(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654829
(24)【登録日】2020年2月4日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】食器
(51)【国際特許分類】
A47G 21/00 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
A47G21/00 T
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-164302(P2015-164302)
(22)【出願日】2015年8月22日
(65)【公開番号】特開2017-38892(P2017-38892A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年4月17日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成27年7月3日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www.jdpa.or.jp/公知意匠検索 http://113.36.159.210/(ユーザ登録を要する) http://113.36.159.210/search/searchexec.asp ▲3▼公開者 仲吉商事株式会社 ▲4▼販売した物の内容 仲吉商事株式会社が、一般社団法人日本デザイン保護協会(東京都港区虎ノ門1丁目19−5虎ノ門1丁目森ビル8F)のデザイン保護のために登録し、同協会のウェブサイト(公知意匠)に屋田静子が発明した食器が掲載された。当該食器は、木材を切削加工して製作されたものである。
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513125304
【氏名又は名称】仲吉商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 恵三
(72)【発明者】
【氏名】屋田 静子
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3023052(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3143055(JP,U)
【文献】
国際公開第2013/121575(WO,A1)
【文献】
特開2001−286516(JP,A)
【文献】
特開2006−006587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材から削り出しにより構成されると共に、一方向に長く且つその下側に下側直線部を有し、その上側に湾曲形状をなす上側湾曲部を有し、前記下側直線部の一端側に下側凹部を有する本体把持部と、
前記本体把持部の前記一端側に設けられた連結部に対し、当該本体把持部の長手方向の軸線に対して30度以上60度以下の角度で挿し込み固定された作用部と、からなり、前記上側湾曲部は、手のひらと各指の付け根部分から全体的に形成されるアーチ状に沿った湾曲形状であることを特徴とする食器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然感を有すると共に幼児から小学生等を正しい使用法に導く食器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に開示されているような手持ち器具の把持構造が知られている。この手持ち器具は、把持本体部とスプーンを設けた作用部とが連結部により連結されており、この連結部は、球状体と球状凹部との組み合わせ構造により自由に角度を変更し、内部の締結構造により所望の角度で固定できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−6587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の手持ち器具の把持構造では、所望方向にスプーンを向けて固定させることができるが、全体として複雑な構造であり、本質的に金属や樹脂により製作する必要があるため、自然感に欠けるという問題点がある。また、把持本体部は、単なる円柱形状であるため、幼児や手の不自由な方がスプーンを正確に握り難いという問題点がある。この発明は、係る問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る食器は、木材から削り出しにより構成されると共に、一方向に長く且つその下側に下側直線部を有し、その上側に湾曲形状をなす上側湾曲部を有し、前記下側直線部の一端側に下側凹部を有する本体把持部と、前記本体把持部の前記一端側に設けられた連結部に対し、当該本体把持部の長手方向の軸線に対して30度以上60度以下の角度で挿し込み固定された作用部とからなる。
【0006】
前記上側湾曲部は、力の入りやすい人差し指の部分を窪ませた窪み部を有するようにしても良い。また、前記上側湾曲部は、手のひらと各指の付け根部分から全体的に形成されるアーチ状に沿った湾曲形状とするのが好ましい。更に、前記本体把持部は、断面が矩形とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係るスプーンを示す平面図である。
【
図2】
図1に示したスプーンを構成する把持部を示す説明図である。
【
図3】
図1に示したスプーンの掬い部を示す説明図である。
【
図4】
図1に示したスプーンの使用状態を示す説明図である。
【
図5】
図1に示したスプーンの備えた機能を示す説明図である。
【
図6】
図1に示したスプーンの備えた機能を示す説明図である。
【
図7】
図1に示したスプーンの実施例の寸法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の実施の形態に係るスプーンを示す平面図であり、(a)は平面図、(b)は上面図、(c)は底面図、(d)は背面図、(e)は左側面図、(f)は右側面図である。
図2は、
図1に示したスプーンを構成する把持部を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は上面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は左側面図、(f)は背面図である。
図3は、
図1に示したスプーンの掬い部を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は上面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は左側面図、(f)は背面図である。このスプーン100は、木材を削り出した構造である。このスプーン100は、ユーザが握る本体把持部1と、スプーン100の本質的な掬いという作用を行う作用部である掬い部2とから構成される。
【0009】
本体把持部1は、竹、桜、欅、樫、ナラ、檜、栗、柿、杉等の木材を削り出し一体構成により製作する。このとき、木目が本体把持部1の長手方向に出るように製作する。また、本体把持部1は、前記木材を積層し、所定の接着剤により圧着すると共に、この圧着した材料を削り出すことで製作しても良い。その場合、木目が互い違いになるように順に積層するのが好ましい。また、上下面は本体把持部1の長手方向に木目が出るように積層される。木目の方向を互い違いにして積層圧着することで十分な強度と木材の質感を表現できると共に、機械加工の際の材質の方向依存性を低く抑えることができる。
【0010】
本体把持部1は、断面が略矩形となる。この本体把持部1は、一方向に長い形状であって平面図において下側で略直線状(下側面で平坦面)となり手のひらで把持することになる下側直線部10と、平面図において上側で緩やかな湾曲(上側面で湾曲面)を有し且つ手の指の付け根付近で把持することになる上側湾曲部11と、平面図において下側の一端部に形成された凹部であって親指を押し付ける下側凹部12と、 前記掬い部2の端部21を挿し込んで固定する前記一端部に設けた連結部13とからなる。
【0011】
下側直線部10は、角が削られており且つ断面は略矩形である。断面が矩形であることが、手の握りにおいて半強制的に所定の握り方になるように導く。具体的には、親指を前記下側凹部12に押し付けるように握った場合、側面部14に手のひらが、反対側面15に指が位置してしっかりと握られるものである。
【0012】
上側湾曲部11は、
図4(b)に示すように、手のひらと各指の付け根部分で全体としてアーチ状(図中符号Aで示す)が形成することから、このアーチ状の形状ないし曲率に沿った湾曲により形成されている。上側湾曲部11の幅は一般的な幼児から小学生の手の寸法に従って決定する。湾曲させることで、自然に人差し指から小指までの位置が矯正されて、正しい位置で把持できるようになる。換言すれば、この上側湾曲部11は平均的な1歳からの幼児から小学生までが、手Hを握ったときに内側に生じる手のひらと付け根部分とのアーチ形状と略同じ形状を備えたものである。
【0013】
別の観点から、上側湾曲部11は、力の入りやすい人差し指の部分を窪ませた形状をしている(窪み部16)。これにより、当該上側湾曲部11の形状と後述する下側凹部12とを、力の入りやすい親指および人差し指でしっかりと握ることで、滑り難いものにできる。
【0014】
上側湾曲部11は、同一半径を持ったものでなくてもよく、全体として湾曲したものであれば、曲率が変化するものであっても良い。更に、各指が嵌るような波形としても良い(図示省略)。
【0015】
下側凹部12は、下側直線部11の一端側に半円筒面として形成され、その凹部曲率は平均的な1歳からの幼児から小学生の親指の腹がフィットするような寸法とする。この位置に下側凹部12を形成することで本体把持部1を把持し、親指をこの下側凹部12にフィットさせたときに、後述の掬い部2が手に対して正しい位置になり、また自然と本体把持部1の握り方が形成されるようになる。親指を下側凹部12にフィットさせると手のひらの下側部分が本体把持部1の側面部14に当接し、手のひらの中央から指の付け根部分付近が側面部14に当接し、指が上側湾曲部11に当接し、全体として本体把持部1を握るよう自然となる。
【0016】
このように、下側凹部12は、全体の握りの角度(本体把持部1の軸方向に対する周方向の角度)を決定する機能を有する。換言すれば、テニスラケットのグリップの握り角度でフェース面の角度を決定するように、下側凹部12が掬い部2の角度を決定付ける。
【0017】
前記連結部13は、掬い部2の端部21を挿し込んで固定する構造であり、具体的には、一端部の側面部14に四角の穴22を設け、この穴22に掬い部2の端部21を圧入接着する。穴の深さは、約8mmである。この穴22は、専用のドリル刃を用いた機械加工により形成する。連結部13による掬い部2の取付角度は、
図5に示すように、本体把持部1の長手方向の中心軸L1に対し45度とする。当該取付角度は、30度以上60度以下が許容できる。これにより、
図4に示すように、幼児や小学生が本体把持部1を手Hにし、スプーン100を口Mに近づけたとき、掬い部2が口Mに対して略まっすぐに入るようになる。より好ましくは、前記連結部13による掬い部2の取付角度は、本体把持部1の長手方向の中心軸L1に対し、35度以上55度以下とする。このようにすれば、更に、幼児や小学生が本体把持部1を自然に持ったとき、よりまっすぐに掬い部2が口Mに対して入るようになる。
【0018】
連結部13は、上側に円弧状に膨らむ円弧部18が形成される。別の観点では、この円弧部18は、上側湾曲部11に隣接して突起状に膨らむものである。この連結部13の円弧部18を握ると違和感があるので、この円弧部18を避けて且つ親指を下側凹部12にフィットさせて把持することになり、その場合、円弧部18が手Hの左側から出るようになる。即ち、円弧部18は、手Hを正しい位置で握らせるように作用する。
【0019】
次に、掬い部2は、先端がスプーン部22であり、後端が差込部21となる。掬い部2は、上記木材を積層して所定の接着剤により圧着した構造である。掬い部2の長手方向の上下面に層の境目が出るようにする。換言すれば、掬い部2の厚さ方向に積層面が形成される。厚さ方向の直交方向(平面方向)に積層面を形成するように木材を積層すると、そり等が生じて変形する可能性があるため、厚さ方向に積層面を形成するように積層することで(互いにそり方向が逆になるように順次積層する)、全体のそりが抑制されて変形を抑えることができると共に、機械加工の際の材質の方向依存性を低く抑えることができる。
【0020】
掬い部2のスプーン部22の寸法は、平均的な1歳からの幼児及び小学生の口に合わせたものとする。なお、一般的なスプーン部22は卵形状であるが、これに限定されるものではない。また、作用部としては、上記掬い部2の他、フォークを採用しても良い(図示省略)。
【0021】
更に、スプーン100全体として木目が長手方向に現れて自然なイメージを形成する。また、スプーン100全体として、本体把持部1と掬い部2とを別部品として構成することで、それぞれを異なる色にしたり、異なる木目調を採用するなど、実際に持つ部分と食べる部分とを幼児や小学生が理解しやすいようにしている。また、スプーン100の先端のカーブ23は、食器に対して食べ物を掬いやすいように、緩やかな曲率を持ったものとする。
【0022】
上記木材の積層数が6層である。この積層数は、強度と加工精度を高めるために最適である。また、積層数が多いことから、全体として均一な機械的性質の素材と同等に評価でき、変形が最小限に抑えられる。
【0023】
図5及び
図6は、
図1に示したスプーンの備えた機能を示す説明図である。
図5に示すように、本体把持部1の長手方向軸線L1が、掬い部2の長手方向の延長線L2と45度の角度で交差する。本体把持部1を力点とし、掬い部2を作用点とし、掬い部2と本体把持部1との連結部13を支点とすると、力点である本体把持部1を少し回転させることで支点を中心として作用点である掬い部2の先端が大きく動く。この梃子の原理により、食べ物を掬う際に余計な力が不要になり、こまやかな動きが伝わりやすくなる。
【0024】
また、
図6に示すように、手の向きの延長線L3に対して本体把持部1の長手方向軸線L1が略直交し、更に掬い部2の長手方向の延長線L2と45度の角度で交差する。この角度は、手により本体把持部1を把持して、自然に手を口元に近づけたときに、掬い部2がちょうど口に対してまっすぐに入る角度である。また、手首のひねる動作が上手に行えない時期に、食べ物を掬う、口に運ぶ動作を肘と肩の動きだけで自然に行えるようになる。
【0025】
以上、この発明に係るスプーン100によれば、スプーンの練習が始まる1歳半からの幼児や手の動きが不自由な方の使用に好適である。また、全体が木材で製作されているので、自然感が得られると共に安全性が高まる。
【0026】
図7は、このスプーン100の実施例の寸法を示す説明図である。同図に示す寸法によりスプーン100を製作することで上記作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
100 スプーン
1 本体把持部
10 下側直線部
11 上側湾曲部
12 下側凹部
13 連結部
2 掬い部