特許第6654788号(P6654788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6654788建設機械におけるエンジン支持方法およびエンジン支持構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654788
(24)【登録日】2020年2月4日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】建設機械におけるエンジン支持方法およびエンジン支持構造
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20200217BHJP
   E02F 9/08 20060101ALI20200217BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   E02F9/00 D
   E02F9/08 Z
   B60K5/12 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-140450(P2016-140450)
(22)【出願日】2016年7月15日
(65)【公開番号】特開2018-9416(P2018-9416A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】岩本 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】恒吉 剛
(72)【発明者】
【氏名】中井 暁人
(72)【発明者】
【氏名】河鰭 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】若草 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】名田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】赤井 孝輔
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−179165(JP,A)
【文献】 特開2013−028915(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0026795(US,A1)
【文献】 特開2016−008442(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0376866(US,A1)
【文献】 特開2007−092281(JP,A)
【文献】 特開2007−198031(JP,A)
【文献】 特開平11−013084(JP,A)
【文献】 特開2008−075445(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0073938(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 9/08
B60K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに搭載されるエンジンを、防振機能を有したエンジンマウントと、車体フレームを構成する縦フレームに固定され、前記エンジンマウントが取付けられるエンジン支持部材とを介して車体フレームに支持せしめる建設機械のエンジン支持方法において、前記エンジン支持部材を、縦フレームに上下方向の位置調整がなされた状態で固定される支持板と、エンジンマウント取付孔が形成された天板および該天板の一側縁から垂下される垂下板を備えたL字形状をし、エンジンマウント取付孔の前後左右方向の位置調整がなされた状態で前記支持板および縦フレームに固定されるマウント取付ブラケットとを用いて構成するとともに、該マウント取付ブラケットを支持板および縦フレームに固定するにあたり、天板を支持板の上端面に水平に載せた状態でエンジンマウント取付孔の前後左右方向の位置調整を行い、該位置調整されたエンジンマウント取付孔を軸心として天板を水平方向に回転させて垂下板を縦フレームに当接させ、該当接した位置で垂下板を縦フレームに固定するとともに天板を支持板の上端面に固定することを特徴とする建設機械におけるエンジン支持方法。
【請求項2】
車体フレームに搭載されるエンジンを、防振機能を有したエンジンマウントと、車体フレームを構成する縦フレームに固定され、前記エンジンマウントが取付けられるエンジン支持部材とを介して車体フレームに支持せしめる建設機械のエンジン支持構造において、前記エンジン支持部材を、縦フレームに上下方向の位置調整がなされた状態で固定される支持板と、エンジンマウント取付孔が形成された天板および該天板の一側縁から垂下される垂下板を備えたL字形状をし、エンジンマウント取付孔の前後左右方向の位置調整がなされた状態で前記支持板および縦フレームに固定されるマウント取付ブラケットとを用いて構成するとともに、該マウント取付ブラケットは、天板を支持板の上端面に水平に載せた状態でエンジンマウント取付孔の前後左右方向の位置調整がなされ、該位置調整されたエンジンマウント取付孔を軸心として天板を水平方向に回転させて垂下板が縦フレームに当接した位置で、垂下板が縦フレームに固定されるとともに天板が支持板の上端面に固定されるものであることを特徴とする建設機械におけるエンジン支持構造。
【請求項3】
請求項2において、建設機械は、下部走行体の上方に旋回自在に支持される上部旋回体を備え、該上部旋回体の車体フレームを構成する旋回フレームは、左右方向中央部に前後方向に延びる左右一対のセンター縦フレームを備えて構成されるとともに、エンジンは、前記センター縦フレームの左右外方側に配設されることを特徴とする建設機械におけるエンジン支持構造。
【請求項4】
請求項3において、旋回フレームは、左右外縁部に前後方向に延びる左右のサイド縦フレームを備えるとともに、エンジン支持部材の支持板は、上下方向の位置調整がなされた状態でセンター縦フレームとサイド縦フレームとの間に支架固定される一方、マウント取付ブラケットは、エンジンのセンター縦フレーム側部分を支持するセンター側マウント取付ブラケットとエンジンのサイド縦フレーム側部分を支持するサイド側マウント取付ブラケットとが設けられ、センター側マウント取付ブラケットは、前記支持板およびセンター縦フレームに固定され、サイド側マウント取付ブラケットは、前記支持板およびサイド縦フレームに固定されることを特徴とする建設機械におけるエンジン支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械におけるエンジン支持方法およびエンジン支持構造の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械において、車体フレームにエンジンを搭載するにあたり、防振機能を有したエンジンマウントと、該エンジンマウントが取付けられるエンジンマウント取付孔を有したエンジン支持部材とを介して車体フレームに支持せしめるように構成したものがある(例えば、特許文献1の図13参照)。この場合、エンジンを既定位置に水平に設置するため、エンジン支持部材を三次元的に正確に位置調整して車体フレームに取付ける必要があるが、エンジン支持部材が取付けられる部分の車体フレームが溶接歪等により設計位置に対して位置ずれしている場合もあって、車体フレームを基準として正確な位置調整を行うことが難しい場合がある。このため、従来、治具を用いてエンジン支持部材を保持し、三次元的に正確な位置となるように位置調整しながらエンジン支持部材を車体フレームに溶接するようにしていた。しかしながら、エンジン支持部材を三次元的に位置調整しながら溶接する作業は、面倒で手間がかかる作業であり、しかもエンジン支持部材は通常エンジンマウントの数に対応して複数設けられているから、作業時間も長くかかる。特に、例えば、油圧ショベルの上部旋回体の車体フレームである旋回フレームにエンジンを搭載するにあたり、エンジンが旋回フレームの左部あるいは右部に配設されているような場合(例えば、特許文献2参照)には、エンジン支持部材を旋回フレームの左右外縁部に取付ける必要が生じるが、旋回フレームの左右外縁部は左右中央部に比して溶接歪や荷重による歪が大きく、このため、前述したような三次元的に位置調整しながらのエンジン支持部材の溶接作業は更に面倒であって時間がかかり作業効率に劣るという問題があった。
一方、建設機械のフレームに設けられた梁材にマウント部材を介して機器を取付けるにあたり、梁材にプレート穴を設け、該プレート穴の内周面に、マウント部材が取付けられるマウントプレートを、水平方向および垂直方向に位置調整した上で固定するように構成し、これにより機器を、適正な位置に高精度に取付けることができるようにした技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−179165号公報
【特許文献2】特開2007−198031号公報
【特許文献3】特開2013−28915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献3のものは、マウント部材が取付けられるマウントプレートを、梁材に形成されたプレート穴に対して水平方向および垂直方向に位置調整した上で溶接する構成であるから、やはり三次元的に位置調整しながらの溶接作業が必要であって、手間と時間がかかって作業効率に劣るという問題は解決されておらず、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、車体フレームに搭載されるエンジンを、防振機能を有したエンジンマウントと、車体フレームを構成する縦フレームに固定され、前記エンジンマウントが取付けられるエンジン支持部材とを介して車体フレームに支持せしめる建設機械のエンジン支持方法において、前記エンジン支持部材を、縦フレームに上下方向の位置調整がなされた状態で固定される支持板と、エンジンマウント取付孔が形成された天板および該天板の一側縁から垂下される垂下板を備えたL字形状をし、エンジンマウント取付孔の前後左右方向の位置調整がなされた状態で前記支持板および縦フレームに固定されるマウント取付ブラケットとを用いて構成するとともに、該マウント取付ブラケットを支持板および縦フレームに固定するにあたり、天板を支持板の上端面に水平に載せた状態でエンジンマウント取付孔の前後左右方向の位置調整を行い、該位置調整されたエンジンマウント取付孔を軸心として天板を水平方向に回転させて垂下板を縦フレームに当接させ、該当接した位置で垂下板を縦フレームに固定するとともに天板を支持板の上端面に固定することを特徴とする建設機械におけるエンジン支持方法である。
請求項2の発明は、車体フレームに搭載されるエンジンを、防振機能を有したエンジンマウントと、車体フレームを構成する縦フレームに固定され、前記エンジンマウントが取付けられるエンジン支持部材とを介して車体フレームに支持せしめる建設機械のエンジン支持構造において、前記エンジン支持部材を、縦フレームに上下方向の位置調整がなされた状態で固定される支持板と、エンジンマウント取付孔が形成された天板および該天板の一側縁から垂下される垂下板を備えたL字形状をし、エンジンマウント取付孔の前後左右方向の位置調整がなされた状態で前記支持板および縦フレームに固定されるマウント取付ブラケットとを用いて構成するとともに、該マウント取付ブラケットは、天板を支持板の上端面に水平に載せた状態でエンジンマウント取付孔の前後左右方向の位置調整がなされ、該位置調整されたエンジンマウント取付孔を軸心として天板を水平方向に回転させて垂下板が縦フレームに当接した位置で、垂下板が縦フレームに固定されるとともに天板が支持板の上端面に固定されるものであることを特徴とする建設機械におけるエンジン支持構造である。
請求項3の発明は、請求項2において、建設機械は、下部走行体の上方に旋回自在に支持される上部旋回体を備え、該上部旋回体の車体フレームを構成する旋回フレームは、左右方向中央部に前後方向に延びる左右一対のセンター縦フレームを備えて構成されるとともに、エンジンは、前記センター縦フレームの左右外方側に配設されることを特徴とする建設機械におけるエンジン支持構造である。
請求項4の発明は、請求項3において、旋回フレームは、左右外縁部に前後方向に延びる左右のサイド縦フレームを備えるとともに、エンジン支持部材の支持板は、上下方向の位置調整がなされた状態でセンター縦フレームとサイド縦フレームとの間に支架固定される一方、マウント取付ブラケットは、エンジンのセンター縦フレーム側部分を支持するセンター側マウント取付ブラケットとエンジンのサイド縦フレーム側部分を支持するサイド側マウント取付ブラケットとが設けられ、センター側マウント取付ブラケットは、前記支持板およびセンター縦フレームに固定され、サイド側マウント取付ブラケットは、前記支持板およびサイド縦フレームに固定されることを特徴とする建設機械におけるエンジン支持構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1、2の発明とすることにより、エンジンマウント取付孔が形成されたマウント取付ブラケットの位置調整作業および固定作業を容易且つ効率よく行うことができる。
請求項3の発明とすることにより、エンジンがセンター縦フレームの左右外方側に配設されている建設機械において、旋回フレームの左右外縁部にマウント取付ブラケットが設けられていても、該マウント取付ブラケットの位置調整作業および固定作業を容易且つ効率よく行うことができる。
請求項4の発明とすることにより、支持板は、センター縦フレームとサイド縦フレームとの間に支架固定された強固な構造となり、エンジンを支持する部材としての強度を確保できるとともに、一つの支持板を用いて、該支持板に固定されるセンター側マウント取付ブラケットとサイド側マウント取付ブラケットとの二つのマウント取付ブラケットの上下位置調整および固定を行えることになって、作業効率の更なる向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】油圧ショベルの側面図である。
図2】旋回フレームの平面図である。
図3】エンジン支持部材を示す平面図である。
図4】(A)はエンジン支持部材の取付けを示す図、(B)は支持板とマウント取付ブラケットの天板との溶接部を示す図である。
図5】エンジン支持部材を示す斜視図である。
図6】エンジンが取付けられたエンジン支持部材を示す平面図である。
図7図6のA−A矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1はショベル系建設機械の一例である油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2の上方に旋回ベアリング3を介して上部旋回体4が旋回自在に支持されている。該上部旋回体4には、運転室5やエンジン6等の各種機器装置が搭載されるとともに、上部旋回体4の前部には掘削等の各種作業を行う作業装置7が装着され、また、上部旋回体4の後部には作業時における機体バランスをとるためのカウンタウエイト8が装着されている。
【0009】
9は前記上部旋回体4の車体フレームを構成する旋回フレームであって、該旋回フレーム9は、左右方向中央部を形成するセンター部9Sと、該センター部9Sの左右外側に設けられる左右のサイドデッキ部9L、9Rとから構成されている。前記センター部9Sは、旋回ベアリング3が取付けられる底面板10、該底面板10に立設される左右一対のセンター縦フレーム11L、11R等を備えて構成されているが、該左右一対のセンター縦フレーム11L、11Rは、前後方向に延び、その前部には作業装置7の基端部が取付けられる作業装置取付座11La、11Raが設けられている。また、前記左右のサイドデッキ部9L、9Rは、旋回フレーム9の左右外縁部に前記左右のセンター縦フレーム11L、11Rと平行状に配される左右のサイド縦フレーム12L、12R、センター縦フレーム11L、11Rとサイド縦フレーム12L、12Rとを連結する複数の梁部材13等を備えて構成されている。そして旋回フレーム9は、これらセンター部9Sおよび左右のサイドデッキ部9L、9Rを構成する各部材を溶接により一体的に組付けて形成されている。尚、前記旋回フレーム9は本発明の車体フレームに構成し、左右のセンター縦フレーム11L、11Rおよび左右のサイド縦フレーム12L、12Rは、本発明の縦フレームに相当する。
【0010】
前記旋回フレーム9には、運転室5やエンジン6等の各種機器装置が搭載されるが、本実施の形態では、センター部9Sには、作業装置取付座11La、11Raの後方に図示しない旋回駆動装置やコントロールバルブが搭載され、その後方には図示しない作動油タンクが搭載され、さらにその後方にはカウンタウエイト8が装着される。また、左サイドデッキ部9Lには、前側に運転室5が搭載され、その後方には図示しないバッテリや燃料タンク、還元剤タンク(尿素タンク)等が搭載される。さらに、右サイドデッキ部9Rには、前側に図示しないラジエータやオイルクーラー等の冷却装置が搭載され、その後方にはエンジン6が搭載される構成になっている。
【0011】
前記エンジン6は、クランク軸の軸方向が旋回フレーム9の前後方向を向く所謂縦置き状態で配されるが、該エンジン6の下部には、エンジンケースに固定される第一〜第四支持ステー16A〜16Dを介して、エンジン6を前側左右二箇所、後側左右二箇所の計四箇所で防振支持するための防振機能を有した第一〜第四エンジンマウント17A〜17Dが取付けられている。これら第一〜第四エンジンマウント17A〜17Dは、該第一〜第四エンジンマウント17A〜17Dを構成する図示しない上下一対の防振体により第一〜第四支持ステー16A〜16Dを防振挟持するとともに、後述する第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dに形成の第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daに挿入される取付ボルト17Aa〜17Daによって、第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dに取付けられるように構成されている。
【0012】
さらに、19X、19Yは前記第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dを下側から支持する前後の支持板であって、これら前後の支持板19X、19Yは、水平状の上端面19Xa、19Yaを有した縦板状のものであり、その左右内方側縁部(本実施の形態では左側縁部)が右センター縦フレーム11Rに固定され、左右外方側縁部(本実施の形態では右側縁部)が右サイド縦フレーム12Rに固定されることにより、右センター縦フレーム11Rと右サイド縦フレーム12Rとの間に支架固定されるようになっている。尚、前記第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dおよび前後の支持板19X、19Yは、本発明のエンジン支持部材を構成する。
【0013】
前記支持板19X、19Yを固定する手順としては、右センター縦フレーム11Rを基準にして上下方向の位置調整(上端面19Xa、19Yaの水平度の調整を含む)を正確にした状態で、支持板19X、19Yの右側縁部を右サイド縦フレーム12Rに押し当てて溶接により固定し、さらに、支持板19X、19Yの左側縁部を右センター縦フレーム11Rに溶接により固定する。この場合、図4(A)に示す如く、支持板19X、19Yの左側縁部の前後に、支持板19X、19Yの前後面および右センター縦フレーム11Rの右面に当接する細長い角柱(四角柱あるいは三角柱)の当て部材20を沿わせ、該当て部材20と右センター縦フレーム11Rおよび当て部材20と支持板19X、19Yとを溶接することにより、支持板19X、19Yの左側縁部と右センター縦フレーム11Rとの間に隙間があっても確実に溶着できる。
【0014】
一方、前記第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dは、四角形状の水平状の天板18Ab〜18Dbと、該天板18Ab〜18Dbの一側縁から垂下される垂下板18Ac〜18Dcとを備えたL字形状のものであって、天板18Ab〜18Dbには、前記第一〜第四エンジンマウント17A〜17Dを取付けるための第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daがそれぞれ形成されている。そして、第一マウント取付ブラケット18Aは、第一エンジンマウント取付孔18Aaの前後左右方向の位置調整がなされた状態で、天板18Abが前側支持板19Xに、垂下板18Acが右センター縦フレーム11Rにそれぞれ固定され、また、第二マウント取付ブラケット18Bは、第二エンジンマウント取付孔18Baの前後左右方向の位置調整がなされた状態で、天板18Bbが前側支持板19Xに、垂下板18Bcが右サイド縦フレーム12Rにそれぞれ固定され、また、第三マウント取付ブラケット18Cは、第三エンジンマウント取付孔18Caの前後左右方向の位置調整がなされた状態で、天板18Cbが後側支持板19Yに垂下板18Ccが右センター縦フレーム11Rにそれぞれ固定され、さらに、第四マウント取付ブラケット18Dは、第四エンジンマウント取付孔18Daの前後左右方向の位置調整がなされた状態で、天板18Dbが後側支持板19Yに垂下板18Dcが右サイド縦フレーム12Rにそれぞれ固定されるようになっている。尚、本実施の形態において、第一、第三マウント取付ブラケット18A、18Cは、本発明のエンジンのセンター縦フレーム側部分を支持するセンター側マウント取付ブラケットに相当し、第二、第四マウント取付ブラケット18B、18Dは、本発明のエンジンのサイド縦フレーム側部分を支持するサイド側マウント取付ブラケットに相当する。
【0015】
次いで、前記第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dを固定する手順について説明するが、前記第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dは同様の手順で固定されるため、第一マウント取付ブラケット18Aを例にとって説明する。
まず、第一マウント取付ブラケット18Aの天板18Abを、垂下板18Acが前側支持板19Xの後方に位置し、且つ、天板18Abの前側縁部(垂下板18Acが垂下される一側縁と反対側の縁部)が前側支持板19Xの上端面19Xaに上側から当接する状態で、前側支持板19Xの上端面19Xaに水平に載せる。この状態で、天板18Abを前後左右方向に移動させて、右センター縦フレーム11Rを基準にして第一エンジンマウント取付孔18Aaの前後左右方向の位置調整を行い、該位置調整された第一エンジンマウント取付孔18Aa位置を治具を用いて保持する。次いで、上記位置調整された第一エンジンマウント取付孔18Aaを軸心として、天板18Abを水平方向に回転させて垂下板18Acの左側縁部を右センター縦フレーム11Rに当接させる(図4(A)参照)。そして、該当接した位置で垂下板18Acの左側縁部を右センター縦フレーム11Rに溶接により固定するとともに、該位置で天板18Abの前側縁部を前側支持板19Xの上端面19Xaに溶接により固定する(図4(B)参照)。このようにして、第一マウント取付ブラケット18Aは、上下方向の位置調整がなされた前側支持板19Xの上端面19Xaに水平に載置された状態で、第一エンジンマウント取付孔18Aaの前後左右方向の位置調整がなされ、しかる後に前側支持板19Xおよび右センター縦フレーム11Rに固定されるようになっている。
尚、第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dの垂下板18Ac〜18Dcは、センター縦フレーム11Rあるいはサイド縦フレーム12Rに固定される側の縁部(第一、第三マウント取付ブラケット18A、18Cでは左側縁部、第二、第四マウント取付ブラケット18B、18Dでは右側縁部)が、反対側の縁部よりも下方まで垂下した形状になっている。また、第一、第三マウント取付ブラケット18A、18Cの垂下板18Ac、18Ccの左側縁部の下半側は、天板18Ab、18Cbの左側縁部よりも左方に突出しており、第二マウント取付ブラケット18Bの垂下板18Bcの右側縁部の下半側は、天板18Bbの右側縁部よりも右方に突出している。そして、該突出部分が右センター縦フレーム11R、右サイド縦フレーム12Rに溶接されるようになっているが、このような第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dの垂下板18Ac〜18Dcの寸法や形状は、エンジン6の形状や、第一〜第四エンジンマウント17A〜17Dの取付け位置等に対応して適宜設定される。
【0016】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベル1は、下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体4を備え、該上部旋回体4の車体フレームを構成する旋回フレーム9は、左右方向中央部において前後方向に延びる左右一対のセンター縦フレーム11L、11Rと、左右外縁部において前後方向に延びる左右のサイド縦フレーム12L、12Rとを備えて構成されるとともに、センター縦フレーム11L、11Rの左右外方側(本実施の形態では右センター縦フレーム11Rの右側)にエンジン6が搭載されている。そして、該エンジン6は、防振機能を有した第一〜第四エンジンマウント17A〜17Dと、センター縦フレーム(本実施の形態では右センター縦フレーム)11R、サイド縦フレーム(本実施の形態では右サイド縦フレーム)12Rに固定され、上記第一〜第四エンジンマウント17A〜17Dが取付けられるエンジン支持部材(支持板19X、19Yおよび第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18D)とを介して旋回フレーム9に支持されることになるが、この場合に、エンジン支持部材は、上下方向の位置調整がなされた状態でセンター縦フレーム11R、サイド縦フレーム11Rに固定される支持板19X、19Yと、第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daが形成された天板18Ab〜18Dbおよび該天板18Ab〜18Dbの一側縁から垂下される垂下板18Ac〜18Dcを備えたL字形状をし、第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daの前後左右方向の位置調整がなされた状態で前記支持板19X、19Yおよびセンター縦フレーム11R、サイド縦フレーム12Rに固定される第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dとを用いて構成されている。そして、これら第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dを支持板19X、19Yおよびセンター縦フレーム11R、サイド縦フレーム12Rに固定するには、天板18Ab〜18Dbを支持板19X、19Yの上端面19Xa、19Yaに水平に載せた状態で、第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daの前後左右方向の位置調整を行い、該位置調整された第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daを軸心として天板18Ab、18Dbを水平方向に回転させて垂下板18Ac〜18Dcをセンター縦フレーム11R、サイド縦フレーム12Rに当接させ、該当接した位置で垂下板18Ac〜18Dcをセンター縦フレーム11R、サイド縦フレーム12Rに固定するとともに、該位置で天板18Ab〜18Dbを支持板19X、19Yの上端面19Xa、19Yaに固定することによって、第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dは第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daの上下前後左右方向の位置調整がなされた状態で固定されることになる。
【0017】
この様に本実施の形態においては、第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daが形成された第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dを、第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daの上下前後左右方向の位置調整がなされた状態でセンター縦フレーム11R、サイド縦フレーム12Rに固定するにあたり、まず、支持板19X、19Yを上下方向の位置調整がなされた状態でセンター縦フレーム11R、サイド縦フレーム12Rに固定し、該支持板19X、19Yの上端面19Xa、19Yaに、第一〜第四マウント取付ブラケット18A〜18Dの天板18Ab〜18Dbを水平に載せることで第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daの上下方向の位置調整がなされることになる。さらに、この状態で、第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daの前後左右方向の位置調整を行うことになるが、この様に、上下方向の位置調整と、前後左右方向の位置調整とを別々に順次行うことによって、上下前後左右の調整を同時に行う場合と比して位置調整作業が容易になる。しかも、第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daの位置調整がなされた後は、該第一〜第四エンジンマウント取付孔18Aa〜18Daを軸心として水平方向に回転させて垂下板18Ac〜18Dcをセンター縦フレーム11R、サイド縦フレーム12Rに当接させ、該当接した位置で垂下板18Ac〜18Acとセンター縦フレーム11R、サイド縦フレーム12Rとの固定、天板18Ab〜18Dbと支持板19X、19Yの上端面19Xa、19Yaとの固定を行うが、この固定作業は、垂下板18Ac〜18Acとセンター縦フレーム11R、サイド縦フレーム12R、天板18Ab〜18Dbと支持板19X、19Yの上端面19Xa、19Yaとがそれぞれ当接している状態で行われるから、固定作業が容易であるうえ、隙間がある場合に用いられる当て部材等が不要となり、溶接等による固定作業の作業効率が向上する。
【0018】
しかも、本実施の形態では、エンジン6がセンター縦フレーム11L、11Rの左右外方側に配されているため、マウント取付ブラケット18A〜18Dは、エンジン6のセンター縦フレーム側部分を支持するセンター側マウント取付ブラケット(本実施の形態では第一、第三マウント取付ブラケット)18A、18Cと、エンジン6のサイド縦フレーム側部分を支持するサイド側マウント取付ブラケット(本実施の形態では第二、第四マウント取付ブラケット)18B、18Dとが設けられており、センター側マウント取付ブラケット18A、18Cは、支持板19X、19Yおよびセンター縦フレーム11Rに固定され、サイド側マウント取付ブラケット18B、18Dは、支持板19X、19Yおよびサイド縦フレーム12Rに固定されることになるが、センター縦フレーム11Rに比して荷重による歪や溶接歪が大きいサイド縦フレーム12Rに固定されるサイド側マウント取付ブラケット18B、18Dであっても、センター側マウント取付ブラケット18A、18Cと同様に容易かつ効率よく位置調整作業および固定作業を行うことができる。
【0019】
さらに、前記支持板19X、19Yは、センター縦フレーム11Rとサイド縦フレーム12Rとの間に支架固定された強固な構造であって、エンジン6を支持する部材としての強度を確保できるとともに、一つの支持板19X、19Yを用いて、該支持板19X、19Yに固定されるセンター側マウント取付ブラケット18A、18Cとサイド側マウント取付ブラケット18B、18Dとの二つのマウント取付ブラケット18Aと18B、18Cと18Dの上下位置調整および固定を行えることになって、作業効率の更なる向上に貢献できる。
【0020】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、上記実施の形態では、エンジンが右センター縦フレームの右側に配設されているが、エンジンが左センター縦フレームの左側に配されている場合、さらには、エンジンが左右のセンター縦フレームの左右外方側以外の箇所に配されている場合であっても、本発明を実施できる。
また、上記実施の形態では、第一〜第四の四つのマウント取付ブラケットが設けられているが、マウント取付ブラケットの数は、エンジンの大きさ等に応じて適宜設定される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械において、車体フレームにエンジンを搭載する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0022】
6 エンジン
9 旋回フレーム
11L、11R 左右のセンター縦フレーム
12L、12R 左右のサイド縦フレーム
17A〜17D 第一〜第四エンジンマウント
18A〜18D 第一〜第四マウント取付ブラケット
18Aa〜18Da 第一〜第四エンジンマウント取付孔
18Ab〜18Db 第一〜第四マウント取付ブラケットの天板
18Ac〜18Dc 第一〜第四マウント取付ブラケットの垂下板
19X、19Y 支持板
19Xa、19Ya 支持板の上端面
図1
図2
図3
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図5
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図7