特許第6654847号(P6654847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654847
(24)【登録日】2020年2月4日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】フタルスリンの殺虫効力増強剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 53/04 20060101AFI20200217BHJP
   A01N 53/06 20060101ALI20200217BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20200217BHJP
   A01N 25/06 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   A01N53/04 510
   A01N53/06 110
   A01P7/04
   A01N25/06
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-199479(P2015-199479)
(22)【出願日】2015年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-71571(P2017-71571A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 安希
(72)【発明者】
【氏名】阿部 練
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−144151(JP,A)
【文献】 特開2009−173608(JP,A)
【文献】 特開2004−002363(JP,A)
【文献】 特開2011−126875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 53/04
A01N 25/06
A01N 53/06
A01P 7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタルスリンとモンフルオロトリンとの含有割合が重量比で100:1〜3:1であることを特徴とする殺虫剤組成物。
【請求項2】
請求項に記載の殺虫剤組成物を含有する噴霧用製剤。
【請求項3】
請求項に記載の殺虫剤組成物を、飛翔害虫または匍匐害虫やこれらの生息場所に適用することを特徴とする飛翔害虫または匍匐害虫の駆除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタルスリンの殺虫効力増強剤、フタルスリンの殺虫効力を増強する方法、フタルスリンの殺虫効力増強剤を含有する殺虫剤組成物及び該殺虫剤組成物を使用する害虫の駆除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール殺虫剤は、殺虫剤の適用手段が多く存在する中、(ア)衛生害虫などに直接的に適用できるために適用範囲が広い、(イ)通常油性溶剤を使用しているために油溶性であって殺虫剤が早く作用して速効性が高い、(ウ)噴射剤等が早く蒸発するため吹き付けた場所を汚さない、(エ)エアゾール缶から噴射させればよいため取扱いが非常に簡単であるなどの利点が多いために、極めて広く使用されている。
通常市販されているエアゾール殺虫剤は、ノックダウン効果の高い薬剤(以下、「KD剤」ということがある。)と、致死活性の高い薬剤(以下、「Kill剤」ということがある。)を組合せて構成されている(特許文献1〜4等)。2種類の薬剤を混合することにより、害虫に処理した際には、まずは「KD剤」の効果で害虫の動きを止め、「Kill剤」の効果でそのまま死に至らしめることができる。致死活性を強めるためには、ピペロニルブトキシ(PBO)等の共力剤を利用することが知られている。
一方で、速効性を高めるためには「KD剤」の配合量を増やしても、薬剤としての活性はある程度で平衡状態となり、十分な効果は得られないという問題がある。これに対して、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)等の浸透性溶剤を併用して、薬剤の浸透性を高めるなどの検討がなされてきたが、その効果は未だ十分なものとはいい難い。さらに、速効性が特に高い殺虫原体は使用時の刺激が強い場合が多いため、配合量を増やすことは難しいという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−290752号公報
【特許文献2】特開2008−273945号公報
【特許文献3】特開平06−329510号公報
【特許文献4】特開2005−330264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエアゾール殺虫剤では、害虫の動きが速く十分な薬剤を害虫にかけられない場合に、少量の薬剤に触れた害虫が異常興奮のために急速に動き回り、室内の見えない場所に潜り込んでしまうことや、処理後しばらく害虫の苦悶が続いたり害虫が動き回る等の事態が発生し、不快感を覚える消費者が多かった。
そこで、本発明は、殺虫剤を処理した後に害虫の行動を即時に止める殺虫剤組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ノックダウン効果の高いピレスロイド系殺虫剤の1つであるフタルスリンに、同じくノックダウン効果の高いピレスロイド系殺虫剤の1つであるモンフルオロトリンを付加的に併用することにより、処理後害虫の行動を即時に止めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従来の殺虫剤において、「KD剤」と「KD剤」とを組み合わせる思想はこれまでになかったが、本発明は、2つの「KD剤」を組み合わせることにより今までにない、新たな効果が得られることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.フタルスリンとモンフルオロトリンとの含有割合が重量比で100:1〜3:1であることを特徴とする殺虫剤組成物。
2..に記載の殺虫剤組成物を含有する噴霧用製剤。
3..に記載の殺虫剤組成物を、飛翔害虫または匍匐害虫やこれらの生息場所に適用することを特徴とする飛翔害虫または匍匐害虫の駆除方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフタルスリンの殺虫効力増強剤により、フタルスリンの殺虫効力を相乗的に増強させることができるので、この殺虫効力増強剤を含有する殺虫剤組成物を害虫に処理すると、フタルスリンが持っている処理直後のノックダウン効果を増強し、害虫の生体機能をすばやく停止させる作用があるために、十分な量の殺虫剤組成物を処理することで、確実に害虫を死に至らしめることができ、消費者は動き回る害虫や苦悶する害虫に不快感を抱くことなく害虫を駆除することができる。
また、本発明の殺虫剤組成物は、フタルスリンにモンフルオロトリンを付加的に添加することにより殺虫効果が相乗的に増強されており、動き回る害虫を追いかけて不必要に多量の殺虫剤組成物を噴射することなく、少量で害虫を駆除することが可能であるために、殺虫剤組成物の使用量を少なくすることができる。また、これにより環境や、人やペット等の動物に対する安全性が高いことも特徴である。
さらに、後述するようにモンフルオロトリンは、高濃度で使用する場合は刺激を感じることがあるため、例えば、エアゾール等の噴霧用製剤とした際に、人が使用後に鼻、のど、皮膚に違和感を覚える場合があったが、本発明は、フタルスリンの殺虫効力を増強するためにモンフルオロトリンを付加的に使用しているために、殺虫剤組成物全体におけるモンフルオロトリンの含有量を低くすることができ、消費者が使用後に鼻、のど、皮膚に違和感を覚えることはなく、消費者への安全性も向上する。
特に、本発明の殺虫剤組成物を含有するエアゾール等の噴霧用製剤は、室内や車内等の密閉空間での使用においても、使用する人やペット等の動物に対する安全性が高いので好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明を試験するための試験系(イエバエ)を模式的に表すものである。
図2】本発明を試験するための試験系(クロゴキブリ)を模式的に表すものである。
図3】効力試験1の結果を示すグラフである。
図4】モンフルオロトリン単独の殺虫効果検証結果を示すグラフである。
図5】効力試験2の結果を示すグラフである。
図6】刺激性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のフタルスリンの殺虫効力増強剤、フタルスリンの殺虫効力を増強する方法、殺虫剤組成物及び害虫の駆除方法について詳細に説明する。
【0010】
本発明のフタルスリンの殺虫効力増強剤は、モンフルオロトリンからなるものである。
モンフルオロトリンは、化合物「[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル 3−(2−シアノ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート」の一般名であり、例えば特開2004−2363号公報等に記載の方法により製造することができる。
モンフルオロトリンは、シクロプロパン環上に存在する2つの不斉炭素原子及びシクロプロパン環に置換している置換基の二重結合に由来する異性体が存在するが、本発明では活性な異性体を任意の比率で含有するものを使用することができる。
本エステル化合物としては、例えば、
[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=(1R)−3−(2−シアノ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、
[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=(1R)−トランス−3−(2−シアノ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、
[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=(1R)−シス−3−(2−シアノ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、
[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=(1R)−トランス−3−((E)−2−シアノ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、
[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=(1R)−トランス−3−((Z)−2−シアノ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート
等が挙げられる。
【0011】
モンフルオロトリンは、ノックダウン効果の高いピレスロイド系殺虫剤の1つであることは知られているが、高濃度で使用した場合、鼻、のど、皮膚に刺激性のある殺虫剤原体であることはあまり知られていない。
本発明者らの検討によると、モンフルオロトリン単剤での殺虫剤組成物は、ある特定の濃度以上において高い殺虫活性を示すものの、同濃度の殺虫剤組成物の使用、特に、室内や車内等の密閉空間での使用においては、使用者が鼻、のど、皮膚に違和感を覚える刺激性があるために、実用に適するものではないことが明らかとなった。
【0012】
他方、本発明のフタルスリンは、殺虫剤指針にも記載され古くより世界中で主にハエや蚊を駆除する目的でエアゾール等の製剤の有効成分として用いられてきたピレスロイド系殺虫剤であり、テトラメスリンとも称される。
また、フタルスリンには光学活性体が存在するが、この光学活性体の中のd体(以下、d−フタルスリンということもある。)も、もちろん本発明に含まれる。本発明は、特に、一般名「d−T80−フタルスリン」(トランス/シス混合物)で称されるものが好ましい。
【0013】
本発明の殺虫剤の殺虫効力増強剤は、フタルスリンに対する効力の増強効果に応じて適宜最適な含有量を選定すればよいが、一般的に、殺虫剤組成物中、その有効成分として0.001〜1w/v%もしくは0.001〜1w/w%、好ましくは0.005〜0.5w/v%もしくは0.005〜0.5w/w%、さらに好ましくは0.01〜0.1w/v%もしくは0.01〜0.1w/w%となるように含有させることが好ましい。特に、殺虫効力増強剤の含有量が0.01w/v%もしくは0.01w/w%以上であれば、殺虫効力増強剤によるフタルスリンの殺虫効力増強効果が確実に得られるため好ましい。
一方、フタルスリンは、殺虫剤組成物中、0.001〜10w/v%もしくは0.001〜10w/w%、好ましくは0.01〜5w/v%もしくは0.01〜5w/w%となるように含有させることが好ましい。フタルスリンの含有量が前記範囲であれば、十分な殺虫効力を発揮することができ、人やペット等の動物への安全性も高い。
【0014】
また本発明の殺虫剤組成物において、本発明の殺虫効力増強剤は、重量比でフタルスリンに対して200:1〜3:1(フタルスリン:モンフルオロトリン)となるように、好ましくは100:1〜3:1、さらに好ましくは50:1〜4:1となるように含有させることが好ましい。特に、モンフルオロトリンの含有量は、刺激が弱まること、製造適性が高いこと、刺激が抑えられること、及び、殺虫効力の増強効果が高いことからフタルスリンの含有量の重量換算で3分の1以下が好ましく、より好ましくは5分の1以下、さらに好ましくは10分の1以下、特に好ましくは殺虫効力増強効果が高いことから15分の1以下、40分の1以上であれば十分な殺虫効力増強効果が期待できる。
前記範囲となるように殺虫効力増強剤であるモンフルオロトリンを含有させることで、害虫に対するフタルスリンの殺虫効力を相乗的に向上させることができ、かつ、速効性に優れ、特に処理した後に害虫の行動を即時に止めるができる。
【0015】
本発明の殺虫剤組成物は、少なくとも、フタルスリンと殺虫効力増強剤であるモンフルオロトリンとを含有するものであり、混合物をそのまま用いてもよいが、通常は下記のような製剤として使用する。その製剤としては、例えば油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、液剤、スプレー剤、エアゾール剤、炭酸ガス製剤、加熱蒸散剤(殺虫線香、電気殺虫マット、吸液芯型加熱蒸散殺虫剤等)、ピエゾ式殺虫製剤、加熱燻煙剤(自己燃焼型燻煙剤、化学反応型燻煙剤、多孔セラミック板燻煙剤等)、非加熱蒸散剤(樹脂蒸散剤、紙蒸散剤、不織布蒸散剤、編織物蒸散剤、昇華性錠剤等)、煙霧剤(フォッキング等)、直接接触剤(シート状接触剤、テープ状接触剤、ネット状接触剤等)、ULV剤及び毒餌が挙げられる。その中でも、スプレー剤やエアゾール剤等の噴霧用製剤が、本発明の殺虫剤組成物の性能を最大限に活用することができ好適である。
【0016】
製剤化の方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
(1)フタルスリンとモンフルオロトリンとを、固体担体、液体担体、ガス状担体、餌等と混合し、必要であれば界面活性剤その他の製剤用補助剤を添加・加工する方法。
(2)フタルスリンとモンフルオロトリンとを、有効成分を含有していない基材に含浸する方法。
(3)フタルスリンとモンフルオロトリン及び基材を混合した後に成形加工する方法。
これらの製剤には、フタルスリンとモンフルオロトリンを、製剤形態にもよるが、合計量にして通常0.001〜98w/v%もしくは0.001〜98w/w%含有する。
【0017】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えば粘土類(カオリン、珪藻土、ベントナイト、クレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、多孔質体等が挙げられる。
【0018】
液体担体としては、例えば芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸エチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、ヘテロ環系溶剤(スルホラン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン等)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)、及び水が挙げられる。
【0019】
ガス状担体としては、例えばブタンガス、フロンガス、(HFO、HFC等の)代替フロン、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、及び炭酸ガスが挙げられる。
【0020】
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、多価アルコールエステル類及び糖アルコール誘導体が挙げられる。
【0021】
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤及び安定剤等、具体的には例えばカゼイン、ゼラチン、多糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等)、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、及びBHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。
ジエチルトルアミドやピレスロイド系化合物などの殺虫原体を溶解助剤として使用することもできる。
【0022】
本発明の殺虫剤組成物は、スプレー剤やエアゾール剤の噴霧用製剤として使用することが好ましく、特に、エアゾール剤として使用することが好ましい。
エアゾール剤に製剤化するために使用する液体担体としては、飽和炭化水素が好ましい。飽和炭化水素としては、パラフィン系炭化水素やナフテン系炭化水素が挙げられるが、1号灯油が好ましい。その中でもパラフィン系炭化水素が好ましく、さらに、ノルマルパラフィンとイソパラフィンの中では、フタルスリンと殺虫効力増強剤であるモンフルオロトリンとの組み合わせにおいては、ノルマルパラフィンの方が速効性を達成する上で好ましい。
ノルマルパラフィンとしては、炭素数が12〜14主体のものが代表的で、例えば、中央化成株式会社製のネオチオゾール、JX日鉱日石エネルギー株式会社製のノルマルパラフィンN−12、ノルマルパラフィンN−13、ノルマルパラフィンN−14、ノルマルパラフィンMA等が挙げられる。
さらに、液体担体として次に上げる有機溶剤を併用して配合するのが好ましい。
好ましい有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ヘテロ環系溶剤、エステル系溶剤、及びアルコール系溶剤から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸イソブチル、ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、乳酸エチル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ブチルプロピレンジグリコール、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、スルホラン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、炭酸プロピレン、イソプロパノール等があげられるが、これらに限定されない。なかでも、炭素数の総数が15〜22の範囲のミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸イソブチル等の高級脂肪酸エステル、N−メチル−2−ピロリドン、イソプロパノール、炭酸プロピレンが適している
【0023】
本発明のエアゾール剤に使用される噴射剤としては、公知のものを広く使用することができ、例えば液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、代替フロン、炭酸ガス、窒素ガス等を挙げることができる。これらの中でLPG、ジメチルエーテルを用いるのが好ましい。このエアゾール殺虫剤においては、噴射剤量が殺虫剤全体の30〜95容量%、特に50〜90容量%とし、原液(フタルスリン、モンフルオロトリン以外に、前記界面活性剤、溶剤等の総量)が全体の70〜5容量%、特に50〜10容量%とすることができる。
【0024】
本発明では、さらに必要に応じて殺虫成分の殺虫効果を高めるために、所謂共力剤、防錆剤、防腐剤、香料等の第3成分を適宜添加し得る。第3成分としては、この分野で慣用されているものを使用することができ、具体的には、共力剤としてはピペロニルブトキサイド、オクタクロロジプロペニルエーテル、MGK264、サイネピリン等を、防錆剤としてはカーレンNo.955、No.906、No.954、No.958、No.970(いずれも商標:三洋化成工業株式会社)等を、防腐剤としてはサリチル酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム等をそれぞれ例示できる。
また、必要により他に殺虫剤、忌避剤、殺菌剤等を添加してもよく、例えば、ピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、フッ素系殺虫剤、昆虫成長制御剤等の殺虫剤、ジエチルトルアミド、ジメチルフタレート等の忌避剤、パラクロロメタキシレート等の殺菌剤等をそれぞれ例示できる。
【0025】
本発明のエアゾール剤を製造するに際しては、この分野で慣用されている方法を広く使用し得る。そのうち代表的な方法としては、フタルスリン及びモンフルオロトリンを溶剤に溶解し、必要に応じて特定の非イオン界面活性剤、他の界面活性剤、共力剤、香料等を添加し、加熱(30〜50℃)混合して均一な溶液を作製した後、防錆剤、防腐剤等を加え、得られる原液をエアゾール缶に入れ、噴射剤を充填して製品とする方法等を挙げることができる。このようにして得られる本発明のエアゾール殺虫剤は、長期間過酷な条件下においても安定で、均一な状態を維持することができ、所望する時にワンタッチで微粒子として空気中に噴射し得る。
【0026】
本発明の殺虫剤組成物は、飛翔害虫または匍匐害虫等の害虫に直接使用するか、飛翔害虫または匍匐害虫の生息場所に適用して使用するが、処理後に害虫の行動を即時に止める効果を得るためには、本発明の殺虫剤組成物を害虫に直接使用すること、特に、噴霧することが好ましい。
本発明の駆除対象となる飛翔害虫の例としては、チョウバエ類、ユスリカ類、イエカ類、ヤブカ類、ハマダラカ類、ハエ類、アブ類、ブユ類、ヌカカ類、ハチ類、カメムシ類、コバエ類等が、匍匐害虫の例としては、ゴキブリ類、シラミ類、ムカデ類、ヤスデ類、ダンゴムシ等が挙げられる。
本発明の殺虫剤組成物の施用量、施用濃度はいずれも飛翔害虫や匍匐害虫等の害虫の種類や被害状況等に応じて、施用時期、施用場所、施用方法を考慮して適宜定めることができる。
【0027】
本発明の殺虫剤組成物を使用する空間としては、主に屋内空間、例えば居間、食堂、トイレ、浴場、物置、倉庫、車内等で施用することができ、さらに屋外の開放空間でも使用することができる。特に、本発明の殺虫剤組成物を含有するエアゾール等の噴霧用製剤は、人やペット等の動物に対する安全性が高いので、室内や車内等の屋内空間での使用に最適である。
【実施例】
【0028】
以下、製剤例及び試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
まず、本発明の殺虫剤組成物の製剤例を示す。なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0029】
<製剤例>
エアゾール剤
原液:フタルスリン0.47w/v%、モンフルオロトリン0.03w/v%、イソプロパノール0.5w/v%、ミリスチン酸イソプロピル4.3w/v%、炭酸プロピレン0.17w/v%及び1号灯油(ネオチオゾール 三光化学工業株式会社製)適量により100mLとする。
噴射剤:LPG90mL(0.29MPa、25℃)及びジメチルエーテル10mLにより100mLとする。
この原液90mLを、エアゾール缶に入れ、缶にバルブ部を取り付け、該バルブ部分を通じて前記噴射剤360mLを充填し、エアゾール用組成物を含有するエアゾール剤(以下、「エアゾールA」と記す。)を得た。
【0030】
次に、本発明のフタルスリンの殺虫効力増強剤を含有する殺虫剤組成物が、優れた殺虫活性と速効性を有すること、及び、刺激性が低減されたものであることを試験例により示す。
【0031】
<効力試験1>
(1)試験検体
表1に示すフタルスリン、モンフルオロトリン及びフェノトリンの含有量に基づき、上記「エアゾールA」と同様にしてエアゾール剤B〜Hの試験検体を得た。これらエアゾール剤は薬剤原液の吐出量が毎秒0.41mLであるが、その中に含まれるフタルスリン、モンフルオロトリン、フェノトリンそれぞれの含有量(毎秒あたりの吐出量)について表1に示す。
(2)試験方法
8畳相当のチャンバー(3.6m×3.6m×2.7m)内に、図1に示す試験系を設置した。金網(16メッシュ)製ゲージ(25cm×25cm×25cm)に供試虫(イエバエ 雌10頭)を入れ、床面からの高さ150cmになるようにチャンバーの天井から吊るし、検体を1mの距離からゲージの中心に向けて1秒間水平噴射して、噴射直後から経時的に供試虫のノックダウン数(行動停止した頭数)を記録し、KT50(供試虫の50%がノックダウンする時間:秒)とKT90(供試虫の90%がノックダウンする時間:秒)をプロビット法にて算出した。試験は3回行い、その平均結果を図3に、平均結果と24時間後の致死率(%)を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1、2(エアゾールA、B)は、フタルスリン、モンフルオロトリンをそれぞれ単独で同量含有する比較例1〜3(エアゾールC〜E)や、フェノトリンを含有する参考例1(エアゾールH)に比べて、KT50、KT90が優れていた。フタルスリンとモンフルオロトリンを併用するエアゾール剤(実施例1、2)は、イエバエがノックダウンするまでの時間が非常に短いことから、速効的に作用するものと考えられた。
【0034】
また、モンフルオロトリン単剤(エアゾールD〜G)の殺虫効果の検証を行った。参考例2として、通常市販されているノックダウン効果の高い薬剤と致死活性の高い薬剤とを組み合わせた殺虫剤エアゾール(フタルスリン0.47w/v%、フェノトリン0.17w/v%を含む)を使用し、この市販エアゾール中のフタルスリン、フェノトリンそれぞれの含有量(毎秒あたりの吐出量)について表1に示した。
【0035】
検証の結果は、図4に記載した。モンフルオロトリン単剤では、含有量0.12w/v%より濃度を高くしても殺虫活性は、さらに向上することはなかった。しかも、殺虫活性と共に刺激性が高まることもわかった。この刺激性については、下記の<刺激性試験>において詳細に記載する。
【0036】
<効力試験2>
(1)試験検体
表1に示したエアゾールA〜C、Eを試験検体として、使用した。
(2)試験方法
図2に示すように、供試虫(クロゴキブリ雌1頭)を入れたプラスチックカップ(容量860mlの上部が開放したプラスチックカップであり、その内側側面上部には炭酸カルシウムをエタノールに分散させた溶液を塗布し、風乾させ、エタノールを除いたもの)を用意し、傾斜角45°の台に、前記プラスチックカップをエアゾール剤(試験検体)の噴霧線上となるように取り付けた。前記プラスチックカップの底部中央からの噴霧距離が50cmとなる位置から、前記プラスチックカップの中心に向けてエアゾール剤を2秒間噴霧した。
噴霧直後に供試虫を別のプラスチックカップに移し、ノックダウンするまでの時間「KT」(秒)と、行動を停止するまでの時間「FT」(秒)を測定した。その後、供試虫の24時間経過後の致死の有無を調べた。試験は4回(「エアゾールE」のみ5回)行い、その平均から致死率(%)を算出した。試験の結果は表2、図5に示した。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例3、4(エアゾールA、B)は平均KT、平均FTが比較例6、7(エアゾールC、E)よりも優れていた。とりわけ、クロゴキブリに対するノックダウンするまでの時間が非常に短く、行動停止効果が格段に向上することが確認できた。
【0039】
<効力試験3>
(1)試験検体
原液:フタルスリン0.32w/v%、モンフルオロトリン0.03w/v%、炭酸プロピレン0.17w/v%、イソプロパノール2.0w/v%及び1号灯油適量により100mLとする。
噴射剤:LPG50mL(0.49MPa、25℃)及びジメチルエーテル50mLにより100mLとする。
この原液225mLを、エアゾール缶に入れ、缶にバルブ部を取り付け、該バルブ部分を通じて前記噴射剤225mLを充填し、エアゾール用組成物を含有するエアゾール剤(以下、「エアゾールI」と記す。)を得た。
表3、4に示すフタルスリンとモンフルオロトリンの含有量に基づき、上記「エアゾールI」と同様にしてエアゾール剤J〜Lの試験検体を得た。
これらエアゾール剤は薬剤原液の吐出量が毎秒8.3mLであるが、その中に含まれるフタルスリン、モンフルオロトリンそれぞれの含有量(毎秒あたりの吐出量)について表3、4に示す。
これらエアゾール剤中のフタルスリン、モンフルオロトリンそれぞれの含有量(毎秒あたりの吐出量)について表3、4に示す。
(2)試験方法
8畳相当のチャンバー(3.6m×3.6m×2.7m)内に、図1に示す試験系を設置した。円柱形の金網(16メッシュ)製ゲージ(内径8cm×長さ8cm)に供試虫(クロマルハナバチ1頭)を入れ、床面からの高さ150cmになるようにチャンバーの天井から吊るし、試験検体をゲージの中心に向け、3mの距離から3秒間水平噴射して、噴射直後から300秒間観察し、経時的に供試虫が行動を停止するまでの時間「FT」(秒)を測定した。試験は3回行い、その平均結果を表3に示す。また、供試虫として、セグロアシナガバチ1頭を用いてクロマルハナバチの試験方法と同様の方法で試験を1回行い、試験結果を表4に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
実施例5、6(エアゾールI、J)は、クロマルハナバチに対する効果である平均FTが比較例8、9(エアゾールK、L)よりも優れていた。また、実施例7、8(エアゾールI、J)は、セグロアシナガバチに対する効果である平均FTが比較例10、11(エアゾールK、L)よりも優れていた。
すなわち、ハチについても、モンフルオロトリンはフタルスリンの殺虫活性及び速効性を向上させることが確認できた。
【0043】
<効力試験4>
(1)試験検体
原液:フタルスリン0.5w/v%、モンフルオロトリン0.06w/v%、イソプロパノール0.5w/v%、炭酸プロピレン0.34w/v%及び1号灯油適量により100mLとする。
噴射剤:LPG90mL(0.49MPa、25℃)及びジメチルエーテル10mLにより100mLとする。
この原液225mLを、エアゾール缶に入れ、缶にバルブ部を取り付け、該バルブ部分を通じて前記噴射剤225mLを充填し、エアゾール用組成物を含有するエアゾール(以下、「エアゾールM」と記す。)を得た。
表5に示すフタルスリンとモンフルオロトリンの含有量に基づき、上記「エアゾールM」と同様にしてエアゾール剤N、P、Qの試験検体を得た。
これらエアゾール剤は薬剤原液の吐出量が毎秒0.55mLであるが、その中に含まれるフタルスリン、モンフルオロトリンそれぞれの含有量(毎秒あたりの吐出量)について表5に示す。
(2)試験方法
供試虫として、ムカデ1頭、アミメアリ10頭を用いて効力試験2の噴射秒数のみを、ムカデに対しては5秒噴射に、アミメアリに対しては1秒噴射に換えた以外は同様の方法で試験を、ムカデに対して実施例9と比較例12は3回、比較例13は2回、比較例14は1回行い、アミメアリに対して実施例9は3回、比較例13は2回行った。ムカデに対してはノックダウンするまでの時間「KT」(秒)を測定し、その平均結果を表5に示した。また、アミメアリに対しては5分後にノックダウンした頭数を数え、その合計頭数を表5に示した。
【0044】
【表5】
【0045】
表5の実施例9の結果より、ムカデ、アリに対しても、モンフルオロトリンはフタルスリンの殺虫活性及び速効性を向上させることが確認できた。
【0046】
<刺激性試験>
(1)試験検体
表6に示すフタルスリンとモンフルオロトリンの含有量に基づき、上記製剤例に従ってエアゾール剤R、S、Fの試験検体を得た。これらエアゾール剤中のフタルスリン、モンフルオロトリンそれぞれの含有量(毎秒あたりの吐出量)について表6に示す。
(2)試験方法
試験検体のエアゾール剤を、無換気条件の8畳の金属チャンバー(約32m)中央から円を描くように7秒間噴霧し、噴射直後、モニター20名に金属チャンバー内を1周してもらい、刺激性についての官能評価を行った。評価は鼻、のど、皮膚に感じる刺激性の感覚について、「刺激を感じない」、「刺激はあるが気にならない」、「刺激がある」、「刺激がとてもある」この4段階で評価した。これらの結果を、表6にパネラー20人中の各評価の人数(人)を、図6にその比率をグラフに示した。
【0047】
【表6】
【0048】
表6、図6の結果から、比較例15(エアゾールF)のモンフルオロトリン単剤より、フタルスリンを併用した実施例10、11(エアゾールR、S)の方が、刺激を感じる人が少なく、刺激性が低減した処方であることが確認できた。
【0049】
<効力試験5:参考>
(1)試験検体
表7に示すフタルスリンとプラレトリンの含有量に基づき、上記「エアゾールA」と同様にエアゾール剤の形態の試験検体(参考処方a〜f)を得た。
これらエアゾール剤は薬剤原液の吐出量が毎秒0.51mLであるが、その中に含まれるフタルスリン、プラレトリンそれぞれの含有量(毎秒あたりの吐出量)について表7に示す。
これらエアゾール剤中のフタルスリン、プラレトリンそれぞれの含有量(毎秒あたりの吐出量)について表7に示す。
(2)試験方法
図2に示すように、供試虫(クロゴキブリ雌5頭)を入れたプラスチックカップ(容量860mlの上部が開放したプラスチックカップであり、その内側側面上部には炭酸カルシウムをエタノールに分散させた溶液を塗布し、風乾させ、エタノールを除いたもの)を用意し、傾斜角45°の台に、前記プラスチックカップをエアゾール剤(試験検体)の噴霧線上となるように取り付けた。前記プラスチックカップの底部中央からの噴霧距離が50cmとなる位置から、前記プラスチックカップの中心に向けてエアゾール剤を1秒間噴霧した。
噴霧直後に供試虫を別のプラスチックカップに移し、ノックダウンするまでの時間「KT」(秒)を測定した。試験は3回行い、その平均値を算出し、試験結果を表7に示した。
【0050】
【表7】
【0051】
表7の結果より、フタルスリンにピレスロイド系殺虫剤の1つであるプラレトリンを併用(参考例3、4)しても殺虫活性は増強されず、フタルスリン単独(参考例5、6)の方がゴキブリに対するノックダウン効果が高いことが明らかとなった。
この結果から、フタルスリンの殺虫効力増強剤としてモンフルオロトリンを使用することにより、初めて相乗的に殺虫活性が向上し、かつ、速効性が向上することは、フタルスリンとモンフルオロトリンとの組み合わせにおいてのみ得られる格別顕著な効果であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のフタルスリンの殺虫効力増強剤は、高い殺虫効力増強効果を有するので、その殺虫効力増強剤を含有した殺虫剤組成物は、フタルスリンが持っている処理直後のノックダウン効果を高めて、さらに、害虫の生体機能をすばやく停止させる作用があるために、即時に害虫の行動を停止させることができる。しかも、モンフルオロトリンとフタルスリンとを併用することにより、モンフルオロトリン単剤では刺激の高いモンフルオロトリンの使用量を少なくすることができ、刺激性を低減することができ、使用する人やペット等の動物に対する安全性が高く、有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6