特許第6654775号(P6654775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654775
(24)【登録日】2020年2月4日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】超音波式顔面マッサージャー
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20200217BHJP
   A61H 23/02 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   A61N7/00
   A61H23/02 341
   A61H23/02 386
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-144904(P2017-144904)
(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公開番号】特開2019-13717(P2019-13717A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2017年8月3日
【審判番号】不服2018-8002(P2018-8002/J1)
【審判請求日】2018年5月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000194413
【氏名又は名称】菅野 康幸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 康幸
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 井上 哲男
【審判官】 莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−116271(JP,A)
【文献】 特開2015−157034(JP,A)
【文献】 特開2016−208887(JP,A)
【文献】 特開2019−13716(JP,A)
【文献】 特開平11−114000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H23/02
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路と増幅回路で構成する送信回路と、送信回路に接続して送信回路を制御する制御部と、送信回路と接続して超音波を発振する超音波振動子の、3ブロックで構成される電気回路と、バッテリーと押しボタン式電源スイッチで成る電源部とを含み、
上記電気回路と電源部を構成要素とした超音波発振回路と、
押しボタン式電源スイッチと超音波振動子を除く超音波発振回路をカバーケースの中に収容し、押しボタン式電源スイッチと超音波振動子をカバーケースの外側面に設置するカバーケースと、
カバーケースの外側面に設置された超音波振動子を被覆する超音波ヘッドとを含み、
上記超音波発振回路カバーケース超音波ヘッドを主要構成要素とし振動数が1.2MHzの超音波を連続発振する発振期と、超音波を発振しない休振期を、交互に連続して繰り返す間歇的発振様式による超音波式顔面マッサージャーにおいて、
休振期の長さが発振期の長さ以上である発振期と休振期の繰り返し頻度が、1分間に600回未満であることを特徴とする、超音波式顔面マッサージャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は美容を目的とする超音波式顔面マッサージャーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波は通信、画像情報伝達、エネルギー伝達等、種々な分野で様々な使われ方がされてきた。美容機器で使われている超音波もその一つであり、顔面やその他の肌のマッサージに効果があるとして用いられている。しかし、その作用機序は必ずしもすべてが明確にされているものではなかった。
【0003】
従来、超音波の美容における作用は、超音波が皮膚に照射されることによって振動エネルギーが皮膚組織に吸収され、熱エネルギーに変換される。これにより、皮膚を加温する局所的な温熱刺激として作用して、被照射部の血管を拡張させ、血流を増加させるよう作用すると考えられ、いわゆる温熱作用が主たる作用として理解されていた。
【0004】
しかし、一方では、超音波による組織傷害が指摘され、超音波の連続照射によって肌荒れが生じる恐れのあることが知られていた。美容機器では、この様な傷害を避けるために効果があるとして、超音波を間歇的に照射する照射様式が提案されていた。
【0005】
この他、超音波は放射圧を有しており、超音波を水中に照射した場合、水が超音波の照射方向へ直進する直進流が生じることで、水の直進作用を観察することができる。
この様な水の直進流を生じさせる超音波を、細胞内に細胞内液があり、組織間隙内には細胞外液がある皮膚内に向けて照射した場合、細胞内液は細胞外へ流出することがないものの、細胞外液は放射圧による圧力の高い部位から放射圧を受ない圧力の低い部位へと移動する。一方、この様な皮膚の組織間隙内にある細胞外液は、浸透圧、組織圧、管内圧等による管内外の圧力差によって、毛細血管静脈側やリンパ管内に取り込まれ、微小循環系を経て中枢側へ移送され、最終的には大循環系に還流されている。
従って、皮膚内に人工的に圧力を及ぼす場合、組織間隙内に在る細胞外液を微小循環系に取り込ませることに利用できる可能性があるばかりでなく、微小循環系の機能的な性状を利用して、静脈血やリンパ液を中枢側へ移送、還流することにも利用出来る可能性があると考えられる。
【0006】
しかしながら、超音波の連続照射を続ける照射様式では、超音波の被照射部に放射圧が連続的にかかることから、一旦、組織間隙内の細胞外液が放射圧によって排出されても、同部には圧力の高い状態が継続するため、周囲の組織間隙内に在る細胞外液が被照射部の組織間隙内に流入してくることができず、周囲の皮膚の組織間隙内にある細胞外液を順次排出して皮膚の浮腫みを解消するという、美容作用の一つを生じさせることはできなかった。
【0007】
他方、微小循環系の一部を担い、血管からの漏出液を大循環系に還流させる経路であるリンパ管には、15秒以上の振動刺激によって自働能が賦活され、振動刺激を止めた後も蠕動運動を継続することが知られていた。
上記の様な性質を利用すれば、マッサージに要した時間以上のマッサージ効果を得ることができると考えられるが、組織内に定常的な圧力を作用させるだけでは、リンパ液を移送することはできなかった。
【0008】
以上のことから、美容を目的とする場合には、一定な超音波を連続的に発振し続ける照射様式では、定常圧刺激に過ぎず、利点が少ないと考えられた。
現在、美容に用いられている超音波の一般的な振動数はMHz帯が主力であり、そのMHz帯の超音波の約百万分の1秒以下で生じる1波は、生体組織のレオロジー的性状から、生体の組織構造に対してマクロ的な1振動として作用するものではない。
一方、MHz帯の超音波を百分の数秒以上連続発振させ、その後発振を百分の数秒以上休振させることを繰り返す間歇的な超音波の発振様式では、超音波の1発振期間における百分の数秒以上の連続発振が、生体の組織構造に対するマクロ的な1振動として作用する。
このようなことから、超音波を百分の数秒以上連続発振する発振期と、同じく百分の数秒以上超音波を発振しない休振期を交互に繰り返す、超音波の間歇的な発振様式では、組織内に間歇的な圧力刺激を発生させることができ、その圧力刺激の頻度は単位時間当たりの発振期の頻度である。そして、振動的圧力刺激には、微小循環系を促進する作用があることが知られている他、組織の緊張や線維芽細胞に対する振動刺激は、弾性線維が線維芽細胞からより多量に形成される条件になると考えられている。
その様な弾性線維は皮膚の真皮層にあり、この線維層の豊かさと健全性、さらにそこに含まれる適切な水分量は、弾性ある瑞々しい肌をつくる上で大変重要な役割を果たしていることから、美肌の大きな要素であった。
しかしながら、従来の美容における間歇的な超音波発振の様式は、超音波の連続的な照射が原因となる肌荒れを防止する目的にしか考えられていなかった他、超音波を用いて物質を細胞内に導入するソノポレーションにおいても、超音波を間歇的に照射することによって細胞障害を防止することが目的であり、間歇的な超音波照射を生体組織への振動的圧力刺激の手段として利用して、組織構造や生理的な機能と協調して微小循環系を促進し、美容に資することは、考えられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2015−239704
【特許文献2】特願2017−144903
【特許文献3】特開2016−208887
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、超音波振動子を用いる美容機器において、皮膚への超音波照射によるシミの発症を予防し、微小循環系を促進する、超音波式顔面マサージャーの開発を課題とするものである。
【0011】
上記の課題を解決するための技術的な背景には、人工的な振動的圧力刺激が、それが適用される微小循環系の生理的な性状と協調する必要があり、関連する事項を説明する。
【0012】
前述のとおり、超音波の間歇的な発振様式は、皮膚組織内に放射圧を間歇的に作用させることができることから、超音波を間歇発振する頻度によっては、皮膚組織に振動的な圧力刺激を生じさせることが可能である。
間歇的発振様式で超音波を皮膚内に照射する場合、発振期において、皮膚の組織間隙内に在る細胞外液に放射圧が作用する。これによって細胞外液は圧力の高い部位から圧力の低い部位へと移動することができる。同時に、被照射部の静脈やリンパ管内にある静脈血やリンパ液にも放射圧が作用して、それらは、圧力の低いそれぞれの中枢側へ移送される。 一方、それによって空虚となったそれぞれの脈管は、放射圧と組織圧に押されて閉塞する。しかし、次に続く超音波の休振期では、細胞外液が押し出された組織間隙内に、周囲の組織間隙内に在った細胞外液が流入する他、発振期で閉塞し扁平になった静脈やリンパ管が、それぞれの脈管壁の弾力やアンカーリングフィラメントの牽引力等によって元の形状に戻ろうとする際に、管内に陰圧が生じ、周囲に在った組織間隙内の細胞外液が、毛細血管静脈側やリンパ管内に引き込まれて微小循環系に取り込まれる他、末梢側の静脈やリンパ管からも血液やリンパ液が陰圧部に流入して、それらが次にくる超音波の発振期で放射圧を受け陽圧となることにより、それぞれの中枢側へ移送される。
組織と生理的性状に適した頻度による超音波の間歇的な発振様式では、この様なことが繰り返されることから、超音波の皮膚への生理的な頻度による間歇的な照射は、皮膚組織に対する振動的圧力刺激として機能して、超音波の被照射部における微小循環系を促進する作用を呈することができると考えられる。しかし、人工的な超音波照射において、どの位の発振期の頻度が生理的に許容され、ヒトの皮膚の微小循環系を促進する作用を有するかは、これまで検討がなされていなかった。
【0013】
以下に、その検討内容を記す。
一般的に、哺乳類では、血液やリンパ液が全身を巡り物質移送を行って、代謝や情報伝達、免疫等の諸機能を担っているが、それら細胞外液が能動的に輸送されるのは心臓によって加圧される動脈血のみで、静脈血やリンパ液は心臓へ受動的に還流されている。このため静脈血やリンパ液の移送には重力の影響を大きく受け、体位や姿勢にも影響を受ける極めて受動的なものであるが、それらを滞りなく心臓に還流するために、静脈弁やリンパ管弁、伴行動静脈等、様々な解剖学的構造と、心臓の拍動や呼吸運動、歩行、咀嚼運動、体動等、生体内で生じる様々な周期的運動や体動等による圧力変動が巧みに組み合わされて、血液やリンパ液を中枢側へ移送する還流システムが、大循環系のみならず微小循環系においても備わっている。
例えば、呼吸運動は、呼吸筋や横隔膜を周期的に収縮弛緩させるものであるが、この際に、大循環系では、胸腔内に生じる周期的な陰圧によって、静脈血の心臓への還流が促進される他、呼吸筋や横隔膜に含まれる静脈やリンパ管、さらにそれら周囲にある微小循環系にも周期的な圧力変動が生じて、それら脈管が陰圧となる時には細胞外液が毛細血管静脈側やリンパ管に移入して、微小循環系に取り込まれる一方、陽圧時には、それらが、それぞれの中枢側へ移送される。そして、この様な還流に作用する圧力の変動要因は呼吸であり、変動の頻度は呼吸数に等しい。一般的に、平常時、象では1分間に約6回、人では約17回である。しかし、兎や犬等が、暑熱時、体熱放散のために浅速呼吸を行っている状態では、1分間に数十回からそれ以上の回数にまで達していて、ハムスター等では平常時でも1分間に約135回、マウス等では1分間に約200回近くの呼吸を行っている。そして、これらの動物では、それぞれの呼吸運動が及ぶ範囲において、生理的な周期的圧力変動として作用して、静脈血やリンパ液の還流が、大循環系、微小循環系において促進されている。
また、リズミカルな体動や運動、歩行、咀嚼運動、四肢の震え、あるいは間歇的な体動等も、関連する筋肉の筋圧や周囲の組織圧を周期的あるいは間歇的に変動させ、含まれる静脈やリンパ管を圧迫して、静脈血やリンパ液の還流を促進している。この様な時に生じるマッスルポンプ作用は、大循環系に止まらず微小循環系の毛細血管やリンパ管でも同様に働いて、末梢の静脈血やリンパ液を中枢側へ移送し、大循環系に還流させることに大変重要な役割を果たしている。
さらに、心臓の拍動によって生じる動脈壁側圧の周期的な変動が動脈周囲組織の微小循環系に作用して、静脈血やリンパ液の還流を促進するよう作用する他、動脈と伴行する静脈にも周期的な圧力変動を及ぼして、静脈中の静脈血を中心側へ還流することを促進しているが、この際の圧力変動の源は心臓であり、心拍数が圧力変動の頻度である。平常時の心拍数は、大型動物の象で1分間に約20程度、ヒトでは1分間に約60〜80程度であるが、ハツカネズミ等の小型哺乳類では、興奮時、1分間に約600〜700程度もあることが知られている。
以上の、大小、種を問わず、比較的身近な哺乳類の生体内で、生理的に起きている周期的な圧力変動の頻度を集計すると、1分間に数回から約700回程度となり、生理的な状態での呼吸数や心拍数は、種によって大きな差を有していることが明らかである。しかしながら、その主な原因は、動物のサイズによると考えられている。
【0014】
一方、微小循環系では、組織的構造やサイズの種による差異が少なく、生理的なメカニズムや生理的な値も近似していることから、種をまたいで参考に資することが可能である。従って、前述したそれら動物の生体内で、生理的に生じている圧力変動の範囲では、それら動物の微小循環系が生理的に正常に機能しており、それはまた、ヒトの微小循環系においても、還流システムが生理的に正常に機能することができると考えられる。よって、人工的に発生させる振動的圧力刺激を生体に適用する場合には、1分間当たり700回以下の頻度であれば生理的に機能すると考えることができ、人工的な刺激であるものの、微小循環系を促進する作用が生じると考えることができる。
【0015】
前述の通り、微小循環系での静脈血やリンパ液の移動には周期的な圧力変動が重要な役割を果たしている。本発明による超音波式顔面マッサージャーでは、上記の生理的に機能する振動数の範囲内で、超音波の間歇的な照射によって人工的な振動的圧力刺激を生体内に生じさせるものであるが、それによる作用のメカニズムと鍵となる要素を一部の重複部分を含め、改めて下記に示す。
超音波の間歇的な照射様式において、超音波を発振する発振期では超音波の照射によって放射圧が生じ、毛細血管やリンパ管を満たしていた血液やリンパ液が圧力を受け、圧力の低いそれぞれの脈管の中枢側に移送され、空虚となったそれぞれの脈管は、放射圧や周囲の組織圧で扁平化する。
続く休振期では、放射圧が消退して、扁平化していたそれぞれの脈管が管壁の弾力やアンカーリングフィラメントの牽引力等によって元の形状に戻ろうとする。その際に、管内に陰圧が生じるが、先に中枢側に移送された静脈血やリンパ液は、それぞれの管内の弁によって逆流が阻止され、中枢側に留まっている。一方で、放射圧を受けなかった末梢の周囲組織から、静脈血やリンパ液が陰圧部に流入して、管内がそれらによって充満される。これに再び、発振期での超音波照射による陽圧と、その後の休振期における陰圧が順次繰り返されて、静脈血やリンパ液が順次中枢側へと移送され、末梢組織での物質の出入りと交換が促進される。
間歇的な超音波照射によるマッサージ作用のメカニズムの一部がこの様なことと考えられることから、静脈血やリンパ液が順次中枢側へ移送、還流されるには、放射圧が消退して陰圧となった静脈内やリンパ管内に、末梢からの静脈血やリンパ液が流入して再び満たされる必要がある。しかし、そのためには、再充満に要するための時間が必要である。
従って、この様な再充満に必要な時間よりも短い間隔で圧力刺激が繰り返えされる、発振期の頻度の大きな超音波照射では、いくら皮膚組織に間歇的な放射圧が加えられても、送り出すべき血液やリンパ液が流入して管内に貯留することができず、同部の微小循環系システムが機能しなくなって、局所的な微小循環不全が生じる。
このようなことから、マッサージ作用を確実に効果的に生じさせるためには、被照射部における局所的な微小循環不全を生じさせない圧力変動の頻度である必要があり、少なくとも、比較的身近な大小の動物の生体内で、実際に生理的に作動している圧力変動数の範囲内で、人工的に行う間歇的な超音波発振の発振期の頻度を設定することは、合理性があると考えられる。
【0016】
マッサージ作用を呈するには、超音波の発振期の頻度が微小循環系にて機能できる頻度であることが必要であるが、一方で、チェーンソー、さく岩機などの振動工具を長時間使用していると、手指に循環障害が発症することが知られている。近年では、キーパンチャーやタイピストにも、振動が加わる手指において白蝋病の発生が報告されている。しかし、発症の原因を探求する研究の中で、動脈壁に加わる振動刺激の周波数が10Hz/sec以下の場合には、循環障害が発現しないことが明らかにされている。このようなことから、超音波発振の発振期の数を1分間に600回以下の頻度に抑えることは、例え振幅や加速度が小さく、短時間の使用であっても、顔面のマッサージにおいて、振動刺激による循環障害が発症することを予防するためには、意義があると考えられる。
【0017】
以上のことから、超音波を振動的圧力刺激の手段として利用するには、刺激が生体内で機能すると考えられる圧力変動の頻度の範囲から、振動刺激による循環障害が発症する恐れのある範囲を除くことが必要と考えられ、さらに、十分な再充満時間を確保することが必要と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は、超音波振動子を用いて、超音波を連続発振する発振期と超音波を発振しない休振期を交互に連続して繰り返す、間歇的発振様式を採用する超音波式顔面マッサージャーにおいて、
休振期の長さが発振期の長さ以上である発振期と休振期の繰り返し頻度を、1分間に600回未満とすることを手段とするものである。
【0019】
上記手段による作用を下記に示す。
マッサージ時に、皮膚組織に与える放射圧の頻度は、動物の体内で生理的に生じている周期的な圧力変動の頻度の範囲内であることから、ヒトの微小循環系においても、振動的圧力刺激が生理的に機能して、微小循環系を促進する作用が生じる。
さらに、10Hz/sec以下の振動数では循環障害を発症しないことから、超音波照射における振動的圧力刺激の安全性を高める作用がある。
【0020】
また、発振期と休振期とからなる振動的圧力刺激の1振動サイクルにおいて、発振期における血液やリンパ液の送出時間よりも、休振期における血液やリンパ液の再充満に充てる時間が長いことから、管壁の弾性線維が比較的少ない静脈や極めて少ないリンパ管における再充満時間を確保するように作用して、被照射部における局所的な微小循環不全の発生を防止する作用がある。
【0021】
皮膚の静脈やリンパ管においては、表層部の血液やリンパ液を集めながら、それぞれ、その管径を太くしながら深層部に移行している。同時に、皮膚の深層部に在る静脈やリンパ管では、それぞれ、表層部にある静脈やリンパ管の内圧よりも低いことから、表層部と深層部との間に縦の圧力勾配が存在して、深層部は表層部に対して常に中枢側として機能する。このため、間歇的な超音波照射によって皮膚表面に垂直的に加えられる間歇的な圧力刺激は、常に中枢側への振動的圧力刺激として作用するため、効率の良いポンピング作用が生じて、効果的に微小循環を促進させることができる。
【0022】
さらに、微小循環系の性状は皮膚と筋肉においても等しいことから、より深部に到達する超音波周波数を用いて、より強い強度の超音波を発振することにより、筋肉のマサージに用いることも可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、下記の効果を得ることができる。
1.間歇的超音波発振の頻度が、哺乳類の生体内で生理的に生じる圧力変動の頻度内であり、且つ、皮膚表面に対してほぼ垂直的な方向から超音波を皮膚内に射入することができることから、皮膚組織微小循環系の中枢側に向けて間歇的な放射圧を及ぼしてポンピング作用を生じさせ、生理学的、解剖学的特徴に合致した、極めて効率的なマッサージを行うことができる。
2.超音波による温熱刺激作用と振動的圧力刺激作用が同時に作用して、微小循環系と代謝系が相乗的に作用することから、浮腫みを解消し、弾性線維の生成を高めて、弾力あるみずみずしい肌とする効果を期待することができる。
3.超音波の照射様式が間歇的であること、さらに、機械的振動刺激と比べ超音波照射では組織をマクロ的に振動させないため、これによる皮膚の繊維構造を傷害する恐れが少なく、シミの発症を抑制することができる。
4.音の発生が少ないため、極めて静寂にマッサージをおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】は、超音波発振回路の電源部を除いた構成要素を示す概略図である。
【0025】
図2】は、間歇的超音波発振様式の発振期と休振期の時間関係図である。
【0026】
図3は、本願実施例の外観を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図に基いて説明する。
【0028】
図1は本願実施例の、発振回路と増幅回路で構成する送信回路と、送信回路に接続して送信回路を制御する制御部と、送信回路と接続して超音波を発振する超音波振動子の、3ブロックで構成される電気回路と、バッテリーと押しボタン式電源スイッチでなる電源部とを含み、
上記電気回路と電源部を構成要素とした超音波発振回路から、
電源部を除いた電気回路の構成要素を示す概略図で、
CPUで構成される制御部(1)と、発振回路(3)と増幅回路(4)で構成される送信回路(2)と、超音波振動子(5)とから構成され、
CPUで構成される制御部(1)は、パルス波を生成する発振回路(3)を制御する制御信号をつくり出して発振回路(3)に送り、パルス波の発振と休振を制御することによって、超音波発振の発振期と休振期を制御する。
送信回路(2)を構成する発振回路(3)は、超音波振動子を駆動するためのパルス波を生成するものであり、制御部(1)から送られる制御信号によって、パルス波の出力と休止を行う。
送信回路(2)を構成する増幅回路(4)は、発振回路(3)が出力したパルス波の電圧振幅を増幅する。
超音波振動子(5)は、発振回路(3)で生成した周波数と増幅回路(4)で増幅した電圧に応じて、送信回路(2)から送られてくるパルス波の電圧信号によって駆動され、超音波を発振する。
【0029】
本願実施例では、超音波振動子の振動数を1.2MHz、平均出力エネルギーを1.0W/CmCmとし、超音波の間歇的発振様式において、発振期の長さを0.11秒、休振期の長さを0.14秒として設定したもので、1分に240回の放射圧による振動的圧力刺激を生じさせることができる。
本願実施例では、上記に設定した条件で超音波を発振するものであるが、押しボタン式電源スイッチが押されている時にのみ超音波の発振が行われるものである。
また、超音波の振動数や出力強度、あるいは発振期や休振期の長さ等は、本実施例が設定した条件に限定されるものではなく、発振回路や増幅回路、あるいはCPUを構成要素とする制御部等によって、生体の安全で生理的な範囲内で、それぞれの値を設定するよう超音波発振回路を構成することも可能である。
【0030】
図2は、超音波発振の発振期と休振期の時間的な関係を示すもので、1発振期とそれに続く1休振期を1サイクルとして、発振期と休振期を交互に繰り返すことを連続するもので、発振期を0.11秒、休振期を0.14秒に設定することにより、240サイクル/分の振動的圧力刺激を生じさせることができる。
【0031】
図3は、押しボタン式電源スイッチと超音波振動子を除く超音波発振回路をカバーケースの中に収容して、押しボタン式電源スイッチと超音波振動子をカバーケースの外側面に設置したカバーケースと、
上記カバーケースの外側面に設置された超音波振動子を超音波ヘッドで被覆して成る、本願実施例の外観を示す模式図である。
【符号の説明】
【0032】
1.制御部
2.送信回路
3.発振回路
4.増幅回路
5.超音波振動子
6.パルス波発振期
7.パルス波休振期
8.超音波ヘッド
9.押しボタン式電源スイッチ
10.カバーケース
図1
図2
図3