特許第6654862号(P6654862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654862
(24)【登録日】2020年2月4日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】車両の制御装置及び車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20200217BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20200217BHJP
   B60W 10/11 20120101ALI20200217BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20200217BHJP
   F16H 61/662 20060101ALI20200217BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   F16H61/02
   B60W10/00 108
   B60W10/11
   F02D29/00 C
   F16H61/662
   F16H63/50
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-220259(P2015-220259)
(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2017-89745(P2017-89745A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164356
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】西廣 義祐
(72)【発明者】
【氏名】中崎 勝啓
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】大塩 伸太郎
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−190550(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/111431(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/041044(WO,A1)
【文献】 特開2015−10710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02
F16H 61/662
F16H 63/50
B60W 10/04
B60W 10/11
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源に接続され、前進用締結要素を有する自動変速機と、
前記自動変速機への供給油圧の油圧源であって前記駆動源の動力で駆動する油圧源と、
を有する車両の制御装置であって、
走行中駆動源停止条件が成立すると、前記駆動源を停止するとともに、前記自動変速機をニュートラル状態にする走行中駆動源停止制御を実行する第1制御部と、
走行中駆動源停止解除条件が成立すると、前記前進用締結要素への供給油圧の指示圧を前記走行中駆動源停止制御中よりも上昇させた状態で前記駆動源の始動を行う走行中駆動源停止解除制御を実行する第2制御部と、
前記走行中駆動源停止制御中に前記駆動源の逆回転を検知すると、前記自動変速機への供給油圧の元圧を構成するライン圧の指示圧を前記駆動源の逆回転を検知していない場合の指示圧よりも高い第1所定値以上に保持する第3制御部と、
を有することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置であって、
前記第3制御部はさらに、前記ライン圧の実圧が前記ライン圧の指示圧に追従し始めると、前記ライン圧の指示圧を低下させる、
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の制御装置であって、
前記自動変速機は、バリエータを有し、
前記第3制御部は、前記ライン圧の指示圧を前記第1所定値以上に上昇させるとともに、前記バリエータに供給する油圧の指示圧を上昇させる、
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
駆動源と、前記駆動源に接続され前進用締結要素を有する自動変速機と、前記自動変速機への供給油圧の油圧源であって前記駆動源の動力で駆動する油圧源と、を有する車両の制御方法であって、
走行中駆動源停止条件が成立すると、前記駆動源を停止するとともに、前記自動変速機をニュートラル状態にする走行中駆動源停止制御を実行することと、
走行中駆動源停止解除条件が成立すると、前記前進用締結要素への供給油圧の指示圧を前記走行中駆動源停止制御中よりも上昇させた状態で前記駆動源の始動を行う走行中駆動源停止解除制御を実行することと、
前記走行中駆動源停止制御中に前記駆動源の逆回転を検知すると、前記自動変速機への供給油圧の元圧を構成するライン圧の指示圧を前記駆動源の逆回転を検知していない場合の指示圧よりも高い第1所定値以上に保持することと、
を含むことを特徴とする車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置及び車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セーリングストップ条件が成立すると、駆動源を停止すると共に自動変速機をニュートラル状態にするセーリングストップ制御に対応する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−213557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セーリングストップ制御によって駆動源が停止する際、駆動源が逆回転することがある。駆動源の逆回転は、例えばエンジンを駆動源とする場合、燃焼室内の圧縮空気やピストン自重等によってピストンが押し戻されることで発生する。駆動源が逆回転すると、駆動源の動力で駆動するオイルポンプも逆回転するので、油圧制御回路内の油が吸い出されてしまう。そして、このような状態を含め、油が吸い出された影響が残るうちにセーリングストップ解除条件の成立に応じてエンジンを始動し、オイルポンプが作動すると、油圧制御回路内に油が急に流れ込むことになる。
【0005】
このためこの場合には、油圧制御回路で調整されるライン圧の実圧が、ライン圧の指示圧を上回るオーバーシュートが発生する虞がある。そして、ライン圧のオーバーシュートが発生すると、油圧制御回路が制御不調に陥り、前進用締結要素への供給油圧もオーバーシュートする虞がある。結果、前進用締結要素が急締結して締結ショックが発生する虞がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、セーリングストップ制御を含む走行中駆動源停止制御中に発生する駆動源の逆回転に起因して、前進用締結要素が急締結することを防止可能な車両の制御装置及び車両の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の車両の制御装置は、駆動源と、前記駆動源に接続され、前進用締結要素を有する自動変速機と、前記自動変速機への供給油圧の油圧源であって前記駆動源の動力で駆動する油圧源と、を有する車両の制御装置であって、走行中駆動源停止条件が成立すると、前記駆動源を停止するとともに、前記自動変速機をニュートラル状態にする走行中駆動源停止制御を実行する第1制御部と、走行中駆動源停止解除条件が成立すると、前記前進用締結要素への供給油圧の指示圧を前記走行中駆動源停止制御中よりも上昇させた状態で前記駆動源の始動を行う走行中駆動源停止解除制御を実行する第2制御部と、前記走行中駆動源停止制御中に前記駆動源の逆回転を検知すると、前記自動変速機への供給油圧の元圧を構成するライン圧の指示圧を前記駆動源の逆回転を検知していない場合の指示圧よりも高い第1所定値以上に保持する第3制御部と、を有する。
【0008】
本発明の別の態様によれば、駆動源と、前記駆動源に接続され前進用締結要素を有する自動変速機と、前記自動変速機への供給油圧の油圧源であって前記駆動源の動力で駆動する油圧源と、を有する車両の制御方法であって、走行中駆動源停止条件が成立すると、前記駆動源を停止するとともに、前記自動変速機をニュートラル状態にする走行中駆動源停止制御を実行することと、走行中駆動源停止解除条件が成立すると、前記前進用締結要素への供給油圧の指示圧を前記走行中駆動源停止制御中よりも上昇させた状態で前記駆動源の始動を行う走行中駆動源停止解除制御を実行することと、前記走行中駆動源停止制御中に前記駆動源の逆回転を検知すると、前記自動変速機への供給油圧の元圧を構成するライン圧の指示圧を前記駆動源の逆回転を検知していない場合の指示圧よりも高い第1所定値以上に保持することと、を含む車両の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
これらの態様によれば、走行中駆動源停止制御中に駆動源の逆回転を検知すると、ライン圧の指示圧を第1所定値以上に保持するので、ライン圧油路を介して供給される油量の受け入れ量を大きくすることができる。このため、ライン圧の変化がオーバーシュートにならないようにすることができ、オーバーシュート相当のライン圧変化で供給される分の油量をライン圧制御弁の下流でライン圧油路に接続する系に逃がすことで、オーバーシュート相当のライン圧の変化を許容することができる。
【0010】
このため、これらの態様によれば、ライン圧のオーバーシュートによる油圧制御回路の制御不調が生じないようにすることができ、この結果、前進用締結要素への供給油圧もオーバーシュートしないようにすることができる。したがって、セーリングストップ制御を含む走行中駆動源停止制御中に発生する駆動源の逆回転に起因して、前進用締結要素が急締結することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の車両の概略構成図である。
図2】ライン圧制御弁の一例を示す図である。
図3】本実施形態の制御の一例をフローチャートで示す図である。
図4】本実施形態の制御に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
クラッチの状態に関し、本明細書では、解放、待機、スリップ、締結の語を次の意味で適宜用いる。解放とは、クラッチへの油圧供給がなく、クラッチがトルク容量を持たない状態を指す。待機とは、クラッチへの油圧供給はあるが、クラッチがトルク容量を持たない状態を指す。スリップとは、クラッチへの油圧供給があり、クラッチがトルク容量を持つが、クラッチに入出力回転差がある状態を指す。締結とは、クラッチへの油圧供給があり、クラッチがトルク容量を持つが、クラッチに入出力回転差がない状態を指す。
【0014】
クラッチがトルク容量を持たない状態とは、換言すればクラッチが動力を伝達しない状態であり、クラッチがトルク容量を持つ状態とは、換言すればクラッチが動力を伝達する状態である。スリップとは、換言すればクラッチが持つトルク容量が入力トルクよりも小さい状態であり、締結とは、換言すればクラッチが持つトルク容量が入力トルクよりも大きい完全締結の状態を指す。
【0015】
図1は、本実施形態の車両の概略構成図である。車両は、エンジン1と、トルクコンバータ2と、前後進切替機構3と、無段変速機4と、油圧制御回路5と、メインオイルポンプ6と、サブオイルポンプ7と、エンジンコントローラ10と、変速機コントローラ11とを備える。車両においては、駆動源であるエンジン1で発生した回転が、トルクコンバータ2、前後進切替機構3、無段変速機4、歯車組8、ディファレンシャルギヤ装置9を経て図示しない車輪に伝達される。
【0016】
トルクコンバータ2は、ロックアップクラッチ2aを有しており、ロックアップクラッチ2aが締結されると、トルクコンバータ2の入力軸と出力軸とが直結し、入力軸と出力軸とが同速回転する。以下では、ロックアップクラッチ2aをLUクラッチ2aと称す。
【0017】
前後進切替機構3は、ダブルピニオン遊星歯車組を主たる構成要素とし、そのサンギヤをトルクコンバータ2を介してエンジン1に結合し、キャリアをプライマリプーリ4aに結合する。前後進切替機構3は更に、ダブルピニオン遊星歯車組のサンギヤおよびキャリア間を直結する前進クラッチ3a、およびリングギヤを固定する後進ブレーキ3bを備える。
【0018】
前後進切替機構3は、前進クラッチ3aの締結時にエンジン1からトルクコンバータ2を経由した入力回転をそのままプライマリプーリ4aに伝達する。また、前後進切替機構3は、後進ブレーキ3bの締結時にエンジン1からトルクコンバータ2を経由した入力回転を逆転減速下にプライマリプーリ4aへ伝達する。前進クラッチ3aは、エンジン1及び駆動輪の一方から他方への動力の伝達を断続する前進用締結要素を構成する。
【0019】
無段変速機4は、プライマリプーリ4aと、セカンダリプーリ4bと、ベルト4cとを備える。無段変速機4では、プライマリプーリ4aに供給される油圧と、セカンダリプーリ4bに供給される油圧とが制御されることで、各プーリ4a、4bとベルト4cとの接触半径が変更され、変速比が変更される。
【0020】
無段変速機4は、バリエータであり、トルクコンバータ2及び前後進切替機構3とともに、エンジン1に接続される自動変速機15を構成する。自動変速機15は、他の構成を介してエンジン1に間接的に接続されてもよい。前後進切替機構3は例えば、無段変速機4及び歯車組8間に設けられてもよい。
【0021】
油圧制御回路5は、複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路5は、変速機コントローラ11からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともにメインオイルポンプ6から吐出された油によって発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを無段変速機4、前後進切替機構3、トルクコンバータ2の各部位に供給する。
【0022】
変速制御信号は、LUクラッチ2aへの供給油圧の指示圧や、前進クラッチ3aへの供給油圧であるクラッチ圧の指示圧や、自動変速機15への供給油圧の元圧を構成するライン圧の指示圧や、プライマリプーリ圧Ppriの指示圧や、セカンダリプーリ圧Psecの指示圧を含む。以下では、クラッチ圧の実圧をクラッチ実圧Pcと称し、クラッチ圧の指示圧をクラッチ指示圧Pciと称す。また、ライン圧の実圧をライン実圧PLと称し、ライン圧の指示圧をライン指示圧PLiと称す。
【0023】
メインオイルポンプ6は、エンジン1の回転が入力されエンジン1の動力の一部を利用して駆動される第1油圧源を構成する。メインオイルポンプ6の駆動により、メインオイルポンプ6から吐出された油は、油圧制御回路5に供給される。このため、メインオイルポンプ6は、自動変速機15への供給油圧の油圧源を構成する。エンジン1が停止している場合、メインオイルポンプ6は駆動されず、油は吐出されない。
【0024】
サブオイルポンプ7は、電動オイルポンプであり、エンジン1が停止している場合でも、作動可能な第2油圧源を構成する。サブオイルポンプ7の容量は、メインオイルポンプ6の容量よりも小さく設定される。サブオイルポンプ7から吐出された油も、メインオイルポンプ6と同様、油圧制御回路5に供給される。このため、自動変速機15は、メインオイルポンプ6及びサブオイルポンプ7のうち少なくともいずれかからの供給油圧に基づき制御される。
【0025】
変速機コントローラ11は、CPU、ROM、RAMなどから構成される。変速機コントローラ11では、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで、変速機コントローラ11の機能が発揮される。
【0026】
変速機コントローラ11には、エンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ20からの信号、プライマリプーリ圧Ppriを検出するプライマリプーリ圧センサ21からの信号、セカンダリプーリ圧Psecを検出するセカンダリプーリ圧センサ22からの信号、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ23からの信号、ブレーキペダルの踏み込み量BRPに基づくブレーキ踏力を検出するブレーキセンサ24からの信号、エンジン1の制御を司るエンジンコントローラ10からのエンジントルクTeに関した信号などが入力される。
【0027】
変速機コントローラ11にはこのほか、変速レバーの操作位置を検出するインヒビタスイッチ25からの信号や、PRIプーリ4aの回転速度Npriを検出するPRI回転速度センサ26からの信号や、SECプーリ4bの回転速度Nsecを検出するSEC回転速度センサ27からの信号などが入力される。変速機コントローラ11は、SEC回転速度センサ27からの信号に基づき、車速Vspを検出することができる。
【0028】
変速機コントローラ11は、エンジンコントローラ10とともにコントローラ12を構成する。コントローラ12は、エンジン1及び自動変速機15を制御する制御モジュールとして構成される。
【0029】
図2は、ライン圧制御弁51の一例を示す図である。図2では、メインオイルポンプ6や、後述するクラッチ系30及び変速系40についても併せて示す。油圧制御回路5は、図2に示すライン圧制御弁51を備える。ライン圧制御弁51は、本体52と、スプール53と、スプリング54と、を備える。ライン圧制御弁51は、ポート55からポート58を有する。ライン圧制御弁51は、ライン圧油路59に設けられる。
【0030】
本体52は、スプール53及びスプリング54を収容する。スプリング54は、スプール53をポート57側に付勢する。ポート55からポート58は、本体52の内外を連通する。ポート55は入口ポートであり、ライン圧油路59に接続される。ポート56は出口ポートであり、循環系等に接続される。ポート57はフィードバックポートであり、ポート57にはライン実圧PLがフィードバック圧としてオリフィス等を介して入力される。ポート58はパイロットポートであり、ポート58には図示しないソレノイド弁によってライン指示圧PLiに応じた制御圧Psが入力される。
【0031】
ライン圧制御弁51では、スプール53に作用する力、具体的にはフィードバック圧に応じた作用力、スプリング54の付勢力及び制御圧Psに応じた作用力がバランスする位置に移動することで、ライン実圧PLがライン指示圧PLiになるように制御される。
【0032】
メインオイルポンプ6は、ライン圧制御弁51が設けられたライン圧油路59を介してクラッチ系30や変速系40に油を供給する。なお、図示省略しているが、サブオイルポンプ7は、ライン圧油路59に対し、チェック弁等を介してメインオイルポンプ6と並列に接続される。
【0033】
クラッチ系30は、前後進切替機構3のほかクラッチ圧を制御するクラッチ圧制御弁を含む。変速系40は、無段変速機4のほかプライマリプーリ圧Ppriを制御するプライマリプーリ圧制御弁や、セカンダリプーリ圧Psecを制御するセカンダリプーリ圧制御弁を含む。これらの各制御弁には、ライン圧制御弁51と同様、フィードバックポート等を有する制御弁を適用することができる。クラッチ系30は、変速系40とともにライン圧制御弁51の下流に設けられる。
【0034】
ところで、車両では、セーリングストップ制御が行われる。以下では、セーリングストップを単にSSと称す。SS制御は、SS条件が成立すると、エンジン1を停止するとともに、自動変速機15をニュートラル状態にする。SS制御では、エンジン1の停止及び惰性走行距離の延長によって、エンジン1の燃費を向上させることができる。
【0035】
SS条件は、車速Vspが設定車速よりも高いこと、アクセルペダルの踏み込みがないこと、ブレーキペダルの踏み込みがないこと、及び自動変速機15で前進レンジが選択されていること、を含む。当該設定車速は、低速と中高速とを区分するように設定される。当該設定車速は、実験等により予め設定することができる。
【0036】
SS制御によってエンジン1が停止する際、エンジン1が逆回転することがある。エンジン1の逆回転は例えば、燃焼室内の圧縮空気やピストン自重等によってピストンが押し戻されることで発生する。エンジン1が逆回転すると、エンジン1の動力で駆動するメインオイルポンプ6も逆回転するので、油圧制御回路5内の油が吸い出されてしまう。
【0037】
このような状態を含め、油が吸い出された影響が残るうちにSS解除条件の成立に応じてエンジン1を始動し、メインオイルポンプ6が作動すると、油圧制御回路5内に油が急に流れ込むことになる。結果、ライン実圧PLがライン指示圧PLiを上回るライン圧の
オーバーシュートが発生する可能性がある。
【0038】
ライン圧のオーバーシュートは具体的には、次のようにして発生する。すなわち、エンジン1が始動すると、回転速度Neの上昇に応じてメインオイルポンプ6の吐出量が増加し、スプール53がポート58側へ移動する。そして、ポート58側の油が圧縮され制御圧Psが上昇すると、ライン実圧PLを上昇させるようにライン指示圧PLiが設定され
たのと同様になるので、ライン実圧PLがさらに上昇することになる。そして、このような作用によって、スプール53に作用する力がバランスするまでの間に、ライン圧のオーバーシュートが発生することになる。
【0039】
ライン圧のオーバーシュートが発生すると、油圧制御回路5が制御不調に陥り、クラッチ実圧Pcがクラッチ指示圧Pciを上回るクラッチ圧のオーバーシュートも発生し得る
。そして、クラッチ圧のオーバーシュートが発生すると、前進クラッチ3aが急締結して締結ショックが発生し得る。
【0040】
このため、本実施形態ではコントローラ12が次に説明するように制御を行う。
【0041】
図3は、コントローラ12が行う制御の一例をフローチャートで示す図である。コントローラ12は、本フローチャートの処理を例えば微小時間毎に繰り返し実行する。
【0042】
ステップS1で、コントローラ12は、SS条件が成立したか否かを判定する。ステップS1で否定判定であれば、本フローチャートの処理は一旦終了する。ステップS1で肯定判定であれば、処理はステップS2に進む。
【0043】
ステップS2で、コントローラ12は、SS準備制御を実行する。SS準備制御は例えば、ライン圧を低下させることや、LUクラッチ2aへの供給油圧を低下させることや、無段変速機4の変速比を最小変速比などの目標変速比に変更することや、サブオイルポンプ7の作動準備を行うことを含む。
【0044】
ステップS3で、コントローラ12はSS制御を実行する。このため、ステップS3では、エンジン1が停止されるとともに自動変速機15がニュートラル状態とされる。自動変速機15は具体的には、前後進切替機構3の前進クラッチ3aを解放することでニュートラル状態とされる。ステップS3ではさらに、LUクラッチ2aの解放やサブオイルポンプ7の駆動も開始される。SS制御はSS準備制御をさらに含む制御とされてもよい。
【0045】
ステップS4で、コントローラ12は回転速度Neがゼロよりも低いか否かを判定する。ステップS4で、エンジン1が逆回転しているか否かが判定される。コントローラ12は、判定に余裕を持たせるために例えば、回転速度Neがゼロより大きい所定回転速度よりも低いか否かを判定してもよい。ステップS4で否定判定であれば、処理はステップS17に進む。
【0046】
ステップS17で、コントローラ12は、SS解除条件が成立したか否かを判定する。SS解除条件は例えば、SS条件が不成立になったこと、とすることができる。SS解除条件には、その他の条件が適用されてもよい。ステップS17で否定判定であれば、処理はステップS4に戻る。ステップS17で肯定判定であれば、処理はステップS18に進む。ステップS18で、コントローラ12は、通常のSS解除制御を実行する。ステップS18の後には、本フローチャートの処理は一旦終了する。
【0047】
ステップS4で肯定判定であれば、エンジン1の逆回転が検知されたことになる。この場合、処理はステップS5に進む。
【0048】
ステップS5で、コントローラ12は、ライン指示圧PLiを第1所定値αに設定する。第1所定値αは、エンジン1の逆回転に起因して発生するライン圧のオーバーシュート相当の油圧変化を許容することができる値の最小値とされる。第1所定値αは、エンジン1の逆回転に起因してライン圧のオーバーシュートが発生しても、前進クラッチ3aがトルク容量を持たない値に設定されてもよい。第1所定値αは、実験等により予め設定することができる。
【0049】
ステップS5で、コントローラ12は具体的には、ライン指示圧PLiを第1所定値αに設定することで、ライン指示圧PLiを第1所定値αまで上昇させ、第1所定値αに保持する。ライン指示圧PLiはさらに具体的には、SS制御中に必要とされる油圧の指示
値から第1所定値αまで上昇される。ライン指示圧PLiは、第1所定値α以上に設定されてよい。
【0050】
ステップS5で、コントローラ12はさらに、無段変速機4への供給油圧の指示圧を上昇させる。ステップS5で、コントローラ12は、プライマリプーリ圧Ppriの指示圧及びセカンダリプーリ圧Psecの指示圧のうち少なくともいずれかを上昇させることができる。
【0051】
ステップS6で、コントローラ12は、SS解除条件が成立したか否かを判定する。ステップS6で肯定判定であれば、処理はステップS7に進む。
【0052】
ステップS7で、コントローラ12は、クラッチ指示圧Pciを上昇させる。クラッチ指示圧Pciは具体的には、前進クラッチ3aを待機させる待機圧に設定される。
【0053】
ステップS8で、コントローラ12は、エンジン1を始動させる。また、ステップS9で、コントローラ12は、エンジン1の始動が完了したか否かを判定する。エンジン1が始動したか否かは公知技術のほか適宜の技術で判定されてよい。ステップS9で否定判定であれば、エンジン1の始動が完了するまでの間、ステップS9の処理が繰り返し実行される。ステップS9で肯定判定であれば、処理はステップS10に進む。
【0054】
ステップS10で、コントローラ12は、前進クラッチ3aの同期制御を行う。同期制御は具体的には、前進クラッチ3aの入力側回転速度InREVを前進クラッチ3aの出力側回転速度OutREVに合わせるようにエンジン1を制御することで行われる。ステップS10では、LUクラッチ2aへの供給油圧の増加も行われ、LUクラッチ2aが待機状態やスリップ状態とされる。
【0055】
ステップS11で、コントローラ12は、ライン実圧PLがライン指示圧PLiに追従し始めたか否かを判定する。判定の具体的な条件については後述する。ステップS11で肯定判定であれば、処理はステップS12に進む。
【0056】
ステップS12で、コントローラ12は、ライン指示圧PLiを低下させる。具体的にはコントローラ12は、ステップS5で行ったライン指示圧PLiの設定を解除することで、ライン指示圧PLiを低下させる。これにより、ライン指示圧PLiは第1所定値αに保持されなくなる。
【0057】
ステップS12で、コントローラ12はさらに具体的には、ライン指示圧PLiを自動変速機15の変速比や車速Vspやアクセル開度APOに応じた指示圧に設定することで、ライン指示圧PLiを低下させることができる。ステップS12の後には、処理はステップS13に進む。ステップS11で否定判定の場合も、処理はステップS13に進む。
【0058】
ステップS13で、コントローラ12は、前進クラッチ3aにおける回転同期が完了したか否かを判定する。同期が完了したか否かは、前進クラッチ3aにおける入出力回転差の絶対値が所定回転差よりも小さいか否かを判定することで判定できる。所定回転差は、同期が完了したか否かを判定するための判定値であり、実験等により予め設定することができる。ステップS13で否定判定であれば、処理はステップS10に戻る。ステップS13で肯定判定であれば、処理はステップS14に進む。
【0059】
ステップS14で、コントローラ12は、前進クラッチ3aを締結させる。これにより、エンジン1から駆動輪に動力を伝達することができる。ステップS14の後には、本フローチャートを一旦終了する。
【0060】
ステップS6で否定判定であった場合、処理はステップS15に進む。ステップS15で、コントローラ12は、エンジン1の逆回転が終了したか否かを判定する。エンジン1の逆回転が終了したか否かは、回転速度Neに基づき判定することができる。ステップS15で否定判定であれば、処理はステップS6に戻る。ステップS15で肯定判定であれば、処理はステップS16に進む。
【0061】
ステップS16で、コントローラ12は、ライン指示圧PLiを第1所定値αに保持する前の指示圧に戻す。当該指示圧は具体的には、SS準備制御で設定された指示圧である。これにより、エンジン1の逆回転中にSS解除条件が成立せずに逆回転が終了した場合に、ライン指示圧PLiを素早く低下させることができる。
【0062】
ステップS16で、コントローラ12は、サブオイルポンプ7を油圧源としたライン実圧PLが、サブオイルポンプ7の吐出圧に達したときに、ライン指示圧PLiを第1所定値αに保持する前の指示圧に戻すようにしてもよい。ステップS16の後には、処理はステップS4に戻る。
【0063】
コントローラ12は、車両の制御装置であり、ステップS3の処理を行うことで第1制御部として機能する。また、コントローラ12は、ステップS7やステップS8の処理を行うことで第2制御部として機能する。さらに、コントローラ12は、ステップS5やステップS12の処理を行うことで第3制御部として機能する。
【0064】
コントローラ12は、第1制御部や第2制御部や第3制御部として機能することで、第1制御部や第2制御部や第3制御部を有する。車両の制御装置は、さらに油圧制御回路5やエンジン回転速度センサ20等の上述した各種センサ・スイッチ類を有して構成されていると把握されてもよい。
【0065】
次に、コントローラ12の主な作用効果について説明する。
【0066】
図4は、コントローラ12が行う制御に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。図4では、SS条件成立後の各種パラメータの変化を示す。図4では、比較例の場合についても破線で併せて示す。
【0067】
タイミングT1前は、SS準備制御の段階であり、ライン指示圧PLiの低下が行われる。結果、これに応じてライン実圧PLも低下する。ライン指示圧PLiは、SS制御中に必要とされる油圧の指示値まで低下される。SS準備制御の段階では、無段変速機4の実変速比は目標変速比に変更される。目標変速比は例えば、最小変速比である。
【0068】
SS準備制御の段階では、前進クラッチ3aは締結されており、エンジン1も運転中である。このため、車両加速度Gの低下度合いは大きくなっている。SS準備制御の段階では、サブオイルポンプ7は停止されている。
【0069】
タイミングT1では、SS準備制御が完了し、SS制御が開始される。このため、エンジン1が停止され、回転速度Neが低下し始める。また、回転速度Neの低下に応じて、前進クラッチ3aの入力側回転速度InREVも低下し始める。
【0070】
タイミングT1では、クラッチ指示圧Pciを低下させることで、前進クラッチ3aの解放も行われる。このため、車両加速度Gの低下度合いは大幅に減少する。タイミングT1からは、サブオイルポンプ7の駆動も開始される。サブオイルポンプ7によって、SS制御中に無段変速機4の実変速比を目標変速比に維持するために必要な油量、及び前進クラッチ3aを待機状態にするのに必要な油量が確保される。SS制御中に必要とされる油圧の指示値は具体的には、少なくともこれらの油量が確保される値とされる。
【0071】
タイミングT1後でも、回転速度Neが高いうちは、ライン実圧PLはライン指示圧PLiに、クラッチ実圧Pcはクラッチ指示圧Pciにそれぞれ制御される。但し、回転速度Neがある程度低下すると、ライン実圧PLをライン指示圧PLiに制御することができなくなり、ライン実圧PLが低下し始める。
【0072】
タイミングT2では、回転速度Neがゼロ付近まで低下し、これに応じてライン指示圧PLiが第1所定値αに設定される。結果、ライン指示圧PLiが上昇する。ライン指示圧PLiは例えば、タイミングT1及びタイミングT2間でライン実圧PLが低下し始めたときに第1所定値αに設定されてもよく、SS制御が開始されるタイミングT1で第1所定値αに設定されてもよい。この例では、回転速度Neは、タイミングT2後も低下し続け、ゼロよりも小さくなる。結果、エンジン1が逆回転する。
【0073】
エンジン1が逆回転すると、油圧制御回路5からの油の吸出しが発生する。このため、ライン実圧PLはさらに低下する。また、このように油の吸出しによってライン実圧PLが低下すると、クラッチ実圧Pcもクラッチ指示圧Pciに制御することができなくなり、クラッチ実圧Pcが低下する。回転速度Neは、ゼロに収束しようとする。このため、回転速度Neの変化は後に下降から上昇に転じ、これに応じて油が再充填される結果、ライン実圧PLやクラッチ実圧Pcも上昇する。
【0074】
タイミングT3では、SS解除条件が成立し、これに応じてクラッチ指示圧Pciが上昇される。結果、前進クラッチ3aは待機状態とされる。タイミングT3では、エンジン1は逆回転している。タイミングT4では、クラッチ指示圧PciをSS制御中よりも上昇させた状態で、エンジン1が始動される。このため、タイミングT4からは、エンジン1の始動に応じて、回転速度Neが変化する。
【0075】
タイミングT5では、クランキングを経てエンジン1の始動が完了する。また、サブオイルポンプ7が停止される。タイミングT5からは、前進クラッチ3aにおける回転同期を図るための同期制御が行われる。このため、タイミングT5からは、回転速度Neはさらに上昇し、これに応じて前進クラッチ3aの入力側回転速度InREVも上昇する。
【0076】
タイミングT5では、回転速度Neは未だライン実圧PLをライン指示圧PLiに制御
するのに十分な程度に高まっていない。その一方で、エンジン1の始動に応じて一時的に急上昇したライン実圧PLは、エンジン1始動完了後には安定しようとする。このため、エンジン1の始動に応じて一時的に急上昇したライン実圧PLは、タイミングT5後に低下する。そして、タイミングT5´でライン実圧PLとライン指示圧PLiとの差の絶対値が第2所定値βよりも小さくなると、ライン実圧PLがライン指示圧PLiに追従し始める。このため、ライン指示圧PLiが低下され、第1設定値αへのライン指示圧PLi
の保持が解除される。
【0077】
タイミングT6では、前進クラッチ3aの入力側回転速度InREVと前進クラッチ3aの出力側回転速度OutREVとの差が僅かになり、前進クラッチ3aにおける回転同期が完了する。このため、ライン指示圧PLi及びクラッチ指示圧Pciが高められ、前進クラッチ3aが締結される。また、目標変速比が最小変速比よりも大きく設定され、これに応じて実変速比が変化し始める。タイミングT6からは、エンジン1によって車両が駆動されるので、車両加速度Gが高まる。
【0078】
ライン指示圧PLiの保持を解除するタイミングは、タイミングT5後、したがってエ
ンジン1の始動完了後であればよく、例えばタイミングT6後、すなわち前進クラッチ3aにおける同期完了後であってもよい。
【0079】
ところでこの例では、エンジン1が逆回転中のタイミングT3でSS解除条件が成立し、エンジン1の逆回転によって吸い出された油が油圧制御回路5内に再充填された直後のタイミングT4でエンジン1が始動される。このため、油が吸い出された影響が残るうちにメインオイルポンプ6が作動し、油圧制御回路5内に油が急に流れ込む。
【0080】
このような状況において、比較例の場合には、SS制御中にライン指示圧PLi´を上昇させずに、且つSS解除条件が成立するタイミングT3でエンジン1を始動する。このため、タイミングT4´でライン実圧PL´がライン指示圧PLi´を上回るライン圧のオーバーシュートが発生する。
【0081】
そして、ライン圧のオーバーシュートによって油圧制御回路5が制御不調に陥り、クラッチ実圧Pc´がクラッチ指示圧Pciを上回るクラッチ圧のオーバーシュートも発生す
る。結果、タイミングT4´からタイミングT5付近にかけての出力側回転速度OutREV´の変化からわかるように、前進クラッチ3aが急締結する。このため、車両加速度GがタイミングT4´付近から破線で示すように減少することからわかるように、締結ショックが発生する。
【0082】
このような事情に鑑み、エンジン1と、自動変速機15と、メインオイルポンプ6と、を有する車両の制御装置であるコントローラ12は、SS条件が成立すると、タイミングT1に示すように、エンジン1を停止するとともに、自動変速機15をニュートラル状態にするSS制御を実行する。また、コントローラ12は、タイミングT3及びタイミングT4に示すように、SS解除条件が成立すると、クラッチ指示圧PciをSS制御中よりも上昇させた状態で、エンジン1の始動を行うSS解除制御を実行する。また、コントローラ12は、タイミングT2に示すように、SS制御中にエンジン1の逆回転を検知すると、ライン指示圧PLiを第1所定値αに保持する。
【0083】
このような構成のコントローラ12によれば、SS制御中にエンジン1の逆回転を検知すると、ライン指示圧PLiを第1所定値αに保持するので、ライン圧油路59を介して供給される油量の受け入れ量を大きくすることができる。このため、ライン圧の変化がオーバーシュートにならないようにすることができ、オーバーシュート相当のライン圧変化で供給される分の油量をライン圧制御弁51の下流でライン圧油路59に接続する系に逃がすことで、オーバーシュート相当のライン圧の変化を許容することができる。
【0084】
このため、このような構成のコントローラ12によれば、ライン圧のオーバーシュートによる油圧制御回路5の制御不調が生じないようにすることができ、この結果、クラッチ圧もオーバーシュートしないようにすることができる。したがって、SS制御によるエンジン1の停止時に発生するエンジン1の逆回転に起因して、前進クラッチ3aが急締結することを防止することができる(請求項1、4に対応する効果)。
【0085】
コントローラ12はさらに、ライン実圧PLがライン指示圧PLiに追従し始めると、ライン指示圧PLiを低下させる。
【0086】
このような構成のコントローラ12によれば、ライン指示圧PLiを早期に低下させることができる。結果、エンジン1の負荷軽減による燃費向上を図ることができる(請求項2に対応する効果)。
【0087】
本実施形態では、自動変速機15は、無段変速機4を有する構成とされる。コントローラ12は、図3に示すフローチャートのステップS5で前述したように、ライン指示圧PLiを上昇させるとともに、無段変速機4への供給油圧の指示圧を上昇させる。
【0088】
このような構成のコントローラ12によれば、エンジン1の始動に応じて油が油圧制御回路5に急に流れ込んできた際に、無段変速機4に油を逃がすことができるので、前進クラッチ3aが急締結することを防止することができる(請求項3に対応する効果)。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0090】
上述した実施形態では、SSが走行中駆動源停止である場合について説明した。しかしながら、走行中駆動源停止は例えば、コーストストップであってもよい。具体的に言えば、コントローラ12は、SS制御の代わりに例えば、次のコーストストップ条件が成立すると実行され、次のコーストストップ解除条件が成立すると解除されるコーストストップ制御を行ってもよい。
【0091】
コーストストップ条件は、車速Vspが所定車速未満であること、アクセルペダルの踏み込みがないこと、ブレーキペダルの踏み込みがあること、及び自動変速機15で前進レンジが選択されていること、を含む。所定車速は例えば、ロックアップクラッチ2aが解放される車速である。コーストストップ解除条件は例えば、コーストストップ条件を構成するこれらの構成条件のいずれかが不成立になること、とされる。
【0092】
上述した実施形態では、自動変速機15が、無段変速機4を有して構成される場合について説明した。しかしながら、自動変速機15は例えば、有段の自動変速機すなわち所謂オートマチックトランスミッションを有して構成されてもよい。また、無段変速機4は例えば、ベルト式の無段変速機でなくトロイダル型の無段変速機であってもよい。
【0093】
上述した実施形態では、自動変速機15が、前進用締結要素として前後進切替機構3の前進クラッチ3aを有する場合について説明した。しかしながら、自動変速機15は例えば、副変速機構を有するとともに、前進用締結要素として副変速機構の前進用締結要素を有して構成されてもよい。このような副変速機構は、前進用締結要素等のクラッチ締結によってギヤ段を成立させるので、前後進切替機構3の代わりにクラッチ系30に含むことができる。
【0094】
上述した実施形態では、変速系40、具体的には無段変速機4に油を逃がす場合について説明した。しかしながら、油を逃がす対象は例えば、油圧を蓄え、蓄えた油圧を放出するアキュムレータ等であってもよい。
【0095】
上述した実施形態では、エンジン1が駆動源である場合について説明した。しかしながら、駆動源は例えば、モータやエンジン1及びモータであってもよい。
【0096】
上述した実施形態では、コントローラ12が、エンジンコントローラ10と変速機コントローラ11で構成される場合について説明した。しかしながら、コントローラ12は例えば、他のコントローラをさらに有して構成されてもよく、単一のコントローラとされてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 エンジン(駆動源)
2 トルクコンバータ
2a ロックアップクラッチ
3 前後進切替機構
3a 前進クラッチ(前進用締結要素)
4 無段変速機(バリエータ)
5 油圧制御回路
6 メインオイルポンプ(油圧源)
7 サブオイルポンプ
10 エンジンコントローラ
11 変速機コントローラ
12 コントローラ(第1制御部、第2制御部、第3制御部)
15 自動変速機
図1
図2
図3
図4