特許第6656212号(P6656212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656212
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】真空掃除機のための掃除機ヘッド
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/04 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   A47L9/04 A
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-153000(P2017-153000)
(22)【出願日】2017年8月8日
(62)【分割の表示】特願2016-530596(P2016-530596)の分割
【原出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-213409(P2017-213409A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2017年8月9日
(31)【優先権主張番号】1313707.0
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・イスリー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マクヴィー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ベンジャミン・コートニー
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−284526(JP,A)
【文献】 特開2009−011374(JP,A)
【文献】 特開2007−313101(JP,A)
【文献】 特開2009−119025(JP,A)
【文献】 特開2010−240477(JP,A)
【文献】 特開昭62−231611(JP,A)
【文献】 特開2010−227221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空掃除機のための掃除機ヘッドであって、
ブラシバーの形態をした撹拌器であって、前記ブラシバーの周方向長さ及びアキシアル方向長さの略全体に亘って延在しているシール材料を備えており、前記シール材料が房状の材料である、前記撹拌器と、
前記ブラシバーを少なくとも部分的に囲むようにハウジングと前記ブラシバーとの間に形成されているチャンバと、前記チャンバの下側部分に形成された汚染空気入口と、前記ハウジングの前方において前記ブラシバーを露出させている前方開口部とを形成している前記ハウジングであって、前記ブラシバーが、前記ハウジングに対して回転するように支持されている、前記ハウジングと、
を備えている前記掃除機ヘッドにおいて、
前記ハウジングが、横方向において前記ハウジングの一方の側壁から他方の側壁に至るまで延在しているソール板を備えており、
前記一方の側壁及び前記他方の側壁それぞれが、前記汚染空気入口の側方周縁部を形成している下側縁部を有しており、
前記ソール板が、前記汚染空気入口の後方周縁部を形成している先縁部を有しており、
前記ブラシバーが、前記汚染空気入口の前方周縁部を形成しており、
前記チャンバを通過する空気の流れが、前記チャンバの内部と周囲環境との間において所定の圧力差を維持するように制限されるように、前記シール材料が、前記汚染空気入口の周囲と密着するように構成されていることを特徴とする掃除機ヘッド。
【請求項2】
前記掃除機ヘッドが、前記ソール板の下面に沿って且つ前記先縁部に隣り合って設けられている後方シールストリップと、前記一方の側壁及び前記他方の側壁の前記下側縁部に沿って設けられている側方シールストリップとを備えており、
前記後方シールストリップ及び前記側方シールストリップが、前記ブラシバーの前記シール材料の下側周囲部分と共に、清浄すべき表面に密着することを特徴とする請求項1に記載の掃除機ヘッド。
【請求項3】
前記後方シールストリップ及び前記側方シールストリップが、房状の材料を備えていることを特徴とする請求項2に記載の掃除機ヘッド。
【請求項4】
前記掃除機ヘッドが、前記ソール板によって支持されているホイールを備えており、前記ホイールが、前記ホイールそれぞれの下側部分のみが前記ソール板から突出するように、前記ソール板の内部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の掃除機ヘッド。
【請求項5】
前記前方開口部が、前記ハウジングの上側前方縁部及び互いに対して反対側に位置する側縁部によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の掃除機ヘッド。
【請求項6】
前記上側前方縁部が、前記ブラシバーの回転軸線の上方に位置していることを特徴とする請求項5に記載の掃除機ヘッド。
【請求項7】
前記上側前方縁部が、前記ブラシバーの頂部の下方に位置していることを特徴とする請求項5に記載の掃除機ヘッド。
【請求項8】
前記ハウジングの頂部分が、前記ブラシバーの頂部を越えて前方に延在しており、これにより、塵埃が前記ブラシバーによって前記ハウジングから上方に飛ばされることを防止するためのガードとして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の掃除機ヘッド。
【請求項9】
前記房状の材料が、ナイロン製フィラメントから作られていることを特徴とする請求項1に記載の掃除機ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空掃除機のための掃除機ヘッドに関し、特に携行式真空掃除機のための掃除機ヘッドに関するが、限定される訳ではない。
【背景技術】
【0002】
真空掃除機のための掃除機ヘッドは、一般にハウジングの内部に配置されているブラシバーを備えている。吸引開口部は、ハウジングの下面に設けられており、一般にソール板として知られており、吸引開口部を通じて、塵埃を含む空気が掃除機ヘッドの内部に引き込まれる。
【0003】
従来技術に基づく掃除機ヘッドに関連する問題は、収集性能を維持するために求められるソール板と清浄すべき表面との間における近接性を実現すると、大きい塵埃が、吸引開口部を通じて掃除機ヘッドの内部に引き込まれるのではなく、掃除機ヘッドによって清浄される表面に沿って押されることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の実施態様は、真空掃除機のための掃除機ヘッドであって、ブラシバーの形態をした撹拌器であって、ブラシバーが、複数のラジアル方向に延在している剛毛と、剛毛同士の間に配置されているシール材料とを備えており、シール材料が、剛毛同士の間において、ブラシバーの領域の周方向長さ及びアキシアル方向長さの略全体に亘って延在している、撹拌器と、ブラシバーを少なくとも部分的に囲んでいるチャンバと、チャンバの下側部分に形成された汚染空気入口と、ハウジングの前方においてブラシバーを露出させている前方開口部とを形成しているハウジングであって、ブラシバーが、ハウジングに対して回転するように支持されており、ブラシバーがハウジングに密着するようにチャンバの内部に配置されており、これにより、前方開口部を通過する空気の流れを制限する、ハウジングとを備えている、掃除機ヘッドを提供する。
【0005】
シール材料が、変形可能な材料とされる。特に、シール材料は、弾性変形可能な材料とされる。
【0006】
ブラシバーが、開口部を塞ぐ。
【0007】
剛毛のラジアル方向長さが、シール材料のラジアル方向長さと等しい。剛毛のラジアル方向長さが、シール材料のラジアル方向長さより長い。
【0008】
掃除機ヘッドが、掃除機ヘッドを清浄すべき表面に支持するためのサポートを備えており、ブラシバーが、利用の際に剛毛が清浄すべき表面に接触するように配置されている。剛毛が、サポートの下方に延在している。
【0009】
シール材料が、利用の際にシール材料がサポートによって清浄すべき表面から離隔するように配置されている。
【0010】
前方開口部が、ハウジングの上側前方縁部及び互いに対して反対側に位置する側縁部によって形成されている。上側前方縁部が、ブラシバーの回転軸線の上方に位置している。上側前方縁部が、ブラシバーの頂部の下方に位置している。
【0011】
前方開口部が、ブラシバーの長手方向軸線の前方に位置する平面内において延在している。ブラシバーの少なくとも一部分が、前方開口部を貫通して突出している。
【0012】
ハウジングの頂部分が、ブラシバーの頂部を越えて前方に延在しており、これにより、塵埃がブラシバーによってハウジングから上方に飛ばされることを防止するためのガードとして形成されている。
【0013】
シール材料が、ハウジングの前方部分の内面に密着している。
【0014】
剛毛が、ブラシバーに関する長手方向に延在している複数の列(スタート)に配置されている。シール材料が、房状の材料である。
【0015】
剛毛が、シール材料のラジアル方向における剛性より高い剛性を有しているカーボンファイバー製の剛毛とされる。
【0016】
掃除機ヘッドが、後方ローラを備えている。
【0017】
本発明の第2の実施態様は、本発明の第1の実施態様における掃除機ヘッドを備えている。
【0018】
本発明の第3の実施態様は、複数のラジアル方向に延在している剛毛と、剛毛同士の間に配置されているシール材料とを備えているブラシバーであって、シール材料が、剛毛同士の間において、ブラシバーの領域の周方向長さ及びアキシアル方向長さの略全体に亘って延在している、ブラシバーを提供する。
【0019】
シール材料が、変形可能な材料とされる。特に、シール材料が、弾性変形可能な材料とされる。
【0020】
剛毛のラジアル方向長さが、シール材料のラジアル方向長さと等しい。
【0021】
剛毛のラジアル方向長さが、シール材料のラジアル方向長さより長い。
【0022】
シール材料が、房状の材料である。シール材料が、1×10Ω/sq〜1×1012Ω/sqの範囲の表面抵抗率を有している。
【0023】
剛毛が、カーボンファイバー製の剛毛とされる。カーボンファイバー製の剛毛は、ラジアル方向におけるシール材料の剛性より高い構成を有している。
【0024】
カーボンファイバー製の剛毛が、1×10Ω/sq〜1×10Ω/sqの範囲の表面抵抗率を有している。この範囲の表面低効率を有している材料を選定することによって、床の静電気が第2の撹拌手段を介して効果的に放電される。本明細書で説明する表面低効率の値は、ASTM D257に従う試験を利用することによって測定される。
【0025】
剛毛それぞれの直径が、10μmより大きくない。剛毛が、ブラシバーに関する長手方向に延在している複数の列に配置されている。列それぞれの幅が、5mmより大きくなく、例えば2mmより大きくない。剛毛の列が、ブラシバーの周囲全体に、又はブラシバーの周囲の一部に螺旋状に延在するように配置されている。
【0026】
剛毛の剛毛密度は、長さ10mm当たり10000本より低くない。10000本より低い剛毛密度は、ブラシバーをハウジングに対して効果的に密着させるので、特に効果的である。ブラシバーは、2mmより小さい幅と10000本より低い剛毛密度とを有するブラシバーは、優れた密着効果と小さい塵埃に対する優れた収集性能とを発揮する。剛毛それぞれの長さが、4mm〜8mmとされる。
【0027】
特に、ブラスバーは、10μmより大きくない直径と4mm〜8mmの長さとを有しているカーボンファイバー製の剛毛であって、長さ10mm当たり1000本より小さくない剛毛密度を有する列に配置されている剛毛を備えており、塵埃を硬質の表面から収集するのに特に効果的である。
【0028】
本発明を良好に理解するために、及び、本発明がどのように効果を奏するのかをより明確に表わすために、本発明について、以下の図面を参照しつつ例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】携行式真空掃除機の斜視図である。
図2図1に表わす真空掃除機の掃除機ヘッドの斜視図である。
図3図2に表わす掃除機ヘッドの正面図である。
図4図2に表わす掃除機ヘッドの側面図である。
図5図2に表わす掃除機ヘッドの背面図である。
図6図2に表わす掃除機ヘッドの下面図である。
図7図2に表わす掃除機ヘッドの横方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本体4とワンド6と掃除機ヘッド8とを備えている携行式真空掃除機2を表わす。
【0031】
本体4は、サイクロン式分離器の形態をした分離システム10と、分離システム10を通じて空気を引き込むように配置されているモータ及び羽根車(図示しない)と、モータに給電するためのバッテリの形態をした電源12とを備えている。本体4は、利用者が把持するためのハンドル14と、分離システム10を通過した空気が排出される際に通過する清浄空気出口16とを有している。
【0032】
ワンド6が、一方の端部において本体4に取り付けられており、他方の端部において掃除機ヘッド8に取り付けられている。ワンド6は、掃除機ヘッド8と分離システム10との間における流通を提供しており、利用の際に掃除機ヘッド8を支持する。
【0033】
図2図7は、掃除機ヘッド8単体を表わす。掃除機ヘッド8は、ブラシバー18の形態をした撹拌器と、後方ローラ20と、チャンバ24を形成しているハウジング22とを備えている。ブラシバー18及び後方ローラ20は、チャンバ24の内部に少なくとも部分的に配置されている。
【0034】
ハウジング22は、上側回動継手28及び下側回動継手30を備えている回動式構造体26を介して、ワンド6に接続されている。上側回動継手28及び下側回動継手30によって、掃除機ヘッド8は、ワンド6に関するヨー方向及びピッチ方向において回動可能とされる。可撓性ホース32は、回動式構造体26の接続部分34からチャンバ24の上側領域の内部に向かって延在している。チャンバ24の内部に向かって延在している可撓性ホース32の端部は、空気が分離システム10を通じてワンド6の内部に引き込まれる際に通過するチャンバ24からの、汚染空気出口36(図6及び図7参照)を形成している。
【0035】
ブラシバー18及び後方ローラ20は、ハウジング22の側壁38,40によって、ブラシバー18及び後方ローラ20それぞれの端部それぞれにおいて支持されている。ブラシバー18及び後方ローラ20はそれぞれ、ブラシバー18及び後方ローラ20がハウジング22に対して回転可能とされるように、側壁38,40によって回転可能に支持されている。
【0036】
図7に表わすように、ブラシバー18は、ブラシバーモータ(図示しない)及びトランスミッション44が内蔵されている、高剛性の管の形態をしたコア42を備えている。ブラシバーモータ及びトランスミッション44は、ブラシバー18を駆動するように配置されている。ブラシバー18は、コア42を中心とする周方向において離隔されている、“スタート”として知られている4つの剛毛ストリップ46を備えている。剛毛ストリップ46は、同一の分離角度(すなわち90°)で互いから離隔配置されている。剛毛ストリップ46それぞれが、位置決めストリップ48によって保持されていると共にラジアル方向に延在している一列の剛毛を備えている。剛毛は、密に集合されているか、又は房状に若しくは個々に離隔配置されている。
【0037】
剛毛ストリップ46それぞれは、ブラシバー18に関する長手方向及び周方向の両方において略螺旋状に延在している。剛毛ストリップ46それぞれが、ブラシバー18の長さ全体に亘って且つ周方向において90°の角度で延在している。剛毛ストリップ46それぞれの位置決めストリップ48は、コア42の外面に形成されている対応する溝50の内部においてコア42に固定されている。溝50それぞれが、溝50の縁部それぞれに沿って対向するリップを有している。溝50は、剛毛ストリップ46をコア42に固定するために、位置決めストリップ48と連結している。
【0038】
シール材料ストリップ52は、剛毛ストリップ46同士の間においてコア42の外面に固定されている。シール材料は、当該シール材料に押し込まれた塵埃が少なくとも部分的に当該シール材料によって囲まれるように、局所変形可能とされる。また、シール材料は、塵埃が排出されると当該シール材料が復元するような弾性を有している。しかしながら、利用の際にブラシバー18に作用する遠心力がシール材料を復元させることに留意すべきである。
【0039】
図示の実施例では、シール材料は房状材料とされる。シール材料は、例えば短い高密度のパイルを有している房状材料とされ、織物基材に織り込まれたフィラメントによって形成されている。パイルのフィラメントは、ナイロンから、又は剛性が比較的低い他の適切な材料から作られている。房状のシール材料の剛性は、当該シール材料の弾性特性、フィラメントの直径、フィラメントの長さ、及びパイルの密度に依存する。図示の実施例では、房状の材料は、ナイロンから作られており、30μm〜50μm(好ましくは30μm)のフィラメント直径、0.005mのフィラメント長さ、及び60,000本/25mmのパイル密度を有するフィラメントを有している。シール材料は、房状の材料である必要はないが、例えば独立気泡材料のような発泡材料や十分な流れ抵抗を有する他の適切な材料とされる。変形可能なシール材料が好ましいが、必須ではないことに留意すべきである。
【0040】
合計で4つのシール材料ストリップ52が設けられている。シール材料ストリップ52それぞれの厚さ(すなわちラジアル方向深さ)は略一定とされ、シール材料ストリップ52は略同一である。
【0041】
シール材料ストリップ52それぞれが、隣り合う剛毛ストリップ46同士の間において、高剛性の管42の外面のラジアル方向長さ及びアキシアル方向長さの略全体に亘って延在している。例えば、シール材料ストリップ52それぞれが、ブラシバー18の周方向長さのうち75°〜90°の角度に亘って、好ましくは80°〜90°の角度に亘って延在している。間隙54は、1つ以上の剛毛ストリップ46と隣り合っているシール材料ストリップ52との間に形成されている。図示の実施例では、シール材料ストリップ52それぞれは、80°の角度に亘って延在しており、5°の角度に亘って延在している間隙54それぞれが、剛毛ストリップ46それぞれの側面それぞれに形成されている(間隙の参照符号54は、複数の剛毛ストリップ46のうち一の剛毛ストリップのみの側面それぞれに付されている)。間隙54を設けることによって、剛毛ストリップ46は、シール材料ストリップ52に接触することなく僅かに可撓性を有している。シール材料ストリップ52と剛毛との間に間隙が形成されないように、シール材料ストリップ52が剛毛ストリップ46に当接することに留意すべきである。これにより、シール効果が改善される。
【0042】
設けられた剛毛ストリップ46の数量が4つより多い又は少ない場合には、対応する数量のシール材料ストリップ52が利用される。例えば、2つ又は3つの剛毛ストリップ46が設けられている場合がある。
【0043】
剛毛ストリップ46のラジアル方向長さは、シール材料ストリップ52のラジアル方向長さより長い。すなわち、剛毛ストリップ46の先端とブラシバー18の回転軸線との間におけるラジアル方向距離は、シール材料ストリップ52の周囲部分とブラシバー18の回転軸線との間におけるラジアル方向距離より大きい。ブラシバー18の半径は、ブラシバー18の軸線と剛毛ストリップ46の先端との間における距離として規定されている。
【0044】
剛毛ストリップ46の剛毛は、好ましくは剛毛ストリップ46同士の間に配置されているシール材料より高剛性である材料から作られている。剛毛ストリップ46は、5μm〜10μmの厚さ、好ましくは7μmの厚さを有しているカーボンファイバー製のフィラメントを備えている。図示の実施例では、カーボンファイバー製のフィラメントは、5.9mmの長さを有しており、剛毛密度(すなわち剛毛ストリップ46の長さ1mm当たりのフィラメントの本数)が、10mm当たり12000本とされる。剛毛は、剛毛ストリップ46それぞれの長手方向において互いから離隔している束として配置されている。剛毛ストリップ46それぞれの長さ10mm当たり6束の剛毛が設けられている。
【0045】
後方ローラ20は、房状の材料から作られたストリップで覆われている中実シャフトの形態をしたコア56を備えている。房状の材料は、ブラシバー18の房状の材料と同一である場合がある。
【0046】
ハウジング22の下面が開口している。図示の実施例では、ハウジング22は、掃除機ヘッド8に関する横方向においてハウジング22の側壁38,40のうち一方の側壁から他方の側壁に至るまで延在している、後方ソール板58(図6参照)を備えている。ホイール60の形態をしたサポートは、後方ソール板58によって支持されている。ホイール60は、ホイール60それぞれの下側部分のみが後方ソール板58から突出するように後方ソール板58の内部に設けられている。
【0047】
側壁38,40それぞれが、下側縁部62,64を有している。後方ソール板58は、下側縁部62,64のうち一方の下側縁部から他方の下側縁部に至るまで延在している、作動縁部である先縁部66を有している。側壁38,40の下側縁部62,64と後方ソール板58の先縁部66とが共に、チャンバ24の汚染空気入口68の側方周縁部及び後方周縁部を形成している。
【0048】
汚染空気入口68の前方周縁部は、ブラシバー18によって形成されている。特に、汚染空気入口68の前方周囲部分は、シール材料ストリップ52のラジアル方向周囲部分の最下部によって形成されている。
【0049】
ホイール60は、後方ソール板58と側壁38,40とシール材料ストリップ52とが清浄すべき表面から離隔するように、当該清浄すべき表面上において掃除機ヘッド8を支持している。図示の実施例では、ブラシバー18は、シール材料ストリップ52と清浄すべき表面との間に空隙が形成される程度でシール材料ストリップ52が清浄すべき表面から離隔するように配置されているが、シール材料ストリップ52と清浄すべき表面との間におけるシール効果は損なわれない。
【0050】
後方ソール板58と側壁38,40とは、シール材料ストリップ52と比較して、清浄すべき表面から離隔している。従って、後方シールストリップ70は、後方ソール板58の下面に沿って且つ先縁部66に隣り合って設けられている。また、側方シールストリップ71,72は、側壁38,40の下側縁部62,64に沿って設けられている。後方シールストリップ70と側方シールストリップ71,72とは、利用の際に清浄すべき表面に密着するように配置されている。後方シールストリップ70と側方シールストリップ71,72とは、パイルを有している材料を備えており、例えばナイロンのような適切な材料から作られたフィラメントを具備する房状の/ブラシ状のファブリックを備えている。
【0051】
ハウジング22は、掃除機ヘッド8に関する横方向に延在している上側前方縁部74を有している。上側前方縁部74は、ブラシバー18の回転軸線の上方に且つブラシバー18の頂部の下方に位置している。ブラシバー18は、上側前方縁部74の前方に延在している。上側前方縁部74と側壁38,40の前方縁部75,77(図3及び図4参照)とは、チャンバ24の前方開口部を形成している。
【0052】
ハウジング22の前方領域の内面が、チャンバ24の一部分を形成しており、ブラシバー18の頂部全体に亘って湾曲している。チャンバ24の内面の曲率半径は、剛毛ストリップ46の先端の半径に対応している。上側前方縁部74に隣り合っているハウジング22の前方領域は、利用の際に塵埃がブラシバー18によって上方及び/又は前方に飛ばされることを防止するガードとして機能する。しかしながら、代替的な実施例では、ハウジング22がガードとして配置されている必要はなく、ブラシバー18の頂部の前方に延在している必要もないことに留意すべきである。小さい間隙が、剛毛の先端とハウジング22との干渉を防止するために設けられている場合があることに留意すべきである。ブラシバー18は、シール材料がブラシバー18と上側前方縁部74に隣り合っているハウジング22の内面との間において流れを制限するように配置されている。
【0053】
パーティション76は、ブラシバー18とチャンバ出口36との間に且つチャンバ24の内部に配置されている。パーティション76は、掃除機ヘッド8に関する横方向に延在しており、パーティション76とチャンバ出口36との間に形成された沈降領域24aと、パーティション76の前方に形成された撹拌領域24bとに分割されている。
【0054】
パーティション76は、チャンバ24を横切って延在している前方壁78及び後方壁80を備えている。前方壁78は、ハウジング22の側壁38,40によって、前方壁78の端部それぞれにおいて支持されている。前方壁78は、ブラシバー18に概略的に接していると共に掃除機ヘッド8の直立方向に関する後方に傾斜している平面内において延在している。前方壁78は、前方壁78の長さに沿って延在している下側縁部82及び上側縁部84を有している。下側縁部82と側壁38,40とは、前方壁78の下方に、スロットの形態をした第1の塵埃開口部86を形成している。第1の塵埃開口部86は、ブラシバー18の回転軸線に対して平行とされる方向において延在している。
【0055】
後方壁80は、前方壁78とチャンバ出口36との間に配設されており、前方壁78に対して略平行とされる方向において、チャンバ24の上側領域から下方に延在している。
【0056】
後方壁80は、ハウジング22に当接している結合部分88を有している。結合部分88は、前方縁部90を有している。前方壁78の上側縁部84と結合部分88の前方縁部90とが、スロットの形態をした第2の塵埃開口部92を形成している。第2の塵埃開口部92は、ブラシバー18の回転軸線に対して平行とされる方向において延在している。前方縁部90は、ブラシバー18の回転軸線と略同一の高さに位置しており、前方壁78の上側縁部84をオーバーハングしているリップを形成している(すなわち、前方縁部90が、ブラシバー18の回転軸線に関する上側縁部84のラジアル方向内方に突出している)。
【0057】
前方壁78と後方壁80とは、第2の塵埃開口部92から下方且つ前方に延在している塵埃回収通路を形成している。塵埃回収通路は、当該塵埃回収通路の下方端部において、チャンバ24の沈降領域24aの内部に向かって開口している。後方壁80と前方縁部90との間に位置する結合部分88の一部分が、掃除機ヘッド8の直立方向に対して35°〜65°の角度で前方に傾斜している前方傾斜面94を有している。前方傾斜面94は、前方壁78及び後方壁80によって形成されている通路に沿って下方に塵埃を方向転換させるためのデフレクタとして形成されている。
【0058】
利用の際に、真空掃除機2の掃除機ヘッド8は、床上に、例えば硬質な表面を有している床上に載置される。掃除機ヘッド8は、後方シールストリップ70及び側方シールストリップ71,72がブラシバー18のシール材料の下側周囲部分と共に清浄すべき表面に密着するように、ローラ60によって当該表面上に支持される。従って、チャンバ24は、後方シールストリップ70及び側方シールストリップ71,72とブラシバー18のシール材料ストリップ52とによって汚染空気入口68の周囲において密着される。
【0059】
本明細書においては、“密着(seal)”との用語は、真空掃除機2を利用する際に所定の圧力差を維持することができることを意味することに留意すべきである。例えば、通常の利用の際に(例えば硬質の/堅い表面を清浄するために利用される際に)チャンバ24を通じた空気の流れがチャンバ24の内側と周囲環境との間において少なくとも0.65kPaの圧力差を維持するのに十分な量に制限されている場合に、チャンバ24は密閉されていると考えられる。同様に、通常の利用の際にチャンバ24の内側と周囲環境との間において少なくとも0.65kPaの圧力差が維持されるように、前方開口部を通過する空気の流れがブラシバー18によって制限される場合であっても、ブラシバー18がハウジング22に密着されていると考えられる。
【0060】
モータ及び羽根車は、ハウジング22の汚染空気入口68を通じてチャンバ24の内部に空気を引き込み、チャンバ出口36を通じて上方に方向転換させ、ワンド6を介して分離システム10の内部に流入させる。塵埃は、清浄空気出口16を通じて排出される前に、分離システム10によって空気から抽出される。
【0061】
ブラシバー18は、図7における時計回り方向である前方方向に駆動される。ブラシバー18は、例えば600rpm〜3000rpm、好ましくは600rpm〜1400rpmの比較的高い回転速度で駆動される。回転速度を高めることによって、小さい塵埃に対する収集性能が向上する。シール材料ストリップ52及び剛毛ストラップ46の近傍における境界層効果は、チャンバ24の撹拌領域24bの内部において、ブラシバー18の回転方向についての回転流れを発生させる。回転流れは、ブラシバー18とハウジング22の前方縁部74との間に形成された間隙を動的に密閉する。チャンバ24に対するこのような動的な密閉は、ブラシバー18とハウジング22との間における空気の流れをさらに制限することによって、チャンバ24の内部圧力を維持することに貢献する。
【0062】
掃除機ヘッド8が清浄すべき表面を横切って移動されると、剛毛ストリップ46の剛毛の先端が清浄すべき表面に接触し、第1の塵埃開口部86に向かって後方に塵埃を掃き出す。剛毛は、清浄すべき表面上で圧縮されている小さい塵埃を隙間から取り除き、塵埃を撹拌するのに特に効果的である。剛毛ストリップ46の側方それぞれに沿って延在している間隙54は、剛毛が清浄すべき床に対して押し付けられた場合における剛毛の屈曲に適応する。
【0063】
掃除機ヘッド8が、例えば米粒、オート麦、パスタ、シリアル等のような、大きい塵埃(すなわち、シール材料ストリップ52の周囲と床との間における空隙より大きい塵埃)を越えて移動された場合には、シール材料ストリップ52が塵埃によって局所的に変形される。
【0064】
シール材料ストリップ52が局所的に変形することによって、大半の大きい塵埃について、塵埃に対する掃除機ヘッド8の乗り上げが確実に解消されるので、後方シールストリップ70及び側方シールストリップ71,72並びにブラシバー18のシール材料ストリップ52と床面との間における密着の有効性が損なわれない。従って、ブラシバー18と清浄すべき表面との間における密着は、逆効果とはならないので、効果的な収集性能が維持される。シール材料ストリップ52によって概略的に包まれている大きい塵埃は、第1の塵埃開口部86を通じてチャンバ24の沈降領域24aの内部に向かって後方に解放される。例えば圧縮された塵埃のような、床に付着している小さい塵埃又は通常の塵埃は、剛毛ストリップ46によって撹拌され、第1の塵埃開口部86を通じてチャンバ24の沈降領域24aの内部に向かって後方に掃き出される。上述のように、塵埃は、汚染空気入口68を通じて直接引き上げられた他の塵埃と同様に、チャンバ出口36を通じて分離システム10に吸引される。
【0065】
また、シール材料ストリップ52は、清浄すべき表面を引っ掻くことなく、清浄すべき表面における小さい凹凸を吸収するように変形する。
【0066】
幾つかの実施形態では、比較的大きい慣性を有している塵埃、例えば米や大きい塵埃粒子のような大きい塵埃は、チャンバ出口36を通じて吸引されることなく、第1の塵埃開口部86を通じてチャンバ24の沈降領域24aの後方壁において跳ね返る。このような塵埃は、ブラシバー18と衝突し、第1の塵埃開口部86を通じて掃き戻されるか、又はパーティション76の前方壁78の前面に沿って第2の塵埃開口部92に向かって上方に駆動される。オーバーハングしている前方縁部90は、塵埃を捕捉し、結合部分88の前方傾斜面94に向かって後方に塵埃を方向づける。従って、オーバーハングしている前方縁部90は、ブラシバー18によって塵埃がチャンバ24の内面に沿って前方開口部を通じて掃き出されることを防止する。
【0067】
前方傾斜面94と衝突する塵埃は、パーティション76の前方壁78と後方壁80との間に形成された通路に沿ってチャンバ24の沈降領域24aの内部に向かって下方に方向づけられる。塵埃と前方壁78及び後方壁80との衝突それぞれが、塵埃の運動エネルギの一部を発散させるので、塵埃の慣性が小さくなる。結論として、当該通路に沿って沈降領域24aの内部に向かって落下する塵埃は、チャンバ24を通じて流れる空気によって取り込まれ、チャンバ出口36から分離システム10に吸引される。
【0068】
ハウジング22の前方開口部によって、ブラシバー18は清浄すべき表面上の物体に対して又は壁に対して押し上げられるので、ブラシバー18は、当該物体又は当該壁に隣り合っている塵埃を収集することができる。このことは、全体的な収集性能を改善する。
【0069】
後方ローラ20は、清浄すべき表面上の塵埃を乗り越えるように配置されている。従って、塵埃は、清浄すべき表面に沿って擦りつけられない。さもなければ、塵埃は、清浄すべき表面を引っ掻く場合がある。
【0070】
掃除機ヘッド8は、小さい塵埃及び大きい塵埃の両方並びに圧縮された塵埃を収集するのに効果的である。掃除機ヘッド8は、大きい塵埃がそのままの状態で載置されているか、又は塵埃が圧縮された状態で載置されている硬質の床において、特に効果的である。
【符号の説明】
【0071】
2 携行式真空掃除機
4 本体
6 ワンド
8 掃除機ヘッド
10 分離システム
12 電源
14 ハンドル
16 清浄空気出口
18 ブラシバー
20 後方ローラ
22 ハウジング
24 チャンバ
35a 沈降領域
26 回動式構造体
28 上側回動継手
30 下側回動継手
32 可撓性ホース
34 (回動式構造体26の)接続部分
36 汚染空気出口(チャンバ出口)
38 側壁
40 側壁
42 コア(高剛性の管)
44 トランスミッション
46 剛毛ストリップ
48 位置決めストリップ
50 溝
52 シール材料ストリップ
54 間隙
56 コア
57 房状の材料
58 後方ソール板
60 ホイール(ローラ)
62 (側壁38の)下側縁部
64 (側壁40の)下側縁部
66 (後方ソール板58の)先縁部
68 (チャンバ24の)汚染空気入口
70 後方シールストリップ
71 側方シールストリップ
72 側方シールストリップ
74 (ハウジング22の)上側前方縁部
75 (側壁38の)前方縁部
76 パーティション
77 (側壁40の)前方縁部
78 (パーティション76の)前方壁
80 (パーティション76の)後方壁
82 (前方壁78の)下側縁部
84 (前方壁78の)上側縁部
86 第1の塵埃開口部
88 結合部分
90 (結合部分88の)前方縁部
92 第2の塵埃開口部
94 (結合部分88の)前方傾斜面
96 第1のホイール
98 第2のホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7