(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0011】
図1は、実施形態のトイレ付エレベータシステム10の構成図である。
図2は、トイレ付エレベータシステム10における乗りかご20内を上方から見た図である。
図3は、
図1に示す乗りかご20の透視斜視図である。以下、トイレ付エレベータシステム10は、エレベータシステム10と記載する。
【0012】
エレベータシステム10は、昇降路11(
図4)内に配置された乗りかご20と、トイレ21(
図2、
図3)と、主ロープ12(
図4)と、エレベータ運転装置13と、地震センサ14と、制御装置である制御盤15とを備える。トイレ21は、乗りかご20の底板部20aにおいて、内側の隅部に取り付けられて固定される。トイレ21は、上部が開口した洋式の便器21aの上端部に弁座21b及び弁蓋21cが回動可能に支持される。便器21aには、水洗用の水を供給する給水タンク22が接続される。給水タンク22は、乗りかご20の壁部20bに固定される。トイレ21は、主として、排泄の機会が多い小便用に適するように形成されている。
【0013】
後述のように、トイレ21が配置されるトイレ空間23は、仕切り壁24及びトイレ扉25によって、通常時に利用者が利用する通常利用空間26とは隔てられる。そして、トイレ扉25のトイレ空間23側には、表示部としての図示しない銘板が取り付けられる。その銘板には、トイレ21における大便の禁止を含めて、トイレ21の使用方法が表示される。また、トイレ扉25が開放されたときに、その開放を検知する開放センサと、音声出力部とが設けられ、開放が検知されたときに制御盤15が音声出力部を制御して、音声出力部が、大便が禁止であることを音声でアナウンスする構成が採用されてもよい。
【0014】
なお、女性に配慮した構成として、便器21aの上部に衛生洗浄装置が固定され、衛生洗浄装置に弁座及び弁蓋が回動可能に支持された構成としてもよい。衛生洗浄装置は、用便後の利用者によって洗浄用ボタンが押された場合に、利用者の尻部にノズルから洗浄用温水を噴出させて尻部を洗浄する。弁座は、内部に加熱ヒータを有し、上面温度が適温に保持される。弁座及び衛生洗浄装置を一体化したものとして、例えば東陶機器株式会社製の弁座装置(商品名:ウォッシュレット)がある。
【0015】
トイレ21は、通常時には、後述の仕切り壁24及びトイレ扉25によって仕切られて、利用者が使用できない状態にある。一方、地震等の災害発生時またはエレベータの故障発生時等のエレベータの異常発生時には、後述のようにトイレ扉25の電気錠25aが解錠されてトイレ21が使用できる状態となる。これについては、後で詳しく説明する。
【0016】
主ロープ12(
図4)は、一端が乗りかご20に接続され、他端がカウンタウェイト(図示せず)に接続される。エレベータ運転装置13は、主ロープ12を駆動する巻き上げ機(図示せず)を含み、エレベータが設置される建物の最上部の機械室(図示せず)に配置される。制御盤15も機械室に配置され、巻き上げ機の駆動を制御する。制御盤15は、CPU等の演算部及びメモリ等の記憶部を有するマイクロコンピュータを含む。これにより、乗りかご20が制御盤15により制御されて昇降路11内で昇降移動する。
【0017】
図2に示すように、乗りかご20は、4つの隅部C1〜C4のうち、1つの隅部C1に2つの壁部20b、20cの内側面に掛け渡すように斜めに固定された仕切り壁24と、トイレ扉25とを含む。仕切り壁24は、金属、樹脂等の材料により形成され、乗りかご20内を、トイレ21が配置されるトイレ空間23と、通常時に利用者が利用可能な通常利用空間26とに仕切っている。トイレ扉25は、仕切り壁24において、仕切り壁24の開口20dを塞ぐように取り付けられ、開口20dの一端側(
図2、
図3の右端側)側面に開閉可能に取り付けられる。トイレ扉25には、電気錠25a(
図3)が取り付けられ、電気錠25aはトイレ扉25を施錠する。電気錠25aは、通電時解錠型であり、通電されているときには解錠状態となり、通電されていないときには施錠される。電気錠25aは、後述の制御盤15により制御される。制御盤15と電気錠25aとは信号ケーブル(図示せず)により接続される。また、乗りかご20において、トイレ21が設置される隅部C1と異なる1つの隅部C3には、防犯カメラ27(
図2)が設置される。防犯カメラ27は、制御盤15に接続され、撮影状態が制御盤により制御される。また、制御盤15は、通信制御装置を介して情報センターに接続される。情報センターは、エレベータが設置された建物とは別の建物に設置されるものであり、作業員が配置されて、エレベータの運行を遠隔で監視し、かつ、点検する。これにより、乗りかご20内における利用者の安全を確保しやすい。
【0018】
図4は、乗りかご20内のトイレ21に接続された尿タンク30と、昇降路11の底部の尿排出口16とを接続する部分の構成を示す断面図である。乗りかご20の底部には、尿タンク30が取り付けられて固定される。尿タンク30は箱形状であり、トイレ21の便器21aと配管31で接続される。トイレ21から排出された尿等の排泄物は尿タンク30に一時的に貯留される。また、尿タンク30には、尿タンク30の上端から底面付近まで伸びる棒状の小便センサ32が取り付けられる。小便センサ32の検出部は尿タンク30の底面付近に位置する。小便センサ32は、検出部に液体が接触することを検知することにより、トイレ21において小便がされたことを検知する。小便センサ32の検知信号は、制御盤15(
図1)に送信される。小便センサ32は、小型のシート状等に形成された検知部を、便器21aの内面に取り付け、小便がされたことを検知する構成としてもよい。
【0019】
尿タンク30の上端付近には脱臭ファン33が取り付けられる。脱臭ファン33の駆動は制御盤15によって制御される。乗りかご20の底板部においてトイレ空間23の下側に位置する部分と尿タンク30の天板部とにはそれらの両方を上下に貫通する通気孔(図示せず)が形成される。また、尿タンク30の天板部の下面には消臭フィルタ(図示せず)が取り付けられる。これにより、トイレ空間23の空気は、消臭フィルタを通じて尿タンク30に吸引される。尿タンク30に吸引された空気は、別の消臭フィルタ(図示せず)が取り付けられた別の通気孔(図示せず)から昇降路11(
図4)内に排出される。これにより、トイレ空間23及び尿タンク30の消臭を行える。また、脱臭ファン33が乗りかご20内に配置されないので、乗りかご20内の空間が狭くなることがない。なお、乗りかご20内に脱臭ファンを取り付けることもできる。
【0020】
図1に戻って、地震センサ14は、エレベータにおいて所定値以上の大きさの地震が発生したことを検知する。例えば地震センサ14は、初期微動であるP波等の地震波において所定値以上の揺れが生じたことを検知する。地震センサ14の検知信号はエレベータの異常の発生を知らせる信号として、制御盤15に送信される。制御盤15は、所定値以上の地震が検知されたときには、エレベータに異常が発生したと判断して、エレベータ運転装置13を制御して乗りかご20の昇降を停止させる。そして、制御盤15は、地震センサ14の検知信号を受け取ったときに、トイレ扉25の電気錠25aを解錠するように、電気錠25aを制御する。これにより、トイレ扉25が開放可能となるので、利用者がトイレ空間23内のトイレ21を使用することが可能となる。このため、異常発生時にのみ利用者が、トイレ21が配置されたトイレ空間23に出入りできる構成を実現できる。したがって、衛生上良好で、かつ、異常が発生した乗りかご20に利用者が長時間閉じ込められた場合でも排泄行為に困らないエレベータを提供できる。また、トイレ扉25があることで女性でも安心して利用できる。なお、トイレ扉25には、トイレ空間23側から施錠、解錠できる手動錠が取り付けられてもよい。
【0021】
一方、所定値以上の地震が検出されないようになり、エレベータの運転が許可される状態となったときには、制御盤15は乗りかご20を最寄階まで自動で移動させる緊急運転を行って、最寄階で乗りかご扉28を開放する。このとき、後述するように、緊急運転前の運転停止時において、トイレ扉25の電気錠25aが解錠され、かつ小便がされたときであって、乗りかご20が所定以下の高さ位置にあるときには、十分な所定時間が経過した後に乗りかご扉28を閉じる。そして、乗りかご20を上昇動作させる。これによって、尿タンク30(
図4)から尿排出口16(
図4)へ排泄物を排出させることができる。
【0022】
そして、作業員により、または制御盤15の自己診断装置によって所定の検査が行われた後で、制御盤15は乗りかご20の通常運転を再開させる。このとき、作業員がトイレ空間23内に利用者がいないことを確認した後で、制御盤15に接続された操作部を操作して、その操作に応じて、トイレ扉25が再度電気錠25aで施錠されるようにしてもよい。
【0023】
制御盤15は、電気錠25aが解錠され、かつ、小便がされたときに、所定の尿排出動作を実行させることにより、尿タンク30に貯留された尿を排出する。具体的には、
図4に示すように、エレベータは、乗りかご20が移動する昇降路11の壁部17の上下方向中間部に取り付けられた中継容器35と、中継容器35に接続された下流側排出管36及び上流側排出ホース37とを含む。
【0024】
中継容器35は、上下両端が天板部及び底板部で塞がれた円筒状または矩形筒状の容器である。下流側排出管36は、上下方向に伸びているもので、一端(
図4の下端)が昇降路11の底部に設けられた尿排出口16に接続され、他端(
図4の上端)が中継容器35の底板部に接続される。下流側排出管36は、例えば昇降路11の壁部17において、上下方向に沿うように配置された制御ケーブル(図示せず)に沿って設置されてもよい。尿排出口16は、下水配管である汚水配管(図示せず)に接続される。これにより、下流側排出管36は、尿排出口16と中継容器35とをほぼ上下方向に接続する。
【0025】
また、上流側排出ホース37は、一端が尿タンク30の底部に接続され、他端が中継容器35の底板部に接続される。上流側排出ホース37は、例えばゴムまたは樹脂等により形成され、撓み及び曲げ変形が可能な配管である。
【0026】
さらに
図1に示すように、制御盤15は電気錠25aが解錠され、かつ、小便がされたときに、所定の尿排出動作を行う。具体的には、制御盤15は、電気錠25aに解錠信号が出力されることにより電気錠25aが解錠され、かつ、小便センサ32の検知信号の入力があったことにより小便がされたと判断する。そして、尿排出動作として、尿タンク30の所定部分の高さ位置が、中継容器35の所定部分の高さ位置以下であるときに、エレベータの運転再開後に、尿タンク30の所定部分が中継容器35の所定部分より上側となるように乗りかご20に上昇動作が実行される。例えば、尿排出動作として、制御盤15は、尿タンク30の下端の高さ位置が、中継容器35の下端の高さ位置以下のときに、尿タンク30の下端の高さ位置が中継容器35の下端の高さ位置より上側となるように乗りかご20に上昇動作を実行させる。このとき、例えば、制御盤15は、エレベータ運転装置13を制御することによって、乗りかご20を最上階に上昇移動させる。
【0027】
図5は、エレベータシステム10を用いて行う尿タンク排出方法を説明するためのフローチャートを示す図である。まず、ステップS10(以下、ステップSはSと記載する。)では、制御盤15がトイレ扉25の電気錠25aが解錠されたか否かを判定する。S10の判定結果が肯定(YES)の場合、S11で制御盤15は、小便がされたことが検知されたか否かを判定する。そして、S11の判定結果が肯定の場合には、S12で制御盤15は、尿タンク30の下端の高さ位置が中継容器35の下端の高さ位置以下か否かを判定する。そして、S12の判定結果が肯定の場合には、S13で制御盤15は、エレベータの運転再開後に、乗りかご20を最上階に上昇させる動作を実行する。一方、S10からS12で判定結果が否定(NO)の場合、及び、S13の処理の後は、再度S10の処理に戻る。
【0028】
図6は、乗りかご20を上昇動作させることにより最上階38に移動させて、尿タンク30から尿等の排泄物を排出させる状態を示している、
図4に対応する図である。上記の構成によれば、
図6に示すように、エレベータの異常による停止後、エレベータの運転が復帰されたときに、尿タンク30から矢印Aで示す方向に、自重によって排泄物を流し、尿排出口16(
図4)を通じて汚水配管に排泄物を排出できる。
【0029】
また、中継容器35が、昇降路11の壁部17の上下方向中間部に取り付けられ、下流側排出管36が、昇降路11の底部に設けられた尿排出口16及び中継容器35を接続する。また、上流側排出ホース37が、尿タンク30の底部に一端が接続され、他端が中継容器35に接続される。これにより、尿タンク30の底部と昇降路11の底部の尿排出口16とが直接にホースで接続される構成とは異なり、乗りかご20が最下階に下降したときでも、その位置からホースの中間部が下側に大きくたるむことがない。これにより、ホースの中間部が大きく垂れ下がって、昇降路11の底部または底部に設けられた部品等に接触することを防止できる。
【0030】
また、尿排出口16に尿タンク30内の排泄物を排出するためにエレベータの上昇動作を実行させた後は、制御盤15は、消毒液供給装置(図示せず)により便器21a及び尿タンク30に自動で消毒液を供給させる構成を採用してもよい。このとき、給水タンク22(
図3)から便器21a及び尿タンク30に水を流し、尿タンク30から尿排出口16に水及び消毒液を排出する構成としてもよい。このとき、給水タンク22から便器21aに自動で給水されるように給水タンク22に付属の給水部が制御されてもよい。また、昇降路11の底部の尿排出口16が汚水配管に接続されない構成で、尿排出口16に固化剤を設置して尿等の排泄物を固化するようにしてもよい。
【0031】
上記では、エレベータの地震センサ14が地震を検知した場合に乗りかご20を停止させる場合の処理を説明したが、エレベータは、故障等の他の理由によっても乗りかご20が長時間停止される場合がある。制御盤15は、このときも、エレベータに異常が発生したと判断して乗りかご20を停止させる。そして、運転停止中にトイレ扉25の電気錠25aが解錠され、かつ小便がされたことが検出されたときであって、乗りかご20が所定以下の高さ位置にあるときには、運転再開後に尿タンク30から排泄物を排出するように乗りかご20を上昇動作させる。
【0032】
また、エレベータでは、特に女性に配慮した構成として、以下の吸盤付カーテン40(
図2)、擬音発生装置41(
図2)、及び汚物入れ42(
図2)も採用される。
【0033】
(1)吸盤付カーテン40は、布、樹脂等の材料により伸縮可能な波形に形成され、幅方向(
図2の斜め左右方向)の両端に取り付けられた吸盤40aを含む。吸盤40aは、乗りかご20の壁面に対し吸着及び取り外しが可能である。吸盤付カーテン40は、通常時には折り畳んだ状態でトイレ空間23に収納される。吸盤付カーテン40の使用時には、幅方向両側の吸盤40aを乗りかご20の2つの壁面に吸着させることで、利用者が利用可能な個室として、脱衣空間を形成できる。利用者は、他の利用者から見えない状態で、脱衣空間で衣服を脱いで、トイレ空間23に入ることができる。
【0034】
(2)擬音発生装置41は、乗りかご20の壁面、または仕切り壁24のトイレ空間23側に取り付けられる。擬音発生装置41は、
図2において三角形で模式化して示している。擬音発生装置41は、押しボタン式スイッチが押されたときに自然の流水音等の擬音を発生させることにより、用便時に発生する排出音を消音する。また、
図2の四角にXを付した部分には、汚物入れ42が配置される。
【0035】
図7は、実施形態のエレベータシステム10の別例において、乗りかご20を下降動作させて、尿タンク30から尿等の排泄物を排出させる場合における下降動作の直前の状態を示す図である。
図8は、
図7の構成を用いて行う尿タンク排出方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【0036】
図7、
図8に示す別例の構成では、尿タンク30の底板部20aに尿排出管43が下方に伸びるように接続される。また、尿排出管43の上端部に電磁制御弁である排出管閉鎖弁44が配置される。排出管閉鎖弁44の開閉状態は制御盤15(
図1)により制御される。排出管閉鎖弁44は、非通電時に尿排出管43の上端部を閉鎖し、通電時には尿排出管43の上端部を開放して、尿排出管43の下端開口と尿タンク30の内部とを通じさせる。尿排出管43の下端開口は、軸方向に対し傾斜している。尿排出管43は、例えば金属により形成される。
【0037】
昇降路11の底部に設けられた尿排出口16は、汚水配管(図示せず)に接続され、かつ、上側に蓋部45が設けられる。蓋部45は、分離可能に突き当てられた2つの回動部材46を含む。各回動部材46は、軸方向(
図7の紙面の表裏方向)の両端に配置される扇状板部と、扇状板部の外周縁に連結される断面円弧形の曲面部とを有する。各回動部材46は、昇降路11の底部に対し軸方向の回動軸47を中心に回動可能に支持される。2つの回動部材46は、バネ48により互いに近づく方向に付勢され、突き合わされることにより、尿排出口16の上部を塞いでいる。このような蓋部45では、上端に下方に押す方向の力が加わると、2つの回動部材46の上端が離れるように各回動部材46が回動軸47を中心に、
図7に矢印α、βで示す方向にそれぞれ回転する。
【0038】
また、制御盤15は、電気錠25a(
図1)が解錠され、かつ、小便がされたときに、所定の尿排出動作を行う。具体的には、尿排出動作として、エレベータの運転再開後に、尿排出管43の下端が尿排出口16に挿入されるように、乗りかご20の下降動作が実行され、かつ排出管閉鎖弁44が開放される。例えば、制御盤15は、エレベータ運転装置13を制御することによって、乗りかご20を最下階に下降移動させる。
【0039】
図8は、
図7の構成を用いて行う尿タンク排出方法を説明するためのフローチャートを示す図である。まず、S20では、制御盤15(
図1)がトイレ扉25(
図2)の電気錠25a(
図1)が解錠されたか否かを判定する。S20の判定結果が肯定(YES)の場合、S21で制御盤15は、小便がされたことが検知されたか否かを判定する。そして、S21の判定結果が肯定の場合には、S22で制御盤15は、尿排出管43の下端が尿排出口16に挿入されるように、乗りかご20を最下階に下降させる動作を実行させる。このとき、
図7に矢印γで示すように尿排出管43の下端が移動して、尿排出口16の上側の蓋部45の上端に突き当たる。そして、尿排出管43が蓋部45を構成する2つの回動部材46の上端の間隔をバネ48の付勢力に抗して押し広げて、その内側に尿排出管43の下端が挿入される。次いで、制御盤15が排出管閉鎖弁44を開放することにより、尿タンク30の内部で貯留された排泄物が尿排出口16に自重によって排出される。一方、S20、S21で判定結果が否定(NO)の場合、及び、S23の処理の後は、再度S20の判定処理に戻る。
【0040】
上記の構成によれば、エレベータの異常による停止後、エレベータの運転が復帰されたときに、排出管閉鎖弁44が開放された場合に、尿タンク30から自重によって、尿排出口16を通じて排泄物を汚水配管に排出できる。
図7、
図8の構成において、昇降路11の底部の尿排出口16が汚水配管に接続されない構成で、尿排出口16に固化剤を設置して尿等の排泄物を固化するようにしてもよい。その他の構成及び作用は、
図1から
図6の構成と同様である。
【0041】
図9は、エレベータシステム10の別例の構成を示す図である。
図10は、
図9の構成を用いて行うエレベータの異常時要救出信号の送信方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
図9、
図10に示す構成では、
図1から
図6の構成において、制御盤15は、通信制御装置50を介して情報センター51にケーブル等の有線または無線で接続されている。
【0042】
そして、エレベータの制御盤15は、乗りかご20に配置されたトイレ扉25の電気錠25aが解錠され、かつ、小便がされたときに、情報センター51のコンピュータに、異常時要救出信号をエレベータ側の通信制御装置50によって送信する。異常時要救出信号は、乗りかご20内に要救出者がいることを表す信号である。
【0043】
図10において、S30で示すように、制御盤15は、トイレ扉25の電気錠25aが解錠されたか否かを判定する。S30の判定結果が肯定(YES)の場合、S31で制御盤15は、小便がされたことが検知されたか否かを判定する。そして、S31の判定結果が肯定の場合には、S32で制御盤15は、便器使用信号である要救出信号を情報センター51に送信する。S30,S31の判定結果が否定の場合、及び、S32の処理の後は、再度S30の処理に戻る。
【0044】
このように小便がされたことが検知された場合には、緊急を要する場合であるので、通信制御装置50によって、異常時要救出信号が情報センター51に送信される。情報センター51では、例えば表示部または警告音発生部等により要救出者がいることを表す警告を、情報センター51の作業員に報知する。これにより、作業員がエレベータの乗りかご20が停止している現場に行って、乗りかご20内の要救出者の救出作業を行うことを促すことができる。その他の構成及び作用は、
図1から
図6の構成と同様である。
【0045】
図11は、エレベータシステム10の別例の構成を用いて行うエレベータの異常時要救出信号の送信方法を示す図である。
図11の構成は、
図9、
図10の構成において、乗りかご20のトイレ空間23内に緊急用として大便使用スイッチ52(
図9)が配置されている。例えば、大便使用スイッチ52は、押しボタンスイッチまたはロッカースイッチであり、トイレ空間23内の壁部に取り付けられる。上記の
図2では、丸にXを付した部分により大便使用スイッチ52の配置位置の例が示されている。大便使用スイッチ52は、トイレ21の利用者によって、大便を開始する際に押される等によりオンされる。トイレ空間23において、大便使用スイッチ52の周辺部には、大便を禁止することを表示する表示部としての銘板が取り付けられ、その銘板には、もし大便を行う場合には、大便使用スイッチ52を押すことを促す表示がされている。大便使用スイッチ52は、制御盤15に接続される。
【0046】
制御盤15は、大便使用スイッチ52がオンされたときに、優先度の高い要救出者がいることを表す高優先度要救出信号を情報センター51(
図9)に送信する。
【0047】
図11のフローチャートにおいて、S40からS42の処理は、
図10のS30からS32の処理と同様である。そして、
図11のS40、S41で判定結果が否定(NO)の場合、及びS42の処理の後では、S43に移行され、制御盤15は大便使用スイッチ52がオンされたか否かを判定する。そして、S43の判定結果が肯定(YES)の場合には、S44で制御盤15は高優先度要救出信号を情報センター51に送信する。S43の判定結果が否定の場合、及び、S44の処理の後は、再度S40の処理に戻る。
【0048】
エレベータでは、トイレ21の利用者が大便の便意を我慢できない場合もあり、それを防ぐことはできないが、乗りかご20の設備が大量または長期間の大便排泄物の保管に適さない場合がある。
図11を用いて説明した構成によれば、この場合に、救出優先度が高い要救出信号が情報センター51に送信される。情報センター51では、例えば表示部または警告音発生部等により高優先度の要救出者がいることを表す警告を、情報センター51の作業員に報知する。これにより、作業員がその情報に応じて優先度を高くして救出作業を行うことを促すことができる。その他の構成及び作用は、
図9、
図10の構成と同様である。
【0049】
図12は、エレベータシステム10の別例における乗りかご20内を上方から見た図である。
図12の構成では、
図1から
図6の構成において、乗りかご60は、箱状の乗りかご本体61と、乗りかご本体61の外側に固定されたトイレ配置箱部62とを含む。乗りかご本体61の内部にはトイレ21は配置されない。トイレ配置箱部62は、乗りかご本体61の裏面側(乗りかご扉28と反対側)の壁部60aにおいて、左右方向一方側(
図12の左側)半部から裏側に突出するように固定される。
【0050】
トイレ配置箱部62には、トイレ21と給水タンク22とが取り付けられるとともに、汚物入れ42及び擬音発生装置41が設けられ、さらに場合によっては大便使用スイッチ52も設けられる。大便使用スイッチ52は、
図11で説明した構成と同様である。このとき、乗りかご20内の通常利用空間63は、通常時に利用者が利用し、トイレ配置箱部62内のトイレ空間64とは、乗りかご本体61の壁部60aによって仕切られる。この壁部60aが仕切り壁に相当する。この壁部60aは、トイレ空間64が面する壁部であり、トイレ扉65が配置される。トイレ扉65は、トイレ空間64が面する壁部60aの開口を塞ぐように取り付けられ、利用者が通常利用空間63からトイレ空間64に出入りするために使用される。
【0051】
上記の構成によれば、乗りかご本体61内において、通常時に利用者が利用する通常利用空間63が狭くなることを抑制できる。その他の構成及び作用は、
図1から
図6の構成と同様である。なお、
図12の構成は、
図7から
図11の各例の構成と組み合わせて用いることもできる。