(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測点の計測座標値、測点に接続される測線の接続先測点、および測線間の交角情報を含むトラバース測量結果を格納し、前記各測点に対する誤差分配後の付与座標を参照可能な測量データ格納部と、
前記測量データ格納部から他の測点への複合接続がない測点を順次検索して処理対象から除外し、残余の測点を処理対象測点として抽出する前処理部と、
前記各処理対象測点の閉合誤差を演算する誤差算出部と、
測量領域を処理対象測点間を接続する測線により区画した測線網から最小面積単位の単位ポリゴンを抽出するポリゴン抽出部と、
各単位ポリゴンを構成する各測点の閉合誤差の最大値を誤差代表値として該当単位ポリゴンに付与するポリゴン誤差付与部と、
前記閉合誤差分配後の付与座標と測線とを単位ポリゴン毎に誤差代表値による区分を識別可能に表示部に表示する表示制御部と、
を有するトラバース測量結果表示装置。
前記表示制御部は、閉合誤差値の範囲に色彩を対応させたカラーテーブルから選択した色彩によりポリゴンを色分けして表示部に表示する請求項1記載のトラバース測量結果表示装置。
前記ポリゴン抽出部は、処理対象測点に他の処理対象測点から進入する進入測線に対して、該処理対象測点から他の処理対象点に退出する測線のうち、時計回り、あるいは反時計回りの予め定められたいずれか一方の回転方向に計測した角度が最小となる測線を退出測線として指定し、全ての処理対象測点に対する進入測線に一の退出測線を関連付ける関連測線抽出部と、
全処理対象測点に対し、処理対象測点に対する進入測線、該進入測線に対する退出測線、該退出測線に対応する処理対象測点を順次、検索後の処理対象測点が検索開始時の処理対象測点に一致するまで検索し、ポリゴン構成測線を抽出するポリゴン測線抽出部と、
ポリゴン測線抽出部において抽出された全ポリゴン構成測線の円順列による重複を除外した残余のポリゴン構成測線により構成されるポリゴンを処理対象ポリゴンとして出力する出力部とを有する請求項1または2記載のトラバース測量結果表示装置。
測点の計測座標値、および測点に接続される測線の接続先測点を含むトラバース測量結果を格納し、前記各測点に対する閉合誤差分配後の付与座標を参照可能な測量データ格納部と、
前記計測座標値および閉合誤差分配後の付与座標の各々に基づく測点の表示部上における座標を演算する表示位置演算部と、
前記計測座標値および閉合誤差分配後の付与座標の各々に基づく測点を表示部の同一画面上に、双方が識別可能に表示する表示制御部とを有するトラバース測量結果表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、測量成果として閉合誤差分配後の座標のみが提供されてしまった場合、内在している閉合誤差を事後的に確認することが困難になるという欠点がある。
【0006】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、内在する閉合誤差を事後的に確認可能なトラバース測量結果表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記目的は、
測点1の計測座標値、測点1に接続される測線2の接続先測点1、および測線2、2間の交角情報を含むトラバース測量結果を格納し、前記各測点1に対する閉合誤差分配後の付与座標を参照可能な測量データ格納部3と、
前記測量データ格納部3から他の測点1への複合接続がない測点1を順次検索して処理対象から除外し、残余の測点1を処理対象測点1として抽出する前処理部4と、
前記各処理対象測点1の閉合誤差を演算する誤差算出部5と、
測量領域を処理対象測点1、1間を接続する測線2により区画した測線網から最小面積単位の単位ポリゴン7を抽出するポリゴン抽出部8と、
各単位ポリゴン7を構成する各測点1の閉合誤差の最大値を誤差代表値として該当単位ポリゴン7に付与するポリゴン誤差付与部9と、
前記閉合誤差分配後の付与座標と測線2とを単位ポリゴン7毎に誤差代表値による区分を識別可能に表示部10に表示する表示制御部11と、
を有するトラバース測量結果表示装置を提供することにより達成される。
【0008】
本発明によれば、測量領域を処理対象測点1、1間を接続する測線2により区画した測線網から、測線2により囲まれた閉図形をなす最小面積単位のものが単位ポリゴン7としてポリゴン抽出部8により抽出される。各単位ポリゴン7にはポリゴン誤差付与部9により誤差代表値が付与され、この誤差代表値には、該当単位ポリゴン7を構成する各測点1の閉合誤差の最大値が採用される。
【0009】
測量成果の表示制御部11による表示部10への表示は、閉合誤差を配分して付与される座標に測線2を配置してなされ、また、単位ポリゴン7毎に誤差代表値による区分を識別可能な態様でなされる。具体的には例えば、単位ポリゴン7の表示位置あるいはその近傍に誤差代表値を数値表示したり、あるいは、単位ポリゴン7を構成する測線2を誤差代表値の区分に応じて色分けしたり、異なる模様を付したりして表示することができる。
【0010】
したがって、本発明によれば、表示部10の表示を見ることにより、測量成果に内在する閉合誤差を事後的に確認することができ、例えば、この測量成果を利用して近隣地域への別の測量を進めるようなときには、閉合誤差の累積による位置精度の低下のおそれを的確に把握することが可能になる。
【0011】
上述のように、誤差代表値の表示態様には数値等を利用することも可能であるが、上記表示制御部11が、閉合誤差値の範囲に色彩を対応させたカラーテーブル12から選択した色彩によりポリゴン7を色分けして表示部10に表示することも可能であり、この場合には、ポリゴン7の面積に関する閉合誤差のおそれの程度をより直感的に把握することができる。誤差代表値の区分については、閉合誤差の大凡の量を把握しやすく、かつ、煩雑にならない程度の数に設定するのが望ましい。
【0012】
また、上記ポリゴン抽出部8による単位ポリゴン7の抽出は、区画を構成する測線2の組合せを測量網内の全ての測線2を総当たりで検索してすることも可能であるが、上記ポリゴン抽出部8について、
処理対象測点1に他の処理対象測点1から進入する進入測線2に対して、該処理対象測点1から他の処理対象点に退出する測線2のうち、時計回り、あるいは反時計回りの予め定められたいずれか一方の回転方向に計測した角度が最小となる測線2を退出測線2として指定し、全ての処理対象測点1に対する進入測線2に一の退出測線2を関連付ける関連測線抽出部13と、
全処理対象測点1に対し、処理対象測点1に対する進入測線2、該進入測線2に対する退出測線2、該退出測線2に対応する処理対象測点1を順次、検索後の処理対象測点1が検索開始時の処理対象測点1に一致するまで検索し、ポリゴン構成測線2を抽出するポリゴン測線抽出部14と、
ポリゴン測線抽出部14において抽出された全ポリゴン構成測線2の円順列による重複を除外した残余のポリゴン構成測線2により構成されるポリゴンを処理対象ポリゴンとして出力する出力部15とを有して構成すれば、抽出効率が向上する。
【0013】
なお、トラバース測量の閉合多角方式である閉合トラバース測量は、2つ以上の単位多角形により構成される測量網を設定し、トータルステーションによる測定により得られる辺長と広角を条件として新点の位置を算出するのが一般的であるが、辺長を巻尺により、また、広角に関しては磁針により辺の方位を測定して特定することも可能であり、このような測定方法を用いるいわゆるコンパス測量の成果を利用しても実現することができる。特に、コンパス測量が用いられることの多い森林測量では、見通しが悪く、閉合誤差が発生しやすいために、上述のように測量成果に内在する閉合誤差を事後的に確認できることが非常に有意義となる。
【0014】
また、本発明に係るトラバース測量結果表示装置は、
測点1の計測座標値、および測点1に接続される測線2の接続先測点1を含むトラバース測量結果を格納し、前記各測点1に対する閉合誤差分配後の付与座標を参照可能な測量データ格納部3と、
前記計測座標値および閉合誤差分配後の付与座標の各々に基づく測点1の表示部10上における座標を演算する表示位置演算部16と、
前記計測座標値および閉合誤差分配後の付与座標の各々に基づく測点1を表示部10の同一画面上に、双方が識別可能に表示する表示制御部11とを有して構成することもできる。
【0015】
測量成果に内在する閉合誤差を把握するためには、上述のように測量成果を表示する際に、これに内在する閉合誤差をポリゴン単位で数値や色彩などにより表現するほか、閉合誤差付与前後の双方の座標で測点1を識別可能に同時表示しても足りる。この場合、閉合誤差の全体の傾向を感覚的に理解することができ、また、測量成果に内在する閉合誤差をより詳細に把握することができる。
【0016】
さらに、前記各測点1の計測座標値、または閉合誤差分配後の付与座標値を、初期既知点を基準とする相対座標系から公共座標系に変換する座標変換部17を有し、
前記表示制御部11は、公共座標系により表示される測量領域以外の空間情報とともに各測点1を表示した場合には、森林測量の際に測量位置を把握する際の手助けになる。上記空間情報としては、例えば地形図等を利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、内在する閉合誤差を事後的に確認可能なトラバース測量結果表示装置を提供することができ、例えば森林測量の作業効率を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1ないし
図13に本発明に係るトラバース測量結果表示処理の実施の形態を示す。この実施の形態は森林測量データを処理するもので、トラバース測量結果表示装置は、
図1に示すように、中央演算処理装置からなる制御部20、メモリからなる記憶部21、キーボードやディスクドライブ等からなる入出力部22、およびLCDからなる表示部10を備えたノートパソコンやタブレットコンピュータ等の携帯可能なコンピュータにより構成される。
【0020】
上記記憶部21は、上述の森林測量データをデータベース化して格納する測量データ格納部3と、上記森林測量データに対して後述する閉合誤差調整等を反映した上でデータベース化して格納する調整データ格納部23、および閉合誤差の程度に応じて色分け表示用の色彩を対応付けたカラーテーブル12を有する。上記森林測量データは、いわゆるコンパス測量によりコンパス等を用いて測定をするこの実施の形態においては、野帳に転記した測量内容をキーボード入力等することによりトラバース測量結果表示装置に取り込まれる。なお、測量をトータルステーションを用いてした場合には、トータルステーションのデータ出力機能を利用してデータをトラバース測量結果表示装置に取り込むことも可能である。
【0021】
上記測量内容は、具体的には、
図6(a)にイメージとして示すように、測線2毎に、そのID(測線名)、その終始点の点名、方位角、仰俯角、斜距離等により構成される。その測量内容は、既知点(初期既知点)を基準とする相対座標や、磁北を基準とする方位角により特定される。
【0022】
一方、上記測量データ格納部3内には、
図6(b)に示すように、上述の測定内容が公共座標により登録される。この測量データ格納部3内では、測線2と測点1が各々データベース化され、これらのデータベースには、上述の測定内容に加え、測点1の座標値や初期既知点であるか否か、さらには図示を省略するが、測線2のXYZ座標上の各々の距離、測点1が所属する測線2、この測線2により接続される他の測点1の点名、測線2の真北を基準にした方位角、測線2、2間の交角も登録される。森林測量データを処理対象とするこの実施の形態においては、測量領域に繁茂する植物によってGPS信号の受信が容易にはできないために、測量網中に単一の既知点のみが初期既知点として含まれる。
【0023】
また、調整データ格納部23内では、
図6(c)に示すように、上述の測量データ格納部3と同様に測線2と測点1が各々データベース化されるとともに、これらに加えて、測線グループ32やポリゴンについてもデータベース化される。これらのデータベースには、測線グループ32やポリゴンのID、測線グループ32を構成する測線2のリストや、測線グループ32に含まれる測点1のリスト、測線グループ32の閉合誤差の代表値、さらにはポリゴンの属性情報として、当該ポリゴンを構成する測線グループ32のID、その面積や周囲長、重心座標、その下刈りや枝落としの時期、ポリゴンを構成する測線グループ32の閉合誤差の代表値等が登録される。
【0024】
上記カラーテーブル12は、測量精度に応じて閉合誤差値を範囲分けした閉合誤差範囲が、各範囲に異なる色彩を対応付けて格納される。閉合誤差範囲には、具体的には例えば
図2に示すように、-1、0.05以上、0.05から0.03まで、0.03から0.02まで、0.02から0.01まで、0.01以下を設定することができる。
【0025】
また、上記トラバース測量結果表示装置は、上述した制御部20により制御されて動作する座標変換部17、データ登録部24、前処理部4、グループ抽出部25、測線評価部26、ポリゴン抽出部8、ポリゴン誤差付与部9、表示位置演算部16、表示制御部11、属性付与部27、および求積部28を有し、これらにより図示省略の演算部が構成される。
【0026】
上記座標変換部17は、上述したように相対座標からなる測量内容を測量データ格納部3内に登録される公共座標に変換するもので、測量の出発点である初期既知点の公共座標値に基づき、各測点1の座標値等を相対座標から地理座標に変換する。
【0027】
上記データ登録部24は、上述した測量データ格納部3内に測量内容等をデータベース化して登録するもので、上述のように測定内容には含まれていない測点1の座標値や測線2、2間の交角を測定内容に基づいて算出したり、初期既知点であるか否かを登録したり、方位角を磁北から真北へと補正等したりもする。
【0028】
上記前処理部4は、測量データ格納部3内のデータから上述した閉合誤差調整の対象を絞り込むもので、測点1のデータベースを検索し、所属する測線2を介して接続される他の測点1を複数有しない測点1を処理対象から除外し、残余の測点1を処理対象測点1として抽出する。この前処理部4は、抽出結果を上述した調整データ格納部23内の測線2データベースに登録する。また、処理対象から除外する測点1が初期既知点である場合には、これが所属する測線2の他の測点1を新たに既知点に設定する。
【0029】
上記グループ抽出部25は、前処理部4により抽出された処理対象測点1を利用して、閉図形を形成する測線グループ32を抽出する。測線グループ32の抽出は、既知点から予め定められた回転方向に測線2を他の既知点に達するまでたどってなされ、上述のように前処理部4により初期既知点が処理対象から除外された場合には、この除外処理に伴って前処理部4により新たに設定された既知点が最初の出発点とされ、ここから測線2を所定の回転方向に順次たどり、閉図形を構成するようにして出発点に戻ると、この閉図形の構成測線2を測線グループ32として抽出する。
【0030】
また、上記グループ抽出部25は、後述のように測線評価部26が新たに既知点を追加することにより、追加された既知点を新たな出発点として抽出処理を繰り返すことによって、測線グループ32の複数を抽出することができる。2回目以降の抽出の際には、既知点が複数存在するために、測線グループ32は出発点と到着点をそれぞれ異なる既知点とする結合トラバースを構成し、その構成測線2が抽出される。測線グループ32の抽出を終えると、グループ抽出部25は、調整データ格納部23内の測線グループデータベースに対し、抽出した測線グループ32のID、その構成測線2、その構成測点1を登録する。
【0031】
上記測線評価部26は、グループ抽出部25により抽出された測線グループ32の閉合誤差を評価し、その程度に応じて再計測の指示、あるいは閉合誤差を配分して測線グループ32内の測点1を既知点にする。この測線評価部26は、閉合誤差を算出する誤差算出部5と、閉合誤差の程度が小さい場合に測線グループ32内の測点1を既知点にする座標付与部30と、再計測の指示をする交差検出部31とを有する。
【0032】
上記誤差算出部5は、上述の測線グループ32に関する閉合誤差を算出する。この閉合誤差の算出は、座標についてのもので、例えば、到着点である既知点の既知座標値と、出発点からの測点1を経由した複数回の計測によって導かれる到着点の測量座標値との差について、出発点から到着点までの総距離に対する割合を求めることによりなされる。
【0033】
上記座標付与部30は、誤差算出部5により算出された閉合誤差が所定の閾値を超えない場合には、その閉合誤差を配分して測線グループ32の各測点1に座標を付与し、該座標付与点を既知点とする。一方、閉合誤差が閾値を超える場合には、当該測線グループ32の再計測の指示を出力する。例えばこの実施の形態においては、上記閾値には0.05、すなわち閉合誤差が5%を超えたときに再計測の対象とされる。また、以上の処理を終えたら、座標付与部30は、調整データ格納部23内の測点1データベースに対し、測点1のID、付与座標値、座標付与点が既知点であるか否かを登録する。
【0034】
なお、調整データ格納部23内の測線2データベースは、以上の座標付与部30による登録がなされると、この登録内容に従って上述したデータ登録部24により測点1の座標値等の各項目が登録される。登録に際し、データ登録部24は、測線2に付与された新たな座標に基づいて測線2の方位角や仰俯角、斜距離、XYZ座標上の各々の距離、および測線2、2間の交角を算出する。また、測線グループ32に含まれる各測点1の閉合誤差のうち、最大のものを当該測線グループ32についての閉合誤差の代表値として登録する。
【0035】
上記交差検出部31は、座標付与部30による閉合誤差配分が全ての測線グループ32に対してなされた結果、異なる測線グループ32、32間で測線2、2同士の交差が生じているか否かを判定し、交差が生じている場合に再計測の指示を出力する。交差の判定は、この種の適宜の既存のアルゴリズムを利用してすることができる。
【0036】
ポリゴン抽出部8は、以上のようにして既知点で構成された測線グループ32の複数により構成される測線網から、最小単位の閉図形を構成するポリゴンである単位ポリゴン7を抽出する。このポリゴン抽出部8は、上述の処理対象測点1を終始点とする測線2を抽出する関連測線抽出部13と、抽出した測線2を組み合わせて単位ポリゴン7を構成するポリゴン構成測線2を抽出するポリゴン測線抽出部14と、ポリゴン構成測線2により構成される単位ポリゴン7を処理対象のポリゴンとして出力する出力部15とを有する。
【0037】
上記関連測線抽出部13は、処理対象測点1に他の処理対象測点1から進入する進入測線2に対して、該処理対象測点1から他の処理対象点に退出する測線2のうち、時計回り、あるいは反時計回りの予め定められたいずれか一方の回転方向に計測した角度(交角)が最小となる測線2を退出測線2として指定し、全ての処理対象測点1に対する進入測線2に対して、一の退出測線2、言い換えれば特定の単一の退出測線2を関連付ける。上述のように処理対象測点1を抽出の際の基準にした上で、回転方向を特定することにより、回転方向の違いによる測線2の重複検出が防がれ、また、進入測線2と退出測線2の交差角度として最小のものを選択することにより、最小面積の単位ポリゴン7に対応する測線2が漏れなく検出される。
【0038】
上記ポリゴン測線抽出部14は、全処理対象測点1に対し、処理対象測点1に対する進入測線2、該進入測線2に対する退出測線2、該退出測線2に対応する処理対象測点1を順次、検索後の処理対象測点1が検索開始時の処理対象測点1に一致するまで検索し、ポリゴン構成測線2を抽出する。上述同様、処理対象測点1を抽出の際の基準にした上で、同一の処理対象測点1に至るまで測線2、測点1の組み合わせを検索することにより、上述の進入・退出測線2の複数を組み合わせて構成される全てのポリゴンを網羅するポリゴン構成測線2が漏れなく検出される。
【0039】
上記出力部15は、全ポリゴン構成測線2の円順列による重複を除外した残余のポリゴン構成測線2により構成されるポリゴンを処理対象ポリゴンとして出力する。上述のように処理対象測点1を基準にして進入・退出測線2を抽出したことにより、ポリゴン構成測線2は同一のポリゴンに対し、その処理対象測点1の数だけ重複して検出される。このため出力部15は、このような重複をなくし、各ポリゴンに単一のポリゴン構成測線2を対応付ける。また、以上の処理を終えたら、出力部15は、調整データ格納部23内のポリゴンデータベースに対し、ポリゴンのID、および属性情報としてポリゴン構成測線2が属する測線グループ32のIDを登録する。異なる測線グループ32に属する測線2を組み合わせてポリゴン構成測線2が構成される場合、測線グループ32のIDは複数登録される。
【0040】
上記ポリゴン誤差付与部9は、ポリゴン抽出部8により抽出された単位ポリゴン7に誤差代表値を付与する。この誤差代表値は、単位ポリゴン7のポリゴン構成測線2が属する測線グループ32の閉合誤差の代表値であり、調整データ格納部23内の測線グループデータベースを参照して閉合誤差の代表値を対応する単位ポリゴン7と関連付けてポリゴンデータベースに属性情報として登録する。上述のように単位ポリゴン7に複数の測線グループ32のIDが登録されている場合、単位ポリゴン7における閉合誤差の代表値には、例えば、その中での最大値を登録することができる。
【0041】
上記表示位置演算部16は、上述した表示部10への表示に際し、その表示位置をスクリーン座標により設定するもので、上述した測点1、測線2、ポリゴンの地理座標をスクリーン座標に変換し、その表示位置を設定する。この地理座標には、調整データ格納部23内のデータのみならず、測量データ格納部3内のデータ、すなわち閉合誤差の調整前のものも対象にすることができる。
【0042】
上記表示制御部11は、上述の表示部10への表示に際し、その表示の内容や態様を制御する。この表示制御部11は、上述の表示位置演算部16による演算結果を利用し、閉合誤差の調整前後での測線グループ32の公共座標位置の変化を比較しやすいように色分けして重畳表示する誤差表示部33と、上述のカラーテーブル12を参照し、単位ポリゴン7についての閉合誤差の代表値に応じた色彩で単位ポリゴン7を色分け表示する色分け表示部34を備える。また、例えば、測点1や測線2、単位ポリゴン7の表示だけでなく、測点1の計測座標値や閉合誤差調整後の座標値、単位ポリゴン7の属性情報をも合わせて表示させたり、あるいは、測点1や単位ポリゴン7にこれらの情報をリンクさせることもできる。また、上述のように単位ポリゴン7にリンクを設定する場合には、単位ポリゴン7の図心位置に図心表示をした上で、ここにリンクのためのクリッカブルエリアを設定することもできる。
【0043】
また、上記表示制御部11は、再計測の指示に関しては、閉合誤差が閾値を超えている測点1や、交差が検出された測線2を色分け等により強調表示させることができる。さらに、測点1等の表示に対し、その公共座標により位置合わせして地形図等複数の地図を重畳表示させることもできる(
図9参照)。
【0044】
上記属性付与部27は、調整データ格納部23内のポリゴンデータベースに単位ポリゴン7と関連付けて各種の属性情報を登録する。この属性情報には、単位ポリゴン7の周囲長や図心位置といったものも含まれており、属性付与部27は、測線2データベース等を参照してこれらを算出等した上で登録する。
【0045】
上記求積部28は、単位ポリゴン7の面積を算出するものであり、この種の適宜の既存のアルゴリズムを利用して演算される。また、演算した面積は、上述の属性付与部27を介してポリゴンデータベースに属性情報として対応する単位ポリゴン7と関連付けて登録される。
【0046】
以上のトラバース測量結果表示装置を用いたデータ処理の流れを以下に説明する。データ処理は、
図3に示すように、森林測量の成果を入出力部1522を介して入力することにより始められる(ステップS1)。上述のようにノートパソコン等により構成されるトラバース測量結果表示装置は、測量現場に持ち込まれ、上述のデータ入力に先立って数点から数十点の測点1に対する森林測量がなされる。入力データは、例えば1日から数日分の相対座標系の測量成果を対象にしてなされ、初期既知点の公共座標を含めることができる。
【0047】
この入力データには、具体的には例えば、
図15(a)に枠で囲って示すように、測量データが測線2毎、言い換えれば測量作業単位毎に適宜のファイル形式でファイル化されたものを使用することができる。また、後述する再測量時の処理を効率化するために、各ファイルには、測量作業時期の前後を識別可能な名称を付与することができる。
図15(a)に示す「0812」のフォルダに格納される4点のファイルの名称は、2013年8月12日になされた測量において、同日に1番目から4番目までの順番でなされたことを示すもので、その右側には実際に記録されているデータ内容を示したものである。また、同図下方に示すフォルダは、2013年8月12日、13日、19日、21日、および同年9月18日の各日の測量データファイルを格納するもので、"init"ファイルは初期既知点の公共座標を記録したものである。
【0048】
データ入力を受け付けたトラバース測量結果表示装置は、まず最初に初期処理を行う(ステップS2)。初期処理では、初期既知点に対する相対座標系から公共座標系へと座標変換部17により変換することができる。この初期処理を終えたら、座標変換後の測量成果がデータ登録部24により測量データ格納部3内にデータ登録され、測線2や測点1のデータベースが構築される(ステップS3)。
【0049】
次いで、測量データ格納部3内のデータを利用して測線グループ32が抽出される(ステップS4)。測線グループ32の抽出処理は、まず最初に、前処理部4により処理対象測点1を抽出することから始まる。処理対象測点1の抽出は、
図4に示すように、始点あるいは終点の重複数が1である測線2(DANGLE測線)を検出してなされ(ステップS4-1)、DANGLE測線2が検出されると、初期既知点を含むものであるかどうか判定する(ステップS4-2)。
【0050】
判定の結果、初期既知点を含む場合には、接続先の測点1を新たに既知点に設定する(ステップS4-3)。さらに、当該DANGLE測線2を処理対象から除外する(ステップS4-4)。一方、初期既知点を含まない場合には、単にDANGLE測線2を処理対象から除外する(ステップS4-4)。以上のようにして検出したDANGLE測線2に対する処理を終えたら、このようなDANGLE測線2が検出されなくなるまで検出作業を繰り返す(ステップS4-5)。
【0051】
図7は以上の処理対象測点1の抽出処理を図解によりイメージ化したもので、黒丸は測点1を、線分は測線2を、黒丸の近傍に位置する丸で囲った数字は測点1の番号を、線分の長手方向中央部分に位置する数字は測線2の番号を示し、二重丸で囲った数字は既知点であることを示す。
図7(a)は処理前の状態であり、1番のみが唯一の既知点(初期既知点)であり、閉図形を構成しない1番の測線2、2番の測線2、15番の測線2、および16番の測線2の4本のDANGLE測線2を含む。一方、
図7(b)は処理後の状態であり、上述の閉図形を構成しない4本のDANGLE測線2はなくなり、また、3番の測点1が新たに既知点に設定されている。
【0052】
なお、3番の測点1の既知点化は、まず最初に、1番の既知点(初期既知点)において他の測線2との重複がなく、始点あるいは終点の重複数が1となる1番の測線2が除外され、これに伴って2番の測点1が新たに既知点にされるが、続いて2番の既知点において他の測線2との重複がない2番の測線2が除外され、これに伴って3番の測点1が新たに既知点にされる。一方、3番の既知点は、3番の測線2と6番の測線2が重複するため、これにより測線2が除外されることはない。
【0053】
以上のようにして処理対象の測線2が抽出されたら、グループ抽出部25により、既知点から時計回りに最小交角で再度既知点に至る測線2の組み合わせをグループ化する(ステップS4-6)。単一の既知点を基端にして森林測量をしたこの実施の形態において、測線グループ32の抽出処理は、この既知点を含む最小面積の閉図形を構成する測線2の組み合わせをグループ化することから始まる。また、以後においては、閉合誤差の算出、調整処理(ステップS5)と同時並行して測線グループ32の抽出処理(ステップS4)が進められる。
【0054】
先ず、上述のように最初のグループ化処理を終えたら、その閉合誤差を誤差算出部5により算出した上(ステップS5-1)、算出された閉合誤差が閾値を超過しているかどうかを座標付与部30より判定し(ステップS5-2)、超過していない場合には、閉合誤差を調整した上、測線グループ32に含まれる測点1を既知点にする(ステップS5-3)。一方、閉合誤差が閾値を超過している場合には、再計測指示を表示部10に表示して全てのデータ処理を終了する(ステップS5-5)。再計測は、以上のデータ処理が外業においてなされることにより、直ちに着手することができる。なお、上述のように閉合誤差を算出したときには、座標付与部30はその座標を調整データ格納部23内に記録する。
【0055】
以上の一連の測線グループ32の抽出処理は、上述のようにグループ化に伴って新たに既知点が増加することにより、処理対象の測線2に含まれる測点1が全て既知点になるまで繰り返される(ステップS4-7)。
図8はこの処理の流れをイメージ化したもので、実線で示す測線2がグループ化の対象であり、(a)に示すように最初のグループ化処理により、閉合トラバースを形成する3番の測線2、4番の測線2、5番の測線2、および6番の測線2が測線グループ32を構成する。
図8(b)は、2番目のグループ化処理を示すもので、この際には結合トラバースを構成する7番の測線2、8番の測線2、および9番の測線2が新たに測線グループ32になる。
【0056】
このようにしてグループ化処理が完了したら、異なる測線グループ32に属する測線2、2同士が測点1以外で交差しているかどうかを判定し(ステップS5-4)、交差が見つからなかった場合には、そのまま閉合誤差の算出、調整処理を終了し、交差が見つかった場合には、再計測指示を表示部10に表示して閉合誤差の算出、調整処理だけでなく全てのデータ処理を終了する(ステップS5-5)。
【0057】
図9は測線2、2同士の交差が見つかる場合の例を示すもので、(a)は、154番の測点1からの計測作業時に計測対象を546番の測点1とすべきところ、誤って545番の測点1にしてしまったという勘違いによるものを示す。一方、(b)は、
図7(a)に示す測量成果の段階では交差がないものの、その後の閉合誤差の調整により17番の測線2と18番測線2が交差することになってしまったものを示している。これらの図に示すように、上述の再計測指示の表示画面には、交差する測線2が太字等で強調表示される。
【0058】
また、
図10(a)は閉合誤差の算出、調整処理(ステップS5)が完了したときの測点1等の状態をイメージ化したものである。
図7(b)に示す測線グループ32の抽出処理(ステップS4)前においては、既知点が3番の測点1のみで、また、同一番号の測点1についても閉合誤差により位置のばらつきがあり、全ての測線2が両端の測点1において連結される位置関係になかったが、この時点では測点1の全てが既知点とされ、測点1の位置のばらつきも解消されて全ての測線2が両端の測点1において連結される位置関係になっている。
【0059】
加えて、
図15(b)は、上述した再測量後の入力データを示すもので、再測量日である10月4日のフォルダ内には、同日を示す名称が付与されたファイルが格納され、このファイルには、再測量により得られた測量データが記録される。この再測量後の入力データは、再測量前の全入力データに再測量データを付加して構成され、再測量の原因となった不適当な測量データも含む。このため、上述したデータ登録部24は、入出力部1522から以上のデータ入力がなされると、測量データ格納部3内へ格納する際に、ファイル名称から測量作業時期の前後を判別し、同一の測線2についての重複する測量データに関して後書き優先の処理をする。これにより、測量データ格納部3内には、測量作業時期がより早い不適当な測量データが格納されることなく、測量作業時期のより遅い再測量データのみが格納される。再測量後の入力データは、この後、通常の測量データと同様に処理されることにより、再測量成果を反映した処理結果を得ることができるようにされる。
【0060】
さらに、上述のようにして閉合誤差の調整が完了したら、続いてポリゴン抽出部8によりポリゴンの抽出処理が進められる(ステップS6)。ポリゴンの抽出処理は、先ず最初に、関連測線抽出部13により測点(ノード)1毎に進入・退出測線2の組合せを抽出することから始まる(ステップS6-1)。
図10(b)はこの処理内容を示すもので、測点1へと進入する測線2を進入測線2、当該測点1から退出する測線2を退出測線2として定義した上、例えば4番の測点1が進入測線2として5番の測点1に進入した場合を一例として説明したものである。この場合、5番の測点1からの退出測線2は、進入測線2である4番の測線2を除き、5番の測線2、10番の測線2、および9番の測線2の合計3測線2が候補として抽出できる。
【0061】
次いで、進入測線2と退出測線2の組合せが、時計回りに交角が最小の一対からなるかどうかが判定される(ステップS6-2)。この判定は、
図10(b)に示すように、退出測線2が5番の測線2であると交角はθ1、10番の測線2であると交角はθ2、および9番の測線2であると交角はθ3であることから、最小交角であるθ1に対応する5番の測線2が退出測線2に決定される。このような判定結果に基づいて絞り込みを終えたら(ステップS6-3)、
図11(a)に示す進入測線2と退出測線2の組合せが抽出される。
図12は以上の組合せ抽出をイメージ化したもので、測量網内部の個々のポリゴンを構成可能な進入・退出測線2が時計回りで交角最小の判定により検出される。
【0062】
この後、以上のようにして抽出した進入測線2と退出測線2を組み合わせ、ポリゴン測線抽出部14により、区画(ポリゴン)を構成する測線2の組合せの全てを抽出する(ステップS6-4)。この抽出は、処理対象測点1を起点として測線2を巡回して同一の処理対象測点1に至るまでの経路を検索して行うことができ、時計回りや反時計回り、交角の最小、最大の条件を組み合わせることにより、経路探索に用いる適宜の既存のアルゴリズムを利用してすることができる。
図11(b)にその抽出結果を示す。
【0063】
また、この抽出結果では、区画を構成する測線2の組合せが処理対象測点1毎に算出され、区画が重複検出されてしまうために、次いで、重複する組合せを処理対象から除外すれば(ステップS6-5)、区画を構成する測線2、すなわちポリゴン構成測線2の抽出が完了する。
【0064】
さらに、以上のようにしてポリゴン構成測線2を抽出したら、求積部28によりポリゴンの面積が算出されるとともに、属性付与部27によりポリゴンの周囲長や図心位置が算出される(ステップS6-6)。また、ポリゴン誤差付与部9により、ポリゴン内に含まれる全ての測点1の閉合誤差を検索してポリゴンの閉合誤差の代表値が決定される。
【0065】
加えて、この実施の形態においては、測量網の外縁により構成されるポリゴンには属性情報を設定しないことから、ここで反時計回りの測線グループ32を構成するポリゴン構成測線2を処理対象から除外した上(ステップS6-7)、出力部15により残余のポリゴン構成測線2により構成される単位ポリゴン7を作成し、また、この単位ポリゴン7に対し、求積部28や属性付与部27が面積や周囲長等を、また、ポリゴン誤差付与部9により単位ポリゴン7の閉合誤差の代表値を属性情報として設定すれば(ステップS6-8)、ポリゴン抽出処理が完了する。なお、キーボードを操作して属性付与部27により単位ポリゴン7に新たな属性情報を追加することも可能であり、森林管理のための森林測量を行うこの実施の形態においては、下刈りや枝落としなどの林班等に応じた作業領域がポリゴン化されることにより、その属性情報にこれらの作業時期を登録し、作業の進捗状況を単位ポリゴン7の位置情報とともに管理する。また、上述のポリゴン構成測線2の絞り込みは、測線グループ4の抽出に際して時計回りを正数、反時計回りを負数として処理する既存のアルゴリズムによることが可能である。
【0066】
最後に、以上の処理結果に基づいて表示処理(ステップS7)を行い、表示部10に処理結果を表示すれば、データ処理が完了する。表示処理は、表示制御部11により公共座標系を適宜縮尺して上述した単位ポリゴン7を表示部10に表示したり、測点1と測線2を表示したり、あるいはカラーテーブル12を参照してこれらに閉合誤差の代表値に応じた色彩を付与してすることができる。
【0067】
図2は表示画面の一例であり、測点1、測線2、および単位ポリゴン7を表示し、また、単位ポリゴン7に閉合誤差の代表値に応じた色彩を付与したものである。この表示では、閉合誤差の程度に応じて単位ポリゴン7が色分け表示される。また、
図13は、測点1の近傍にそれぞれの閉合誤差の代表値の表示を追加するとともに、二点鎖線で示す単位ポリゴン7の重心位置に単位ポリゴン7の属性情報にリンクされたクリッカブルエリアを追加したものである。
【0068】
また、
図14(a)は、上述の単位ポリゴン7に代えて測点1に対して閉合誤差に応じた色彩を付与したもので、さらに、
図14(b)は、測点1と測線2を閉合誤差の調整前後の地理座標に基づいて色分けして重畳表示したものである。また、このほかにも例えば、上述した下刈りや枝落としのそれぞれの実施状況に応じて単位ポリゴン7を色分け表示することも可能である。
【0069】
なお、以上の実施の形態においては、森林管理での用途がないために測量網の外縁の閉図形をポリゴン化しない場合を示したが、対応するポリゴン構成測線2の除外処理(ステップS6-8)を省くことにより、ポリゴンの作成や属性情報の設定をすることも可能である。