(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、捲回中に何らかの不具合が生じること等により、捲回体において各シートが正常に捲回されていないといった事態が生じ得る。そこで、捲回体を外部から観察し、捲回体における各シートの終端部や始端部が正常に存在しているか否かに基づき、捲回体の良否を判定することが考えられる。例えば、1の電極シートにおける終端部又は始端部が本来存在すべき位置に存在していない場合、前記1の電極シートは捲回状態が異常であると判定され、その結果、捲回体は不良と判定されることとなる。
【0006】
しかしながら、従来技術においては、捲回体における各シートの終端部や始端部の位置は特に調節されておらず、外部から各シートの終端部等を把握することが難しい。特に上記従来技術のように、電極シートの捲回開始前や捲回完了後にセパレータシートの捲回が行われるような場合、捲回体の始端側及び終端側においては、セパレータシートのみがある程度の長さ捲回された状態となる。そのため、外観上、電極シートの終端部や始端部がセパレータシートで完全に覆われた状態となり、電極シートの始端部や終端部を把握することが一層難しくなってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外部から良否をより容易に判定することができる捲回体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.表面に活物質を有する2枚の帯状の電極シートと、
絶縁素材からなり、前記両電極シートを絶縁状態とするための帯状のセパレータシートとを備え、
前記各シートが重ねられた状態で捲回された捲回体であって、
前記電極シートは、
導電性素材からなる帯状のシート本体部と、
当該シート本体部の少なくとも終端部に設けられた絶縁素材からなるリードテープ部とを有し、
前記電極シートの終端部は、前記リードテープ部によって構成され、
前記各シートの終端部は、周方向に揃った状態とされていることを特徴とする捲回体。
【0010】
上記手段1によれば、捲回体において、各シートの終端部は揃った状態となっている。従って、外部から捲回体における各シートの終端部を容易に把握することができ、ひいては外部から捲回体の良否を容易に判定することができる。例えば、正常な捲回体であれば、各シートの終端部がそれぞれ揃った状態で外周面に現れることとなるが、このような状態となっていなければ、いずれかのシートに異常が生じており、捲回体が不良であると判定されることとなる。
【0011】
また、上記手段1によれば、リードテープ部によって、シート本体部の終端部が保護された状態となるため、シート本体部の切断に伴うバリやエッジがシート本体部の終端部に生じたとしても、これらバリ等が露出してしまうことを抑制できる。これにより、バリ等によってセパレータシートが傷つけられてしまうといった事態をより確実に防止でき、捲回体の品質向上を図ることができる。
【0012】
手段2.表面に活物質を有する2枚の帯状の電極シートと、
絶縁素材からなり、前記両電極シートを絶縁状態とするための帯状のセパレータシートとを備え、
前記各シートが重ねられた状態で捲回された、所定の中心軸方向に延びる捲回体であって、
前記電極シートは、
導電性素材からなる帯状のシート本体部と、
当該シート本体部の少なくとも終端部に設けられた絶縁素材からなるリードテープ部とを有し、
前記電極シートの終端部は、前記リードテープ部によって構成され、
前記各シートの終端部は、内周側に位置するシートほどその他のシートに対し周方向に沿って突出した状態となっており、前記中心軸と直交する断面において、前記各シートの終端部のうち最外周に位置するものと最内周に位置するものとから前記中心軸に向けて仮想線をそれぞれ引いたとき、前記両仮想線により形成される2つの角のうち小さい方の角度が180°未満であることを特徴とする捲回体。
【0013】
尚、「前記各シートの終端部は、内周側に位置するシートほどその他のシートに対し周方向に沿って突出した状態」とあるのは、換言すれば、各シートの終端部は、外周側に位置するシートに覆われておらず、それぞれ捲回体の外周面に露出している状態ということができる。
【0014】
上記手段2によれば、捲回体において、各シートの終端部はそれぞれ外周面に露出するとともに、外周面における半周分の範囲内に収まった状態となっている。従って、外部から各シートの終端部を容易に把握することができ、ひいては外部から捲回体の良否を容易に判定することができる。例えば、正常な捲回体において、各シートの終端部は、外周面における半周分の範囲内で周方向に並んだ状態で外周面に現れることとなるが、このような状態となっていなければ、いずれかのシートに異常が生じており、捲回体が不良であると判定されることとなる。
【0015】
また、上記手段2によれば、各シートの終端部が少しずつずれた状態となるため、各シートの終端部を所定の固定用テープで巻止めする場合、固定用テープの接着面を各シートに対しより確実に接触させることができる。その結果、捲回体における巻止めをより確実に、かつ、より強固に行うことができる。
【0016】
さらに、上記手段1と同様、リードテープ部によって、シート本体部の終端部を保護することができ、ひいてはセパレータシートの損傷をより確実に防止することができる。その結果、捲回体の品質向上を図ることができる。
【0017】
手段3.前記角度が90°未満であることを特徴とする手段2に記載の捲回体。
【0018】
上記手段3によれば、捲回体において、各シートの終端部は外周面における1/4周分の範囲内に収まった状態となっている。従って、外部から各シートの終端部を一層容易に把握することができ、捲回体の良否判定を一層容易に行うことができる。
【0019】
手段4.前記各シートは、自身と隣り合うシートにおける終端部と異なる色の終端部を備えることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の捲回体。
【0020】
上記手段4によれば、各シートの終端部を一層容易に把握することができ、良否判定の更なる容易化を図ることができる。
【0021】
手段5.前記各シートの終端部は、それぞれ異なる色であることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の捲回体。
【0022】
上記手段5によれば、各シートの終端部をより一層容易に把握することができ、良否判定をより一層容易に行うことができる。
【0023】
手段6.表面に活物質を有する2枚の帯状の電極シートと、
絶縁素材からなり、前記両電極シートを絶縁状態とするための帯状のセパレータシートとを備え、
前記各シートが重ねられた状態で捲回された捲回体であって、
前記電極シートは、
導電性素材からなる帯状のシート本体部と、
当該シート本体部の少なくとも始端部に設けられた絶縁素材からなるリードテープ部とを有し、
前記電極シートの始端部は、前記リードテープ部によって構成され、
前記各シートの始端部は、周方向に揃った状態とされていることを特徴とする捲回体。
【0024】
上記手段6によれば、外部から捲回体における各シートの始端部を容易に把握することができる。これにより、外部から捲回体の良否を容易に判定することができる。
【0025】
また、上記手段6によれば、リードテープ部によって、シート本体部の始端部が保護された状態となるため、シート本体部の切断に伴うバリやエッジがシート本体部の始端部に生じたとしても、これらバリ等が露出してしまうことを抑制できる。これにより、バリ等によってセパレータシートが傷つけられてしまうといった事態をより確実に防止でき、捲回体の品質向上を図ることができる。
【0026】
手段7.表面に活物質を有する2枚の帯状の電極シートと、
絶縁素材からなり、前記両電極シートを絶縁状態とするための帯状のセパレータシートとを備え、
前記各シートが重ねられた状態で捲回された、所定の中心軸方向に延びる捲回体であって、
前記電極シートは、
導電性素材からなる帯状のシート本体部と、
当該シート本体部の少なくとも始端部に設けられた絶縁素材からなるリードテープ部とを有し、
前記電極シートの始端部は、前記リードテープ部によって構成され、
前記各シートの始端部は、外周側に位置するシートほどその他のシートに対し周方向に沿って突出した状態となっており、前記中心軸と直交する断面において、前記各シートの始端部のうち最外周に位置するものと最内周に位置するものとから前記中心軸に向けて仮想線をそれぞれ引いたとき、前記両仮想線により形成される2つの角のうち小さい方の角度が180°未満であることを特徴とする捲回体。
【0027】
尚、「前記各シートの始端部は、外周側に位置するシートほどその他のシートに対して突出した状態」とあるのは、換言すれば、前記各シートの始端部は、内周側に位置するシートに覆われておらず、捲回体の内周面において露出している状態ということができる。
【0028】
上記手段7によれば、捲回体において、各シートの始端部は内周面にて露出するとともに、内周面における半周分の範囲内に収まった状態となっている。従って、外部から各シートの始端部を容易に把握することができ、ひいては外部から捲回体の良否を容易に判定することができる。
【0029】
また、上記手段6と同様、リードテープ部によって、シート本体部の始端部を保護することができ、ひいてはセパレータシートの損傷をより確実に防止することができる。その結果、捲回体の品質向上を図ることができる。
【0030】
手段8.前記角度が90°未満であることを特徴とする手段7に記載の捲回体。
【0031】
上記手段8によれば、捲回体において、各シートの始端部は内周面における1/4周分の範囲内に収まった状態となっている。そのため、各シートの始端部を一層容易に把握することができ、捲回体の良否判定を一層容易に行うことができる。
【0032】
手段9.前記各シートは、自身と隣り合うシートにおける始端部と異なる色の始端部を備えることを特徴とする手段6乃至8のいずれかに記載の捲回体。
【0033】
上記手段9によれば、各シートの始端部を一層容易に把握することができ、良否判定の更なる容易化を図ることができる。
【0034】
手段10.前記各シートの始端部は、それぞれ異なる色であることを特徴とする手段6乃至9のいずれかに記載の捲回体。
【0035】
上記手段10によれば、各シートの始端部をより一層容易に把握することができ、良否判定をより一層容易に行うことができる。
【0036】
尚、上記手段1乃至5のいずれかの構成と、上記手段6乃至10のいずれかの構成とを組合わせた捲回体としてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、捲回体としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
【0039】
図1に示すように、リチウムイオン電池素子1(以下、単に「電池素子1」という)は、2枚のセパレータシート2,3を介して、正電極シート4及び負電極シート5が重ね合わされた状態で捲回されることで製造される。電池素子1は、中心軸CL1方向に延びる円筒状をなしている。尚、以下においては、説明の便宜上、セパレータシート2,3及び電極シート4,5を「各種シート2〜5」と総称することがある。
【0040】
セパレータシート2,3は、それぞれ同一の幅を有する帯状をなしており、異なる電極シート4,5同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく、ポリプロピレン(PP)等の絶縁体により構成されている。
【0041】
電極シート4,5は、セパレータシート2,3と略同一の幅を有しており、
図2及び
図3に示すように、薄板状の導電性材料からなるシート本体部4A,5A及び当該シート本体部4A,5Aの両端部に設けられた絶縁素材(例えば、ポリプロピレン等)からなるリードテープ部4B,5Bとを備えている。尚、
図2は、
図1における領域AR1の拡大模式図であり、
図3は、
図1における領域AR2の拡大模式図である。また、
図2,3等においては、リードテープ部4B,5Bを簡略化して示す。
【0042】
正電極シート4のシート本体部4Aは、例えばアルミニウム箔シートからなり、その表裏両面に正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)が塗布されている。負電極シート5のシート本体部5Aは、例えば銅箔シートからなり、その表裏両面に負極活物質(例えば、活性炭等)が塗布されている。そして、活物質を介して、両電極シート4,5間におけるイオン交換ができるようになっている。より詳しくは、充電時には、正電極シート4側から負電極シート5側へとイオンが移動し、放電時には、負電極シート5側から正電極シート4側へとイオンが移動する。また、本実施形態では、一素子分のシート本体部5Aが、一素子分のシート本体部4Aよりも長いものとされている。
【0043】
リードテープ部4B,5Bは、シート本体部4A,5Aの表面及び裏面に貼付された、絶縁素材からなる所定の保護テープ100(
図7参照)が切断されてなり、シート本体部4A,5Aの両端部を覆い保護するものである。本実施形態では、リードテープ部5Bが、リードテープ部4Bよりも短いものとされている。
【0044】
さらに、本実施形態では、電池素子1の外周において、各種シート2〜5の終端部は、内周側に位置するシートほどその他のシートに対し周方向に沿って突出した状態とされている(
図2参照)。つまり、各種シート2〜5の終端部は、外周側に位置するシートに覆われておらず、それぞれ電池素子1の外周面に露出した状態とされている。
【0045】
一方、電池素子1の内周において、各種シート2〜5の始端部は、外周側に位置するシートほどその他のシートに対し周方向に沿って突出した状態とされている(
図3参照)。つまり、各種シート2〜5の始端部は、内周側に位置するシートに覆われておらず、電池素子1の内周面に露出した状態とされている。
【0046】
加えて、本実施形態では、各種シート2〜5の各終端部は、次の位置関係を満たすように配置されている。すなわち、
図4に示すように、前記中心軸CL1と直交する断面において、各種シート2〜5の終端部のうち最外周に位置するものと最内周に位置するものとから前記中心軸CL1に向けて仮想線VL1,VL2を引く。このとき、両仮想線VL1,VL2により形成される2つの角のうち小さい方の角度θ1が180°未満とされている。本実施形態では、前記角度θ1が90°未満とされている。
【0047】
一方、各種シート2〜5の各始端部は、次の位置関係を満たすように配置されている。すなわち、前記中心軸CL1と直交する断面において、各種シート2〜5の始端部のうち最外周に位置するものと最内周に位置するものとから前記中心軸CL1に向けて仮想線VL3,VL4を引く。このとき、両仮想線VL3,VL4により形成される2つの角のうち小さい方の角度θ2が180°未満とされている。本実施形態では、前記角度θ2が90°未満とされている。
【0048】
さらに、各種シート2〜5の終端部は、それぞれ異なる色とされている。例えば、正電極シート4の終端部を構成するリードテープ部4Bの色は赤であり、負電極シート5の終端部を構成するリードテープ部5Bの色は黄色であり、セパレータシート2の終端部の色は青であり、セパレータシート3の終端部の色は紫とされている。
【0049】
また、各種シート2〜5の始端部についても、それぞれ異なる色とされている。尚、本実施形態において、セパレータシート2,3は、その全域が同一色である。勿論、各種シート2〜5の終端部や始端部の色は、上記例示したものに限られず、適宜変更可能である。
【0050】
また、正電極シート4(シート本体部4A)の幅方向一端縁からは図示しない複数の正極リードが延出するとともに、負電極シート5(シート本体部5A)の幅方向他端縁からは図示しない複数の負極リードが延出している。
【0051】
リチウムイオン電池を得るに際しては、捲回された電池素子1が金属製で筒状をなす電池容器(図示せず)内に配設されるとともに、前記正極リード及び負極リードがそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正極リードを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負極リードを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品が前記電気容器の両端開口に塞ぐように設けられることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
【0052】
次に、電池素子1を製造するための捲回装置10について説明する。
図5に示すように、捲回装置10は、各種シート2〜5を捲回するための捲回部11と、正電極シート4を捲回部11へ供給するための正電極シート供給機構31と、負電極シート5を捲回部11へ供給するための負電極シート供給機構41と、セパレータシート2,3をそれぞれ捲回部11へ供給するためのセパレータ供給機構51,61とを備えている。尚、上記捲回部11や各供給機構31,41,51,61など、捲回装置10内の各種機構は、基本的には所定の制御装置89により動作制御される構成となっている。
【0053】
正電極シート供給機構31の最上流側においては、一本のシート本体部4Aがロール状に捲回されてなる正電極シート原反32が回転可能に支持されており、ここから適宜、シート本体部4Aが引き出されることとなる。
【0054】
また、正電極シート原反32から捲回部11にかけての正電極シート4の搬送路の途中には、下流側より順に、第一繰出ローラ84、バッファ機構85、第二繰出ローラ86及び切断貼付装置87が設けられている。
【0055】
第一繰出ローラ84等の説明に先立って、まず、切断貼付装置87について説明する。
【0056】
切断貼付装置87は、正電極シート原反32から引き出されたシート本体部4Aを切断した上で、隣接するシート本体部4Aの被切断部分同士を繋ぐように保護テープ100を貼付することにより、各シート本体部4Aが保護テープ100で直列的に繋がれてなる帯状の正電極シート4を得るために用いられる。そして、切断貼付装置87の下流側に位置する第二繰出ローラ86やバッファ機構85等に対しては、この正電極シート4が順次搬送されることとなる。
【0057】
切断貼付装置87は、
図8等に示すように、正電極シート原反32から引き出されたシート本体部4Aを切断するカッタ機構90と、カッタ機構90による切断に際しシート本体部4Aを把持する把持機構91と、シート本体部4Aの被切断部分に対し保護テープ100を貼付するテープ貼付機構92とを備えている。
【0058】
カッタ機構90は、シート本体部4Aの上側に位置する上刃90aと、シート本体部4Aの下側に位置する下刃90bとから構成されるとともに、当該各刃90a,90bがシート本体部4Aの搬送経路外へ退避可能に構成されている。
【0059】
把持機構91は、カッタ機構90の上流側にてシート本体部4Aを把持可能な上流側把持部91aと、カッタ機構90の下流側にてシート本体部4Aを把持可能な下流側把持部91bとを有するとともに、上流側把持部91aが下流側把持部91bに対しシート本体部4Aの搬送路に沿って進退可能に構成されている。
【0060】
より詳しくは、上流側把持部91aは、図示しない駆動手段により、下流側把持部91bから相当距離離間した退避位置と、下流側把持部91bに最も接近した最接近位置との間を移動可能に構成されている。つまり、各把持部91a,91bがシート搬送方向に沿って互いに離間・接近する方向へ相対移動可能に構成されている。なお、便宜上、符号は省略するが、各把持部91a,91bは、上下一対のチャックを具備しており、図示しない駆動手段により当該チャックが開閉動作を行うように構成されている。
【0061】
テープ貼付機構92は、シート本体部4Aの上方位置にて保護テープ100を保持可能な上保持部92aと、シート本体部4Aの下方位置にて保護テープ100を保持可能な下保持部92bとを有し、図示しない駆動手段により各保持部92a,92bがそれぞれ上下方向に沿って昇降動作を行うように構成されている。
【0062】
図5に戻り、第一繰出ローラ84は、図示しないモータに連結された上下一対のローラ84a,84bを有し、両ローラ84a,84bにより正電極シート4を挟持しつつ、捲回部11の捲回動作に合せて正電極シート4を繰り出すよう構成されている。
【0063】
一方、第二繰出ローラ86は、正電極シート4を繰り出しつつ、保護テープ100の貼付位置を切断貼付装置87に対し位置決めするためのものであり、図示しないモータに連結された上下一対のローラ86a,86b、及び、図示しないエンコーダ等を有している。そして、第二繰出ローラ86は、両ローラ86a,86bにより正電極シート4を挟持しつつ、制御装置89からの制御に基づき、正電極シート4を間欠的に繰り出すように構成されている。
【0064】
バッファ機構85は、図示しないエンコーダを有する測長ローラ85aと、従動ローラ85bと、両ローラ85a,85b間において上下方向に変位可能に設けられた昇降ローラ85cとを有し、捲回部11に対する正電極シート4の繰出し量と、第二繰出ローラ86による正電極シート4の繰出し量との差を吸収する役割を果たす。また、バッファ機構85は、捲回される正電極シート4に対して所定のテンションを付与し、正電極シート4の弛みを防止するための張力付与手段としても機能する。
【0065】
次いで、制御装置89について説明する。制御装置89は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM、演算データ等を長期記憶するハードディスクなどを備えている。制御装置89によって、両繰出ローラ84,86や切断貼付装置87の動作が制御される。例えば、制御装置89には、電池素子1ひとつ分の電極シート4の長さに関する設定値が予め記録されており、当該設定値と第二繰出ローラ86による電極シート4の繰出し量とが等しくなったときに、第二繰出ローラ86の動作を停止させる。この動作停止時に、切断貼付装置87によって、シート本体部4Aの切断や保護テープ100の貼付が行われることとなる。
【0066】
次に、負電極シート供給機構41及びセパレータ供給機構51,61について説明する。
【0067】
負電極シート供給機構41の最上流側においては、一本のシート本体部5Aがロール状に捲回されてなる負電極シート原反42が回転可能に支持されており、ここから適宜、シート本体部5Aが引き出されることとなる。
【0068】
また、負電極シート原反42から捲回部11にかけての負電極シート5の搬送路の途中には、正電極シート4の搬送路と同様に、第一繰出ローラ84、バッファ機構85、第二繰出ローラ86及び切断貼付装置87などが設けられている。これら第一繰出ローラ84、バッファ機構85、第二繰出ローラ86、切断貼付装置87などの各種構成は、正電極シート4の搬送路に設けられたものと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0069】
セパレータ供給機構51,61は、それぞれセパレータシート2,3がロール状に捲回されてなるセパレータ原反52,62を備えている。
【0070】
セパレータ原反52,62は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、セパレータシート2,3が引き出されることとなる。
【0071】
また、各種シート2〜5の供給経路の途中には、各種シート2〜5をひとまとめにする一対のガイドローラ88a,88bなど、各種シート2〜5を案内するための各種ガイドローラ(符号略)が設けられている。
【0072】
尚、本実施形態では、ガイドローラ88a,88bを通過し、セパレータシート2,3及び両電極シート4,5が重ねられた状態において、正電極シート4の保護テープ100と負電極シート5の保護テープ100とが重なるように各電極シート4,5の搬送経路の長さ等が設定されている。
【0073】
次に、捲回部11の構成について詳しく説明する。
図6に示すように、捲回部11は、図示しない駆動機構により回転可能に設けられた円盤状のターレット12と、当該ターレット12の回転方向に180°間隔で設けられた2つの巻芯13,14と、当該巻芯13,14とそれぞれターレット12の回転方向にほぼ90°ずつずれた位置に設けられた2つの支持ローラ15A,15Bと、セパレータシート2,3及び保護テープ100を切断するためのシートカッタ16と、各種シート2〜5を押さえるための押えローラ17と、所定の固定用テープ110(
図25参照)を貼付するためのテープ貼付装置18とを備えている。
【0074】
巻芯13,14は、それぞれ自身の外周側において各種シート2〜5を巻取るためのものであり、図示しない駆動機構により自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。また、巻芯13,14は、ターレット12の軸線方向(
図6等の紙面奥行方向)に沿って、当該ターレット12に対し出没可能に設けられている。
【0075】
巻芯13(14)は、
図7に示すように、それぞれ自身の軸線方向(
図7の紙面奥行方向)に沿って延びる一対の芯片13A,13B(14A,14B)を備えており、当該一対の芯片13A,13B(14A,14B)間に、各種シート2〜5を挿通可能なスリット13S(14S)が形成されている。
【0076】
また、巻芯13(14)は、スリット13S(14S)内において、各種シート2〜5を固定するためのチャック機構13T(14T)を備えている。
【0077】
チャック機構13T(14T)は、断面が略六角形状で内部に空間を有するチューブ131(141)と、当該チューブ131(141)に連結された図示しないエア供給排出機構とで構成されている。チューブ131(141)は、図中上部が接着部132(142)となっており、この接着部132(142)が芯片13A(14A)に接着されている。また、チューブ131(141)は、図中下部が挟持部133(143)となっており、この挟持部133(143)が、他方の芯片13B(14B)に対向するように配置されている。
【0078】
さらに、前記エア供給排出機構においては、チューブ131(141)の内部空間に対するエアの供給、及び、当該内部空間からのエアの排出が可能となっている。そして、チューブ131(141)は、その内部空間にエアが供給されることによって膨張し、上記挟持部133(143)を一方の芯片13A(14A)から突出させる。また、チューブ131(141)は、その内部空間のエアが排出されることによって縮小し、その挟持部133(143)を一方の芯片13A(14A)の凹部134(144)に没入させる。かかる構成によって、チャック機構13T(14T)は、芯片13A,14B(14A,14B)間に挿通された各種シート2〜5を挟持可能となっている。尚、
図7等では、各種シート2〜5を実際よりも厚肉に示している。
【0079】
図6に戻り、巻芯13,14は、ターレット12が回転することにより、捲回ポジションP1と取外しポジションP2との間を旋回移動可能に構成されている。
【0080】
捲回ポジションP1は、巻芯13,14に対し各種シート2〜5を捲回するポジションであり、当該捲回ポジションP1に対し上記各供給機構31,41,51,61からそれぞれ各種シート2〜5が供給されることとなる。
【0081】
取外しポジションP2は、捲回後の各種シート2〜5(すなわち電池素子1)の取外しを行うためのポジションである。取外しポジションP2の周辺部には、巻芯13,14から電池素子1の取外しを行うための取外装置(図示略)等が設けられている。
【0082】
支持ローラ15A,15Bは、取外しポジションP2へ移動した巻芯13,14と上記供給機構31,41,51,61との間で各種シート2〜5を引っ掛け、支持するためのものである。
【0083】
シートカッタ16は、捲回ポジションP1の近傍に配置されており、ターレット12に接近しセパレータシート2,3及び保護テープ100を切断する切断位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置とに移動可能である。
【0084】
押えローラ17は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、ターレット12に接近し各種シート2〜5を押さえる近接位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置とに移動可能に構成されている。
【0085】
テープ貼付装置18は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、捲回終了後にターレット12に接近し、各種シート2〜5の終端部に固定用テープ110(
図25参照)を貼付する機能を備えている。
【0086】
さらに、捲回部11は、巻芯13(14)に捲回された電池素子1を検査するために、第一カメラ19、第二カメラ20及び判定装置21を備えている。
【0087】
第一カメラ19は、取外しポジションP2に配置された巻芯13(14)の側面側を向き、この巻芯13(14)に捲回された電池素子1の外周面を撮像するものである。第一カメラ19によって、電池素子1の外周面に存在する各種シート2〜5の終端部が撮像されることとなる。
【0088】
第二カメラ20は、取外しポジションP2に配置された巻芯13(14)の先端部と相対する位置に設けられており、この巻芯13(14)に捲回された電池素子1の軸方向一端面を撮像するものである。第二カメラ20によって、電池素子1の内周面に存在する各種シート2〜5の始端部が撮像されることとなる。
【0089】
カメラ19,20による撮像画像は、カメラ19,20内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で判定装置21に入力される。
【0090】
尚、両カメラ19,20による撮像時には、電池素子1の外周面及び一端面に対し、図示しない照明装置から所定の光(例えば可視光等)が照射されることとなる。また、本実施形態において、両カメラ19,20は、色識別可能なカラーCCDカメラにより構成されている。
【0091】
判定装置21は、いわゆるコンピュータシステムとして構成されており、両カメラ19,20から入力された撮像画像に基づき、各種シート2〜5の終端部及び始端部がそれぞれ正常であるか否かを判定する。そして、その判定結果に基づき、電池素子1自体の良否を判定する。
【0092】
例えば、第一カメラ19から入力された撮像画像において、各種シート2〜5の終端部がそれぞれ正常に存在し、かつ、第二カメラ20から入力された撮像画像において、各種シート2〜5の始端部がそれぞれ正常に存在している場合には、電池素子1を良品と判定する。尚、各種シート2〜5の終端部等が正常に存在するか否かは、例えば、撮像画像において異なる4色が表れているか否か、終端部等に相当するエッジ部分を4つ検出できるか否か等により判定される。
【0093】
一方、第一カメラ19から入力された撮像画像において、各種シート2〜5のうちのいずれかのシートにおける終端部が存在しない(終端部を認識することができない)場合や、第二カメラ20から入力された撮像画像において、いずれかのシートにおける始端部が存在しない(始端部を認識することができない)場合には、電池素子1を不良と判定する。尚、良否判定結果は、判定装置21の記憶装置(例えば、ハードディスク等)にて記憶される。
【0094】
また、電池素子1を不良と判定した場合、判定装置21は、不良である旨の信号を前記取外装置へと出力する。そして、信号の入力された取外装置は、不良判定された電池素子1を取外した上で、図示しない不良品収容部へと排出する。
【0095】
次に、上述した捲回装置10を用いた電池素子1の製造方法について説明する。
【0096】
まずは、シート本体部4A,5Aに保護テープ100を貼付し、シート本体部4A,5Aを保護テープ100により直列的に接続する手順について、シート本体部4Aの場合を例に詳しく説明する。尚、シート本体部5Aに対する保護テープ100の貼付手順は、シート本体部4Aに対する保護テープ100の貼付手順とほぼ同様であるが、一部異なる点がある(この点は後に説明する)。
【0097】
後述するように、チャック機構13T(14T)により正電極シート4が固定された状態となると、第一繰出ローラ84が停止する一方、第二繰出ローラ86は回転動作を続け、これより上流側の正電極シート4が繰出される。この間、バッファ機構85では、昇降ローラ85cが降下し、繰出された分の正電極シート4が貯留される。ここでは、少なくとも後述する保護テープ100の貼付作業中(第二繰出ローラ86の停止中)に第一繰出ローラ84により繰出される量が貯留されることとなる。
【0098】
また、捲回部11により次の1素子分の捲回動作が開始されると、第一繰出ローラ84及び第二繰出ローラ86が同期して回転し、正電極シート原反32からシート本体部4Aが繰出されるとともに、捲回部11へ電極シート4が順次搬送される。
【0099】
続いて、第二繰出ローラ86に設けられたエンコーダの計測値に基づき、捲回部11により巻取られる1素子分のシート本体部4Aの区切り位置X1(
図13参照)が切断貼付装置87(カッタ機構90)の所定位置に達したと判断されると、第二繰出ローラ86が停止する。一方、第一繰出ローラ84は回転動作を続け、捲回部11による捲回作業は継続して行われる。従って、第二繰出ローラ86が停止し、第一繰出ローラ84が回転している間、バッファ機構85では、昇降ローラ85cが上昇し、貯留されていた正電極シート4が繰出されていくことなる。
【0100】
第二繰出ローラ86が停止し、これより上流側の正電極シート4(シート本体部4A)の搬送が停止されると、
図9に示すように、把持機構91の上流側把持部91a及び下流側把持部91bが駆動し、カッタ機構90の上流側及び下流側にてシート本体部4Aを把持する。そして、このようにシート本体部4Aを把持した状態で、カッタ機構90を駆動させ、シート本体部4Aを前記区切り位置X1にて切断する。
【0101】
シート切断後は、カッタ機構90の各刃90a,90bが正電極シート4の搬送経路外へ退避するとともに、
図10に示すように、把持機構91の各把持部91a,91bがシート本体部4Aを把持したまま、上流側把持部91aだけがシート搬送方向上流側(
図10の右側)へ移動する。これにより、切断されたシート本体部4Aの上流側部分4cと下流側部分4dとの間には隙間4eが形成される(
図14参照)。また、この間に、テープ貼付機構92の両保持部92a,92bに対し、所定の供給装置から事前に保護テープ100が供給される。
【0102】
シート本体部4Aの上流側部分4cと下流側部分4dとの間に隙間4eが形成された後、
図11に示すように、保護テープ100を保持したテープ貼付機構92の両保持部92a,92bがそれぞれシート本体部4A側へ作動する。これにより、シート本体部4Aの上流側部分4cと下流側部分4dとをつなぐようにシート本体部4Aの表裏両面からそれぞれ保護テープ100が貼付されるとともに、隙間4e部分においては、両保護テープ100が互いに接着した状態となる(
図15参照)。
【0103】
そして、カッタ機構90、把持機構91及びテープ貼付機構92がそれぞれ元の状態(
図8参照)に戻り、保護テープ100の貼付作業が終了すると、再び第一繰出ローラ84及び第二繰出ローラ86が同期して回転する。そして、貼付切断装置87よりも下流側に向けて、保護テープ100によりシート本体部4Aが直列的に繋がれてなる一本の正電極シート4が搬送されていくこととなる。
【0104】
尚、シート本体部5Aへの保護テープ100の貼付作業時には、
図12に示すように、シート搬送方向上流側(
図12の右側)に対する上流側把持部91aへの移動量が、シート本体部4Aへの保護テープ100の貼付作業時における当該移動量よりも小さなものとされる。そのため、切断されたシート本体部5Aの上流側部分5cと下流側部分5dとの間には、前記隙間4eよりも小さな隙間5eが形成される(
図16参照)。そして、シート本体部4Aに貼付される保護テープ100よりも短い保護テープ100が、シート本体部5Aの上流側部分5cと下流側部分5dとをつなぐようにシート本体部5Aの表裏両面にそれぞれ貼付される(
図17参照)。
【0105】
続いて、捲回部11による電池素子1の捲回手順について詳しく説明する。ここでは、一方の巻芯13に対し電池素子1ひとつ分の各種シート2〜5の捲回がほぼ完了した段階から、他方の巻芯14に対し各種シート2〜5を捲回し始めるまでの過程に沿って詳しく説明する。
【0106】
捲回ポジションP1にある一方の巻芯13に対し各種シート2〜5が所定長、捲回されると(
図18参照)、巻芯13による捲回動作を停止させることなく、ターレット12が回転する。尚、本実施形態では、負電極シート5が正電極シート4の外周側に位置するようにして巻芯13,14による捲回が行われる。
【0107】
ターレット12の回転に伴い、一方の巻芯13が各種シート2〜5を捲回しつつ、取外しポジションP2側へと移動していくとともに、他方の巻芯14がターレット12に対し没入した状態で捲回ポジションP1側へと移動していく(
図19参照)。
【0108】
そして、一方の巻芯13が取外しポジションP2に達し、他方の巻芯14が捲回ポジションP1に達すると、ターレット12の回転動作及び巻芯13の回転動作が停止される。かかる状態になると、ガイドローラ88a,88bから巻芯13にかけて配された各種シート2〜5が支持ローラ15Aに引っ掛かり、当該支持ローラ15Aとガイドローラ88a,88bとの間において各種シート2〜5が真っ直ぐ張られた状態となる。
【0109】
また、他方の巻芯14が捲回ポジションP1に到達した初期状態においては、上記支持ローラ15A及びガイドローラ88a,88b間に配設された各種シート2〜5の長手方向と、他方の巻芯14のスリット14Sの貫通方向とが略平行した状態となる。
【0110】
この状態で、他方の巻芯14がターレット12から突出する。これにより、他方の巻芯14のスリット14S内に各種シート2〜5が挿通された状態となる(
図20参照)。尚、この状態において、前記挟持部143は一方の芯片14Aの前記凹部144に没入している。
【0111】
その後、再び取外しポジションP2に位置する一方の巻芯13を回転させ、各種シート2〜5の捲回を再開する(
図21参照)。捲回再開に伴い、各電極シート4,5の各保護テープ100が徐々に他方の巻芯14に近づいていく。そして、ガイドローラ88a,88bを各保護テープ100が通過した時点で、各保護テープ100は互いに重ねられた状態となる。
【0112】
さらに、一方の巻芯13の捲回を進め、捲回部11(巻芯13)に設けられた図示しないエンコーダの計測値に基づき、各電極シート4,5に貼付された各保護テープ100が巻芯13,14間の所定位置に達したところで、一方の巻芯13による捲回動作を停止させる(
図22参照)。
【0113】
その後、他方の巻芯14のチャック機構14Tを駆動させ、各種シート2〜5を固定する。また、同時に、押えローラ17により一方の巻芯13に捲回された各種シート2〜5を押える(
図23参照)。
【0114】
他方の巻芯14に対し各種シート2〜5が固定されると、シートカッタ16が作動し、他方の巻芯14の近傍にて、重ねられた状態のセパレータシート2,3及び電極シート4,5の両保護テープ100を一度に切断する。これにより、一方の巻芯13に捲回されている電極シート4,5において、そのシート本体部4A,5Aの終端部が保護テープ100を切断してなるリードテープ部4B,5Bで覆われた状態となり、また、その終端部がリードテープ部4B,5Bで構成されることとなる。また、次回、他方の巻芯14に捲回される電極シート4,5において、そのシート本体部4A,5Aの始端部が保護テープ100を切断してなるリードテープ部4B,5Bで覆われた状態となり、また、その始端部がリードテープ部4B,5Bで構成されることとなる。さらに、一方の巻芯13に捲回されている各種シート2〜5の終端部が揃った状態となり、次回他方の巻芯14に捲回されることとなる各種シート2〜5の始端部も揃った状態となる。
【0115】
セパレータシート2,3及び各保護テープ100の切断後、押えローラ17により各種シート2〜5を押えた状態のまま、一方の巻芯13を回転させる(
図24参照)。これにより、セパレータシート2,3及び電極シート4,5の巻残り部分がばらけることなく完全に巻取られ、電池素子1が完成する。尚、セパレータシート2,3等の切断位置は取外しポジションP2から過度に離間していないため、セパレータシート2,3等の巻残り部分は比較的短いものとなる。また、セパレータシート2,3等の切断位置は、捲回ポジションP1に近いため、次回他方の巻芯14に捲回されることとなる各種シート2〜5の始端側部分のうち他方の巻芯14の外周面から突出している部分(巻始め部分)は比較的短いものとなる。
【0116】
また、巻残り部分の巻取に伴い、切断時には揃っていた各種シート2〜5の終端部は周方向に若干ずれることとなる。そして、各種シート2〜5が正常に捲回されていれば、各種シート2〜5の終端部は、内周側に位置するシートほどその他のシートに対し周方向に沿って突出した状態となる。但し、巻残り部分は比較的短いため、各種シート2〜5が正常に捲回されていれば、巻取に伴い各種シート2〜5の終端部がずれたとしても、各種シート2〜5の終端部は、電池素子1の外周面における半周分(本実施形態では、1/4周分)の範囲内に収まった状態となる。
【0117】
次いで、第一カメラ19によって各種シート2〜5の終端部が撮像されるとともに、第二カメラ20によって各種シート2〜5の始端部が撮像される。そして、両カメラ19,20により得られた撮像画像に基づき、判定装置21によって電池素子1の良否が判定される。
【0118】
電池素子1の良否判定が終了すると、
図25に示すように、テープ貼付装置18によって、所定の固定用テープ110が各種シート2〜5の終端部に貼付され、各種シート2〜5が巻止めされる。尚、各種シート2〜5が正常に捲回されていれば、各種シート2〜5の終端部が少しずつずれた状態で電池素子1の外周面に表れるため、固定用テープ110の接着面は各種シート2〜5の終端部のそれぞれに対し接触した状態となる。
【0119】
完成した電池素子1は、上記取外装置により一方の巻芯13から取り外される。電池素子1が取外された後、巻芯13は、ターレット12に対して没入する。
【0120】
尚、上記セパレータシート2,3及び各保護テープ100の切断後には、上述した取外しポジションP2における各種シート2〜5の終端部の巻取作業を行うと同時に、捲回ポジションP1における各種シート2〜5の捲回を開始する。
【0121】
また、捲回開始に伴い、切断時には揃っていた各種シート2〜5の始端部は周方向に若干ずれることとなる。そのため、各種シート2〜5が正常な状態であれば、各種シート2〜5の始端部は、外周側に位置するシートほどその他のシートに対し周方向に沿って突出した状態となる。但し、各種シート2〜5の巻始め部分は比較的短いため、各種シート2〜5が正常な状態であれば、巻取に伴い各種シート2〜5の始端部がずれたとしても、各種シート2〜5の始端部は、電池素子1の内周面における半周分(本実施形態では、1/4周分)の範囲内に収まった状態となる。
【0122】
以降、上述した工程が繰り返し行われ、巻芯13,14に対し各種シート2〜5が交互に捲回されることにより、電池素子1が順次製造されていくこととなる。
【0123】
以上詳述したように、本実施形態によれば、正常な電池素子1であれば、各種シート2〜5の終端部はそれぞれ外周面に露出するとともに、外周面における半周分(本実施形態では、1/4周分)の範囲内に収まった状態となる。また、各種シート2〜5の始端部はそれぞれ内周面に露出するとともに、内周面における半周分(本実施形態では、1/4周分)の範囲内に収まった状態となる。従って、外部から各種シート2〜5の終端部及び終端部を容易に把握することができ、ひいては外部から電池素子1の良否を容易に判定することができる。
【0124】
尚、各種シート2〜5の終端部や始端部をより容易に把握可能とするという観点では、角度θ1,θ2が小さいほど、つまり、各種シート2〜5の終端部や始端部が局所的に存在している状態が好ましい。従って、角度θ1,θ2を45°未満とすることがより好ましく、角度θ1,θ2を30°未満とすることがより一層好ましい。
【0125】
また、各種シート2〜5の終端部が少しずつずれた状態となるため、固定用テープ110の接着面を各種シート2〜5に対しより確実に接触させることができる。その結果、電池素子1における巻止めをより確実に、かつ、より強固に行うことができる。
【0126】
さらに、リードテープ部4B,5Bによって、シート本体部4A,5Aの終端部及び始端部を保護することができる。そのため、シート本体部4A,5Aの切断に伴うバリやエッジがシート本体部4A,5Aの終端部や始端部に生じたとしても、これらバリ等が露出してしまうことを抑制できる。これにより、バリ等によってセパレータシート2,3が傷つけられてしまうといった事態をより確実に防止でき、電池素子1の品質向上を図ることができる。
【0127】
また、電極シート4,5の終端部をリードテープ部4B,5Bにより構成することで、シート本体部4A,5Aが電池素子1の外周面に露出してしまうことをより確実に防止できる。これにより、例えば、前記電池容器に電池素子1が収容されたとき等に、シート本体部4A,5Aに短絡が発生してしまうことなどをより確実に防止できる。
【0128】
加えて、各種シート2〜5の終端部や始端部は、それぞれ異なる色であるため、各種シート2〜5の終端部や始端部をより一層容易に把握することができる。その結果、電池素子1の良否判定をより一層容易に行うことができる。
【0129】
さらに、本実施形態では、一素子分のシート本体部5Aが一素子分のシート本体部4Aよりも長いため、電池素子1において、シート本体部4Aをシート本体部5Aでより確実に覆うことができる。これにより、シート本体部4Aがシート本体部5Aで覆われないことに伴う不具合(例えば、シート本体部4Aに針状の析出物が形成され、セパレータシート2,3に傷がついてしまうこと等)を効果的に抑制することができる。その結果、電池素子1の品質向上を一層図ることができる。
【0130】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0131】
(a)上記実施形態において、各種シート2〜5の終端部は、内周側に位置するシートほどその他のシートに対し周方向に沿って突出した状態となっているが、
図26及び
図27(
図27は、
図26における領域AR1の拡大図である)に示すように、各種シート2〜5の終端部が周方向に揃った状態となるように構成してもよい。
【0132】
また、
図26及び
図28(
図28は、
図26における領域AR2の拡大図である)に示すように、各種シート2〜5の始端部が周方向に揃った状態となるように構成してもよい。尚、
図26〜28は、各種シート2〜5の終端部や始端部を模式的に示したものであって、各種シート2〜5の終端面や始端面がそれぞれ面一となっている必要はない。
【0133】
各種シート2〜5の終端部や始端部が揃った状態となるように構成することで、上記実施形態と同様、電池素子1の良否判定の容易性を高めることができる。
【0134】
尚、各種シート2〜5の終端部等を周方向に揃った状態とすることは、例えば、各種シート2〜5の巻始め部分や巻残り部分の長さに合わせて、各種シート2〜5の切断位置をそれぞれ調節したり、シートカッタ16の移動軌跡を調節したりすること等により実現可能である。
【0135】
また、各種シート2〜5の終端部が周方向に揃うように構成した場合、第一カメラ19を、各種シート2〜5の始端面を撮像可能な位置に配置してもよい。
【0136】
(b)上記実施形態において、シート本体部4A,5Aは、保護テープ100のみにより接続されているが、
図29に示すように、保護テープ100及び絶縁素材からなる帯状の接続用テープ120により接続することとしてもよい。この場合には、1の電池素子1を構成するシート本体部4A,5A同士の長さにより大きな差を設けつつ、保護テープ100が重なってなる比較的厚肉の部分をより短いものすることができる。これにより、得られた電池素子1における外径を比較的小さなものとすることができ、電池素子1の小型化を図ることができる。また、重ねられた保護テープ100同士の間において気泡を生じにくくすることができ、電池素子1の品質低下を効果的に抑制することができる。さらに、シート本体部5Aをシート本体部4Aよりも十分に長くすることができ、電池素子1において、シート本体部4Aをシート本体部5Aでより確実に覆うことができる。これにより、電池素子1の品質向上をより一層図ることができる。
【0137】
尚、接続用テープ120を設けた場合、セパレータシート2,3等の切断時には、シートカッタ16により、保護テープ100及び接続用テープ120の少なくとも一方が切断されることとなる。そして、電極シート4,5の終端部や始端部を構成するリードテープ部4B,5Bは、保護テープ100及び接続用テープ120の少なくとも一方によって構成されることとなる。
【0138】
(c)上記実施形態では、各種シート2〜5の終端部や始端部がそれぞれ異なる色を有するように構成されているが、隣り合うシート同士の間において終端部や始端部の色が異なるように構成してもよい。例えば、セパレータシート2,3の色、及び、リードテープ部4B,5Bの色をそれぞれ同一としつつ、セパレータシート2,3の色とリードテープ部4B,5Bの色とが異なるように構成してもよい。この場合においても、各種シート2〜5の終端部や始端部をより容易に把握することができ、電池素子1の良否判定をより容易に行うことができる。
【0139】
勿論、必ずしも各種シート2〜5の終端部や始端部の色を異ならせる必要はなく、各種シート2〜5の始端部や終端部の色を同一としてもよい。
【0140】
(d)上記実施形態では、各種シート2〜5の終端部の撮像を行うべく、第一カメラ19が設けられているが、第二カメラ20により各種シート2〜5の終端部の撮像を行うこととしてもよい。この場合、第一カメラ19を設けないこととしてもよい。第一カメラ19を設けず、1台のカメラ20により各種シート2〜5の終端部及び始端部をそれぞれ撮像するように構成することで、良否判定に係る装置の簡素化を図ることができ、装置の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0141】
(e)上記実施形態では、電池素子1の最外周にセパレータシート2が配置されるように構成されているが、電池素子1の最外周に両電極シート4,5の一方が配置されるように構成してもよい。つまり、各種シート2〜5の積層状態は、両電極シート4,5がセパレータシート2,3によって絶縁状態となっている限り、適宜変更可能である。
【0142】
(f)上記実施形態では、2枚のセパレータシート2,3が用いられているが、これらに代えて、中央部分を2つに折り曲げた1枚のセパレータシートを用いてもよい。
【0143】
(g)上記実施形態では、捲回装置10によって、リチウムイオン電池の電池素子1が製造されているが、捲回装置10によって製造される捲回素子はこれに限定されるものではなく、例えば、電解コンデンサの捲回素子等を製造することとしてもよい。
【0144】
(h)上記実施形態では、巻芯13,14として、各種シート2〜5の捲回される外周形状が円形状に構成された巻芯を採用しているが、巻芯13,14の形状はこれに限定されるものではなく、例えば外周形状が長方形状(扁平状)、楕円形状、長円形状等となる巻芯を採用してもよい。
【0145】
(i)セパレータシート2,3やシート本体部4A,5A、リードテープ部4B,5Bの材質は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、セパレータシート2,3をPPにより形成することとしているが、他の絶縁性材料によってセパレータシート2,3を形成することとしてもよい。また、例えば、シート本体部4A,5Aに塗布される活物質を適宜変更してもよい。さらに、リードテープ部4B,5Bを非導電性の金属により形成してもよい。
【0146】
(j)上記実施形態では、巻芯13(14)の外周に対し各種シート2〜5が直接捲回されるように構成されているが、巻芯13(14)の外周に筒状の巻芯コア(図示せず)を配置し、当該巻芯コアに対し各種シート2〜5が捲回されるように構成してもよい。
【0147】
(k)上記実施形態において、捲回部11は、2つの巻芯13,14を備えた構成となっているが、巻芯の数はこれに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上の巻芯を備えた構成としてもよい。尚、巻芯を1つのみ設ける場合には、ターレット12を設ける必要はない。
【0148】
(l)上記実施形態では、シートカッタ16により巻芯13,14の外側にて各種シート2〜5を切断する構成となっているが、例えば巻芯にカッタを設けることで、スリット13S,14S内にて各種シート2〜5を切断する構成としてもよい。この場合には、各種シート2〜5の始端部をより確実に揃った状態とすることができ、各種シート2〜5の始端部を容易に把握することが可能となる。
【0149】
(m)上記実施形態では、巻芯13,14に設けられたエンコーダの計測値に基づき、巻芯13,14間の所定位置に保護テープ100を位置決めする構成となっているが、これに限らず、例えば巻芯13,14にセンサを設け、その検出結果を基に保護テープ100の位置決めを行う構成としてもよい。