(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
病院や介護施設で用いられるベッドには、一般的に、ベッドの移動を補助するためのキャスターが設けられている。しかしながら、ベッドは重量物であるため、キャスターを用いたベッドの移動は容易であるとは言い難く、特に、ベッドの脚に設けられたキャスターを特許文献1に開示されるような荷重検出器の載置板部に載置するのは力と手間のかかる作業である。
【0006】
本発明は、ベッドのキャスターを容易に載置部に載置することのできる荷重検出器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、
キャスターを有するベッド上の被験者の荷重を検出する荷重検出器であって、
前記荷重検出器が設置される設置面上で該設置面から離間して支持される単一の板部と、
前記板部の周囲に設けられ且つ前記板部の表面に対して傾斜して該表面と前記設置面との間に延びるスロープ部とを備え、
前記板部は
周縁部、
前記キャスターが載置される載置部であって、前記周縁部の内側に前記周縁部から離間して設けられた載置部、及び
前記載置部と前記周縁部とを連結する連結部とを含み、
更に、前記連結部に取り付けられたひずみセンサを備え、
前記スロープ部は前記載置部を挟んで対向する少なくとも二対のスロープを含む荷重検出器が提供される。
【0008】
第1の態様の荷重検出器は、更に、前記載置部の下面に固定された補強部を備えてもよい。
【0009】
第1の態様の荷重検出器において、前記載置部は前記板部に形成されたスリットによって前記周縁部から離間していてもよい。
【0010】
第1の態様の荷重検出器において、前記周縁部が前記載置部を囲む枠形状を有してもよい。
【0011】
第1の態様の荷重検出器において、前記ひずみセンサは前記連結部の下面に取り付けられていてもよい。
【0012】
第1の態様の荷重検出器において、前記載置部の上面、前記連結部の上面、及び前記周縁部の上面が面一であってもよい。
【0013】
第1の態様の荷重検出器において、前記載置部の上面に、前記キャスターの移動を規制する凹部が設けられてもよい。
【0014】
第1の態様の荷重検出器において、前記載置部の上面が平坦面であってもよい。
【0015】
第1の態様の荷重検出器において、前記連結部は前記載置部の外周に沿って等間隔で複数設けられていてもよい。
【0016】
第1の態様の荷重検出器は、更に、前記板部を支持する支持部及び前記スロープ部を含むガイド部材を備えてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様に従えば、
第1の態様の荷重検出器の製造方法であって、
前記板部及び前記スロープ部を含む単一の部材を鋳造することと、
前記部材における前記連結部の下面に相当する領域を切削又は研削することと、
前記切削又は研削した領域にひずみセンサを取り付けることとを含む製造方法が提供される。
【0018】
本発明の第3の態様に従えば、
第1の態様の荷重検出器の製造方法であって、
前記板部と前記補強部とを含む単一の部材を鋳造することと、
前記部材における前記連結部の下面に相当する領域を切削又は研削することと、
前記切削又は研削した領域にひずみセンサを取り付けることとを含む製造方法が提供される。
【0019】
本発明の第4の態様に従えば、
ベッドの上の被験者の荷重を検出する荷重検出システムであって、
複数の荷重検出器と、
前記複数の荷重検出器に接続され、前記複数の荷重検出器の出力に基づいて前記被験者の荷重を求める制御部とを備え、
前記複数の荷重検出器の各々は第1の態様の荷重検出器である荷重検出システムが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様の荷重検出器によれば、ベッドのキャスターを容易に載置部に載置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の荷重検出器100について、荷重検出器100の上にベッドBD(
図6)を載置して、ベッドBD上の被験者の荷重を検出する場合を例として説明する。
【0023】
図1、
図2、
図3に示す通り、荷重検出器100は、平面視正方形の板部1と、板部1の周囲に設けられた、平面視正方形の枠形状を有するガイド部3とを主に有する。荷重検出器100の使用時には、ガイド部3が床面(設置面)F(
図4、
図5)に設置され、板部1は、ガイド部3に支持されて、床面Fから離間して床面Fと平行に配置される。荷重検出器100が床面Fに配置された状態における、板部1の上面の床面Fからの高さは、限定はされないが、一例として5mm〜15mm程度とし得る。
【0024】
以下の説明においては、板部1の中心を、板部1及び荷重検出器100の中心Oとする。また、板部1の一辺に沿って延びる方向をX方向とし、板部1の当該一辺と直交する他の一辺に沿って延びる方向をY方向とする。荷重検出器100が床面Fに設置された状態において、床面Fとは反対側を向く面を、板部1、ガイド部3の上面とし、床面Fと対向する面を、板部1、ガイド部3の下面とする。
【0025】
板部1は、同一平面上に延在する単一の平板であり、限定はされないが、ステンレス鋼(SUS304等)により形成することができる。板部1は、4つのスリットS1によって、載置部(載置領域)11、連結部(連結領域)12、周縁部(周縁領域)13に区分されている。載置部11、連結部12、周縁部13の上面は面一である。
【0026】
4つのスリットS1は、互いに同一の形状を有し、中心OのX方向両側に、中心Oを通りY方向に延びる直線を中心として線対称に一対設けられており、且つ中心OのY方向両側に、中心Oを通りX方向に延びる直線を中心として線対称に一対設けられている。換言すれば、4つのスリットS1は、中心Oを中心として、4回の回転対称性を有して設けられている。
【0027】
4つのスリットS1の各々は、板部1の辺方向(X方向又はY方向)に直線状に延びる第1部分S11と、第1部分S11の両端部から板部1の対角方向に沿って、中心Oから離間する方向に延びる第2部分S12とを有する。第2部分S12の先端部には、連結部12にたわみが生じた際に板部1に破断が生じないよう丸みが付けられている。
【0028】
載置部11は、4つのスリットS1の第1部分S11によって、周縁部13から離間して板部1の中央に画成された、平面視略正方形の部分(領域)である。本実施形態においては、載置部11の中心は、板部1及び荷重検出器100の中心Oに一致している。荷重検出器100の使用時には、載置部11の上面11aに、ベッドBDのキャスターCT(
図6)が載置される。
【0029】
載置部11の下面11b(
図3)には、補強部材(補強部)2が溶接されている。補強部材2は、載置部11の上面11aにキャスターCTが載置された際に載置部11に生じ得るたわみを防止又は抑制するために設けられている。本実施形態においては、補強部材2は、載置部11に平行に貼り付けられた板状部材であり、略三角形状の肉抜き部hを4つ有する。しかしながら、補強部材2の形状はこれには限られず、載置部11に生じ得るたわみを防止又は抑制できる、板状、梁状等の様々な形状の部材を補強部材2として用いることができる。
【0030】
連結部12は、載置部11と周縁部13とを連結する部分(領域)であり、4つのスリットS1によって、載置部11の四隅にそれぞれ1つずつ、計4つ画成されている。
【0031】
連結部12の各々は、4つのスリットS1の内、中心O周りの周方向に隣接する2つのスリットS1の、互いに対向する第2部分S12によって画成される長尺状の部分(領域)であり、載置部11の角部から周縁部13に向かって、板部1の対角方向に沿って延びている。連結部12の長手方向の一端部は載置部11と連続しており、他端部は周縁部13と連続している。
【0032】
連結部12の各々の下面12bには、4つのひずみゲージGが貼り付けられている。4つのひずみゲージGは、連結部12の長手方向の一端部の近傍、及び他端部の近傍に2つずつ貼り付けられている。連結部12の長手方向の一端部の近傍に貼り付けられた2つのひずみゲージと連結部12の長手方向中央との間の距離は、連結部12の長手方向の他端部の近傍に貼り付けられた2つのひずみゲージと連結部12の長手方向中央との間の距離に等しい。また、連結部12の一端部、他端部に貼り付けられた2つのひずみゲージGは、それぞれ、連結部12の短手方向中央からの距離が互いに等しくなるように配置されている。下面12bにひずみゲージGを貼り付けることにより、ひずみゲージGとキャスターCT等との接触を防止することができる。
【0033】
連結部12の各々に貼り付けられた4つのひずみゲージGは、不図示の配線により互いに接続されて、ホイートストンブリッジ回路WSを構成している。
【0034】
周縁部13は、板部1の中心Oに関して、4つのスリットS1の外側に位置する部分(領域)である。周縁部13は、主に、ガイド部3を通って板部1へと至ったキャスターCTを、滑らかに載置部11へと案内する。
【0035】
本実施形態においては、周縁部13は、載置部11及び4つの連結部12を囲む枠形状を有する部分(領域)である。
【0036】
ガイド部3は、X方向において板部1の両側に設けられた第1ガイド部31、第3ガイド部33と、Y方向において板部1の両側に設けられた第2ガイド部32、第4ガイド部34とを含む。
【0037】
第1ガイド部31は、略三角柱形状を有している。第1ガイド部31の長手方向の一方側の端面31cは長手方向に対して45°傾いており、他方の端面31dは長手方向に対して45°傾いており、且つ端面31cに対して90°傾いている。そのため、第1ガイド部31の平面視形状は台形である(
図2)。
【0038】
第1ガイド部31の、長手方向に直交する断面は、略直角三角形である(
図4)。この断面形状において斜辺を画成する第1ガイド部31の上面が、ベッドBDのキャスターCTを板部1上に案内するための第1スロープSL1である。また、第1スロープSL1の上端部には、板部1を支持するための支持溝gが設けられている。
【0039】
第2ガイド部32は、第1ガイド部31と同一の形状を有する。第2ガイド部32の上面が、第2スロープSL2である。
【0040】
第3ガイド部33は、第1ガイド部31と略同一の形状を有する。第3ガイド部33の上面が、第3スロープSL3である。
【0041】
一方で、第3ガイド部33には、第1ガイド部31とは異なり、長手方向の一端部に、第3スロープSL3の上方に盛り上がった直方体のコネクタ取付部331が設けられている。コネクタ取付部331の外側面には、荷重検出器100と、荷重検出器100の外部の電源やデータロガーとを接続するためのコネクタCが設けられている。
【0042】
また、第3ガイド部33の下面33b(
図3)には、配線収容路332が設けられている(凹設されている)。
【0043】
第4ガイド部34は、第1ガイド部31と略同一の形状を有する。第4ガイド部34の上面が、第4スロープSL4である。
【0044】
一方で、第4ガイド部34は、第1ガイド部31とは異なり、長手方向の一方側の端面34c(
図2)が、長手方向と直交している。
【0045】
第1ガイド部31、第2ガイド部32、第3ガイド部33、第4ガイド部34は、中心O周りの周方向において、この順番で、板部1を囲んで配置されている。板部1のX方向一方側の端部は、第1ガイド部31の支持溝gに配置されて不図示のねじにより第1ガイド部31に固定されており、X方向他方側の端部は、第3ガイド部33の支持溝gに配置されて不図示のねじにより第3ガイド部33に固定されている。同様に、板部1のY方向一方側の端部は、第2ガイド部32の支持溝gに配置されて不図示のねじにより第2ガイド部32に固定されており、Y方向他方側の端部は、第4ガイド部34の支持溝gに配置されて不図示のねじにより第4ガイド部34に固定されている。
【0046】
また、第1ガイド部31〜第4ガイド部34が板部1の周囲に配置された状態においては、第1ガイド部31〜第4ガイド部34の互いに対向する端部は、
図1〜
図3に示す通り、枠状のガイド部3を構成するように、互いに密着する。
【0047】
板部1の下方には、板部1の連結部12の各々において構成されたホイートストンブリッジ回路WSに入力電圧を印加するための配線(不図示)が設けられており、配線収容路332を通って、コネクタCと各ホイートストンブリッジ回路WSとを接続している。
【0048】
また、板部1の周縁部13の下面13bには、各ホイートストンブリッジ回路WSの出力を和算するための和算部(和算回路)4、各ホイートストンブリッジ回路WSと和算部4とを接続する不図示の配線、及び配線収容路332を通って和算部4とコネクタCとを接続する不図示の配線が設けられている。
【0049】
荷重検出器100を用いた荷重検出を行う場合は、まずベッドBDのキャスターCTを、板部1の載置部11上に載置する。具体的には、スロープSL1〜SL4のいずれかを介してキャスターCTを板部1上に登らせ、周縁部13を介して載置部11上に配置する。なお、ベッドBDが有する他の3つのキャスターCTは、他の3つの荷重検出器100の上にそれぞれ載置する。
【0050】
ベッドBD上の被験者の荷重は、ベッドBDの脚BL、キャスターCTを介して載置部11に負荷される。これにより、載置部11と、ガイド部3に固定された周縁部13との間に延びる4つの連結部12の各々にたわみが生じ、4つの連結部12に貼り付けられた16枚のひずみゲージGのそれぞれにおいて、抵抗値が変化する。
【0051】
16枚のひずみゲージGの抵抗値の変化は、4つのホイートストンブリッジWSの出力電圧の変化として出力される。そして、4つのホイートストンブリッジWSの出力電圧の変化が和算部4において和算され、得られた和算値に基づいて被験者Sの荷重が求められる。
【0052】
本実施形態の荷重検出器100の効果を以下にまとめる。
【0053】
本実施形態の荷重検出器100は、ベッドBDのキャスターCTが載置される載置部11をX方向に挟んで対向するスロープSL1、SL3、及びY方向に挟んで対向するスロープSL2、SL4を有する。したがって、載置部11の周囲の略全域から、ベッドBDのキャスターCTを、スロープSL1〜SL4の少なくとも1つを介して、容易に載置部11に載置することができる。
【0054】
例えば、
図7に示すように、病院や介護施設等の床面に、4つの荷重検出器100を、一方向に並ぶ荷重検出器100の中心Oの間の距離をベッドBDの長さ方向におけるキャスターCTの中心間の距離DLに一致させ、且つ上記一方向に直交する方向に並ぶ荷重検出器100の中心Oの間の距離をベッドBDの幅方向におけるキャスターCTの中心間の距離DWに一致させて配置しておけば、ベッドBDの4つのキャスターCTを、様々な方向から、同時に且つ迅速に、4つの荷重検出器100の載置部11の上に載置することが出来る(
図7の矢印a1、a2、a3、a4参照)。
【0055】
この点は、ベッドBDの周囲に壁や医療機器が存在しており、ベッドBDを荷重検出器100に載置するための作業スペースが十分に確保できない場合や、ベッドBD上にすでに救急の患者等が存在しており、ベッドBDを一刻の猶予もなく荷重検出器100の上に正確に載置する必要がある場合等に特に有利である。
【0056】
また、ベッドを荷重検出器に載置するための作業スペースや、作業時間が十分に確保できる場合であっても、ベッドを、荷重検出器の構造によって限定的に指定される所定の方向に直線的に移動させて、複数のキャスターを複数の荷重検出器に同時且つ正確に載置することは、熟練度の低い作業者にとっては困難であり得る。本実施形態の荷重検出器100を用いれば、ベッドBDを荷重検出器100に載置するための方向として様々な方向を用い得るため、熟練度の低い作業者であっても、ベッドBDの複数のキャスターCTを複数の荷重検出器100の載置部11の上に、同時且つ正確に載置することができる。
【0057】
また、本実施形態の荷重検出器100は、ベッドBDのキャスターCTが載置される載置部11の周囲の略全域に、ガイド部3のスロープSL1〜SL4が設けられているため、載置部11に載置されたキャスターCTの床面F上への移動も容易である。荷重検出器の構造によって、キャスターCTを載置部から床面上へ移動させるための方向が限定的に指定されている場合であって、載置部上のキャスターCTの向き(進行方向)が当該方向に一致していない時には、キャスターCTが載置部上に静止した状態のまま、例えばキャスターCTに直接手で触れてその向きを調整して、キャスターCTの進行方向を当該方向に一致させることを要する。しかしながら、本実施形態の荷重検出器100は、キャスターCTを様々な方向に移動させて載置部11から床面F上に移動させることができるため、このような手間がない。
【0058】
本実施形態の荷重検出器100は、平板状の板部1であって、内部に載置部11、連結部12、及び周縁部13が形成された板部1をガイド部3により支持する構造を有するため、載置部11の床面Fからの距離(高さ)が小さい。したがって、ベッドBDを載置部11の上に載置した状態においても、ベッドBDの上面BU(
図6)の床面Fからの距離(高さ)が大きく変化することがない。ベッドBDの上面BUの高さは、予め、ベッド上の患者や被介護者等に医療行為や介護行為を行うのに適した高さに最適化されているため、これを大きく変化することなく使用できる点は有利である。また、載置部11の床面Fからの距離(高さ)が小さいため、スロープSL1〜SL4を介してキャスターCTを載置部11上に持ち上げるために大きな力を必要としない。
【0059】
本実施形態の荷重検出器100は、載置部11と連結部12が平板状の板部1内に形成されており、載置部11の周囲に壁部やロードセル等が存在しないため、ベッドBDのキャスターCTにカバーが設けられていたり、ベッドBDの脚BLに医療用の機器や配線等が固定されている場合であっても、これらのカバーや機器等に荷重検出器100の一部が接触するおそれがない。よって、様々な形態のキャスター(ベッド)を、正確な荷重検出が可能な状態で載置部11上に載置できる。
【0060】
本実施形態の荷重検出器100においては、板部1の載置部11の下面に、板部1のたわみを防止又は抑制する補強部材2が設けられている。これにより、載置部11の周囲の連結部12に生じるたわみの量が適切化される。
【0061】
本実施形態の荷重検出器100においては、平板状の板部1の内部に、周縁部13と、スリットS1によって周縁部13から離間する載置部11とが形成されている。したがって、スロープSL1〜SL4のいずれかを介して板部1に至ったキャスターCTは、ベッドBDやベッドBD上の被験者に衝撃を与えるような大きな隙間をまたぐことなく、周縁部13とスリットS1とを通って、スムーズに載置部11上に移動できる。また、周縁部13が載置部11を囲む枠形状を有するため、キャスターCTが、スロープSL1〜SL4のいずれを介して板部1に至った場合でも、周縁部13とスリットS1とを通って、スムーズに載置部11上に移動できる。
【0062】
更に、本実施形態の荷重検出器100は、載置部11、連結部12、及び周縁部13が面一であるため、周縁部13に至ったキャスターCTは、なめらかに載置部11上に移動できる。
【0063】
更に、本実施形態の荷重検出器100は、載置部11を含む板部1の上面が平坦面であり、キャスターCTに当接してこれを停止させるための壁部等が設けられていないため、載置部11に至ったキャスターCTは、ベッドBDやベッドBD上の被験者に衝撃を与えるような壁部等との衝突を生じることなくベッドBDを載置部11の上に載置される。
【0064】
このような、キャスターCTのスムーズな移動及び停止は、ベッドBD上に救急の患者や、体力の衰えた被介護者等が存在している場合に特に好ましい。
【0065】
本実施形態の荷重検出器100においては、矩形の載置部11の四隅に、連結部12が設けられているため、偏置誤差の影響を抑制して、高い精度で荷重検出を行い得る。被検体(キャスターCT)を、板部1の中心Oからずれた位置に載置することにより、4つの連結部12のホイートストンブリッジWSの各々の出力に偏置誤差が生じ得るが、4つの連結部12が中心Oの周囲に回転対称に設けられていることにより、4つの連結部12のホイートストンブリッジWSの出力の和算値においては4つのホイートストンブリッジWSの各々における偏置誤差が相殺されるためである。
【0066】
<変形例>
第1実施形態の荷重検出器100において、次の変形態様を用いることもできる。
【0067】
板部1に、載置部11、連結部12、周縁部13を設ける方法は上記の態様に限定されず、様々である。
【0068】
具体的には例えば、
図8(a)に示すように、円弧状の第1部分S21と、第1部分S21の両端部から直線状に延びる第2部分S22とを含むスリットS2を、板部1の中心Oを中心として3回の回転対称性を有するように形成してもよい。
【0069】
この態様においては、スリットS2の第1部分S21によって、板部1の中央部に、中心Oを中心とする略円形の載置部11が画成される。また、スリットS2の第2部分S22によって、載置部11の周方向に等間隔に離間した3カ所に、載置部11から載置部11の径方向に延びる、3つの長尺形状の連結部12が画成される。板部1の、載置部11、連結部12を除く部分が周縁部13となる。この態様においても、載置部11は、枠形状を有する周縁部13の内側において、周縁部13に囲まれている。また、載置部11は、スリットS2によって周縁部13から離間している。
【0070】
第1実施形態及び変形例の板部1において、載置部11の周囲に区画される連結部12の数は4つや3つに限られず、任意である。具体的には例えば8つや6つとし得る。複数の連結部12を、中心O周りの周方向において等間隔に配置することにより、第1実施形態の板部1と同様に、偏置誤差の影響の抑制という効果を奏し得る。
【0071】
図8(b)に示すように、Y方向に直線状に延びる第1部分S31と、X方向に直線状に延びる第2部分S32とを有する略L字形状の一対のスリットS3を、中心Oを通りX方向に延びる線分を中心として、線対称に形成してもよい。
【0072】
この態様においては、スリットS3の第1部分S31のX方向一方側に位置する領域に載置部11が画成され、一対のスリットS3の第2部分S32の間に、長尺の連結部12が画成される。板部1の、載置部11、連結部12を除く部分が周縁部13となる。なお、この態様においては、載置部11の外周の内、スロープSL1、SL2、SL4に対向する部分は、隙間を有してスロープSL1、SL2、SL4から離間するように構成されている。スロープSL1、SL2、SL4を介して載置部11に導入されるキャスターCTは、周縁部13を通ることなく載置部11に載置される。
【0073】
第1実施形態の板部1、及び上記変形例の板部1のいずれにおいても、載置部11は、周縁部13の内側に、周縁部から離間して設けられている。ここで、「周縁部の内側」とは、板部内における、周縁部を基準として板部の中心側に位置する領域を意味する。
【0074】
上記の第1実施形態、及び変形例では、連結部12は長尺形状であり、具体的には矩形であるが、これには限られない。連結部12は、載置部11にキャスターCTが載置された場合にたわみが生じ、連結部12に貼り付けられたひずみゲージGを介した荷重検出が行えるような任意の形状とし得る。
【0075】
第1実施形態の荷重検出器100においては、板部1の載置部11、連結部12、周縁部13の上面は面一であったが、これには限られない。例えば、連結部12を周縁部13から載置部11に向かって下方に傾斜する態様とし、載置部11の上面を、周縁部13の上面よりも下方に位置させてもよい。これにより、載置部11の床面からの高さをより小さくし、ベッドBDの上面BUの高さの変化をより小さくすることができる。
【0076】
第1実施形態の荷重検出器100においては、載置部11の上面11aは平坦面であった。しかしながら、これには限られず、載置部11の上面11aに、キャスターCTの移動を規制するための凹部Rを設けても良い。
【0077】
凹部Rは、
図9(a)に示すように、平面視矩形且つ平坦な底部Rbと、RbからX方向及びY方向の両側に延びるスロープRsとを有する、平面視矩形の凹部であってよい。或いは、凹部Rは、
図9(b)に示すように、平面視円形且つ平坦な底部Rbと、Rbを囲むスロープRsとを有する、平面視円形の凹部であってもよい。その他、凹部Rは、キャスターの移動を規制し得る任意の形状とし得る。この変形例においては、載置部11に載置されたキャスターCTは、凹部Rに嵌入して移動を規制される。なお、底部Rbの中心を、板部1の中心Oに一致させてもよい。この場合、凹部Rに嵌入したキャスターCTは、板部1の中心Oに位置合わせされた、より正確な計測を行い得る状態で移動が規制される。
【0078】
第1実施形態の荷重検出器100においては、載置部11の下面11bに、載置部11のたわみを防止又は抑制するための補強部材2が固定されていたが、補強部材2を省略することもできる。
【0079】
第1実施形態の荷重検出器100においては、板部1の連結部12の各々に4つのひずみゲージGを貼り付けてこれらによりホイートストンブリッジWSを構成する4ゲージ法を用いているが、これには限られない。例えば、1ゲージ法又は2ゲージ法を用いて、連結部12に貼り付けるひずみゲージの数を1つ又は2つとすることもできる。また、ひずみゲージに代えて、連結部12に生じたひずみを検出可能な任意のひずみ検出器を用いることができる。これらを総称してひずみセンサと呼ぶ。
【0080】
第1実施形態の荷重検出器100においては、板部1の周囲の、コネクタ取付部331が設けられた部分を除く略全域に、ガイド部3のスロープSL1〜SL4のいずれかが設けられていたが、これには限られない。具体的には例えば、
図10(a)に示すように、第1ガイド部31〜第4ガイド部34の各々において、長手方向両側の端面を長手方向に直交させて、板部1の角部近傍にはスロープが形成されない構成としてもよい。このような態様によっても、載置部11のX方向両側、及びY方向の両側より、キャスターCTを、容易に載置部11上に載置することができる。
【0081】
或いは、
図10(b)に示すように、第3ガイド部33、第4ガイド部34も第1ガイド部31と同一の形状として、載置部11の周囲の全域にスロープが形成された態様とすることもできる。コネクタ取付部331及びコネクタCを有さないこの態様においては、荷重検出器100への給電、及び出力の取り出しは、例えば、無線により行い得る。或いは、荷重検出器100の下側に延びて、床面Fの内部を延びる配線を介して行い得る。
【0082】
第1実施形態の荷重検出器100においては、スロープSL1〜SL4を含むガイド部3が板部1を支持している(即ち、板部を支持する支持部と、スロープとが一体のガイド部として形成されている)がこれには限られない。板部1を支持する支持部と、板部1にキャスターCTを案内するためのスロープとは、別個の部材とし得る。具体的には例えば、平面視正方形の枠状の支持部上に板部1の下面を載置して板部1の外周を支持すると共に、当該枠状の支持部とは別個の板状のスロープを板部1の4辺において板部1の上面に取り付けて、床面F上のキャスターCTを載置部11に案内するためのスロープを構成し得る。或いは、スロープ自体を板部を支持する支持部とすることもできる。具体的には例えば、板状のスロープの上端を板部1の外周に固定し、スロープによって板部1を支持する。
【0083】
第1実施形態の荷重検出器100においては、板部1の平面視形状は正方形であり、ガイド部3の平面視形状は正方形の枠状であったが、これには限られない。板部1の平面視形状を矩形とし、ガイド部3の平面視形状を矩形の枠状としてよい。
【0084】
あるいは、
図11(a)、
図11(b)に示す変形例の荷重検出器200のように、平面視円形の板部201と、平面視円環状のガイド部203とを有する構成とすることもできる。
【0085】
板部201は、板部201の中心Oを中心として4回回転対称に設けられた4つのスリットS201によって、円形の載置部211、長尺形状の4つの連結部212、及び略円環形状の周縁部213に区分されている。ガイド部203の上面には、板部201の周方向の略全域に位置するスロープSLと、スロープSLの存在しない位置に形成されたコネクタ取付部2031が形成されており、コネクタ取付部2031にはコネクタCが取り付けられている。
【0086】
なお、この変形例のように、円形の板部201の周囲に平面視略円環状の一連のスロープSLが形成されている態様においても、板部201の互いに直交する2つの半径方向の各々の両側にスロープSLが存在するため、板部201のX方向両側及びY方向両側に少なくとも二対のスロープが設けられているとみなすことが出来る。
【0087】
第1実施形態及び変形例の荷重検出器を、ストレッチャーや分娩台上の被験者の荷重検出に用いることもできる。本発明において「ベッド」とは、ストレッチャーや分娩台等、医療施設や介護施設において使用される、患者や被介護者が横たわるように構成されたベッド以外の機器をも含むものとする。
【0088】
<製造方法>
次に、第1実施形態の荷重検出器100の製造方法を説明する。
【0089】
荷重検出器100の製造においては、まず、ステンレス鋼の板材を正方形に切断して板部1を得る。そして、板部1に4つのスリットS1を形成して、板部1の内部に載置部11、連結部12、周縁部13を画成する。また、ガイド部3を構成する第1ガイド部材31〜第4ガイド部材34を鋳造等により準備する。
【0090】
次いで、載置部11の下面11bに補強部材2を溶接により固定し、4つの連結部12の各々の下面12bに、4つのひずみゲージGを貼り付ける。この際、4つのひずみゲージGが所定の位置関係で1枚のシート上に配置されたひずみゲージユニットを用いてもよい。
【0091】
次いで、板部1の外周部を第1ガイド部31〜第4ガイド部34の支持溝gに配置し、板部1を、ねじ等の締結具により、第1ガイド部31〜第4ガイド部34に固定する。
【0092】
最後に、4つの連結部12の各々において、4つのひずみゲージを配線により接続してホイートストンブリッジWGを構成し、和算部4、コネクタCを与えると共に、これらを接続する配線を施す。
【0093】
なお、4つのスリットS1を有する板部1、及び載置部11に固定された補強部材2に相当する構造を、鋳造により一体成形してもよい。この場合、鋳造により当該構造を得た後、当該構造における4つの連結部12の裏面12bに相当する領域を切削又は研削し、当該領域の表面粗さを小さくすると共に、連結部12の厚さを整える。これは、ひずみゲージGの貼付を良好に行うためであり、且つ4つの連結部12の厚さを互いに等しくし、荷重検出器100の計測精度を高めるためである。
【0094】
その後、連結部12へのひずみゲージGの貼付、上記と同様の工程による板部1の第1ガイド部31〜第4ガイド部34への固定、配線等を行って荷重検出器100を得る。
【0095】
その他、4つのスリットSを有する板部1、及びガイド部3に相当する構造を、鋳造により一体形成してもよい。この場合も、鋳造により当該構造を得た後、当該構造における4つの連結部12の裏面12bに相当する領域を切削又は研削し、当該領域の表面粗さを小さくすると共に、連結部12の厚さを整える。なお、補強部材2に相当する構造も更に含めて一体成形してもよい。
【0096】
その後、連結部12へのひずみゲージGの貼付、配線等を行って荷重検出器100を得る。
【0097】
<第2実施形態>
第2実施形態の荷重検出システム500について、
図12を参照して説明する。
【0098】
荷重検出システム500は、4つの荷重検出器100と、制御器CONTを主に有する。4つの荷重検出器100と制御器CONTとは配線で接続されている。
【0099】
荷重検出システム500を使用する際には、4つの荷重検出器100を、ベッドBDの4つのキャスターCTに対応する位置関係で、床面F上に配置する(
図7)。そして、ベッドBDの任意の方向に移動させて、スロープSL1〜SL4のいずれか一つを介して、ベッドBDを4つの荷重検出器100の上に載置する。これにより、4つの荷重検出器100の各々は、ベッドBDの脚BLを介して加えられるベッドBD上の被験者の荷重の一部を検出する。
【0100】
4つの荷重検出器100に接続された制御器CONTは、4つの荷重検出器100からの出力を和算し、ベッドBD上の被験者の荷重値を求める。
【0101】
本実施形態の荷重検出システム500は、第1実施形態の荷重検出器100を使用しているため、第1実施形態の荷重検出器100と同様の効果を得ることができる。特に、ベッドBDの4つのキャスターCTを、様々な方向から、同時に且つ迅速に、4つの荷重検出器100の載置部11の上に載置することが出来る。
【0102】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。