(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空なハウジングと、前記ハウジング内に移動自在に挿入される可動ばね受とで前記ハウジング内に液室を形成し、四輪車両における車体と任意の二輪との間に介装される一対のばね受シリンダと、
前記ばね受シリンダ毎に設けられて前記可動ばね受を附勢して前記車体を弾性支持する一対の懸架ばねと、
前記液室同士を連通する流路と、
前記流路に設けられ、筒状のケースと、前記ケース内に摺動自在に挿入されて内部を一方の液室に連通される一方室と他方の液室に連通される他方室とに区画するフリーピストンと、前記フリーピストンを中立位置に位置決めて前記フリーピストンの前記中立位置からの変位に対して附勢力を発揮するばね要素とを有するセンターシリンダと、
前記フリーピストンの前記中立位置を調節する調節装置とを備えた
ことを特徴とするサスペンション装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第一の実施の形態>
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。第一の実施の形態のサスペンション装置S1は、
図1に示すように、一対のばね受シリンダC1,C2と、各ばね受シリンダC1,C2毎に設けた懸架ばね3と、各ばね受シリンダC1,C2内に設けた液室L1,L2同士を連通する流路Pとを備えている。
【0016】
以下、サスペンション装置S1の各部について詳細説明する。ばね受シリンダC1,C2は、ともに、中空なハウジング1とハウジング1内に移動自在に挿入されてハウジング1内に液室L1,L2を区画する可動ばね受2とで構成されている。
【0017】
ハウジング1は、筒状であって上端が閉塞されている。可動ばね受2は、ハウジング1内に摺動自在に挿入されるロッド状のばね受ピストン2aと、ばね受ピストン2aの下端外周に連結されるシート部2bとを備えている。そして、ばね受ピストン2aがハウジング1内に挿入されてハウジング1内に液室L1,L2が区画形成されている。液室L1,L2内には、液体が充填されるが、液体は作動油のほか、たとえば、水、水溶液等を使用可能である。
【0018】
シート部2bは、図示したところでは、ばね受ピストン2aの下端外周に連なる環状のフランジ2cと、フランジ2cの外周から立ち上がる外筒2dと、外筒2dの外周に設けた環状の受部2eとで構成される。ただし、シート部2bは、懸架ばね3の上端を支持してばね受ピストン2aに懸架ばね3から受ける附勢力を伝達できれば前記構成に限定されない。
【0019】
よって、ばね受シリンダC1,C2にあっては、ハウジング1に対して可動ばね受2が接近する方向となる
図1中上方へ移動する場合には収縮作動し、ハウジング1に対して可動ばね受2が離間する方向となる
図1中下方へ移動する場合には伸長作動する。
【0020】
また、ばね受シリンダC1,C2におけるハウジング1は、それぞれ、四輪車両Vにおける車体Bの前輪W1および後輪W2の上方に取り付けられており、ばね受ピストン2aは、車体Bに対して上下方向へ移動できるようになっている。
【0021】
また、各ばね受シリンダC1,C2のハウジング1内に設けられた液室L1,L2は、互いに流路Pを介して連通されている。そして、この流路Pの途中には、筒状のセンターシリンダCCが設けられている。
【0022】
センターシリンダCCは、筒状のケース4と、ケース4内に摺動自在に挿入されてケース4内を一方のばね受シリンダC1の液室L1に通じる一方室RFと他方のばね受シリンダC2の液室L2に通じる他方室RRとに区画するフリーピストン5と、フリーピストン5を中立位置に位置決めするとともにフリーピストン5の前記中立位置からの変位に対して附勢力を発揮するばね要素6が収容されている。
【0023】
ばね要素6は、一方室RF内に圧縮状態で収容されてフリーピストン5を
図1中右方へ附勢するコイルばね6aと、他方室RR内に圧縮状態で収容されてフリーピストン5を
図1中左方へ附勢するコイルばね6bとを備えている。そして、フリーピストン5は、両コイルばね6a,6bの附勢力が釣り合う位置を中立位置として、この中立位置に位置決めされている。コイルばね6a,6bで構成されるばね要素6は、フリーピストン5がセンターシリンダCCに対して中立位置から変位する際にフリーピストン5を中立位置へ戻す方向の附勢力を発揮するようになっている。ばね要素6は、一端がフリーピストン5に連結され他端がセンターシリンダCCに連結される場合には、一つのばねで構成されていてもよく、この場合にはばねが自然長となる状態でフリーピストン5が中立位置に位置決めされる。また、ばね要素6としては、コイルばねの他、皿ばねや弾性体といった種々の附勢力を発揮できるものを利用できる。
【0024】
また、流路Pの途中には、切換弁7が設けられている。この場合、切換弁7は、電磁開閉弁とされており、電流供給によって流路Pを開放および遮断できるようになっている。なお、切換弁7は、流路Pを開放する際に通過する液体の流れに抵抗を与えないものを利用できるほか、液体の流れに積極的に抵抗を与えるものや、また、流路Pの開放時に流路面積を変更して流路抵抗を変更できるようにしてもよい。
【0025】
また、懸架ばね3は、ばね受シリンダC1,C2毎に設けられており、ばね受シリンダC1における懸架ばね3は車体Bと前輪W1との間に介装され、ばね受シリンダC2における懸架ばね3は車体Bと後輪W2との間に介装されている。
【0026】
よって、懸架ばね3,3は、それぞればね受シリンダC1,C2の可動ばね受2,2を附勢して液室L1,L2を加圧するとともに、その附勢力で車体Bを弾性支持するようになっている。
【0027】
以上のように構成されたサスペンション装置S1にあっては、以下のように作動する。まず、切換弁7を開弁状態について説明する。この状態で、前輪W1側および後輪W2側の双方の懸架ばね3,3が伸縮する場合、双方の懸架ばね3,3が可動ばね受2,2を附勢する附勢力は等しい。そのため、各ばね受シリンダC1,C2内の液室L1,L2の圧力は等しく、センターシリンダCC内のフリーピストン5は中立位置にあって移動しないので、液室L1,L2同士で液体の行き来はない。よって、同相で懸架ばね3,3が伸縮する場合には、可動ばね受2,2は車体Bに対して上下方向へ変位しないので車体Bの車高は維持される。
【0028】
つづいて、切換弁7を開弁状態とした状態で、前輪W1側の懸架ばね3のみが伸縮する場合について説明する。前輪W1側の懸架ばね3のみが路面から突上げ入力を受ける等して収縮すると、ばね受シリンダC1において、可動ばね受2に対する懸架ばね3の附勢力が大きくなる。すると、ばね受シリンダC1の可動ばね受2がハウジング1に対して
図1中上方へ移動して液室L1が圧縮されて、液室L1内の圧力が上昇する。この前輪W1側のばね受シリンダC1の液室L1の圧力上昇により、フリーピストン5が
図1中右方へ押された他方室RRが圧縮される。縮小される他方室RRからばね受シリンダC2の液室L2へ液体が移動して、ばね受シリンダC2における可動ばね受2が下方に押圧されて懸架ばね3が下方へ圧縮される。懸架ばね3の圧縮によってばね受シリンダC2の液室L2が加圧されて圧力が上昇し、これに連通される他方室RR内の圧力も上昇する。そして、ばね受シリンダC1の液室L1の圧力によってフリーピストン5を
図1中右方へ押す力と、フリーピストン5が中立位置から
図1中右方への移動によって発揮されるばね要素6の附勢力とばね受シリンダC2の液室L2の圧力によってフリーピストン5を
図1中左方へ押す力の合力が釣り合う位置にフリーピストン5は停止する。
【0029】
つまり、フリーピストン5は、
図1中右方へ移動して前記力の釣り合う場所まで移動して停止する。後輪W2側のばね受シリンダC2は、液室L2内に液体が流入し、可動ばね受2が
図1中下方へ移動する。つまり、前輪W1側のばね受シリンダC1は収縮作動し、後輪W2側のばね受シリンダC2は伸長作動を呈する。そして、後輪W2側のばね受シリンダC2の伸長作動により懸架ばね3が圧縮されるため、車体Bの後輪W2側を押し上げる力が大きくなる。その結果、前輪W1に対する突上げ入力等によって前輪W1側の懸架ばね3が収縮して車体Bに後転するモーメントが負荷されても、車体Bの後輪W2側を押し上げる力が大きくなり、車体Bの後転方向へのピッチングが抑制される。
【0030】
反対に、後輪W2側の懸架ばね3のみが路面から突上げ入力を受ける等して収縮する場合には、圧縮される後輪W2側の懸架ばね3によって圧力が上昇するばね受シリンダC2の液室L2から、前輪W1側のばね受シリンダC1の液室L1に液体が流入する。よって、この場合、収縮作動するばね受シリンダC2に対してばね受シリンダC1が伸長作動して懸架ばね3を圧縮して、車体Bの前輪W1側を押し上げる力が大きくなるので、車体Bの前転方向へのピッチングが抑制される。
【0031】
同様に、切換弁7を開弁状態とした状態で、前輪W1側の懸架ばね3のみが伸長する場合には、前輪W1において、懸架ばね3が可動ばね受2を附勢する附勢力が小さくなるため、前輪W1側のばね受シリンダC1が伸長作動する。これに連動して、後輪W2側のばね受シリンダC2が収縮作動する。よって、この場合には、車体Bの前転方向のピッチングが抑制される。切換弁7を開弁状態とした状態で、後輪W2側の懸架ばね3のみが伸長する場合には、後輪W2において、懸架ばね3が可動ばね受2を附勢する附勢力が小さくなるため、後輪W2側のばね受シリンダC2が伸長作動する。これに連動して、前輪W1側のばね受シリンダC1が収縮作動する。よって、この場合には、車体Bの後転方向のピッチングが抑制される。
【0032】
次に、切換弁7を開弁状態とした状態で、前輪W1側の懸架ばね3と後輪W2側の懸架ばね3が逆位相で伸縮する場合について説明する。懸架ばね3,3が逆位相で伸縮する場合、ばね受シリンダC1,C2の液室L1,L2のうち一方側収縮し他方が拡大される。この場合、液室L1,L2の容積変化量は、ばね受シリンダC1,C2のうち一方のみが伸縮する場合に比較して多くなって、フリーピストン5の移動量も増え、車体Bのピッチ剛性がばね受シリンダC1,C2のうち一方のみが伸縮する場合に比較して低下する。ばね要素6がフリーピストン5を中立位置へ戻す方向へ附勢力を発揮するため、この場合のピッチ剛性は、フリーピストン5の変位を抑制するばね要素6のばね定数によって決定され、ばね要素6のばね定数の設定によりピッチ剛性をチューニングできる。ばね要素6のばね定数を大きくすれば、ピッチ剛性を大きくでき、反対に小さくすれば、ピッチ剛性を小さくできる。
【0033】
他方、切換弁7を閉弁した状態では、前後のばね受シリンダC1,C2の液室L1,L2同士の液体の行き来が無くなるため、ばね受シリンダC1,C2は伸縮不能となる。よって、この状態で前後の懸架ばね3,3が逆位相で伸縮すると、切換弁7が開弁した状態に比較して車体Bのピッチ剛性を大きくできる。したがって、四輪車両Vが制動によって減速する場合や加速によって増速する場合に車体Bに前転或いは後転させるモーメントが作用する場合には、切換弁7を閉弁して流路Pを遮断すれば、車体Bのピッチ剛性が大きくなって、慣性力に起因するピッチングを抑制できる。なお、切換弁7が開弁状態にあって通過する液体の流れに対して抵抗を調節可能な場合、開弁状態にあっても、前記抵抗大きくすると、前後の懸架ばね3,3が逆位相で伸縮する際の車体Bのピッチ剛性を大きくできる。反対に、前記抵抗を小さくすれば、前後の懸架ばね3,3が逆位相で伸縮する際の車体Bのピッチ剛性を小さくできる。よって、切換弁7が開弁状態にあって通過する液体の流れに対して抵抗を調節可能な場合、閉弁によってピッチ剛性を最大にする以外に、開弁時における液体の流れに与える抵抗の調節によって、ピッチ剛性の調節も可能となる。
【0034】
このように、サスペンション装置S1では、車体Bのピッチングを抑制できるとともに、懸架ばね3,3でばね受シリンダC1,C2に設けた液室L1,L2を加圧するため、システム全体の温度が変化しても車高が一定し、車体Bの姿勢の変化を防止できる。
【0035】
なお、流路Pの途中にセンターシリンダCCおよび切換弁7を設けずとも懸架ばね3,3の一方が伸縮するような状況下において車体Bのピッチングを抑制できる。また、流路Pの途中にセンターシリンダCCを設けて切換弁7を設けない場合でも、同様に、懸架ばね3,3の一方が伸縮するような状況下において車体Bのピッチングを抑制できる。流路PにセンターシリンダCCを設ける場合には、フリーピストン5の変位をばね要素6の附勢力で制御でき、車体Bのピッチ剛性の特性を調節でき、より四輪車両Vに適したピッチ剛性を実現して車両における乗り心地を向上できる。
【0036】
また、流路Pの途中に切換弁7を設ける場合には、切換弁7の閉弁により車体Bのピッチ剛性を高めて制動時および加速時の慣性力に起因するピッチングをも抑制できる。切換弁7は、センターシリンダCCの設置の有無に関係せずに設けてよく、切換弁7の設置により、慣性力によるピッチングの抑制が可能となる。
【0037】
また、四輪車両Vの車体Bと前後輪W1,W2との間ではなく、車体Bと左右輪にそれぞればね受シリンダC1,C2と懸架ばね3,3を設ける場合には、切換弁7の開弁により片輪のみの振動に対して車体Bのロールを抑制できる。また、両輪の逆位相の振動に対しては、切換弁7の閉弁により車体Bのロール剛性を高めて旋回時などの遠心力によるロールを抑制できる。さらに、四輪車両Vの車体Bと前右輪と後左輪との間にばね受シリンダC1,C2と懸架ばね3,3を設けるか、或いは、車体Bと前左輪と後右輪との間にばね受シリンダC1,C2と懸架ばね3,3を設ける場合には、車体Bのピッチングとロールを抑制できる。
【0038】
なお、
図2に示すように、センターシリンダCCのフリーピストン5の中立位置を調節する調節装置Tを設けるようにしてもよい。調節装置Tは、本例では、モータMと、モータMの回転運動を直線運動に変換する送りねじ機構等の運動変換部Gとを備えている。運動変換部Gは、モータMの回転運動をプランジャPLの直線運動に変換するようになっており、プランジャPLとケース4とでコイルばね6a、フリーピストン5およびコイルばね6bを挟持している。よって、モータMを駆動してプランジャPLを
図2中右へ移動させるとコイルばね6a,6bが圧縮されてフリーピストン5が右へ移動し、プランジャPLを
図2中左へ移動させるとコイルばね6a,6bが伸長してフリーピストン5が左へ移動する。よって、調節装置Tによって、コイルばね6a,6bを伸縮させ、コイルばね6a,6bの附勢力の釣り合いで位置決められるフリーピストン5の中立位置を変更調節できる。このように、フリーピストン5の中立位置を変更すると、ばね受シリンダC1,C2の一方を伸長させるとともに他方を収縮させ得る。よって、四輪車両Vの乗員数変化や荷重積載によって前後輪の分担荷重が変化する場合、調節装置Tを駆動してフリーピストン5の中立位置を調節し、車体Bの姿勢を補正してフラットにできる。たとえば、車体Bの前輪W1側が重くなり、車体Bの前輪W1側が沈み込むような姿勢となる場合、フリーピストン5の中立位置を一方室RFを縮小し他方室RRを拡大するように変更する。すると、前輪W1側のばね受シリンダC1が伸長し、後輪W2側のばね受シリンダC2が収縮して、車体Bの重量バランスによる姿勢変化を補正して車体Bをフラットにできる。逆に、車体Bの後輪W2側が重くなり、車体Bの後輪W2側が沈み込むような姿勢となる場合、フリーピストン5の中立位置を他方室RRを縮小し一方室RFを拡大するように変更すれば、車体Bをフラットにできる。
【0039】
なお、調節装置Tは、
図3に示すように、モータMと、モータMの回転運動を直線運動に変換する送りねじ機構等の運動変換部Gと、運動変換部GのプランジャPLとフリーピストン5との間に介装されるばねSPとで構成されてもよい。この場合、プランジャPLの移動によってばねSPの附勢力を調節してフリーピストン5の中立位置を変更調節できる。
【0040】
<第二の実施の形態>
第二の実施の形態のサスペンション装置S2は、
図4に示すように、前輪W1側のばね受シリンダC3の液室L3を四輪車両Vの車体Bと前輪W1との間に介装される緩衝器DF1に接続し、後輪W2側のばね受シリンダC4の液室L4を四輪車両Vの車体Bと後輪W2との間に介装される緩衝器DR1に接続している
。つまり、第二の実施の形態のサスペンション装置S2は、一対の緩衝器DF1,DR1を備えており、それぞれの緩衝器DF1,DR1内をそれぞればね受シリンダC3,C4の液室L3,L4に連通している。
【0041】
緩衝器DF1,DR1は、それぞれ、シリンダ11と、シリンダ11内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン12と、シリンダ11内に移動自在に挿入されてピストン12に連結されるピストンロッド13を備えている。
【0042】
ピストンロッド13は、伸側室R1内のみに挿通されていて、緩衝器DF1,DR1は、所謂、片ロッド型の緩衝器本体とされている。また、ピストンロッド13の先端には、環状の固定ばね受17がピストンロッド13に対して軸方向不動に取り付けられるほか、車体Bへの装着を可能とする取付軸19が設けられている。なお、固定ばね受17の形状は環状に限定されず、他の形状とされてもよい。
【0043】
ピストン12には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路14が設けられており、伸側室R1と圧側室R2に充填された液体は減衰通路14を介して伸側室R1と圧側室R2とを行き来できるようになっている。減衰通路14は、図示した例では、双方向の液体の流れを許容し、途中に設けた減衰弁14aにて通過する液体の流れに抵抗を与えるようになっており、液体の通過時に圧力損失を生じせしめて伸側室R1と圧側室R2の圧力に差を生じさせるようになっている。なお、減衰弁14aは、絞りやチョークといった双方向の流れを許容する弁とされてもよいし、一方通行の減衰弁を採用する場合、伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する減衰弁と反対の流れのみを許容する減衰弁を減衰通路14に並列に設けてもよい。なお、伸側室R1および圧側室R2内に充填される液体は、作動油のほか、たとえば、水、水溶液といった液体を使用可能である。また、液体に、電気粘性流体を利用する場合、減衰弁14aに代えて減衰通路14に電界を作用させる電界発生装置を設けてもよく、液体に、磁気粘性流体を利用する場合、減衰弁14aの代りに減衰通路14に磁界を作用させる磁界発生装置を設けてもよい。
【0044】
シリンダ11の
図4中下端外周には、筒状のハウジング15が設けられており、シリンダ11とハウジング15との間には環状隙間が形成されている。また、ハウジング15は、シリンダ11に対してシリンダ11の下端外周に設けたフランジ11aに当接した状態で取り付けられていて、ハウジング15の下端開口部は閉塞されている。
【0045】
さらに、シリンダ11の外周には、筒状の可動ばね受16が摺動自在に装着されている。この可動ばね受16は、シリンダ11の外周に摺接する筒部16aと、筒部16aの上端外周に設けた環状のシート部16bとを備えており、筒部16aは、シリンダ11の外周とハウジング15の内周に摺接している。よって、ハウジング15とシリンダ11との間の環状隙間に可動ばね受16の筒部16aが挿入されており、ハウジング15内に液室L3,L4が形成されている。この液室L3,L4は、シリンダ11の下方側に設けた通孔11bによって圧側室R2に連通されており、液室L3,L4にはシリンダ11内に充填される液体と同様の液体が充填されている。なお、シート部16bの形状は環状に限定されず、他の形状とされてもよい。
【0046】
また、可動ばね受16の筒部16aの内周には、シリンダ11の外周に摺接するシールリング16cが設けられ、ハウジング15の内周には、可動ばね受16の筒部16aの外周に摺接するシールリング15aが設けられている。さらに、ハウジング15の下端には、シリンダ11のフランジ11aに密着するシールリング15bが設けられている。これらシールリング15a,15b,16cによって、液室L3,L4は液密に保たれている。なお、シリンダ11の外周にフランジ11aを設ける代りに、ハウジング15の下端の内周に環状の底部を設けて、この底部をシリンダ11に溶接等により固定する等としてもよく、シリンダ11に対するハウジング15の固定構造については図示したものに限られない。また、シールリング15aを設ける代りに、可動ばね受16の筒部16aの外周にハウジング15の内周に摺接するシールリングを設けてもよい。
【0047】
そして、可動ばね受16と固定ばね受17との間であって緩衝器DF1,DR1の外周には、コイル状の懸架ばね18が介装されており、緩衝器DF1,DR1がこの懸架ばね18によって伸長方向に附勢されている。また、シリンダ11の下端には、前述した車両の車軸へ装着を可能とするブラケット20が設けられている。よって、サスペンション装置S2は、ピストンロッド13の上端に設けた取付軸19とシリンダ11の下端に設けたブラケット20を利用して四輪車両Vの車体Bと前後輪W1,W2との間に取り付けできるようになっている。そして、このようにサスペンション装置S2を車体Bと前後輪W1,W2との間に介装すると、懸架ばね18は、車体Bの重量により圧縮されて、この車体Bを支えて弾性支持するようになっている。
【0048】
そして、懸架ばね18は、車体からの荷重を受けて可動ばね受16を図中下方へ附勢しており、可動ばね受16を介して懸架ばね18の附勢力が液室L3,L4に伝達されて液室L3,L4が加圧される。液室L3,L4は、シリンダ11に設けた通孔11bによって圧側室R2に連通されているので、懸架ばね18の附勢力によってシリンダ11内の伸側室R1および圧側室R2も同様に加圧されている。
【0049】
また、緩衝器DF1,DR1の液室L3,L4は、圧側室R2を介して、互いに流路P1を介して連通されており、それぞれ、ハウジング15、可動ばね受16、懸架ばね18および流路P1によって、各ばね受シリンダC3,C4が構成されている。なお、本例では、流路P1は、ピストンロッド13内を貫通する貫通孔13aと、管路21とで構成されているが、緩衝器DF1,DR1の圧側室R2を経由せずに直接液室L3,L4同士を連通させてもよい。流路P1がピストンロッド13に設けた貫通孔13aとピストンロッド13の上端の貫通孔13a同士を接続する管路21とで構成されると、管路21が車体B内に格納されるので流路P1を保護できるとともに流路P1の取り回しも容易となる。なお、流路P1には、第一の実施の形態のサスペンション装置S1と同様に、前述したセンターシリンダCCおよび切換弁7が設けられている。
【0050】
以上のように、本例のサスペンション装置S2にあっては、緩衝器DF1にばね受シリンダC3を一体化し、緩衝器DR1にばね受シリンダC4を一体化して構成されている。以下、サスペンション装置S2の作動について説明する。
【0051】
前述したように、懸架ばね18の附勢力F
Sによって、液室L3,L4が加圧されている。液室L3,L4の受圧面積(この場合、可動ばね受16の筒部16aの断面積に等しい)をA
Sとすると、液室L3,L4内の圧力P
Rは、P
R=F
S/A
Sとなっている。前述の通り、液室L3,L4の圧力P
Rは、通孔11bを通じてシリンダ11内に伝達されるので、伸側室R1および圧側室R2の圧力も液室L3,L4の圧力P
Rに等しい。よって、ピストンロッド13の断面積をA
Rとすると、車両における車体は、懸架ばね18が発生する附勢力F
Sと圧力P
Rにより発生するピストンロッド13を押し上げる反発力A
R・P
Rの合力によって支えられる。
【0052】
サスペンション装置S2における緩衝器DF1,DR1が同相で伸長する行程にある場合、ピストン12の
図4中上方側への移動により、圧縮される伸側室R1内の液体は、減衰通路14および減衰弁14aを通過して拡大される圧側室R2へ流れる。液体が減衰弁14aを通過する際の圧力損失により、伸側室R1の圧力は圧側室R2の圧力より高くなって圧力差が生じ、緩衝器DF1,DR1は、この圧力差に応じて伸長を抑制する伸側減衰力を発揮する。また、緩衝器DF1,DR1の伸長により各緩衝器DF1,DR1では、シリンダ11から退出するピストンロッド13の体積分の液体が圧側室R2で不足する。これに対して、懸架ばね18の附勢力F
Sによって可動ばね受16が
図4中下方へ押されて移動して液室L3,L4が圧縮され、各緩衝器DF1,DR1において、液室L3,L4からそれぞれ圧側室R2へ前記不足分に見合った液体が補充される。
【0053】
サスペンション装置S2における緩衝器DF1,DR1が同相で収縮する行程にある場合、ピストン12の
図1中下方側への移動により、圧縮される圧側室R2内の作動油は、減衰通路14および減衰弁14aを通過して拡大される伸側室R1へ流れる。液体が減衰弁14aを通過する際の圧力損失により、圧側室R2の圧力より伸側室R1の圧力が低くなって圧力差が生じ、緩衝器DF1,DR1は、この圧力差に応じて収縮を抑制する圧側減衰力を発揮する。また、緩衝器DF1,DR1の収縮により各緩衝器DF1,DR1では、シリンダ11内へ侵入するピストンロッド13の体積分の液体がシリンダ11内から液室L3,L4へ押し出される。液室L3,L4への液体の流入により、可動ばね受16が
図1中上方へ押し上げられて懸架ばね18が圧縮され、各緩衝器DF1,DR1において、液室L3,L4の容積が拡大されて前述の液体が液室L3,L4によって吸収される。
【0054】
なお、緩衝器DF1,DR1が同相で伸縮する場合、液室L3,L4および左右のシリンダ11内の伸側室R1と圧側室R2の合計容積は等しくなる。よって、前輪W1側の緩衝器DF1とばね受シリンダC3と、後輪W2側の緩衝器DR1とばね受シリンダC4とで液体の行き来はないので、切換弁7の開閉状態とは無関係に前述した作動を呈する。
【0055】
つづいて、切換弁7を開弁状態とし、緩衝器DF1,DR1が逆相で伸縮する場合について説明する。たとえば、緩衝器DF1が収縮して緩衝器DR1が伸長する場合、緩衝器DF1の収縮に伴ってシリンダ11内にピストンロッド13が侵入し、懸架ばね18の圧縮によって可動ばね受16が下方へ押されて液室L3が圧縮される。よって、液室L3の容積減少分とピストンロッド13がシリンダ11内に侵入する容積分の液体がシリンダ11から押し出され、センターシリンダCCの一方室RFへ流入する。すると、フリーピストン5が押圧されて
図4中右方へ移動して、他方室RRを圧縮して、センターシリンダCCから一方室RFへ流入した液体に見合った液体が緩衝器DR1のシリンダ11内へ送り込まれる。緩衝器DR1は、緩衝器DF1と逆に伸長するため、シリンダ11内からピストンロッド13が退出し、懸架ばね18が伸長して可動ばね受16に与える附勢力が小さくなり可動ばね受16が上方へ移動する。そのため、液室L4の容積が拡大され、緩衝器DR1のシリンダ11内の伸側室R1と圧側室R2の合計容積も拡大し、センターシリンダCCから送り込まれる液体を吸収する。緩衝器DF1,DR1は、伸縮に伴って伸側室R1と圧側室R2とで液体が減衰弁14aを介して行き来するので、それぞれ、伸縮を抑制する減衰力を発揮する。これに対して、ばね受シリンダC3,C4にあっては、可動ばね受16が懸架ばね18の附勢力を弱める方向へ変位するため、懸架ばね18の附勢力によって車体Bのピッチング抑制する力が弱まる。つまり、切換弁7を開弁状態とし、緩衝器DF1,DR1が逆相で伸縮する場合、ピッチ剛性が小さくなる。緩衝器DF1,DR1、ばね受シリンダC3,C4はともに同様の構造を備えているので、緩衝器DF1が伸長して緩衝器DR1が収縮する場合も同様にピッチ剛性が小さくなる。ばね要素6がフリーピストン5を中立位置へ戻す方向へ附勢力を発揮するため、このピッチ剛性の特性は、第一の実施の形態のサスペンション装置S1と同様にセンターシリンダCCのばね要素6のばね定数によって決定される。ばね要素6のばね定数を大きくすれば、ピッチ剛性を大きくでき、反対に小さくすれば、ピッチ剛性を小さくできる。
【0056】
さらに、切換弁7を開弁状態とし、緩衝器DF1,DR1の一方が伸縮する場合について説明する。たとえば、緩衝器DF1が収縮する場合、緩衝器DF1の収縮に伴ってシリンダ11内にピストンロッド13が侵入し、懸架ばね18の圧縮によって可動ばね受16が下方へ押されて液室L3が圧縮される。よって、液室L3の容積減少分とピストンロッド13がシリンダ11内に侵入する容積分の液体がシリンダ11から押し出され、センターシリンダCCの一方室RFへ流入する。すると、フリーピストン5が押圧されて
図4中右方へ移動して、他方室RRを圧縮して、センターシリンダCCから一方室RFへ流入した液体に見合った液体が緩衝器DR1およびばね受シリンダC4へ送り込まれる。緩衝器DR1では殆ど伸縮せず、可動ばね受16が上方へ移動して液室L4の容積を拡大し、センターシリンダCCから送り込まれる液体を液室L4が主として吸収する。
【0057】
よって、前輪W1側のばね受シリンダC3は収縮作動し、後輪W2側のばね受シリンダC4は伸長作動を呈する。そして、後輪W2側のばね受シリンダC4の伸長作動により懸架ばね18が圧縮されるため、車体Bの後輪W2側を押し上げる力が大きくなる。その結果、前輪W1に対する突上げ入力等によって前輪W1側の懸架ばね18が収縮して車体Bに後転するモーメントが負荷されても、車体Bの後輪W2側を押し上げる力が大きくなり、車体Bの後転方向へのピッチングが抑制される。
【0058】
反対に、緩衝器DR1が路面から突上げ入力を受ける等して収縮する場合には、圧縮される後輪W2側の懸架ばね18によって圧力が上昇するばね受シリンダC4の液室L4から、前輪W1側のばね受シリンダC3の液室L3に液体が流入する。よって、この場合、収縮作動するばね受シリンダC4に対してばね受シリンダC3が伸長作動して懸架ばね18を圧縮して、車体Bの前輪W1側を押し上げる力が大きくなるので、車体Bの前転方向へのピッチングが抑制される。
【0059】
同様に、切換弁7を開弁状態とした状態で、前輪W1側の緩衝器DF1が伸長する場合には、前輪W1において、懸架ばね18が可動ばね受16を附勢する附勢力が小さくなるため、前輪W1側のばね受シリンダC3が伸長作動する。これに連動して、後輪W2側のばね受シリンダC4が収縮作動する。よって、この場合には、車体Bの前転方向のピッチングが抑制される。切換弁7を開弁状態とした状態で、後輪W2側の緩衝器DR1が伸長する場合には、後輪W2において、懸架ばね18が可動ばね受16を附勢する附勢力が小さくなるため、後輪W2側のばね受シリンダC4が伸長作動する。これに連動して、前輪W1側のばね受シリンダC3が収縮作動する。よって、この場合には、車体Bの後転方向のピッチングが抑制される。
【0060】
他方、切換弁7を閉弁した状態では、前輪W1側の緩衝器DF1およびばね受シリンダC3と、後輪W2側の緩衝器DR1およびばね受シリンダ
C4とで液体の交流が絶たれる。そのため、ばね受シリンダC3は、緩衝器DF1のピストンロッド13がシリンダ11内での押しのけ容積分の液室L3への液体の出入りによって伸縮するのみで、伸縮量も少ない。また、ばね受シリンダC4は、緩衝器DR1のピストンロッド13がシリンダ11内での押しのけ容積分の液室L4への液体の出入りによって伸縮するのみで、その伸縮量も少ない。よって、各ばね受シリンダC3,C4における懸架ばね18が車体Bを附勢する附勢力は、緩衝器DF1,DR1の伸縮状況によらず然程小さくならない。よって、切換弁7を閉弁した状態では、緩衝器DF1,DR1が逆位相で伸縮しても懸架ばね18の附勢力が小さくならず、切換弁7が開弁した状態に比較して車体Bのピッチ剛性を大きくできる。したがって、四輪車両Vが制動によって減速する場合や加速によって増速する場合に車体Bに前転或いは後転させるモーメントが作用する場合には、切換弁7を閉弁して流路P1を遮断すれば、車体Bのピッチ剛性が大きくなって、慣性力に起因するピッチングを抑制できる。
【0061】
このように、サスペンション装置S2では、車体Bのピッチングを抑制できるとともに、懸架ばね18,18でばね受シリンダC3,C4に設けた液室L3,L4を加圧するため、システム全体の温度が変化しても車高が一定し、車体Bの姿勢の変化を防止できる。
【0062】
また、サスペンション装置S2では、気室を設けなくとも懸架ばね18と液室L3,L4によって各緩衝器DF1,DR1のシリンダ11内を加圧できるので、気室を伸側室と圧側室に直列に設けなくてはならないサスペンション装置に比較して、取付長を短くでき、車両への搭載性も向上する。
【0063】
さらに、気体によるシリンダ11内を加圧するサスペンション装置では、長期間に亘る使用で気室内の圧力低下が生じうるが、本発明では各緩衝器DF1,DR1内に気体を封入していないので、長期間に亘る使用でも圧力低下による車高の変化が生じず、減衰力特性も変化せず高い信頼性を確保できる。
【0064】
また、サスペンション装置S2は、気室を設けなくとも懸架ばね18と液室L3,L4によってシリンダ11内を加圧できるので、液体の体積弾性係数を確保でき、応答性よく減衰力を発揮できる。さらに、緩衝器本体内に気室を設けて気体ばねが形成されるサスペンション装置の場合、緩衝器本体の圧縮量が増加すると気体ばね反力が著しく増加するので、サスペンション装置全体のばね定数が変位に対して非線形となる。これに対して、本例の各緩衝器DF1,DR1内には気体ばねが形成されないので、サスペンション装置S2全体をばねとしてみた場合にばね定数が変位に対して非線形とならず車両における乗り心地も向上する。
【0065】
また、本例のサスペンション装置S2では、液室L3,L4が中空なハウジング15とハウジング15内に移動自在に挿入されて懸架ばね18によって附勢される可動ばね受16とによって区画形成されるので、各緩衝器DF1,DR1への液室L3,L4の設置が容易である。
【0066】
さらに、本例のサスペンション装置S2では、ハウジング15がシリンダ11の外周に装着され、可動ばね受16がシリンダ11の外周とハウジング15の内周の双方に摺動自在に装着される。このようにサスペンション装置S2を構成すると、シリンダ11を液室L3,L4の形成部品として利用でき、最小限の部品でシリンダ11の外周に液室L3,L4を形成でき、外径もリザーバをシリンダ外周に持つ複筒型緩衝器程度で済み、車両へも無理なく搭載できる。
【0067】
なお、本実施の形態のサスペンション装置S2にあっても、流路P1へのセンターシリンダCCおよび切換弁7の設置の有無は任意であり、これらを設けずともピッチングを抑制できる。また、流路P1へのセンターシリンダCCおよび切換弁7の設置による利点についても本実施の形態のサスペンション装置S2にあっても享受できる。
【0068】
また、本実施の形態のサスペンション装置S2にあっても、四輪車両Vの車体Bと前後輪W1,W2との間ではなく、車体Bと左右輪にそれぞればね受シリンダC3,C4と一体化された緩衝器DF1,DR1を設ける場合には、車体Bのロールを抑制できる。さらに、ばね受シリンダC3,C4と一体化された緩衝器DF1,DR1を四輪車両Vの車体Bと前右輪と後左輪との間に設けるか、或いは、車体Bと前左輪と後右輪との間に設ければ、車体Bのピッチングとロールを抑制できる。なお、車体Bのピッチングやロールを抑制する場合、緩衝器DF1の圧側室R2にばね受シリンダC3の液室L3を連通し、緩衝器DR1の圧側室R2をばね受シリンダC4の液室L4に連通すればよい。よって、緩衝器DF1とばね受シリンダC3を別体とし、緩衝器DR1とばね受シリンダC4を別体としてもよい。
【0069】
<第三の実施の形態>
第三の実施の形態のサスペンション装置S3は、
図5に示すように、第二の実施の形態のサスペンション装置S2で液室L3,L4をシリンダ11の外周に設けているのに対して、緩衝器DF2,DR2におけるピストンロッド13の外周にばね受シリンダC5,C6を設けた点で異なっている。
【0070】
よって、第二の実施の形態のサスペンション装置S2では、シリンダ11の外周にハウジング15を設けていたが、第三の実施の形態のサスペンション装置S3では、ピストンロッド13の上方外周に筒状のハウジング22を設けている。
【0071】
また、第二の実施の形態のサスペンション装置S2では、シリンダ11の外周に可動ばね受16を装着していたが、第三の実施の形態のサスペンション装置S3では、ピストンロッド13の上方外周に可動ばね受23を装着している。
【0072】
以下、第三の実施の形態のサスペンション装置S3が第二の実施の形態のサスペンション装置S2と異なる部分について詳細に説明し、説明の重複を避けるため、同じ部材については同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0073】
ハウジング22は、筒状であって、本例では、ピストンロッド13の上端外周に取り付けられている。具体的には、ハウジング22は、上端内周に環状の取付部22aを備えており、この取付部22aがピストンロッド13の外周に取り付けられている。このように、ハウジング22をピストンロッド13に取り付けると、ハウジング22とピストンロッド13との間に環状隙間が形成される。
【0074】
可動ばね受23は、ピストンロッド13の外周に摺動自在に装着されている。可動ばね受23は、ピストンロッド13の外周に摺接する内筒23aと、内筒23aの外周に設けた外筒23bと、内筒23aの下端と外筒23bの下端と接続するフランジ部23cと、外筒23bの上端外周に設けた環状のシート部23dとを備えている。なお、シート部23dの形状は環状に限定されず、他の形状とされてもよい。
【0075】
そして、内筒23aをピストンロッド13の外周とハウジング22の内周にそれぞれ摺接させて前記環状隙間に挿入して、環状隙間を閉鎖し、ピストンロッド
13とハウジング22の間に液室L5,L6を形成している。また、内筒23aの内周には、ピストンロッド13の外周に摺接するシールリング23eが設けられ、内筒23aの外周には、ハウジング22の内周に摺接するシールリング23fが設けられている。さらに、ハウジング22の取付部22aの内周には、ピストンロッド13の外周に密着するシールリング22bが設けられている。そして、これらシールリング22b,23e,23fによって液室L5,L6が液密状態に維持されている。また、液室L5,L6は、ピストンロッド13内に設けた貫通孔13aを介して圧側室R2に連通されている。ばね受シリンダC5,C6は、ピストンロッド13の外周に装着されるハウジング22と可動ばね受23とで液室L5,L6を形成して構成される。このように、第三の実施の形態のサスペンション装置S3では、緩衝器DF2,DR2の各ピストンロッド13にそれぞればね受シリンダC5,C6を設けている。
【0076】
なお、第三の実施の形態のサスペンション装置S3における緩衝器DF2,DR2の構成は、ピストンロッド13に貫通孔13aが設けられて、シリンダ11にあった通孔11bが廃止されている点を除き、第二のサスペンション装置S2における緩衝器DF1,DR1と同様である。
【0077】
第三の実施の形態のサスペンション装置S3におけるシリンダ11の外周には、ハウジング15および可動ばね受16の代りに、環状の固定ばね受24が取り付けられている。固定ばね受24の形状は環状に限定されず、他の形状とされてもよい。
【0078】
そして、可動ばね受23と固定ばね受24との間であって緩衝器DF2,DR2の外周には、コイル状の懸架ばね18が介装されており、緩衝器DF2,DR2がこの懸架ばね18によって伸長方向に附勢されている。よって、サスペンション装置S3を四輪車両Vの車体Bと前後輪W1,W2との間に介装すると、懸架ばね18は、車体Bの重量により圧縮されて、この車体Bを支えて弾性支持するようになっている。
【0079】
そして、懸架ばね18は、車体からの荷重を受けて可動ばね受23を図中上方へ附勢しており、可動ばね受23を介して懸架ばね18の附勢力が液室L5,L6に伝達されて液室L5,L6が加圧される。液室L5,L6は、ピストンロッド13に設けた貫通孔13aによって圧側室R2に連通されているので、懸架ばね18の附勢力によってシリンダ11内の伸側室R1および圧側室R2も同様に加圧されている。よって、第三の実施の形態のサスペンション装置S3にあっても、第二の実施の形態のサスペンション装置S2と同様に、気室を設けずして、懸架ばね18と液室L5,L6によってシリンダ11内を加圧できるようになっている。
【0080】
以上のように、サスペンション装置S3は構成されており、液室L5,L6が圧側室R2に連通されているので、第二の実施の形態のサスペンション装置S2と同様に、シリンダ11内の圧力は、液室L5,L6の圧力P
Rに等しくなる。よって、ピストンロッド13の断面積をA
Rとすると、サスペンション装置S3は、第二の実施の形態のサスペンション装置S2と同様に、懸架ばね18の附勢力F
Sと圧力P
Rにより発生するピストンロッド13を押し上げる反発力A
R・P
Rの合力によって車体を支える。よって、この第三の実施の形態のサスペンション装置S3にあっては、緩衝器DF2,DR2の各ピストンロッド13にばね受シリンダC5,C6を設けている点で異なるのみで、その作動は第二実施の形態のサスペンション装置S2と同様となる。
【0081】
したがって、サスペンション装置S3にあっても、車体Bのピッチングを抑制できるとともに、懸架ばね18,18でばね受シリンダC5,C6に設けた液室L5,L6を加圧するため、システム全体の温度が変化しても車高が一定し、車体Bの姿勢の変化を防止できる。
【0082】
また、サスペンション装置S3では、気室を設けなくとも懸架ばね18と液室L5,L6によってシリンダ11内を加圧できるので、気室を伸側室と圧側室に直列に設けなくてはならないサスペンション装置に比較して、取付長を短くでき、車両への搭載性も向上する。
【0083】
さらに、気体によってシリンダ11内を加圧するサスペンション装置では、長期間に亘る使用で気室内の圧力低下が生じうるが、本発明では各緩衝器DF2,DR2内に気体を封入していないので、長期間に亘る使用でも圧力低下による車高の変化が生じず、減衰力特性も変化せず高い信頼性を確保できる。
【0084】
また、本例のサスペンション装置S3では、各緩衝器DF2,DR2のピストンロッド13にハウジング22が取り付けられ、可動ばね受23がピストンロッド13の外周とハウジング22の内周の双方に摺動自在に装着される。このようにサスペンション装置S3を構成すると、ピストンロッド13を液室L5,L6の形成部品として利用でき、最小限の部品でピストンロッド13の上端にばね受シリンダC5,C6を形成できる。また、車体側にばね受シリンダC5,C6を設けられるので、取付スペースの関係で車軸側にばね受シリンダC3,C4を設けた緩衝器DF1,DR1の搭載が難しい場合、サスペンション装置S3の構造を採用して車両に搭載できる。反対に、取付スペースの関係で車体側にばね受シリンダC5,C6を設けた緩衝器DF2,DR2の搭載が難しい場合、サスペンション装置S2の構造を採用して車両へ搭載すればよい。
【0085】
また、サスペンション装置S3は、気室を設けなくとも懸架ばね18と液室L5,L6によってシリンダ11内を加圧できるので、液体の体積弾性係数を確保でき、応答性よく減衰力を発揮できる。さらに、緩衝器本体内に気室を設けて気体ばねが形成されるサスペンション装置の場合、緩衝器本体の圧縮量が増加すると気体ばね反力が著しく増加するので、サスペンション装置全体のばね定数が変位に対して非線形となる。これに対して、本例の各緩衝器DF2,DR2内には気体ばねが形成されないので、サスペンション装置S2全体をばねとしてみた場合にばね定数が変位に対して非線形とならず車両における乗り心地も向上する。
【0086】
また、本例のサスペンション装置S3では、液室L5,L6が中空なハウジング22とハウジング22内に移動自在に挿入されて懸架ばね18によって附勢される可動ばね受23とによって区画形成されるので、各緩衝器DF2,DR2への液室L5,L6の設置が容易である。
【0087】
なお、本実施の形態のサスペンション装置S3にあっても、流路P1へのセンターシリンダCCおよび切換弁7の設置の有無は任意であり、これらを設けずともピッチングを抑制できる。また、流路P1へのセンターシリンダCCおよび切換弁7の設置による利点についても本実施の形態のサスペンション装置S3にあっても享受できる。
【0088】
また、本実施の形態のサスペンション装置S3にあっても、四輪車両Vの車体Bと前後輪W1,W2との間ではなく、車体Bと左右輪にそれぞればね受シリンダC5,C6と一体化された緩衝器DF2,DR2を設ける場合には、車体Bのロールを抑制できる。さらに、ばね受シリンダC5,C6と一体化された緩衝器DF2,DR2を四輪車両Vの車体Bと前右輪と後左輪との間に設けるか、或いは、車体Bと前左輪と後右輪との間に設ければ、車体Bのピッチングとロールを抑制できる。
【0089】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。