量が腫瘍増殖を減少させたことが見出された(p=0.01)(図3c)。
【0034】
化合物1b(ナトリウム4−アミノオキシブチレート−4−HPR)および1c(ナトリウム4−アミノオキシヘキサノエート−4−HPR)(sodium 4-aminoooxyhexanoate-4-HPR)もまた、抗腫瘍活性についてin vitroで試験し:腫瘍増殖を阻害する両化合物の能力はナトリウム4−アミノオキシアセテート−4−HPRの能力と同様であった(表3)。
【0035】
化合物9−[3−(2−アミノ−エトキシイミノ)−2,6,6−トリメチル−シクロヘキサ−1−エニル]−3,7−ジメチルノナ−2,4,6,8−テトラエン酸(4−ヒドロキシ−フェニル)アミド(1d)もまた、抗腫瘍活性についてin vitroで試験した。卵巣癌細胞(A2780)では、化合物1dは、G2−M期での周期停止と、抗増殖活性(72時間の処理後のIC50=0.9548μΜ)およびアポトーシス(sub−G1ピーク)活性とを誘導した。
【0036】
Xが−COOHである本発明による化合物は、例えば、反応スキームに示されるように、化合物2(4−オキソ−4−HPR)と、好適なアミノオキシ酸、典型的には、3a〜c、および酢酸ナトリウムとを、エタノール水溶液などの溶媒中で反応させることにより調製することができる(文献に記載のとおりである:J. Med. Chem. 2004年、47、6716−6729)。このようにして得られた化合物を次に塩基の水溶液、典型的には、0.1M重炭酸ナトリウムと反応させ、水を除去した後に塩1a〜cが得られる(スキーム1)。
スキーム1:
【0037】
【化2】
【0038】
アミノオキシ酸3bおよび3cは、それぞれスキーム2および3に報告される手順によって調製することができる。
スキーム2:
【0039】
【化3】
スキーム3
【0040】
【化4】
【0041】
XがNHである式(I)の化合物は、例えば、反応スキーム4に例示されるように、化合物2(4−オキソ−4−HP)と、2−アミノエトキシアミンなどの2−アミノアルコキシアミン二塩酸塩および酢酸ナトリウムとを、エタノール水溶液などの溶媒中で反応させることにより調製することができる。
スキーム4
【0042】
【化5】
【0043】
式(I)の全ての化合物は、試薬および出発化合物を適宜変更することによって、上記の反応スキームに従って得ることができる。出発化合物は、既知のものであるか、または当業者に公知の反応によって市販の化合物から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、塩1aの作用機序である。
図2図2aは、塩1aとパクリタキセル(PTX)との併用療法の抗増殖活性である。図2bは、塩1aとシスプラチン(DDP)との併用療法の抗増殖活性である。図2cは、塩1aとフェンレチニド(4−HPR)との併用療法の抗増殖活性である。
図3図3aは、中皮腫細胞(STO)における塩1aのin vivo抗腫瘍活性である。図3bは、卵巣癌細胞(IGROV−1)における塩1aのin vivo抗腫瘍活性である。図3cは、乳癌細胞(MDA−MB−231)における塩1aのin vivo抗腫瘍活性である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0045】
実施例1−化合物1aの調製:
50%EtOH水溶液中、NHOCHCOOH・1/2HCl(3a、410mg、3.75ミリモル)およびCHCOONa(166mg、2.39ミリモル)の溶液17mLを、EtOH(11mL)中、化合物2(4−オキソ−4−HPR、700mg、1.73ミリモル)の懸濁液に加えた。この反応物を室温で24時間、撹拌下で維持した。その後、溶媒を低圧で除去し、残渣を冷HO(20mL)で希釈し、粉砕し、最後に、真空下で濾過した。739mg(1.54ミリモル)の化合物4a(4−(カルボキシメトキシイミノ)フェンレチニド)を得た。収率:89%。
【0046】
融点:121.8℃
【0047】
H−NMR(CDCl) δ:7.43(2H,d,J=8.2Hz);7,08(1H,s);6.99(1H,dd,J=11.60;14.6Hz);6.82(2H,d,J=8.2Hz);6.44−6.16(4H,m);5.82(1H,s);5.32(2H,s);2.72(2H,t,J=6.4Hz);2.44(3H,s);2.04(3H,s);1.91(3H,s);1.65(2H,t,J=6.4);1,12(6H.s)。
【0048】
H−NMR(DMSO−d) δ:9.78(1H,s);9.16(1H,bs);7.42(2H,J=8.24Hz);7.05−6.89(1H,m);6.68(2H,d,J=8.24);6.47−6.24(4H,m);6.00(1H,s);4.57(2H,s);2.67−2.55(2H,m);2.33(3H,s);2.00(3H,s);1.82(3H,s);1.82(3H,s);1.63−1.49(2H,m);1,07(6H,s)。
【0049】
15.4mLの0.1N NaHCO溶液を、10mLのHO中、4a(739mg、1.54ミリモル)の懸濁液に加えた。この反応物を約22時間撹拌下に置いた。その後、溶媒を低圧で除去した。760mg(1.52ミリモル)の化合物1aを得た。収率:99%
【0050】
融点:188.6℃(熱分解を伴う)
【0051】
H−NMR(DMSO−d) δ:9.8(1H,s);9.38(1H,bs);7.42(2H,d,J=8.2Hz);6.97(1H,dd,J=14.3;11.60Hz);6.68(2H,d,J=8.2Hz);6.44−6.24(4H,m);6.01(1H,s);4.12(2H,s);2.61−2.53(2H,m);2.32(3H,s);2.00(3H,s);1.82(3H,s);1.58−1.47(2H,m);1.05(6H,s)。
【実施例2】
【0052】
実施例2−化合物1bの調製:
50%EtOH水溶液中、3b(17mg、0.11ミリモル)およびCHCOONa(5mg、0.07ミリモル)の溶液0.5mLを、EtOH(0.5mL)中、化合物2(20mg、0.05ミリモル)の懸濁液に加えた。この反応物を室温で24時間、撹拌下で維持した。溶媒を低圧で除去し、残渣を酢酸エチルで溶解し、溶液をHOで洗浄し、NaSOで乾燥させた。次いで、粗生成物を、CHCl:CHOH 95:5での分取クロマトグラフィーにより精製した。20mg(0.04ミリモル)の
化合物4bを得た。
【0053】
(4−(カルボキシプロポキシイミノ)フェンレチニド)(黄色ガラス状物)。収率:80%
【0054】
H−NMR(CDCl) δ:7.39(2H,m);7.12(1H,s);6.96(1H,dd,J=10.6,14.4);6.78(2H,m);6.37−6.14(4H,m);5.80(1H,s);4.18(2H,t,J=6.0) 2.60(2H,t,J=6.6);2.50(2H,t,J=7.3);2.41(3H,s);2.07−1.97(2H,m);2.02(3H,s);1.90(3H,s);1.89−1.76(2H,m);1.07(6H,s)。
【0055】
280μLの0.1N NaHCO溶液を、0.5mLのHO中、4b(18mg、0.035ミリモル)の懸濁液に加えた。この反応物を約20時間撹拌下に置いた。その後、溶媒を低圧で除去した。15mg(0.028ミリモル)の化合物1b(4−(カルボキシプロポキシイミノ)フェンレチニドナトリウム塩)を得た。収率:81%。
【0056】
H−NMR(DMSO−d) δ:9.80(1H,s);7.40(2H,m);6.95(1H,dd,J=11.4,14.4);6−66(2H,m);6.42−6.24(4H,m);5.99(1H,s);3.97(2H,t,J=6.5);2.31(3H,s);1.98(3H,s);1.92−1.79(2H,m);1.83(3H,s);1.79−1.63(2H,m);1.51(2H,t,J=7.2);1.04(6H,s)。
【0057】
化合物3b(4−アミノオキシ酪酸塩酸塩)の調製:
エチル4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イルオキシ)ブチレート。
N−ヒドロキシフタルイミド(1.11g、6.64ミリモル)およびKCO(1.84g、13.28ミリモル)を、無水DMF(6.5mL)中、4−ブロモ酪酸エチル(1mL、6.64ミリモル)の溶液に加えた。この溶液を室温で一晩撹拌下に置いた。溶媒を蒸発させた後、反応混合物を酢酸エチルで溶解し、NaCl飽和溶液で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発させた。生成物をイソプロパノールから結晶化させた(1.67g)。収率:91%。
【0058】
融点:48.5℃
【0059】
H−NMR(DMSO−d) δ:7.86(4H,m);4.16(2H,t,J=6.4);4.07(2H,t,J=7.0);2.53(2H,t,J=7.3);1.97−1.84(2H,m);1−19(3H,t,J=7.0)。
【0060】
4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イルオキシ)酪酸。
エタノール(5.8mL)およびHO(5.8mL)中、LiOH・HO(0.8g、19.1ミリモル)の溶液を、THF(18mL)中、4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イルオキシ)−酪酸エチル(1.65g、5.97ミリモル)の溶液に加え、この溶液を室温で一晩反応させた。溶媒を蒸発させた後、6N HCl溶液(6mL)を加え、粗生成物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相をNaCl飽和溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させた。その後、生成物を酢酸エチルから結晶化させた。1.1gの生成物を得た。収率:74%。
【0061】
H−NMR(DMSO−d) δ:11.25(1H,bs);7.83(1H,d,J=7.0);7.65−7.48(2H,m);7.39(1H,d,J=7.3);3.89(2H,d,J=7.3);2.4(2H,t,J=7.3);1.89−1.74(2H,m)。
【0062】
4−アミノオキシ−酪酸塩酸塩。3N HCl溶液(2mL)中、4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルオキシルオキシ)−酪酸(400mg、1.61ミリモル)の懸濁液を2時間加熱還流した。このフタル酸を濾過し、濾液を蒸発させ、生成物をメタノールから結晶化させた。生成物3bを166mg得た。収率:66%。
【0063】
融点:140℃
【0064】
H−NMR(DMSO−d) δ:10.89(3H,bs);4.00(2H,d,J=6.4);2.31(2H,t,J=7.3);1.88−1.73(2H,m)。
【0065】
参照文献:Cyclic hydroxamates, especially multiply substituted [l,2]oxazinan−3−ones、Wolfe、Saul et al., Canadian Journal of Chemistry、81(8)、937−960;2003年;Method for the synthesis of oxazinone amino acid derivatives、Wolfe、Saul et al., PCT国際出願、第2003018565号、2003年3月6日。
【実施例3】
【0066】
実施例3−化合物1cの調製:
50%EtOH水溶液中、3c(27mg、0.15ミリモル)およびCHCOONa(7mg、0.1ミリモル)の溶液0.65mLを、EtOH(0.56mL)中、化合物2(30mg、0.07ミリモル)の懸濁液に加えた。この反応物を室温で24時間撹拌下に置いた。溶媒を低圧で除去し、残渣を酢酸エチルで溶解し、溶液をHOで洗浄し、NaSOで乾燥させた、次いで、粗生成物を、CHCl:CHOH 95:5での分取クロマトグラフィーにより精製した。16mg(0.03ミリモル)の化合物4c(4−(カルボキシペントキシイミノ)フェンレチニド)を得た。収率:43%
【0067】
H−NMR(CDCl) δ:7.41(2H,m);7.14(1H,s);7.07−6.90(1H,m);6.80(2H,m);6.41−6.13(4H,m);5.82(1H,s);4.12(2H,t,J=6.1);2.62(2H,t,J=6.4);2.49−2.3(2H,m);2.43(3H,s);2.03(3H,s);1.92(3H,s);1.82−1.40(8H,m);1.09(6H,s)。
【0068】
280μLの0.1N NaHCO溶液を、0.5mLのHO中、化合物4c(15mg、0.028ミリモル)の懸濁液に加えた。こmの反応物を約20時間撹拌下に置いた。その後、溶媒を低圧で除去した。11mg(0.02ミリモル)の化合物1cを得た。収率:71%。
【0069】
H−NMR(DMSO−d) δ:9.84(1H,s);7.40(2H,m);7.02−6.86(1H,m);6.66(2H,m);6.44−6.23(4H,m);6.00(1H,s);3.98(2H,t,J=6.0);2.31(3H,s);2.11−2.03(2H,m);1.98(3H,s);1.83(3H,s);1.83(3H,s);1.88−1.74(2H,m);1.64−1.34(2H,m);1.32−1.17(2H,m) 1.03(6H,s)。
【0070】
化合物2c(6−アミノオキシヘキサン酸)の調製:
6−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルオキシ)−ヘキサン酸。 N−ヒドロキシ−フタルイミド(2.44g、15ミリモル)およびトリエチルアミン(6.3ml、45ミリモル)を、無水DMF(30mL)中、6−ブロモヘキサン酸(3g、15ミリモル)の溶液に加えた。この溶液を周囲温度で48時間、撹拌下に置いた。生成した沈殿物を濾過し、溶媒を蒸発させた後、粗生成物を、Sephadex LH−20でヘキサン:アセトン:エチルエーテルの3:1:1混合物を用いて精製した。2.2gの生成物を得た。収率:53%。
【0071】
H−NMR(CDCl) δ:7.95−7.68(4H,m);4.23(2H,t,J=6.4);2.43(2H,t,J=7.0);1.93−1.68(4H,m);1.67−1.51(2H,m)。
【0072】
6−アミノオキシ−ヘキサン酸。 3N HCl溶液(2mL)中、6−(1、3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルオキシ)−ヘキサン酸(120mg、0.43ミリモル)の懸濁液を3時間加熱還流した。沈殿を濾去し、水を蒸発させ、メタノールから生成物を結晶化させた。生成物3bを66mg得た。収率:84%。
【0073】
H−NMR(DMSO−d) δ:10.88(3H,bs);3.95(2H,t,J=6.3);2.18(2H,t,J=7.3);1.62−1.41(4H,m);1.36−1.20(2H,m)。
【実施例4】
【0074】
実施例4−化合物1dの調製:
エタノール(500μL)中、化合物2(23mg、0.05ミリモル(mmoli))の懸濁液を、50%エタノール水溶液(500μL)中、2−アミノエトキシアミン二塩酸塩(16mg、0.11ミリモル)および無水酢酸ナトリウム(6mg、0.07ミリモル)の溶液で処理した。得られた混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をCHOH/HO 9:1での分取RP−18クロマトグラフィーにより精製し、18mgの化合物1dを得た。収率:76%。融点134℃。
【0075】
H−NMR(CHOH−d) δ:7.37(2H,d,J=8.5Hz),7.05(1H,dd,J=11.3,14.6),6.74(2H,d,J=8.5),6.48−6.20(4H,m),5.99(1H,s),4.33−4.25(2H,m),3.28−3.22(2H,m),2.70(2H,t,J=6.41Hz),2.37(3H,s),2.04(s,3H),1.91(3H,s),1.62(2H,t,J=6.4)。
【実施例5】
【0076】
実施例5−薬理学的実験
in vitro試験
種々の腫瘍細胞株に対する様々な化合物1a〜cの(単独療法および併用療法の両方の)抗増殖活性を、72時間の処理後にスルホローダミンBアッセイにより評価し、単独療法については、増殖を50%阻害することができる用量(IC50)を算出し(結果は表1および表3にまとめる)、併用療法については、相乗作用/拮抗作用屈折率としてケルン指数(Kern Index)(KI)を決定した(結果は図2に示している)。
【0077】
作用機序の評価に関しては、5−(および−6)−クロロメチル−2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(CM−H2DCFDA)プローブの使用による5時間の処理後にROSの生成を判定し、一方で、プロピジウムヨージド染色によって細胞周期を評価した。両方の場合において、細胞蛍光分析(Cytofluorimetric analysis)(FACS)を行った。
【0078】
in vivo試験
塩1aの血漿レベルを評価するために、4−オキソ−4−HPR(120mg/kg)および塩1a(ナトリウム4−アミノオキシアセテート−4−HPR)(60mg/kgおよび100mg/kg)を、ヌードマウスに連続4日間(1日1回)i.p.投与し、最後の投与から5時間後にHPLCにより血漿レベルを評価した(結果は表2にまとめる)。
【0079】
中皮腫に関しては、マウスにSTO細胞をs.c.接種し、腫瘍細胞接種から1日後に塩1aでの処置を開始した(用量:i.p.で30mg/kgおよび60mg/kg;5日/週で4週間)。対照マウスは、塩を溶解するのに使用したものと同じ溶媒で処置した。動物を週2回検査し、それらの体重および毒性の徴候を調べた。様々な群(対照群および処置群)における腫瘍増殖を評価し、それらの差を統計的に分析した(結果は図3aに示す)。
【0080】
卵巣モデルでは、ヌードマウスにIGROV−1細胞をi.p.接種し、腫瘍細胞接種から1日後に塩1aでの処置を開始した(用量:i.p.で30mg/kg、60mg/kgおよび90mg/kg;5日/週で4週間)。対照マウスは、塩を溶解するのに使用したものと同じ溶媒で処置した。動物を週2回検査し、それらの体重および毒性の徴候を調べた。様々な群(対照群および処置群)の生存時間を評価し、それらの差を統計的に分析した。実験は二反復で行い、同等の結果を得た(結果は図3bに示す)。
【0081】
乳癌モデルに関しては、ヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)をNOD/SCID−γマウスの乳房脂肪体に接種し、腫瘍細胞接種から1週間後に塩1aでの処置を開始した(用量:90mg/kg;4日/週で5週間)。動物を週2回検査し、それらの体重および毒性の徴候を調べた。様々な群(対照群および処置群)における腫瘍増殖を評価し、それらの差を統計的に分析した。実験は二反復で行い、同等の結果を得た(結果は図3cに示す)。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
4−オキソ−4−HPR:5%DMSO、5%クレモフォール、HO。
塩1a:5%DMSO、HO。
【0084】
【表3】
図1
図2
図3