(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1−1.顕微鏡装置の全体構成
1−2.補助観察装置の構成
2.第2の実施形態
2−1.補助観察装置の構成
3.第3の実施形態
3−1.補助観察装置の構成
4.第4の実施形態
4−1.補助観察装置の構成
5.補足
【0017】
なお、以下では、本開示の各実施形態に係る顕微鏡装置に対して各種の操作を行うユーザのことを、便宜的に術者と記載する。ただし、当該記載は顕微鏡装置を使用するユーザを限定するものではなく、顕微鏡装置に対する各種の操作は、他の医療スタッフ等、あらゆるユーザによって実行されてよい。
【0018】
(1.第1の実施形態)
(1−1.顕微鏡装置の全体構成)
図1を参照して、本開示の第1の実施形態に係る顕微鏡システムの構成について説明するとともに、当該顕微鏡システムを構成する顕微鏡装置の全体構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る顕微鏡システムの一構成例を示す図である。
【0019】
図1を参照すると、第1の実施形態に係る顕微鏡システム1は、顕微鏡部110を支持し、当該顕微鏡部110によって患者の術部を撮影する顕微鏡装置10と、顕微鏡装置10によって撮影された術部の映像を表示する表示装置20と、から構成される。手術時には、術者は、顕微鏡装置10によって撮影され表示装置20に表示された映像を参照しながら、術部を観察し、当該術部に対して各種の処置を行う。
【0020】
(表示装置)
表示装置20は、上述したように、顕微鏡装置10によって撮影された患者の術部の映像を表示する。表示装置20は、例えば手術室の壁面等、術者によって視認され得る場所に設置される。表示装置20の種類は特に限定されず、表示装置20としては、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ装置等、公知の各種の表示装置が用いられてよい。また、表示装置20は、必ずしも手術室内に設置されなくてもよく、ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)や眼鏡型のウェアラブルデバイスのように、術者が身に付けて使用するデバイスに搭載されてもよい。
【0021】
(顕微鏡装置)
顕微鏡装置10は、患者の術部を拡大観察するための顕微鏡部110と、顕微鏡部110を保持する支持部120(アーム部120)と、支持部120の一端が接続され顕微鏡部110及び支持部120を支持するベース部130と、顕微鏡装置10の動作を制御する制御装置140と、を備える。顕微鏡装置10は、手術中に患者の術部を拡大観察するための手術用顕微鏡装置である。
【0022】
(ベース部130)
ベース部130は、顕微鏡部110及び支持部120を支持する。ベース部130は板状の形状を有する架台131と、架台131の下面に設けられる複数のキャスター132と、を有する。架台131の上面に支持部120の一端が接続され、架台131から延伸される支持部120の他端(先端)に顕微鏡部110が接続される。また、顕微鏡装置10は、キャスター132を介して床面と接地し、当該キャスター132によって床面上を移動可能に構成されている。
【0023】
また、架台131には、後述する補助観察装置310を保管するための格納部133が設けられてよい。術者は、術部の映像が正常に表示されなくなった場合には、当該格納部133から補助観察装置310を取り出し、顕微鏡部110又は支持部120に適宜取り付けて、当該補助観察装置310を用いて術部を観察し、手術を継続することができる。なお、補助観察装置310については、下記(1−2.補助観察装置の構成)で改めて詳しく説明する。
【0024】
なお、以下の説明では、顕微鏡装置10が設置される床面に対して鉛直な方向をz軸方向と定義する。z軸方向のことを上下方向又は垂直方向とも呼称する。また、z軸方向と互いに直交する2方向を、それぞれ、x軸方向及びy軸方向と定義する。x−y平面と平行な方向のことを水平方向とも呼称する。
【0025】
(顕微鏡部110)
顕微鏡部110は、患者の術部を拡大観察するための顕微鏡鏡体によって構成される。図示する例では、顕微鏡部110の光軸方向は、z軸方向と略一致している。顕微鏡部110は、電子撮像式の顕微鏡に対応する構成を有しており、略円筒形状を有する筒状部112と、筒状部112内に設けられる撮像部111と、から構成される。また、撮像部111は、対物レンズ、ズームレンズ等の光学系と、当該光学系を通過した光により被写体(すなわち術部)の像を撮影する撮像素子と、から構成される。
【0026】
筒状部112の下端の開口面には、撮像部111を保護するためのカバーガラスが設けられる。筒状部112の内部には、光源も設けられており、撮影時には、当該光源からカバーガラス越しに被写体に対して照明光が照射される。当該照明光の被写体での反射光が、カバーガラスを介して撮像部111に入射することにより、当該撮像部111によって術部の映像に係る信号(映像信号)が取得される。
【0027】
顕微鏡部110としては、各種の公知の電子撮像式の顕微鏡部に対応する構成が適用されてよいため、ここではその詳細な説明は省略する。例えば、撮像部111の撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal−Oxide−Semiconductor)センサ等の各種の公知の撮像素子が適用されてよい。また、撮像部111は、1対の撮像素子を備えた、いわゆるステレオカメラとして構成されてもよい。また、撮像部111の光学系についても、各種の公知の構成が適用され得る。更に、撮像部111には、AF(Auto Focus)機能や光学ズーム機能等の、一般的に電子撮像式の顕微鏡部に備えられる各種の機能が搭載され得る。
【0028】
顕微鏡部110によって取得された映像信号は制御装置140に送信され、当該制御装置140において、例えばガンマ補正やホワイトバランスの調整等の各種の画像処理が行われる。また、制御装置140においては、電子ズーム機能に係る拡大、画素間補正等の画像処理が更に行われてもよい。画像処理が施された映像信号が手術室に設けられる表示装置20に送信され、当該表示装置20に術部の映像が、例えば光学ズーム機能及び/又は電子ズーム機能によって所望の倍率に適宜拡大されて表示される。なお、制御装置140と表示装置20との間の通信は、有線又は無線の公知の各種の方式で実現されてよい。
【0029】
なお、顕微鏡部110に、上記の画像処理を行うための処理回路が設けられていてもよく、上記の画像処理は、制御装置140によって行われず、顕微鏡部110の当該処理回路によって行われてもよい。この場合、顕微鏡部110に搭載される処理回路において適宜画像処理が施された後の画像情報が、顕微鏡部110から手術室に設けられる表示装置20に送信され得る。また、この場合、顕微鏡部110と表示装置20との間の通信は、有線又は無線の公知の各種の方式で実現されてよい。
【0030】
顕微鏡部110には、顕微鏡部110の動作を制御するための各種のスイッチが設けられる。例えば、顕微鏡部110には、当該顕微鏡部110の撮影条件を調整するためのズームスイッチ151(ズームSW151)及びフォーカススイッチ152(フォーカスSW152)、並びに、支持部120の動作モードを変更するための動作モード変更スイッチ153(動作モード変更SW153)が設けられる。なお、
図1では、便宜的に、ズームSW151及びフォーカスSW152が筒状部112の外側面に配置されているように図示しているが、第1の実施形態では、後述する
図3等に示すように、これらのスイッチは、第1回転軸部210を構成する略円筒形状の筐体の外側面に設けられ得る。
【0031】
術者は、ズームSW151及びフォーカスSW152を操作することにより、顕微鏡部110の倍率及び焦点距離を、それぞれ調整することができる。また、術者は、動作モード変更SW153を操作することにより、支持部120の動作モードを、固定モード及びフリーモードのいずれかに切り替えることができる。
【0032】
ここで、固定モードは、支持部120に設けられる各回転軸における回転がブレーキにより規制されることにより、顕微鏡部110の位置及び姿勢が固定される動作モードである。フリーモードは、ブレーキが解除されることにより、支持部120に設けられる各回転軸における回転が自由に可能な状態であり、術者による直接的な操作によって顕微鏡部110の位置及び姿勢を調整可能な動作モードである。ここで、直接的な操作とは、術者が例えば手で顕微鏡部110を把持し、当該顕微鏡部110を直接移動させる操作のことを意味する。例えば、術者が動作モード変更SW153を押下している間は支持部120の動作モードがフリーモードとなり、術者が動作モード変更SW153から手を離している間は支持部120の動作モードが固定モードとなる。
【0033】
なお、これらのスイッチは必ずしも顕微鏡部110に設けられなくてもよい。第1の実施形態では、これらのスイッチと同等の機能を有する、操作入力を受け付けるための機構が顕微鏡装置10に設けられればよく、当該機構の具体的な構成は限定されない。例えば、これらのスイッチは、顕微鏡装置10の他の部位に設けられてもよい。また、例えば、リモコン等の入力装置を用いて、これらのスイッチに対応する命令が、遠隔的に顕微鏡装置10に対して入力されてもよい。
【0034】
また、簡単のため、
図1では顕微鏡部110の筒状部112を簡易的に単純な円筒形状の部材として図示しているが、実際には、筒状部112は、術者によって把持されやすいようにその形状が工夫されていてよい。例えば、フリーモード時には、術者が筒状部112を直接手で握った状態で、顕微鏡部110を移動させる操作が想定され得る。この際、術者は、動作モード変更SW153を押下しながら、顕微鏡部110を移動させる操作を行うこととなるため、筒状部112の形状及び動作モード変更SW153の配置位置は、フリーモード時の術者の操作性を考慮して適宜決定され得る。また、ズームSW151及びフォーカスSW152の配置位置も、同様に、術者の操作性を考慮して適宜決定されてよい。
【0035】
(制御装置140)
制御装置140は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Pocessor)等のプロセッサ、又はこれらのプロセッサと記憶素子等がともに搭載された制御基板等によって構成され、所定のプログラムに従った演算処理を実行することにより、顕微鏡装置10の動作を制御する。
【0036】
例えば、制御装置140は、上記動作モード変更SW153を介した術者の操作入力に応じて、支持部120の各関節部に設けられるブレーキの駆動を制御することにより、上述した支持部120の動作モードを切り替える機能を有する。また、例えば、制御装置140は、上記ズームSW151及びフォーカスSW152を介した術者の操作入力に応じて、顕微鏡部110の撮像部111の光学系を適宜駆動させ、顕微鏡部110の倍率及び焦点距離を調整する機能を有する。また、制御装置140は、顕微鏡部110によって撮影された映像信号に対して、各種の画像処理を施し、処理後の映像信号を手術室に設けられる表示装置20に送信する機能を有する。
【0037】
なお、図示する例では、制御装置140は、顕微鏡部110、支持部120及びベース部130とは異なる構成として設けられ、ケーブルによってベース部130と接続されているが、第1の実施形態はかかる例に限定されない。例えば、制御装置140と同様の機能を実現するプロセッサや制御基板等が、ベース部130内に配置されてもよい。また、制御装置140と同様の機能を実現するプロセッサや制御基板等が顕微鏡部110の内部に組み込まれることにより、制御装置140と顕微鏡部110とが一体的に構成されてもよい。
【0038】
(支持部120)
支持部120は、顕微鏡部110を保持し、顕微鏡部110を3次元的に移動させるとともに、移動後の顕微鏡部110の位置及び姿勢を固定する。第1の実施形態では、支持部120は、6自由度を有するバランスアームとして構成されている。ただし、第1の実施形態はかかる例に限定されず、支持部120は他の異なる数の自由度を有するように構成されてもよい。支持部120をバランスアームとして構成し、顕微鏡部110及び支持部120全体としてモーメントの釣り合いが取れた構成とすることにより、より小さい外力で顕微鏡部110を移動させることが可能となり、術者の操作性をより向上させることができる。
【0039】
支持部120には、6自由度に対応する6つの回転軸(第1軸O
1、第2軸O
2、第3軸
O3、第4軸O
4、第5軸O
5及び第6軸O
6)が設けられる。以下では、説明のため便宜的に、各回転軸を構成する部材をまとめて、回転軸部と呼称することとする。例えば、回転軸部は、軸受、当該軸受に回動可能に挿通されるシャフト、及び回転軸における回転を規制するブレーキ等によって構成され得る。後述する平行四辺形リンク機構240も、回転軸部の一つとみなすことができる。
【0040】
支持部120は、各回転軸に対応する第1回転軸部210、第2回転軸部220、第3回転軸部230、第4回転軸部240、第5回転軸部250、第6回転軸部260と、これら第1回転軸部210〜第6回転軸部260によって互いに回動可能に接続される第1アーム部271、第2アーム部272、第3アーム部273及び第4アーム部274と、顕微鏡部110及び支持部120全体としてのモーメントの釣り合いを取るためのカウンターウエイト280と、によって構成される。ただし、第4回転軸部240は、平行四辺形リンク機構240に対応する。
【0041】
なお、以下の説明では、支持部120の構成について説明する際に、顕微鏡部110が設けられる側を先端側又は先端部等とも呼称し、ベース部130に近い側を基端側又は基端部等とも呼称することとする。
【0042】
第1回転軸部210は、略円筒形状を有し、その中心軸が顕微鏡部110の筒状部112の中心軸と略一致するように、顕微鏡部110の筒状部112の基端部に接続される。第1回転軸部210は、顕微鏡部110の光軸と略一致する方向を回転軸方向(第1軸O
1方向)として、顕微鏡部110を回動可能に支持する。
図1に示す例では、第1軸O
1は、z軸と略平行な回転軸として設けられている。第1回転軸部210によって第1軸O
1まわりに顕微鏡部110が回動することにより、顕微鏡部110による撮像画像の向きが調整されることとなる。
【0043】
なお、図示する例では、第1回転軸部210を構成する円筒形状の筐体内に、顕微鏡部110の撮像部111の一部が格納されている。すなわち、顕微鏡部110及び第1回転軸部210が一体的な部材として構成されている。ただし、第1の実施形態はかかる例に限定されず、第1回転軸部210及び顕微鏡部110は、互いに別個の部材として構成されてもよい。
【0044】
第1回転軸部210には、第1軸O
1とは略垂直な方向に延伸する第1アーム部271の先端が接続される。また、第1アーム部271の基端には、当該第1アーム部271の延伸方向と略平行な方向を回転軸方向(第2軸O
2方向)として第1アーム部271を回動可能に支持する第2回転軸部220が設けられる。第2軸O
2は、第1軸O
1とは略垂直な回転軸であり、
図1に示す例ではy軸と略平行な回転軸として設けられている。第2回転軸部220によって、第2軸O
2を回転軸として顕微鏡部110及び第1アーム部271が回動することにより、顕微鏡部110のx軸方向の位置が調整されることとなる。
【0045】
第2回転軸部220には、第1軸O
1及び第2軸O
2と互いに略垂直な方向に延伸する第2アーム部272の先端が接続される。また、第2アーム部272の基端側は略L字状に屈曲しており、折り曲げられた短辺に当たる位置に、当該第2アーム部272の長辺に当たる部位の延伸方向と略平行な方向を回転軸方向(第3軸O
3方向)として第2アーム部272を回動可能に支持する第3回転軸部230が設けられる。第3軸O
3は、第1軸O
1及び第2軸O
2と略垂直な回転軸であり、
図1に示す例ではx軸と略平行な回転軸として設けられている。第3回転軸部230によって、第3軸O
3を回転軸として顕微鏡部110、第1アーム部271及び第2アーム部272が回動することにより、顕微鏡部110のy軸方向の位置が調整されることとなる。
【0046】
このように、支持部120は、第2軸O
2及び第3軸O
3まわりの回転がそれぞれ制御されることにより、顕微鏡部110の姿勢が制御されるように構成される。つまり、第2回転軸部220及び第3回転軸部230は、顕微鏡部110の姿勢を規定する回転軸部であり得る。
【0047】
第3回転軸部230の基端側には、平行四辺形リンク機構240の上辺の先端が接続される。平行四辺形リンク機構240は、平行四辺形の形状に配置される4つのアーム(アーム241、242、243、244)と、当該平行四辺形の略頂点に対応する位置にそれぞれ設けられる4つの関節部(関節部245、246、247、248)と、によって構成される。
【0048】
第3回転軸部230に対して、第3軸O
3と略平行な方向に延伸するアーム241の先端が接続される。アーム241の先端付近には関節部245が、基端付近には関節部246がそれぞれ設けられる。関節部245、246には、アーム241の延伸方向と略垂直な、互いに略平行な回転軸(第4軸O
4)まわりに回動可能に、それぞれ、アーム242、243の先端が接続される。更に、アーム242、243の基端には、それぞれ、関節部247、248が設けられる。これら関節部247、248には、第4軸O
4まわりに回動可能に、かつ、アーム241に対して略平行に、アーム244の先端及び基端がそれぞれ接続される。
【0049】
このように、平行四辺形リンク機構240を構成する4つの関節部は、互いに略平行な略同一方向の回転軸(第4軸O
4)を有し、当該第4軸O
4まわりに互いに連動して動作する。
図1に示す例では、第4軸O
4は、y軸と略平行な回転軸として設けられている。つまり、平行四辺形リンク機構240は、互いに異なる位置に配置され同一方向の回転軸で互いに連動して回転する複数の関節部を有するように構成され、一端での動作を他端に伝達する伝達機構として振る舞う。平行四辺形リンク機構240が設けられることにより、平行四辺形リンク機構240よりも先端側の構成(すなわち、顕微鏡部110、第1回転軸部210、第2回転軸部220、第3回転軸部230、第1アーム部271及び第2アーム部272)の動きが、平行四辺形リンク機構240の基端側に伝達されることとなる。
【0050】
アーム242の基端から所定の距離離れた部位には、当該アーム242の延伸方向と垂直な方向を回転軸方向(第5軸O
5方向)として、平行四辺形リンク機構240を回動可能に支持する第5回転軸部250が設けられる。第5軸O
5は、第4軸O
4と略平行な回転軸であり、
図1に示す例ではy軸と略平行な回転軸として設けられている。第5回転軸部250には、z軸方向に延設する第3アーム部273の先端が接続されており、顕微鏡部110、第1アーム部271、第2アーム部272及び平行四辺形リンク機構240は、第5回転軸部250を介して、第5軸O
5を回転軸として第3アーム部273に対して回動可能に構成される。
【0051】
第3アーム部273は略L字型の形状を有しており、その基端側は、床面と略平行になるように折り曲げられている。第3アーム部273の当該床面と略平行な面には、第5軸O
5と直交する回転軸(第6軸O
6)まわりに第3アーム部273を回動可能な第6回転軸部260が接続される。
図1に示す例では、第6軸O
6は、z軸と略平行な回転軸として設けられている。
【0052】
図示する例では、第6回転軸部260は、鉛直方向に延伸する第4アーム部274と一体的に構成されている。すなわち、第4アーム部274の先端が、第3アーム部273の基端の床面と略平行な面に接続される。また、第4アーム部274の基端は、ベース部130の架台131の上面に接続される。当該構成により、第6回転軸部260を介して、顕微鏡部110、第1アーム部271、第2アーム部272、平行四辺形リンク機構240及び第3アーム部273が、第6軸O
6を回転軸としてベース部130に対して回動する。
【0053】
平行四辺形リンク機構240の下辺を構成するアーム244は、上辺を構成するアーム241よりも長尺に形成されており、当該アーム242の、平行四辺形リンク機構240の第3回転軸部230が接続される部位と対角に位置する端は、平行四辺形リンク機構240の外部に延出されている。延出されたアーム244の端には、カウンターウエイト280が設けられる。カウンターウエイト280は、自身よりも先端側に配置される各構成(すなわち、顕微鏡部110、第1回転軸部210、第2回転軸部220、第3回転軸部230、第1アーム部271、第2アーム部272及び平行四辺形リンク機構240)の質量によって、第4軸O
4まわりに発生する回転モーメント及び第5軸O
5まわりに発生する回転モーメントを相殺可能なように、その質量及び配置位置が調整されている。
【0054】
また、第5回転軸部250の配置位置は、当該第5回転軸部250よりも先端側に配置される各構成の重心が第5軸O
5上に位置するように調整されている。更に、第6回転軸部260の配置位置は、当該第6回転軸部260よりも先端側に配置される各構成の重心が第6軸O
6上に位置するように調整されている。
【0055】
カウンターウエイト280の質量及び配置位置、第5回転軸部250の配置位置、及び第6回転軸部260の配置位置がこのように構成されることにより、支持部120は、顕微鏡部110及び支持部120全体としてモーメントの釣り合いが取れたバランスアームとして構成され得る。支持部120をバランスアームとして構成することにより、術者が顕微鏡部110を直接的な操作によって移動させようとした場合に、あたかも無重力下であるかのようなより小さい外力で当該顕微鏡部110を移動させることが可能となる。従って、ユーザの操作性を向上させることができる。
【0056】
支持部120の第1回転軸部210〜第6回転軸部260には、それぞれ、第1回転軸部210〜第6回転軸部260における回転を規制するブレーキが設けられる。なお、平行四辺形リンク機構240は、4つの関節部(関節部245〜248)が互いに連動して回転するため、平行四辺形リンク機構240に対するブレーキは、これら4つの関節部の少なくともいずれかに設けられればよい。これらのブレーキの駆動は、制御装置140によって制御される。制御装置140からの制御により、これらのブレーキが一斉に解除されることにより、支持部120の動作モードがフリーモードに移行する。また、同じく制御装置140からの制御により、これらのブレーキが一斉に駆動されることにより、支持部120の動作モードが固定モードに移行する。
【0057】
なお、第1回転軸部210〜第6回転軸部260に設けられるブレーキとしては、一般的なバランスアームに用いられる各種のブレーキが適用されてよく、その具体的な機構は限定されない。例えば、これらのブレーキは、機械的に駆動するものであってもよいし、電気的に駆動する電磁ブレーキであってもよい。
【0058】
(1−2.補助観察装置の構成)
上述したように、顕微鏡システム1では、顕微鏡部110によって撮影された術部の映像が、表示装置20に表示される。しかしながら、例えば停電等の非常時や、顕微鏡システム1を構成する装置のいずれかに不具合が生じたりした場合には、表示装置20に術部の映像が正常に表示されなくなる事態が想定される。
【0059】
顕微鏡システム1では、患者の安全性をより高めるために、万が一何らかの原因で術部の映像が正常に表示されなくなった場合であっても、手術を継続可能であることが望ましい。なお、術部の映像が正常に表示されなくなる原因としては、顕微鏡部110の撮像素子の不具合、表示装置20の不具合、及び/又は顕微鏡装置10と表示装置20との間の通信の不具合等が考えられる。
【0060】
そこで、本開示では、術部の映像が正常に表示されなくなった場合における代替的な観察手段として、顕微鏡部110又は支持部120に着脱可能な補助観察装置が提供される。当該補助観察装置は、例えばルーペであり、術部の映像が正常に表示されなくなった場合には、当該補助観察装置を顕微鏡部110又は支持部120に取り付けることにより、術者が当該補助観察装置を直接覗き込みながら手術を継続することができる。
【0061】
なお、以下では、一例として、本開示の各実施形態に係る補助観察装置がルーペである場合について説明する。ただし、本開示では、補助観察装置はルーペに限定されない。補助観察装置は、術者が直接覗き込むことにより術部の拡大観察が可能な光学系を備えるものであればよく、その具体的な構成は任意であってよい。
【0062】
図2−
図4を参照して、第1の実施形態に係る補助観察装置の構成について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る補助観察装置の構成を示す斜視図である。
図3は、顕微鏡部110に対する第1の実施形態に係る補助観察装置の取り付け方法を示す図である。
図4は、顕微鏡部110に対して第1の実施形態に係る補助観察装置が取り付けられた様子を示す側面図である。なお、
図3及び
図4では、
図1に示す顕微鏡装置10から、顕微鏡部110及び第1回転軸部210のみを抜き出して図示している。ただし、
図3及び
図4では、顕微鏡部110及び第1回転軸部210の構成を、
図1よりも詳細に図示している。
【0063】
図2を参照すると、第1の実施形態に係る補助観察装置310は、鏡筒部311と、着脱機構部313と、鏡筒部311及び着脱機構部313を接続する接続部315と、補助観察装置310を顕微鏡部110に固定するための固定部材317と、から構成される。
【0064】
鏡筒部311は、一対の鏡筒からなり、その内部には、それぞれ、術部を拡大観察するためのレンズ等の光学系が設けられる。術者は、鏡筒部311の上端に設けられる接眼部から当該鏡筒部311を覗き込むことにより、鏡筒部311内に設けられる光学系によって適宜拡大された術部の様子を観察することができる。なお、簡単のため、具体的な構成は図示を省略しているが、鏡筒部311には、術者の眼幅に応じて鏡筒同士の距離を調整可能な眼幅調整機構が設けられることが好ましい。補助観察装置310の使用時には、当該眼幅調整機構によって鏡筒同士の距離が適宜調整されることにより、術者は、より鮮明に術部を観察することができる。
【0065】
接続部315は棒状の部材であり、その一端に鏡筒部311が接続されるとともに、他端に着脱機構部313が接続される。
【0066】
着脱機構部313は、補助観察装置310を顕微鏡部110に取り付けるための機構である。着脱機構部313は、顕微鏡部110の円筒形状の筒状部112の外周に応じた円弧形状を有する。補助観察装置310を顕微鏡部110に取り付ける際には、
図3及び
図4に示すように、着脱機構部313の当該円弧形状によって顕微鏡部110の筒状部112の外周に沿った一部領域が覆われるように、顕微鏡部110に対して補助観察装置310が組み付けられる。
【0067】
固定部材317は、例えばボルトであり、補助観察装置310を顕微鏡部110に固定するための部材である。具体的には、着脱機構部313の顕微鏡部110の筒状部112の側壁と対向する面の一部領域には開口部が設けられており、当該開口部の内壁にはねじ山が切られている。
図3及び
図4に示すように、顕微鏡部110の筒状部112に対して補助観察装置310を組み付けた状態で、固定部材317を着脱機構部313の開口部に挿入し、その先端が筒状部112の側壁に当接するまで螺入することにより、補助観察装置310が顕微鏡部110に対して固定される。
【0068】
補助観察装置310の鏡筒部311は、補助観察装置310が顕微鏡部110に取り付けられた際に、当該鏡筒部311によって顕微鏡部110による観察範囲の少なくとも一部を観察可能なように、その接続部315に対する接続角度(すなわち、顕微鏡部110の光軸に対する傾き角度)や、鏡筒部311の内部の光学系等が調整されている。
【0069】
具体的には、
図4に示すように、補助観察装置310の鏡筒部311は、補助観察装置310が顕微鏡部110に取り付けられた際に、その光軸が、顕微鏡部110の光軸と、大よそ観察対象401(すなわち、術部)に対応する位置で交わるように、その接続部315に対する配置角度等が調整され得る。また、鏡筒部311の内部に設けられる光学系は、顕微鏡部110による観察範囲を考慮して、その倍率や焦点距離等が調整され得る。
【0070】
ここで、第1の実施形態では、鏡筒部311の光学系には、倍率調整機能及び焦点距離調整機能が設けられなくてよく、その倍率及び焦点距離は一定であってよい。このように鏡筒部311を構成することにより、補助観察装置310の構成をより簡易なものとすることができる。しかしながら、顕微鏡部110の撮像部111には、倍率調整機能及び焦点距離調整機能が設けられ得る。従って、鏡筒部311の倍率及び焦点距離が一定である場合に、当該鏡筒部311の光学系を、当該鏡筒部311によって顕微鏡部110の観察範囲の全てを観察可能に構成することは困難である。よって、実際に鏡筒部311の光学系を設計する際には、例えば、手術の続行が可能となるような適切な倍率及び焦点距離を有するように、当該光学系が設計され得る。この場合には、必ずしも鏡筒部311によって顕微鏡部110の観察範囲の全てを観察可能である必要はなく、当該観察範囲の少なくとも一部を観察可能であればよい。
【0071】
このように、顕微鏡部110による観察範囲の少なくとも一部を観察可能なように補助観察装置310が構成されることにより、術者は、術部の映像が正常に表示されなくなった場合に補助観察装置310を取り付けてその鏡筒部311を覗き込んだ際に、それまで顕微鏡部110によって撮影されていた範囲に対応する範囲を観察することができ、手術を円滑に継続することが可能になる。
【0072】
なお、第1の実施形態では、術部の映像が正常に表示されなくなった場合であっても顕微鏡部110の光源が正常に機能している場合には、当該光源を用いて顕微鏡部110から観察対象401に対して照明光を照射した状態で、補助観察装置310によって観察対象401の観察が行われてもよい。
図4では、照明光による照射範囲403を模擬的に図示している。
【0073】
ここで、
図3及び
図4を参照して、顕微鏡部110及び第1回転軸部210の構成についてより詳細に説明する。上記(1−1.顕微鏡装置の全体構成)で説明したように、顕微鏡部110は、略円筒形状を有する筒状部112と、筒状部112内に設けられる撮像部と、から構成される。第1回転軸部210は、顕微鏡部110の筒状部112の基端部に接続される。この際、第1回転軸部210を構成する円筒形状の筐体211内に、顕微鏡部110の撮像部の一部が格納される。すなわち、顕微鏡部110及び第1回転軸部210は、一体的な部材として構成されている。なお、このように、当該撮像部は、顕微鏡部110及び第1回転軸部210の筐体の内部に設けられるため、
図3及び
図4では、図面が煩雑になることを避けるために、当該撮像部の図示を省略している。
【0074】
第1回転軸部210は、第1軸O
1まわりに顕微鏡部110を回動可能に支持するが、その際、第1回転軸部210を構成する筐体211は、その下端から所定の長さの部位(以下、可動部212ともいう)が顕微鏡部110とともに回動し、当該可動部212よりも上側の部位は、顕微鏡部110及び当該可動部212を第1軸O
1まわりに回動可能に支持する部位(以下、固定部213ともいう)であるように構成される。
図1に示す第1アーム部271(
図2では図示せず)は、第1回転軸部210の固定部213に接続されることとなる。また、顕微鏡部110の撮像部の一部は、第1回転軸部210の可動部212の内部に格納され得る。
【0075】
上述したように、第1の実施形態に係る補助観察装置310は、筒状部112に取り付けられるため、顕微鏡部110とともに、第1軸O
1まわりに回転させることができる。従って、補助観察装置310を顕微鏡部110に取り付けた後、顕微鏡部110及び補助観察装置310を第1軸O
1まわりに回転させることにより、補助観察装置310による観察範囲を容易に調整することができ、手術をより円滑に継続することが可能になる。
【0076】
以上、
図2−
図4を参照して、第1の実施形態に係る補助観察装置310の構成について説明した。以上説明したように、第1の実施形態によれば、術部の映像が正常に表示されなくなった場合に顕微鏡部110に取り付けられる補助観察装置310が提供される。術者は、術部の映像が正常に表示されなくなった場合には、当該補助観察装置310を用いて手術を継続することができる。その後、術部の映像が正常に表示されない状態が解消された場合(例えば、不具合が生じた装置の代替機が準備されたり、停電等が解消したりした場合)には、復旧した顕微鏡システム1を用いて、手術が継続されればよい。このように、第1の実施形態によれば、術部の映像が正常に表示されなくなった場合に、その状態が解消するまでの間も可能な限り手術を継続することができるため、手術時における患者の安全性をより向上させることができる。
【0077】
ここで、術部の映像が正常に表示されなくなった場合における代替の観察手段としては、補助観察装置310以外にも、例えば術者の頭部に装着する頭部装着型ルーペや他の光学式の顕微鏡装置等が考えられる。しかしながら、頭部装着型ルーペで術部を観察する場合には、当該術部を一定の位置から観察し続けるためには、術部に対する術者の頭部の相対的な位置を一定に保つ必要がある。ルーペの視野は限られているため、一度頭部の位置を移動させると、再び観察野に術部を捉えることは容易ではなく、特に頭部装着型ルーペの使用に慣れていない術者にとっては、使い勝手の良いものとは言えない。
【0078】
一方、代替の光学式の顕微鏡装置を使用する場合には、当該代替の顕微鏡装置を用意する分、コストの増加につながる。また、手術前には、当該代替の顕微鏡装置の準備も行う必要があるため、医療スタッフの作業量が増加する。更には、代替の顕微鏡装置を設置するスペースを確保する必要があるため、手術室内が煩雑になってしまう。
【0079】
これに対して、第1の実施形態によれば、以上説明したように、術部の映像が正常に表示されなくなった場合における代替の観察手段として、補助観察装置310が提供される。補助観察装置310は、顕微鏡装置10の顕微鏡部110に簡易な作業で取り付けることができ、術者は、当該補助観察装置310を用いて術部の観察を直ぐに続行することができる。
【0080】
ここで、補助観察装置310を使用する場合には、顕微鏡部110の位置を一度設定してしまえば、術部と補助観察装置310との相対的な位置関係は固定され得るため、術者は、補助観察装置310から一度頭部を離しても、当該補助観察装置310を覗き込むことによりまた直ぐに術部の観察を行うことができる。従って、上述した頭部装着型ルーペのような煩わしさはない。また、補助観察装置310は、代替の顕微鏡装置に比べて低コストで用意することができ、事前の準備等も必要ない。また、補助観察装置310は、小型に構成され得るため、その保管場所もより小さなスペースで十分であり、手術室内が煩雑になる事態も避けることができる。
【0081】
このように、代替の観察手段として補助観察装置310を用いることにより、頭部装着型ルーペや他の光学式の顕微鏡装置を用いる場合に比べて、より簡便に術部の観察を続行することが可能になる。
【0082】
なお、従来、
図1に示すような支持部120によって、顕微鏡部110の代わりに内視鏡が支持される、内視鏡装置が知られている。当該内視鏡装置においても、顕微鏡装置10と同様に、術部の映像が正常に表示されなくなった場合であっても手術が継続可能であることが望ましい。しかしながら、手術の対象部位や術式にもよるが、内視鏡装置では、術部の映像が正常に表示されなくなった場合には、例えば開腹又は開頭手術に移行することにより手術を継続することができる可能性がある。つまり、内視鏡装置においては、術部の映像が正常に表示されなくなった場合に、必ずしも補助観察装置310を用いなくても、手術を継続することができる可能性がある。
【0083】
一方、顕微鏡装置10では、内視鏡装置における開腹又は開頭手術のような代替手段が存在しないため、術部の映像が正常に表示されなくなった場合には、何らかの方法によって術部を拡大観察しないと、手術を継続することができない。このように、補助観察装置310は、開腹又は開頭手術が前提である顕微鏡装置10に対して用いられることにより、特に効果を発揮するものであると言える。
【0084】
なお、補助観察装置310は、例えば、
図1に示すように、顕微鏡装置10に設けられる格納部133内に保管される。このように、補助観察装置310が術者の近くに保管されることにより、術者は、術部の映像が正常に表示されなくなった場合に、即座に補助観察装置310を取り出し、顕微鏡部110に取り付けることができる。ただし、補助観察装置310の保管場所はかかる例に限定されず、補助観察装置310は、例えば、手術室内の所定の場所等、非常時に取り出しやすい任意の場所に保管されてよい。
【0085】
なお、格納部133内には、補助観察装置310とともに、補助観察装置310の取り付け方や使用方法等を記載したマニュアルが保管されていてもよい。補助観察装置310は、術部の映像が正常に表示されなくなった場合という非常時にのみ用いられ得るものであるため、通常、術者はその使用方法を把握していないことが想定される。このように、マニュアルを、術者が容易に参照し得る場所に保管しておくことは、術者にとって非常に有用であると言える。
【0086】
(2.第2の実施形態)
本開示の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、上述した第1の実施形態に対して補助観察装置の取り付け位置が変更されたものに対応し、それ以外の事項(例えば、顕微鏡システム1の構成や顕微鏡装置10の全体構成等)は、第1の実施形態と同様である。従って、以下の第2の実施形態についての説明では、第1の実施形態と相違する事項について主に説明し、第1の実施形態と重複する事項についてはその詳細な説明を省略する。
【0087】
(2−1.補助観察装置の構成)
図5を参照して、第2の実施形態に係る補助観察装置の構成について説明する。
図5は、第1回転軸部210に対して第2の実施形態に係る補助観察装置が取り付けられた様子を示す側面図である。なお、
図5では、
図3及び
図4と同様に、
図1に示す顕微鏡装置10から、顕微鏡部110及び第1回転軸部210のみを抜き出して図示している。顕微鏡部110及び第1回転軸部210の構成は、
図3及び
図4を参照して上記(1−2.補助観察装置の構成)で説明したものと同様であるため、ここではその詳細な説明は省略する。また、
図4では、
図3と同様に、観察対象401及び顕微鏡部110からの照明光の照射範囲403を併せて図示している。
【0088】
図5を参照すると、第2の実施形態に係る補助観察装置320は、第1回転軸部210を構成する筐体211に対して取り付けられる。より詳細には、第2の実施形態では、補助観察装置320は、第1回転軸部210を構成する筐体211の可動部212に対して取り付けられる。
【0089】
なお、補助観察装置320の構成は、第1の実施形態に係る補助観察装置310の構成とほぼ同様である。具体的には、補助観察装置320は、鏡筒部321と、着脱機構部323と、鏡筒部321及び着脱機構部323を接続する接続部325と、補助観察装置320を第1回転軸部210に固定するための固定部材327と、から構成される。鏡筒部321、着脱機構部323、接続部325及び固定部材327の構成及び機能は、第1の実施形態に係る補助観察装置310におけるこれらの部材の構成及び機能と同様であるため、ここではその詳細な説明は省略する。ただし、着脱機構部323の円弧形状は、第1回転軸部210の筐体211の外周に応じた形状となるように形成される。
【0090】
ここで、第1の実施形態では、補助観察装置310は、顕微鏡部110の筒状部112に取り付けられていた。上記(1−1.顕微鏡装置の全体構成)で説明したように、筒状部112は、術者が顕微鏡部110を直接的な操作によって移動させる際に、術者によって把持される部位であり得る。従って、補助観察装置310を取り付けた後に顕微鏡部110を移動させようとする場合には、補助観察装置310が術者の操作の妨げになる可能性がある。
【0091】
一方、第2の実施形態によれば、補助観察装置320は、筒状部112ではなく、第1回転軸部210を構成する筐体211に対して取り付けられる。従って、補助観察装置320を取り付けた後に、術者が直接的な操作によって顕微鏡部110を移動させようとした場合に、補助観察装置320が術者の操作の妨げとなることがなく、術者の操作性をより向上させることができる。
【0092】
また、補助観察装置320は、筐体211の可動部212に取り付けられるため、第1の実施形態と同様に、補助観察装置320を顕微鏡部110とともに第1軸O
1まわりに回転させることが可能である。従って、補助観察装置320を回転させることにより当該補助観察装置320による観察範囲を容易に調整することが可能となる。
【0093】
以上、
図5を参照して、第2の実施形態に係る補助観察装置320の構成について説明した。補助観察装置320によれば、第1の実施形態に係る補助観察装置310と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0094】
すなわち、補助観察装置320は、術者が直接的な操作によって顕微鏡部110を移動させようとする際に術者によって把持される部位ではない、第1回転軸部210の筐体211に取り付けられる。従って、補助観察装置320が取り付けられた場合であっても、補助観察装置320が直接的な操作の妨げとなることがなく、術者は、通常時と同様に筒状部112を把持して顕微鏡部110を移動させることができる。よって、術者の操作性を向上させることができる。このように、第2の実施形態によれば、術者の操作性をより向上させることが可能な補助観察装置320が提供され得る。
【0095】
(3.第3の実施形態)
本開示の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態は、上述した第1の実施形態に対して補助観察装置の着脱機構部の構成及び補助観察装置の取り付け位置が変更されたものに対応し、それ以外の事項(例えば、顕微鏡システム1の構成や顕微鏡装置10の全体構成等)は、第1の実施形態と同様である。従って、以下の第3の実施形態についての説明では、第1の実施形態と相違する事項について主に説明し、第1の実施形態と重複する事項についてはその詳細な説明を省略する。
【0096】
(3−1.補助観察装置の構成)
図6−
図8を参照して、第3の実施形態に係る補助観察装置の構成について説明する。
図6は、第1回転軸部210に対する第3の実施形態に係る補助観察装置の取り付け方法を示す図である。
図7は、第1回転軸部210に対して第3の実施形態に係る補助観察装置が取り付けられた様子を示す斜視図である。
図8は、第1回転軸部210に対して第3の実施形態に係る補助観察装置が取り付けられた様子を示す側面図である。
【0097】
なお、
図6−
図8では、
図3及び
図4と同様に、
図1に示す顕微鏡装置10から、顕微鏡部110及び第1回転軸部210のみを抜き出して図示している。顕微鏡部110及び第1回転軸部210の構成は、
図3及び
図4を参照して上記(1−2.補助観察装置の構成)で説明したものと同様であるため、ここではその詳細な説明は省略する。また、
図8では、
図4と同様に、観察対象401及び顕微鏡部110からの照明光の照射範囲403を併せて図示している。
【0098】
図6及び
図7を参照すると、第3の実施形態に係る補助観察装置330は、鏡筒部331と、着脱機構部333と、鏡筒部331及び着脱機構部333を接続する接続部335と、補助観察装置330を第1回転軸部210に固定するための固定部材337と、から構成される。ここで、鏡筒部331、接続部335及び固定部材337の構成及び機能は、第1の実施形態に係る補助観察装置310におけるこれらの部材の構成及び機能と略同様であるため、ここではその詳細な説明は省略する。ただし、接続部335と着脱機構部333との接続部位には、後述する回転機構が設けられる。
【0099】
第3の実施形態では、着脱機構部333の構成が、第1の実施形態とは異なる。着脱機構部333は、補助観察装置330を第1回転軸部210に取り付けるための機構である。着脱機構部333は、第1回転軸部210の筐体211の上面の形状に対応した略半円形状の第1の部位と、当該第1の部位の円弧状の縁部から略垂直な方向に所定の長さだけ延伸した第2の部位と、を有する。
【0100】
補助観察装置330が第1回転軸部210に取り付けられる際には、着脱機構部333の第1の部位が第1回転軸部210の筐体211の上面に載置され、着脱機構部333の第2の部位が当該筐体211の側面の上面から所定の距離の領域を覆うように、補助観察装置330が第1回転軸部210に対して組み付けられる。ここで、筐体211の上部は、顕微鏡部110及び可動部212を回動可能に支持する固定部213である。このように、第3の実施形態では、補助観察装置330は、第1回転軸部210の固定部213に取り付けられる。
【0101】
ここで、第1の実施形態では、補助観察装置310は、顕微鏡部110の筒状部112に取り付けられていた。また、第2の実施形態では、補助観察装置320は、第1回転軸部210の可動部212に取り付けられていた。
図4及び
図5に示すように、これらの構成では、補助観察装置310、320の鏡筒部311、321の上端(すなわち、接眼部)が、顕微鏡部110及び第1回転軸部210の真横に位置し得る。従って、術者が鏡筒部311、321を覗き込む際に、顕微鏡部110及び第1回転軸部210が術者の頭部と干渉してしまい、術者の使用感を損ねる恐れがあった。
【0102】
一方、第3の実施形態によれば、補助観察装置330は、第1回転軸部210の筐体211の上面(すなわち、固定部213の上面)に対して取り付けられる。従って、
図8に示すように、補助観察装置330の鏡筒部331の接眼部が、顕微鏡部110及び第1回転軸部210よりも高い位置に配置され得る。よって、術者が鏡筒部331を覗き込む際に、顕微鏡部110及び第1回転軸部210が術者の妨げになることがなく、術者の使用感をより向上させることができる。
【0103】
ここで、補助観察装置330では、接続部335の着脱機構部333との接続部位に回転機構が設けられ、鏡筒部331及び接続部335が、着脱機構部333に対して回動可能であるように構成される。当該回転機構は、例えば、
図6に示すように、接続部335と着脱機構部333とを貫通するように開口部を設け、これらの開口部にボルト等の接続部材を挿通することにより実現され得る。この際、鏡筒部331及び接続部335の回転軸が、第1回転軸部210における回転軸(第1軸O
1)と略同軸となるように、当該回転機構が構成されてよい。つまり、補助観察装置330では、鏡筒部331が、第1軸O
1まわりに回動可能に構成され得る。
【0104】
上述したように、補助観察装置330は、第1回転軸部210の固定部213に取り付けられるため、第1及び第2の実施形態に係る補助観察装置310、320のように、顕微鏡部110とともに回動することができない。しかしながら、上記のような回転機構が設けられることにより、鏡筒部331を、着脱機構部333に対して、すなわち第1回転軸部210の固定部213に対して、第1軸O
1まわりに回転させることが可能になる。従って、第1及び第2の実施形態と同様に、補助観察装置330を回転させることにより当該補助観察装置330による観察範囲を容易に調整することが可能になる。
【0105】
以上、
図6−
図8を参照して、第3の実施形態に係る補助観察装置330の構成について説明した。補助観察装置330によれば、第1の実施形態に係る補助観察装置310と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0106】
すなわち、補助観察装置330は、第1回転軸部210の筐体211の上面に対して取り付けられる。従って、補助観察装置330の鏡筒部331の接眼部が、顕微鏡部110及び第1回転軸部210よりも高い位置に配置されることとなり、術者が鏡筒部331を覗き込む際に、顕微鏡部110及び第1回転軸部210が術者の妨げにならない。このように、第3の実施形態によれば、術者の使用感をより向上させることが可能な補助観察装置330が提供され得る。
【0107】
(4.第4の実施形態)
本開示の第4の実施形態について説明する。なお、第4の実施形態は、上述した第1〜第3の実施形態に係る補助観察装置310、320、330に対して、その鏡筒部311、321、331に、後述する角度調整機能が設けられたものに対応する。それ以外の事項(例えば、顕微鏡システム1の構成や顕微鏡装置10の全体構成等)は、第1〜第3の実施形態と同様である。従って、以下の第4の実施形態についての説明では、第1〜第3の実施形態と相違する事項について主に説明し、第1〜第3の実施形態と重複する事項についてはその詳細な説明を省略する。
【0108】
なお、以下の第4の実施形態についての説明では、一例として、第3の実施形態に係る補助観察装置330の鏡筒部331に対して角度調整機能が設けられた構成について説明する。ただし、第4の実施形態はかかる例に限定されず、第1及び第2の実施形態に係る補助観察装置310、320の鏡筒部311、321に対して角度調整機能が設けられることにより、第4の実施形態に係る補助観察装置が構成されてもよい。
【0109】
(4−1.補助観察装置の構成)
図9を参照して、第4の実施形態に係る補助観察装置の構成について説明する。
図9は、第1回転軸部210に対して第4の実施形態に係る補助観察装置が取り付けられた様子を示す側面図である。なお、
図9では、
図6−
図8と同様に、
図1に示す顕微鏡装置10から、顕微鏡部110及び第1回転軸部210のみを抜き出して図示している。顕微鏡部110及び第1回転軸部210の構成は、
図3及び
図4を参照して上記(1−2.補助観察装置の構成)で説明したものと同様であるため、ここではその詳細な説明は省略する。また、
図9では、
図8と同様に、観察対象401及び顕微鏡部110からの照明光の照射範囲403を併せて図示している。
【0110】
図9を参照すると、第4の実施形態に係る補助観察装置340は、鏡筒部341と、着脱機構部343と、鏡筒部341及び着脱機構部343を接続する接続部345と、補助観察装置340を第1回転軸部210に固定するための固定部材347と、から構成される。ここで、補助観察装置340の各構成部材、すなわち、鏡筒部341、着脱機構部343、接続部345及び固定部材347の構成及び機能は、第3の実施形態に係る補助観察装置330におけるこれらの部材の構成及び機能と同様であるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0111】
ただし、第4の実施形態では、鏡筒部341と接続部345との接続部位に、鏡筒部341の接続部345に対する接続角度、すなわち、顕微鏡部110の光軸に対する傾き角度を調整可能な、角度調整機構が設けられる。つまり、補助観察装置340では、鏡筒部341が、顕微鏡部110の光軸に対する傾き角度を調整可能に構成される。当該角度調整機構により、
図9に示すように、鏡筒部341の光軸の方向、すなわち鏡筒部341による観察方向を調整することが可能になる。
【0112】
ここで、手術時に顕微鏡部110を用いて術部を観察する際には、顕微鏡部110の焦点距離や倍率等を適宜変更しながら、あらゆる距離、角度から術部を観察することが想定される。従って、術部の映像が正常に表示されなくなり補助観察装置340を顕微鏡部110に取り付けた際に、顕微鏡部110と術部との距離が、常に同じであるとは限らない。
【0113】
図9では、角度調整機構により、顕微鏡部110と観察対象401との距離に応じて、当該観察対象401の方を向くように、鏡筒部341の光軸の方向が調整されている様子を図示している。このように、顕微鏡部110と観察対象401との距離に応じて、鏡筒部341の光軸の方向が適宜調整されることにより、鏡筒部341によって観察対象401のより鮮明な像を観察することが可能になる。
【0114】
なお、鏡筒部341の内部に設けられる光学系には、倍率調整機能及び/又は焦点距離調整機能が設けられてもよい。倍率調整機能及び/又は焦点距離調整機能が設けられることにより、鏡筒部341の角度を調整した場合に、鏡筒部341と観察対象401との距離に応じて、鏡筒部341の倍率及び/又は焦点距離を適宜調整することができ、観察対象401の更に鮮明な像を観察することが可能になる。
【0115】
以上、
図9を参照して、第4の実施形態に係る補助観察装置340の構成について説明した。補助観察装置340によれば、第3の実施形態に係る補助観察装置330と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0116】
すなわち、補助観察装置340には、鏡筒部341の顕微鏡部110の光軸に対する傾き角度を調整可能な、角度調整機構が設けられる。従って、当該角度調整機構により、顕微鏡部110と観察対象401との距離に応じて、鏡筒部341の光軸の方向を適宜調整することができ、鏡筒部341によって観察対象401のより鮮明な像を観察することが可能になる。
【0117】
(5.補足)
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0118】
例えば、上述した第1〜第4の実施形態に記載した事項は、可能な範囲において、互いに組み合わされてよい。例えば、第1〜第3の実施形態に係る補助観察装置310、320、330の鏡筒部311、321、331の光学系に、第4の実施形態において説明した倍率調整機能及び/又は焦点距離調整機能が設けられてもよい。
【0119】
また、第2〜第4の実施形態に係る補助観察装置320、330、340の保管場所は、第1の実施形態と同様であってよい。すなわち、補助観察装置320、330、340の保管場所は特に限定されず、補助観察装置320、330、340は、例えば、顕微鏡装置10に設けられる専用の格納部133、又は手術室内等、非常時に取り出しやすい任意の場所に、マニュアルとともに保管され得る。
【0120】
なお、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的又は例示的なものであって限定的なものではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏し得る。
【0121】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)観察対象を撮影し、映像信号を出力する顕微鏡部と、前記顕微鏡部を支持し、バランスアームとして構成される支持部と、前記顕微鏡部又は前記支持部に着脱可能であり、前記顕微鏡部による観察範囲を観察可能に構成される補助観察装置と、を備える、手術用顕微鏡装置。
(2)前記支持部は、前記顕微鏡部を、前記顕微鏡部の光軸と略平行な第1の回転軸まわりに回動可能に支持し、前記補助観察装置は、前記顕微鏡部に取り付けられ、前記顕微鏡部とともに前記第1の回転軸まわりに回動可能である、前記(1)に記載の手術用顕微鏡装置。
(3)前記補助観察装置は、前記顕微鏡部に設けられる術者によって把持される部位以外の部位に取り付けられる、前記(1)又は(2)に記載の手術用顕微鏡装置。
(4)前記顕微鏡部は、下端に対物レンズが設けられる筒状部を有し、前記支持部は、前記筒状部の上端において前記顕微鏡部を支持し、前記補助観察装置は、前記支持部の前記顕微鏡部を支持する部位の上面に取り付けられる、前記(1)に記載の手術用顕微鏡装置。
(5)前記補助観察装置は、前記観察対象を拡大観察するための光学系が内部に設けられる鏡筒部と、前記補助観察装置を前記顕微鏡部又は前記支持部に取り付けるための着脱機構部と、を有し、前記鏡筒部は、前記顕微鏡部の光軸と略平行な第1の回転軸まわりに回動可能に構成される、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(6)前記補助観察装置は、前記観察対象を拡大観察するための光学系が内部に設けられる鏡筒部と、前記補助観察装置を前記顕微鏡部又は前記支持部に取り付けるための着脱機構部と、を有し、前記鏡筒部は、前記顕微鏡部の光軸に対する傾き角度を調整可能に構成される、前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(7)前記補助観察装置に設けられる光学系は、倍率及び焦点距離の少なくともいずれかを調整可能に構成される、前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(8)前記手術用顕微鏡装置は、前記補助観察装置を保管するための格納部を有する、前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の手術用顕微鏡装置。
(9)観察対象を撮影し映像信号を出力する顕微鏡部と、前記顕微鏡部を支持しバランスアームとして構成される支持部と、前記顕微鏡部又は前記支持部に着脱可能であり前記顕微鏡部による観察範囲を観察可能に構成される補助観察装置と、を有する顕微鏡装置と、前記映像信号に基づく映像を表示する表示装置と、を備える、手術用顕微鏡システム。