特許第6656197号(P6656197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656197
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】ハーネスの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20200220BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   H01R43/048 Z
   H01R43/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-60370(P2017-60370)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-163804(P2018-163804A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】593098646
【氏名又は名称】株式会社小寺電子製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】小寺 博治
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−290846(JP,A)
【文献】 実開昭59−053788(JP,U)
【文献】 特開2006−107857(JP,A)
【文献】 特開2011−070840(JP,A)
【文献】 特開平9−19019(JP,A)
【文献】 特開昭53−012097(JP,A)
【文献】 特開平07−045352(JP,A)
【文献】 特開2009−259547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R43/00−43/02
H01R43/027−43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を搬送軸線上で搬送する電線搬送機構と、
搬送された電線を切断する切断機構と、
該切断機構に対して前記搬送軸線の延びている方向に離隔して配置されており、下方から上方の底部へ向かって細くなるように凹んでいるクリンパを有する上側ユニット、前記クリンパの内部に下方から挿入されるアンビルを有する下側ユニット、及び該下側ユニットに取付けられており前記アンビル上に端子を供給する端子供給機構、を備えており、前記搬送軸線に対して上下に離隔している前記上側ユニットと前記下側ユニットとを互いに接近させて、前記端子供給機構により前記アンビル上に供給された端子を、前記クリンパと前記アンビルとにより電線の端部に圧着する端子圧着機構と
を具備し、電線の端部に端子を圧着してハーネスを製造するハーネスの製造装置を用いたハーネスの製造方法であって、
前記搬送軸線が前記クリンパの底部と前記アンビルとの間の空間を通過するように、前記上側ユニットを下方へ移動させて前記クリンパの内部に前記アンビルを挿入し、前記空間において前記搬送軸線上の電線が通過している状態で、前記切断機構により電線を切断することを特徴とするハーネスの製造方法。
【請求項2】
前記端子供給機構により前記アンビル上に端子が供給されている前記下側ユニットを上方へ移動させて前記クリンパの内部に挿入されている端子と、前記クリンパの底部との間に、電線が通過している状態で、前記切断機構により電線を切断することを特徴とする請求項1に記載のハーネスの製造方法。
【請求項3】
電線を搬送軸線上で搬送する電線搬送機構と、
搬送された電線を切断する切断機構と、
該切断機構に対して前記搬送軸線の延びている方向に離隔して配置されており、下方から上方の底部へ向かって細くなるように凹んでいるクリンパを有する上側ユニット、前記クリンパの内部に下方から挿入されるアンビルを有する下側ユニット、及び該下側ユニットに取付けられており前記アンビル上に端子を供給する端子供給機構、を備えており、前記搬送軸線に対して上下に離隔している前記上側ユニットと前記下側ユニットとを互いに接近させて、前記端子供給機構により前記アンビル上に供給された端子を、前記クリンパと前記アンビルとにより電線の端部に圧着する端子圧着機構と、
前記電線搬送機構、前記切断機構、及び前記端子圧着機構を制御して、電線の端部に端子が圧着されたハーネスを製造する制御部と
を具備するハーネスの製造装置であって、
該制御部は、
前記搬送軸線が前記クリンパの底部と前記アンビルとの間の空間を通過するように、前記上側ユニットを下方へ移動させて前記クリンパの内部に前記アンビルを挿入し、前記空間において前記搬送軸線上の電線が通過している状態で、前記切断機構により電線を切断するように制御することを特徴とするハーネスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端部に端子が圧着されているハーネスの製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線の端部に端子が圧着されているハーネスの製造装置は、電線を搬送する電線搬送機構と、搬送された電線を切断する切断機構と、クリンパとアンビルとで電線の端部に端子を圧着させる端子圧着機構と、を備え、電線搬送機構、切断機構、及び端子圧着機構を電線の搬送軸線上に配置したもの(所謂、インライン方式の製造装置)が提案されている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1の製造装置を用いたハーネスの製造は、まず、端子圧着機構において、クリンパとアンビルとを互いに離隔させた状態で、電線搬送機構により、必要な長さだけ電線を送った後に、切断装置により電線を切断する。そして、電線搬送機構により電線の端部を、アンビル上に供給されている端子の直上に移動させた後に、クリンパとアンビルとを互いに接近させて電線の端部に端子を圧着している。
【0004】
ところで、ハーネスに用いる電線が細くなる(直径が小さくなる)と、切断機構において電線を切断した時に、切断の衝撃によって電線が、電線搬送機構により保持されている部位から曲がり易くなる。そして、切断により電線が曲がると、電線の端部が、搬送軸線上から離れてしまうため、アンビル上に供給されている端子の直上から離れてしまい、電線の端部に端子を圧着させることができなくなる問題があった。そのため、電線の細いハーネスを、自動的に製造することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−107857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記の実情に鑑み、切断時における電線の曲がりを抑制して端部に端子を圧着させることが可能なハーネスの製造方法及び製造装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るハーネスの製造方法は、「電線を搬送軸線上で搬送する電線搬送機構と、搬送された電線を切断する切断機構と、該切断機構に対して前記搬送軸線の延びている方向に離隔して配置されており、下方から上方の底部へ向かって細くなるように凹んでいるクリンパを有する上側ユニット、前記クリンパの内部に下方から挿入されるアンビルを有する下側ユニット、及び該下側ユニットに取付けられており前記アンビル上に端子を供給する端子供給機構、を備えており、前記搬送軸線に対して上下に離隔している前記上側ユニットと前記下側ユニットとを互いに接近させて、前記端子供給機構により前記アンビル上に供給された端子を、前記クリンパと前記アンビルとにより電線の端部に圧着する端子圧着機構とを具備し、電線の端部に端子を圧着してハーネスを製造するハーネスの製造装置を用いたハーネスの製造方法であって、前記搬送軸線が前記クリンパの底部と前記アンビルとの間の空間を通過するように、前記上側ユニットを下方へ移動させて前記クリンパの内部に前記アンビルを挿入し、前記空間において前記搬送軸線上の電線が通過している状態で、前記切断機構により電線を切断する」ことを特徴とする。
【0008】
ここで、「電線搬送機構」としては、「リールに巻かれている長い電線を搬送するもの」、「切断機構により切断された電線を搬送するもの」、を例示することができる。
【0009】
また、「切断機構」としては、「電線を切断する切断刃と、電線を被覆している被覆材に切込みを入れる切込刃と、を備えているもの」、「電線を切断する切断刃のみを備えているもの」、を例示することができる。
【0010】
更に、ハーネスの「製造装置」としては、「電線搬送機構、端子圧着機構、切断機構、端子圧着機構、電線搬送機構、の順番に並び、電線の両端に端子が圧着されたハーネスを製造することができるもの」、「電線搬送機構、端子圧着機構、切断機構、の順番に並び、電線の一方の端部にのみ端子が圧着されハーネスを製造するもの」、を例示することができる。
【0011】
本構成によれば、切断機構により電線を切断する際に、上側ユニットを下方へ移動させてクリンパの内部に、電線が通過している状態で、電線を切断しているため、切断の衝撃により電線の端部が搬送軸線から離れようとしても、クリンパにより電線の移動を阻止することができ、電線が電線搬送機構により保持されている部位から曲がり難いものとすることができる。従って、細い電線を切断しても、電線が曲がり難く、電線の端部を搬送軸線上に維持させることができるため、搬送軸線上に供給された端子に、電線の端部を圧着させることができ、電線の細いハーネスも製造することができる。
【0012】
本発明に係るハーネスの製造方法は、上記の構成に加えて、「前記端子供給機構により前記アンビル上に端子が供給されている前記下側ユニットを上方へ移動させて前記クリンパの内部に挿入されている端子と、前記クリンパの底部との間に、電線が通過している状態で、前記切断機構により電線を切断する」ことを特徴としても良い。
【0013】
本構成によれば、切断機構により電線を切断する際に、上側ユニットのクリンパの内部におけるクリンパの底部と、クリンパの内部に下方から挿入されているアンビル上の端子との間に、電線を通過させた状態としていることから、電線が通過している空間が狭いため、切断した時の電線の移動を更に抑制させることができ、切断された電線の端部を搬送軸線上に維持させて、電線の端部に端子を確実に圧着させることができる。
【0014】
本発明に係るハーネスの製造装置は、「電線を搬送軸線上で搬送する電線搬送機構と、搬送された電線を切断する切断機構と、該切断機構に対して前記搬送軸線の延びている方向に離隔して配置されており、下方から上方の底部へ向かって細くなるように凹んでいるクリンパを有する上側ユニット、前記クリンパの内部に下方から挿入されるアンビルを有する下側ユニット、及び該下側ユニットに取付けられており前記アンビル上に端子を供給する端子供給機構、を備えており、前記搬送軸線に対して上下に離隔している前記上側ユニットと前記下側ユニットとを互いに接近させて、前記端子供給機構により前記アンビル上に供給された端子を、前記クリンパと前記アンビルとにより電線の端部に圧着する端子圧着機構と、前記電線搬送機構、前記切断機構、及び前記端子圧着機構を制御して、電線の端部に端子が圧着されたハーネスを製造する制御部とを具備するハーネスの製造装置であって、該制御部は、前記搬送軸線が前記クリンパの底部と前記アンビルとの間の空間を通過するように、前記上側ユニットを下方へ移動させて前記クリンパの内部に前記アンビルを挿入し、前記空間において前記搬送軸線上の電線が通過している状態で、前記切断機構により電線を切断するように制御する」ことを特徴とする。
【0015】
本構成によれば、電線搬送機構、切断機構、及び端子圧着機構を制御する制御部により、端子圧着装置の下側ユニットを下方へ移動させて、クリンパの内部に電線を通過させた状態で、切断機構により電線を切断させるようにしているため、切断の衝撃により電線の端部が搬送軸線から離れようとしても、クリンパにより電線の移動を阻止することができ、電線が電線搬送機構により保持されている部位から曲がり難いものとすることができる。従って、細い電線を切断しても、電線が曲がり難く、電線の端部を搬送軸線上に維持させることができるため、搬送軸線上に供給された端子に、電線の端部を圧着させることができ、電線の細いハーネスも製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の効果として、切断時における電線の曲がりを抑制して端部に端子を圧着させることが可能なハーネスの製造方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態であるハーネスの製造装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】ハーネスの製造装置の端子圧着機構における下側ユニットと上側ユニットの斜視図である。
図3】端子圧着機構における下側ユニットと上側ユニットの正面図である。
図4】電線と端子の関係を示す斜視図である。
図5】ハーネスの製造装置によるハーネスの製造工程を示す説明図である。
図6】電線切断工程における電線と、クリンパ及びアンビルとの関係を拡大して示す説明図である。
図7】端子圧着工程における電線、端子、及びクリンパの関係を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態であるハーネスの製造装置1について、主に図1乃至図4等を参照して詳細に説明する。本実施形態のハーネスの製造装置1(以下では単に製造装置1と称する)は、電線2の両端に端子3が圧着されているハーネス4を製造するためのものである。この製造装置1は、電線2を搬送軸線L上で搬送する電線搬送機構5と、搬送された電線2を切断する切断機構6と、切断機構6に対して搬送軸線Lの延びている方向に離隔して配置されており、電線2の端部に端子3を圧着する端子圧着機構7と、電線搬送機構5、切断機構6、及び端子圧着機構7を制御する制御部8と、を備えている。
【0019】
電線2は、図4に示すように、金属線からなる芯材2aと、芯材2aを被覆している絶縁体からなる被覆材2bと、で構成されている。本実施形態の電線2は、芯材2aの直径が1mm以下で、被覆材2bがホウロウである。
【0020】
端子3は、他の部材に対して電気的に接続するための接続部3aと、電線2の芯材2aに圧着される第一バレル3bと、電線2の被覆材2bに圧着される第二バレル3cと、を備えている。端子3は、先端側から、接続部3a、第一バレル3b、第二バレル3cの順番に並んでいる。端子3は、電線2に圧着される前の状態では、第二バレル3cよりも後側において、帯板状のキャリア3dに繋がれている。このキャリア3dには、キャリア3dの長手方向へ一定の間隔をあけて複数の端子3が繋がれている。
【0021】
また、端子3は、電線2に圧着される前の状態では、第一バレル3b及び第二バレル3cが、上方へ向かうに従って互いに遠ざかるように延びており、夫々が一対の平板状の部位により構成されている(図6等を参照)。端子3は、図示するように、第二バレル3cが第一バレル3bよりも高く上方へ延び出している。一対の第二バレル3cの上端同士の間隔は、後述する第一クリンパ11及び第二クリンパ12の底部11aの下端の間隔と同じである。
【0022】
本実施形態の製造装置1は、図1に示すように、電線搬送機構5が、搬送軸線Lの延びている方向に離隔している第一電線搬送機構5Aと第二電線搬送機構5Bとで構成されている。切断機構6は、第一電線搬送機構5Aと第二電線搬送機構5Bとの間に配置されている。端子圧着機構7は、第一電線搬送機構5Aと切断機構6との間に配置されている第一端子圧着機構7Aと、切断機構6と第二電線搬送機構5Bとの間に配置されている第二端子圧着機構7Bとで構成されている。
【0023】
詳述すると、電線搬送機構5は、電線2を挟持する一対の搬送ローラ(図示は省略)を有しており、搬送ローラを正転又は逆転させることで、電線2を、前進させたり後退させたりすることができる。また、電線搬送機構5は、搬送ローラの回転数から、搬送した電線2の長さを測ることができる。第二電線搬送機構5Bは、第一電線搬送機構5Aにより搬送された電線2の先端を受取ることができるように構成されている。
【0024】
切断機構6は、上下方向に対向している一対の切断刃6aと、夫々の切断刃6aに対して搬送軸線Lの延びている方向の両側へ離隔している一組の切込刃6bと、を備えている(図5を参照)。切断機構6は、上側の切断刃6a及び一つ組の切込刃6bと、下側の切断刃6a及び一つ組の切込刃6bとは、夫々が互いに対向していると共に、互いに接近・離隔するように上下方向へ移動することができる。切断機構6の切断刃6aは、電線2を切断するためのものであり、切込刃6bは、電線2の被覆材2bに切込みを入れるためのものである。
【0025】
端子圧着機構7は、第一端子圧着機構7Aと第二端子圧着機構7Bとが同一の構成である。端子圧着機構7は、搬送軸線Lの上方に配置されている上側ユニット10と、搬送軸線Lの下方に配置されている下側ユニット20と、を備えている。また、端子圧着機構7は、図示は省略するが、上側ユニット10を昇降させる上側昇降機構と、下側ユニット20を昇降させる下側昇降機構と、を備えている。端子圧着機構7は、上側昇降機構により上側ユニット10を下降させると共に、下側昇降機構により下側ユニット20を上昇させることで、電線2の端部に端子3を圧着させることができる。
【0026】
上側ユニット10は、第一バレル3bを圧着させるための第一クリンパ11と、第二バレル3cを圧着させるための第二クリンパ12と、圧着時において電線2を保持するための上側電線保持部13と、圧着時において端子3の接続部3aを保持するための上側端子保持部14と、下方へ突出している切断押圧部15と、第一クリンパ11、第二クリンパ12、上側電線保持部13、上側端子保持部14、及び切断押圧部15が取付けられていると共に、上側昇降機構に対して着脱可能に取付けられる上側ユニットベース16と、を備えている。
【0027】
第一クリンパ11及び第二クリンパ12は、下方から上方へ向かって凹んでいる。第一クリンパ11及び第二クリンパ12の凹みは、互いに類似した形状であり、以下では、第一クリンパ11を例にして説明する。第一クリンパ11は、下方から上方の底部11aへ向かって細くなるように凹んでいる。第一クリンパ11の底部11aは、上側の二つの角が丸められたM字状で、M字の両側の縦辺の下端が中央の角よりも下方で互いに遠ざかるように延びた形状に形成されている。また、第一クリンパ11は、底部11aの夫々の下端から、下方へ向かうに従って上側よりも更に互いに遠ざかるように斜めに延びた後に、垂直に下方へ延び、下端において下方へ開放されている部位にC面取りを有した形状に形成されている。本実施形態では、第一クリンパ11の底部11aにおいて、M字の両側の縦辺の下端同士の間隔(底部11aの下端の間隔)が、圧着前の端子3における一対の第二バレル3cの上端同士の間隔と同じである。
【0028】
上側端子保持部14は、上側ユニットベース16に対して上下方向へスライド可能に取付けられており、図示しないバネによって下方へ付勢されている。上側ユニットベース16には、ICチップユニット17が取付けられている。ICチップユニット17には、上側ユニット10を識別するための固有の識別情報が記憶されたICチップが内蔵されている。
【0029】
下側ユニット20は、第一クリンパ11の内部に下方から挿入される第一アンビル21と、第二クリンパ12の内部に下方から挿入される第二アンビル22と、圧着時において電線2を保持するための下側電線保持部23と、圧着時において端子3の接続部3aを保持するための下側端子保持部24と、端子3をキャリア3dから切断するための端子切離部25と、端子3を第一アンビル21及び第二アンビル22上へ供給する端子供給機構26と、第一アンビル21、第二アンビル22、下側電線保持部23、下側端子保持部24、端子切離部25、及び端子供給機構26が取付けられていると共に、下側昇降機構に対して着脱可能に取付けられる下側ユニットベース27と、を備えている。
【0030】
下側電線保持部23及び端子切離部25は、夫々が一つの部材に設けられており、下側ユニットベース27に対して上下方向へスライド可能に取付けられていると共に、図示しないバネによって上方へ付勢されている。端子供給機構26は、詳細な図示は省略するが、キャリア3dにより繋がれている複数の端子3を、一つずつ第一アンビル21及び第二アンビル22上へ供給することができる。
【0031】
下側ユニットベース27には、ICチップユニット28が取付けられている。ICチップユニット28には、下側ユニット20を識別するための固有の識別情報が記憶されたICチップが内蔵されている。
【0032】
端子圧着機構7は、上側ユニット10の第一クリンパ11及び第二クリンパ12と、下側ユニット20の第一アンビル21及び第二アンビル22とが、互いに対向するように配置されている。
【0033】
この端子圧着機構7は、上側昇降機構により上側ユニット10を下方へ移動させると共に、下側昇降機構により下側ユニット20を上方へ移動させた状態にすると、下方へ向かって開放されている第一クリンパ11及び第二クリンパ12の内部に、第一アンビル21及び第二アンビル22が挿入されている状態となる。また、上側端子保持部14の下端が、下側端子保持部24の一部に当接して、上側端子保持部14がバネの付勢力に抗して、上側ユニットベース16に対して相対的に上方へスライドした状態となる。更に、切断押圧部15が、端子切離部25が設けられている部材に当接して、下側電線保持部23及び端子切離部25がバネの付勢力に抗して、下側ユニットベース27に対して相対的に下方へスライドした状態となる。
【0034】
制御部8は、図示は省略するが、中央演算部(CPU)、記憶部、入力部、及びディスプレイを備えた汎用のコンピュータにより構成されている。制御部8は、所定のプログラムの実行により、電線搬送機構5、切断機構6、及び端子圧着機構7を制御することができる。
【0035】
次に、上記の製造装置1を用いたハーネス4の製造方法について、主に図5乃至図7等を参照して説明する。以下の動作は、制御部8での製造プログラムの実行により、夫々の動きが制御される。ここでは、第一電線搬送機構5A及び第二電線搬送機構5Bに、電線2が保持されている状態(図5(a)を参照)から説明する。この状態では、第一端子圧着機構7A及び第二端子圧着機構7Bにおいて、夫々の上側ユニット10と下側ユニット20とが、上下方向へ互いに離隔していると共に、切断機構6の上側の切断刃6a及び切込刃6bと、下側の切断刃6a及び切込刃6bとが、上下方向に離隔している。また、この状態では、第一端子圧着機構7A及び第二端子圧着機構7Bの夫々の下側ユニット20において、端子供給機構26により第一アンビル21及び第二アンビル22上に端子3が供給されている。
【0036】
続いて、第一端子圧着機構7A及び第二端子圧着機構7Bにおいて、夫々の上側昇降機構により上側ユニット10を下方へ移動させ、第一クリンパ11及び第二クリンパ12の夫々の内部に、電線2が通過している状態とする。この状態では、図6に示すように、下側ユニット20の第一アンビル21及び第二アンビル22が、第一クリンパ11及び第二クリンパ12の夫々の内部に挿入されており、第一アンビル21及び第二アンビル22上に供給されている端子3における一対の第二バレル3cの上端が、第一クリンパ11及び第二クリンパ12の夫々の底部11aの下端付近の高さに位置している。そして、電線2が、第一アンビル21及び第二アンビル22上に供給されている端子3と、第一クリンパ11及び第二クリンパ12の夫々の底部11aとの間の空間を通過している。
【0037】
続いて、切断機構6において、上側の切断刃6a及び切込刃6bと、下側の切断刃6a及び切込刃6bとを、互いに接近させて、上下の切断刃6aにより電線2を切断すると共に、一組の切込刃6bにより電線2の被覆材2bに切込みを入れる(図5(b)を参照)。この切断機構6により電線2を切断することで、電線2に切断の衝撃が作用し、その衝撃により電線2が搬送軸線Lから離れようとするが、電線2が第一クリンパ11及び第二クリンパ12の底部11aと第一アンビル21及び第二アンビル22上の端子3との間の空間を通過しているため、第一クリンパ11及び第二クリンパ12により電線2の移動を阻止することができ、電線2が第一電線搬送機構5Aや第二電線搬送機構5Bにより保持されている部位から曲がり難いものとすることができる。
【0038】
切断機構6により電線2を切断したら、切断機構6と第一端子圧着機構7A及び第二端子圧着機構7Bをそのままの状態で、第一電線搬送機構5Aにより後側の電線2を後退させると共に、第二電線搬送機構5Bにより前側の電線2を前進させる。これにより、後側の電線2の端部(前端部)と、前側の電線2の端部(後端部)とにおいて、切込刃6bにより切込が入れられた部位を境にして電線2の被覆材2bが除去される。
【0039】
そして、後側の電線2の前端部を、第一電線搬送機構5Aにより第一端子圧着機構7Aに供給されている端子3の位置まで後退させると共に、前側の電線2の後端部を、第二電線搬送機構5Bにより第二端子圧着機構7Bに供給されている端子3の位置まで後退させる(図5(c)を参照)。この状態では、第一端子圧着機構7A第二端子圧着機構7Bの夫々において、電線2の被覆材2bが除去されて芯材2aが露出している部位が、端子3の第一バレル3bの上方に位置していると共に、被覆材2bにより被覆されている部位が第二バレル3cの上方に位置している。
【0040】
この状態で、第一端子圧着機構7A及び第二端子圧着機構7Bにおいて、上側ユニット10と下側ユニット20とを互いに接近させて、第一クリンパ11及び第二クリンパ12と、第一アンビル21及び第二アンビル22とで、電線2の端部に端子3を圧着すると共に、夫々の端子切離部25により端子3をキャリア3dから切離す。これにより、前側の電線2は、両端に端子3が圧着されたハーネス4となる。また、切断機構6では、上側の切断刃6a及び切込刃6bと、下側の切断刃6a及び切込刃6bとを、互いに離隔させる(図5(d)を参照)。
【0041】
その後、第一端子圧着機構7A及び第二端子圧着機構7Bにおいて、上側ユニット10と下側ユニット20とを互いに離隔させると共に、第一電線搬送機構5A及び第二電線搬送機構5Bにより、電線2及びハーネス4を前進させる(図5(e))。そして、第二電線搬送機構5Bでは、製造されたハーネス4を送り出した後に、第一電線搬送機構5Aにより搬送されている電線2を受取り、第一電線搬送機構5Aと協働して、電線2を必要な長さの位置で停止させる(図5(a)を参照)。この動作を繰返すことにより、電線2の両端に端子3が圧着されているハーネス4を製造することができる。
【0042】
このように、本実施形態の製造装置1によれば、切断機構6により電線2を切断する際に、上側ユニット10を下方へ移動させて第一クリンパ11及び第二クリンパ12の内部に、電線2が通過している状態で、電線2を切断しているため、切断の衝撃により電線2の端部が搬送軸線Lから離れようとしても、第一クリンパ11及び第二クリンパ12により電線2の移動を阻止することができ、電線2が第一電線搬送機構5Aや第二電線搬送機構5Bにより保持されている部位から曲がり難いものとすることができる。従って、細い電線2を切断しても、電線2が曲がり難く、電線2の端部を搬送軸線L上に維持させることができるため、搬送軸線L上に供給された端子3に、電線2の端部を圧着させることができ、電線2の細いハーネス4も製造することができる。
【0043】
また、本実施形態の製造装置1によれば、切断機構6により電線2を切断する際に、上側ユニット10の第一クリンパ11及び第二クリンパ12の底部11aと、第一クリンパ11及び第二クリンパ12の内部に下方から挿入されている第一アンビル21及び第二アンビル22上に供給されている端子3との間に、電線2を通過させた状態としていることから、電線2が通過している空間が狭いため、切断した時の電線2の移動を更に抑制させることができ、切断された電線2の端部を搬送軸線L上に維持させることができる。
【0044】
更に、本実施形態の製造装置1によれば、第一クリンパ11及び第二クリンパ12の底部11aの下端の間隔を、端子3における一対の第二バレル3cの上端同士の間隔と同じとし、底部11aと端子3との間の空間を通過している状態で電線2を切断しているため、仮に切断により電線2が搬送軸線Lから離れても(図7を参照)、第一クリンパ11及び第二クリンパ12と、第一アンビル21及び第二アンビル22とを互いに接近させると、斜めに延びている第二バレル3cにより電線2を、一対の第二バレル3cの間に案内して、搬送軸線L上に位置させることができ、電線2の端部に端子3を確実に圧着させることができる。
【0045】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0046】
例えば、上記の実施形態では、切断機構6により電線2を切断する際に、上側ユニット10のみを下方へ移動させるものを示したが、これに限定するものではなく、上側ユニット10を下方へ移動させると共に下側ユニット20を上方へ移動させるようにしても良い。
【0047】
また、上記の実施形態では、電線2の両端に端子3が圧着されているハーネス4の製造を示したが、これに限定するものではなく、電線2の先端又は後端にのみ端子3が圧着されているハーネスを製造しても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 製造装置
2 電線
3 端子
4 ハーネス
5 電線搬送機構
5A 第一電線搬送機構
5B 第二電線搬送機構
6 切断機構
7 端子圧着機構
7A 第一端子圧着機構
7B 第二端子圧着機構
8 制御部
10 上側ユニット
11 第一クリンパ
11a 底部
12 第二クリンパ
20 下側ユニット
21 第一アンビル
22 第二アンビル
25 端子切離部
26 端子供給機構
L 搬送軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7