特許第6656239号(P6656239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6656239化学蒸着による規則性微孔性カーボンの合成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656239
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】化学蒸着による規則性微孔性カーボンの合成
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20200220BHJP
   C01B 39/22 20060101ALI20200220BHJP
   C01B 39/02 20060101ALI20200220BHJP
   C01B 37/00 20060101ALI20200220BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20200220BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20200220BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   B01J20/30
   C01B39/22
   C01B39/02
   C01B37/00
   C01B32/05
   B01J20/20 A
   B01J20/28 Z
【請求項の数】24
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-519811(P2017-519811)
(86)(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公表番号】特表2017-538568(P2017-538568A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】US2015055529
(87)【国際公開番号】WO2016061225
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2017年6月7日
(31)【優先権主張番号】14/513,707
(32)【優先日】2014年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】592127149
【氏名又は名称】韓国科学技術院
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ユーグオ
(72)【発明者】
【氏名】エルカン,セマル
(72)【発明者】
【氏名】オスマン,エム.,ラシッド
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ソキン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ミンキ
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−001264(JP,A)
【文献】 特開2006−335596(JP,A)
【文献】 GUAN C; SU F; ZHAO X S; ET AL,METHANE STORAGE IN A TEMPLATE-SYNTHESIZED CARBON,SEPARATION AND PURIFICATION TECHNOLOGY,NL,ELSEVIER SCIENCE,2008年11月20日,VOL:64, NR:1,PAGE(S):124 - 126,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.seppur.2008.08.007
【文献】 Carbon,2005年,Vol.43,No.2624-2627
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
C01B 33/20−39/54
C01B 32/00−32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン微孔性カーボン吸着剤を形成するための連続炭素合成法であって、
化学蒸着(CVD)期間、有機前駆体を含んでなる有機前駆体ガスを、炭素−ゼオライト複合材が形成するように、CVD温度で維持された結晶質ゼオライトに導入するステップであって、前記導入された有機前駆体が、CVDによって前記結晶質ゼオライト中に吸着し、前記有機前駆体が、前記結晶質ゼオライト内で炭素に変換され、ゼオライトの炭素テンプレートを形成する、ステップと;
熱処理期間、非反応性ガスを、熱処理された炭素−ゼオライト複合材が形成するように、熱処理温度に維持された前記炭素−ゼオライト複合材に導入するステップであって、前記結晶質ゼオライト内の前記ゼオライトの炭素テンプレートが、前記ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートに変換される、ステップと;
水性強鉱酸混合物を、結晶質ゼオライトが溶解し、そしてメタン微孔性カーボン吸着剤が形成するように、前記熱処理された炭素−ゼオライト複合材に導入するステップであって、前記メタン微孔性カーボン吸着剤が、前記結晶質ゼオライトのネガティブレプリカであり、BET比表面積、ミクロ細孔体積、ミクロ細孔対メソ細孔体積比、貯蔵メタン値およびメタン送達値を有する、ステップと、;
前記結晶質ゼオライトを形成するステップであって、第2の結晶質ゼオライトを形成するために、カルシウムイオンで第1の結晶質ゼオライトをイオン交換することを含む、ステップとを特徴とする方法。
【請求項2】
前記有機前駆体が、アセチレン、エチレン、プロピレン、エタノールおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機前駆体ガスが、前記非反応性ガスをさらに含んでなる、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記CVD期間が、2時間〜9時間の範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記CVD温度が、800K〜900Kの範囲である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記非反応性ガスが、ヘリウム、アルゴンおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記熱処理期間が、2時間〜4時間の範囲である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理温度が、1100K〜1200Kの範囲である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記水性強鉱酸混合物の強鉱酸が、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記結晶質ゼオライトが、FAU、EMT、およびBEAゼオライト構造ならびにそれらのゼオライト構造の組合せからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記結晶質ゼオライトが、8μm〜20μmの範囲の中央端の長さと直交する形状を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記結晶質ゼオライトが、トリエタノールアミン(TEA)を含んでなる、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
第2のCVD期間、前記有機前駆体を含んでなる前記有機前駆体ガスを、第2の炭素−ゼオライト複合材が形成するように第2のCVD温度で維持された前記熱処理された炭素−ゼオライト複合材に導入するステップであって、前記有機前駆体が、CVDによって、前記熱処理された炭素−ゼオライト複合材中に吸着し、前記有機前駆体が、前記熱処理された炭素−ゼオライト複合材内で炭素に変換され、そして前記炭素および前記熱処理された炭素−ゼオライト複合材の両方が、ゼオライトの第2の炭素テンプレートを形成する、ステップと;
第2の熱処理期間、前記非反応性ガスを、第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材が形成するように第2の熱処理温度において維持された前記第2の炭素−ゼオライト複合材に導入するステップであって、前記第2の炭素−ゼオライト複合材内の前記ゼオライトの第2の炭素テンプレートが、第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材に変換される、ステップをさらに特徴とし、
これらのステップの両方が、前記水性強鉱酸混合物の導入の前に実行され、かつ
前記水性強鉱酸混合物が、前記熱処理された炭素−ゼオライト複合材の代わりに、前記第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材に導入される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記CVD温度と前記第2のCVD温度が同一である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記CVD期間と前記第2のCVD期間が同一である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記熱処理温度と前記第2の熱処理温度が同一である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記熱処理期間と前記第2の熱処理期間が同一である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
結晶質ゼオライトのネガティブレプリカの形態の形状、BET比表面積、ミクロ細孔体積、ミクロ細孔対メソ細孔体積比、貯蔵メタン値およびメタン送達値を有する結晶質ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートを特徴とし、前記形状が、8μm〜20μmの範囲の中央端の長さと直交する、メタン微孔性カーボン吸着剤。
【請求項19】
前記形状が、FAU、EMTおよびBEAゼオライト構造ならびにそれらのゼオライト構造の組合せからなる群から選択される前記結晶質ゼオライトのネガティブレプリカの形態である、請求項18に記載のメタン微孔性カーボン吸着剤。
【請求項20】
前記BET比表面積が、2500m/g〜3100m/gの範囲にある、請求項18または19に記載のメタン微孔性カーボン吸着剤。
【請求項21】
前記ミクロ細孔体積が、Dubinin−Radushkevich式によって決定されるように、0.95cm/g〜1.19cm/gの範囲にある、請求項18〜20のいずれかに記載のメタン微孔性カーボン吸着剤。
【請求項22】
前記ミクロ細孔対メソ細孔体積比が、4〜6の範囲にある、請求項18〜21のいずれかに記載のメタン微孔性カーボン吸着剤。
【請求項23】
前記貯蔵メタン値が、172mg/g〜192mg/gの範囲にある、請求項18〜22のいずれかに記載のメタン微孔性カーボン吸着剤。
【請求項24】
前記メタン送達値が、1バール〜40バールの圧力範囲において、152mg/g〜171mg/gの範囲にある、請求項18〜23のいずれかに記載のメタン微孔性カーボン吸着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、微孔性カーボンに関する。より具体的には、本分野は、微孔性カーボンの形成、ならびに天然ガス貯蔵および輸送システムにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、持ち運び可能であり、世界中で好まれる燃料の種類である。天然ガスは、石油および石炭を含む他の従来の燃料より完全に燃焼し、したがって、天然ガスの燃焼は比較的環境に対する有害性が少ない。LNG、プロパンおよび他の圧縮ガス燃料を含む天然ガスおよび類似製品は、エンジンおよびタービン燃焼システムにおいてよりはるかに効率的である。パイプラインは、発生炉から消費者まで天然ガスを輸送する従来の、そして最も費用効果が高い手段である。
【0003】
非商用使用者のために電気または天然ガスを製造する時、天然ガス輸送ネットワークに関して重要な問題、すなわち、昼間の需要が生じる。人々は、製造プラントまたは設備とは異なり、一日を通して、安定したエネルギー使用者ではない傾向がある。人々は、日中および夕方に、より多くの電気量を消費し、そして夜間および早朝には、消費電気量は少なくなる。消費速度が高いと「需要のピーク期」を形成し、そして消費速度が低いと、「需要の非ピーク期」を形成する。この日々の傾向は年間を通じて生じる。しかしながら、季節が異なると、各ピーク期の長さ(自然光が長ければ人工光は少なくてよく、自然光が短ければより多くの人工光を必要とする)、ならびに各ピーク期の振幅(例えば、適度な気温よりも、高温および低温時の方が高需要量となる)により、昼間の需要量が変わる可能性がある。需要の場所も、昼間の需要に影響を与える。より寒冷な環境では、全体的な日々の電気および天然ガスの需要は、夏季に低く、消費者が暖房装置を使用するため、冬季により高い。より温暖な環境では、日々の需要傾向は、暑い時に消費者が空調ユニットを使用するため、逆となる。
【0004】
日々の使用のみならず、季節の違いでも電気および天然ガス消費が変動するため、天然ガス輸送および製造システム全体も変動する結果となる。しかしながら、天然ガス製造は、ほぼ一定である。天然ガス製造および全消費の間の需給ギャップは、「ガス需要遅延」をもたらす。遅延は、介入なしで、天然ガス輸送グリッド全体のシステム圧力の増加および減少(「スイング」)としてあらわれる。
【0005】
電気発生設備では、供給原料として、一定の高圧天然ガスが好まれる。天然ガスフィードにおける圧力スイングは、電気発生装置、特にガスタービンを含む回転装置の損傷を引き起こす可能性がある。これは突然、供給対燃料比が不適切となるためであり、負荷下で装置のスローダウンを引き起こす。
【0006】
ガス輸送ネットワークにおける圧力スイングを軽減することの解決策は、天然ガスの吸着および脱着のために微孔性吸着剤を使用する「Adsorbed Natural Gas Storage Facility」と題された(2013年10月31日公開の)米国特許出願公開第2013/0283854号(Wangら)に明記されている。
【0007】
吸着された天然ガス(ANG)貯蔵のための微孔性吸着剤としては、活性炭、金属−有機構造体(MOF)、ゼオライトおよび他の有機または無機多孔性固体が含まれる。MOFは、1グラムあたり4000平方メートル(m/g)までの表面積および290Kおよび35バールにおいて230体積対体積(v/v)絶対メタン吸着程度の高さの絶対メタン吸着能を有することが報告されている(「貯蔵量」比または「貯蔵された量」比と呼ばれることもある)。しかしながら、このような絶対メタン吸着の高い数値が正確であるかどうかについて、いくらかの疑問がある。いくつかの操作上の課題のため、天然ガス吸着−脱着システムにおけるMOFの実用には制限がある。メタンは、フレーム構造中にいったん吸着すると、強く結合し、吸着したメタンを遊離させるには、100℃程度の高い脱着温度が必要とされ得る。MOFは、減少した熱水安定性を有することが知られており、繰り返してメタンを放出させるためにそれらを加熱することは、最終的にフレーム構造の質を低下させるであろう。MOFは、天然ガス中で共通の硫化水素、ブラック/カーボン−シリコーン粉末およびメルカプタンなどの天然ガス不純物にも耐性がない。
【0008】
ゼオライトなどの金属酸化物吸着剤は、類似条件において、活性炭材料よりもメタン吸着が少ない傾向がある。MOは、表面積がより小さく、報告によると約800m/g未満である。ゼオライトは、また、活性炭素材料に対して、それらに、天然ガス流中の他の成分以上に水を吸着させる、親水性表面を有する。
【0009】
活性炭材料は、約3000m/gまでの範囲の表面積を有し、かつ比較的熱的および化学的に安定した材料である。活性炭は、290Kおよび35バールにおいて、約130〜約180v/vメタン吸着の範囲の絶対メタン吸着能を有することが産業界で知られている。
【0010】
ANG用途において、活性炭材料を使用することに対して、いくつかの制限がある。活性炭材料は、一般に、メソサイズ(2<d<50ナノメートル(nm))およびマクロサイズ(>50nm)の細孔が存在するため、他の材料より充填密度が低い。炭素活性化プロセスの間、過度の炭素焼失により、活性炭材料の形成時により大きいミクロ細孔が生成される。表面積が大きい不規則形態を炭素粒子が有することにより、粒子間に空隙を残したまま粒子が高密度充填する傾向がある。ANGに最適な細孔サイズは、約1.1〜約1.2nmである。メソサイズおよびマクロサイズ細孔は天然ガス吸着に寄付しないが、材料体積の一部としてカウントされるため、充填密度が低くなる。有用な活性炭材料は、1立方センチメートルあたり約0.20〜約0.75グラム(g/cm)の範囲のバルク密度を有する。
【0011】
別の課題は、微孔性材料を通すことによる物質輸送の遅さである。微孔を有する活性炭材料は、物質輸送が遅いため、動的吸着−脱着挙動が遅くなり得る。物質輸送が遅い原因は、メタン吸着に有用なサイズより小さい細孔サイズのミクロ細孔の体積が大きいこと、および表面細孔開口間がつながっていないこと(「デッドエンド細孔」としても知られる)であり得る。圧力および温度変化は、微孔性材料への、および微孔性材料からの物質輸送を速める補助となり得る。
【0012】
別の制限は、活性炭材料を設計するために有用な潜在的な材料の数である。活性炭材料は、制御された様式で、非多孔性炭素前駆体を化学燃焼することにより製造される。本方法は、制御反応のマクロ的意味においては、経済的な材料製造方法を提供するが、ミクロレベルでは、非常に可変的な燃焼プロセスにより、特定の規則的な炭素細孔構造を合理的かつ系統的に設計するのは不可能である。表面積、細孔サイズおよびミクロ細孔体積を含む構造パラメーターは、相互に関連性が高く、別々に制御することが難しい。例えば、高度の焼失によって、炭素表面積を大きくすることが達成されると、ガス貯蔵能の増加に有利である。しかしながら、高度の焼失による細孔サイズの拡大は避けられず、単位体積あたりの吸着剤の吸着強度および充填密度が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
活性炭材料の形成方法、活性炭材料、ならびに活性炭材料の表面積および絶対メタン吸着能を保持または改善しながら、活性炭材料の充填密度、物質輸送および吸着強度を保持または改善するその使用方法を開発することが望ましい。活性炭材料の使用および取り扱いの容易さ、ならびに製造の単純性も望ましい特徴である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
結晶質ゼオライトのネガティブレプリカの形態の形状を有する結晶質ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートを含んでなるメタン微孔性カーボン吸着剤は、BET比表面積、ミクロ細孔体積、ミクロ細孔対メソ細孔体積比、貯蔵されたメタン値およびメタン送達値を有する。
【0015】
メタン微孔性カーボン吸着剤を形成するための連続炭素合成法は、有機前駆体から製造された有機前駆体ガスを化学蒸着(CVD)期間、CVD温度で維持された結晶質ゼオライトに導入し、炭素−ゼオライト複合材を形成することを含む。導入された有機前駆体は、CVDによって結晶質ゼオライト中に吸着する。有機前駆体は、結晶質ゼオライト内で炭素に変換される。結晶質ゼオライト内の炭素は、ゼオライトの炭素テンプレートを形成する。本方法は、非反応性ガスを熱処理期間、熱処理温度に維持された炭素−ゼオライト複合材に導入し、熱処理された炭素−ゼオライト複合材を形成することを含む。結晶質ゼオライト内のゼオライトの炭素テンプレートは、ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートに変換される。本方法は、熱処理された炭素−ゼオライト複合材に水性強鉱酸混合物を導入し、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成することを含む。メタン微孔性カーボン吸着剤は、結晶質ゼオライトのネガティブレプリカであり、BET比表面積、ミクロ細孔体積、ミクロ細孔対メソ細孔体積比、貯蔵されたメタン値およびメタン送達値を有する。
【0016】
本方法の一実施形態は、第2のCVD期間、有機前駆体ガスを、熱処理された炭素−ゼオライト複合材に導入することを含む。熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、第2のCVD温度で維持される。第2の炭素−ゼオライト複合材が形成する。有機前駆体は、CVDによって、熱処理された炭素−ゼオライト複合材中に吸着する。有機前駆体は、熱処理された炭素−ゼオライト複合材内で炭素に変換され、そしてゼオライトの熱処理された炭素テンプレートによって、ゼオライトの第2の炭素テンプレートを形成する。本方法の実施形態は、第2の熱処理期間、非反応性ガスを、第2の炭素−ゼオライト複合材に導入することを含む。第2の炭素−ゼオライト複合材は、第2の熱処理温度において維持される。第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材が形成する。第2の炭素−ゼオライト複合材内のゼオライトの第2の炭素テンプレートは、ゼオライトの第2の熱処理された炭素テンプレートに変換される。本方法のこの実施形態において、水性強鉱酸混合物は、熱処理された炭素−ゼオライト複合材の代わりに、第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材に導入される。
【0017】
メタン微孔性カーボン吸着剤の連続炭素合成では、化学蒸着(CVD)および後熱処理の手順の両方が使用され、ゼオライトの小結晶および大結晶の両方の細孔中で炭素前駆体として作用する小有機化合物を導入、炭化および熱処理する。メタン微孔性カーボン吸着剤は微孔性炭素構造を有しており、微孔性炭素構造はゼオライト構造内に形成され、ゼオライト構造のネガティブレプリカとなる。このためメタン微孔性カーボン吸着剤は、犠牲的ゼオライトに類似の、明確に規定されたミクロ細孔構造および表面積を有する。
【0018】
「グラファイト化」は、ゼオライトフレーム構造内の炭素−ゼオライト複合材が完全に炭素のグラファイト形態に変換することを意味しない。炭化水素の完全な脱水素および交錯単炭素層、炭素−炭素結合三次元構造の形成は、このプロセスで使用される温度より高い温度で生じる。もし犠牲的ゼオライトフレーム構造をグラファイト化温度に暴露すると、ゼオライトが分解されるであろう。1373Kより高温度にさらされると、特定のゼオライト構造は短時間で物理的に崩壊することが知られている。むしろ熱処理の間、ゼオライトの炭素テンプレートを形成する析出炭素はより強く相互結合し、安定な炭素−炭素結合のマトリックスへと再配列され、ならびに不活性雰囲気中で部分的に脱水素される。したがって、「グラファイト化」という用語またはその関連同義語が使用される場合、炭素析出および析出炭素の熱処理により、高レベルの脱水素と、三次元の交錯炭素−炭素結合網目構造の形成が誘導されるという意味であり、純粋なグラフェン網目構造が形成される程度までを意味しない。脱水素および交錯プロセスは、析出および熱処理期間の両方の間に生じる。
【0019】
連続炭素合成法の一実施形態は、ゼオライトのCVDを含み、CVD期間約2時間〜約9時間、CVD温度約800K〜約900Kで有機前駆体を導入する。本方法の一実施形態は、CVDの後に約2〜4時間の熱処理期間、約1100K〜約1200Kの熱処理温度でCVD後の熱処理が行なわれる場合を含む。本方法のいくつかの実施形態において、CVD/CVD後の熱処理サイクルは繰り返される。このような方法のいくつかの実施形態において、CVD、ならびに最初およびその後のサイクルの間の期間は異なる。得られる熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、犠牲的ゼオライトテンプレートを除去するため、水性強鉱酸混合物でエッチングされる。本方法の一実施形態において、強鉱酸は、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、硝酸(HNO)、硫酸(HSO)およびそれらの組合せからなる群から選択される。本方法の一実施形態において、強鉱酸は、HFと、HCl、HNOおよびHSOからなる群から選択される酸との組合せである。本方法の一実施形態において、得られる熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、ゼオライトテンプレートを犠牲的に除去するために、強苛性物でエッチングされる。このような方法の一実施形態において、強苛性物は、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)aqである。生成物のメタン微孔性カーボン吸着剤は、結晶質ゼオライトのネガティブ炭素レプリカであり、ゼオライト網目構造の逆の炭素マトリックスである。追加のCVD/CVD後の熱処理サイクルを実行する実施形態では、CVD/CVD後の熱処理サイクルを1回のみ実行するメタン微孔性カーボン吸着剤よりも、BET比表面積が増加し、ミクロ細孔体積および減少したメソ細孔の体積が大きい、高度に規則的な炭素構造を有する。これは、ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートの規則性がより高いことを表す。析出した炭素をCVD後の熱処理で高密度化することにより、炭素−炭素が分子的に結合した強い構造が形成される。結晶質ゼオライトのネガティブ炭素レプリカであるメタン微孔性カーボン吸着剤は、メタン吸着および送達能を有し、かつANG貯蔵操作での使用に適している。
【0020】
原則として、所与の吸着剤に関して、BET比表面積が大きいほど、またはミクロ細孔体積が大きいほど、メタン吸着能が高い。しかしながら、メタン吸着能は、材料の細孔サイズ分布、ミクロ細孔体積および充填密度によっても影響を受ける。拡散限界がない限り、高分率のミクロ細孔体積がメタン貯蔵のためにより良好である。
【0021】
メタン微孔性カーボン吸着剤は、ネガティブ炭素レプリカである。合成プラットホームは、ミクロ細孔構造を有する結晶質ゼオライトである。ゼオライトは、犠牲的テンプレートとして作用し、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成する。図1は、結晶質ゼオライトと、メタン微孔性カーボン吸着剤になるネガティブ炭素レプリカとの関係を示す単純化スキームを示す。微孔性結晶質ゼオライト(a)は、犠牲的テンプレートとして導入される。アセチレン(1:1)、プロピレンおよびエチレン(1:2)ならびにエタノール(1:3)などの高炭素:水素比有機小分子が結晶質ゼオライト中に導入される。有機分子は、ゼオライトミクロ細孔内で炭化され、炭素−ゼオライト複合材(b)を形成する。炭素析出後、ゼオライトフレーム構造は、酸溶解によって除去される。酸溶解は、ゼオライトの炭素テンプレートに影響を与えない。反応生成物(c)は、微孔性ゼオライトのネガティブレプリカである、大型の規則性メタン微孔性カーボン吸着剤であることが可能である。
【0022】
天然ガス供給源に対する昼間の需要の影響を減少させるためのANG貯蔵施設には、吸着床システムが含まれる。吸着床システムは、メタン貯蔵能を有し、メタン微孔性カーボン吸着剤を含み、かつメタン微孔性カーボン吸着剤にメタンを吸着し、メタン微孔性カーボン吸着剤からメタンを脱着するよう作動可能である。ANG貯蔵施設は天然ガス供給源に連結され、天然ガスがANG貯蔵施設中に導入され、脱着したメタンが天然ガス供給源に導入されるようにする。任意に、天然ガス貯蔵施設は、温度制御システムおよび圧縮器システムを含む。
【0023】
ANG貯蔵施設の使用方法は、天然ガス供給源内の圧力が低下するように、需要の非ピーク期の間に、天然ガス供給源からANG貯蔵施設に天然ガスを導入することを含む。本方法は、メタン微孔性カーボン吸着剤が、導入された天然ガスからメタンを選択的に分離して、そしてメタンを吸着するように、需要の非ピーク期の間にANG貯蔵施設を作動するステップを含む。本方法は、吸着されたメタンが、需要のピーク期までメタン微孔性カーボン吸着剤に吸着されたままでいるように、ANG貯蔵施設を維持することを含む。本方法は、メタン微孔性カーボン吸着剤が吸着されたメタンを脱着するように、需要のピーク期の間にANG貯蔵施設を作動するステップも含む。本方法は、天然ガス供給源内の圧力が増加するように、需要のピーク期の間に天然ガス供給源に、脱着されたメタンを導入するステップを含む。
【0024】
吸着天然ガス貯蔵施設は、天然ガスを受け取り、導入された天然ガスからメタンを選択的に分離し、そしてある期間、メタン微孔性カーボン吸着剤上の吸着によってメタンを貯蔵するように作動可能である。ANG貯蔵施設は、吸着されたメタンを脱着および放出するようにも作動可能である。
【0025】
天然ガスの需要が高い時に天然ガス供給源へメタンを導入し、天然ガスの需要が低い時に天然ガス供給源からメタンを除去することによって、ガス輸送システムを含む、天然ガス供給源における圧力スイングの大きさが減少される。圧力スイングは、昼間の需要と、安定した天然ガス製造との差異によって生じる。
【0026】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明、添付の請求の範囲および添付の図面に関して、より良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】結晶質ゼオライトと、メタン微孔性カーボン吸着剤になるネガティブ炭素レプリカとの間の関係を示す、単純化スキームを示す。
【0028】
図2】連続炭素合成法のいくつかのステップをバッチ式で実行するために有用である、回転式管状炉システムの回転式管状炉の断面図である。
【0029】
図3】連続炭素合成法の一実施形態を連続的に実行するためのシステムの一実施形態のプロセスフローダイアグラムである。
【0030】
図4】メタン微孔性カーボン吸着剤を使用する、吸着された天然ガス(ANG)貯蔵施設の一実施形態のプロセスフローダイアグラムである。
【0031】
図5】それぞれの合成された大結晶NaXゼオライトのX線回折(XRD)分析のトレースを示すグラフである。
【0032】
図6】(a)〜(c)は、TEAを使用する、合成された大NaXゼオライトの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0033】
図7】イオン交換CaXゼオライトおよび商用銘柄NaXゼオライトのNH温度プログラム脱着(TPD)プロフィールのトレースを示すグラフである。
【0034】
図8】CaXゼオライトを使用して製造されたゼオライトのいくつかの炭素テンプレートのXRD分析のトレースを示すグラフである。
【0035】
図9】形成されたゼオライトの炭素テンプレートの窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。
【0036】
図10図9に示される窒素吸着−脱着等温線データにおいて非局在密度関数理論(NLDFT)演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。
【0037】
図11】LCaXゼオライト、炭素−ゼオライト複合材、熱処理された炭素−ゼオライト複合材および得られたメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。
【0038】
図12】LCaX−1023−2およびLCaX−873−4から製造されたゼオライトの炭素テンプレートならびにLCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4Hから製造された2種のメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。
【0039】
図13図12に示される窒素吸着−脱着等温線データにおいて非局在密度関数理論(NLDFT)演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。
【0040】
図14】LCaX−1023−2およびLCaX−873−4から製造されたゼオライトの炭素テンプレートならびにLCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4Hから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のXRD分析のトレースを示すグラフである。
【0041】
図15】(a)〜(b)は、BEA結晶質ゼオライトおよびBEAゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0042】
図16】CaXおよびBEAゼオライトから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。
【0043】
図17】CaXおよびBEAゼオライトから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のXRD分析のトレースを示すグラフである。
【0044】
図18】2回のアセチレンCVD/CVD後の熱処理サイクルを使用して形成した4種のメタン微孔性カーボン吸着剤に対してNLDFT演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。
【0045】
図19】298Kにおけるゼオライトの炭素テンプレートおよびいくつかのメタン微孔性カーボン吸着剤に対する、重量測定基準のメタン吸着−脱着等温線のいくつかのトレースを示すグラフである。
【0046】
図20】(a)〜(b)は、カルシウムイオン置換Xゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0047】
図21】CaXおよびNaXゼオライトを使用して形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。
【0048】
図22図21に示される窒素吸着−脱着等温線データにおいて非局在密度関数理論(NLDFT)演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。
【0049】
図23】(a)〜(b)は、ナトリウムXゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0050】
図24】NaXおよび大量生産されたNaXメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1〜24およびそれらの説明によって、連続炭素合成のシステムおよび方法、ならびに吸着された天然ガス(ANG)貯蔵施設の使用のためのシステムおよび方法のより良好な理解が容易になる。図1〜24は、本発明の範囲を制限または定義しない。図1〜4は、説明を容易にするための単純な図面である。
【0052】
いくつかのグラフは、y=0における真のy軸値からのオフセットであるトレースおよび曲線を示す。これは、明瞭性のためであり、そして詳細な説明およびそれぞれの図面において示される。
【0053】
発明の概要、図面の簡単な説明および好ましい実施形態の詳細な説明を含む明細書、ならびに添付の請求の範囲は、本発明の特定の特徴(プロセスまたは方法ステップを含む)を参照する。当業者は、本発明が、本明細書に記載される特定の特性の全ての可能な組合せおよび使用を含むことを理解する。当業者は、本明細書に記載された実施形態の説明に、またはそれによって本発明が限定されていないことを理解する。本発明の主題は、本明細書および添付の請求の範囲の精神を除き、限定されない。
【0054】
当業者は、特定の実施形態を説明するために使用される専門用語が、本発明の範囲を限定しないことを理解する。本明細書および添付の請求の範囲の解釈において、全ての用語は、それぞれの用語の文脈と一貫した最も広範囲の可能な様式で解釈されるべきである。明細書および添付の請求の範囲において使用される全ての技術的および科学的用語は、一般に、他に定義されない限り、本発明が属する当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。
【0055】
明細書および添付の請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他が示されない限り、複数形を含む。「含んでなる」という動詞およびその活用形は、非排他的様式で要素、構成要素またはステップを指すものとして解釈されるべきであり、かつ適切に例示的に開示された本発明は、「から本質的になる」および「からなる」を含めて、特に開示されていないいずれの要素の不在下において実行されてよい。記載された要素、構成要素またはステップは、明示的に記載されていない他の要素、構成要素またはステップとともに、存在してもよく、利用されてもよく、または組み合わされてよい。「作動可能」およびその種々の形態は、その適切な機能に適していて、かつその意図された使用のために使用可能であることを意味する。「検出」およびその活用形は、特徴または特性の存在または実在の認定を意味するものとして解釈されるべきである。「決定」およびその活用形は、特徴または特性の分析または計算による確認または成立を意味するものとして解釈されるべきである。
【0056】
空間的用語は、別の対象または対象の群に対する対象または対象の群の相対位置を説明する。位置関係は、垂直と水平軸に沿って適用される。「上流」および「下流」ならびに他の同様の用語を含む、配向および関連用語は、記述的な利便性のためであり、かつ他に明記される場合を除き、限定されない。
【0057】
明細書または添付の請求の範囲が値の範囲を提供する場合、その区間は上限と下限の間のそれぞれの介入値ならびに上限および下限を含むということは理解される。本発明は、提供されたいずれかの特定の除外を条件とする区間のより小さい範囲を含む。
【0058】
明細書または添付の請求の範囲が2以上の画定されたステップを含んでなる方法を指す場合、画定されたステップは、文脈上その可能性が除外される場合を除き、いずれかの順序で、または同時に実行可能である。
【0059】
特許または刊行物が本開示で参照される場合、それが本開示の記載を否定しない限りにおいて、その参照は、参照によって、かつ全体的に含まれる。
【0060】
図2
図2は、回転式管状炉システムの回転式管状炉の断面図である。回転式管状炉システムは、連続炭素合成法のいくつかのステップをバッチ式に実行するために有用である。回転式管状炉システム100は、回転式管状炉110を含む。回転式管状炉110は、円筒状ステンレススチール容器112を含有する。円筒状ステンレススチール容器112は、円筒状ステンレススチール容器112の長さに対する内面に沿って取り付けられた、いくつかの内部バッフル114を有する。円筒状ステンレススチール容器112の回転によって、内部バッフル114は、円筒状ステンレススチール容器112中に前に導入された固体材料116に接触および衝突する。固体材料116が内部バッフル114と接触および衝突を繰り返すことによって、固体材料116は円筒状ステンレススチール容器112の内でランダムに散布され、それにより固体と気体の混合を促進し、熱を分散し、固体が互いに接着することを防ぐ。円筒状ステンレススチール容器112は、第1の循環末端120において入口ガス管118に連結し、そして第2の循環末端124において出口ガス管122に連結する。作動間、円筒状ステンレススチール容器112は、入口ガス管118、円筒状ステンレススチール容器112および出口ガス管122の連結によって形成された縦軸の周囲を回転する(矢126)。
【0061】
回転式管状炉110は、円筒状シェル128内に円筒状ステンレススチール容器112を含む。加熱ユニット130は、それらが円筒状シェル128の内部中に熱エネルギーを伝達するように作動可能であるように、円筒状シェル128の縦部分の外面に沿って固定されている。熱電対132は、加熱ユニット130の中、円筒状シェル128の上および円筒状シェル128の中に位置する。温度制御器134は、加熱ユニット130に電気的に連結し、および熱電対132に信号的に連結しており、熱電対132によって提供された温度値を監視し、円筒状シェル128への熱エネルギーの伝達を調節するように作動可能であり、作動間に円筒状ステンレススチール容器112の設定温度を維持するように回転式管状炉システム100が作動可能であるようにする。
【0062】
回転式管状炉システム100は、有機前駆体供給源136および非反応性ガス供給源138を含む。回転式管状炉システム100は、有機前駆体供給源136、非反応性ガス供給源138またはその両方を同時に回転式管状炉110に選択的に供給するように作動可能である。混合器140は、有機前駆体供給源136および非反応性ガス供給源138の両方の下流であって、そして両方が同時に導入される時に、2種の供給源ガスを均質混合物へとブレンドするように作動可能である。
【0063】
回転式管状炉システム100を使用して連続炭素合成を実行することは、円筒状ステンレススチール容器112中へ結晶質ゼオライトを導入することを含む。結晶質ゼオライトは犠牲的テンプレートとして作用し、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成する。円筒状シェル128は、密閉するよう閉鎖されている。円筒状ステンレススチール容器112は回転(矢126)するように設定され、結晶質ゼオライトが内部バッフル114を使用して混合されるようにする。非反応性ガスは、非反応性ガス供給源138から入口ガス管118を通して円筒状ステンレススチール容器112中に導入され、出口ガス管122を通して円筒状ステンレススチール容器112内の雰囲気をパージし、そして円筒状ステンレススチール容器112を非反応性ガスで充填する。第1の化学蒸着(CVD)温度は、温度制御器134を使用して設定される。温度制御器134は、熱電対132で第1のCVD温度が検出されるまで、安定的に制御して円筒状ステンレススチール容器112の温度を上昇させる。
【0064】
第1のCVD温度が達成されたら、有機前駆体および非反応性ガスの混合物が円筒状ステンレススチール容器112に導入され、円筒状ステンレススチール容器112は第1のCVDガス混合物で充填され、そして維持される。混合器140中で非反応性ガスと混合した後、有機前駆体ガスは、有機前駆体供給源136から入口ガス管118を通して、円筒状ステンレススチール容器112に導入される。結晶質ゼオライトは、第1のCVD温度において、第1のCVD期間、第1のCVDガス混合物に暴露され、導入された有機前駆体がCVDを通して結晶質ゼオライト中に吸着され、有機前駆体は結晶質ゼオライトのネガティブレプリカとなる析出炭素に変換され、そして第1の炭素−ゼオライト複合材が成形される。
【0065】
第1のCVD期間の経過後、温度制御器134を使用して第1の熱処理温度を設定し、円筒状ステンレススチール容器112の作動温度を第1の熱処理温度まで上昇させる。加えて、非反応性ガスのみが円筒状ステンレススチール容器112に導入されるように、有機前駆体供給源136は分離されている。第1の熱処理温度が達成されたら、非反応性ガスの導入および第1の熱処理温度が第1の熱処理期間、維持される。第1の熱処理期間に、炭素−ゼオライト複合材内に析出した炭素は、結晶質ゼオライトをネガティブ複製する熱処理された炭素に変換され、そしてゼオライトの第1の熱処理された炭素テンプレートが形成される。
【0066】
ゼオライトの第2の熱処理された炭素テンプレートが形成されるよう、CVDおよびCVD後の熱処理のプロセスが繰り返される。CVDは、第2のCVD期間、第2のCVD温度において生じる。CVD後の熱処理は、第2の熱処理期間、第2の熱処理温度で生じる。第2の熱処理期間の完了後、非反応性ガスの導入は継続され、そして円筒状ステンレススチール容器112は室温まで冷却される。室温に達したら、円筒状ステンレススチール容器112の回転は停止され、そして第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を含む固体材料116は、回転式管状炉システム100から回収される。
【0067】
第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材の回収後、水性強鉱酸混合物が第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材に導入される。水性強鉱酸混合物は、ゼオライトの第2の熱処理された炭素テンプレートから分離させるように、結晶質ゼオライトをエッチングし、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成する。
【0068】
図3
図3は、連続炭素合成法の一実施形態を連続的に実行するためのシステムの一実施形態のプロセスフローダイアグラムである。連続炭素合成システム200は、第1のCVD/熱処理システム202(点線の囲み)、第2のCVD/熱処理システム204(点線の囲み)および回収システム206(点線の囲み)を含む。第1のCVD/熱処理システム202および第2のCVD/熱処理システム204は、一連で連結されている。第1のCVD/熱処理システム202は、導入された結晶質ゼオライトから第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を形成するように作動可能であり、かつ第2のCVD/熱処理システム204は、第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を使用して第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を形成するように作動可能である。回収システム206は、第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材、第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材およびそれらの組合せからメタン微孔性カーボン吸着剤を形成するように作動可能である。
【0069】
いくつかの流れが連続炭素合成システム200に導入され、メタン微孔性カーボン吸着剤であるネガティブレプリカの形成を支持する。連続炭素合成システム200は、プロセス外の供給源から第1の供給ライン210を通して導入された結晶質ゼオライトを熱処理された炭素−ゼオライト複合材へと加工する。CVDガス供給ライン212および214は、プロセス外の供給源から有機前駆体を含むガスを導入する。アセチレン、エチレン、プロピレンおよびエタノールは有用な有機前駆体である。本方法の一実施形態において、有機前駆体は、アセチレン、エチレン、プロピレン、エタノールおよびそれらの組合せからなる群から選択される。本方法の一実施形態において、有機前駆体ガスは、非反応性ガスをさらに含んでなる。中性ガス供給ライン216および218は、プロセス外の供給源から、熱処理温度においてCVD後の熱処理の間に炭素−ゼオライト複合材との反応性を有さないガスを導入する。非反応性ガスとしては、ヘリウムおよびアルゴンなどの希ガスが含まれる。本方法の一実施形態において、非反応性ガスは、ヘリウム、アルゴンおよびそれらの組合せからなる群から選択される。酸供給ライン220は、プロセス外の供給源から水性強鉱酸混合物を導入し、熱処理された炭素−ゼオライト複合材から犠牲的結晶質ゼオライトを除去する。水性強鉱酸混合物としては、HClおよびHFの水性混合物が含まれる。
【0070】
製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤、すなわち導入された結晶質ゼオライトのネガティブ炭素レプリカは、連続炭素合成システム200から吸着剤生成物ライン222を通過する。いくつかの流れも、プロセスの副産物として連続炭素合成システム200から通過する。使用済みCVDガス回収ライン224および226は、回収されたCVDガスを、分離および回収するため、プロセス外のシステムへと向ける。回収されたCVDガスには、未使用の有機前駆体および有機前駆体の炭化から生じた水素が含まれる。回収されたCVDガスは、連続炭素合成システム200外のプロセスで回収価値のある非反応性ガスも含有し得る。ヘリウムは、多くの国が戦略物資であるとみなす高度に有限の天然資源である。アルゴンは有用な非反応性ガスであって、そして有機種から分離することが容易である。中性ガス回収ライン228および230は、中性ガス供給ライン216および218を通して導入された非反応性ガスならびにCVD後の熱処理からの水素の混合物を、回収および精製のためにプロセス外のシステムへと向ける。使用済み酸回収ライン232は、再生または中和のためにプロセス外のシステムへと、使用済み水性強鉱酸混合物を通す。使用済み水性強鉱酸混合物は、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成するための犠牲的ゼオライトのエッチングからの溶解アルミニウムおよびケイ素を含有する。
【0071】
連続炭素合成システム200は、第1の供給ライン210を通して、第1のCVD/熱処理システム202の第1のゼオライトホッパー240中に結晶質ゼオライトを導入する。第1のゼオライトホッパー240は、固体供給ライン244を使用して、第1のCVD反応器242に連結し、そしてその中に結晶質ゼオライトを計量する。連続炭素合成システム200は、CVDガス供給ライン212を使用して、有機前駆体ガスの一部として第1のCVD反応器242に有機前駆体を導入する。本方法の一実施形態において、有機前駆体ガスは非反応性ガスを含む。第1のCVD反応器242は、移動床型反応器または流動床型反応器を含む、固体が反応器内で特定の滞留時間を必要とする固体と気体とを混合するための多くの周知の反応器の種類であることが可能である。第1のCVD反応器242は、多孔板246(破線)とともに示され、結晶質ゼオライトの積層の下のCVDガス供給ライン212を通して有機前駆体ガスが導入されるようになっており、結晶質ゼオライトは吸着および炭化の種々の段階にある(示されていない)。有機前駆体ガスは、第1のCVD反応器242の底部から上部へと上方に移動し、導入されたゼオライトと相互作用する。形成された第1の炭素−ゼオライト複合材は、第1のCVD反応器242から、炭化複合材ライン248を通して通過する。使用済みCVDガスは、第1のCVD反応器242の上部から、使用済みCVDガスライン250を通過する。使用済みCVDガスライン250は、使用済みCVDガス回収ライン224に連結し、そしてその中に入り込む。
【0072】
連続炭素合成システム200は、導入された有機前駆体が化学蒸着(CVD)によって結晶質ゼオライトに吸着され、有機前駆体が、結晶質ゼオライトをネガティブ複製する析出炭素に変換され、そして第1の炭素−ゼオライト複合材が形成するように、第1のCVD反応器242を作動する。連続炭素合成システム200は、第1のCVD温度において、第1のCVD反応器242を維持する。本方法の一実施形態において、第1のCVD温度は、約800K〜約900Kの範囲である。連続炭素合成システム200は、第1のCVD期間、第1のCVD反応器242内で結晶質ゼオライトを維持する。本方法の一実施形態において、第1のCVD期間は、約2時間〜約9時間の範囲である。
【0073】
炭化複合材ライン248は、第1のCVD反応器242をパージ容器252に連結し、そして第1の炭素−ゼオライト複合材をパージ容器252中に運搬する。連続炭素合成システム200は、回収および再利用用に、第1の炭素−ゼオライト複合材からいずれの残留有機前駆体を除去するようにパージ容器252を作動する。いずれの回収された有機前駆体は、回収ガスライン254を通して、使用済みCVDガス回収ライン224に運搬される。本方法の一実施形態において、パージ容器は部分真空に維持される。第1の炭素−ゼオライト複合材と非反応性であるガスは、ヘリウムおよびアルゴンを含めて、第1の炭素−ゼオライト複合材をパージするために導入することができる。本方法の一実施形態において、第1の炭素−ゼオライト複合材と非反応性であるパージガスは、パージ容器中に導入される。連続炭素合成システム200は、第1の熱処理供給ライン256を使用して、パージ容器252から、パージされた第1の炭素−ゼオライト複合材を通過させる。
【0074】
第1の熱処理供給ライン256は、パージ容器252を、第1のCVD後の熱処理ユニット258に連結する。連続炭素合成システム200は、第1のCVD後の熱処理ユニット258に、パージされた第1の炭素−ゼオライト複合材を導入する。中性ガス供給ライン216は、第1のCVD後の熱処理ユニット258中に非反応性ガスを導入する。第1のCVD後の熱処理ユニット258は、上記の通り、固体が反応器内で特定の滞留時間を必要とする場合に、固体と気体とを混合するための多くの周知の反応器の種類であることが可能である。形成された第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、第1のCVD後の熱処理ユニット258から第1の処理生成物ライン268を通過する。そうすることで、第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、第1のCVD/熱処理システム202を通過する。非反応性ガスならびに炭素−ゼオライト複合材の熱処理から発生した水素を含んでなる、使用済み熱処理ガスは、第1のCVD後の熱処理ユニット258の上部から、中性ガス回収ライン228を通過する。
【0075】
第1の炭素−ゼオライト複合材内のゼオライトの炭素テンプレートが、ゼオライトをネガティブ複製するゼオライトの熱処理された炭素テンプレートに変換されるように、連続炭素合成システム200は、第1のCVD後の熱処理ユニット258を作動する。連続炭素合成システム200は、第1のCVD後の熱処理ユニット258を第1の熱処理温度に維持する。本方法の一実施形態において、第1の熱処理温度は、約1100K〜約1200Kの範囲である。連続炭素合成システム200は、第1の熱処理期間、第1のCVD後の熱処理ユニット258内で、パージされた第1の炭素−ゼオライトを維持する。本方法の一実施形態において、第1の熱処理期間は、約2時間〜約4時間の範囲である。
【0076】
連続炭素合成システム200は固体供給スプリッター270を含み、連結された第1の処理生成物ライン268から受け取られた、第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を、反応器供給ライン274を介してゼオライト反応器272に、または第2の供給ライン310を介して第2のゼオライトホッパー340に、あるいは同時に一定の割合で両方に選択的に向けるように作動可能である。固体供給スプリッター270は、ゼロ量、少なくとも一部の第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材をゼオライト反応器272に向け、そして、存在する場合は、残りを第2のゼオライトホッパー340に向けるように作動可能である。
【0077】
スプリッターを含むことにより、第1のCVD/熱処理システムのみを使って、第2のCVD/熱処理システムのみを使って、またはその両方を同時に使って連続炭素合成システムを作動し、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成するという適応性が生まれる。
【0078】
連続炭素合成システム200の回収システム206は、ゼオライト反応器272を含む。反応器供給ライン274は、パージ容器264をゼオライト反応器272に連結し、そしてゼオライト反応器272中に、第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を運搬する。連続炭素合成システム200は、酸供給ライン220を通して、ゼオライト反応器272中に水性強鉱酸混合物を導入する。ゼオライト反応器272は、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成するように作動可能である。ゼオライト反応器272は、水性強鉱酸混合物を使用して、ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートから、第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材の結晶質ゼオライトをエッチングする。本方法の一実施形態において、第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、約1時間〜約2時間の範囲の滞留時間でゼオライト反応器内に維持される。本方法の一実施形態において、水性強鉱酸混合物は、HClおよびHFを含んでなる。水性強鉱酸混合物は、結晶質ゼオライトとの反応時に、使用済み水性強鉱酸混合物に変換される。連続炭素合成システム200は、ゼオライト反応器生成物ライン276を使用して、ゼオライト反応器272から、メタン微孔性カーボン吸着剤および使用済み水性強鉱酸混合物の懸濁液を通過させる。
【0079】
回収システム206は、吸着剤回収ユニット278も含む。ゼオライト反応器生成物ライン276は、ゼオライト反応器272を吸着剤回収ユニット278に連結し、そして吸着剤回収ユニット278中にメタン微孔性カーボン吸着剤および使用済み水性強鉱酸混合物の懸濁液を運搬する。吸着剤回収ユニット278は、懸濁液を、メタン微孔性カーボン吸着剤と使用済み水性強鉱酸混合物とに分離するように作動可能である。製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、吸着剤生成物ライン222を通過し、そして使用済み酸回収ライン232は、使用済み水性強鉱酸混合物を通過させる。
【0080】
連続炭素合成システム200は、第2のゼオライトホッパー340を使用して、第2の供給ライン310を通して、第2のCVD/熱処理システム204中に第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を導入する。第2のゼオライトホッパー340は、固体供給ライン344を使用して、第2のCVD反応器342に連結し、そしてその中に第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を計量する。連続炭素合成システム200は、CVDガス供給ライン214を使用して、有機前駆体ガスの一部として第2のCVD反応器342に有機前駆体を導入する。本方法の一実施形態において、有機前駆体ガスは非反応性ガスを含む。第2のCVD反応器342は、固体が反応器内で特定の滞留時間を必要とする場合に固体と気体とを混合するための多くの周知の反応器の種類であることが可能である。第2のCVD反応器342は、多孔板246(破線)を有し、熱処理された炭素−ゼオライト複合材の積層の下のCVDガス供給ライン214を通して有機前駆体ガスが導入されるようになっており、熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、吸着および炭化の種々の段階にある(示されていない)。有機前駆体ガスは、第2のCVD反応器342の底部から上部へと上方に移動し、導入された第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材と相互作用する。形成された第2の炭素−ゼオライト複合材は、第2のCVD反応器342から、炭化複合材ライン348を通して通過する。使用済みCVDガスは、第2のCVD反応器342の上部から、使用済みCVDガスライン350を通過する。使用済みCVDガスライン350は、使用済みCVDガス回収ライン226に連結し、そしてその中に入り込む。
【0081】
連続炭素合成システム200は、導入された有機前駆体がCVDによって第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材に吸着され、有機前駆体が炭素に変換され、そして第2の炭素−ゼオライト複合材が形成するように、第2のCVD反応器342を作動する。第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、すでに、第1のCVD/CVD後の熱処理からのゼオライトの第1の熱処理された炭素テンプレートを含有する。新たに析出された炭素は、ネガティブ炭素レプリカの精度をさらに増加させるが、析出された炭素は、より低いCVD温度において、ゼオライトの既存の第1の熱処理された炭素テンプレートに完全には組み込まれない。連続炭素合成システム200は、第2のCVD温度において、第2のCVD反応器342を維持する。本方法の一実施形態において、第2のCVD温度は、約800K〜約900Kの範囲である。本方法の一実施形態において、第1のCVD温度と第2のCVD温度は同一である。連続炭素合成システム200は、第2のCVD期間、第2のCVD反応器342内で、第1の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を維持する。本方法の一実施形態において、第2のCVD期間は、約2時間〜約4時間の範囲である。本方法の一実施形態において、第1のCVD期間と第2のCVD期間は同一である。
【0082】
炭化複合材ライン348は、第2のCVD反応器342をパージ容器352に連結し、そして第2の炭素−ゼオライト複合材をパージ容器352中に運搬する。連続炭素合成システム200は、パージ容器252と同様の様式で、パージ容器352を作動する。いずれの回収された有機前駆体も、回収ガスライン354を通して、使用済みCVDガス回収ライン226に運搬される。本方法の一実施形態において、パージ容器は部分真空に維持される。本方法の一実施形態において、第2の炭素−ゼオライト複合材と非反応性であるパージガスは、パージ容器中に導入される。連続炭素合成システム200は、第2の熱処理供給ライン356を使用して、パージ容器352から、パージされた第2の炭素−ゼオライト複合材を通過させる。
【0083】
第2の熱処理供給ライン356は、パージ容器352を、第2のCVD後の熱処理ユニット358に連結し、そして第2のCVD後の熱処理ユニット358に、パージされた第2の炭素−ゼオライト複合材を導入する。連続炭素合成システム200は、中性ガス供給ライン218を使用して、第2のCVD後の熱処理ユニット358中に非反応性ガスを導入する。第2のCVD後の熱処理ユニット358は、上記の通り、固体が反応器内で特定の滞留時間を必要とする場合、固体と気体とを混合するための多くの周知の反応器の種類であることが可能である。形成された第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、第2のCVD後の熱処理ユニット358から熱処理された炭素−ゼオライト複合材ライン360を通過する。非反応性ガスおよび発生水素を含んでなる使用済み熱処理ガスは、第2のCVD後の熱処理ユニット358の上部から、使用済み熱処理ガスライン362を通過する。使用済み熱処理ガスライン362は、中性ガス回収ライン230に連結され、その中に入り込む。
【0084】
連続炭素合成システム200は、第2の炭素−ゼオライト複合材内の析出炭素が、ネガティブレプリカであるゼオライトの熱処理された炭素テンプレートに変換されるように、第2のCVD後の熱処理ユニット358を作動する。結果として、第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材が形成する。第2のCVD期間からの析出炭素は、第2の熱処理期間中に、ゼオライトの第1の熱処理されたテンプレートに完全に組み込まれ、それによって、ゼオライトの第2の熱処理されたテンプレートが形成する。加えて、追加のか焼時間によって、結晶質ゼオライト構造へのその適合性を改善するように、既存のネガティブ炭素レプリカにエネルギーが提供され、ネガティブ複製の精度がさらに改善される。連続炭素合成システム200は、第2のCVD後の熱処理ユニット358を第2の熱処理温度に維持する。本方法の一実施形態において、第2の熱処理温度は、約1100K〜約1200Kの範囲である。本方法の一実施形態において、第2の熱処理温度は、第1の熱処理温度と同一である。連続炭素合成システム200は、第2の熱処理期間、第2のCVD後の熱処理ユニット358内で、パージされた第2の炭素−ゼオライトを維持する。本方法の一実施形態において、第2の熱処理期間は、約2時間〜約4時間の範囲である。本方法の一実施形態において、第2の熱処理期間は、第1の熱処理期間と同一である。
【0085】
熱処理された炭素ゼオライト複合材ライン260は、第2のCVD後の熱処理ユニット358をパージ容器364に連結し、そしてパージ容器364中に第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を運搬する。連続炭素合成システム200は、第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材から、いずれの残留する非反応性ガスおよび発生水素も除去するように、パージ容器364を作動する。この脱ガスにより、ゼオライト反応器272でガス回収をする必要性が軽減される。ゼオライト反応器272は、室内条件において部分的に揮発することができる強酸を使用して作動する。いずれの回収したガスも、回収ガスライン366を通して、中性ガス回収ライン230に運搬される。本方法の一実施形態において、パージ容器は部分真空に維持される。連続炭素合成システム200は、第2の処理生成物ライン368を使用して、パージ容器364から、パージされた第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を通過させる。そうすることで、第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、第2のCVD/熱処理システム204から通過する。
【0086】
第2の処理生成物ライン368は、パージ容器364をゼオライト反応器272に連結し、そしてゼオライト反応器272中に、パージされた第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材を運搬する。ゼオライト反応器272は、水性強鉱酸混合物を使用して、第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材からメタン微孔性カーボン吸着剤を形成するように作動可能である。メタン微孔性カーボン吸着剤は、ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートから第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材の結晶質ゼオライトをエッチングすることによって形成する。本方法の一実施形態において、第2の熱処理された炭素−ゼオライト複合材は、約1時間〜約2時間の範囲の滞留時間でゼオライト反応器内に維持される。水性強鉱酸混合物はゼオライトとの反応時に、使用済み水性強鉱酸混合物に変換される。連続炭素合成システム200は、ゼオライト反応器生成物ライン276を使用して、ゼオライト反応器272から、メタン微孔性カーボン吸着剤および使用済み水性強鉱酸混合物の懸濁液を通過させる。
【0087】
図4
図4は、メタン微孔性カーボン吸着剤を使用する、吸着された天然ガス(ANG)貯蔵施設の一実施形態のプロセスフローダイアグラムである。天然ガス貯蔵施設400は、上流接続404および下流接続406において、天然ガス供給源である圧縮天然ガス(CNG)輸送パイプライン402に連結される。上流単離弁408および下流単離弁410は、天然ガス貯蔵施設400をCNG輸送パイプライン402から流体的に隔離するように作動可能である。チェックバルブ412によって、天然ガス貯蔵施設400を流れるいずれの流体も上流接続404から下流接続406まで一方向であることが追加的に保証される。
【0088】
ソーラーパワー配列424は電力導管426を使用して、温度制御システム428に電気的に連結される。ソーラーパワー配列424が電力を提供し、需要のピーク期および需要の非ピーク期の両方の間、天然ガス貯蔵施設400の温度調節必要条件を温度制御システム428が満たすようにする。
【0089】
天然ガス貯蔵施設400に導入された天然ガスは、吸着床入口単離弁440を通して吸着床システム436中に通過する。吸着床システム436は、並列にいくつかの個々の吸着床438を有する。それぞれの吸着床438は、需要の非ピーク期の間に軽天然ガス成分を維持するために、(示されていない)メタン微孔性カーボン吸着剤を含む。吸着床熱ジャケット442は、吸着床438の外側を包囲し、そしてその内部温度を調節する。脱着したメタンは、吸着床438から吸着床出口単離弁444を通過する。
【0090】
温度制御システム428は、吸着床熱ジャケット442に連結する。温度制御システム428は、吸着床438の内部温度を制御し、維持し、そして変性する。温度制御システム428は、吸着床の供給導管446を経由して吸着床熱ジャケット442中に温度変性流体を導入する。熱は、吸着床熱ジャケット442中の温度変性流体に、および吸着床熱ジャケット442中の温度変性流体から伝達され、複数の吸着床438に含有される(示されていない)メタン微孔性カーボン吸着剤からメタンの吸着および脱着を支持する。使用済み温度変性流体は、吸着床回収導管448によって吸着床熱ジャケット442から戻される。
【0091】
吸着床システム436は、吸着床出口単離弁444を経由して貯蔵施設圧縮器450および圧縮器バイパス弁452に連結される。貯蔵施設圧縮器450および圧縮器バイパス弁452の両方は、吸着床438からCNG輸送パイプライン402までの通路を提供する。貯蔵施設圧縮器450は、放出導管456を通してCNG輸送パイプライン402中に脱着メタンを加圧し、そして導入するように作動可能である。圧縮器バイパス弁452は、放出導管456を通して、吸着床システム436とCNG輸送パイプライン402の間の直接連結性を可能にする。貯蔵施設圧縮器450は、メタン微孔性吸着剤から吸着されたメタンの脱着およびパージを促進するために、吸着床438における圧力を低下するように作動可能である。
【0092】
需要の非ピーク期間に、検出可能な条件により天然ガス貯蔵施設400を始動させ、上流単離弁408、吸着床入口単離弁440および下流単離弁410を含む単離弁を作動させ、天然ガス貯蔵施設400を通じて流体路が形成されるようにする。CNG輸送パイプライン402と吸着床システム436との間に圧力差があることで、天然ガスがCNG輸送パイプライン402から吸着床システム436の複数の吸着床438へ流れるようにさせる。温度が低下し圧力が増加しているため(より多くの天然ガスが天然ガス貯蔵施設400に流れるため)、導入された天然ガスからのメタンは、吸着床システム436においてメタン微孔性カーボン吸着剤によって選択的に分離、吸着される。残りは天然ガス貯蔵施設400から出て、放出導管456によってCNG輸送パイプライン402に戻るように流れる。温度制御システム428は吸着床熱ジャケット442に温度変性流体を供給し、複数の吸着床438におけるメタン微孔性カーボン吸着剤によるメタンの選択的な分離および吸着を促進する。
【0093】
需要の非ピーク期の終わりまたは他の何らかの検出可能な状態が検出される時のいずれかに、上流単離弁408、吸着床入口単離弁440、吸着床出口単離弁444および下流単離弁410が閉鎖し、CNG輸送パイプライン402から天然ガス貯蔵施設400を隔離する。吸着されたメタンが、需要のピーク期まで吸着床438においてメタン微孔性カーボン吸着剤上に吸着されたままでいるように、温度制御システム428は吸着床システム436における貯蔵温度を維持する。
【0094】
需要のピーク期間、天然ガス貯蔵施設400によって検出された条件により天然ガス貯蔵施設400は吸着床出口単離弁444および下流単離弁410を作動するように始動し、CNG輸送パイプライン402と吸着床システム436の間に流体路が形成するようにする。温度制御システム428は、温度変性流体が吸着床熱ジャケット442に提供されるように動作する。温度変性流体は、複数の吸着床438においてメタン微孔性カーボン吸着剤から吸着されたメタンの脱着を促進し、脱着されたメタンを形成する。
【0095】
需要のピーク期間、圧縮器バイパス弁452を開放することによって、圧縮補助を必要とせずに、吸着床438からCNG輸送パイプライン402中へ脱着されたメタンを任意で導入することができる。吸着床438とCNG輸送パイプライン402との間に適切な圧力差があれば、脱着されたメタンは、圧縮せずに吸着床システム436からCNG輸送パイプライン402へ流れることができる。圧縮する場合は、圧縮器バイパス弁452を閉鎖し、貯蔵施設圧縮器450を作動することによって、需要のピーク期間に脱着されたメタンがCNG輸送パイプライン402中へ導入される。
【0096】
貯蔵施設圧縮器450の作動は、複数の吸着床438における亜大気圧力または「部分真空」を形成するように作動可能であり、次の吸着サイクルに備えメタンの脱着を促進する。部分真空状態の間に吸着床出口単離弁444を閉鎖することによって、吸着床438が亜大気圧力状態を維持し、メタンの追加的脱着を促進する。
【0097】
天然ガス貯蔵施設400の作動は、加熱または冷却するよう温度制御システム428を作動すること、貯蔵施設圧縮器450をシャットダウンすること、圧力を平衡にするため吸着床438の単離バルブを開放すること、天然ガス貯蔵施設400への全ての残余の単離バルブを閉鎖することを含む。
【実施例】
【0098】
いくつかの実験によって、商用銘柄および大結晶質ゼオライトからのメタン微孔性カーボン吸着剤の形成が示される。有用なメタン微孔性カーボン吸着剤は、種々の結晶質ゼオライト、有機前駆体、CVD温度および期間ならびにCVD後の処理温度および期間を使用して製造される。有用な材料が多様であることから、比較的高い表面積およびミクロ細孔体積のメタン微孔性カーボン吸着剤を形成することにおいて、連続炭素合成法が汎用的であることがわかる。
【0099】
大結晶NaXゼオライト(Si:Al=1.35〜1.45)の合成
本実験は、(1〜2μmの商用銘柄サイズに対して)「大」結晶NaXゼオライトの形成を示す。メタン微孔性カーボン吸着剤を形成するために、大NaXゼオライトは、犠牲的フレーム構造として作用するために有用である。本方法の一実施形態において、本方法は、結晶質ゼオライトを形成するステップをさらに含んでなる。
【0100】
本方法の一実施形態において、結晶質ゼオライトは、トリエタノールアミン(TEA)を含んでなる。大結晶NaXゼオライトは、ゼオライト合成ゲル中にTEAを添加することによって合成される。NaSiO・5HOおよびアルミン酸ナトリウム(55%Alおよび45%NaO)が、それぞれ、シリカおよびアルミナ前駆体として使用される。TEAは、アルミニウムカチオンに対する錯化剤である。TEAの存在は、結晶の成長プロセスと比較して、ゼオライト結晶の核形成を遅らせる可能性があり、含まれる場合より大きい結晶をもたらす。得られるゲル組成物は、約4.76 NaO:1.0 Al:3.5 SiO:454 HO:n TEAの分子比にあり、nは3つの異なる試験ゲルを形成する3つの値:約3、5および7で変動する。それぞれの得られた反応生成物試験ゲルは、ポリプロピレンボトルに移され、そして72時間、373K(ケルビン)で水熱的に結晶化される。それぞれの大NaXゼオライト生成物は、ろ過によって回収されて、そして373Kで乾燥される。
【0101】
図5は、合成された大NaXゼオライトのそれぞれのX線回折(XRD)分析のトレースを示すグラフである。図5中、明瞭性のため、NaX−7TEAおよびNaX−5TEAの個々のトレースは、1秒あたりのカウント(CPS)の強度の固定値によってオフセットされることに留意されたい。実際、全3つのトレースは、2θ=0において同一値を有する。NaX−5TEAに関するトレースは、6700cpsによってオフセットされ、NaX−7TEAに関するトレースは、12000cpsによってオフセットされる。それぞれの大NaXゼオライトのXRD分析によって、TEA(n=3)によって製造されたNaXゼオライトが、従来のNaXゼオライトのものと対応するXRDトレース「ピーク」を有する唯一の大NaXゼオライトであることが示される。他の不純物相のピークは、このゼオライトで観察されない。それと対照的に、TEA(n=5、7)で製造された大NaXゼオライトは、NaXゼオライト相ピークを補う「P」ゼオライト(GIS相)に対応するXRDトレースピークを示す(矢印図5参照)。この結果は、ゲル組成物の一部として、より少ないTEAを使用することによって、化合物のより大きい量よりも、大結晶NaXゼオライトを形成するために有用であることを示す。
【0102】
図6a〜cは、TEAを使用する、それぞれの合成された大NaXゼオライトの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。このSEM顕微鏡写真は、ゼオライトフレーム構造のサイズを明らかにする。図6a〜cは、全て、八面体の中央端の長さが約8μm(マイクロメートルまたはミクロン)〜約20μmであるように、NaXゼオライト(幾何構造においてほぼ八面体−FAU)の典型的な直交結晶モフォロジーを有するが、結晶サイズ分布(顕微鏡写真図6a〜cの左部分)を有する、TEAを使用して製造された大NaXゼオライトを示す。本方法の一実施形態において、結晶質ゼオライトは、8μm〜20μmの範囲の中央端の長さと直交する形状を有する。顕微鏡写真図6aの右部分の接近写真画像の中央の結晶は、約14.9μmの八面体の中央端の長さを有する結晶質ゼオライトを示す。TEA(n=5)である、顕微鏡写真図6bの右部分の接近写真画像の中央の結晶は、約11.8μmの八面体の中央端の長さを有する結晶質ゼオライトを示す。TEA(n=7)である、顕微鏡写真図6cの右部分の接近写真画像の中央の結晶は、約9.68μmの八面体の中央端の長さを有する結晶質ゼオライトを示す。顕微鏡写真図6b〜c(TEA(それぞれ、n=5、7))の左部分は、両方とも、統合したPおよびX結晶質ゼオライトの組合せを示すことに留意されたい(図6b〜cの矢印を参照のこと)。TEA(n=3)を使用する大NaXゼオライトは、そのようなPおよびXゼオライトの組合せの群を示さないように見える。
【0103】
NaXゼオライトのカルシウムイオン交換
本方法の一実施形態において、結晶質ゼオライトを形成するステップは、第2のイオン交換された結晶質ゼオライトを形成するために、カルシウムイオンで第1の結晶質ゼオライトをイオン交換することを含む。カルシウムXゼオライト(CaX)は、ナトリウムイオンをカルシウムイオンと交換することによって、商用銘柄NaXゼオライト(以前に形成された大結晶NaXではない)によるイオン交換によって調製される。商用銘柄NaXゼオライトは、約1〜約2μmの範囲の中央端の八面体長さを有する小結晶である。結果として生じるCaXゼオライトは、ほぼ同一サイズである。
【0104】
約10g(グラム)の商用銘柄NaXを、約4時間、イオン交換を実行するために、200mL(ミリリットル)の0.32M(モル)Ca(NO(硝酸カルシウム)溶液中で一定に攪拌する。
【0105】
図7は、イオン交換CaXゼオライトおよび商用銘柄NaXゼオライトのNH(アンモニア)温度プログラム脱着(TPD)プロフィールのトレースを示すグラフである。図7は、Ca2+イオンによるNaXゼオライトのイオン交換によって、ゼオライトミクロ細孔内の選択的炭素析出を促進する酸部位が生成されることを示す。これらのミクロ細孔は、炭化水素小分子に向けられる。イオン交換されたCaXゼオライトは、2種の酸部位の存在を示す473Kおよび653Kにおける2つの脱着ピークを示す。それと対照的に、商用銘柄NaXゼオライトは、脱着プロフィールを示さず、酸部位がないことを示す。
【0106】
CaXゼオライトは、安定性も増加したように見える。表1は、商用銘柄NaXゼオライトとカルシウムイオン交換されたXゼオライトの熱安定性を比較する。
【表1】
表1 NaXおよびイオン交換されたCaX結晶ゼオライトの熱安定性。[1]ゼオライト中の交換カチオンの当量分率。[2]X線粉末パターンから構造的分解が最初に観察される温度(K)。[3]構造が50%分解する温度(K)。
【0107】
表1は、TinitおよびT0.5の両方における相対的な増加に見られるように、カルシウムイオン交換されたXゼオライト(CaX)の熱安定性の増加を示す。これは、NaXゼオライト以上に、CaXイオン交換ゼオライトを使用してCVDを実行することに関して有利である。CaXゼオライトの結晶化度は、973Kでさえ変化せず、これはCVD温度が約873K〜約973Kの範囲にある場合に有用である。
【0108】
CaXゼオライト内の炭素析出
炭素蒸着(CVD)は、プラグフロー反応器を使用して行なわれる。約1グラムのゼオライト(商用銘柄NaXゼオライト、以前に製造されたイオン交換されたCaXゼオライト)を、プラグフロー反応器に配置する。温度は、連続的なヘリウム流の下、CVD温度まで、制御された段階的な様式で、反応器内で増加する。CVD温度で約30分間の安定後、ヘリウムガスを、ヘリウムおよび有機前駆体の組合せである有機前駆体ガスに切り替える。
【0109】
3種の異なる有機前駆体が、CVD用の3種の有機前駆体ガスを試験するために使用される:プロピレン、エタノールおよびアセチレン。プロピレンおよびエタノールの両方の動的径は0.45nmであり、そしてアセチレンは0.33nmである。有機前駆体としてプロピレンを導入するために、有機前駆体ガスは、He混合物中2体積%のプロピレンの組成を有する。エタノールを導入するために、有機前駆体ガスは、エタノール飽和ヘリウムの組成(室温;6kPaの圧力)を有する。バブラーを使用して液体エタノールを通してヘリウムを導入し、飽和ガス混合物を形成する。アセチレンを導入するために、有機前駆体ガスは、He混合物中2体積%のアセチレンの組成を有する。それぞれの有機前駆体ガスは、ゼオライト1グラムあたり約200mL/分のマスフロー速度で、それぞれのゼオライト試料に導入される。有機前駆体ガスは導入されて、CVD期間、そのマスフロー速度に維持され、そのCVD期間中、有機前駆体がCVD温度においてゼオライトに吸着し、その内部で炭化して、炭素−ゼオライト複合材を形成する。CVD期間が経過した後、導入された有機前駆体ガスは、非反応性ガス(純粋なヘリウム)に変えられ、そしてプラグフロー反応器は室温まで冷却される。
【0110】
それぞれの結果の炭素−ゼオライト複合材は、3.4重量%のHClおよび3.3重量%のHFを含んでなる水性強鉱酸混合物で処理される。結果の炭素−ゼオライト複合材は、1時間、室温で2回、水性強鉱酸混合物に暴露される。得られたゼオライトの炭素テンプレート−ゼオライトのネガティブレプリカ−は、ろ過されて、脱イオン水で洗浄され、そして373Kで一晩乾燥させる。
【0111】
CaXゼオライトを使用するゼオライトの炭素テンプレートの形成に対する有機前駆体の影響
2種の異なる有機前駆体−プロピレンおよびエタノールは、ゼオライトのいくつかの炭素テンプレートを形成するために、異なるCVD温度で適用される。この実験において、次の呼称コードは、ゼオライトのそれぞれの炭素テンプレートを製造するために使用されるプロセスを示す:「ゼオライトテンプレート−CVD温度/有機前駆体/CVD時間熱処理」、ここで「ゼオライトテンプレート」は、使用されたゼオライトテンプレートのイオンおよび種類(NaX、CaX)である。「CVD温度」は、4時間の有機前駆体導入に対してKで表したものである。「有機前駆体」は、プロピレン(「P」)、エタノール(「E」)およびアセチレン(「A」)から選択される。「CVD時間熱処理」は、時間単位での1123KにおけるCVD後の熱処理の長さを示す。例えば、「CaX−973P5」は、5時間のCVD期間、プロピレンを含有する有機前駆体ガスを導入する、973KのCVD温度におけるCaXゼオライトテンプレートを意味する。
【0112】
図8は、CaXゼオライトを使用して製造されたゼオライトのいくつかの炭素テンプレートのXRD分析のトレースを示すグラフである。ゼオライトの3種の炭素テンプレート:CaX−1073E6、CaX−973E6およびCaX−973P5が形成される。図8中、明瞭性のため、CaX−1073E6およびCaX−973E6の個々のトレースは、CPSの強度の固定値によってオフセットされることに留意されたい。実際、全3つのトレースは、2θ=0において同様の値を有する。CaX−973E6に関するトレースは、10000cpsによってオフセットされ、CaX−1073E6に関するトレースは、15000cpsによってオフセットされる。図8に示されるゼオライトの全3種の炭素テンプレートのXRDパターンは、約5°〜約6°の範囲の2θ付近の幅広いピークを示す。この2θ値における幅広いピークは、ゼオライトの全3種の炭素テンプレートが、規則的であり、かつ一定の構造的ミクロ細孔配列を有することを示す。2θ=5〜6°範囲における鋭いピークは、ゼオライトの炭素テンプレートが、平面積層Xゼオライト(「FAU」ゼオライト構造としても知られる)の構造的規則性(111)と一致するマイクロフォームで規則性を有することを示す。これは、それぞれのゼオライトの炭素テンプレートが、犠牲的ゼオライトのミクロ細孔構造をネガティブ複製することを示唆する。ゼオライトの3種の炭素テンプレートのうち、CaX−973P5から形成したネガティブレプリカは、2θ=5〜6°において最も強く、かつ最大の分離ピークを示す。ゼオライトの他の2種の炭素テンプレートと比較して強いピークは、CaX−973P5によって形成されたネガティブレプリカが、そのゼオライトを最も正確な表すものであることを示す。
【0113】
ガス吸着研究の当業者は、炭素−ゼオライト複合材、ゼオライトの炭素テンプレート、ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤の表面特性を決定するためのいくつかの異なる試験手順があることを理解し、認識する。Wangらによる論文、「Experimental and Theoretical Study of Methane Adsorption on Granular Activate Carbons」,AIChE Journal 782−788(Vol.58,Issue 3)(“Wang”)には、窒素吸着−脱着等温線を決定するために77Kにおける窒素空孔率測定を使用して、吸着剤材料を特徴決定するためのプロセスおよび装置が記載されている。BET(Brunauer−Emmett−Teller)分析によって、等温試験の間の相対的な窒素圧力の変化の関数(P/P)としてのゼオライトの炭素テンプレートの比表面積が提供される。D−R(Dubinin−Radushkevich)等式では、細孔の直径が、吸着される分子の作用直径に近い場合、分子積層機構に基づくゼオライトの炭素テンプレートに存在するそれぞれの種類の細孔(ミクロ細孔およびメソ細孔)の体積、そして直径が類似しない場合、細孔内の表面吸着を決定するために、相対的な窒素圧力が使用される。
【0114】
図9は、ゼオライトの炭素テンプレートの窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。全3種のトレースの明瞭性のため、P/P=0において、CaX−973E6の等温線トレースは、200cm/gの追加の吸着量によってオフセットされ、CaX−1073E6の等温線トレースは、250cm/gの追加の吸着量によってオフセットされることに留意されたい。CaX−973P5から形成されたゼオライトの炭素テンプレートは、吸着−脱着等温線の戻り部分における最少の偏差を示すのに対して、CaX−1073E6は最大を示す。この偏差は、ゼオライトのCaX−1073E6炭素テンプレート対ゼオライトのCaX−973P5炭素テンプレートにおいて、より大きい量のメソ細孔体積を示し得る。
【0115】
図10は、図9に示される窒素吸着−脱着等温線データにおいて非局在密度関数理論(NLDFT)演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。図10中、明瞭性のため、ゼオライトのCaX−1073E6およびCaX−973E6炭素テンプレートの個々のトレースは、1グラムあたりセンチメートルでのdVの固定値(cm/g)によってオフセットされることに留意されたい。実際、全3つのトレースは、W=0nmにおいて同様の値を有する。CaX−973E6のトレースは、0.16cm/gによってオフセットされ、CaX−1073E6のトレースは、0.26cm/gによってオフセットされる。図10は、CaXゼオライトから形成されたゼオライトの全3つの炭素テンプレートが(直径約1.5〜2nmの)ミクロ細孔および(直径約2〜5nmの)メソ細孔の両方を有する二重気孔率を有することを示す。水素は2.89Åの動的径を有し、かつメタンは3.8Åの動的径を有する。CaX−973P5から製造されたゼオライトの炭素テンプレートのトレースは、それが最大の全ミクロ細孔体積を有することを示す。CaX−1073E6から製造されたゼオライトの炭素テンプレートのトレースは、最大の全メソ細孔体積を示す。
【0116】
表2は、アセチレンから形成されたゼオライトの炭素テンプレート:CaX−1023A2に加えて、CaXから製造されたゼオライトの全3種の炭素テンプレートにおける表面積、ならびにミクロ細孔およびメソ細孔体積データを提供する。図9および10に示されるように、そして表2に示されるように、ゼオライトの4種の炭素テンプレートは、二重気孔率(メソ細孔およびミクロ細孔の両方)を有する。CaXゼオライトのみが微孔性構造を有し、したがって、約0.40cm/gより高いレベルにおけるメソ細孔の存在は、ゼオライトの望ましくないネガティブ複製を示す。メソ細孔の存在は、細孔構造のより適切に規格化されていない複製を導く有機前駆体によるゼオライトミクロ細孔の不完全充填を示す。
【表2】
表2:商用銘柄サイズのイオン交換CaXゼオライトを使用する、ゼオライトのいくつかの炭素テンプレートの細孔構造および表面積特性。[1]Brunauer−Emmett−Teller(BET)比表面積。[2]D−R式を使用して決定されたミクロ細孔体積。
【0117】
表2中、CaX−1023A2から製造されたゼオライトの炭素テンプレートは、プロピレン(1900m/g)およびエタノール(平均1792m/g)を使用して調製されたゼオライトの炭素テンプレートよりも高い表面積(2567m/g)を示す。CaX−1023A2から製造されたゼオライトの炭素テンプレートは、4つの試料中で、最も高い全体細孔体積(1.37cm/g)、最も高いミクロ細孔体積(0.95cm/g)および最も高いミクロ細孔:メソ細孔体積比(2.26)を示す。CaX−973P5から製造されたゼオライトの炭素テンプレートは、同様の類似のミクロ細孔:メソ細孔体積比(2.20)を有する。
【0118】
理論に拘束されないが、図9および10ならびに表2に示されたデータおよび決定は、有機前駆体が、大きさにかかわらず、それが最初に導入される特定の量よりも多くゼオライトミクロ細孔中に分散されることができないことを示唆する。有機前駆体分子の限定された量を吸収することができるゼオライト中のそれぞれの細孔に対して、有限の体積がある。ミクロ細孔に存在する炭素の量を最大にするために、そして(全表面積およびミクロ細孔体積の両方において)ゼオライトの表面のより良好な特徴を提供するために、有機前駆体は、ミクロ細孔中の分子数を最大にするための小さい動的径、ならびにゼオライトのそれぞれのミクロ細孔中の炭素原子数がCVDの間に最大になるように、炭素対他の原子(水素、酸素)の高い比率の両方を有するべきである。
【0119】
得られた結果は、アセチレンが、3種の有機前駆体の中で最良であり、プロピレンが接近して後に続くことを示すように見える。1023Kで2時間アセチレンを使用して合成したゼオライトの炭素テンプレートは、比較的高いBET表面積(2567m/g)および大きいミクロ細孔体積(約1cm/g)を示す。アセチレンは、メタン(0.38nm)より小さい動的径を有する(0.33nm)。アセチレンは、プロピレン(1:2)およびエタノール(1個の酸素を有する1:3)に対して、最適の炭素:水素比(1:1)を有し、かつその分子形状は、プロピレンおよびエタノールが非線形結合角を有するのに対して、線形であり、このことによって、それらの動的径がより大きくなる。
【0120】
大CaXゼオライトへのアセチレン有機前駆体の導入
アセチレンは、メタンが吸着することが可能であるいずれのミクロ細孔も占拠することが可能であるべきであるが、なおメソ細孔は、CaX−1023A2から形成されたゼオライトの炭素テンプレートにおいて形成されていた。加えて、大Xゼオライトテンプレートの使用は、ゼオライトを通して、より長い拡散時間を必要とし得る。大量の結晶質ゼオライト(>1g)は、大小にかかわらず、ゼオライト粒子が互いに接触し、そしてそれぞれの構造に蒸気が到達する点を抑制して、それぞれのゼオライト中に拡散する機会を最大にする技術を必要とし得る。より高いCVD温度(1023K)の使用によって、犠牲的ゼオライト中への完全拡散の前に、アセチレンによって炭素の早期析出をもたらし得る。アセチレンの2個の炭素原子間の三重結合はすでに、二重結合化合物と比較して、放出および反応の促進が非常に容易な結合エネルギーの有意な量を含む。大結晶ゼオライトまたはより小さいゼオライトが一緒に充填された床との組合せにおいて、結晶質ゼオライトの炭素ネガティブレプリカの形成を支持するためのより高いCVD温度において適切な拡散期間がないかもしれない。
【0121】
より低いCVD温度でアセチレンを導入および炭化し、次いで、CVD温度より高いが、グラファイト化が生じる温度(+2000℃)より低い温度で、析出された炭素の熱処理する方法は、ゼオライトが除去される前に、犠牲的ゼオライトのミクロ細孔内および表面上で、緩い炭素を、相互結合した炭素マトリックス)に変換することによって、堆積させられた炭素の密度を増加させる。低温アセチレンCVD(≦873K)は、ゼオライト内で炭素を析出させ、ゼオライトの炭素テンプレートを形成する。1000K未満および900K未満のより低いCVD温度において、炭素析出は、犠牲的ゼオライト全体への浸透の前に炭化を防ぐことによって、より高いCVD温度におけるよりも均一に生じるべきである。非反応性ガス雰囲気における、より高い温度(約1123K)でのゼオライトの炭素テンプレートの熱処理によって、炭素−ゼオライト複合材内の析出された炭素を脱水素化し、そして炭素−炭素結合の量が増加して、ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートのより強く、かつより高密度の複合構造が形成される。
【0122】
この実験において、次の呼称コードは、ゼオライトのそれぞれの炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤を製造するために使用されるプロセスを示す:「ゼオライトテンプレート−CVD温度−CVD時間熱処理」、ここで「ゼオライトテンプレート」は、テンプレートゼオライトの一部として使用されたイオン(Na、Ca)である。「CVD温度」は、4時間の有機前駆体導入に対してKで表したものである。「CVD時間熱処理」は、時間単位での1123KにおけるCVD後の熱処理の長さを示す。第2の「H」が存在する場合、これは、有機前駆体付加およびCVD後の熱処理が繰り返されることを示す。「L」が「ゼオライトテンプレート」の前に存在する場合、それは、ゼオライトテンプレートが、商用銘柄サイズ(1〜2μm)のNaXまたは同サイズのイオン交換CaXゼオライトを使用する代わりに、上記されたTEA(n=3)で合成された大結晶Xゼオライトであることを示す。例えば、「LCaX−873−4H」は、メタン微孔性カーボン吸着剤が、4時間のCVD期間、873KのCVD温度でアセチレンを用いて大CaXゼオライトを使用して合成され、次いで、1123Kで4時間、CVD後の熱処理されたことを示す。「LCaX−873−4H4H」試料は、同様に合成されたメタン微孔性カーボン吸着剤であるが、アセチレンCVD適用温度および期間ならびにCVD後の熱処理が、2回、類似条件下で繰り返される。
【0123】
表3は、いくつかの異なるCVDおよびCVD後の熱処理下、大CaXゼオライトを使用して製造された、いくつかのゼオライトの炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤の構造特性を示す。アセチレンは、全ての試験に関して有機前駆体である。
【表3】
表3:大結晶イオン交換CaX(LCaX)ゼオライトを使用して形成された、いくつかのゼオライトの炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤の細孔構造および表面積特性。[1]Brunauer−Emmett−Teller(BET)比表面積。[2]D−R式を使用して計算されたミクロ細孔体積(Vmicro)。[3]1グラムのゼオライトがアセチレンCVDに使用された。[4]5グラムのゼオライトがアセチレンCVDに使用された。
【0124】
表3中の1、3および4の番号を付けられた試料は、大結晶ゼオライトを使用するメタン微孔性カーボン吸着剤の商用製造に及ぼす影響を有し得る、製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤に対するいくつかの興味深い影響を示す。ゼオライトの3種の上記炭素テンプレートは、比較的より高いCVD温度が、より低いCVD温度よりも大きい全BET比表面積およびミクロ細孔体積の両方を入手するのに有用であることを示す。ゼオライトの試料番号4(LCaX−873−4)炭素テンプレートは、追加量のCVD期間(2または3に対して4時間)を用いるが、試料1および3と比較して、減少したBET表面積およびミクロ気孔率を有する。理論によって制限されることを望まないが、LCaX−873−4を使用して形成されたゼオライトの炭素テンプレートは、4時間のCVD期間、873KのCVD温度で十分に相互結合しなかったと思われる。これは、ゼオライトミクロ細孔が、いくらかの結合を有するが、有意に交錯した3次元(3−D)構造ではない、析出された炭素によって完全充填されていることを示す。水性強鉱酸混合物を使用する犠牲的ゼオライトの除去において、ゼオライト構造の結果の炭素テンプレートは崩壊して、そしてさもなければ、構造化された吸着剤として使用不可能となった。
【0125】
同じ作業を実行し、ゼオライトフレーム構造の除去前に、ヘリウム雰囲気下で1123Kにおいて4時間のCVD後の熱処理を追加することによって(LCaX−873−4H、試料番号5)、メタン微孔性カーボン吸着剤の表面積がゼオライトの炭素テンプレートの3.6倍改善するのみならず、ミクロ細孔体積も試料番号4に対して3.4倍増加する。これらの発見は予想外であって、そして開示されるようにさらに調査された。
【0126】
表3は、CVD後の熱処理(試料番号5)によって、または減少したCVD温度(<900K)を使用する場合に別のCVD後の熱処理による第2のCVD処理(試料番号6〜9)によってのいずれかでの、炭素−ゼオライト複合材の追加のCVD後の熱処理が、犠牲的大結晶ゼオライトを崩壊させずに除去するための適切な構造保全を有するメタン微孔性カーボン吸着剤中の高度微孔性構造を提供することを示す。
【0127】
表3からメタン微孔性カーボン吸着剤試料番号6〜8の結果を、メタン微孔性カーボン吸着剤試料番号5と比較すると、BET比表面積およびミクロ細孔体積を比較的維持しながら、試料番号6〜8のメソ細孔体積の減少がある。試料番号6〜8は、約4.7〜約6.5の範囲のミクロ細孔:メソ細孔体積比を有し、これは、試料番号5の約2.5の体積比に対して改善である。試料番号6(LCaX−873−4H4H)は、ゼオライトテンプレートの除去の前に、第2のアセチレンCVD/CVD後の熱処理サイクルを実行したのみであるが、試料番号5(LCaX−873−4H;0.45cm/g)と比較して、減少したメソ細孔体積(0.23cm/g)を有する。
【0128】
メタン微孔性カーボン吸着剤試料番号5、LCaX−873−4Hは、ゼオライトの炭素テンプレート試料番号1(LCaX−1023−2)よりも大きい表面積(3049m/g)、ミクロ細孔体積(1.12cm/g)およびミクロ細孔:メソ細孔体積比(2.49)を有する。比較すると、これは、低いCVD温度、CVD期間の延長およびCVD後の熱処理の適用によって、大ゼオライトの改善されたネガティブレプリカがもたらされることを示す。LCaX−873−4Hのメタン微孔性カーボン吸着剤は、全ての試料の中で最も大きい全細孔体積(1.57cm/g)を示す。
【0129】
この結果は、炭素を熱的に析出する前の有機前駆体によるゼオライトミクロ細孔の不完全な充填は、ゼオライトの炭素テンプレートにおけるメソ細孔の形成を導くことを示す。連続炭素合成法は、使用されたゼオライト量(すなわち、床厚さ)にかかわらず、メタン微孔性カーボン吸着剤を製造および複製する信頼できる手段を可能にする。それぞれ1グラムおよび5グラムの材料を使用する、試料番号6および7を比較されたい。
【0130】
823KまでアセチレンCVD温度を減少させ、第1のCVD期間を延ばすことによって、BET表面積およびミクロ細孔体積がわずかに増加したメタン微孔性カーボン吸着剤が合成される(試料番号8;LCaX−823−9H4H)。メタン微孔性カーボン吸着剤試料番号5〜8は、約800K〜約900Kの範囲のCVD温度によって、少量の大CaXゼオライトのみならず、犠牲的ゼオライト(試料番号7および8)の層状床中へのアセチレンの分散および炭化の両方の適切な組合せを提供することを示す。限定されたより低い温度範囲内でCVD期間を延長することは、BET比表面積およびミクロ細孔:メソ細孔比を改善するように見える。理論によって制限されるよう意図しないが、アセチレンは、細孔構造中により完全に浸透し、第1の熱処理サイクルの前にゼオライトの第1の炭素テンプレートを形成すると思われる。アセチレンを使用して、773K未満のCVD温度において、ゼオライトの炭素テンプレートは炭素−ゼオライト複合材内に形成するが、このプロセスは、商用メタン微孔性カーボン吸着剤製造においては実際的でないCVD期間を必要とする。
【0131】
図11は、LCaXゼオライト、炭素−ゼオライト複合材、熱処理された炭素−ゼオライト複合材および結果のメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。LCaXゼオライト、試料4の炭素−ゼオライト複合材、試料5の熱処理された炭素−ゼオライトおよび試料6であるメタン微孔性カーボン吸着剤のための等温線が表される。窒素等温線は、炭化および熱処理プロセスに沿って異なる点で実行される。初期の大CaXゼオライトを除き、すなわち、アセチレンを使用する炭素析出の前、熱処理の前および後の両方で、ゼオライトの炭素テンプレートはゼオライト内に維持され;ゼオライトは等温試験の間に除去されない。
【0132】
図11は、最大吸着量を有するが、完全開口ゼオライト細孔を有することが明らかである初期LCaXゼオライトを示す。試料番号4(LCaX−873−4)炭素−ゼオライト複合材は、アセチレンを使用して873KのCVD温度において4時間のCVD期間後、炭素−ゼオライト複合材の吸着能力が約80%減少することを示す(P/P=1において測定)。ゼオライトの細孔が炭素−ゼオライト複合材中の析出炭素によってふさがっているため、吸着量は低下する。試料番号5(LCaX−873−4H)は、ヘリウム雰囲気下で4時間、1123Kで熱処理された、熱処理された炭素−ゼオライト複合材である。このプロセスは、LCaXゼオライトミクロ細孔体積の約25%を再生したように思われる。熱処理は、熱処理された炭素−ゼオライト複合材内のゼオライトの炭素テンプレートの密度を増加するようにも思われる。ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートは、より連結した炭素−炭素構造を形成し、これは、ゼオライト内の炭素網目構造を縮小させる。これによって、より多くの窒素が、熱処理された炭素−ゼオライトテンプレート(LCaX−873−4H)に浸透することが可能となる。ゼオライトミクロ細孔の多くがCVD後の熱処理後に再生されるが(析出された炭素が脱水素化され、そして炭素−炭素結合がより広がるため、交錯炭素の網目構造が物理的に縮小する)、第2のアセチレンCVD/CVD後の熱処理サイクルが炭素−ゼオライト複合材を浸透して、そして新たに露出した、そして残りのミクロ細孔を充填する。第2のアセチレンCVD/CVD後の熱処理サイクルを行なった後、炭素−ゼオライト複合材試料番号6のミクロ細孔(LCaX−873−4H4H)は、ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートでほとんど充填される。表3中の上記で提供されたデータを使用して、ミクロ細孔:メソ細孔体積比は、LCaX−873−4H4Hに関して4より高い。
【0133】
図12〜14は、ゼオライトテンプレートとしてLCaXおよび有機前駆体としてアセチレンを使用する、2種のメタン微孔性カーボン吸着剤およびゼオライトの2種の炭素テンプレートの分析を示す。それぞれ、5グラムのLCaXゼオライトを使用して製造される。図12は、LCaX−1023−2およびLCaX−873−4から製造されたゼオライトの炭素テンプレートならびにLCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4Hから製造された2種のメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。図13は、図12に示される窒素吸着−脱着等温線データにおいて非局在密度関数理論(NLDFT)演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。図13中、明瞭性のため、LCaX−873−4を使用するゼオライトの炭素テンプレートならびにメタン微孔性カーボン吸着剤LCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4Hの個々のトレースは、dVの固定値(cm/g)によってオフセットされることに留意されたい。実際、全4つのトレースは、W=0nmにおいて同様の値を有する。LCaX−873−4のトレースは、0.30cm/gによってオフセットされ、LCaX−873−4Hのトレースは、0.43cm/gによってオフセットされ、LCaX−873−4H4Hのトレースは、0.85cm/gによってオフセットされる。図14は、LCaX−1023−2およびLCaX−873−4から製造されたゼオライトの炭素テンプレートならびにLCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4Hから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のXRD分析のトレースを示すグラフである。図14中、明瞭性のため、LCaX−873−4、LCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4Hの個々のトレースは、CPSの強度の固定値によってオフセットされることに留意されたい。実際、全3つのトレースは、2θ=0において同様の値を有する。LCaX−873−4のトレースは、30000CPSによってオフセットされ、LCaX−873−4Hのトレースは、50000CPSによってオフセットされ、LCaX−873−4H4Hのトレースは、72000CPSによってオフセットされる。
【0134】
LCaXゼオライト構造(LCaX−873−4H4H)の最も正確なネガティブレプリカは、図12中、古典的なI型等温線を示し、かつ減少された窒素部分圧力(P/P>0.1)において飽和に近付くことを示すように見える。析出された炭素がないLCaXゼオライトは、図11中、類似のI型等温線曲線を示す。アセチレンCVD/CVD後の熱処理の単一サイクルにおいて合成されるLCaX−873−4Hによって形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、図12中、二重サイクルLCaX−873−4H4Hメタン微孔性カーボン吸着剤よりも比較的大きい全細孔体積を示す。図12は、LCaX−873−4Hメタン微孔性カーボン吸着剤の大量吸着がP/P>0.1の部分圧力の範囲で起こることを示す。図13は、LCaX−873−4Hメタン微孔性カーボン吸着剤による増加した吸着量が、メソ細孔範囲(値>2nmにおいてトラックに沿って広がる丸形ハンプ、これはミクロ細孔の範囲外の細孔サイズを示す)における追加の細孔体積の存在のためであることを確認する。
【0135】
メタン微孔性カーボン吸着剤(LCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4H)は、図13中、ミクロ細孔(W<2nm)における細孔サイズ分布における(狭い、激しい)急上昇を示す。図14は、良好に機能するゼオライトの炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤が、高いCVD温度を有し、かつCVD後処理がない(LCaX−1023−2)か、または少なくとも1回のCVD後の熱処理サイクルを有し(LCaX−873−4H、LCaX−873−4H4H)、XRDトレースにおいて約2θ=6.3°において強度の応答を示すことを示す。LCaX−873−4H4Hからのメタン微孔性カーボン吸着剤は、この値で非常に鋭いピークを示す。これは、吸着剤が、テンプレートゼオライトと類似の規則的な微孔性構造を有することを示す(TEA(n=3)を有する大NaXゼオライトに関する図5、商用銘柄サイズのイオン交換CaXレプリカに非常に類似の隆起に関する図8を参照のこと)。2θ=6.3°における鋭いXRD強度ピークの存在は、犠牲的ゼオライト構造のネガティブ模写の精度(すなわち、炭素析出および熱処理の効率)を示すために有用である。
【0136】
商用BEAおよび商用銘柄サイズのCaXゼオライトからのメタン微孔性カーボン吸着剤の形成
約19のSi:Al分子比を有する、商用BEAゼオライトは、Zeolyst Int’l(Conshohocken,PA)から入手する。BEAゼオライトは、約500nm〜約1μmの範囲のサイズ分布を有する丸形粒子である。CaXゼオライト(商用銘柄サイズ(1〜2μm)Ca+2イオン交換NaXゼオライト)も使用され、これは上記の通り製造される。それぞれのゼオライトは、類似の連続炭素合成法を受ける:9時間の第1のCVD期間、823KのCVD温度において、アセチレンを使用する第1のCVDプロセス、4時間、1123Kにおいて、ヘリウム雰囲気中での第1のCVD後の熱処理、4時間の第2のCVD期間、823KのCVD温度において、アセチレンを使用する第2のCVD、4時間、1123Kにおいて、ヘリウム雰囲気中での第2のCVD後の熱処理。犠牲的ゼオライトフレーム構造は、いくつかの水性強鉱酸混合物洗浄においてエッチング除去される。結果のメタン微孔性カーボン吸着剤を回収する。メタン微孔性カーボン吸着剤の試験を表4に示す。
【表4】
表4:BEAおよび商用銘柄サイズのCaXゼオライトから形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤の細孔構造および表面積特性。[1]Brunauer−Emmett−Teller(BET)比表面積。[2]D−R式を使用して計算されたミクロ細孔体積(Vmicro)。
【0137】
図15a〜bは、BEA結晶質ゼオライトおよびBEAゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。図15aは、入手されたBEAゼオライトのSEMである。図15bは、図15aの入手されたBEAゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のSEMである。
【0138】
表4に示される両メタン微孔性カーボン吸着剤は、高いBET比表面積(約3000m/g)ならびにミクロ細孔体積(約1.2cm/g)を示す。CaXから形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、4.21のミクロ細孔:メソ細孔体積比を有する。BEAから形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、3.84のミクロ細孔:メソ細孔体積比を有する。
【0139】
図16および17は、表4に示されるメタン微孔性カーボン吸着剤の両種類の分析を示す。図16は、CaXおよびBEAゼオライトから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。両材料は、I型N吸着−脱着等温線を示す。図17は、CaXおよびBEAゼオライトから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のXRD分析のトレースを示すグラフである。図17中、明瞭性のため、CaX−823−9H4Hの個々のトレースは、CPSの強度の固定値によってオフセットされることに留意されたい。実際、これらのトレースは、2θ=0において同様の値を有する。CaX−823−9H4Hのトレースは、40000cpsによってオフセットされる。図17は、低角(2θ<10°)において非常に鋭いXRDピークを示す。図17および18の両方、ならびにミクロ細孔:メソ細孔体積比は、それぞれ、メタン微孔性カーボン吸着剤が、規則的なミクロ細孔構造で、それらの犠牲的ゼオライトのそれぞれに非常に類似したネガティブレプリカであることを示す。
【0140】
図18は、2回のアセチレンCVD/CVD後の熱処理サイクルを使用して形成した4種のメタン微孔性カーボン吸着剤に対してNLDFT演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。図18中、明瞭性のため、CaX−823−9H4H、CaX−873−4H4HおよびLCaX−823−9H4Hの個々のトレースは、dVの固定値(cm/g)によってオフセットされることに留意されたい。実際、全4つのトレースは、W=0nmにおいて同様の値を有する。CaX−823−9H4Hのトレースは、0.22cm/gによってオフセットされ、CaX−873−4H4Hのトレースは、0.50cm/gによってオフセットされ、LCaX−823−9H4Hのトレースは、0.90cm/gによってオフセットされる。図18は、3種の異なる犠牲的ゼオライト、2種の異なるCVD温度および2種の異なる第1のCVD期間を使用する4種の異なるネガティブレプリカを示す。図18は、全4つの方法が、異なる小細孔ゼオライト、CVD温度およびCVD期間にもかかわらず、ミクロ細孔範囲の非常に狭い細孔サイズ分布を示すことを明示する。図18は、これらのメタン微孔性カーボン吸着剤に関するメソ細孔細孔範囲が比較的重要ではないことも示す。
【0141】
この実験の結果は、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成することに対して、他の結晶質ゼオライト構造が犠牲的テンプレートとして使用され得ることを示す。この実験は、NaX、CaXおよびBEAゼオライトが、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成することにおいて有用であることを示した。商用銘柄サイズNaX、大NaX(LNaX)、大きく、かつ商用銘柄サイズのイオン交換NaX(CaXおよびLCaX)ならびにNaYを含むFAU;FAUに類似のEMT;ならびにBEAゼオライト構造は、全て12員環構造であり、かつ3次元細孔連結性を有し、これは3次元ネガティブレプリカを形成するためのフレーム構造として適切である。本方法の一実施形態において、結晶質ゼオライトは、FAU、EMTおよびBEAゼオライト構造からなる群から選択される。メタン微孔性カーボン吸着剤の一実施形態において、形状は、FAU、EMTおよびBEAゼオライト構造ならびにそれらのゼオライト構造の組合せからなる群から選択される結晶質ゼオライトのネガティブレプリカの形態である。
【0142】
いくつかのカーボン吸着剤に関する比較メタン吸着
Wangは、吸着等温線のための重量測定基準を決定するための試験手順および装置の説明を提供する。図19は、298Kにおけるゼオライトの炭素テンプレートおよびいくつかのメタン微孔性カーボン吸着剤に対する、重量測定基準のメタン吸着等温線のいくつかのトレースを示すグラフである。それぞれのゼオライトの炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤は、上記の図19で提供されたコードを使用して製造される。評価圧力の範囲は、約0〜約40バールである。評価温度は、298Kに維持される。それぞれの等温線トレースの終端に提供された値は、「CH貯蔵」値である。図19に示されるように、大結晶ゼオライトを使用しないCaX−823−9H4Hからのメタン微孔性カーボン吸着剤は、重量基準で最も大きいメタン貯蔵値を有する。より高いCVD温度で後熱処理のないゼオライトの炭素テンプレート−CaX−1023−2−は、メタン微孔性カーボン吸着剤と比較して40バールの圧力において比較的減少したメタン貯蔵値を有する。
【0143】
表5は、ゼオライトの炭素テンプレート、5種のメタン微孔性カーボン吸着剤および2種の周知の商用活性炭吸着剤の貯蔵特性を示す。「Maxsorb(登録商標)3000」(関西熱化学株式会社;日本)は、水酸化カリウム(KOH)の溶液への暴露によって活性化される炭素材料(約3000m/g)である。「SRD−08016」は、Chemviron Carbon (Feluy,Belgium)から供給された活性化粉末炭素材料である。
【表5】
表5:いくつかの商用活性炭材料、ゼオライトの炭素テンプレートおよびいくつかのメタン微孔性カーボン吸着剤の細孔構造および表面積特性、ならびに決定されたメタン吸着特性。[1]充填密度に基づいて計算された送達されたCHの量。[2]タップ密度に基づいて計算された送達されたCHの量。
【0144】
図20a〜bは、カルシウムイオン置換Xゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。図20aは、NaXカルシウムイオン置換ゼオライト(CaX)を使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のSEMである。図20bは、LNaXカルシウムイオン置換ゼオライト(LCaX)を使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のSEMである。この吸着剤の一実施形態において、形状は、8μm〜20μmの範囲の中央端の長さと直交する。両方の図20a〜bが示す通り、NaXおよびLNaXゼオライト中のCa2+のイオン交換は、CaXおよびLCaXから形成された、結果のメタン微孔性カーボン吸着剤の八面体粒子形態学に影響を与えなかった。その代わりに、犠牲的結晶質ゼオライトのネガティブレプリカであることは「マクロ」レベルで見える。
【0145】
表5は、Maxsorb(登録商標)、ゼオライトの炭素テンプレートおよび5種のメタン微孔性カーボン吸着剤が、1バールにおいてCHの約10重量%〜約12重量%の残渣量の範囲にメタンの量を維持することを示す。「送達CH」量は、1バールおよび40バールの間のサイクルの間に吸着され、そして放出されるメタンの量を表し、そして40バールで検出された吸着量から1バールで検出された吸着量を差し引くことによって決定される。
【0146】
充填およびタップ密度の両方が、メタン微孔性カーボン吸着剤の体積測定CH吸着量を計算するために使用される。表5に示される5種のメタン微孔性カーボン吸着剤およびゼオライトの炭素テンプレートは、重量測定基準で類似のメタン吸着量を示すが(図19)、決定された体積測定値は、充填およびタップ密度における偏差のため、異なっている。偏差は、タップ密度においてより有意であるように見える。理論によって制限される意図はないが、大きい犠牲的ゼオライト粒子(LCaXシリーズ)から形成されるメタン微孔性カーボン吸着剤は、より小さい犠牲的ゼオライト粒子(CaXシリーズ)から形成された材料よりも大きい全メタン吸着体積能を示す。したがって、ガス体積基準で、LCaXは、減少した体積密度においてさえ、CaX形成メタン微孔性カーボン吸着剤およびゼオライトの炭素テンプレートよりも大きいメタン吸着を提供するメタン微孔性カーボン吸着剤を形成した。
【0147】
表5によれば、LCaX−823−9H4HおよびLCaX−873−4H4Hを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、Maxsorb(登録商標)3000と比較して、充填密度およびタップ密度のいずれを基準としても、約10体積%〜約20体積%の範囲の、より大きいメタン吸着体積能を有する。
【0148】
商用NaXゼオライトのネガティブ炭素レプリカの形成
表1は、商用銘柄NaXゼオライトが、イオン交換CaXゼオライトより低い熱安定性(Tinit)を有することを示し、そして表1に関する議論は、NaXゼオライトがメタン微孔性カーボン吸着剤を形成するためには不適切であり得ることを示す。しかしながら、900K未満のCVD温度を有する連続炭素合成法を使用することによって、この仮定を再検討する機会が提供される。表6は、2種のメタン微孔性カーボン吸着剤を示す:1種は、CaXゼオライトから製造されたものであり、かつもう1種は、NaXゼオライトでから製造されたものである。
【表6】
表6:商用銘柄サイズNaXおよびCaXゼオライトから形成された2種のメタン微孔性カーボン吸着剤の細孔構造および表面積特性。[1]Brunauer−Emmett−Teller(BET)比表面積。[2]D−R式を使用して計算されたミクロ細孔体積(Vmicro)。
【0149】
CVD後の熱処理は、NaXゼオライトにおいて1123Kで4時間、2回実行される。理論によって制限されることを望まないが、NaXゼオライトフレーム構造が損なわれずに残り、かつ分解しないように、CVD後のNaXゼオライト内の析出された炭素構造は、CVDプロセス後の熱処理間でさえも、炭素−NaXゼオライト複合材を支持するために十分な強度を有すると思われる。NaXゼオライトのミクロ構造中および間の連結された熱処理された炭素は、ゼオライト構造を内部で安定化させるが、炭素は、CVD後の処理プロセス間により高密度になる。表6は、NaXゼオライトからのメタン微孔性カーボン吸着剤が、当業者が「優れた吸着剤」(≧3000m/g)として記載し得る3000m/g BET比表面積値に非常に近いことを示す。
【0150】
表1〜6および図2〜22に示すデータに基づいて、メタン微孔性カーボン吸着剤の一実施形態において、BET比表面積は、約2500m/g〜約3100m/gの範囲にある。吸着剤の一実施形態において、ミクロ細孔体積は、Dubinin−Radushkevich式によって決定されるように、0.95cm/g〜1.19cm/gの範囲にある。吸着剤の一実施形態において、ミクロ細孔対メソ細孔体積比は、4〜6の範囲である。吸着剤の一実施形態において、貯蔵メタン値は、172mg/g〜192mg/gの範囲にある。吸着剤の一実施形態において、メタン送達値は、1バール〜40バールの圧力範囲において、152mg/g〜171mg/gの範囲にある。
【0151】
図21および22は、表6に示されたメタン微孔性カーボン吸着剤の両種類の分析を示す。図21は、CaXおよびNaXゼオライトから形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。両メタン微孔性カーボン吸着剤は、I型N吸着−脱着等温線を示す。図22は、図21に示される窒素吸着−脱着等温線データにおいて非局在密度関数理論(NLDFT)演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。図22中、明瞭性のため、NaX−823−4H2Hのトレースは、dVの固定値(cm/g)によってオフセットされることに留意されたい。実際、これらのトレースは、W=0において同様の値を有する。NaX−823−4H2Hのトレースは、0.25cm/gによってオフセットされる。実際、全トレースは、2θ=0において同一値を有する。図22は、NaXゼオライトから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤が、約1nm〜約2nmの細孔幅の範囲で強いスパイクを有することを示す。NaXゼオライトを使用するメタン微孔性カーボン吸着剤のためのミクロ細孔:メソ細孔体積比は約5.13であり、これは、表3に示され、かつ上記されたCaXおよびLCaXから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の範囲内にある。
【0152】
図23a〜bは、ナトリウムXゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。図23aは、商用銘柄サイズのNaXゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のSEMである。図23bは、LNaXゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のSEMである。ゼオライト材料のサイズの差異は、八面体粒子形態学に影響を与えない。図6a〜cと図23a〜bとを比較することにおいて、サイズの変化が、八面体の形状、またはメタン微孔性カーボン吸着剤を形成するための有機前駆体の吸着能に影響を与えないことを観察することができる。
【0153】
商用銘柄サイズNaXゼオライトを使用する、メタン微孔性カーボン吸着剤の規模調整された合成
図2に示された回転式管状炉は、商用銘柄NaXゼオライトから1〜5グラムより多い量でメタン微孔性カーボン吸着剤の規模調整された合成を行なうために使用される。商用銘柄NaXゼオライトのサイズは、中央端の長さが約2μmである。約50グラムの商用銘柄サイズNaXゼオライトおよび約50グラムの浄化された海砂(脱イオン水で洗浄され、約15〜約20メッシュの粒子サイズ)を、管状炉の中心に位置する円筒状ステンレススチール容器中に導入する。海砂は、固体混合を補助するため、そしてNaXゼオライトが炭素蒸気析出および熱処理の間に密着することを阻止するために使用される。円筒状容器は、アルゴン(非反応性ガス)でパージされ、円筒状容器を回転させ、そして円筒状容器内の温度は823Kまで上昇する。容器を回転させると、NaXゼオライトおよび海砂粒子は、互いのみならず、円筒状容器の内部バッフルにも衝突し、数秒ごとに円筒状容器内に含有される雰囲気を通してゼオライト結晶を落下させる。823Kの第1のCVD温度に達すると、アルゴン(Ar)中4体積%のアセチレンの混合物である有機前駆体ガスは、約1000mL/分のフロー速度で円筒状ステンレススチール容器中に導入され、そして約7時間の第1のCVD期間維持される。第1のCVD期間が経過後、導入されたガスは、アセチレン/Arガス混合物から純粋なArに切り替えられ、これは、500mL/分の速度で導入される。温度を1123KのCVD後の熱処理温度まで上昇させ、そして約3時間、その熱処理条件に維持する。3時間のCVD後の熱処理後、円筒状容器を823Kに達するまで、Arフロー下、部分的に冷却させる。823Kの第2のCVD温度に達したら、Ar中4体積%のアセチレンの有機ガス混合物を約1000mL/分のフロー速度で円筒状ステンレススチール容器中に再導入し、そしてその速度で約4時間の第2のCVD期間維持する。第2のCVD期間が経過後、導入されたガスは、アセチレン/Arガス混合物の有機前駆体ガスから純粋なArに切り替えられ、これは、500mL/分の速度で導入される。温度を、第2のCVD後の熱処理のための1123Kの第2の熱処理温度まで上昇させ、そして3時間、その処理温度に維持する。3時間の第2のCVD後の熱処理後、円筒状容器を室温に達するまで、Arフロー下、冷却させる。室温に達したら、回転円筒を停止し、そして熱処理された炭素−ゼオライト複合材を回収する。熱処理された炭素−ゼオライト複合材を、ふるいを使用して海砂から分離し、そしてNaXゼオライトを、以前にHCl/HFを含有する水性強鉱酸混合物を使用して、熱処理された炭素−ゼオライト複合材から分離する。回収されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、表面および細孔特性、ならびに比較用等温情報に関して試験される。
【表7】
表7:商用銘柄サイズNaX(1グラム)および商用銘柄サイズNaXからの規模調整された合成(50グラム)からの2種のメタン微孔性カーボン吸着剤の細孔構造および表面積特性。Brunauer−Emmett−Teller(BET)比表面積。[2]D−R式を使用して計算されたミクロ細孔体積(Vmicro)。
【0154】
図24は、NaXおよび大量生産されたNaXメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。表7に示されるように、プラグフロー反応器において1gのNaXゼオライトを使用して合成されたメタン微孔性カーボン吸着剤(NaX−823−4H2H)に対し、規模調整された合成プロセス(50グラムのNaXゼオライト)において合成されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、表面積およびミクロ細孔体積においてわずかな減少のみを示す。
図1
図2
図3
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図5
図6
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