(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気事業者から送られる大口節電指令量に基づき、配下の複数の需要家電力管理システムに小口節電指令量を配分し、当該小口節電指令量に応じて、各前記需要家電力管理システムの配下にある電気機器の電力管理を行わせる、アグリゲータシステムであって、
各前記需要家電力管理システムから小口節電実績量を収集して大口節電実績量を求める実績収集部と、
前記小口節電指令量に加えて、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量を各前記需要家電力管理システムに送信して、各前記需要家電力管理システムに、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異に基づいた追加小口節電指令量を求めさせるとともに、各前記需要家電力管理システムの配下にある前記電気機器の消費電力に基づいて、各自の前記小口節電実績量を求めさせ、前記小口節電実績量が前記小口節電指令量以上であるときに、前記小口節電指令量に加えて前記追加小口節電指令量に基づいて、各前記需要家電力管理システムの配下にある前記電気機器に対する確定節電指令量を定めさせる、送信部と、
を備えることを特徴とする、アグリゲータシステム。
アグリゲータシステムにより、電気事業者から送られる大口節電指令量に基づいた小口節電指令量が配分され、前記小口節電指令量に応じて、配下の電気機器の電力管理を行う、需要家電力管理システムであって、
前記小口節電指令量に加えて、前記大口節電指令量、及び、前記アグリゲータシステムの配下の各前記需要家電力管理システムの小口節電実績量から求められた大口節電実績量を受信する受信部と、
自身の配下にある前記電気機器の消費電力に基づいて、自身の前記小口節電実績量を求める小口節電実績量算出部と、
前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異に基づいた追加小口節電指令量を求めるとともに、前記自身の小口節電実績量が前記小口節電指令量以上であるときに、前記小口節電指令量に加えて前記追加小口節電指令量に基づいて、前記自身の配下にある前記電気機器に対する確定節電指令量を定める調整部と、
を備えることを特徴とする、需要家電力管理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、小口節電指令量の再配分過程は、需要家からアグリゲータに小口節電実績量を送信し、これをアグリゲータが受信し、その後小口節電実績量と小口節電指令量との乖離を求め、その後に小口節電指令量を修正(再配分)し、これをアグリゲータから各需要家に送信する、というプロセスを辿る。需要家が複数(例えば100件程度)アグリゲータの配下にある場合、通信負荷の軽減のため、各需要家とアグリゲータとの通信にインターバルが設けられる。つまり、所定の需要家からアグリゲータに小口節電実績量が送信された後、所定のインターバルを経てアグリゲータから修正後の小口節電指令量が送信される。このような通信のインターバルによる遅れに起因して、小口節電指令量の再配分に遅れが生じて、例えばデマンドレスポンスの終了間際における小口節電指令量の再配分が間に合わなくなるおそれがある。そこで本発明は、従来よりも迅速に小口節電指令量の再配分が可能となる、電力需要制御システム、電力需要制御方法、アグリゲータシステム、需要家電力管理システム、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電気事業者から送られる大口節電指令量に基づき、複数の需要家に小口節電指令量を配分する、アグリゲータシステムと、前記各需要家に設けられ、前記小口節電指令量に応じて配下の電気機器の電力管理を行う、需要家電力管理システムとを備える、電力需要制御システムに関する。前記アグリゲータシステムは、各前記需要家電力管理システムから小口節電実績量を収集して大口節電実績量を求める実績収集部と、前記小口節電指令量に加えて、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量を、各前記需要家電力管理システムに送信する送信部と、を備える。前記需要家電力管理システムは、前記小口節電指令量、前記大口節電指令量、及び、前記大口節電実績量を受信する受信部と、自身の配下にある前記電気機器の消費電力に基づいて、自身の前記小口節電実績量を求める小口節電実績量算出部と、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異に基づいた追加小口節電指令量を求めるとともに、前記自身の小口節電実績量が前記小口節電指令量以上であるときに、前記小口節電指令量に加えて前記追加小口節電指令量に基づいて、前記自身の配下にある前記電気機器に対する確定節電指令量を定める調整部と、を備える。
【0010】
また、上記発明において、前記アグリゲータシステムの前記実績収集部は、前記小口節電実績量が前記小口節電指令量以上である前記需要家電力管理システムの件数である追加配分可能件数を求めるようにしてもよい。この場合、前記需要家電力管理システムの前記調整部は、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異を前記追加配分可能件数で割った値に基づいて、前記追加小口節電指令量を求めるようにしてもよい。
【0011】
また、上記発明において、前記需要家電力管理システムの調整部は、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異を、前記アグリゲータシステムの配下にある前記需要家電力管理システムの件数で割った値に基づいて、前記追加小口節電指令量を求めるようにしてもよい。
【0012】
また、上記発明において、前記アグリゲータシステムは、現在時点以降の大口節電実績予測量を求める大口節電予測部を備えてもよい。この場合、前記需要家電力管理システムは、現在時点以降の自身の小口節電実績予測量を求める小口節電予測部を備え、前記需要家電力管理システムの前記調整部は、前記大口節電実績予測量に基づいて、前記大口節電実績量または前記大口節電指令量を調整し、前記小口節電実績予測量に基づいて、前記小口節電実績量または前記小口節電指令量を調整するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明の別態様は、電気事業者から送られる大口節電指令量に基づき、複数の需要家に小口節電指令量を配分する、アグリゲータシステムと、前記各需要家に設けられ、前記小口節電指令量に応じて配下の電気機器の電力管理を行う、需要家電力管理システムと、を備える、電力需要制御システムに関する。前記アグリゲータシステムは、前記小口節電指令量に加えて、前記大口節電指令量を、各前記需要家電力管理システムに送信する送信部を備える。前記需要家電力管理システムは、前記アグリゲータシステムから、前記小口節電指令量及び前記大口節電指令量を受信するとともに、前記アグリゲータシステムの配下の各前記需要家電力管理システムから、各自の前記小口節電実績量を受信する受信部と、自身の配下にある前記電気機器の消費電力に基づいて、自身の前記小口節電実績量を求める小口節電実績量算出部と、自身の前記小口節電実績量と、各前記需要家電力管理システムの前記小口節電実績量とから、大口節電実績量を求める大口節電実績量算出部と、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異に基づいた追加小口節電指令量を求めるとともに、前記自身の小口節電実績量が前記小口節電指令量以上であるときに、前記小口節電指令量に加えて前記追加小口節電指令量に基づいて、前記自身の配下にある前記電気機器に対する確定節電指令量を定める調整部と、を備える。
【0014】
また、本発明の別態様は、電気事業者から送られる大口節電指令量に基づき、複数の需要家に小口節電指令量を配分する、アグリゲータシステムと、前記各需要家に設けられ、前記小口節電指令量に応じて配下の電気機器の電力管理を行う、需要家電力管理システムと、を備える、電力需要制御システムにおける電力需要制御方法に関する。前記アグリゲータシステムは、各前記需要家電力管理システムから小口節電実績量を収集して大口節電実績量を求め、前記小口節電指令量に加えて、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量を、各前記需要家電力管理システムに送信する。前記需要家電力管理システムは、前記小口節電指令量、前記大口節電指令量、及び、前記大口節電実績量を受信し、自身の配下にある前記電気機器の消費電力に基づいて、自身の前記小口節電実績量を求め、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異に基づいた追加小口節電指令量を求めるとともに、前記自身の小口節電実績量が前記小口節電指令量以上であるときに、前記小口節電指令量に加えて前記追加小口節電指令量に基づいて、前記自身の配下にある前記電気機器に対する確定節電指令量を定める。
【0015】
また、本発明の別態様は、電気事業者から送られる大口節電指令量に基づき、配下の複数の需要家電力管理システムに小口節電指令量を配分し、当該小口節電指令量に応じて、各前記需要家電力管理システムの配下にある電気機器の電力管理を行わせる、アグリゲータシステムに関する。当該アグリゲータシステムは、各前記需要家電力管理システムから小口節電実績量を収集して大口節電実績量を求める実績収集部と、前記小口節電指令量に加えて、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量を各前記需要家電力管理システムに送信して、各前記需要家電力管理システムに、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異に基づいた追加小口節電指令量を求めさせるとともに、各前記需要家電力管理システムの配下にある前記電気機器の消費電力に基づいて、各自の前記小口節電実績量を求めさせ、前記小口節電実績量が前記小口節電指令量以上であるときに、前記小口節電指令量に加えて前記追加小口節電指令量に基づいて、各前記需要家電力管理システムの配下にある前記電気機器に対する確定節電指令量を定めさせる、送信部と、を備える。
【0016】
また、本発明の別態様は、アグリゲータシステムにより、電気事業者から送られる大口節電指令量に基づいた小口節電指令量が配分され、前記小口節電指令量に応じて、配下の電気機器の電力管理を行う、需要家電力管理システムに関する。当該需要家電力管理システムは、前記小口節電指令量に加えて、前記大口節電指令量、及び、前記アグリゲータシステムの配下の各前記需要家電力管理システムの小口節電実績量から求められた大口節電実績量を受信する受信部と、自身の配下にある前記電気機器の消費電力に基づいて、自身の前記小口節電実績量を求める小口節電実績量算出部と、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異に基づいた追加小口節電指令量を求めるとともに、前記自身の小口節電実績量が前記小口節電指令量以上であるときに、前記小口節電指令量に加えて前記追加小口節電指令量に基づいて、前記自身の配下にある前記電気機器に対する確定節電指令量を定める調整部と、を備える。
【0017】
また、本発明の別態様は、コンピュータを、電気事業者から送られる大口節電指令量に基づき、配下の複数の需要家電力管理システムに小口節電指令量を配分し、当該小口節電指令量に応じて、各前記需要家電力管理システムの配下にある電気機器の電力管理を行わせる、アグリゲータシステムとして機能させるためのプログラムに関する。当該プログラムは、前記コンピュータを、各前記需要家電力管理システムから小口節電実績量を収集して大口節電実績量を求める実績収集部と、前記小口節電指令量に加えて、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量を各前記需要家電力管理システムに送信して、各前記需要家電力管理システムに、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異に基づいた追加小口節電指令量を求めさせるとともに、各前記需要家電力管理システムの配下にある前記電気機器の消費電力に基づいて、各自の前記小口節電実績量を求めさせ、前記小口節電実績量が前記小口節電指令量以上であるときに、前記小口節電指令量に加えて前記追加小口節電指令量に基づいて、各前記需要家電力管理システムの配下にある前記電気機器に対する確定節電指令量を定めさせる、送信部と、として機能させる。
【0018】
また、本発明の別態様は、コンピュータを、アグリゲータシステムにより、電気事業者から送られる大口節電指令量に基づいた小口節電指令量が配分され、前記小口節電指令量に応じて、配下の電気機器の電力管理を行う、需要家電力管理システムとして機能させるためのプログラムに関する。当該プログラムは、前記コンピュータを、前記小口節電指令量に加えて、前記大口節電指令量、及び、前記アグリゲータシステムの配下の各前記需要家電力管理システムの小口節電実績量から求められた大口節電実績量を受信する受信部と、自身の配下にある前記電気機器の消費電力に基づいて、自身の前記小口節電実績量を求める小口節電実績量算出部と、前記大口節電指令量及び前記大口節電実績量との差異に基づいた追加小口節電指令量を求めるとともに、前記自身の小口節電実績量が前記小口節電指令量以上であるときに、前記小口節電指令量に加えて前記追加小口節電指令量に基づいて、前記自身の配下にある前記電気機器に対する確定節電指令量を定める調整部と、
として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、需要家電力管理システムが自律的に大口節電実績量の未達分を自身の小口節電指令量に取り込むことから、アグリゲータからの再配分を待つ従来技術と比較して、迅速に小口節電指令量の再配分が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<全体構成>
図1に、本実施形態に係る電力需要制御システムを含む、電力系統図を例示する。本実施形態に係る電力需要制御システムは、アグリゲータシステム10及び需要家電力管理システム12を備える。なお、
図1では図示を簡略化するために、需要家電力管理システム12A,12Bの2者のみ示しているが、この形態に限らない。例えばアグリゲータシステム10は、数十件から数百件程度の需要家電力管理システム12を配下(配分先、契約先)に持つ。
【0022】
アグリゲータシステム10は、電力会社等の電気事業者14と複数の需要家の間に入り、節電指令量(DR指令量)を調整する。アグリゲータシステム10は、需要家を集約(aggregate)し、電気事業者14から受信した大口節電指令量(大口DR指令量)を各需要家に応じた小口節電指令量(小口DR指令量)に配分する。
【0023】
後述するように、アグリゲータシステム10は、小口節電指令量に加えて、電気事業者14から送られた大口節電指令量(大口DR指令量)と、実際の節電量である大口節電実績量とを、各需要家電力管理システム12に送信する。大口節電実績量は、配下(契約先)にある複数の需要家電力管理システム12における節電実績(小口節電実績量)を合算することで求められる。
【0024】
需要家電力管理システム12は、ビル等の各需要家に設けられ、アグリゲータシステム10から配分された小口節電指令量(小口DR指令量)に応じて、当該需要家電力管理システム12の配下(制御対象)にある電気機器56の電力管理を行う。
【0025】
後述するように、需要家電力管理システム12は、アグリゲータシステム10から送信された大口節電指令量(大口DR指令量)と大口節電実績量(大口DR実績量)との差異に基づいた追加小口節電指令量(追加小口DR指令量)を算出する。加えて需要家電力管理システム12は、自身の小口節電実績量が、自身に与えられた小口節電指令量以上となるときに、つまり節電の進捗として小口節電指令量に到達するかこれを超過したときに、当該小口節電指令量に加えて追加小口節電指令量に基づいて、配下の電気機器に対する確定節電指令量(確定DR指令量)を定める。
【0026】
このように、需要家電力管理システム12が、大口節電指令量に対する大口節電実績量の未達分を自身の小口節電指令に自律的に取り込むことで、アグリゲータシステム10からの再配分を待つことなく、迅速な再配分が可能となる。
【0027】
<アグリゲータシステムの詳細>
アグリゲータシステム10は、電気事業者14と各需要家電力管理システム12との間でデマンドレスポンスに関する情報通信を可能とする。例えばアグリゲータシステム10は、デマンドレスポンスのプロトコルであるOpenADRに準拠し、インターネット等のネットワークを介して、電気事業者14や各需要家電力管理システム12と通信可能となっている。
【0028】
アグリゲータシステム10は、例えばエネルギー利用情報管理運営者に設けられる。すなわちアグリゲータシステム10は、例えばビル等の建築設備の監視制御システムであるBEMS(Building and Energy Manegement System)等のシステムを束ねる上位システムであり、複数の建築設備、つまり複数のBEMSに亘ってこれらを集中的に管理するエネルギー支援サービスを提供する企業等に、アグリゲータシステム10が設けられる。
【0029】
なお、アグリゲータシステム10の管理対象はBEMSに限られない。例えば家庭内のエネルギー監視システムであるHEMS(Home Energy Management System)、工場内のエネルギー監視システムであるFEMS(Factory Energy Management System)、及び地域内のエネルギー管理システムであるCEMS(Cluster/Community Energy Management System)もアグリゲータシステム10の管理対象となり得る。
【0030】
アグリゲータシステム10は、例えば計算機システム(コンピュータ)から構成される。
図1のハード構成図に例示されるように、アグリゲータシステム10は、CPU16(Central Processing Unit)、メモリ18、ハードディスクドライブ20(HDD)、入力部22、出力部24、及び入出力インターフェース26を備え、これらの機器がシステムバスを介してそれぞれ接続される。
【0031】
入力部22はマウスやキーボード等の入力手段から構成される。また出力部24はディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置を含んで構成される。ハードディスクドライブ20は、後述する節電量配分フローを実行するためのプログラムが記憶された、コンピュータ読み取り可能な非一過性の記憶媒体である。当該プログラムがCPU16によって実行されることで、アグリゲータシステム10を構成するコンピュータは、
図2に例示する各機能部として機能する。なお、当該プログラムを、CDやDVD等の光学ディスクからなる記憶媒体に記憶させ、これをCPU16に読み込ませたり、ハードディスクドライブ20に記憶させたりしてもよい。
【0032】
図2を参照し、アグリゲータシステム10の機能部は、データ送受信部28A,28B、実績収集部30、実績データベース32、配分ポリシーデータベース34、及び、小口節電指令量配分部36を含んで構成される。これらの機能部は、仮想的にあるいは説明を容易にするために便宜的にそれぞれ独立して図示されている。例えばCPU16やメモリ18、ハードディスクドライブ20のリソースを適宜割り当ててそれぞれの機能部が構成される。
【0033】
データ送受信部28Aは、電気事業者14とのデータ送受信を行うインターフェースである。データ送受信部28Aは、電気事業者14から、大口節電指令量(大口DR指令量)、デマンドレスポンス開始時刻、及びデマンドレスポンス終了時刻を取得する。大口節電指令量は、いわゆるデマンド時限(例えば30分)ごとに設定されてよい。また、データ送受信部28Aは、電気事業者14に対して、大口節電実績量(大口DR実績量)を送信する。
【0034】
データ送受信部28Bは、需要家電力管理システム12とのデータ送受信を行うインターフェースである。データ送受信部28Bは、各需要家電力管理システム12,12・・・から、小口節電実績量(小口DR実績量)を取得する。また、各需要家電力管理システム12,12・・・に対して、大口節電指令量(大口DR指令量)、大口節電実績量(大口DR実績量)、デマンドレスポンス開始時刻、デマンドレスポンス終了時刻、小口節電指令量(小口DR指令量)、及び、追加配分可能需要家件数を送信する。これらの各データの内容については後述する。
【0035】
実績収集部30は、需要家電力管理システム12の節電実績を収集して、大口節電実績を求める。実績収集部30は、データ送受信部28Bから、例えばアグリゲータシステム10の配下の全ての需要家電力管理システム12,12,・・・から小口節電実績量(小口DR実績量)を取得する。また、節電量だけでなく、実際の消費電力も取得してもよい。通信負荷の軽減のため、需要家電力管理システム12,12,・・・は所定のインターバルを置いて順次実績収集部30に小口節電実績量を送信してもよい。実績収集部30は、例えばアグリゲータシステム10の配下の全ての小口節電実績量の和を求め、これを大口節電実績量とする。
【0036】
さらに実績収集部30は、小口節電指令量配分部36が各需要家電力管理システム12に配分した小口節電指令量と、各需要家電力管理システム12から取得した小口節電実績量とを比較して、小口節電実績量が小口節電指令量以上となっている、つまり指令量以上に節電を行った需要家電力管理システム12の件数を求め、これを追加配分可能件数とする。求められた追加配分可能件数は、各需要家電力管理システム12に送信される。後述するように、追加配分可能件数は、各需要家電力管理システム12が自律的に大口節電指令量の未達分を取り込む際に、自身への割り当てを求めるためのパラメータとして使用される。
【0037】
実績データベース32は、実績収集部30から、各需要家電力管理システム12の小口節電実績量を取得する。またこれに併せて、大口節電指令量、小口節電指令量、追加配分可能需要家件数、各需要家電力管理システムの消費電力等、節電成功率(=節電実績量/節電指令量)を取得して記憶するようにしてもよい。なお、これらのデータは取得した日時と同期した状態で記憶されてよい。
【0038】
配分ポリシーデータベース34は、大口節電指令量を小口節電指令量に配分する際の基準となる配分ポリシーが記憶されている。配分ポリシーは各需要家の節電可能量(余力、DR可能量)を求める基準であり、例えば天候や気温等に基づいて種々の配分割合等が設定される。配分ポリシーは例えばアグリゲータシステム10と需要家電力管理システム12との契約時点で定められる。
【0039】
小口節電指令量配分部36は、大口節電指令量を各需要家電力管理システム12向けの小口節電指令量に配分する。小口節電指令量配分部36は、実績データベース32に記憶された各需要家電力管理システム12の節電実績(例えば成功率)や、配分ポリシーデータベース34に記憶された各需要家電力管理システム12の配分ポリシーに基づいて、小口節電指令量の配分処理を進める。例えば各需要家電力管理システム12の成功率の平均値が100%以上、かつ、小口節電指令量の総和が大口節電指令量以上となるように、小口節電指令量が求められる。後述するように、小口節電指令量は、いわゆるデマンド時限(例えば30分)ごとに設定されてよい。
【0040】
<需要家電力管理システムの詳細>
図1に戻り、需要家電力管理システム12は、例えば上述したBEMS、HEMS、FEMS、CEMS等のエネルギーマネジメントシステムを含んで構成される。
図1では、需要家電力管理システム12の例としてBEMSが挙げられている。
【0041】
需要家電力管理システム12は、中央装置48、サブコントローラ50、デジタルコントローラ52、リモートステーション54、及びセンサ58を備え、各種電気機器56を制御する。電気機器56はビル内に設置される種々の設備機器であり、例えば空調機器、照明機器、衛生機器、防災機器、防犯機器、及び動力機器等が含まれる。
【0042】
中央装置48は、例えばいわゆるB−OWS(BACnet Operator Workstation)から構成されており、監視スタッフ等により操作監視されるクライアントPCとしての機能と、データ保存やアプリケーション処理等を行うサーバーとしての機能を備えている。中央装置48では、例えば画面表示や設定操作が行われる。
【0043】
サブコントローラ50は主に制御機能を担う。サブコントローラ50は、例えばいわゆるB−BC(Building Controller)から構成されており、デジタルコントローラ52やリモートステーション54等の端末伝送機器と通信し、ポイントデータやスケジュール制御等を管理する。例えばサブコントローラ50は、空調設備系統、照明設備系統、衛生設備系統、防犯設備系統等、各機能別系統(サブシステム)ごとに一つずつ設けられる。
【0044】
中央装置48及びサブコントローラ50は需要家電力管理システム12の上位システムを構成する。この上位システムでは、複数の設備機器を統括制御する。例えば空調スケジュールに基づく発停制御等の機能を備える。
【0045】
デジタルコントローラ52はいわゆるDDC(Direct Digital Controller)であってよく、BEMSにおける分散制御を実現するための調節器としての機能を備える。例えばデジタルコントローラ52はサブコントローラ50から送られたタイマ設定に基づくプログラム制御や、同じくサブコントローラ50から送られた目標値に基づくフィードバック制御等により、接続先の電気機器56を制御する。また、デジタルコントローラ52はセンサ58の計測値や電気機器56の警告等を上記システムや他のデジタルコントローラ52に送信する。
【0046】
リモートステーション54はアウトステーション、ローカルステーションとも呼ばれ、接続先のセンサ58や電気機器56の監視や制御を行う。機能的にはデジタルコントローラ52と重複するため、デジタルコントローラ52及びリモートステーション54は接続先の電気機器56やセンサ58に応じて適宜どちらか一方が選択される。
【0047】
中央装置48、サブコントローラ50、デジタルコントローラ52、及びリモートステーション54はコンピュータから構成される。例えば
図3に示すように、そのいずれにも、CPU60、メモリ62、ハードディスクドライブ64、入力部66、出力部68、及び入出力インターフェース70が設けられる。
【0048】
例えば需要家電力管理システム12はいわゆる垂直分散制御方式を採っている。例えば、中央装置48にて作成された空調スケジュールがサブコントローラ50を介してデジタルコントローラ52やリモートステーション54のハードディスクドライブ64に記憶される。このようにすることで、上位システム(中央装置48及びサブコントローラ50)がダウンしても、下位システム(デジタルコントローラ52、リモートステーション54、及びセンサ58)によって各電気機器の制御が可能となる。
【0049】
図4には、中央装置48の機能ブロックが例示されている。中央装置48は、データ送受信部72、データ収集部74、実績データベース76、ベースライン算出部78、小口節電実績量算出部80、加減算部82A,82B、小口節電調整部84、大口節電調整部86、調整量出力部88、及び設備制御部90を含んで構成される。上記機能部のうち、加減算部82A,82B、小口節電調整部84、大口節電調整部86、及び調整量出力部88は節電量調整部92を構成し、この節電量調整部92が、後述するように自律的な節電量の再配分を可能とする。
【0050】
なお
図4では、上記機能部は、仮想的にあるいは理解を容易にするために便宜的に、それぞれ独立して図示されている。例えばコンピュータの読み取り可能な記憶媒体であるハードディスクドライブ64やCD、DVD等の光学ディスクに記憶された、節電量配分プログラムをCPU60が実行することで、CPU60やメモリ62、ハードディスクドライブ64のリソースが適宜割り当てられ、それぞれの機能部が構成される。
【0051】
データ送受信部72は、アグリゲータシステム10から種々のデータを受信する。具体的には、データ送受信部72は、小口節電指令量、大口節電指令量、大口節電実績量、デマンドレスポンス開始時刻、デマンドレスポンス終了時刻、追加配分可能需要家件数をアグリゲータシステム10から受信する。また、データ送受信部72は、小口節電実績量をアグリゲータシステム10に送信する。
【0052】
データ収集部74は、センサ58(計器群)のうち電力センサから、消費電力の実績量を取得する。この実績量はセンサ58単位であってよく、また設備単位であってもよい。データ収集部74は、これら実績量の総和を求めてこれを需要家電力管理システム全体(EMS単位)の消費電力実績量とする。
【0053】
ベースライン算出部78は、節電実績量を算出する基準となるベースラインを算出する。ベースラインは、
図5に例示するように、デマンドレスポンスの要請がなかった場合に想定される電力消費量を指し、これと上記の消費電力実績量との差が節電実績量となる。
【0054】
ベースライン算出部78には、データ送受信部72からデマンドレスポンス開始時刻及びデマンドレスポンス終了時刻が送信される。またベースライン算出部78は、実績データベース76から、需要家電力管理システム12の配下にある電気機器の、消費電力の過去実績データを取得する。
【0055】
ベースラインの算出に当たっては、例えば既知であるHigh 4 of 5を用いてよい。すなわち、ベースライン算出部78は、実績データベース76から、デマンドレスポンス開始時刻から終了時刻までの期間(DR実施時間帯)と同一時間帯の、デマンドレスポンス実施日を除く直近5日間程度の、過去の電力消費量を取得する。さらにベースライン算出部78は、この5日間のDR実施時間帯のうち、平均需要量の多い4日間の需要データの、30分単位の平均値を順次算出してこれをベースラインとする。
【0056】
実績データベース76は、データ収集部74からEMS単位の消費電力実績量を取得する。上述したベースラインの算出を考慮して、実績データベース76は図示しない時計機能と同期して日時と同期させてEMS単位の消費電力実績量を記憶してもよい。また、EMS単位の消費電力実績量と併せて、センサ単位の電力実績量を記憶してもよい。
【0057】
小口節電実績量算出部80は、ベースライン算出部78からベースラインを取得し、実績データベース76からEMS単位の電力実績量を取得する。さらに小口節電実績量算出部80は、ベースラインからEMS単位の電力実績量を差し引いて、これを小口節電実績量とする。上述したように、ベースラインが30分1コマである場合、1コマ中の節電量調整を可能とするため、小口節電実績量の算出は、30分より短い時間間隔で行ってもよい。例えば5分間隔で小口節電実績量を算出してもよい。
【0058】
加減算部82Aでは、小口節電指令量から小口実績量を差し引いた、小口節電残量が算出される。同様にして、加減算部82Bでは、大口節電指令量から大口実績量を差し引いた、大口節電残量が算出される。
【0059】
小口節電調整部84には、加減算部82Aから小口節電残量が送信され、これに基づいた小口節電調整量が算出される。小口節電調整量は、例えば小口節電残量に所定のゲインを掛けた値であり、例えばPID制御によって求められる。
【0060】
大口節電調整部86には、加減算部82Bから大口節電残量が送信される。さらに大口節電調整部86には、データ送受信部72から追加配分可能需要家件数が送信される。大口節電調整部86は、大口節電残量及び追加配分可能需要家件数で割った値に基づいて、例えば所定のゲインを掛けた値を求めて、これを追加小口節電指令量とする。なお、追加配分可能需要家件数の代わりに、アグリゲータシステム10の配下にある全ての需要家電力管理システム12の件数を用いてもよい。
【0061】
調整量出力部88は、小口節電調整部84から小口節電調整量及び小口節電残量を取得し、大口節電調整部86から追加小口節電指令量を取得する。調整量出力部88は、小口節電残量が0以下であるかを判定する。すなわち、小口節電実績量が小口節電指令量以上であるか否かを判定する。
【0062】
小口節電残量が0を超過する場合、つまり、小口節電実績量が小口節電指令量に到達していない場合、自身の節電を優先する観点から、調整量出力部88は、小口節電調整量を確定節電指令量として設備制御部90に送信する。
【0063】
一方、小口節電残量が0以下である場合、つまり、小口節電実績量が小口節電指令量に到達している場合、大口の節電量の未達分を消化するために、調整量出力部88は、小口節電調整量に加えて追加小口節電指令量に基づいて、確定節電指令量を求めてこれを設備制御部90に送信する。例えば、小口節電調整量と追加小口節電指令量との和を確定節電指令量とする。
【0064】
設備制御部90では、確定節電指令量に基づいて、空調機器56、照明機器56等の機器郡の電力管理を行う。例えば確定節電指令量を配下の機器に適宜配分して、節電運転を実行する。
【0065】
<節電量配分フロー>
図6には、本実施形態に係る節電量配分フローのうち、アグリゲータシステム10側のフローが例示されている。また
図7には、本実施形態に係る節電量配分フローのうち、需要家電力管理システム12側のフローが例示されている。
【0066】
図6を参照し、アグリゲータシステム10のデータ送受信部28Aは、電気事業者14から大口節電指令量、デマンドレスポンス開始時刻、及びデマンドレスポンス終了時刻を受信する(S10)。これは
図5のDR予告に当たる。
【0067】
次に、小口節電指令量配分部36は、上述したように、大口節電指令量、配分ポリシー、及び過去実績データに基づいて、各需要家電力管理システム向けに、小口節電指令量を配分する(S12)。さらにデータ送受信部28Bから、デマンドレスポンス開始時刻、デマンドレスポンス終了時刻、大口節電指令量、及び小口節電指令量を各需要家電力管理システムに送信する(S14)。ステップS10からステップS14まで、
図5のDR反応時間に実行される。
【0068】
アグリゲータシステム10は、デマンドレスポンス開始時刻に到達したか否かを判定し(S16)、未達の場合は所定時間待機する(S18)。デマンドレスポンス開始時刻に到達すると、実績収集部30は、各需要家電力管理システム12から、小口節電実績量を収集し(S20)、大口節電実績量を算出する(S22)。さらに実績収集部30は、追加配分可能需要家件数を求める(S24)。
【0069】
次に、データ送受信部28Bを介して、大口節電指令量、小口節電指令量、大口節電実績量、及び、追加配分可能需要家件数が、各需要家電力管理システムに送信される(S26)。
【0070】
アグリゲータシステム10は、デマンドレスポンス終了時刻に到達したか否かを判定し(S28)、未達の場合はステップS20まで戻る。デマンドレスポンス終了時刻に到達した場合、本フローが終了する。
【0071】
図7に例示されているように、需要家電力管理システム12は、
図6のステップS14によりアグリゲータシステム10から、小口節電指令量、デマンドレスポンス開始時刻、及びデマンドレスポンス終了時刻を受信する(S30)。需要家電力管理システム12は、デマンドレスポンス開始時刻に到達したか否かを判定し(S32)、未達の場合は所定時間待機する(S34)。
【0072】
デマンドレスポンス開始時刻に到達すると、小口節電状況と大口節電状況とが並行して求められる。まず前者について、データ収集部74は、センサ58群(のうち電力センサ)からセンサ単位の消費電力実績量を取得して(S36)、需要家単位(EMS単位)の消費電力実績量を算出して(S38)実績データベース76に記憶させる。
【0073】
ベースライン算出部78は、現在時刻に対応するコマのベースラインを実績データベースから取得する(S40)。さらに小口節電実績量算出部80は、ステップS40にて求められたベースラインからステップS38にて求めたEMS単位の消費電力実績量を差し引いてこれを小口節電実績量とする(S42)。求められた小口節電実績量はアグリゲータシステム10に送られる(S44)。また、小口節電調整部84は、小口節電指令量から小口節電実績量が差し引かれた小口節電残量を取得して、小口節電調整量を算出する(S46)。
【0074】
小口の節電状況の演算と併せて、節電量調整部92は、大口の節電状況を演算する。データ送受信部72は、アグリゲータシステム10から、大口節電指令量、大口節電実績量、及び追加配分可能需要家件数を受信する(S48)。加減算部82Bでは、大口節電指令量から大口節電実績量を差し引いた、大口節電残量が算出される(S50)。大口節電調整部86では、節電残量と追加配分可能需要家件数から、追加小口節電指令量が算出される(S52)。
【0075】
調整量出力部88では、小口節電残量が0以下であるか否か、つまり、小口節電実績量が小口節電指令量以上であるか否かが判定される(S54)。小口節電残量が0を超過する場合、つまり、小口節電実績量が小口節電指令量に到達していない場合、調整量出力部88は小口節電調整量を確定節電指令量として設備制御部90に送信する(S56)。
【0076】
一方、小口節電残量が0以下である場合、調整量出力部88は、小口節電調整量と追加小口節電指令量に基づいて、例えば両者の和を確定指令用に設定して設備制御部90に送信する(S58)。設備制御部90では、受信した確定節電指令量に基づいて配下の機器56の電力管理を行う(S60)。さらに需要家電力管理システム12は、デマンドレスポンス終了時刻に到達したか否かを判定し(S62)、未達の場合はステップS36及びステップS48まで戻る。デマンドレスポンス終了時刻に到達した場合は本フローが終了する。
【0077】
図8には、本実施形態に係る節電量配分フローの例が示されている。
図8に例示するグラフは、横軸に時間、縦軸に電力[kW]を取る。この例では、ベースラインが30分1コマで割り当てられる。また、調整量出力部88による小口節電残量の判定は5分間隔で行われる。さらに、この例では、節電実績量は電力[kW]の13:00からの平均値を表すものとする。
【0078】
13:00〜13:30のコマにおけるベースラインがA[kW]で表されている。さらに13:00〜13:30のコマにおける小口節電指令量がB[kW]で示されている。調整量出力部88は、5分間隔で小口節電残量が0以下であるか否かを判定する。13:15に、小口節電残量が0以下となる、つまり、小口節電実績量(平均値)が小口節電指令量以上となると、調整量出力部88は、小口節電調整量と追加小口節電指令量の和を確定節電指令量に設定する。以下、設定後の確定節電指令量に基づいて、配下の機器56に対する電力管理が行われる。
【0079】
<第2実施形態>
図2、
図4の例の変形例として、
図9、
図10に示すように、節電予測を加味して節電残量を求めてもよい。
図9にはアグリゲータシステム10の機能ブロック図が例示されている。
図2の機能ブロック図と重複する機能部については適宜説明を省略する。
【0080】
データ送受信部28Aは、気象情報提供者94から気象情報を受信する。この気象情報は、節電予測部96(アグリゲータ側節電予測部、大口節電予測部)及びデータ送受信部28Bに送られる。図示は省略するが、節電予測部96は実績データベース32から過去の大口節電実績量及び大口節電指令量を取得する。節電予測部96は、過去の大口節電実績量及び大口節電指令量と気象情報との因果関係を示すアルゴリズム等を用いて、大口節電予測量を算出する。このアルゴリズムでは、例えば重回帰モデリングや多層のニューラルネットワークを用いて、過去の実績データ(節電実績量や設備稼働履歴)と気象条件との因果関係を学習する。または、各需要家電力管理システム12から送られた小口節電予測量を収集することで大口節電予測量を求めてもよい。
【0081】
大口節電予測量は、現在時点から所定時間後、例えば次のコマ(30分間)に算出されると予測される大口節電指令量の予測値である。または、大口節電予測量は、現在時点の大口節電指令量からの増減量であってもよい。
【0082】
データ送受信部28Bからは、小口節電指令量、大口節電指令量、大口節電実績量、デマンドレスポンス開始時刻、デマンドレスポンス終了時刻、及び、追加配分可能需要家件数に加えて、気象情報及び大口節電予測量が各需要家電力管理システム12に送信される。
【0083】
図10には、需要家電力管理システムの機能ブロック図が例示されている。
図4の機能ブロック図と重複する機能部については適宜説明を省略する。
【0084】
データ送受信部72を介して、節電予測部98(EMS側節電予測部、小口節電予測部)には気象情報が送信される。図示は省略するが、節電予測部98は実績データベース76から過去の小口節電実績量及び小口節電指令量を取得する。節電予測部98は、節電予測部96と同様に、過去の小口節電実績量及び小口節電指令量と気象情報との因果関係を示すアルゴリズム等を用いて、小口節電予測量を算出する。小口節電予測量は、現在時点から所定時間後、例えば次のコマ(30分間)に算出されると予測される小口節電指令量の予測値である。または、小口節電予測量は、現在時点の小口節電指令量からの増減量であってもよい。
【0085】
加減算部82Aでは、小口節電予測量に基づいて、小口節電指令量または小口節電実績量を調整する。例えば、小口節電指令量から小口節電実績量を差し引いた値に、さらに小口節電予測量が差し引かれて小口節電残量が求められる。
【0086】
同様に、加減算部82Bでは、大口節電予測量に基づいて、大口節電指令量または大口節電実績量を調整する。例えば、大口節電指令量から大口節電実績量を差し引いた値に、さらに大口節電予測量が差し引かれて大口節電残量が求められる。加えて、大口節電残量から、追加小口節電指令量が算出される。
【0087】
調整量出力部88では、小口節電残量に基づいて、確定節電指令量を設定する。すなわち、小口節電指令量が0以下であれば、小口節電調整量と追加小口節電指令量の和が確定節電指令量となる。また、小口節電指令量が0を超過していれば、小口節電調整量が確定節電指令量となる。
【0088】
なお、過去の実績データが少ないなど、過去の大口/小口節電実績量及び大口/小口節電指令量と気象情報との因果関係を示すアルゴリズムの実行が困難な場合は、いわゆる汎用モデルを用いて、大口/小口節電予測量を求めてもよい。例えば汎用モデルは、建物の規模や電力の使用傾向、契約電力等が類似した他の需要家の実績データから作成される。節電予測量を求めるに当たり、実績データベース32,76に記憶されたデータ点数をもとに、上述したアルゴリズムを用いるか、汎用モデルを用いるかを決定してもよい。
【0089】
<その他の実施形態>
上述の実施形態では、大口節電実績量はアグリゲータシステム10から送られたが、この形態に限らない。例えばアグリゲータシステム10の配下にある全ての需要家電力管理システム12,12,・・・が相互に通信し合い、それぞれの小口節電実績量を他の需要家電力管理システム12,12,・・・に送信する。各需要家電力管理システム12は取得したそれぞれの小口節電実績量を足し合わせて大口節電実績量を算出してもよい。例えば各需要家電力管理システム12,12,・・・は、ブロードキャストにて自身の小口節電実績量を他の全ての需要家電力管理システム12,12,・・・のデータ送受信部72に送信する。
【0090】
ブロードキャストに代えて、トークンリング型の通信を行ってもよい。例えば、任意の需要家電力管理システム12がその上流(前)から送られた小口節電実績量に自身の小口節電実績量を追加してループ上にデータを送付(回覧)する。アグリゲータシステム10は、このトークンリングによる通信が途切れないか否かを監視してもよい。また、節電可能量(余力)の大きい需要家ほど上流に配置してもよい。
【0091】
このように、アグリゲータシステム10の大口節電実績量の受信を待たずに、需要家電力管理システム12が自律的に大口節電実績量を求めることで、当該大口節電実績量に基づいて算出される、追加小口節電指令量を迅速に求めることができる。
【0092】
また、上述の実施形態では、中央装置48(B−OWS)が需要家電力管理システム側の節電量配分フローを実行していたが、この形態に限らない。例えば機器56の運転制御を行うデジタルコントローラ52にも節電量配分フローを実行させてもよい。機器単位で節電量配分フローを実行させることで、よりきめ細やかな電力管理が可能となる。