特許第6654916号(P6654916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654916
(24)【登録日】2020年2月4日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】コーナーカバー
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/24 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
   E04G21/24 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-15451(P2016-15451)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-133287(P2017-133287A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文春
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3879807(JP,B2)
【文献】 特開2010−265658(JP,A)
【文献】 特開2003−253629(JP,A)
【文献】 実開昭47−014576(JP,U)
【文献】 特開2002−080015(JP,A)
【文献】 特開2000−063069(JP,A)
【文献】 実開平07−023775(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/24
E04G 21/30
E04G 21/32
E01F 13/00
B65D 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に設置され、積み上げられたシート材の角部を隔離するコーナーカバーであって、基材と二枚の保護板とからなり、前記基材が、前記床面と接触する下面がL型平面を呈するL型部材と、該L型部材のL型の角部に、前記下面に対し垂直に立設した保護板つなぎ部とからなり、前記保護板が、前記L型部材に沿った長さで前記L型部材のL型の一辺の長さより短い保護板であり、前記保護板を、前記L型の角部を囲むように前記L型部材の側部と前記保護板つなぎ部材に固定してなり、かつ前記L型部材の、少なくともL型の一方の辺の側部に、2個の車輪を離間して有することを特徴とするコーナーカバー。
【請求項2】
前記保護板が、金属板であることを特徴とする請求項1に記載のコーナーカバー。
【請求項3】
前記L型部材および前記保護板つなぎ部材が、鋼製アングル加工品であることを特徴とする請求項1または2に記載のコーナーカバー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内の作業場や、材料置き場等で、薄金属板等の材料を積層した状態で一時的に保管あるいは貯留しておく際に、作業者、あるいは歩行している作業者等の安全を確保するために配置するコーナーカバーに係り、とくに該コーナーカバーの設置安定性および易移動性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内には、製造された製品あるいは作業途中の材料等を一時的に保管しておく場所(保管場所)を設置することが多い。そのような保管場所は、一般的に、通路、作業場とは線引き、色分け等により区別されていることが多い。しかし、このような保管場所でも、例えば、薄金属板等のシート状材料を積み上げた状態で保管していると、シート状材料の端部、とくに角部(コーナー部)が鋭利な状態で露出したままとなり、作業者や歩行中の作業者等が誤って角部(コーナー部)に接触し、負傷するケースが多々あった。このため、作業者や歩行中の作業者等が誤っても接触しないように、積み上げたシート状材料等の角部(コーナー部)を隠すためのコーナーカバーが設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「移動式安全柵」が記載されている。特許文献1に記載された技術は、面材を取り付けた一対の枠状フレームをL型に連結し、これら枠状フレームの下端に3個の移動用キャスターが取り付けられた構造を有する安全柵である。特許文献1に記載された技術では、枠状フレーム同士の連結コーナー部下端、および一方の枠状フレームの連結コーナー部とは反対側の端部下端に、車輪の向きが可変とした回転式キャスターが取り付けられ、他方の枠状フレームの連結コーナー部とは反対側の端部下端に、車輪の向きを一定とした固定式キャスターを取り付けるとしている。また、特許文献1に記載された技術では、面材を網目状に形成することが好ましいとしている。特許文献1に記載された技術によれば、作業者等の安全が確保でき、さらに移動がより簡単となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3879807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、安全柵の下端にキャスターが配設されているため、安全柵の移動には便利であるが、キャスターのストッパーを作動させても、安全柵がずれ易く、安全柵を一定の場所に安定して設置することが難しいという問題があった。また、キャスターに移動防止のストッパーを付設する必要があるうえ、移動防止ストッパーを作動させることを忘れたりする場合があった。また、面材を網目状に形成すると、薄金属板等のシート材を積み上げた場合には、角部(コーナー部)の一部が網目からはみだすことが考えられ、角部(コーナー部)に接触すると負傷するリスクがあり、安全上問題を残していた。
【0006】
また、床あるいは台車上に積み上げた薄金属板等のシート材のとくに危険なコーナー部を覆い隠すために、設置されるコーナーカバーにおいては、下端にキャスターを付けない場合でも、動きやすく設置位置がずれやすいという問題があり、それを回避するために、コーナーカバーの重量を増加する傾向にあった。しかし、重量が増加すると、コーナーカバーを、人間一人で取り扱うことが困難になり、設置位置のずれの修正を怠る場合や、コーナーカバーの設置を行わない場合などが頻発するという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、積み上げた薄金属板等のシート材のとくに危険なコーナー部を覆い隠すことが可能で、安定して設置が可能で、しかも最初に設置した位置から動きにくく、ずれにくく、かつ設置場所を変更する場合には、一人でも移動が可能であるという、設置安定性と易移動性とを兼備したコーナーカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した目的を達成するため、積み上げた薄金属板等シート材の角部を覆うコ―ナーカバーに、設置安定性と易移動性とを兼備させるための構造について、鋭意検討した。その結果、コ―ナーカバーを、基材と板状の保護板とから構成し、該基材を、床面と接触する下面がL型平面を呈するL型部材と保護板つなぎ部材とから構成することに想到した。そして、保護板を板状とし、二枚の保護板を、L型の角部を囲むようにして、L型部材の側部と保護板つなぎ部材に固定すれば、積み上げた薄金属板等シート材の角部が、はみ出す心配は全くなくなり、しかも、重量も増加し、コーナーカバーを設置したときの安定性(設置安定性)も向上する。とくに、L型部材の下面の長さと幅の組み合わせを工夫すれば、設置安定性はより高くなる。
【0009】
そして、さらに、L型部材の、少なくともL型の一方の辺の側部に、2個の車輪を離間して配設することに思い至った。L型部材の側部に車輪を取り付けることにより、コーナーカバーとして使用している場合には、コーナーカバーの安定設置には、なんの影響をも与えない。コーナーカバーを移動する場合には、車輪が着地するようにコーナーカバーを傾けることにより、容易に移動が可能となる。コーナーカバーの重量が重くなっても、人間一人で容易に移動でき、設置安定性と易移動性とを兼備したコ―ナーカバーとすることができることを見出した。
【0010】
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)床面上に設置され、積み上げられたシート材の角部を隔離するコーナーカバーであって、基材と二枚の保護板とからなり、前記基材が、前記床面と接触する下面がL型平面を呈するL型部材と、該L型部材のL型の角部に、前記下面に対し垂直に立設した保護板つなぎ部とからなり、前記保護板が、前記L型部材に沿った長さで前記L型部材のL型の一辺の長さより短い保護板であり、前記保護板を、前記L型の角部を囲むように前記L型部材の側部と前記保護板つなぎ部材に固定してなり、かつ前記L型部材の、少なくともL型の一方の辺の側部に、2個の車輪を離間して有することを特徴とするコーナーカバー。
(2)(1)において、前記保護板が、金属板であることを特徴とするコーナーカバー。
(3)(1)または(2)において、前記L型部材および前記保護板つなぎ部材が、鋼製アングル加工品であることを特徴とするコーナーカバー
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積み上げた薄金属板等のシート材のとくに危険なコーナー部を、効果的に覆い隠すことができ、しかもコーナーカバー自体が、鋼材等で構成され、自重の重心位置が下方にあり、最初に設置した位置から動きにくく、ずれにくく、作業中あるいは通路を歩行中の作業者が、飛び出したシート材で負傷するリスクを回避でき、作業の安全性および歩行の安全性を格段に向上でき、作業環境の向上に寄与するという、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、コーナーカバーの設置場所を変更する場合にも、一人で容易に移動ができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明コーナーカバーの概略構成を示す説明図である。
図2】本発明コーナーカバーの設置状況を示す説明図である。
図3】本発明コーナーカバーを移動する際の状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明コーナーカバーは、基材1と保護板2とからなり、図2に示すように、床面上に設置され、積み上げられたシート材の、とくに角部を覆い隠すように設置される。基材1は、図1に示すように、床面と接触する下面1pがL型平面を呈するL型部材1aと、保護板つなぎ部材1cとからなる。なお、図1は、L型部材1aをアングル製としているため、アングルの一方を底部とし他方を側部1bとしているが、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。L型部材1aがアングルではない場合に、L型部材1aの一方の端部に沿って、下面1pに対し垂直に側部1bを設けてもよい。側部1bを設けることにより、保護板の固定および車輪の設置が容易になる。
【0014】
なお、L型部材1a(底部)の幅hおよびL型部材のL型の一辺の長さ(L型平面の一辺の長さ)lは、コーナーカバーが安定して設置できるようにそれぞれ大きくすることが好ましいが、コーナーカバーの重量増加を伴うため、それらが両立する範囲で適宜選択して決定することが好ましい。
【0015】
また、保護板つなぎ部材1cは、L型部材1aのL型角部で、下面1pに垂直に立設され、保護板の装着を容易にする。なお、保護板つなぎ部材1cの断面形状は、L型部材のL型の角部と同じL型を呈するようにすることが好ましいのはいうまでもない。
【0016】
基材1は、上記した形状に一体的に作製しても、また、例えばアングル(L型)を組み合わせて作製してもよい。なお、アングル(L型)は鋼製とすることが好ましい。鋼製アングル(L型)を組み合わせて作製する場合には、アングル(L型)同士の接合は溶接接合とすることが好ましい。
【0017】
本発明コーナーカバーでは、保護板2は、積み上げた薄金属板等のシート材のとくに危険なコーナー部を覆い隠すために、重要である。保護板を網目状とすると、シート材のとくに危険なコーナー部が露出するという危険があるため、本発明では、板状とする。保護板2を板状とすることにより、積み上げたシート材のコーナー部がコーナーカバーからはみ出すことはなくなる。なお、保護板2は、金属板、好ましくは板厚:1.0〜1.6mm程度の薄鋼板とすることが好ましい。
【0018】
保護板2は、2枚で、図1に示すように、L型の角部を囲むように、L型の角部の両側で、保護板の長さ(高さ)方向の一端をL型部材1aの側部に、保護板の幅方向の一端を保護板つなぎ部材1cに、それぞれ、ビス等で固定され、装着される。装着する保護板2の長さ(高さ)Hは、安全性の観点からシート材等の積み上げ高さ以上である、1000mm程度とすることが好ましい。また、保護板2の幅Bは、L型部材1aのL型の一辺の長さlと同じか、あるいはそれより短い、(l-100)mm程度とすることが、コーナーカバー重量軽減という観点から好ましい。保護板2の幅Bは、300mm程度もあれば、積み上げたシート材のとくに危険なコーナー部を覆い隠すことができる。
【0019】
本発明コーナーカバーでは、基材1のL型部材1aのL型の少なくとも一方の辺の側部(図1では1b)に2個の車輪3,3を、回転自在に離間して配設する。なお、車輪は、L型の両方の側部に計4個としてもよい。
【0020】
なお、配設する車輪は、車輪の向きが一定である固定式とする。車輪の向きが可変となる回転式としてもよいが、本発明コーナーカバーでは、固定式で十分である。というのは、車輪をL型部材1aの側部1b、すなわちコーナーカバーの側面に配設しており、コーナーカバーの移動に際しては、移動の方向は一定となるためである。車輪を、コーナーカバーの側面に配設することにより、設置時にはコーナーカバーの位置がずれたり、コーナーカバーが大きく移動したりする不具合を解消でき、設置安定性にすぐれ、かつ移動時には、図3に示すように、コーナーカバーを車輪が接地する程度に傾けるだけで、容易に移動が可能となり、易移動性が向上する。
【実施例】
【0021】
基材1のL型部材用素材として、鋼製アングル(断面L字状:6×50×50mm)を用意した。そして、鋼製アングルを長さ500mmに切断し、一辺500mmのL型となるように加工し接合して、L型部材1aとした。断面L字状の一辺をL型部材1aの底部とし、他方を側部1bとした。底部は、床面と接する下面1pが、一辺長さ500mmのL型平面(幅50mm)を呈する。また、保護板つなぎ部材1c用素材として、鋼製アングル(断面L字状:3×30×30mm)を用意し、長さ1000mmに切断し、保護板つなぎ部材1cとした。保護板つなぎ部材1cの端部を、L型部材1aのL型の角部に、下面1pに対し垂直となるように溶接接合で立設した。
【0022】
また、保護板2用素材として、薄鋼板(板厚1.2mm)を用意し、大きさ:幅300×長さ(高さ)1000mmにそれぞれ切断し、2枚の保護板2とした。
【0023】
そして、保護板2を、基材1のL型角部の両側で、保護板の長さ(高さ)方向の一端をL型部材1aの側部に、保護板の幅方向の一端を保護板つなぎ部材1cに、それぞれ、ビスで固定した。
【0024】
ついで、基材1のL型部材のL型の一方の辺(脚)の側部1bに、2個の車輪(キャスター等)3,3を離間して、固定し、図1に示すような形状の本発明コーナーカバーとした。
【0025】
得られたコーナーカバーを、薄鋼板(幅900mm)を120mm積み上げた保管場所に設置した。設置したコーナーカバーは、図2に示すように、薄鋼板のコーナー部を十分に覆い隠すことができ、しかも設置中、ずれ等は生じず、設置安定性に優れていた。また、コーナーカバーを移動する際には、コーナーカバーをわずかに傾けるだけで、図3に示すように、車輪が接地し移動可能となり、一人で十分に移動させることができた。
【符号の説明】
【0026】
1 基材
1a L型部材(底部)
1b 側部
1c 保護板つなぎ部材
2 保護板
3 車輪
図1
図2
図3