(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654891
(24)【登録日】2020年2月4日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】瓶の貯蔵装置及びトレイ
(51)【国際特許分類】
F25D 25/02 20060101AFI20200217BHJP
F25D 25/00 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
F25D25/02 L
F25D25/00 L
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-254712(P2015-254712)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-116232(P2017-116232A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】501214524
【氏名又は名称】双日マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】西岡 弥吉郎
【審査官】
笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−149190(JP,U)
【文献】
特開平11−351737(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3196994(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 25/00 〜 25/02
F25D 23/04
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開閉可能な開口部を備えた断熱箱体と、前記断熱箱体に前記開口部を通して取出し可能に支持され、前記断熱箱体の幅方向に関して対称な形状を有し、瓶が載置可能な、トレイと、を有し、
前記トレイは、
瓶が載置可能な第1の面と、前記第1の面の裏面であって、前記トレイを上下反転させることで瓶が載置可能な第2の面とを有する、瓶の載置部と、
前記第1の面が上方を向いた第1の姿勢で前記トレイが前記断熱箱体の内部に収容されたときに、前記断熱箱体の前方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第1の当接部と、前記断熱箱体の後方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第2の当接部と、
前記第2の面が上方を向いた第2の姿勢で前記トレイが前記断熱箱体の内部に収容されたときに、前記断熱箱体の前方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第3の当接部と、前記断熱箱体の後方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第4の当接部と、を有し、
前記第1〜第4の当接部の位置関係が、前記第2の姿勢における前記第2の面の水平面に対する前記断熱箱体の前後方向の角度が、前記第1の姿勢における前記第1の面の水平面に対する前記前後方向の角度より大きくなるように設定され、
前記トレイは、
前記断熱箱体の前記前後方向に互いに平行に延び、前記第1及び第2の面を構成する複数の第1の線状部材と、
一端が各前記第1の線状部材の前方端部に接続され、前記第1の線状部材と異なる方向に延びる複数の第2の線状部材と、
一端が各前記第1の線状部材の後方端部に接続され、前記第1の線状部材と異なりかつ前記第2の線状部材と反対側の方向に延びる複数の第3の線状部材と、
前記幅方向における前記載置部の両側を前記前後方向に延びる一対の第4の線状部材と、
前記第1の線状部材の後方端部の近傍を水平に延びる第5の線状部材と、
前記第3の線状部材の他端の近傍を水平に延びる第6の線状部材と、
前記第2の線状部材の他端の近傍を水平に延びる第7の線状部材と、を有し、
前記第1の当接部は前記第7の線状部材の端部の近傍に形成され、前記第2の当接部は前記第4の線状部材に形成され、前記第3の当接部は前記第4の線状部材に形成され、前記第4の当接部は前記第6の線状部材の端部の近傍に形成されている、瓶の貯蔵装置。
【請求項2】
前記断熱箱体の奥壁に固定され上下に延びる棒状部材と、
前記棒状部材に固定され、上方向に開いた係合部材と、を有し、
前記係合部材は前記トレイの前記姿勢に応じて、前記第5の線状部材または前記第6の線状部材に係合する、請求項1に記載の貯蔵装置。
【請求項3】
一対の前記棒状部材が、前記奥壁の幅方向両側縁部の近傍に設けられている、請求項2に記載の貯蔵装置。
【請求項4】
前面に開閉可能な開口部を備えた断熱箱体と、前記断熱箱体に前記開口部を通して取出し可能に支持され、前記断熱箱体の幅方向に関して対称な形状を有し、瓶が載置可能な、トレイと、を有し、
前記トレイは、
瓶が載置可能な第1の面と、前記第1の面の裏面であって、前記トレイを上下反転させることで瓶が載置可能な第2の面とを有する、瓶の載置部と、
前記第1の面が上方を向いた第1の姿勢で前記トレイが前記断熱箱体の内部に収容されたときに、前記断熱箱体の前方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第1の当接部と、前記断熱箱体の後方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第2の当接部と、
前記第2の面が上方を向いた第2の姿勢で前記トレイが前記断熱箱体の内部に収容されたときに、前記断熱箱体の前方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第3の当接部と、前記断熱箱体の後方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第4の当接部と、を有し、
前記第1〜第4の当接部の位置関係が、前記第2の姿勢における前記第2の面の水平面に対する前記断熱箱体の前後方向の角度が、前記第1の姿勢における前記第1の面の水平面に対する前記前後方向の角度より大きくなるように設定されており、
前記断熱箱体の底部に位置する凹部と、
前記凹部の後方に位置し、上方に延びる縦壁と、
前記縦壁の上縁部から後方に延びる横壁と、
前記縦壁と前記横壁に跨り後方に向けて斜め上方に延びる第1の溝部と、
前記縦壁に位置し、前記第1の溝部と連続する第2の溝と、をさらに有する、貯蔵装置。
【請求項5】
前記第1の当接部から前記第1の面に引いた垂線の長さをX1、
前記第2の当接部から前記第1の面に引いた垂線の長さをX2、
前記第3の当接部から前記第2の面に引いた垂線の長さをX3、
前記第4の当接部から前記第2の面に引いた垂線の長さをX4、
前記第1の当接部と前記第2の当接部の距離をL1、
前記第3の当接部と前記第4の当接部の距離をL2としたときに、
(X1−X2)/L1<(X4−X3)/L2
の関係が成り立つ、請求項1から4のいずれか1項に記載の瓶の貯蔵装置。
【請求項6】
前記第1の姿勢における前記角度は0度以上、5度以下であり、前記第2の姿勢における角度は10度以上、15度以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の貯蔵装置。
【請求項7】
前面に開閉可能な開口部を備えた断熱箱体に前記開口部を通して取出し可能に支持され、前記断熱箱体の幅方向に関して対称な形状を有し、瓶が載置可能な、トレイであって、
瓶が載置可能な第1の面と、前記第1の面の裏面であって、前記トレイを上下反転させることで瓶が載置可能な第2の面とを有する、瓶の載置部と、
前記第1の面が上方を向いた第1の姿勢で前記トレイが前記断熱箱体の内部に収容されたときに、前記断熱箱体の前方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第1の当接部と、前記断熱箱体の後方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第2の当接部と、
前記第2の面が上方を向いた第2の姿勢で前記トレイが前記断熱箱体の内部に収容されたときに、前記断熱箱体の前方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第3の当接部と、前記断熱箱体の後方で前記断熱箱体に当接して、前記トレイを前記断熱箱体に支持させる第4の当接部と、
前記断熱箱体の前記前後方向に互いに平行に延び、前記第1及び第2の面を構成する複数の第1の線状部材と、
一端が各前記第1の線状部材の前方端部に接続され、前記第1の線状部材と異なる方向に延びる複数の第2の線状部材と、
一端が各前記第1の線状部材の後方端部に接続され、前記第1の線状部材と異なりかつ前記第2の線状部材と反対側の方向に延びる複数の第3の線状部材と、
前記幅方向における前記載置部の両側を前記前後方向に延びる一対の第4の線状部材と、
前記第1の線状部材の後方端部の近傍を水平に延びる第5の線状部材と、
前記第3の線状部材の他端の近傍を水平に延びる第6の線状部材と、
前記第2の線状部材の他端の近傍を水平に延びる第7の線状部材と、を有し、
前記第1の当接部は前記第7の線状部材の端部の近傍に形成され、前記第2の当接部は前記第4の線状部材に形成され、前記第3の当接部は前記第4の線状部材に形成され、前記第4の当接部は前記第6の線状部材の端部の近傍に形成されており、
前記第1〜第4の当接部の位置関係が、前記第2の姿勢における前記第2の面の水平面に対する前記断熱箱体の前後方向の角度が、前記第1の姿勢における前記第1の面の水平面に対する前記前後方向の角度より大きくなるように設定されている、トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は瓶の貯蔵装置とそれに用いるトレイに関し、特にワインボトルなどの瓶を載置するトレイの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
ワインなどの瓶の貯蔵装置では、長い瓶を収容するためにトレイを傾けて設けることがある。特許文献1には、最上段のトレイが傾けられた貯蔵装置が開示されている。トレイを傾けることで、長い瓶を前後方向に収容することができる。また、トレイの一辺には上方に突き出したガード部材が設けられており、瓶の首部をガード部材に載置することで、瓶を傾けて横向きに収容することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−116447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された貯蔵装置で瓶を前後方向に傾けて収容するためには、傾斜した専用のトレイを用いる必要がある。瓶を傾けて横向きに収容する場合は専用のトレイを用いる必要はないが、前後方向に傾けて設置することはできない。
【0005】
瓶の貯蔵装置では瓶のラベルの視認性を高めるために前後方向に横に並べて収容することが好まれる場合がある。これは、横向きに瓶を収容すると、奥にある瓶のラベルを確認するためにトレイを引き出す必要があり、使い勝手が悪いためである。また、瓶のラベルの視認性を向上させるため、瓶を傾けて収容することが好まれる場合もある。このような理由から、瓶のラベルの視認性を高めるためには、瓶を前後方向に、かつ傾けて収容することが望ましい。特に、ワイン愛飲家の間では、ワインボトルのエチケットラベルを容易に視認したいというニーズがある。一方で、瓶を前後方向に、かつできるだけ水平に収容したいというニーズもある。
【0006】
本発明は、専用のトレイを用いることなく、瓶を前後方向にかつ異なる傾斜角で収容することが可能な瓶の貯蔵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の瓶の貯蔵装置は、前面に開閉可能な開口部を備えた断熱箱体と、断熱箱体に開口部を通して取出し可能に支持され、断熱箱体の幅方向に関して対称な形状を有し、瓶が載置可能な、トレイと、を有している。トレイは、瓶が載置可能な第1の面と、第1の面の裏面であって、トレイを上下反転させることで瓶が載置可能な第2の面とを有する、瓶の載置部と、第1の面が上方を向いた第1の姿勢でトレイが断熱箱体の内部に収容されたときに、断熱箱体の前方で断熱箱体に当接して、トレイを断熱箱体に支持させる第1の当接部と、断熱箱体の後方で断熱箱体に当接して、トレイを断熱箱体に支持させる第2の当接部と、第2の面が上方を向いた第2の姿勢でトレイが断熱箱体の内部に収容されたときに、断熱箱体の前方で断熱箱体に当接して、トレイを断熱箱体に支持させる第3の当接部と、断熱箱体の後方で断熱箱体に当接して、トレイを断熱箱体に支持させる第4の当接部と、を有している。第1〜第4の当接部の位置関係は、第2の姿勢における第2の面の水平面に対する断熱箱体の前後方向の角度が、第1の姿勢における第1の面の水平面に対する前後方向の角度より大きくなるように設定されている。
本発明の一態様では、トレイは、断熱箱体の前後方向に互いに平行に延び、第1及び第2の面を構成する複数の第1の線状部材と、一端が各第1の線状部材の前方端部に接続され、第1の線状部材と異なる方向に延びる複数の第2の線状部材と、一端が各第1の線状部材の後方端部に接続され、第1の線状部材と異なりかつ第2の線状部材と反対側の方向に延びる複数の第3の線状部材と、幅方向における載置部の両側を前後方向に延びる一対の第4の線状部材と、第1の線状部材の後方端部の近傍を水平に延びる第5の線状部材と、第3の線状部材の他端の近傍を水平に延びる第6の線状部材と、第2の線状部材の他端の近傍を水平に延びる第7の線状部材と、を有し、第1の当接部は第7の線状部材の端部の近傍に形成され、第2の当接部は第4の線状部材に形成され、第3の当接部は第4の線状部材に形成され、第4の当接部は第6の線状部材の端部の近傍に形成されている。
本発明の他の態様では、瓶の貯蔵装置はさらに、断熱箱体の底部に位置する凹部と、凹部の後方に位置し、上方に延びる縦壁と、縦壁の上縁部から後方に延びる横壁と、縦壁と横壁に跨り後方に向けて斜め上方に延びる第1の溝部と、縦壁に位置し、第1の溝部と連続する第2の溝と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トレイを上下反転させることで、載置部の両面を瓶の載置のために利用することができる。トレイは、トレイの姿勢に応じて第1及び第2の当接部または第3及び第4の当接部が断熱箱体に当接することで、断熱箱体の内部に収容される。これらの当接部の載置部との位置関係は、第1の姿勢における第1の面の水平面に対する第1の角度が、第2の姿勢における第2の面の水平面に対する第2の角度より大きくなるように設定されている。従って、瓶を水平に近い角度で収容するときは第1の姿勢でトレイを設置すればよく、瓶をより傾けて収容するときは第2の姿勢でトレイを設置すればよい。
【0009】
従って、本発明によれば、専用のトレイを用いることなく、瓶を前後方向にかつ異なる傾斜角で収容することが可能な瓶の貯蔵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る瓶の貯蔵装置の、ワインボトルが収容された状態を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す貯蔵装置の、ワインボトルが収容されていない状態を示す正面図である。
【
図6】ワインボトルが載置された状態を示す、
図4に示すトレイの側面図である。
【
図7】第1〜第4の当接部の位置関係と載置部の傾斜角を示す概念図である。
【
図9】
図1に示す貯蔵装置の最下段収容部の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の瓶の貯蔵装置の実施形態を説明する。本実施形態はワイン貯蔵庫に関するが、本発明はこれに限定されず、日本酒、焼酎、果汁などを収容する瓶の貯蔵装置に適用できる。以下の説明で、「前方」「後方」「前部」「後部」「前後方向」は貯蔵装置の開口が設けられた前面を基準とし、「幅方向」は前面から見たときの左右方向を意味し、「上方」「下方」「上下方向」は貯蔵装置の通常の設置状態を基準とする。「傾斜角」「角度」は水平面に対して定義される。また、本明細書では、前後方向をX、幅方向をY,上下方向をZと呼ぶ場合がある。
【0012】
図1は、本実施形態のワイン貯蔵庫のワインボトルが収容された状態の正面図、
図2は、本実施形態のワイン貯蔵庫のワインボトルが収容されていない状態の正面図である。
図3は本実施形態のワイン貯蔵庫の側方断面図である。
【0013】
ワイン貯蔵庫1は断熱材により外壁を形成した断熱箱体2と、断熱箱体2の前面開口3を開閉可能に仕切る扉4と、を有している。断熱箱体2の内側には貯蔵空間5を形成する内側パネル6が設けられている。内側パネル6は意匠性を考慮して樹脂で製作されている。貯蔵空間5は仕切板7によって上室5aと下室5bに仕切られている。扉4は3層ガラス板構造からなり、上下の蝶番(図示せず)によって断熱箱体2に回動可能に取り付けられている。本実施形態のワイン貯蔵庫1は上室5aと下室5bを有しているが、一つの室だけを有していてもよい。
【0014】
断熱箱体2の内側パネル6の幅方向両側側面には前後方向Xに水平に延びる一対のレール8が設けられている。ワインボトルBが載置されるトレイ21は、その幅方向両端をレール8に支持され、断熱箱体2の内部に設置されている。トレイ21は断熱箱体2に取出し及び取付け可能に支持される。上室5aには4つのトレイ21が、下室5bには3つのトレイ21が設置され、それぞれのトレイ21に4本のワインボトルBを収容することができる。下室5bの最下段はトレイ21が設けられておらず、後述するように機械室9の仕切壁10を利用してワインボトルBを大きな傾斜角で収容することができる。
【0015】
上室5aの後部にはヒータ11aと、冷却器12aと、送風機13aが設けられている。下室5bの後部にはヒータ11bと、冷却器12bと、送風機13bが設けられている。ヒータ11a,11bはそれぞれ上室5aと下室5bの空気を加熱し、冷却器12a,12bはそれぞれ上室5aと下室5bの空気を冷却する。送風機13a,13bは、ヒータ11a,11bで加熱されまたは冷却器12a,12bで冷却された空気を。上室5a及び下室5b内で循環させる。上室5aと下室5bの各々の後部には仕切り壁14a,14bが設けられ、ヒータ11a,11b、冷却器12a,12b及び送風機13a,13bを視覚的に遮蔽している。仕切り壁14a,14bには、送風機13a,13bから送られる空気をワインボトルBの貯蔵エリアに直接供給するための開口またはスリット(図示せず)が設けられている。
【0016】
断熱箱体2の下部後方には機械室9が設けられ、冷凍サイクルを行うための圧縮機15、制御基板、電磁弁、配管等(圧縮機15以外は図示せず)が収納されている。圧縮機15は2つの冷却器12a,12bに共通で組み合わされている。庫内の気温は温度計(図示せず)で監視され、庫内の気温が上昇したときは、制御基板に実装された制御回路によって圧縮機15と送風機13a及び/または13bが起動する。圧縮機15の起動により冷凍サイクルが開始され、冷気通路(図示せず)内を流通する空気が、冷凍サイクルの低温側となる冷却器12a及び/または12bで、庫内の空気と熱交換して冷気が生成される。冷凍サイクルの冷媒には可燃性炭化水素冷媒(不図示)が使用され、例えば冷媒番号R600aのイソブタンが好適に使用される。
【0017】
図4はトレイ21の斜視図を、
図5はトレイ21の平面図を示している。
図6はトレイ21の側面図であり、
図6(a)はトレイ21の第1の姿勢、
図6(b)はトレイ21を第1の姿勢に対して上下反転させた第2の姿勢を示している。ここで、第1の姿勢は第1の面S1が上方を向いた状態のトレイ21の姿勢であり、第2の姿勢は第2の面S2が上方を向いた状態のトレイ21の姿勢である。トレイ21は断熱箱体2に前面開口3を通して取出し可能に支持され、断熱箱体2の幅方向Yに関して左右対称の形状を有している。トレイ21は、複数の第1の線状部材31で構成された瓶の載置部22を有している。第1の線状部材31はトレイ21が断熱箱体2に収容された状態で、断熱箱体2の前後方向Xに互いに平行に延びている。第1の線状部材31は鉄、アルミなどの金属、または樹脂で形成され、鉄で形成する場合は防錆対策として塗装することが望ましい。第1の線状部材31は円形断面の直線状の線材(ワイヤ)であるが、断面は円形に限らず、矩形断面等の多角形断面でもよい。本実施形態では、載置部22は8本の第1の線状部材31からなっている。互いに隣接する2本の第1の線状部材31によって一つのワインボトルBが支持される。第1の線状部材31の幅方向Yの間隔Dは38〜40mmであり、これによって標準的なワインボトルBを安定して保持することができる。
【0018】
載置部22は第1の面S1と、第1の面S1の裏面である第2の面S2と、を有している。ここで第1及び第2の面S1,S2は複数の第1の線状部材31の断面の最上部または最下部を包含する仮想平面であり、複数の第1の線状部材31によって構成される。第1の面S1と第2の面S2は互いに平行であり、第1の線状部材31が円形断面を有する場合は線材の直径に等しい距離だけ互いに対して離れている。トレイ21を断熱箱体2の前後方向Xに延びる中心軸23のまわりで上下反転させることで、第1の面S1にも第2の面S2にもワインボトルBを載置することができる。
【0019】
各第1の線状部材31の前方端部には第2の線状部材32が接続されている。第2の線状部材32の一端は第1の線状部材31の前方端部に接続され、他端は後述する第7の線状部材37に接続されている。第2の線状部材32は第1の線状部材31に対してほぼ直交する方向に延びているが、直交以外の方向でもよく、第1の線状部材31と異なる方向に延びていればよい。
【0020】
各第1の線状部材31の後方端部には第3の線状部材33が接続されている。第3の線状部材33の一端は第1の線状部材31の後方端部に接続され、他端は後述する第6の線状部材36に接続されている。第3の線状部材33も第1の線状部材31に対してほぼ直交する方向に延びているが、直交以外の方向でもよく、第1の線状部材31と異なる方向に延びていればよい。また、第3の線状部材33は第2の線状部材32と反対側の方向に延びている。
【0021】
本実施形態では、第1〜第3の線状部材31,32,33は一体の部材であり、直線状の線材を曲げ加工することにより製作している。しかし、第1〜第3の線状部材31,32,33を別部材として、溶接、半田、接着剤等の適宜の方法で互いに接合してもよい。後者の場合、第2及び第3の線状部材32,33は第1の線状部材31と同じ材料で形成することが望ましい。
【0022】
断熱箱体2の幅方向Yにおける載置部22の両側には一対の第4の線状部材34が設けられている。第4の線状部材34は断熱箱体2の前後方向Xに延びており、トレイ21を断熱箱体2に設置したときにレール8の直上に位置する。第4の線状部材34は前後方向Xにおけるほぼ中央に屈曲部があり、側方から見たときに、屈曲部の近傍で第1の線状部材31と交差している(
図6参照)。このため、第1の姿勢と第2の姿勢のいずれの姿勢をとったときでも、第4の線状部材34の一部が第1の線状部材31より上方に位置する。第4の線状部材34の第1の線状部材31より上方に位置する部分はワインボトルBの幅方向Yへの移動を拘束する。従って、例えば地震の際にワインボトルBが内側パネル6の側面に衝突し、損傷することを防止できる。
【0023】
載置部22の後方縁部の近傍を第5の線状部材35が水平に延びている。第5の線状部材35は各第1の線状部材31の後方端部の近傍に固定され、第1の線状部材31の間隔を規定するとともに、トレイ21の補強部材として機能する。第3の線状部材33の他端に沿って第6の線状部材36が水平に延びている。第6の線状部材36は各第3の線状部材33の他端及び両側の第4の線状部材34に固定され、第1の線状部材31の間隔を規定するとともに、トレイ21の補強部材として機能する。第5及び第6の線状部材36は後述する係合部材25に係合することで、トレイ21の前後方向Xへの動きを規制する。
【0024】
第2の線状部材32の他端に沿って第7の線状部材37が水平に延びている。第7の線状部材37は各第2の線状部材32の他端の近傍及び両側の第4の線状部材34に固定され、第1の線状部材31の間隔を規定するとともに、トレイ21の補強部材として機能する。また、第7の線状部材37は、トレイ21が第2の姿勢を取ったときに、ワインボトルBの前方への落下を防止するストッパとしても機能する。第5〜第7の線状部材35,36,37も第1の線状部材31と同じ材料で形成することができる。
【0025】
図6を参照すると、第1の姿勢では第1の面S1が上方を向いている。このときトレイ21の載置部22はほぼ水平な状態にあり、ワインボトルBをほぼ水平に収容することができる。第2の姿勢では第2の面S2が上方を向いている。このときトレイ21の載置部22は第1の姿勢よりも傾斜しており、ワインボトルBをより傾けて収容することができる。すなわち、第2の姿勢における第2の面S2の水平面SHに対する前後方向Xの角度θ2が、第1の姿勢における第1の面S1の水平面SHに対する前後方向Xの角度θ1より大きくなる。
【0026】
ワインボトルBの保管方法はワインの種類や使用者の好みによって様々である。例えば、通常はできるだけ水平に保管することで熟成貯蔵を期待し、開封の直前には檻を底部に沈殿させるために、ワインボトルBの底部を下にして傾けて保管するといった保管方法が考えられる。また、金属製のキャップシール(コルク栓のカバー)の腐食、カビの発生、エチケットラベルの汚染などを発見しやすくするためにワインボトルBを傾けて保管するというニーズもある。このため、本実施形態ではトレイ21を上下反転するだけの簡単な操作で、トレイ21の載置部22の姿勢(傾き)を第1の姿勢と第2の姿勢の間で相互に切換えることができる。
【0027】
第1の姿勢における角度θ1は0度以上、5度以下であることが望ましく、第2の姿勢における角度θ2は10度以上、15度以下、特に約12度であることが望ましい。なお、第1の姿勢における角度θ1が0度以外の角度を取る場合(水平でない場合)、第2の姿勢における角度θ2と符号が反対であることが望ましい。これによって、第1の姿勢では載置部22が後方に向かって下り傾斜となるため、ワインボトルBの落下の可能性を低下させることができる。一方、第2の姿勢では載置部22が前方に向かって下り傾斜となるため、エチケットラベル等の視認性が向上する。また、第2の姿勢では第2の線状部材32と第7の線状部材37がワインボトルBのストッパとして機能するため、ワインボトルBの落下を防止することができる。
【0028】
図6(a)を参照すると、第1の面S1が上方を向いた第1の姿勢でトレイ21が断熱箱体2の内部に収容されたときには、第1の当接部P1が断熱箱体2の前方で、第2の当接部が断熱箱体2の後方で、断熱箱体2に当接する。第1の当接部P1は第7の線状部材37の端部の近傍に形成され、第2の当接部P2は第4の線状部材34に形成されている。
【0029】
図6(b)を参照すると、第2の面S2が上方を向いた第2の姿勢でトレイ21が断熱箱体2の内部に収容されたときには、第3の当接部P3が断熱箱体2の前方で、第4の当接部が断熱箱体2の後方で、断熱箱体2に当接する。第3の当接部P3は第4の線状部材34に形成され、第4の当接部P4は第6の線状部材36の端部の近傍に形成される。
【0030】
図7は当接部P1〜P4の位置関係を説明するため、
図6をさらに模式化して示す概念図である。
【0031】
図7(a)は
図6(a)に対応しており、第1の姿勢のトレイ21を示している。第1の当接部P1と第1の面S1との間の距離X1は、第1の当接部P1から第1の面S1に引いた垂線の長さとして定義される。第2の当接部P2と第1の面S1との間の距離X2は、第2の当接部P2から第1の面S1に引いた垂線の長さとして定義される。第1の当接部P1と第2の当接部P2との間の距離をL1とすると、第1の角度θ1はsinθ1=(X1−X2)/L1として求められる。
【0032】
図7(b)は
図6(b)に対応しており、第2の姿勢のトレイ21を示している。第3の当接部P3と第2の面S2との間の距離X3は、第3の当接部P3から第2の面S2に引いた垂線の長さとして定義される。第4の当接部P4と第2の面S2との間の距離X4は、第4の当接部P4から第2の面S2に引いた垂線の長さとして定義される。第3の当接部P3と第4の当接部P4との間の距離をL2とすると、第2の角度θ2はsinθ2=(X4−X3)/L2として求められる。
【0033】
θ1<θ2が成り立つためにはsinθ1<sinθ2であればよいので、一般的には
(X1−X2)/L1<(X4−X3)/L2
の関係が成り立てばよいことになる。
【0034】
再び
図2を参照すると、断熱箱体2の奥壁の幅方向両側縁部の近傍には、上下方向Zに延びる一対の棒状部材24が固定されている。棒状部材24は鉄などの強度の高い材質で形成されている。棒状部材24は上室5a、下室5bごとに、すなわち奥壁の片側に上下2本設けられるが、上室5aと下室5bを跨いで1本設けてもよい。棒状部材24は上端付近、中央付近、下端付近に貫通孔が設けられ、内側パネル6にねじ29によって固定されている。
【0035】
図8は
図2のA部拡大図である。棒状部材24には各トレイ21の高さ付近に係合部材25が固定されている。係合部材25は上方向に開いたL字状の形状のフックであり、左右の係合部材25は対称の位置に、かつ対称の形状で設けられている。係合部材25は棒状部材24と同じ部材で作成され、溶接等によって棒状部材24に固定される。目立たなくするために、棒状部材24と係合部材25は内側パネル6及びトレイ21と同一色、例えば黒や茶色であることが望ましい。視認性と操作性を確保するため、正面から見たときの係合部材25の幅方向寸法は15〜30mm、高さは10〜20mmとすることが望ましい。係合部材25はトレイ21の姿勢に応じて、第5の線状部材35または第6の線状部材36に係合する。より具体的には、トレイ21が第1の姿勢をとるときは、第6の線状部材36が係合部材25に係合し、トレイ21が第2の姿勢をとるときは、第5の線状部材35が係合部材25に係合する。トレイ21を係合部材25に係合させるには、ワインボトルBが載置されていない空のトレイ21の後端を少し持ち上げ、第5の線状部材35または第6の線状部材36が係合部材25の上方を跨ぐようにトレイ21を後方に若干押出し、その後トレイ21の後端を元に戻せばよい。
【0036】
ワインボトルBはエチケットラベルやキャップシールの確認のために前方に引き出されることがある。その際トレイ21を前方に引き出す場合、ワインボトルBは1本あたり約1kgと重いため、かなりの力を要することがある。そのため、使用者は弱い力でトレイ21が引き出せない場合、さらに強い力で引き出すことになるが、力を入れすぎるとトレイ21が一気に引き出され、ワインボトルBが使用者の足元に落下し傷害に至る懸念がある。このため、本実施形態ではワインを引き出す際にトレイ21が一緒に一緒に飛び出さないようにトレイ21が係合部材25に係合し、前方に移動しないようにしている。しかも、係合の解除はトレイ21の後端を若干持ち上げるだけの簡易な操作で可能である。また、係合部材25と棒状部材24を金属で形成しているため、大きな力でトレイ21を引き出しても、係合部材25が破損することがない。
【0037】
図9は断熱箱体2の最下段のワイン収容部を示す。
図9(a)は側面図であり、
図9(b)は
図9(a)の方向Bから見た図である。断熱箱体2の底部には凹部26が設けられている。凹部26は3つ設けられ、それぞれが断熱箱体2の前後方向Xに延びている。
図3に示すように、凹部26の後方には圧縮機15や制御基板などを収容する機械室9があり、機械室9と貯蔵空間5を仕切る仕切壁10が設けられている。仕切壁10は凹部26から上下方向に延びる縦壁W1と、縦壁W1の上縁部から後方に水平に延びる横壁W2とを有している。第1の溝部27が、縦壁W1と横壁W2に跨り後方に向けて斜め上方に延びている。また、縦壁W1には第1の溝部27と連続する第2の溝28が設けられている。ワインボトルBは第1の溝部27に首部を、凹部26の前方側の縁部に底部が保持されて傾いた状態で収容することができる。第2の溝28はワインボトルBの肩部を収容する。第2の溝28の形状は様々なワインボトルBの形状に適合するように大きめに設定されている。断熱箱体2の下部は使用者が視認しにくいため、機械室9と貯蔵空間5を仕切る仕切壁10を利用することで、第2の姿勢よりもさらに立った角度でワインボトルBを収容し、エチケットラベルなどの視認性を高めることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ワイン貯蔵庫
2 断熱箱体
3 前面開口
4 扉
5 貯蔵空間
6 内側パネル
21 トレイ
22 瓶の載置部
31〜37 第1〜第7の線状部材
B ワインボトル
L1 第1の当接部P1と第2の当接部P2の距離
L2 第3の当接部P3と第4の当接部P4の距離
P1〜P4 第1〜第4の当接部
S1,S2 第1,第2の面
X1 第1の当接部P1と第1の面S1の距離
X2 第2の当接部P2と第1の面S1の距離
X3 第3の当接部P3と第2の面S2の距離
X4 第4の当接部P4と第2の面S2の距離
θ1,θ2 第1,第2の角度