特許第6655431号(P6655431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6655431
(24)【登録日】2020年2月5日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20200217BHJP
   B68G 7/06 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   B60N2/58
   B68G7/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-41785(P2016-41785)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-154681(P2017-154681A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年8月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平野 拓美
(72)【発明者】
【氏名】水野 信一
(72)【発明者】
【氏名】田畑 毅
(72)【発明者】
【氏名】山本 博己
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−136600(JP,A)
【文献】 特開平10−211839(JP,A)
【文献】 特開2014−193230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58
B68G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックとヘッドレストを備えた車両用シートであって、
前記シートクッションとシートバックとヘッドレストとの何れかは、
ウレタンパッドの表面を表皮部材で覆った構造を有し、
前記ウレタンパッドと前記表皮部材とは一体成形により前記ウレタンパッドの平坦な部
分における離散的な複数の箇所において前記ウレタンパッドの表面と前記表皮部材とが部
分的に接着され、前記ウレタンパッドの前記平坦な部分と前記表皮部材との前記部分的に
接着されている部分以外の部分における前記表皮部材と前記ウレタンパッドとの間には、
前記ウレタンパッドを構成するウレタンと前記一体成形する時に反応しない性質を有する
フッ素又はシリコンが塗布されたポリエチレンの薄いフィルムが挟まれていて前記表皮部
材が前記ウレタンパッドからはがしやすく形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1記載の車両用シートであって、前記表皮部材は表面を覆う表皮材と前記表皮材
の下のポリウレタンで形成されたクッション材と前記クッション材の裏面を覆う裏生地で
形成されており、前記裏生地は前記ウレタンパッドと接していて前記裏生地が部分的に前
記ウレタンパッドと接着していることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
シートクッションとシートバックとヘッドレストを備えた車両用シートであって、
前記シートクッションとシートバックとヘッドレストとの何れかは、
ウレタンパッドと前記ウレタンパッドの表面を覆う多層構造の表皮部材を有して、前記
ウレタンパッドと前記多層構造の表皮部材の前記ウレタンパッドの側の層とは前記ウレタ
ンパッドの平坦な部分における離散的な複数の箇所において前記ウレタンパッドの表面と
前記多層構造の表皮部材とが一体成形により部分的に接着され、前記ウレタンパッドの前
記平坦な部分と前記多層構造の表皮部材の前記ウレタンパッドの側の層との前記部分的に
接着されている部分以外の部分における前記多層構造の表皮部材と前記ウレタンパッドと
の間には、前記ウレタンパッドを構成するウレタンと前記一体成形する時に反応しない性
質を有するフッ素又はシリコンが塗布されたポリエチレンの薄いフィルムが挟まれていて
前記多層構造の表皮部材が前記ウレタンパッドからはがしやすく形成されていることを特
徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項記載の車両用シートであって、前記多層構造の表皮部材は表面を覆う表皮材と
前記表皮材の下のポリウレタンで形成されたクッション材と前記クッション材の裏面を覆
う裏生地で形成されており、前記裏生地は前記ウレタンパッドと接していて前記裏生地が
部分的に前記ウレタンパッドと接着していることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンパッドの表面を表皮部材(トリムカバー)で覆って形成した車両用シートに係り、特に、ウレタンパッドをトリムカバーと一体成型した車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、ウレタンで形成されたパッド(ウレタンパッド)の表面を表皮部材(トリムカバー)で覆った構成のものが一般的に使用されている。ウレタンパッドに表皮部材が固定されていないと、車両用シートに着座した搭乗者が体を動かしたときにウレタンパッドに対して表皮部材がずれてしまい、着座した搭乗者の快適性が損なわれてしまう可能性がある。
【0003】
このずれの発生を防止するために、特許文献1には、表皮部を略袋状に形成し、その内部に樹脂発泡原料を入れて発泡させることにより、ウレタンパッドと表皮部材とを一体成型することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−117462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような、ウレタンパッドと表皮部材とを一体成型する方法は、ウレタンパッドと表皮部材とを別々に形成してそれらを貼り合せる場合と比べて、貼り合せるための工程が不要になり、生産コストを削減できるメリットがある。
【0006】
しかし、ウレタンパッドの発泡成形工程において、十分な成形が行われずに不良品となった場合に、比較的高価な材料で形成されている表皮部材を不良品となったウレタンパッドから取り除いて再利用する場合がある。この表皮部材をウレタンパッドから取り除く作業は、表皮部材が広い範囲でウレタンパッドと接着しているために、手間がかかると同時に、破れたりして再生できない表皮部材が発生してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、ウレタンパッドと表皮部材とを一体成型する場合にウレタンパッドの発泡成形に不具合が有った場合に、表皮部材をウレタンパッドから比較的容易にかつ確実にはがすことを可能にする車両用シートと提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明では、シートクッションとシートバックとヘッ
ドレストを備えた車両用シートにおいて、シートクッションとシートバックとヘッドレス
トとの何れかは、ウレタンパッドの表面を表皮部材で覆った構造を有し、ウレタンパッド
と表皮部材とは一体成型によりウレタンパッドの平坦な部分における離散的な複数の箇所
においてウレタンパッドの表面と表皮部材とが部分的に接着され、ウレタンパッドの平坦
な部分と表皮部材との部分的に接着されている部分以外の部分における表皮部材とウレタ
ンパッドとの間には、ウレタンパッドを構成するウレタンと一体成形する時に反応しない
性質を有するフッ素又はシリコンが塗布されたポリエチレンの薄いフィルムが挟まれてい
て表皮部材がウレタンパッドからはがしやすく形成した。
また、上記した課題を解決するために、本発明では、シートクッションとシートバックと
ヘッドレストを備えた車両用シートにおいて、シートクッションとシートバックとヘッド
レストとの何れかは、ウレタンパッドとウレタンパッドの表面を覆う多層構造の表皮部材
を有して、ウレタンパッドと多層構造の表皮部材のウレタンパッド側の層とはウレタンパ
ッドの平坦な部分における離散的な複数の箇所においてウレタンパッドの表面と多層構造
の表皮部材とが一体成形により部分的に接着され、ウレタンパッドの平坦な部分と多層構
造の表皮部材のウレタンパッドの側の層との部分的に接着されている部分以外の部分にお
ける多層構造の表皮部材とウレタンパッドとの間には、ウレタンパッドを構成するウレタ
ンと一体成形する時に反応しない性質を有するフッ素又はシリコンが塗布されたフッ素又
はシリコンが塗布されたポリエチレンの薄いフィルムが挟まれていて多層構造の表皮部材
がウレタンパッドからはがしやすく形成した。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウレタンを発泡成形してウレタンパッドと表皮部材とを一体形成するときに、ウレタンパッドと表皮部材とを部分的に接着する構成としたことにより、発泡成形時、ウレタンパッドに成形不良が発生した場合に、表皮部材をウレタンパッドから比較的容易にかつ確実にはがすことを可能になり、比較的高価な材料で形成されている表皮部材を再利用することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1に係る車両用シートの外観を示す斜視図である。
図2】本発明の実施例1に係る車両用シートの表皮部材とフィルムとを組み合わせた状態の断面を示す断面図である。
図3】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドを成形する成形型の下型の断面図である。
図4A】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドを成形する成形型の下型に表皮部材を装着した状態を示す断面図である。
図4B】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドを成形する成形型の下型に表皮部材を装着した状態を示す図4Aの断面のA部を拡大して示した断面図である。
図5】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドを成形する成形型の下型に表皮部材を装着した状態で上型を下型に装着した状態を示す上型と下型の断面図である。
図6】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドを成形する成形型の下型に表皮部材を装着した状態で上型を下型に装着した状態で発泡剤を注入している状態を示す上型と下型の断面図である。
図7】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドを成形する成形型の下型に表皮部材を装着した状態で上型を下型に装着した状態で発泡剤の注入を完了した状態を示す上型と下型の断面図である。
図8】本発明の実施例1に係る車両用シートのウレタンパッドの断面図である。
図9】本発明の実施例1に係る車両用シートのシートバックの斜視図である。
図10】本発明の実施例2に係る車両用シートのウレタンパッドを成形する成形型の下型に表皮部材を装着した状態を示す断面図である。
図11】本発明の実施例2に係る車両用シートのウレタンパッドを成形する成形型の下型に表皮部材を装着した状態で上型を下型に装着した状態を示す上型と下型の断面図である。
図12】本発明の実施例2に係る車両用シートのウレタンパッドを成形する成形型の下型に表皮部材を装着して上型を下型に装着した状態で発泡剤を注入している状態を示す上型と下型の断面図である。
図13】本発明の実施例2に係る車両用シートのウレタンパッドを成形する成形型の下型に表皮部材を装着した状態で上型を下型に装着した状態で発泡剤の注入を完了した状態を示す上型と下型の断面図である。
図14】本発明の実施例2に係る車両用シートのウレタンパッドを成形型の下型から取り出した状態を示すウレタンパッドの断面図である。
図15】本発明の実施例2に係る車両用シートのウレタンパッドを成形型の下型から取り出してセパレータ用のフィルムをウレタンパッドと表皮部材の間から引き出した状態のウレタンパッドの断面図である。
図16】本発明の実施例2に係る車両用シートのシートバックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ウレタンパッドと表皮部材とを一体成型する場合に、ウレタンパッドの発泡成形に不具合が発生したとき、表皮部材をウレタンパッドから比較的容易にかつ確実にはがして再利用することを可能にする車両用シートに関するものである。
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。なお、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。下記に説明する実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明するものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また,ある実施例の構成の一部を他の実施例に置き換えることが可能であり,また,ある実施例の構成に他の実施例を加えることも可能である。また,各実施例の構成の一部について,他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0013】
本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。
【実施例1】
【0014】
まず、本発明の第1の実施形態として、ウレタンパッドと表皮部材とを一体成型する場合に、ウレタンパッドと表皮部材との間にウレタンと反応しない(接着しない)材料で形成されたフィルムを介在させて形成する構成とした場合について説明する。
【0015】
一体成型後にウレタンパッドに不具合が見つかり、表皮部材をウレタンパッドからはがして表皮部材を再生する場合がある。本実施例では、この場合、ウレタンパッドと表皮部材との間にウレタンと反応しない(接着しない)材料で形成されたフィルムを介在させることによりウレタンパッドと表皮部材との接着面積を少なくして表皮部材をはがしやすくした。その結果、ウレタンパッドからはがすことにより表皮部材が破れたり傷ついたりすることをなくし、表皮部材を再生することを可能にした。
【0016】
図1は、本発明で対象とする車両用シート1の基本的な構成を示す。車両用シート1は、搭乗者が着座するシートクッション2、シートクッションに着座した搭乗者が背中をもたれ掛けるシートバック3、搭乗者の頭部を支えるヘッドレスト4を備えている。
【0017】
シートクッション2及びシートバック3、ヘッドレスト4は、それぞれ、内部に発泡成形したウレタンパッドを備え、その表面を表皮部材で覆うようにして構成されている(図9参照)。
【0018】
本実施例におけるシートクッション2及びシートバック3、ヘッドレスト4の表面を覆う表皮部材200の構成を図2に示す。表皮部材200は、表面の表皮材201、その下のポリウレタンで形成されたクッション材202、クッション材202の裏面を覆う裏生地203で形成されている。表皮材201と裏生地203とは、粘着剤でクッション材202に貼り合わされている。
【0019】
210はフィルムで、ウレタンパッド170(図9参照)と表皮部材200との間のセパレータの役目を果たすものである。フィルム210は、例えばポリプロピレン又はポリエチレンにフッ素(F)、シリコン(Si)を添加して形成した厚さが0.2mm以下のものであって、ウレタンと反応しない性質を持っている。
【0020】
フィルム210としては、このほかに、ポリプロピレン又はポリエチレンの薄いフィルムに、無機物質(例えば、無機ガラス粉末体カート)又は非晶質樹脂、又はフッ素、又はシリコン等をコーティングしたものを用いてもよい。
【0021】
フィルム210は、表皮部材200の裏生地203に貼り合せられていてもよいし、貼り合されていなくてもよい。
【0022】
表皮部材200とウレタンパッド170とを一体成型する手順を図を用いて説明する。
【0023】
図3は、ウレタンパッド170を成型するための金型である下型100の断面を示す。下型100は、ウレタンパッド160の形状に対応した断面形状を有して形成されている。
【0024】
図4Aは、下型100に表皮部材200を載せた状態を示す。下型100に対して、表皮部材200は図2に示した構成と上下を逆にした状態、即ち表皮材201が下型100と接する側に向けて載せる。この状態で、フィルム210が上側になる。
【0025】
フィルム210には、図4Aの丸で囲んだA点において、その拡大図を図4Bに示すように、切欠き部211が形成されている。この切欠き部211において、表皮部材200の最上面の裏生地203が露出した状態になっている。この切欠き部211は、図4Aに示した断面では4か所あり、それらが図4Aの紙面に垂直な方向に所定の長さを有して離散的に複数形成されている。
【0026】
図5は、下型100の上に表皮部材200を載せた後に、上型150を下型100の上に載せた状態を示している。上型150には、下型100との間の空間に発泡ウレタンを注入するための導入口151が形成されている。
【0027】
図6は、上型150の導入口151から、図示していない手段で上型150と下型100とで形成された空間に発泡ウレタン材料161を注入している状態を示す。注入された発泡ウレタン素材161は上型150と下型100とで形成された空間内で発泡する。
【0028】
図7は、発泡したウレタンが、上型150と下型100とで形成された空間内に充満した状態を示す。この状態で所定の時間放置すると、発泡したウレタン160が固化する。この時、下型100に載置した表皮部材200は、ウレタンと反応しない(接着しない)材料で形成されたフィルム210で覆われているために、発泡したウレタン160とは接着しない。
【0029】
一方、フィルム210に形成された切欠き部211では、発泡したウレタン160と表皮部材200の最上面の裏生地203が接触して発泡したウレタン160と裏生地203が接着する。この結果、発泡したウレタン160と表皮部材200とは、複数の箇所で部分的に接着した状態となる。
【0030】
図8は、固化した発泡ウレタン160により形成されたウレタンパッド170とこのウレタンパッド170に部分的に接着した表皮部材200とを下型100から取り出した状態を示している。
【0031】
このようにして製造されたシートバック3の例を図9に示す。表面を覆う表皮部材200は、その下側のウレタンパッド170と、領域212で接着している。すなわち、ウレタンパッド170と表皮部材200との間に介在するフィルム210を間にはさんだ部分
ではウレタンパッド170と表皮部材200とは接着していない。一方、フィルム210の切欠き部211に対応する領域212ではウレタンパッド170と表皮部材200とが接着している。
【0032】
図9に示したような表面を表皮部材200で覆った状態で発泡ウレタン160により発泡成形して製造したウレタンパッド170に、発泡量の不足や形状の不良などの不良があった場合、表面を覆う表皮部材200をウレタンパッド170から引きはがして、ウレタンパッド170を廃棄して、表皮部材200を再利用する場合がある。
【0033】
この場合、本実施例によれば、ウレタンパッド170と表皮部材200とが接着している部分は、フィルム210の切欠き部211に対応する接着された領域212だけであり、ウレタンパッド170と表皮部材200とを全面で接着する場合に対して大幅に小さくすることができる。
【0034】
その結果、表皮部材200をウレタンパッド170から引きはがすのに要する時間が短くて済む。更に、引きはがす面積も従来技術の全面を接着した場合と比べて大幅に小さいので、引きはがすことにより表皮部材200に破れが発生する割合を格段に小さくすることができる。
【0035】
なお、上記に説明した実施例では、ウレタンと反応しない(接着しない)材料で形成されたフィルム210をウレタンパッド170と表皮部材200との間に挟む構成を説明したが、フィルム210を用いずに、表皮部材200の裏生地203のウレタンパッド170と接する側にフッ素、又はシリコン、無機物質(例えば、無機ガラス粉末体カート)又は非晶質樹脂等のウレタンと反応しない材料をコーティングしてもよい。この場合も、裏生地203で、フィルム210の切欠き部211に相当する位置に、上記したウレタンと反応しない材料をコーティングしない領域を設ければよい。
【実施例2】
【0036】
実施例1では、フィルム210をウレタンパッド170と表皮部材200との間に挟む構成を説明したが、本実施例では、ウレタンパッドを成型後にフィルムを除去してシートクッション2及びシートバック3、ヘッドレスト4を形成する例を説明する。
【0037】
図10は、下型300に表皮部材200を載せ、その上に分割したフィルム(セパレータ)401,402,403を、隙間421,422を開けて配置した状態を示す。隙間421,422は表皮部材200を露出させて発泡ウレタンと接着させるためのもので、幅は1〜2cmである。
【0038】
ここで、表皮部材200は実施例1で説明したものと同じ構成をしている。フィルム(セパレータ)401,402,403は、ポリプロピレン又はポリエチレンにフッ素(F)、シリコン(Si)を添加して形成したものであって、厚さが実施例1の場合と比べて厚く、2〜3mmで、ウレタンと反応しない性質を持っている。
【0039】
フィルム401,402,403としては、このほかに、ポリプロピレン又はポリエチレンのフィルムに、無機物質(例えば、無機ガラス粉末体カート)又は非晶質樹脂、又はフッ素、又はシリコン等をコーティングしたものを用いてもよい。
【0040】
フィルム401及び403は表皮部材200よりも長く、表皮部材200よりも飛び出している部分(端部)411及び413は、下型300の壁部301,302の上面に延びている。
【0041】
図11は、下型300の上に表皮部材200とフィルム(セパレータ)401,402,403を載せた後に、上型310を下型300の上に載せた状態を示している。上型310には、下型300との間の空間に発泡ウレタンを注入するための導入口320が形成されている。この状態で、フィルム401及び403の下型300の壁部301,302の上面に延びている部分(端部)411及び413は、上型310で押えられている。
【0042】
図12は、上型310の導入口320から、図示していない手段で上型310と下型300とで形成された空間に発泡ウレタン材料181を注入している状態を示す。注入された発泡ウレタン素材181は上型310と下型300とで形成された空間内で発泡する。
【0043】
図13は、発泡したウレタンが、上型310と下型300とで形成された空間内に充満した状態を示す。この状態で所定の時間放置すると、発泡したウレタン180が固化する。この時、下型300に載置した表皮部材200のウレタンと反応しない(接着しない)材料で形成されたフィルム401,402,403で覆われた部分は、発泡したウレタン180とは接着しない。
【0044】
一方、フィルム401,402,403の間の隙間421,422では、発泡したウレタン180と表皮部材200の最上面の裏生地203が接触して発泡したウレタン180と裏生地203が接着する。この結果、発泡したウレタン180と表皮部材200とは、隙間421,422に対応する箇所で部分的に接着した状態となる。
【0045】
図14は、固化した発泡ウレタン180により形成されたウレタンパッド190とこのウレタンパッド190に部分的に接着した表皮部材200とを下型300から取り出した状態を示している。
【0046】
ウレタンパッド190と表皮部材200との間に挟まれたフィルム401,402,403は、端部411及び413がウレタンパッド190と表皮部材200との間からはみ出している状態になっている。この状態で、フィルム401,402,403を挟んだ部分ではウレタンパッド190と表皮部材200とは接着されておらず、端部411及び413を引っ張ってフィルム401,402,403をウレタンパッド190と表皮部材200との間から引き出すことにより、図15に示すように、ウレタンパッド190の表面を表皮部材200で覆った状態になる。
【0047】
このようにして製造されたシートバック3の例を図16に示す。表面を覆う表皮部材200は、その下側のウレタンパッド190と、点線で示した領域431,432で接着している。これにより、シートバック3を使用中に、表皮部材200がウレタンパッド190に対して大きくずれることがなく、快適に使用することができる。
【0048】
一方、図16に示したような表面を表皮部材200で覆った状態で発泡ウレタン180により発泡成形して製造したウレタンパッド190に、発泡量の不足や形状の不良などの不良があった場合、表面を覆う表皮部材200をウレタンパッド190から引きはがして、ウレタンパッド190を廃棄して、表皮部材200を再利用する場合がある。
【0049】
この場合、本実施例によれば、ウレタンパッド190と表皮部材200とが接着している部分は、領域431と432だけであり、従来技術のウレタンパッド190と表皮部材200とを全面で接着する場合に対して大幅に小さくすることができる。
【0050】
その結果、表皮部材200をウレタンパッド190から引きはがすのに要する時間が短くて済む。更に、引きはがす面積も従来の全面を接着した場合と比べて大幅に小さいので、引きはがすことにより表皮部材200に破れが発生する割合を格段に小さくすることができる。
【0051】
なお、上記に説明した実施例では、ウレタンと反応しない(接着しない)材料で形成されたフィルム401,402,403をウレタンパッド190と表皮部材200との間に挟む構成を説明したが、フィルム401,402,403の数はこれに限定されず、表皮部材200とウレタンパッド190とを接着する位置に応じて増減してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1・・・車両用シート 2・・・シートクッション 3・・・シートバック 4・・・ヘッドレスト 100、300・・・下型 150,310・・・上型 160,180・・・発泡ウレタン 170,190・・・ウレタンパッド 200・・・表皮部材 210・・・フィルム 212・・・接着された領域 401,402,403・・・フィルム 431,432・・・接着された領域。
図1
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図4A
図4B
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