特許第6655894号(P6655894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6655894
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】誘導システム及び誘導方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/20 20180101AFI20200220BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20200220BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   G16H40/20
   G01C21/26 P
   G08G1/005
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-129582(P2015-129582)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-16229(P2017-16229A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】515177815
【氏名又は名称】株式会社テクノメディアラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【弁理士】
【氏名又は名称】東田 潔
(72)【発明者】
【氏名】曽根高 則義
【審査官】 山本 雅士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−080676(JP,A)
【文献】 特開2007−017192(JP,A)
【文献】 特開2008−152449(JP,A)
【文献】 特開2014−086001(JP,A)
【文献】 特開2012−014654(JP,A)
【文献】 特開2007−132721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 − 80/00
G06Q 10/00 − 99/00
G01C 21/26
G08G 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域内で、複数の被誘導者を各被誘導者個別に設定された経路で案内する誘導システムであって、
前記各被誘導者に固有のIDを設定して生成するID生成手段と、
前記生成された各ID情報に前記個別に設定された経路情報を対応させて誘導情報を生成し、記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から各誘導情報を読み出して前記各被誘導者の身体に装着可能又は携帯可能な記録媒体にID情報を登録するID入力手段と、
前記ID情報が登録された記録媒体を装着又は携帯した各被誘導者が、前記経路を移動すると、前記各被誘導者の記録媒体から発信された各ID情報を前記領域内に複数箇所設置された感知手段が逐次感知し、感知された各ID情報を受信する受信手段と、
前記受信した各ID情報に対応する誘導情報を前記記憶手段から読み出して、読み出された誘導情報に前記各ID情報によって一意に決める識別情報を付する暗号化情報を逐次又は同時に生成する暗号化処理を施暗号化処理手段と、
前記各暗号化情報を結合して暗号化情報群を生成する結合手段と、
前記暗号化情報を前記各被誘導者の身体に装着又は携帯されている各記録媒体に送信する送信手段と、を有し、
前記送信された各暗号化情報は、前記各被誘導者に装着又は携帯された各記録媒体によって受信されると、前記記録媒体に登録されたID情報によって、当該IDに対応した誘導情報からなる暗号化情報のみが復号化されるものであることを特徴とする誘導システム。
【請求項2】
前記被誘導者が、前記経路の最終目的地に到達したことを前記感知手段が感知すると、前記IDを無効化し、前記記憶手段から誘導情報を消去する無効化手段を有することを特徴とする請求項1記載の誘導システム。
【請求項3】
前記復号化とともに、被誘導者の誘導に供するデバイスを作動させる作動制御手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の誘導システム。
【請求項4】
前記デバイスは、少なくとも、前記領域内の所定のエリアに被誘導者の進入を許容する開扉手段と、誘導情報を文字情報、画像情報、音声情報の一つ又は二つ以上で表示する表示手段とのいずれかであることを特徴とする請求項3記載の誘導システム。
【請求項5】
前記表示手段によって表示された誘導情報は、前記記録媒体が、前記感知手段によって前記記録媒体に登録されたID情報を感知できない距離まで離隔されると、消去されることを特徴とする請求項4記載の誘導システム。
【請求項6】
前記記録媒体を装着又は携帯した被誘導者が通過することにより、前記感知手段が取得する各ID情報によって、各被誘導者別にログデータを生成するログデータ生成手段と、生成されたログデータの閲覧を可能とする監視手段とを備えたことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項記載の誘導システム。
【請求項7】
前記経路情報は、被誘導者が立ち寄る複数のエリア情報を含み、前記感知手段が、前記経路情報で設定された順路に従って被誘導者が順次前記各エリアに立ち寄ったことを感知すると、前記ログデータ生成手段は、立ち寄り情報を有するログデータを生成することを特徴とする請求項記載の誘導システム。
【請求項8】
前記監視手段は、被誘導者が、前記順路に従ったエリアの立ち寄り順序と異なる順序でエリアにアクセスしたことを検知すると、前記立ち寄り情報を有するログデータと前記エリア情報を含む経路情報を比較し、経路情報で設定されている順序の経路に復帰するための指示情報を文字情報、画像情報、音声情報の一つ又は二つ以上で表示する表示手段に表示させることを特徴とする請求項記載の誘導システム。
【請求項9】
前記経路情報に含まれるエリア情報は、前記順路に従った立ち寄り順序とともに、当該順序の可変な範囲内で異なる順序のコースパターンを登録したテーブルを有し、被誘導者が、前記エリアの立ち寄り順序と異なる順序でエリアにアクセスしたことを検知すると、前記監視手段は、前記立ち寄り情報を有するログデータと前記エリア情報を含む経路情報を比較し、当該異なる順序でアクセスしたエリアとその順序に該当するコースパターンを前記テーブルから読み出して、前記エリア情報の順路に従った立ち寄り順序を、前記読み出したコースパターンに従った順序に変更する経路変更手段を有することを特徴とする請求項又は請求項記載の誘導システム。
【請求項10】
所定の領域内で、管理サーバを介して、複数の被誘導者を各被誘導者個別に設定された経路で案内する誘導方法であって、
前記各被誘導者に固有のIDを設定して生成することを前記管理サーバに要求するステップと、
前記生成された各ID情報に前記個別に設定された経路情報を対応させて誘導情報を生成し、前記管理サーバで記憶するステップと、
前記記憶された各誘導情報を読み出して前記各被誘導者の身体に装着可能又は携帯可能な記録媒体にID情報を登録するステップと、
前記ID情報が登録された記録媒体を装着又は携帯した各被誘導者が、前記経路を移動すると、前記各被誘導者の記録媒体から発信された各ID情報を前記領域内に複数箇所設置された感知手段が逐次感知し、感知された各ID情報を前記管理サーバが受信するステップと、
前記受信した各ID情報に対応する誘導情報を読み出して、読み出された誘導情報に前記各ID情報によって一意に決める識別情報を付する暗号化情報を逐次又は同時に生成するステップと、
前記暗号化情報を結合して暗号化情報群を生成するステップと、
前記暗号化情報群を各被誘導者の身体に装着又は携帯されている前記各記録媒体に送信するステップと、
前記送信された暗号化情報群から、前記識別情報によって、前記各被誘導者に装着又は携帯された記録媒体に登録されたID情報が、当該IDに対応した誘導情報を識別し、識別された誘導情報のみを復号化するステップと、
を有することを特徴とする誘導方法。
【請求項11】
前記経路情報は、被誘導者が立ち寄る複数のエリア情報を含み、前記感知手段が、前記経路情報で設定された順路に従って被誘導者が順次前記各エリアに立ち寄ったことを感知すると、立ち寄り情報を有するログデータを生成するステップと、
前記ログデータを閲覧して監視するステップと、
前記監視によって、前記被誘導者が、前記順路に従ったエリアの立ち寄り順序と異なる順序でエリアにアクセスしたことを検知すると、前記管理サーバが、前記立ち寄り情報を有するログデータと前記エリア情報を含む経路情報を比較するステップと、
経路情報で設定されている順序の経路に復帰するための指示情報を文字情報、画像情報、音声情報の一つ又は二つ以上で生成するステップと、を有し、
生成された指示情報を前記被誘導者が閲覧可能な表示手段に表示させるステップと、
を有することを特徴とする請求項10記載の誘導方法。
【請求項12】
前記経路情報に含まれるエリア情報に、前記順路に従った立ち寄り順序とともに、当該順序の可変な範囲で異なる順序のコースパターンを登録したテーブルを生成するステップと、
被誘導者が、前記エリアの立ち寄り順序と異なる順序でエリアにアクセスしたことを前記監視によって検知すると、前記管理サーバが、前記立ち寄り情報を有するログデータと前記エリア情報を含む経路情報を比較するステップと、
当該異なる順序でアクセスしたエリアとその順序に該当するコースパターンを前記テーブルから読み出して、前記エリア情報の順路に従った立ち寄り順序を前記読み出したコースパターンに従った順序に変更するステップと、
を有することを特徴とする請求項11に記載の誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の領域内で、複数の被誘導者を各被誘導者個別に設定された経路で案内する誘導システム及び誘導方法に関し、特に、病院内でスムーズに患者を案内するための誘導システム及び誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の領域内において、異なるルートで複数の被誘導者を効率よく案内するための工夫がなされてきた。特に、総合病院の場合、患者個々に移動する経路は異なり、特定の移動パターンのルートだけを想定して導線を設計しても、到底誘導の全体効率を図ることはできない。
【0003】
また、院内の呼出し待ち受け状態を含む誘導途上において、病院側は、ミスが生じないように氏名等、個人情報に当たる内容で呼出しをしなければならず、患者はもとより、病院側も呼出しや誘導の補助業務がストレスになっている。こうした誘導に関する予外業務によって、主業務に支障を来すおそれもあり、場合によっては当該予外業務が業務全体の30%近くを占めるとの報告もある。
【0004】
以上のような課題を解決するために、様々な技術が提案されている。例えば、患者に小型FM電波送受信機渡し、センターのオペレータによる音声案内によって前記小型FM電波送受信機に案内情報を提供する患者案内システムが提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、受診者に付与したIDによるユーザ認証を介して、検査オーダを受け付け、院内に固定設置された端末装置で道順を案内する案内システムが提案されていた(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
さらに、患者情報を記憶した電子チップを搭載した診察券を読取装置に読み取らせることにより、部署毎に、当該患者の待ち時間を算出し、これを院内に固定設置された端末に表示させ、併せて受診経路を表示する患者案内システムが提案されていた(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−334579号公報
【特許文献2】特開2000−3400号公報
【特許文献3】特許第3474530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1にかかる先行技術によれば、患者ごとに専用の小型FM電波送受信機が必要であるために、システム構築にコストがかかるうえ、オペレータとの交信を前提としたシステムであるため、オペレータのスキルに依存する属人的な要素があり、均質のサービスを提供できない可能性があった。
【0009】
また、特許文献2にかかる先行技術によれば、IDによるユーザ認証を介する点で、個人情報保護の側面はある程度解決できるものの、院内に固定設置された端末を患者自らがある程度操作しなければ経路を確認することができないため、経路の確認が必要な場所に端末がないと、一旦、端末が設置されている場所に戻らなければならず、また、操作に不慣れな患者の場合、結局、病院側の補助者が端末設置されている場所まで案内し、又は、操作の説明をしなければならず、前記予外業務の軽減という課題の解決が不十分となる不都合があった。
【0010】
さらに、特許文献3にかかる先行技術によれば、電子チップを利用することにより、前記特許文献1に比べると格段に携帯性にすぐれ、かつ、個人情報の保護の信頼性も向上することが期待される。
【0011】
ところで、病院の診察、検査では、当初設定された順序が変更されることは多々ある。特に他の患者の進捗度との兼ね合いから、従来、看護師等の経験則に基づき、診察順序、検査順序を適宜変更することは頻繁に行われてきた。しかし、かかる変更は、患者に対して再度の案内の説明、補助誘導の負荷を生じさせる原因になる。かかる順序の変更は、患者の待ち時間の軽減という視点からは、必要欠くべからざるオペレーションではあるが、これが病院側にとって負荷増大につながる可能性も否定できない。前記各先行技術は、このような課題に対して何らの解決手段も提示していない。
【0012】
以上、病院内における患者の誘導を例として従来技術を説明したが、所定の領域内において、異なるルートで複数の被誘導者を案内するものであれば、病院内における患者の誘導に限らず、たとえば、比較的大規模な展示場等において、複数の順路が設定されている場合などでも同様の課題が生じうる。
【0013】
本発明は、上記課題を解消させるためのものであり、所定の領域内において、異なるルートで複数の被誘導者に対して、個人情報を保護しつつ、各個人を特定してスムーズに経路を案内する誘導システム及び誘導方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成させるために、本発明にかかる誘導システムは、所定の領域内で、複数の被誘導者を各被誘導者個別に設定された経路で案内する誘導システムであって、
前記各被誘導者に固有のIDを設定して生成するID生成手段と、
前記生成された各ID情報に前記個別に設定された経路情報を対応させて誘導情報を生成し、記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から各誘導情報を読み出して前記各被誘導者の身体に装着可能又は携帯可能な記録媒体にID情報を登録するID入力手段と、
前記ID情報が登録された記録媒体を装着又は携帯した各被誘導者が、前記経路を移動すると、前記各被誘導者の記録媒体から発信された各ID情報を前記領域内に複数箇所設置された感知手段が逐次感知し、感知された各ID情報を受信する受信手段と、
前記受信した各ID情報に対応する誘導情報を前記記憶手段から読み出して、読み出された誘導情報に前記各ID情報によって一意に決める識別情報を付する暗号化情報を逐次又は同時に生成する所定の暗号化処理を施暗号化処理手段と、
前記各暗号化情報を結合して暗号化情報群を生成する結合手段と、
前記暗号化情報を前記各被誘導者の身体に装着又は携帯されている各記録媒体に送信する送信手段と、を有し、
前記送信された各暗号化情報は、前記各被誘導者に装着又は携帯された各記録媒体によって受信されると、前記記録媒体に登録されたID情報によって、当該IDに対応した誘導情報からなる暗号化情報のみが復号化されるものであることを特徴とすることを最も主要な特徴とする。
【0015】
この構成によれば、被誘導者に固有のIDを付与することにより、以後の誘導に関するオペレーションは、すべてIDによって運用管理することができ、被誘導者は、経路情報を取得するために、能動的な操作等を意識することなく、適時に設定された経路によって案内される。
【0016】
また、前記暗号化処理は、永続的に使用する暗号の生成を目的とするものではなく、逐次暗号解読の要求がなされる環境下で使用するものであり、即時的に復号化できるものであることが必要である。そこで、前記記憶手段から読み出された各誘導情報を逐次又は同時に暗号化するとともに、各IDに対応する誘導情報を識別する識別情報を付して暗号化情報を生成し、前記識別情報を備えた各暗号化情報を結合して暗号化情報群を生成する結合手段を有し、前記暗号化情報群を前記送信手段によって前記各記録媒体に送信する構成とした
【0017】
本発明で設定されるIDでは、所定の閉じられた領域内での時限的に付与されるものである。したがって、前記被誘導者が、前記経路の最終目的地に到達したことを前記感知手段が感知すると、前記IDを無効化し、前記記憶手段から誘導情報を消去する無効化手段を有する構成としてもよい。
【0018】
また、前記復号化とともに、被誘導者の誘導に供するデバイスを作動させる作動制御手段を有する構成としてもよい。ここで、前記デバイスは、少なくとも、前記領域内の所定のエリアに被誘導者の進入を許容する開扉手段と、誘導情報を文字情報、画像情報、音声情報の一つ又は二つ以上で表示する表示手段とのいずれかであればよい。ただし、前記表示手段によって表示された誘導情報は、被誘導者の個人情報を保護するために、前記記録媒体が、前記感知手段によって前記記録媒体に登録されたID情報を感知できない距離まで離隔されると、消去されるようにすることが好ましい。
【0019】
誘導者側は、不測の事態等に備えるため、リアルタイムで各被誘導者の行動追跡する必要がある。そこで、前記記録媒体を装着又は携帯した被誘導者が通過することにより、前記感知手段が取得する各ID情報によって、各被誘導者別にログデータを生成するログデータ生成手段と、生成されたログデータの閲覧を可能とする監視手段とを備える構成としてもよい。また、前記経路情報は、被誘導者が立ち寄る複数のエリア情報を含み、前記感知手段が、前記経路情報で設定された順路に従って被誘導者が順次前記各エリアに立ち寄ったことを感知すると、前記ログデータ生成手段が、立ち寄り情報を有するログデータを生成するようにしてもよい。
【0020】
ところで、被誘導者自身のミス、誘導者側の都合等により、最終目的地まで、当初設定した経路通りに前記各エリアに立ち寄るとは限らない。従来、このような場合は、経路を組み直す等の作業が必要になっていた。そこで、本発明にかかる誘導システムでは、被誘導者が、前記順路に従ったエリアの立ち寄り順序と異なる順序でエリアにアクセスしたことを検知すると、前記立ち寄り情報を有するログデータと前記エリア情報を含む経路情報を比較し、経路情報で設定されている順序の経路に復帰するための指示情報を前記表示手段に表示させる機能を前記監視手段に持たせるようにした。一方、当初設定した立ち寄りの順序と異なる順序でも、前記復帰を指示するのではなく、そのまま経路を変更する方が好ましい場合もある。そこで、前記経路情報に含まれるエリア情報は、前記順路に従った立ち寄り順序とともに、当該順序の可変な範囲内で異なる順序のコースパターンを登録したテーブルを有し、被誘導者が、前記エリアの立ち寄り順序と異なる順序でエリアにアクセスしたことを検知すると、前記監視手段は、前記立ち寄り情報を有するログデータと前記エリア情報を含む経路情報を比較し、当該異なる順序でアクセスしたエリアとその順序に該当するコースパターンを前記テーブルから読み出して、前記エリア情報の順路に従った立ち寄り順序を、前記読み出したコースパターンに従った順序に変更する経路変更手段を有するようにしてもよい。
【0021】
上記目的を達成させるために、本発明にかかる誘導方法は、所定の領域内で、管理サーバを介して、複数の被誘導者を各被誘導者個別に設定された経路で案内する誘導方法であって、
前記各被誘導者に固有のIDを設定して生成することを前記管理サーバに要求するステップと、
前記生成された各ID情報に前記個別に設定された経路情報を対応させて誘導情報を生成し、前記管理サーバで記憶するステップと、
前記記憶された各誘導情報を読み出して前記各被誘導者の身体に装着可能又は携帯可能な記録媒体にID情報を登録するステップと、
前記ID情報が登録された記録媒体を装着又は携帯した各被誘導者が、前記経路を移動すると、前記各被誘導者の記録媒体から発信された各ID情報を前記領域内に複数箇所設置された感知手段が逐次感知し、感知された各ID情報を前記管理サーバが受信するステップと、
前記受信した各ID情報に対応する誘導情報を読み出して、読み出された誘導情報に前記各ID情報によって一意に決める識別情報を付する暗号化情報を逐次又は同時に生成するステップと、
前記暗号化情報を結合して暗号化情報群を生成するステップと、
前記暗号化情報群を各被誘導者の身体に装着又は携帯されている前記各記録媒体に送信するステップと、
前記送信された暗号化情報群から、前記識別情報によって、前記各被誘導者に装着又は携帯された記録媒体に登録されたID情報が、当該IDに対応した誘導情報を識別し、識別された誘導情報のみを復号化するステップと、
を有することを最も主要な特徴とする。
【0022】
この方法によれば、被誘導者に個別に設定したIDのみによって、設定した経路の誘導が可能となり、また、個人情報を暗号化する一方で、頻繁な各被誘導者の復号化要求に対してスムーズな処理を実行することが可能になる。
【0023】
また、前記経路情報は、被誘導者が立ち寄る複数のエリア情報を含み、前記感知手段が、前記経路情報で設定された順路に従って被誘導者が順次前記各エリアに立ち寄ったことを感知すると、立ち寄り情報を有するログデータを生成するステップと、前記被誘導者が、前記順路に従ったエリアの立ち寄り順序と異なる順序でエリアにアクセスしたことを前記検知手段が検知すると、前記管理サーバが、前記立ち寄り情報を有するログデータと前記エリア情報を含む経路情報を比較するステップと、経路情報で設定されている順序の経路に復帰するための指示情報を文字情報、画像情報、音声情報の一つ又は二つ以上で生成するステップと、を有し、生成された指示情報を前記被誘導者が閲覧可能な表示手段に表示させるステップと、を有する方法とすることで、当初設定した順路に従った誘導を維持することができる。
【0024】
一方、前記経路情報に含まれるエリア情報に、前記順路に従った立ち寄り順序とともに、当該順序の可変な範囲で異なる順序のコースパターンを登録したテーブルを生成するステップと、被誘導者が、前記エリアの立ち寄り順序と異なる順序でエリアにアクセスしたことを前記検知手段が検知すると、前記管理サーバが、前記立ち寄り情報を有するログデータと前記エリア情報を含む経路情報を比較するステップと、当該異なる順序でアクセスしたエリアとその順序に該当するコースパターンを前記テーブルから読み出して、前記エリア情報の順路に従った立ち寄り順序を前記読み出したコースパターンに従った順序に変更するステップと、を有する方法でも対応できるようにすれば、誘導途上でも、経路を変更することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる誘導システム及び誘導方法は、所定の領域内において、異なるルートで複数の被誘導者に対して、個人情報を保護しつつ、各個人を特定してスムーズに経路を案内することが可能になるという効果を奏する。
【0026】
特に、被誘導者にとっては、前記所定の領域内の移動において、個人の秘密は完全に保持され、領域内において個人情報にあたる内容で呼び出しが不要になることから、個人情報が他者に開示されるという精神的負担が軽減され、また、個人情報を秘密に保持しながら、領域内における経路のスムーズな誘導を受けることができるため、肉体的な負担も軽減されるという効果を奏する。
【0027】
さらに、誘導者側にとっても、誘導に関わる予外業務の負荷が軽減され、本業務に集中できる結果、たとえば、誘導者側の労働環境改善、経営効率化が期待できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明にかかる誘導システムのブロック構成図である。
図2図2は、本発明にかかる誘導システムの暗号化処理部の処理内容を示した模式図である。
図3図3は、暗号化された誘導情報の通信フォーマットを示した図である。
図4図4は、暗号化及び復号化処理の工程を示した図であり、(a)は、平文から暗号化(スクランブル)の工程、(b)は、暗号化された情報の復号化(デ・スクランブル)の工程を示す図である。
図5図5は、経路の変更処理に利用するコースパターンのテーブル例を示した図である。
図6図6は、本発明にかかる誘導方法を示したシーケンス概略図である。
図7図7は、経路復帰又は経路変更を伴う誘導方法の処理を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明にかかる誘導システム及び誘導方法は、所定の領域内において、異なるルートで複数の被誘導者を同時又は順次案内するものであれば適用できるものであり、特に用途を限定するものではないが、典型的には前記所定の領域を病院(特に総合病院)とし、前記被誘導者を患者とする病院内の誘導に利用することが想定される。したがって、以下、本実施の形態では、病院内で患者を誘導するシステムとして適用したものを例として説明する。
【0030】
図1を参照して、1は、本発明にかかる誘導システムの管理サーバである。本実施の形態では、説明の便宜上、各機能を一の管理サーバ1が備える形態としているが、かかる各機能は、設置環境等に応じて、別個の装置、別個の各種サーバを適宜通信ネットワークで接続して同様の機能を実現するものであってもよい。すなわち、本発明にかかる誘導システム又は誘導方法は、以下で説明するすべての機能を1の管理サーバ1が備えている形態に限定する趣旨ではない。
【0031】
管理サーバ1(又は前記した通り、別個の装置、別個の各種サーバ)は、主に中央処理装置(CPU)、メインメモリ、磁気ディスク、その他周辺機器から構成される。CPUは、主として本発明にかかる誘導システムの各構成要素の動作を制御する。メインメモリは、CPUが実行する制御プログラムを格納し、CPUによるプログラム実行時の作業領域を提供する。磁気ディスクは、オペレーティングシステム、周辺機器のデバイスドライブ、本発明にかかる誘導のための処理を行うプログラムを含む各種アプリケーションを格納する。
【0032】
本発明は、被誘導者たる患者に対して、経路案内のための特別な操作を意識させることなく、院内を移動するだけで適宜経路の案内がなされ、スムーズに誘導を行うための仕組みを有する。さらに、患者個人を特定しつつ、他の患者、当該患者に関係しない病院側の職員等の他人、さらには医療業務全般に使用される他のシステムとの照合等に、各患者個人情報が開示されない仕組みを備えている。かかる仕組みを実現するために、管理サーバ1と患者とのコミュニケーションを媒介する記録媒体として、ICチップを備えた患者用IDタグTを患者に装着、携帯させる構成をとる。患者用IDタグTは、少なくとも、後述するIDを記憶するメモリと、非接触電力伝送技術により、記憶されたID等の情報をセンサ、管理サーバ1との間で交信するアンテナとを備えている。また、患者用IDタグTは、患者が病院で診察、検査、治療、事務手続を終了するまで、動作、行動の支障にならない形で患者が保有する必要があるため、患者の身体に装着、又は携帯できるものがよい。例えば、リストバンド形式のものにICチップを搭載する形式が好適である。患者は、患者用IDタグTを装着等することにより、近距離無線技術を介して院内誘導に関する各種サービスを受けることができる。ただし、上記趣旨を逸脱しない範囲であれば、記録媒体としてICチップに限定する趣旨ではない。
【0033】
患者は、来院前の電話、インターネット等、又は来院時の受付にて、患者の個人情報を開示して予約手続を行う。該予約時の患者個人情報は、管理サーバ1の予約記録部113に記録される。以後患者が院内で移動する際、かかる患者の個人情報を開示せずに当該患者を特定するために、個人情報と患者とを対応付けるIDを付与する。すなわち、管理サーバ1は、患者用IDタグTに対してID付与の要求を受け付けるID入力部111と、受け付けた要求に対して、各患者に固有のID情報と、当該ID情報に、経路情報を主とする患者への指示内容を対応付けた誘導情報と、を生成するID生成部112を備える(以下、本明細書では、ID情報及び経路情報等の指示内容に関する情報を総称して誘導情報という)。ID生成部112で前記誘導情報が設定されると、ID入力部111によって、患者用IDタグTに当該設定されたID情報が登録されるとともに、記憶部114に前記誘導情報が記憶される。なお、ID入力部111は、各患者の誘導情報を確認する表示部(ディスプレイ)を備えたものであってもよい。
【0034】
なお、患者が前記設定されたIDによって特定されるのは、病院内に滞在している短時間であること、また、個人情報の開示が忌避されるのは、多くの場合、その場に居合わせた他人に対するものであって、たとえば、クレジットカードのように、時、場所を選ばず、長期間セキュリティを保持する類のものではなく、テンポラリーなものであること、から、患者が病院で受付けをしてから、例えば最後の会計処理までの間、IDが有効であればよい。したがって、管理サーバ1が、患者の最終目的地到達情報を取得(例えば、会計終了の情報を取得)したとき、当該IDを無効化し、消去する無効化処理部を備えるようにしてもよい(図示せず)。かかる無効化処理部によってIDの枯渇等を防ぐこともできる。
【0035】
ID登録済みの患者用IDタグTを装着した患者が、院内を移動すると、患者用IDタグTと通信可能な非接触のセンサ部SによってID情報が感知される。このセンサ部Sは、病院の構造、設置環境に応じて、漏れなく患者の移動を追跡できるように、複数箇所に設置される。センサ部Sは、前記した通り、非接触で感知するため、患者の能動的な操作を必要とせず、患者が普通に移動するだけで感知できるようになっている。
【0036】
前記感知されたID情報は、センサ部Sから管理サーバSの受信部115で受信される。受信したID情報に対応する誘導情報を記憶部114から読み出して、後述する所定の暗号化処理を施す暗号化処理部117で暗号化情報が生成される。生成された暗号化情報は、管理サーバ1の送信部118から、前記感知されたID情報を登録した患者用IDタグTに送信される。
【0037】
前記送信された暗号化情報は、患者用IDタグTに登録されたID情報によって誘導情報に復号化されて、患者の誘導に供される。このとき、前記感知したセンサには複数の患者の移動が感知されているため、送信部118から送信される暗号化情報は、複数の患者のものが同時又は順次送信されている。しかし、前記暗号化処理は、後述するように、IDごとにユニークに生成され、当該IDによってのみ復号化処理されるようになっているため、他人の暗号化情報を受信しても、復号化して得られるのは、自分のIDに対応した誘導情報のみである。このような構成とすることで、患者の個人情報は他人に開示されることなく保護される。また、患者用IDタグTとセンサ部Sと管理サーバ1との間で情報の送受信を行うワイヤレスセンサネットワークを構築することにより、人(患者)の操作を介在させない処理(いわゆるM2Mシステムによる処理)を行うことができるため、従来のように、経路確認のための人為的操作が不要になる結果、患者に対する精神的、肉体的な負荷を軽減するのみならず、看護師等の病院側の誘導に関わる予外業務の負荷軽減にも貢献することが期待できる。なお、前記ワイヤレスセンサネットワークは、センサ情報を収集し、かつ、双方向通信を可能とするものであれば、特に限定する趣旨ではないが、IEEE802.15.4に準拠した通信規格に基づいてネットワーク構築するのが好ましい。
【0038】
管理サーバ1は、センサ部Sから、前記ID情報のほか、センサ部Sが設置された場所及び当該場所を通過した時間のログデータを取得し、これを監視部116に渡す。監視部116は、取得した通過時間及び通過場所からなる前記ログデータを受信したID情報に紐付けて、ログデータ生成部119にログデータを生成するように要求する。生成されたログデータは、蓄積部120に蓄積される。監視部116では、生成されたログデータを蓄積部120から読み出して、適宜閲覧することができる。したがって、監視部116によって、病院側は、リアルタイムに、患者の院内の移動ログデータを追跡することができるため、たとえば、患者が病院内の移動途上で、体調が悪くなって身動きが取れなくなった場合など、緊急時の対応をとることができる。
【0039】
病院の場合、前記経路情報には、患者が立ち寄る複数のエリア、例えば、診察室、検査室、治療室、会計窓口等がある。そこで、前記エリアにセンサ部Sを設け、前記ログデータ生成部は、患者が経路情報で設定された順路に従って各エリアに立ち寄った際に、センサ部Sの感知により得られたID情報に基づき、立ち寄り情報を前記ログデータに含ませることができる。立ち寄り情報を取得することにより、診察、検査、治療の進捗が明確に把握することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、前記暗号化処理部117による暗号化情報の生成において、前記受信したID情報に対応する誘導情報の記憶部114からの読み出しは、監視部116にID情報が渡されたことをトリガーとして実行されるようにしているが、本発明の趣旨に反しない限り、これに限定するものではない。したがって、例えば、受信部115が、記憶部114に直接データを渡す形態であってもよい。
【0041】
ところで、患者に複数の立ち寄り場所が指示される場合、例えば、受付、会計のほか、診察、検査、治療などが指示されている場合、又は病院内の分岐箇所等、導線が分かりにくい場合、前記経路情報を当該患者のみが閲覧可能なように適宜表示装置等によって表示し、あるいは検査室等への入室に当たり、本人認証を行うために、ID情報によって開扉装置を作動させるようにすれば便利である。そこで、管理サーバ1は、前記復号化とともに、患者の誘導に供するデバイスを作動させる制御部121を備えるようにしてもよい。
【0042】
前記デバイスのうち、前記表示装置は、誘導情報を文字情報、画像情報、音声情報のいずれか一つ又は二つ以上で表示するものであり、たとえばデジタルサイネージがこれに該当する。なお、表示装置には、病院内に固定設置されるもののほか、前記患者用IDタグTに設けられた小型の表示部のようなものも含まれる。ただし、前記デバイスは、患者の誘導に供するものであって、前記ID情報によって作動するものであればよく、前記開扉装置、表示装置に限定する趣旨ではない。
【0043】
ところで、前記表示装置の場合、デジタルサイネージのように、表示内容がオープンに閲覧可能な構成のものは、他者も閲覧可能となり、個人情報保護の観点からは好ましくない。そこで、当該表示装置自体が備えるセンサ部S、または当該表示装置近傍のセンサ部Sは、患者用IDタグTのID情報を感知できない距離まで患者が離隔した場合、表示装置に表示された誘導情報を自動的に消去する消去処理部を有するようにしてもよい(図示せず)。
【0044】
図2は、本発明にかかる誘導システムの暗号化処理部117の処理内容を示した模式図である。暗号化処理部117は、複数の患者の誘導情報を逐次又は同時に暗号化する。本実施の形態では、患者Aと患者Bの誘導情報を暗号化する処理を示している。
【0045】
暗号化処理部117が、患者A向け誘導情報(平文Ap)と、患者B向け誘導情報(平文Bp)を図1で示した記憶部114から読み取ると、後述する暗号化情報生成部117a、117bでそれぞれ暗号化情報Ac、Bcを生成する。各々生成された各暗号化情報を結合部117cで、たとえば順次キューイングして結合する。結合された情報は、暗号化情報群ABjを形成し、図1で説明した送信部118を介して患者用IDタグTに送信される。暗号化情報群ABjは、患者Aの患者用IDタグTa、患者Bの患者用IDタグTb双方で受信されるが、各患者用IDタグTa、Tbは、各々のID情報によって復号化可能な情報のみを復号化する。したがって、患者用IDタグTaは、平文Apのみを取得し、各患者用IDタグTaは、平文Bpのみを取得する。
【0046】
結合された暗号化情報群から、各患者用IDタグTに登録されているID情報によって復号化可能な暗号化情報を特定するためには、図3で示すような構成にすればよい。すなわち、暗号化情報群AB−Njにおいて、たとえば暗号化情報Aを、暗号化された誘導情報Abのほか、各ID情報によって一意に決まる識別情報Ahから構成される通信フォーマットとして形成すればよい。したがって、この場合、図2の暗号化情報生成部117a、117bは、暗号化情報の生成に際し、各暗号化情報に前記識別情報を付するようにすればよい。
【0047】
図4は、(a)暗号化情報生成部117a、117bの暗号化処理の工程と、(b)患者用IDタグTa、Tbの復号化処理の工程を示した図である。暗号化処理の対象となる誘導情報Pを記憶部114から読み出すと、図4(a)で示す通り、読み出した誘導情報(平文P)にダミー情報ODDを追加して暗号化情報C1を得る。本実施の形態では、平文Pのビットの奇数(ODD)位置にダミーのビットを追加する例を示したが、ビットの転置、置換などの方法であってもよい。
【0048】
暗号化情報C1に対して、図3でも説明した通り、ID情報によって一意に決まる識別情報Hを付加して、暗号化情報C2を得る。さらに、識別情報Hは、ID情報に付随して転置、置換等を行ってもよい。
【0049】
暗号化情報C2を得た後、ID情報によって全体をスクランブルし、図2で説明した結合部117cから他のスクランブルした暗号化情報と結合して暗号化情報群を形成し、送信部118から患者用IDタグTに送信可能な暗号化情報C3が得られる。
【0050】
一方、暗号化情報C3は、図4(b)で示す通り、患者用IDタグTで復号化情報D3として受信すると、ID情報によってデ・スクランブルし復号化情報D2を得る。復号化情報D2から、予めID情報によって決定している識別情報Hを検知し、自分宛の情報であることを認識し、復号化情報D1を得る。復号化情報D1から、奇数位置に追加されたダミー情報ODDを削除し、平文Pを得る。
【0051】
本発明のように、時限的な利用に供される情報であって、暗号化及び復号化処理のスループットの迅速化が優先的に求められる場合は、図4で説明した構成のような暗号化処理が好適である。
【0052】
ところで、患者は、受付時に指示された経路情報で示す順路に従って移動するとは限らない。たとえば、移動の途中でトイレに寄った場合、また、待ち時間が長い場合に、いったん、院外等に立ち寄る場合、さらには、そもそも誤解によって指定されたルートを外れた場合、スムーズに順路に戻ることができればよいが、自力では順路に戻れないケースも多い。また、集団検診のように、多人数が各検査項目に分散して同時並行的に検査をする場合、検査項目によって1人当たりの平均的所要時間が異なるため、特定の検査項目だけに長い待ち行列ができないようにするために、病院側の判断で、当初予定していた検査順序を変更することは普通に行われている。以上の通り、当初設定された順路に従った立ち寄り順序と異なる順序で患者がアクセスした場合、もとの順路に復帰させるための誘導処理、誘導順序を変更するための誘導処理が必要になる。
【0053】
まず、もとの順序に復帰させる誘導処理は、図1で説明した監視部116が、当初の誘導情報に含まれる経路情報と、前記立ち寄り情報とを比較する比較部(図示せず)を備え、経路情報で設定されている順序の経路に復帰するための指示情報を生成し、制御部121を介してデバイスD(表示装置)に生成された指示情報を表示させるようにすればよい。
【0054】
一方、誘導順序を変更するための誘導処理は、図5で示す通り、管理サーバ1が、予め変更するコースパターンのテーブルを有し、前記同様、監視部116が、当初の誘導情報に含まれる経路情報と、前記立ち寄り情報とを比較する比較部(図示せず)を備え、当初と異なる順序で到達した場所とその順序に該当するコースパターンを前記テーブルから読み出して、前記エリア情報の順路に従った立ち寄り順序を、前記読み出したコースパターンに従った順序に変更する経路変更部を備えるようにすればよい(図示せず)。たとえば、図5において、立ち寄り場所が、イ、ロ、ハの3箇所である場合に、当初予定していた順路が、1、2、3のコースパターンaであったとする。しかし、患者が最初に立ち寄った場所がロだった場合、このまま最初に立ち寄る場所をロとする変更を受け入れ、コースパターンをc又はdに変更すればよい。
【0055】
なお、図5のコースパターンは、立ち寄り場所の数に応じて順列で設定することができるが、実際には、順序の変更が可能なものと、変更が認められないものとが混在している場合が多い。たとえば、初診の場合に、最初は必ず問診から始める場合は、コースパターンの最初は、固定する必要がある。したがって、このような場合は、順序が固定されているものについては、コースパターンのテーブルで順序を固定し、前記復帰のための指示情報を表示させる処理とし、他の順序は、前記経路変更部による処理を行うようにすればよい。
【0056】
図6は、本発明にかかる誘導方法を示したシーケンス概略図である。なお、本実施の形態では、冒頭で説明した通り、一の管理サーバ1を設ける構成を例に説明することとしているが、説明の便宜上、記憶部を別オブジェクトとして記載している。なお、各オブジェクトの符号は、図1で付したものを利用する。
【0057】
まず、複数の患者用IDタグTにIDを設定して生成することを管理サーバ1に要求する(S111)。管理サーバ1は、生成された各ID情報に各患者個別に設定された経路情報を対応させて誘導情報を生成し、これを記憶部114で記憶する(S112)。記憶された各誘導情報を読み出して(S113)、前記各患者用IDタグTにID情報を登録する(S114)。
【0058】
前記ID情報が登録された患者用IDタグTを装着した各患者が、前記経路を移動すると、患者用IDタグTから発信された各ID情報を前記領域内に複数箇所設置されたセンサSが逐次感知する(S115)。感知された各ID情報を管理サーバ1が受信すると(S116)、管理サーバ1は、記憶部114から、受信した各ID情報に対応する誘導情報を読み出す(S117)。読み出された誘導情報を逐次又は同時に所定の暗号化方法によって暗号化情報として生成するとともに(S118)、生成された暗号化情報に各IDに対して一意に対応する識別情報を付する。
【0059】
生成された暗号化情報を結合して暗号化情報群を生成し(S119)、前記暗号化情報群を前記各患者用IDタグTに送信する(S120)。送信された暗号化情報群から、前記識別情報によって、前記各被誘導者に装着された患者用IDタグTに登録されたID情報が、当該IDに対応した誘導情報を識別し、識別された誘導情報のみを復号化し(S121)、所定の誘導情報を取得することができる。
【0060】
上記のような誘導方法により、患者に個別に設定したID情報のみによって、設定した経路の誘導が可能となり、また、個人情報を暗号化する一方で、頻繁な各患者の復号化要求に対してスムーズな処理を実行することが可能になる。
【0061】
図7は、経路復帰又は経路変更を伴う誘導方法の処理を示したフロー図である。実施形態としては、経路復帰のみ、又は経路変更のみで対応する誘導方法も想定されるが、前記した通り、少なくとも、病院内の誘導においては、コースパターンとして、両者を適宜使い分ける誘導方法が通常であるため、図7は、両者を混在させて使い分ける誘導方法を示した。なお、本実施の形態では、患者が立ち寄る場所(たとえば、診察室、検査室、治療室、会計)を「エリア」と総称する。
【0062】
前記経路情報は、被誘導者が立ち寄る複数のエリア情報を含み、センサ部Sが、前記経路情報で設定された順路に従って被誘導者が順次各エリアに立ち寄ったことを感知すると(S201)、立ち寄り情報を有するログデータを生成する(S202)。
【0063】
前記被誘導者が、いずれかのエリアにアクセスしたことをセンサ部Sが検知すると、管理サーバ1は、前記立ち寄り情報を有するログデータと前記エリア情報を含む経路情報を比較し、順路外のエリアか否か、を判断する(S203)。順路通りのエリアに到達したと判断した場合(S203のN)、センサ部Sは、患者の次のエリアへのアクセスを感知し、S201からS203の処理を繰り返す。一方、順路外のエリアに行ったと判断した場合(S203のY)、前記ログデータと経路情報とを比較し(S204)、図5で説明したコースパターンテーブルを参照する(S205)。コースパターンテーブルは、予め生成し、管理サーバ1に登録しておけばよい。
【0064】
前記コースパターンテーブルの参照で、当該順路外のエリアに、当該順序で到達する場合のコースパターンに一致するコースパターンの有無を判断する(S206)。一致するコースパターンがない場合(S206のN)、順路のコースパターンに復帰する復帰情報を文字情報、画像情報、音声情報の一つ又は二つ以上で生成し(S209)、生成された復帰情報を患者が閲覧可能な表示装置によって表示させる処理を行う(S210)。一方、コースパターンテーブルに前記一致するコースパターンがある場合(S206のY)、当該一致するコースパターンをコースパターンテーブルから読み出して(S207)、順路に従った立ち寄り順序を前記読み出したコースパターンに従った順序に変更登録する(S208)。
【0065】
なお、経路復帰のみによって誘導する場合は、図7のS204から、直ちに、S209にジャンプして復帰情報を生成するようにすればよく、経路変更のみよって誘導する場合は、図7のS206、S209及びS210のステップを割愛する方法にすればよい。
【符号の説明】
【0066】
1 管理サーバ
111 ID入力部
112 ID生成部
113 予約記録部
114 記憶部
115 受信部
116 監視部
117 暗号化処理部
118 送信部
119 ログデータ生成部
120 蓄積部
121 制御部
T 患者用IDタグ
S センサ
D デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7