(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような仮設トイレシステムの施工計画は進んでいるものの、災害時に使用できる仮設トイレの絶対数は足りていないのが現状である。そこで、学校や公園などの限られた場所だけでなく、ホテル、店舗、団地およびマンション等の宅地内の空きスペース(建物間の隙間など)も有効利用して、仮設トイレシステムを設置したいという要望がある。
【0007】
ここで、施工の手間およびコスト等を考慮すると、排水管の埋設深さは、条例などで定められる配管規定を満たす範囲内で浅くすることが好ましい。しかしながら、特許文献1の技術は、排水管の土被りが500mm以上となる場合を対象としており、排水管の土被りを250―500mm程度の浅埋設とすることについては、考慮されていない。
【0008】
また、特許文献1の技術では、ゴム輪受口に対して縦管を接続する作業が必要となるが、この作業には、縦管を所望長さに切断する切断作業、ゴム輪接合を適切に行うための縦管端部の面取り作業、およびゴム輪受口と縦管とをゴム輪接合する接続作業が含まれるので、手間がかかる。
【0009】
さらに、宅地内の空きスペースでは、排水貯留槽を設置するスペースを確保できない場合があるため、排水貯留槽を設けずに、排水管から公共桝に直接排水する公共桝直結型の仮設トイレシステムが望ましい場合がある。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、汚水桝および仮設トイレシステムを提供することである。
【0011】
この発明の他の目的は、排水管を浅埋設とした仮設トイレシステムを構築でき、かつ施工が容易な、汚水桝およびこれを備える仮設トイレシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、仮設トイレの排水設備として使用される仮設トイレシステムに用いられる、合成樹脂製の汚水桝であって、外周面に複数のリブが形成される横管部、および横管部の頂部から上方に延びるように当該横管部と一体的に形成される立上り管部を備え、立上り管部は、所望位置で切断することによって当該立上り管部の軸方向長さを調整可能な切断可能部を有し、
切断可能部は、最下位置から最上位置までの全長に亘って同径であるプレーン管状に形成される部分であって、立上り管部のうち、プレーン管状ではない基端部の上部から先端に至るまでの全範囲を占めており、切断可能部の最下位置は、横管部の天頂位置から長くても100mmまでの高さ位置とされる、汚水桝である。
【0013】
第1の発明では、汚水桝は、団地およびマンション等の宅地内などに予め施工される仮設トイレシステムに用いられる。汚水桝は、合成樹脂製であって、外周面に複数のリブが形成される横管部と、横管部の頂部に一体的に形成される立上り管部とを備える。立上り管部には、所望位置で切断することによって立上り管部の長さを調整可能な切断可能部が形成される。この切断可能部の最下位置は、横管部の天頂位置から長くても100mmまでの高さ位置とされる。すなわち、立上り管部の突出長さは、切断することによって100mm以内に調整できるようにされる。また、汚水桝の上方には防護蓋が設けられるが、この防護蓋の高さは150mmであり、汚水桝の立上り管部がその下になるように設置される。したがって、立上り管部の切断可能部の最下位置を、横管部の天頂位置から長くても100mmまでの高さ位置とすることによって、汚水桝の横管部は、土被りが250mmである浅埋設の排水管にも接続可能となる。
【0014】
第1の発明によれば、汚水桝の立上り管部に切断可能部を設けたので、立上り管部の軸方向長さを調整する作業が容易となる。また、切断可能部の最下位置を、横管部の天頂位置から長くても100mmまでの高さ位置とするので、土被りが250mmである浅埋設の排水管にも汚水桝を適切に接続できるようになる。したがって、排水管を浅埋設とした仮設トイレシステムを容易に構築でき、仮設トイレを設置可能な場所を増やすことができる。
【0015】
第2の発明は、仮設トイレの排水設備として使用される仮設トイレシステムであって、外周面に複数のリブが形成される横管部と横管部の頂部
から上方に延びるように当該横管部と一体的に形成される立上り管部とを有し、予め定めた便器の設置位置の地中に埋設される合成樹脂製の複数の汚水桝、所定の勾配で配設され、複数の汚水桝と公共桝とを接続するリブ付排水管、および最下流の汚水桝と公共桝との間においてリブ付排水管に設けられる高さ調整桝を備え、汚水桝の立上り管部は、最下位置が横管部の天頂位置から長くても100mmまでの高さ位置とされる切断可能部を有し、汚水桝は、切断可能部を所望位置で切断することによって、立上り管部の軸方向長さを調整した状態で地中に埋設される、仮設トイレシステムである。
【0016】
第2の発明では、仮設トイレシステムは、団地およびマンション等の宅地内などに予め施工され、仮設トイレの排水設備として使用される。仮設トイレシステムは、合成樹脂製の複数の汚水桝、複数の汚水桝と公共桝とを接続するリブ付排水管、および最下流の汚水桝と公共桝との間においてリブ付排水管に設けられる高さ調整桝などを備える。汚水桝は、外周面に複数のリブが形成される横管部と、横管部の頂部に一体的に形成される立上り管部とを備える。この立上り管部は、その最下位置が横管部の天頂位置から長くても100mmまでの高さ位置とされる切断可能部を有する。すなわち、立上り管部の突出長さは、切断することによって100mm以内に調整できるようにされている。そして、汚水桝は、切断可能部を所望位置で切断することによって、立上り管部の長さを調整した状態で地中に埋設される。
【0017】
第2の発明によれば、第1の発明と同様に、汚水桝の立上り管部に切断可能部を設けたので、立上り管部の軸方向長さを調整する作業が容易となる。また、切断可能部の最下位置を、横管部の天頂位置から長くても100mmまでの高さ位置とするので、土被りが250mmである浅埋設の排水管にも汚水桝を適切に接続できるようになる。したがって、排水管を浅埋設とした仮設トイレシステムを容易に構築でき、仮設トイレを設置可能な場所を増やすことができる。
【0018】
また、最下流の汚水桝と公共桝との間において、排水管に対して高さ調整桝を設けるので、排水管を浅埋設にしても、大きなスペースを要することなく、排水管と公共桝とを適切に接続できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、汚水桝の立上り管部に切断可能部を設けたので、立上り管部の軸方向長さを調整する作業が容易となる。また、切断可能部の最下位置を、横管部の天頂位置から長くても100mmまでの高さ位置とするので、土被りが250mmである浅埋設の排水管にも汚水桝を適切に接続できるようになる。したがって、排水管を浅埋設とした仮設トイレシステムを容易に構築でき、仮設トイレを設置可能な場所を増やすことができる。
【0020】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1および
図2を参照して、この発明の一実施例である仮設トイレシステム10(以下、単に「システム10」という。)は、複数の汚水桝12、排水管14および高さ調整桝16などを備え、ホテル、店舗、団地およびマンション等の宅地内の空きスペース(建物間の隙間など)に予め施工される。そして、災害時には、所定位置に便器100および仮設小屋102が取り付けられることによって、仮設トイレの排水設備として使用される。
【0023】
詳細は後述するように、システム10は、排水貯留槽を設けることなく、排水管14から公共桝104(延いては下水本管106)に対して直接排水する公共桝直結タイプの仮設トイレシステムであって、排水管14の土被り(天頂までの埋設深さ)が250―500mm程度の浅埋設とされるものである。以下、システム10の構成について説明する。
【0024】
図1および
図2に示すように、複数の汚水桝12は、予め定めた便器100の設置位置に対応させて地中に埋設される。この実施例では、5基の汚水桝12がたとえば1500mm毎に直線状に並んで配置される。汚水桝12の具体的構成については後述する。
【0025】
排水管14は、汚水桝12同士を連結し、たとえば18mm/1000mmの所定の下り勾配で配設される。排水管14は、その外周面に複数のリブ14aが形成されたリブ付管(リブ付排水管)であって、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。リブ14aのそれぞれは、環状に形成されて、排水管14の軸方向に所定間隔で並ぶように配置される。排水管14の内径は、たとえば150mmである。また、この実施例では、排水管14の土被りは、最上流部分(給水タンク18との接続部分)で約250mmであり、最下流の汚水桝12との接続部分で約385mmであり、最下流部分(公共桝104との接続部分)で約800mmである。
【0026】
排水管14の下流側端部は、下水本管106に繋がる公共桝104に接続される。つまり、排水管14は、複数の汚水桝12と公共桝104とを接続する。また、排水管14には、最下流の汚水桝12と公共桝104との間の管路部分において、後述する高さ調整桝16が設けられる。
【0027】
一方、排水管14の上流側端部には、排水管14内に洗浄用水を送り込むための給水タンク18が設けられる。給水タンク18は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって有底円筒状に形成され、その上端開口部には、内蓋が着脱可能に装着される。給水タンク18の側壁下端部には、排水管14の上流側端部と接続される流出口18aが形成され、この流出口18aには、ゲート弁(図示せず)が設けられる。給水タンク18内に供給された水は、ゲート弁を開くことによって、流出口18aから排水管14内に洗浄用水として流される。ただし、ゲート弁は必ずしも設ける必要はなく、給水タンク18内に供給された水がそのまま、流出口18aから排水管14内に供給されるようにしてもよい。また、給水タンク18の形状等は、適宜変更可能である。
【0028】
また、汚水桝12、高さ調整桝16および給水タンク18の上端部のそれぞれを囲むように、合成樹脂製の台座50が埋設される。この台座50には、受枠52および鉄蓋54等で構成される防護蓋が載置される。すなわち、台座50には、略円筒状の鉄製の受枠52が載置され、この受枠52の上端開口部には、鉄蓋54が着脱可能に設けられる。鉄蓋54の上面は、地表面に臨んでおり、この鉄蓋54を取り外すことによって、汚水桝12、高さ調整桝16および給水タンク18の上端部のそれぞれが外部に露出する。受枠52および鉄蓋54を含む防護蓋の高さ(上下方向の長さ)は、たとえば150mmである。
【0029】
続いて、汚水桝12の構成について具体的に説明する。
図3および
図4に示すように、汚水桝12は、横管部20および立上り管部22を備え、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。
【0030】
汚水桝12の横管部20は、横方向に直線状に延びるように形成される。この横管部20の外周面には、周方向に延びる複数のリブ24が軸方向に所定間隔で並ぶように形成される。また、横管部20の軸方向中央部分の底部には、矩形枠状の突起である2つの脚部26が設けられる。さらに、横管部20の一方端部には、流入側の管接続部(流入口)である拡径受口28が形成され、横管部20の他端部には、流出側の管接続部(流出口)である差口30が形成される。この差口30の先端側の外周面には、ゴム輪32が装着される。また、差口30の基端側の外周面には、差口30の挿入深さの目安となる標線34が設けられる。そして、拡径受口28および差口30のそれぞれには、排水管14がゴム輪接合され、横管部20は、排水管14と共に汚水を流すための排水管路を構成する。
【0031】
汚水桝12の立上り管部22は、横管部20の軸方向中央部分の頂部から上方に延びるように、横管部20と一体的に形成される。立上り管部22の内径は、たとえば300mmである。
【0032】
このような汚水桝12のそれぞれは、鉄蓋72および受枠74を含む防護蓋の下に、つまり立上り管部22の上端が地表面からたとえば150mmの高さ位置となるように、地中に埋設される。一方で、横管部20の埋設深さは、横管部20に接続される排水管14が所定の下り勾配で配設されるため、下流側になるほど深くなる。すなわち、汚水桝12の高さ寸法は、配置位置(横管部20の埋設深さ)によって異なる。
【0033】
この点については、従来の仮設トイレシステムに用いられる汚水桝では、汚水桝の頂部にゴム輪受口を形成し、このゴム輪受口に対して長さ調整した縦管をゴム輪接合することによって、立上り管部分の軸方向長さを調整することで対応していた。しかしながら、汚水桝のゴム輪受口に対して縦管を接続する作業には、縦管を所望長さに切断する切断作業、ゴム輪接合を適切に行うための縦管端部の面取り作業、およびゴム輪受口と縦管とをゴム輪接合する接続作業が含まれるので、手間がかかる。また、従来の汚水桝では、ゴム輪受口を設けてゴム輪接合する分だけ、どうしても立て管部分の軸方向長さが長くなってしまう。このため、横管部(排水管との接続部)の埋設深さを浅くすることができず、土被りが250―500mm程度の浅埋設の排水管に対しては、接続不可となっていた。
【0034】
そこで、この実施例では、所定長さ(想定される最大長さ)の立上り管部22を横管部20に対して一体的に設け、この立上り管部22に対して、所望位置で切断することによって立上り管部22の長さを調整可能な切断可能部22aを形成するようにしている。これによって、汚水桝12の高さ寸法(立上り管部22の軸方向長さ)を調整する際には、切断可能部22aを所望位置で切断するだけでよくなるので、この高さ寸法の調整作業が容易となる。
【0035】
また、切断可能部22aの最下位置22bは、横管部20の天頂位置20aから長くても100mmまでの高さ位置とされる。すなわち、切断可能部22aの最下位置22bと横管部20の天頂位置20aとの高低差hは、100mm以内の大きさとされ、立上り管部22の突出長さ(横管部20の天頂位置20aから立上り管部22の上端までの長さ)は、100mm以内に調整できるようにされる。ここで、防護蓋の高さは150mmであり、汚水桝12の立上り管部22がその下になるように設置される。したがって、立上り管部22の切断可能部22aの最下位置22bを、横管部20の天頂位置20aから長くても100mmまでの高さ位置とすることによって、土被りが250mmである浅埋設の排水管14にも汚水桝12を接続可能となる。
【0036】
ここで、切断可能部22aとは、立上り管部22のうち、プレーン管状(直管状)に形成される切断容易な部分であって、切断しても汚水桝12の機能を阻害しない部分を言う。
【0037】
具体的には、この実施例の汚水桝12を製造する際には、横管部20と短円筒状の立上り管部22の基端部とが射出成形によって一体成形される。そして、この基端部に対して、一方端に接着受口が形成された片受直管を接着接合することによって、横管部20と立上り管部22とが一体化される。立上り管部22の突出長さは、たとえば375mmである。また、この実施例では、接着接合部分を除くプレーン管状の部分が切断可能部22aであり、切断可能部22aの最下位置22bと横管部20の天頂位置20aとの高低差hは、85mmである。
【0038】
なお、図示は省略するが、立上り管部22には、作業者が切断可能部22aを容易に識別できるように、切断可能部22aの範囲または最下位置22bを示す目印を設けておくこともできる。
【0039】
上述のような汚水桝12は、
図1および
図5に示すように、排水管14および横管部20の埋設深さに応じて、切断可能部22aを所望位置で切断することによって、立上り管部22の軸方向長さを調整した状態で地中に埋設される。また、この切断後の立上り管部22の上端開口部には、合成樹脂製の内蓋56が装着される。
【0040】
また、上述のように、横管部20の拡径受口28および差口30のそれぞれには、排水管14がゴム輪接合される。この際、排水管14および汚水桝12の横管部20の外周面に対してリブ14a,24が形成されており、排水管14と横管部20とによって構成される排水管路が高強度化されていることから、この排水管路を砕石(図示せず)によって埋め戻すことができる。砕石で埋め戻すことによって、地震時における周辺地盤の液状化を抑制することができる。
【0041】
続いて、高さ調整桝16の構成について説明する。
図1および
図6に示すように、高さ調整桝16は、浅埋設とした排水管14と公共桝104とを適切に接続できるように、排水管14に段差部を形成して高さ調整する(埋設深さを調整する)ための桝であり、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。また、この高さ調整桝16は、点検用の桝としても利用される。
【0042】
具体的には、高さ調整桝16は、有底円筒状に形成される桝本体60を備える。この桝本体60の内径は、たとえば300mmである。桝本体60の上端開口部には、内蓋56が着脱可能に装着される。また、桝本体60の下流側の側壁下端部には、排水管14と接続される流出口62が設けられ、桝本体60の上流側の側壁には、排水管14と接続される流入口64が設けられる。この流入口64は、くら型の継手によって構成され、桝本体60に対する設置高さが変更可能とされる。桝本体60に流入口64を設ける際には、所望の高さ位置において桝本体60の側壁が穿孔され、その穿孔部分に流入口64が接着接合される。
【0043】
このような高さ調整桝16を、最下流の汚水桝12と公共桝104との間に設けておくことによって、排水管14を浅埋設にしても、大きなスペースを要することなく、排水管14と公共桝104とを適切に接続できる。すなわち、排水管14の高さ調整は、2つの自在継手などを用いて、排水管14に対して所定勾配(18mm/1000mm)よりも勾配の大きい傾斜部を設けることによっても可能であるが、これにはある程度の距離が必要であるため、大きなスペースを要する。これに対して、高さ調整桝16を用いることにより、省スペース化を図ることができる。
【0044】
以上のようなシステム10を、災害が起こる前に予め避難場所の地中に施工しておくことにより、災害が発生した際などに、仮設トイレを早急にしかも簡単に設置することが可能になる。
【0045】
システム10を仮設トイレの排水設備として使用する際には、先ず、便器100および仮設小屋102などの備品を、保管庫(図示せず)からシステム10近傍の地上に搬出する。次に、各汚水桝12の上方に設けられた鉄蓋54と、立上り管部22に装着された内蓋56とを取り外し、各汚水桝12の上方に便器100を据え付ける。また、各便器100を囲むように仮設小屋102を設置する。これによって、仮設トイレが使用可能となる。
【0046】
また、給水タンク18内には、給水ポンプ(図示せず)等を用いて洗浄用水を供給しておく。給水タンク18内に洗浄用水を供給する給水源としては、雨水や水道水などを予め貯水しておいた貯水槽、または井戸などを利用するとよい。たとえば、本願出願人等によって製造販売されている各種の雨水貯留槽(参照;http://www.kubota-ci.co.jp/products/sewage/rain.html)を排水管14の配管経路に隣接させて設置しておき、雨水貯留槽内に溜まった雨水を給水タンク18内に供給するとよい。
【0047】
そして、仮設トイレが使用されて、各便器100から汚水桝12内に排出された汚物が溜まってきたときには、給水タンク18のゲート弁を開いて、給水タンク18の流出口18aから排水管14内に所定量の洗浄用水を流入させる。なお、給水タンク18のゲート弁を開くタイミングや給水タンク18から送り込む洗浄用水の量は、各汚水桝12内に溜められた汚物を比較的少ない洗浄用水で掃流させることができるように適宜調整する。
【0048】
給水タンク18から排水管14に供給された洗浄用水は、排水管14および汚水桝12の横管部20内を所定の速度で流下し、各汚水桝12内に溜められた汚物を洗い流しつつ、公共桝104に導かれて、公共桝104から下水本管106に排出される。これによって、仮設トイレを衛生的に使用できる。
【0049】
以上のように、この実施例によれば、汚水桝12の立上り管部22に切断可能部22aを設けたので、立上り管部22の軸方向長さを調整する作業が容易となる。また、切断可能部22aの最下位置22bを、横管部20の天頂位置20aから長くても100mmまでの高さ位置とするので、土被りが250mmである浅埋設の排水管14にも汚水桝12を適切に接続できるようになる。したがって、排水管14を浅埋設とした仮設トイレシステムを容易に構築でき、仮設トイレを設置可能な場所を増やすことができる。
【0050】
また、最下流の汚水桝12と公共桝104との間において、排水管14に対して高さ調整桝16を設けたので、排水管14を浅埋設にしても、大きなスペースを要することなく、排水管14と公共桝104とを適切に接続できる。
【0051】
なお、上述の実施例では、汚水桝12の立上り管部22に内蓋56を設け、さらに汚水桝12の上方に、地表面に臨む鉄蓋54(防護蓋)を設けるようにしたが、鉄蓋54を省略することもできる。たとえば、
図7に示す実施例のように、立上り部22の上端開口部に略円板状の合成樹脂製の蓋80を装着し、この蓋80が地表面に臨むように汚水桝12を埋設することもできる。災害時において、汚水桝12の上方に便器100を据え付ける際には、この蓋80を取り外すだけでよい。同様に、高さ調整桝16および給水タンク18の一方または双方についても、鉄蓋54を省略するようにしてもよい。このように、鉄蓋54を省略することによって、排水管14をさらに浅埋設とすることができる。
【0052】
また、上述の実施例では、各汚水桝12の上方に洋式の便器100を据え付けるようにしたが、和式の便器とすることもできる。たとえば、
図8に示す実施例では、汚水桝12の立上り部22の上端部を囲むように、鉄製の台座50が埋設される。この台座50には、受枠70、鉄蓋72および内蓋74等で構成される防護蓋が載置される。具体的には、台座50には、略矩形筒状の鉄製の受枠70が載置される。この受枠70の下端部は、テーパ状に形成されており、そこに略短円筒形の下端開口部が形成される。また、受枠70の上端開口部には、ヒンジを介して鉄蓋72が回動可能に設けられ、受枠70の下端開口部には、内蓋74が着脱可能に装着される。受枠70、鉄蓋72および内蓋74を含む防護蓋の高さ(上下方向の長さ)は、たとえば150mmである。なお、汚水桝12の立上り部22の上端開口部には、蓋は装着されない。
【0053】
図8に示す実施例のシステム10を仮設トイレの排水設備として使用する際には、各鉄蓋72を囲むように仮設小屋102を設置する。また、鉄蓋72を立てるようにして受枠70の上端開口部を開くと共に、内蓋74を取り外す。これによって、仮設トイレが使用可能となる。すなわち、
図8に示す実施例では、受枠70自体が和式便器として利用され、鉄蓋72が金隠しとして利用される。
【0054】
なお、
図8に示す実施例では、受枠70をそのまま和式便器として利用するだけでなく、受枠70の上方に
図1に示すような便器100を据え付けることによって、洋式便器とすることもできる。また、全てを洋式または和式にする必要はなく、たとえば、洋式と和式とを半数ずつ設置してもよい。
【0055】
さらに、上述の実施例では、桝本体60の側壁下端部に流出口62を設けた高さ調整桝16を用いたが、高さ調整桝16の構成は適宜変更可能である。たとえば、高さ調整桝16は、その底壁に流出口が設けられたドロップ桝であってもよい。高さ調整桝16をドロップ桝とすることは、排水管14と公共桝104の接続部との落差(高低差)が大きい場合、たとえば600mm以上の落差となる場合に有効である。また、高さ調整桝16の流入口64は、必ずしも桝本体60に対する設置高さが変更可能とされる必要はない。
【0056】
さらにまた、上述の実施例では、接着接合を用いて汚水桝12の横管部20と立上り管部22とを一体化したが、汚水桝12の製造方法および具体的構成は適宜変更可能である。
【0057】
たとえば、
図9および
図10に示すように、射出成形を用いて汚水桝12全体を一体成形することもできる。
図9に示す実施例の汚水桝12では、切断可能部22aの最下位置22bと横管部20の天頂位置20aとの高低差hは、20mmである。このように、射出成形を用いて汚水桝12全体を一体成形することによって、切断可能部22aの最下位置22bをより低く設定できるようになるので、排水管14をさらに浅埋設とすることができる。
【0058】
また、汚水桝12の横管部20は、曲管状に形成することもできるし、90°や120°等の角度で屈曲する屈曲管状に形成することもできる。また、汚水桝12の横管部20は、複数の流入口(拡径受口28)が設けられる合流管状に形成することもできる。
【0059】
さらに、上述の実施例では、5つの汚水桝12を直線状に等間隔に並べて配置しているが、これは単なる例示であり、汚水桝12の個数および配置態様などは、避難区域の広さ等に応じて適宜変更され得る。たとえば、汚水桝12を曲線状に並べることもできる。また、汚水桝12をL字状、V字状またはY字状などに並べることもできる。
【0060】
また、上述の実施例では、マンション等の宅地内の空きスペースにシステム10を施工するようにしたが、システム10は、学校や公園などの他の場所にも施工可能である。
【0061】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。