(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654848
(24)【登録日】2020年2月4日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】空気フィルタの防虫用ケーシング
(51)【国際特許分類】
B01D 46/10 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
B01D46/10 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-199938(P2015-199938)
(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公開番号】特開2017-70908(P2017-70908A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100182796
【弁理士】
【氏名又は名称】津島 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100181308
【弁理士】
【氏名又は名称】早稲田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】山口 晴義
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−057213(JP,A)
【文献】
特開平11−172797(JP,A)
【文献】
特開2005−273972(JP,A)
【文献】
特開2012−055884(JP,A)
【文献】
特開2008−035776(JP,A)
【文献】
特開2000−304321(JP,A)
【文献】
実公昭55−53868(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00−46/54
B01D 39/00−39/20
A01M 29/34
F24F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレフィルタが固定されたプレフィルタ枠と、
内部に前記プレフィルタ枠を固定可能なケーシングと、
前記ケーシングに付属し、前記プレフィルタ枠の外気流出側に設置された前記プレフィルタ枠をケーシングに固定する固定手段と
を有し、
前記ケーシングの断面におけるフィルタ固定部の先端部分が外気流入方向に突出し、その最先端部が外気流入方向あるいは前記ケーシングの壁面方向あるいはその中間となる角度に傾斜していることを特徴とする空気フィルタの防虫用ケーシング。
【請求項2】
前記ケーシングは、外気の通気方向と垂直方向に前記プレフィルタ枠が取り外し可能な取出し口が設けられている請求項1に記載の空気フィルタの防虫用ケーシング。
【請求項3】
前記ケーシングの前記最先端部の形状部分が#400以上のバフ仕上げ加工されている請求項1、又は2に記載の空気フィルタの防虫用ケーシング。
【請求項4】
前記プレフィルタ枠の前記固定手段にカムクランプが使用され、前記カムクランプが前記プレフィルタ枠に対し外気の流出側に設置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の空気フィルタの防虫用ケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気フィルタに使用される防虫用ケーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場や医療・薬品工場などの衛生的環境、あるいは精密機械の製造工場や半導体工場などのクリーン環境内では、不純物となる化学物質やチリなどの微粒子の侵入を防ぐ必要がある。これらのクリーン環境における外気導入装置には、通常、中性能フィルタやHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)などの防塵フィルタ、あるいは活性炭などの吸着剤を用いたケミカルフィルタが、適宜目的の環境に合わせた組み合わせで設置され、工場内にはこれらのフィルタを通して清浄化された空気が導入される。
【0003】
外気には比較的大きなチリやほこり、異物、昆虫なども含まれており、これらが上記の防塵フィルタやケミカルフィルタなどに付着した場合、フィルタ機能が大幅に低下する。防塵フィルタやケミカルフィルタは、高価であり容易には交換できない。よって通常、防塵フィルタやケミカルフィルタを保護するため、これらフィルタの外気側にプレフィルタを設置する。プレフィルタは、上記の防塵フィルタに比べて比較的目が粗く、実際の設置環境においてはもっとも外気側に設置されるフィルタである。
【0004】
プレフィルタは、プレフィルタ本体を保持するプレフィルタ枠と、そのプレフィルタ枠を保持するケーシングとから構成される。そのケーシングは、通気管内に取り付けられる。
【0005】
プレフィルタ本体は、直接外気に触れるため汚れがたまりやすく、フィルタの交換頻度が最も高い。このためプレフィルタは、容易に交換できる作業性が最優先される構造になっている。通常、通気管あるいはケーシングにはプレフィルタ枠が容易に取り出せるように、プレフィルタ枠の取出し口あるいは点検口が設けられている。
【0006】
プレフィルタ枠の取り出し方法は、大きく2つに分類される。一つは、外気の通気方向とは垂直方向にプレフィルタ枠の取出し口を設け、ケーシングから直接プレフィルタ枠を取り出せるサイドアクセス方式である。もう一つは、通気管に人が入れるあるいは人が作業できる点検口を設け、通気管の中で外気の通気方向あるいはその逆方向に、ケーシングからプレフィルタ枠を取り外せる構造にしたフロントアクセス方式である。サイドアクセス方式は、通気管あるいはフィルタ装置周辺のスペースに余裕がある比較的小型のフィルタ装置で主に使われる方式である。一方、フロントアクセス方式は、通気管に人が入れるほどの比較的大型のフィルタ装置で主に使われる方式である。
【0007】
サイドアクセス方式においては、通常、プレフィルタ枠は通気方向とは垂直に出し入れされる。このため、たとえばカムクランプなどの装置を使用し、プレフィルタ枠を通気方向に押さえつけることで、プレフィルタの開口部とケーシングの開口部とを密着させている。このカムクランプ装置は、通常、プレフィルタ枠の取り出し口周辺に設置されたレバーで操作される。また、プレフィルタには、フィルタへの負圧による圧力が発生するため、通気状態では常に外気流入側から外気流出側へ押されている。このため、通常は、通気方向の外気流入側にカムクランプなどの装置が設置される。プレフィルタ枠は、ケーシングに対し外気流入側から外気流出側の方向へ押さえつけられる構造となっている。
【0008】
サイドアクセス方式およびフロントアクセス方式は、いずれもプレフィルタ枠交換の作業性を優先した構造となっており、プレフィルタ本体とプレフィルタ枠、あるいはケーシングとの気密性は必ずしも十分ではない。特にサイドアクセス方式は、ケーシングあるいは通気管の側面にある狭いプレフィルタ取出し口からしかケーシング内部の点検や清掃ができない。よって、プレフィルタ枠とケーシングを固定する際に、小さな異物を挟むあるいは位置ずれなどが起き、フィルタ枠とケーシングの間に隙間ができる場合がある。
【0009】
走行性である昆虫類、ムカデ類、ゲジ類などは構造物の隙間を好み、また自発的に移動し装置の隅などを徘徊するため、プレフィルタ枠とケーシングに隙間があると、これら昆虫類などが装置内に侵入する場合がある。昆虫類の侵入を防ぐため、これまでは、プレフィルタ枠の交換作業を素早く行う、あるいはプレフィルタ枠の交換作業時に、狭いプレフィルタ取り出し口から極力見落としが無いよう点検や清掃を行うなどの手段しかなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−218193号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】服部畦作(ほか)著、改訂版不快害虫とその駆除、第2版、日本環境衛生センター、1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、プレフィルタの交換での作業性を損なわずに、通常稼働時あるいはプレフィルタ交換時のいずれにおいても、走行性の昆虫類の侵入を防ぐことができる空気フィルタの防虫用ケーシングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の空気フィルタの防虫用ケーシングは、プレフィルタが固定されたプレフィルタ枠と、内部に前記プレフィルタ枠を固定可能でかつ、外気の通気方向と垂直方向に前記プレフィルタ枠が取り外し可能な取出し口が付いたケーシングと、前記ケーシングに付属し、前記プレフィルタ枠の外気流出側に設置された前記プレフィルタ枠を固定する固定手段とを有し、前記ケーシングの床面に接する枠の断面におけるフィルタ固定部の先端部分が外気流入方向に曲がって突出し、その断面の最先端部が鼠返しの形状であることを特徴とする。
【0014】
実施形態の空気フィルタの防虫用ケーシングによれば、通常運転時あるいはプレフィルタ枠交換時においてもケーシングの外気流入側の床面側に設置された“鼠返し”状の構造により走行性の昆虫類などの侵入を防ぐことができ、プレフィルタ交換作業を容易にし、またクリーン環境を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態である空気フィルタの防虫用ケーシングの外気流出側からの分解斜視図。
【
図2】実施形態である空気フィルタの防虫用ケーシングの床面側の拡大断面図。
【
図3】実施形態である空気フィルタの防虫用ケーシングの外気流入側からの斜視図。
【
図4】実施形態である空気フィルタの防虫用ケーシングの防虫用かえし部分の形状の例。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための実施形態の防虫用ケーシング10について、
図1乃至
図4を用いて説明する。
図1は、サイドアクセス方式のケーシングにおける外気流出側からみた分解斜視図である。プレフィルタ本体1は、プレフィルタ枠2の中に固定されて使用される。プレフィルタ枠2は、防虫ケーシング部3の中に固定されて使用される。プレフィルタ枠2は、防虫ケーシング部3のプレフィルタ取り出し口4から出し入れされ、プレフィルタ枠2の挿入時に上下のカムクランプレバー6を回し、上下のカムクランプ5でプレフィルター枠2を固定する。
【0017】
図2は、防虫用ケーシング10の床面側の断面拡大図である。プレフィルタ枠2は、防虫ケーシング部3に挿入した後、カムクランプレバー6を
図2の矢印Aの方向に回動すると、カムクランプ5が矢印Bの方向に回動することにより、ケーシング開口部8側に押さえつけられる。ケーシング開口部8の下側に設けられるフィルタ固定部9の端部の防虫用かえし7は、外気流入側に延びたのち、外気流入方向あるいは床面方向あるいはその中間のいずれかの方向へ延ばされ、いわゆる“鼠返し”としての機能構造を有する。
【0018】
図3は、サイドアクセス方式のケーシングにおける外気流入側からみた分解斜視図である。防虫用かえし7は外気流入側のケーシング開口部8の床面側だけでなく左右側面部および天井側にも加工される。
【0019】
図4は、防虫用かえし7の断面形状の例である。防虫用かえし7の端部は、外気流入方向へ伸びたのち、そのまま外気流入方向あるいは床面方向あるいはその中間の方向へのばされ、いわゆる鼠返しの形状となる。
【0020】
実施形態の防虫用ケーシング10において、カムクランプ5は、プレフィルタ枠2に対し外気流出側に設置される。これは、フィルタ固定部9の外気流入側に防虫用のかえし7を組み付けたための処置である。
防虫用かえし7の先端部は、走行性の昆虫類などの侵入を防ぐため、床面から5cm以上の高さにあることが望ましい。
【0021】
侵入が想定される昆虫の例としては、走行性でかつ隙間を好む昆虫類などがあげられる。一例としてはシミ類、クモ類、ゴキブリ、ゲジ類、ムカデ類、ヤスデ類などがある。
【0022】
プレフィルタ枠2の材質については、特に限定されるものではなく、好適に強度と耐久性を有すればよく、たとえばステンレス、アルミ、鉄、木製、樹脂性があげられる。この中では強度、耐久性、および重量の面からアルミニウムが好ましい。
【0023】
プレフィルタ本体1の材料については、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ガラス繊維などがあげられる。またその形状としては、特に限定されないが、織物、編物、不織布、スポンジ状などがあげられ、またこれらの形状にさらに折り加工を施したプリーツ形状が用いられる。
【0024】
防虫用かえし7について、防虫用かえし7の形状に加工するのは床面側だけでなく左右側面側および天井側も加工可能である。走行性の昆虫類などは壁面を上ることが可能であるため、底面側だけでなく側面側や天井側にも防虫用かえし7を加工することでより効率的な防虫効果が望める。
【0025】
防虫用かえし7の部分の表面について、#400以上のバフ仕上げを施すことで表面の粗さが低減され昆虫類などが表面につかまりにくくなり、より効果的な防虫効果が望める。
【0026】
また、防虫用として高電圧の電線をはるあるいは下流側に影響がない範囲で防虫用の薬剤を散布するなどの手段を併用することでより効率的な防虫効果が望める。
【実施例】
【0027】
プレフィルタ本体1とプレフィルタ枠2には、ニッタ株式会社製のNT20型プレフィルタを使用した。防虫ケーシング部3には、上記プレフィルタ用のケーシングについて、フィルタ固定部9の部分を
図2の防虫用かえし7のように加工したものを用いた。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1…プレフィルタ本体
2…プレフィルタ枠
3…防虫ケーシング部
4…プレフィルタ枠取出し口
5…カムクランプ
6…カムクランプレバー
7…防虫用かえし
8…ケーシング開口部
9…フィルタ固定部
10…防虫用ケーシング