【実施例】
【0098】
いくつかの実験によって、商用銘柄および大結晶質ゼオライトからのメタン微孔性カーボン吸着剤の形成が示される。有用なメタン微孔性カーボン吸着剤は、種々の結晶質ゼオライト、有機前駆体、CVD温度および期間ならびにCVD後の処理温度および期間を使用して製造される。有用な材料が多様であることから、比較的高い表面積およびミクロ細孔体積のメタン微孔性カーボン吸着剤を形成することにおいて、連続炭素合成法が汎用的であることがわかる。
【0099】
大結晶NaXゼオライト(Si:Al=1.35〜1.45)の合成
本実験は、(1〜2μmの商用銘柄サイズに対して)「大」結晶NaXゼオライトの形成を示す。メタン微孔性カーボン吸着剤を形成するために、大NaXゼオライトは、犠牲的フレーム構造として作用するために有用である。本方法の一実施形態において、本方法は、結晶質ゼオライトを形成するステップをさらに含んでなる。
【0100】
本方法の一実施形態において、結晶質ゼオライトは、トリエタノールアミン(TEA)を含んでなる。大結晶NaXゼオライトは、ゼオライト合成ゲル中にTEAを添加することによって合成される。Na
2SiO
3・5H
2Oおよびアルミン酸ナトリウム(55%Al
2O
3および45%Na
2O)が、それぞれ、シリカおよびアルミナ前駆体として使用される。TEAは、アルミニウムカチオンに対する錯化剤である。TEAの存在は、結晶の成長プロセスと比較して、ゼオライト結晶の核形成を遅らせる可能性があり、含まれる場合より大きい結晶をもたらす。得られるゲル組成物は、約4.76 Na
2O:1.0 Al
2O
3:3.5 SiO
2:454 H
2O:n TEAの分子比にあり、nは3つの異なる試験ゲルを形成する3つの値:約3、5および7で変動する。それぞれの得られた反応生成物試験ゲルは、ポリプロピレンボトルに移され、そして72時間、373K(ケルビン)で水熱的に結晶化される。それぞれの大NaXゼオライト生成物は、ろ過によって回収されて、そして373Kで乾燥される。
【0101】
図5は、合成された大NaXゼオライトのそれぞれのX線回折(XRD)分析のトレースを示すグラフである。
図5中、明瞭性のため、NaX−7TEAおよびNaX−5TEAの個々のトレースは、1秒あたりのカウント(CPS)の強度の固定値によってオフセットされることに留意されたい。実際、全3つのトレースは、2θ=0において同一値を有する。NaX−5TEAに関するトレースは、6700cpsによってオフセットされ、NaX−7TEAに関するトレースは、12000cpsによってオフセットされる。それぞれの大NaXゼオライトのXRD分析によって、TEA(n=3)によって製造されたNaXゼオライトが、従来のNaXゼオライトのものと対応するXRDトレース「ピーク」を有する唯一の大NaXゼオライトであることが示される。他の不純物相のピークは、このゼオライトで観察されない。それと対照的に、TEA(n=5、7)で製造された大NaXゼオライトは、NaXゼオライト相ピークを補う「P」ゼオライト(GIS相)に対応するXRDトレースピークを示す(矢印
図5参照)。この結果は、ゲル組成物の一部として、より少ないTEAを使用することによって、化合物のより大きい量よりも、大結晶NaXゼオライトを形成するために有用であることを示す。
【0102】
図6a〜cは、TEAを使用する、それぞれの合成された大NaXゼオライトの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。このSEM顕微鏡写真は、ゼオライトフレーム構造のサイズを明らかにする。
図6a〜cは、全て、八面体の中央端の長さが約8μm(マイクロメートルまたはミクロン)〜約20μmであるように、NaXゼオライト(幾何構造においてほぼ八面体−FAU)の典型的な直交結晶モフォロジーを有するが、結晶サイズ分布(顕微鏡写真
図6a〜cの左部分)を有する、TEAを使用して製造された大NaXゼオライトを示す。本方法の一実施形態において、結晶質ゼオライトは、8μm〜20μmの範囲の中央端の長さと直交する形状を有する。顕微鏡写真
図6aの右部分の接近写真画像の中央の結晶は、約14.9μmの八面体の中央端の長さを有する結晶質ゼオライトを示す。TEA(n=5)である、顕微鏡写真
図6bの右部分の接近写真画像の中央の結晶は、約11.8μmの八面体の中央端の長さを有する結晶質ゼオライトを示す。TEA(n=7)である、顕微鏡写真
図6cの右部分の接近写真画像の中央の結晶は、約9.68μmの八面体の中央端の長さを有する結晶質ゼオライトを示す。顕微鏡写真
図6b〜c(TEA(それぞれ、n=5、7))の左部分は、両方とも、統合したPおよびX結晶質ゼオライトの組合せを示すことに留意されたい(
図6b〜cの矢印を参照のこと)。TEA(n=3)を使用する大NaXゼオライトは、そのようなPおよびXゼオライトの組合せの群を示さないように見える。
【0103】
NaXゼオライトのカルシウムイオン交換
本方法の一実施形態において、結晶質ゼオライトを形成するステップは、第2のイオン交換された結晶質ゼオライトを形成するために、カルシウムイオンで第1の結晶質ゼオライトをイオン交換することを含む。カルシウムXゼオライト(CaX)は、ナトリウムイオンをカルシウムイオンと交換することによって、商用銘柄NaXゼオライト(以前に形成された大結晶NaXではない)によるイオン交換によって調製される。商用銘柄NaXゼオライトは、約1〜約2μmの範囲の中央端の八面体長さを有する小結晶である。結果として生じるCaXゼオライトは、ほぼ同一サイズである。
【0104】
約10g(グラム)の商用銘柄NaXを、約4時間、イオン交換を実行するために、200mL(ミリリットル)の0.32M(モル)Ca(NO
3)
2(硝酸カルシウム)溶液中で一定に攪拌する。
【0105】
図7は、イオン交換CaXゼオライトおよび商用銘柄NaXゼオライトのNH
3(アンモニア)温度プログラム脱着(TPD)プロフィールのトレースを示すグラフである。
図7は、Ca
2+イオンによるNaXゼオライトのイオン交換によって、ゼオライトミクロ細孔内の選択的炭素析出を促進する酸部位が生成されることを示す。これらのミクロ細孔は、炭化水素小分子に向けられる。イオン交換されたCaXゼオライトは、2種の酸部位の存在を示す473Kおよび653Kにおける2つの脱着ピークを示す。それと対照的に、商用銘柄NaXゼオライトは、脱着プロフィールを示さず、酸部位がないことを示す。
【0106】
CaXゼオライトは、安定性も増加したように見える。表1は、商用銘柄NaXゼオライトとカルシウムイオン交換されたXゼオライトの熱安定性を比較する。
【表1】
表1 NaXおよびイオン交換されたCaX結晶ゼオライトの熱安定性。[1]ゼオライト中の交換カチオンの当量分率。[2]X線粉末パターンから構造的分解が最初に観察される温度(K)。[3]構造が50%分解する温度(K)。
【0107】
表1は、T
initおよびT
0.5の両方における相対的な増加に見られるように、カルシウムイオン交換されたXゼオライト(CaX)の熱安定性の増加を示す。これは、NaXゼオライト以上に、CaXイオン交換ゼオライトを使用してCVDを実行することに関して有利である。CaXゼオライトの結晶化度は、973Kでさえ変化せず、これはCVD温度が約873K〜約973Kの範囲にある場合に有用である。
【0108】
CaXゼオライト内の炭素析出
炭素蒸着(CVD)は、プラグフロー反応器を使用して行なわれる。約1グラムのゼオライト(商用銘柄NaXゼオライト、以前に製造されたイオン交換されたCaXゼオライト)を、プラグフロー反応器に配置する。温度は、連続的なヘリウム流の下、CVD温度まで、制御された段階的な様式で、反応器内で増加する。CVD温度で約30分間の安定後、ヘリウムガスを、ヘリウムおよび有機前駆体の組合せである有機前駆体ガスに切り替える。
【0109】
3種の異なる有機前駆体が、CVD用の3種の有機前駆体ガスを試験するために使用される:プロピレン、エタノールおよびアセチレン。プロピレンおよびエタノールの両方の動的径は0.45nmであり、そしてアセチレンは0.33nmである。有機前駆体としてプロピレンを導入するために、有機前駆体ガスは、He混合物中2体積%のプロピレンの組成を有する。エタノールを導入するために、有機前駆体ガスは、エタノール飽和ヘリウムの組成(室温;6kPaの圧力)を有する。バブラーを使用して液体エタノールを通してヘリウムを導入し、飽和ガス混合物を形成する。アセチレンを導入するために、有機前駆体ガスは、He混合物中2体積%のアセチレンの組成を有する。それぞれの有機前駆体ガスは、ゼオライト1グラムあたり約200mL/分のマスフロー速度で、それぞれのゼオライト試料に導入される。有機前駆体ガスは導入されて、CVD期間、そのマスフロー速度に維持され、そのCVD期間中、有機前駆体がCVD温度においてゼオライトに吸着し、その内部で炭化して、炭素−ゼオライト複合材を形成する。CVD期間が経過した後、導入された有機前駆体ガスは、非反応性ガス(純粋なヘリウム)に変えられ、そしてプラグフロー反応器は室温まで冷却される。
【0110】
それぞれの結果の炭素−ゼオライト複合材は、3.4重量%のHClおよび3.3重量%のHFを含んでなる水性強鉱酸混合物で処理される。結果の炭素−ゼオライト複合材は、1時間、室温で2回、水性強鉱酸混合物に暴露される。得られたゼオライトの炭素テンプレート−ゼオライトのネガティブレプリカ−は、ろ過されて、脱イオン水で洗浄され、そして373Kで一晩乾燥させる。
【0111】
CaXゼオライトを使用するゼオライトの炭素テンプレートの形成に対する有機前駆体の影響
2種の異なる有機前駆体−プロピレンおよびエタノールは、ゼオライトのいくつかの炭素テンプレートを形成するために、異なるCVD温度で適用される。この実験において、次の呼称コードは、ゼオライトのそれぞれの炭素テンプレートを製造するために使用されるプロセスを示す:「ゼオライトテンプレート−CVD温度/有機前駆体/CVD時間熱処理」、ここで「ゼオライトテンプレート」は、使用されたゼオライトテンプレートのイオンおよび種類(NaX、CaX)である。「CVD温度」は、4時間の有機前駆体導入に対してKで表したものである。「有機前駆体」は、プロピレン(「P」)、エタノール(「E」)およびアセチレン(「A」)から選択される。「CVD時間熱処理」は、時間単位での1123KにおけるCVD後の熱処理の長さを示す。例えば、「CaX−973P5」は、5時間のCVD期間、プロピレンを含有する有機前駆体ガスを導入する、973KのCVD温度におけるCaXゼオライトテンプレートを意味する。
【0112】
図8は、CaXゼオライトを使用して製造されたゼオライトのいくつかの炭素テンプレートのXRD分析のトレースを示すグラフである。ゼオライトの3種の炭素テンプレート:CaX−1073E6、CaX−973E6およびCaX−973P5が形成される。
図8中、明瞭性のため、CaX−1073E6およびCaX−973E6の個々のトレースは、CPSの強度の固定値によってオフセットされることに留意されたい。実際、全3つのトレースは、2θ=0において同様の値を有する。CaX−973E6に関するトレースは、10000cpsによってオフセットされ、CaX−1073E6に関するトレースは、15000cpsによってオフセットされる。
図8に示されるゼオライトの全3種の炭素テンプレートのXRDパターンは、約5°〜約6°の範囲の2θ付近の幅広いピークを示す。この2θ値における幅広いピークは、ゼオライトの全3種の炭素テンプレートが、規則的であり、かつ一定の構造的ミクロ細孔配列を有することを示す。2θ=5〜6°範囲における鋭いピークは、ゼオライトの炭素テンプレートが、平面積層Xゼオライト(「FAU」ゼオライト構造としても知られる)の構造的規則性(111)と一致するマイクロフォームで規則性を有することを示す。これは、それぞれのゼオライトの炭素テンプレートが、犠牲的ゼオライトのミクロ細孔構造をネガティブ複製することを示唆する。ゼオライトの3種の炭素テンプレートのうち、CaX−973P5から形成したネガティブレプリカは、2θ=5〜6°において最も強く、かつ最大の分離ピークを示す。ゼオライトの他の2種の炭素テンプレートと比較して強いピークは、CaX−973P5によって形成されたネガティブレプリカが、そのゼオライトを最も正確な表すものであることを示す。
【0113】
ガス吸着研究の当業者は、炭素−ゼオライト複合材、ゼオライトの炭素テンプレート、ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤の表面特性を決定するためのいくつかの異なる試験手順があることを理解し、認識する。Wangらによる論文、「Experimental and Theoretical Study of Methane Adsorption on Granular Activate Carbons」,AIChE Journal 782−788(Vol.58,Issue 3)(“Wang”)には、窒素吸着−脱着等温線を決定するために77Kにおける窒素空孔率測定を使用して、吸着剤材料を特徴決定するためのプロセスおよび装置が記載されている。BET(Brunauer−Emmett−Teller)分析によって、等温試験の間の相対的な窒素圧力の変化の関数(P/P
0)としてのゼオライトの炭素テンプレートの比表面積が提供される。D−R(Dubinin−Radushkevich)等式では、細孔の直径が、吸着される分子の作用直径に近い場合、分子積層機構に基づくゼオライトの炭素テンプレートに存在するそれぞれの種類の細孔(ミクロ細孔およびメソ細孔)の体積、そして直径が類似しない場合、細孔内の表面吸着を決定するために、相対的な窒素圧力が使用される。
【0114】
図9は、ゼオライトの炭素テンプレートの窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。全3種のトレースの明瞭性のため、P/P
0=0において、CaX−973E6の等温線トレースは、200cm
3/gの追加の吸着量によってオフセットされ、CaX−1073E6の等温線トレースは、250cm
3/gの追加の吸着量によってオフセットされることに留意されたい。CaX−973P5から形成されたゼオライトの炭素テンプレートは、吸着−脱着等温線の戻り部分における最少の偏差を示すのに対して、CaX−1073E6は最大を示す。この偏差は、ゼオライトのCaX−1073E6炭素テンプレート対ゼオライトのCaX−973P5炭素テンプレートにおいて、より大きい量のメソ細孔体積を示し得る。
【0115】
図10は、
図9に示される窒素吸着−脱着等温線データにおいて非局在密度関数理論(NLDFT)演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。
図10中、明瞭性のため、ゼオライトのCaX−1073E6およびCaX−973E6炭素テンプレートの個々のトレースは、1グラムあたりセンチメートルでのdV
pの固定値(cm
3/g)によってオフセットされることに留意されたい。実際、全3つのトレースは、W=0nmにおいて同様の値を有する。CaX−973E6のトレースは、0.16cm
3/gによってオフセットされ、CaX−1073E6のトレースは、0.26cm
3/gによってオフセットされる。
図10は、CaXゼオライトから形成されたゼオライトの全3つの炭素テンプレートが(直径約1.5〜2nmの)ミクロ細孔および(直径約2〜5nmの)メソ細孔の両方を有する二重気孔率を有することを示す。水素は2.89Åの動的径を有し、かつメタンは3.8Åの動的径を有する。CaX−973P5から製造されたゼオライトの炭素テンプレートのトレースは、それが最大の全ミクロ細孔体積を有することを示す。CaX−1073E6から製造されたゼオライトの炭素テンプレートのトレースは、最大の全メソ細孔体積を示す。
【0116】
表2は、アセチレンから形成されたゼオライトの炭素テンプレート:CaX−1023A2に加えて、CaXから製造されたゼオライトの全3種の炭素テンプレートにおける表面積、ならびにミクロ細孔およびメソ細孔体積データを提供する。
図9および10に示されるように、そして表2に示されるように、ゼオライトの4種の炭素テンプレートは、二重気孔率(メソ細孔およびミクロ細孔の両方)を有する。CaXゼオライトのみが微孔性構造を有し、したがって、約0.40cm
3/gより高いレベルにおけるメソ細孔の存在は、ゼオライトの望ましくないネガティブ複製を示す。メソ細孔の存在は、細孔構造のより適切に規格化されていない複製を導く有機前駆体によるゼオライトミクロ細孔の不完全充填を示す。
【表2】
表2:商用銘柄サイズのイオン交換CaXゼオライトを使用する、ゼオライトのいくつかの炭素テンプレートの細孔構造および表面積特性。[1]Brunauer−Emmett−Teller(BET)比表面積。[2]D−R式を使用して決定されたミクロ細孔体積。
【0117】
表2中、CaX−1023A2から製造されたゼオライトの炭素テンプレートは、プロピレン(1900m
2/g)およびエタノール(平均1792m
2/g)を使用して調製されたゼオライトの炭素テンプレートよりも高い表面積(2567m
2/g)を示す。CaX−1023A2から製造されたゼオライトの炭素テンプレートは、4つの試料中で、最も高い全体細孔体積(1.37cm
3/g)、最も高いミクロ細孔体積(0.95cm
3/g)および最も高いミクロ細孔:メソ細孔体積比(2.26)を示す。CaX−973P5から製造されたゼオライトの炭素テンプレートは、同様の類似のミクロ細孔:メソ細孔体積比(2.20)を有する。
【0118】
理論に拘束されないが、
図9および10ならびに表2に示されたデータおよび決定は、有機前駆体が、大きさにかかわらず、それが最初に導入される特定の量よりも多くゼオライトミクロ細孔中に分散されることができないことを示唆する。有機前駆体分子の限定された量を吸収することができるゼオライト中のそれぞれの細孔に対して、有限の体積がある。ミクロ細孔に存在する炭素の量を最大にするために、そして(全表面積およびミクロ細孔体積の両方において)ゼオライトの表面のより良好な特徴を提供するために、有機前駆体は、ミクロ細孔中の分子数を最大にするための小さい動的径、ならびにゼオライトのそれぞれのミクロ細孔中の炭素原子数がCVDの間に最大になるように、炭素対他の原子(水素、酸素)の高い比率の両方を有するべきである。
【0119】
得られた結果は、アセチレンが、3種の有機前駆体の中で最良であり、プロピレンが接近して後に続くことを示すように見える。1023Kで2時間アセチレンを使用して合成したゼオライトの炭素テンプレートは、比較的高いBET表面積(2567m
2/g)および大きいミクロ細孔体積(約1cm
3/g)を示す。アセチレンは、メタン(0.38nm)より小さい動的径を有する(0.33nm)。アセチレンは、プロピレン(1:2)およびエタノール(1個の酸素を有する1:3)に対して、最適の炭素:水素比(1:1)を有し、かつその分子形状は、プロピレンおよびエタノールが非線形結合角を有するのに対して、線形であり、このことによって、それらの動的径がより大きくなる。
【0120】
大CaXゼオライトへのアセチレン有機前駆体の導入
アセチレンは、メタンが吸着することが可能であるいずれのミクロ細孔も占拠することが可能であるべきであるが、なおメソ細孔は、CaX−1023A2から形成されたゼオライトの炭素テンプレートにおいて形成されていた。加えて、大Xゼオライトテンプレートの使用は、ゼオライトを通して、より長い拡散時間を必要とし得る。大量の結晶質ゼオライト(>1g)は、大小にかかわらず、ゼオライト粒子が互いに接触し、そしてそれぞれの構造に蒸気が到達する点を抑制して、それぞれのゼオライト中に拡散する機会を最大にする技術を必要とし得る。より高いCVD温度(1023K)の使用によって、犠牲的ゼオライト中への完全拡散の前に、アセチレンによって炭素の早期析出をもたらし得る。アセチレンの2個の炭素原子間の三重結合はすでに、二重結合化合物と比較して、放出および反応の促進が非常に容易な結合エネルギーの有意な量を含む。大結晶ゼオライトまたはより小さいゼオライトが一緒に充填された床との組合せにおいて、結晶質ゼオライトの炭素ネガティブレプリカの形成を支持するためのより高いCVD温度において適切な拡散期間がないかもしれない。
【0121】
より低いCVD温度でアセチレンを導入および炭化し、次いで、CVD温度より高いが、グラファイト化が生じる温度(+2000℃)より低い温度で、析出された炭素の熱処理する方法は、ゼオライトが除去される前に、犠牲的ゼオライトのミクロ細孔内および表面上で、緩い炭素を、相互結合した炭素マトリックス)に変換することによって、堆積させられた炭素の密度を増加させる。低温アセチレンCVD(≦873K)は、ゼオライト内で炭素を析出させ、ゼオライトの炭素テンプレートを形成する。1000K未満および900K未満のより低いCVD温度において、炭素析出は、犠牲的ゼオライト全体への浸透の前に炭化を防ぐことによって、より高いCVD温度におけるよりも均一に生じるべきである。非反応性ガス雰囲気における、より高い温度(約1123K)でのゼオライトの炭素テンプレートの熱処理によって、炭素−ゼオライト複合材内の析出された炭素を脱水素化し、そして炭素−炭素結合の量が増加して、ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートのより強く、かつより高密度の複合構造が形成される。
【0122】
この実験において、次の呼称コードは、ゼオライトのそれぞれの炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤を製造するために使用されるプロセスを示す:「ゼオライトテンプレート−CVD温度−CVD時間熱処理」、ここで「ゼオライトテンプレート」は、テンプレートゼオライトの一部として使用されたイオン(Na、Ca)である。「CVD温度」は、4時間の有機前駆体導入に対してKで表したものである。「CVD時間熱処理」は、時間単位での1123KにおけるCVD後の熱処理の長さを示す。第2の「H」が存在する場合、これは、有機前駆体付加およびCVD後の熱処理が繰り返されることを示す。「L」が「ゼオライトテンプレート」の前に存在する場合、それは、ゼオライトテンプレートが、商用銘柄サイズ(1〜2μm)のNaXまたは同サイズのイオン交換CaXゼオライトを使用する代わりに、上記されたTEA(n=3)で合成された大結晶Xゼオライトであることを示す。例えば、「LCaX−873−4H」は、メタン微孔性カーボン吸着剤が、4時間のCVD期間、873KのCVD温度でアセチレンを用いて大CaXゼオライトを使用して合成され、次いで、1123Kで4時間、CVD後の熱処理されたことを示す。「LCaX−873−4H4H」試料は、同様に合成されたメタン微孔性カーボン吸着剤であるが、アセチレンCVD適用温度および期間ならびにCVD後の熱処理が、2回、類似条件下で繰り返される。
【0123】
表3は、いくつかの異なるCVDおよびCVD後の熱処理下、大CaXゼオライトを使用して製造された、いくつかのゼオライトの炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤の構造特性を示す。アセチレンは、全ての試験に関して有機前駆体である。
【表3】
表3:大結晶イオン交換CaX(LCaX)ゼオライトを使用して形成された、いくつかのゼオライトの炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤の細孔構造および表面積特性。[1]Brunauer−Emmett−Teller(BET)比表面積。[2]D−R式を使用して計算されたミクロ細孔体積(V
micro)。[3]1グラムのゼオライトがアセチレンCVDに使用された。[4]5グラムのゼオライトがアセチレンCVDに使用された。
【0124】
表3中の1、3および4の番号を付けられた試料は、大結晶ゼオライトを使用するメタン微孔性カーボン吸着剤の商用製造に及ぼす影響を有し得る、製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤に対するいくつかの興味深い影響を示す。ゼオライトの3種の上記炭素テンプレートは、比較的より高いCVD温度が、より低いCVD温度よりも大きい全BET比表面積およびミクロ細孔体積の両方を入手するのに有用であることを示す。ゼオライトの試料番号4(LCaX−873−4)炭素テンプレートは、追加量のCVD期間(2または3に対して4時間)を用いるが、試料1および3と比較して、減少したBET表面積およびミクロ気孔率を有する。理論によって制限されることを望まないが、LCaX−873−4を使用して形成されたゼオライトの炭素テンプレートは、4時間のCVD期間、873KのCVD温度で十分に相互結合しなかったと思われる。これは、ゼオライトミクロ細孔が、いくらかの結合を有するが、有意に交錯した3次元(3−D)構造ではない、析出された炭素によって完全充填されていることを示す。水性強鉱酸混合物を使用する犠牲的ゼオライトの除去において、ゼオライト構造の結果の炭素テンプレートは崩壊して、そしてさもなければ、構造化された吸着剤として使用不可能となった。
【0125】
同じ作業を実行し、ゼオライトフレーム構造の除去前に、ヘリウム雰囲気下で1123Kにおいて4時間のCVD後の熱処理を追加することによって(LCaX−873−4H、試料番号5)、メタン微孔性カーボン吸着剤の表面積がゼオライトの炭素テンプレートの3.6倍改善するのみならず、ミクロ細孔体積も試料番号4に対して3.4倍増加する。これらの発見は予想外であって、そして開示されるようにさらに調査された。
【0126】
表3は、CVD後の熱処理(試料番号5)によって、または減少したCVD温度(<900K)を使用する場合に別のCVD後の熱処理による第2のCVD処理(試料番号6〜9)によってのいずれかでの、炭素−ゼオライト複合材の追加のCVD後の熱処理が、犠牲的大結晶ゼオライトを崩壊させずに除去するための適切な構造保全を有するメタン微孔性カーボン吸着剤中の高度微孔性構造を提供することを示す。
【0127】
表3からメタン微孔性カーボン吸着剤試料番号6〜8の結果を、メタン微孔性カーボン吸着剤試料番号5と比較すると、BET比表面積およびミクロ細孔体積を比較的維持しながら、試料番号6〜8のメソ細孔体積の減少がある。試料番号6〜8は、約4.7〜約6.5の範囲のミクロ細孔:メソ細孔体積比を有し、これは、試料番号5の約2.5の体積比に対して改善である。試料番号6(LCaX−873−4H4H)は、ゼオライトテンプレートの除去の前に、第2のアセチレンCVD/CVD後の熱処理サイクルを実行したのみであるが、試料番号5(LCaX−873−4H;0.45cm
3/g)と比較して、減少したメソ細孔体積(0.23cm
3/g)を有する。
【0128】
メタン微孔性カーボン吸着剤試料番号5、LCaX−873−4Hは、ゼオライトの炭素テンプレート試料番号1(LCaX−1023−2)よりも大きい表面積(3049m
2/g)、ミクロ細孔体積(1.12cm
2/g)およびミクロ細孔:メソ細孔体積比(2.49)を有する。比較すると、これは、低いCVD温度、CVD期間の延長およびCVD後の熱処理の適用によって、大ゼオライトの改善されたネガティブレプリカがもたらされることを示す。LCaX−873−4Hのメタン微孔性カーボン吸着剤は、全ての試料の中で最も大きい全細孔体積(1.57cm
3/g)を示す。
【0129】
この結果は、炭素を熱的に析出する前の有機前駆体によるゼオライトミクロ細孔の不完全な充填は、ゼオライトの炭素テンプレートにおけるメソ細孔の形成を導くことを示す。連続炭素合成法は、使用されたゼオライト量(すなわち、床厚さ)にかかわらず、メタン微孔性カーボン吸着剤を製造および複製する信頼できる手段を可能にする。それぞれ1グラムおよび5グラムの材料を使用する、試料番号6および7を比較されたい。
【0130】
823KまでアセチレンCVD温度を減少させ、第1のCVD期間を延ばすことによって、BET表面積およびミクロ細孔体積がわずかに増加したメタン微孔性カーボン吸着剤が合成される(試料番号8;LCaX−823−9H4H)。メタン微孔性カーボン吸着剤試料番号5〜8は、約800K〜約900Kの範囲のCVD温度によって、少量の大CaXゼオライトのみならず、犠牲的ゼオライト(試料番号7および8)の層状床中へのアセチレンの分散および炭化の両方の適切な組合せを提供することを示す。限定されたより低い温度範囲内でCVD期間を延長することは、BET比表面積およびミクロ細孔:メソ細孔比を改善するように見える。理論によって制限されるよう意図しないが、アセチレンは、細孔構造中により完全に浸透し、第1の熱処理サイクルの前にゼオライトの第1の炭素テンプレートを形成すると思われる。アセチレンを使用して、773K未満のCVD温度において、ゼオライトの炭素テンプレートは炭素−ゼオライト複合材内に形成するが、このプロセスは、商用メタン微孔性カーボン吸着剤製造においては実際的でないCVD期間を必要とする。
【0131】
図11は、LCaXゼオライト、炭素−ゼオライト複合材、熱処理された炭素−ゼオライト複合材および結果のメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。LCaXゼオライト、試料4の炭素−ゼオライト複合材、試料5の熱処理された炭素−ゼオライトおよび試料6であるメタン微孔性カーボン吸着剤のための等温線が表される。窒素等温線は、炭化および熱処理プロセスに沿って異なる点で実行される。初期の大CaXゼオライトを除き、すなわち、アセチレンを使用する炭素析出の前、熱処理の前および後の両方で、ゼオライトの炭素テンプレートはゼオライト内に維持され;ゼオライトは等温試験の間に除去されない。
【0132】
図11は、最大吸着量を有するが、完全開口ゼオライト細孔を有することが明らかである初期LCaXゼオライトを示す。試料番号4(LCaX−873−4)炭素−ゼオライト複合材は、アセチレンを使用して873KのCVD温度において4時間のCVD期間後、炭素−ゼオライト複合材の吸着能力が約80%減少することを示す(P/P
0=1において測定)。ゼオライトの細孔が炭素−ゼオライト複合材中の析出炭素によってふさがっているため、吸着量は低下する。試料番号5(LCaX−873−4H)は、ヘリウム雰囲気下で4時間、1123Kで熱処理された、熱処理された炭素−ゼオライト複合材である。このプロセスは、LCaXゼオライトミクロ細孔体積の約25%を再生したように思われる。熱処理は、熱処理された炭素−ゼオライト複合材内のゼオライトの炭素テンプレートの密度を増加するようにも思われる。ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートは、より連結した炭素−炭素構造を形成し、これは、ゼオライト内の炭素網目構造を縮小させる。これによって、より多くの窒素が、熱処理された炭素−ゼオライトテンプレート(LCaX−873−4H)に浸透することが可能となる。ゼオライトミクロ細孔の多くがCVD後の熱処理後に再生されるが(析出された炭素が脱水素化され、そして炭素−炭素結合がより広がるため、交錯炭素の網目構造が物理的に縮小する)、第2のアセチレンCVD/CVD後の熱処理サイクルが炭素−ゼオライト複合材を浸透して、そして新たに露出した、そして残りのミクロ細孔を充填する。第2のアセチレンCVD/CVD後の熱処理サイクルを行なった後、炭素−ゼオライト複合材試料番号6のミクロ細孔(LCaX−873−4H4H)は、ゼオライトの熱処理された炭素テンプレートでほとんど充填される。表3中の上記で提供されたデータを使用して、ミクロ細孔:メソ細孔体積比は、LCaX−873−4H4Hに関して4より高い。
【0133】
図12〜14は、ゼオライトテンプレートとしてLCaXおよび有機前駆体としてアセチレンを使用する、2種のメタン微孔性カーボン吸着剤およびゼオライトの2種の炭素テンプレートの分析を示す。それぞれ、5グラムのLCaXゼオライトを使用して製造される。
図12は、LCaX−1023−2およびLCaX−873−4から製造されたゼオライトの炭素テンプレートならびにLCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4Hから製造された2種のメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。
図13は、
図12に示される窒素吸着−脱着等温線データにおいて非局在密度関数理論(NLDFT)演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。
図13中、明瞭性のため、LCaX−873−4を使用するゼオライトの炭素テンプレートならびにメタン微孔性カーボン吸着剤LCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4Hの個々のトレースは、dV
pの固定値(cm
3/g)によってオフセットされることに留意されたい。実際、全4つのトレースは、W=0nmにおいて同様の値を有する。LCaX−873−4のトレースは、0.30cm
3/gによってオフセットされ、LCaX−873−4Hのトレースは、0.43cm
3/gによってオフセットされ、LCaX−873−4H4Hのトレースは、0.85cm
3/gによってオフセットされる。
図14は、LCaX−1023−2およびLCaX−873−4から製造されたゼオライトの炭素テンプレートならびにLCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4Hから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のXRD分析のトレースを示すグラフである。
図14中、明瞭性のため、LCaX−873−4、LCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4Hの個々のトレースは、CPSの強度の固定値によってオフセットされることに留意されたい。実際、全3つのトレースは、2θ=0において同様の値を有する。LCaX−873−4のトレースは、30000CPSによってオフセットされ、LCaX−873−4Hのトレースは、50000CPSによってオフセットされ、LCaX−873−4H4Hのトレースは、72000CPSによってオフセットされる。
【0134】
LCaXゼオライト構造(LCaX−873−4H4H)の最も正確なネガティブレプリカは、
図12中、古典的なI型等温線を示し、かつ減少された窒素部分圧力(P/P
0>0.1)において飽和に近付くことを示すように見える。析出された炭素がないLCaXゼオライトは、
図11中、類似のI型等温線曲線を示す。アセチレンCVD/CVD後の熱処理の単一サイクルにおいて合成されるLCaX−873−4Hによって形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、
図12中、二重サイクルLCaX−873−4H4Hメタン微孔性カーボン吸着剤よりも比較的大きい全細孔体積を示す。
図12は、LCaX−873−4Hメタン微孔性カーボン吸着剤の大量吸着がP/P
0>0.1の部分圧力の範囲で起こることを示す。
図13は、LCaX−873−4Hメタン微孔性カーボン吸着剤による増加した吸着量が、メソ細孔範囲(値>2nmにおいてトラックに沿って広がる丸形ハンプ、これはミクロ細孔の範囲外の細孔サイズを示す)における追加の細孔体積の存在のためであることを確認する。
【0135】
メタン微孔性カーボン吸着剤(LCaX−873−4HおよびLCaX−873−4H4H)は、
図13中、ミクロ細孔(W<2nm)における細孔サイズ分布における(狭い、激しい)急上昇を示す。
図14は、良好に機能するゼオライトの炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤が、高いCVD温度を有し、かつCVD後処理がない(LCaX−1023−2)か、または少なくとも1回のCVD後の熱処理サイクルを有し(LCaX−873−4H、LCaX−873−4H4H)、XRDトレースにおいて約2θ=6.3°において強度の応答を示すことを示す。LCaX−873−4H4Hからのメタン微孔性カーボン吸着剤は、この値で非常に鋭いピークを示す。これは、吸着剤が、テンプレートゼオライトと類似の規則的な微孔性構造を有することを示す(TEA(n=3)を有する大NaXゼオライトに関する
図5、商用銘柄サイズのイオン交換CaXレプリカに非常に類似の隆起に関する
図8を参照のこと)。2θ=6.3°における鋭いXRD強度ピークの存在は、犠牲的ゼオライト構造のネガティブ模写の精度(すなわち、炭素析出および熱処理の効率)を示すために有用である。
【0136】
商用BEAおよび商用銘柄サイズのCaXゼオライトからのメタン微孔性カーボン吸着剤の形成
約19のSi:Al分子比を有する、商用BEAゼオライトは、Zeolyst Int’l(Conshohocken,PA)から入手する。BEAゼオライトは、約500nm〜約1μmの範囲のサイズ分布を有する丸形粒子である。CaXゼオライト(商用銘柄サイズ(1〜2μm)Ca
+2イオン交換NaXゼオライト)も使用され、これは上記の通り製造される。それぞれのゼオライトは、類似の連続炭素合成法を受ける:9時間の第1のCVD期間、823KのCVD温度において、アセチレンを使用する第1のCVDプロセス、4時間、1123Kにおいて、ヘリウム雰囲気中での第1のCVD後の熱処理、4時間の第2のCVD期間、823KのCVD温度において、アセチレンを使用する第2のCVD、4時間、1123Kにおいて、ヘリウム雰囲気中での第2のCVD後の熱処理。犠牲的ゼオライトフレーム構造は、いくつかの水性強鉱酸混合物洗浄においてエッチング除去される。結果のメタン微孔性カーボン吸着剤を回収する。メタン微孔性カーボン吸着剤の試験を表4に示す。
【表4】
表4:BEAおよび商用銘柄サイズのCaXゼオライトから形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤の細孔構造および表面積特性。[1]Brunauer−Emmett−Teller(BET)比表面積。[2]D−R式を使用して計算されたミクロ細孔体積(V
micro)。
【0137】
図15a〜bは、BEA結晶質ゼオライトおよびBEAゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図15aは、入手されたBEAゼオライトのSEMである。
図15bは、
図15aの入手されたBEAゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のSEMである。
【0138】
表4に示される両メタン微孔性カーボン吸着剤は、高いBET比表面積(約3000m
2/g)ならびにミクロ細孔体積(約1.2cm
3/g)を示す。CaXから形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、4.21のミクロ細孔:メソ細孔体積比を有する。BEAから形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、3.84のミクロ細孔:メソ細孔体積比を有する。
【0139】
図16および17は、表4に示されるメタン微孔性カーボン吸着剤の両種類の分析を示す。
図16は、CaXおよびBEAゼオライトから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。両材料は、I型N
2吸着−脱着等温線を示す。
図17は、CaXおよびBEAゼオライトから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のXRD分析のトレースを示すグラフである。
図17中、明瞭性のため、CaX−823−9H4Hの個々のトレースは、CPSの強度の固定値によってオフセットされることに留意されたい。実際、これらのトレースは、2θ=0において同様の値を有する。CaX−823−9H4Hのトレースは、40000cpsによってオフセットされる。
図17は、低角(2θ<10°)において非常に鋭いXRDピークを示す。
図17および18の両方、ならびにミクロ細孔:メソ細孔体積比は、それぞれ、メタン微孔性カーボン吸着剤が、規則的なミクロ細孔構造で、それらの犠牲的ゼオライトのそれぞれに非常に類似したネガティブレプリカであることを示す。
【0140】
図18は、2回のアセチレンCVD/CVD後の熱処理サイクルを使用して形成した4種のメタン微孔性カーボン吸着剤に対してNLDFT演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。
図18中、明瞭性のため、CaX−823−9H4H、CaX−873−4H4HおよびLCaX−823−9H4Hの個々のトレースは、dV
pの固定値(cm
3/g)によってオフセットされることに留意されたい。実際、全4つのトレースは、W=0nmにおいて同様の値を有する。CaX−823−9H4Hのトレースは、0.22cm
3/gによってオフセットされ、CaX−873−4H4Hのトレースは、0.50cm
3/gによってオフセットされ、LCaX−823−9H4Hのトレースは、0.90cm
3/gによってオフセットされる。
図18は、3種の異なる犠牲的ゼオライト、2種の異なるCVD温度および2種の異なる第1のCVD期間を使用する4種の異なるネガティブレプリカを示す。
図18は、全4つの方法が、異なる小細孔ゼオライト、CVD温度およびCVD期間にもかかわらず、ミクロ細孔範囲の非常に狭い細孔サイズ分布を示すことを明示する。
図18は、これらのメタン微孔性カーボン吸着剤に関するメソ細孔細孔範囲が比較的重要ではないことも示す。
【0141】
この実験の結果は、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成することに対して、他の結晶質ゼオライト構造が犠牲的テンプレートとして使用され得ることを示す。この実験は、NaX、CaXおよびBEAゼオライトが、メタン微孔性カーボン吸着剤を形成することにおいて有用であることを示した。商用銘柄サイズNaX、大NaX(LNaX)、大きく、かつ商用銘柄サイズのイオン交換NaX(CaXおよびLCaX)ならびにNaYを含むFAU;FAUに類似のEMT;ならびにBEAゼオライト構造は、全て12員環構造であり、かつ3次元細孔連結性を有し、これは3次元ネガティブレプリカを形成するためのフレーム構造として適切である。本方法の一実施形態において、結晶質ゼオライトは、FAU、EMTおよびBEAゼオライト構造からなる群から選択される。メタン微孔性カーボン吸着剤の一実施形態において、形状は、FAU、EMTおよびBEAゼオライト構造ならびにそれらのゼオライト構造の組合せからなる群から選択される結晶質ゼオライトのネガティブレプリカの形態である。
【0142】
いくつかのカーボン吸着剤に関する比較メタン吸着
Wangは、吸着等温線のための重量測定基準を決定するための試験手順および装置の説明を提供する。
図19は、298Kにおけるゼオライトの炭素テンプレートおよびいくつかのメタン微孔性カーボン吸着剤に対する、重量測定基準のメタン吸着等温線のいくつかのトレースを示すグラフである。それぞれのゼオライトの炭素テンプレートおよびメタン微孔性カーボン吸着剤は、上記の
図19で提供されたコードを使用して製造される。評価圧力の範囲は、約0〜約40バールである。評価温度は、298Kに維持される。それぞれの等温線トレースの終端に提供された値は、「CH
4貯蔵」値である。
図19に示されるように、大結晶ゼオライトを使用しないCaX−823−9H4Hからのメタン微孔性カーボン吸着剤は、重量基準で最も大きいメタン貯蔵値を有する。より高いCVD温度で後熱処理のないゼオライトの炭素テンプレート−CaX−1023−2−は、メタン微孔性カーボン吸着剤と比較して40バールの圧力において比較的減少したメタン貯蔵値を有する。
【0143】
表5は、ゼオライトの炭素テンプレート、5種のメタン微孔性カーボン吸着剤および2種の周知の商用活性炭吸着剤の貯蔵特性を示す。「Maxsorb(登録商標)3000」(関西熱化学株式会社;日本)は、水酸化カリウム(KOH)の溶液への暴露によって活性化される炭素材料(約3000m
2/g)である。「SRD−08016」は、Chemviron Carbon (Feluy,Belgium)から供給された活性化粉末炭素材料である。
【表5】
表5:いくつかの商用活性炭材料、ゼオライトの炭素テンプレートおよびいくつかのメタン微孔性カーボン吸着剤の細孔構造および表面積特性、ならびに決定されたメタン吸着特性。[1]充填密度に基づいて計算された送達されたCH
4の量。[2]タップ密度に基づいて計算された送達されたCH
4の量。
【0144】
図20a〜bは、カルシウムイオン置換Xゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図20aは、NaXカルシウムイオン置換ゼオライト(CaX)を使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のSEMである。
図20bは、LNaXカルシウムイオン置換ゼオライト(LCaX)を使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のSEMである。この吸着剤の一実施形態において、形状は、8μm〜20μmの範囲の中央端の長さと直交する。両方の
図20a〜bが示す通り、NaXおよびLNaXゼオライト中のCa
2+のイオン交換は、CaXおよびLCaXから形成された、結果のメタン微孔性カーボン吸着剤の八面体粒子形態学に影響を与えなかった。その代わりに、犠牲的結晶質ゼオライトのネガティブレプリカであることは「マクロ」レベルで見える。
【0145】
表5は、Maxsorb(登録商標)、ゼオライトの炭素テンプレートおよび5種のメタン微孔性カーボン吸着剤が、1バールにおいてCH
4の約10重量%〜約12重量%の残渣量の範囲にメタンの量を維持することを示す。「送達CH
4」量は、1バールおよび40バールの間のサイクルの間に吸着され、そして放出されるメタンの量を表し、そして40バールで検出された吸着量から1バールで検出された吸着量を差し引くことによって決定される。
【0146】
充填およびタップ密度の両方が、メタン微孔性カーボン吸着剤の体積測定CH
4吸着量を計算するために使用される。表5に示される5種のメタン微孔性カーボン吸着剤およびゼオライトの炭素テンプレートは、重量測定基準で類似のメタン吸着量を示すが(
図19)、決定された体積測定値は、充填およびタップ密度における偏差のため、異なっている。偏差は、タップ密度においてより有意であるように見える。理論によって制限される意図はないが、大きい犠牲的ゼオライト粒子(LCaXシリーズ)から形成されるメタン微孔性カーボン吸着剤は、より小さい犠牲的ゼオライト粒子(CaXシリーズ)から形成された材料よりも大きい全メタン吸着体積能を示す。したがって、ガス体積基準で、LCaXは、減少した体積密度においてさえ、CaX形成メタン微孔性カーボン吸着剤およびゼオライトの炭素テンプレートよりも大きいメタン吸着を提供するメタン微孔性カーボン吸着剤を形成した。
【0147】
表5によれば、LCaX−823−9H4HおよびLCaX−873−4H4Hを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、Maxsorb(登録商標)3000と比較して、充填密度およびタップ密度のいずれを基準としても、約10体積%〜約20体積%の範囲の、より大きいメタン吸着体積能を有する。
【0148】
商用NaXゼオライトのネガティブ炭素レプリカの形成
表1は、商用銘柄NaXゼオライトが、イオン交換CaXゼオライトより低い熱安定性(T
init)を有することを示し、そして表1に関する議論は、NaXゼオライトがメタン微孔性カーボン吸着剤を形成するためには不適切であり得ることを示す。しかしながら、900K未満のCVD温度を有する連続炭素合成法を使用することによって、この仮定を再検討する機会が提供される。表6は、2種のメタン微孔性カーボン吸着剤を示す:1種は、CaXゼオライトから製造されたものであり、かつもう1種は、NaXゼオライトでから製造されたものである。
【表6】
表6:商用銘柄サイズNaXおよびCaXゼオライトから形成された2種のメタン微孔性カーボン吸着剤の細孔構造および表面積特性。[1]Brunauer−Emmett−Teller(BET)比表面積。[2]D−R式を使用して計算されたミクロ細孔体積(V
micro)。
【0149】
CVD後の熱処理は、NaXゼオライトにおいて1123Kで4時間、2回実行される。理論によって制限されることを望まないが、NaXゼオライトフレーム構造が損なわれずに残り、かつ分解しないように、CVD後のNaXゼオライト内の析出された炭素構造は、CVDプロセス後の熱処理間でさえも、炭素−NaXゼオライト複合材を支持するために十分な強度を有すると思われる。NaXゼオライトのミクロ構造中および間の連結された熱処理された炭素は、ゼオライト構造を内部で安定化させるが、炭素は、CVD後の処理プロセス間により高密度になる。表6は、NaXゼオライトからのメタン微孔性カーボン吸着剤が、当業者が「優れた吸着剤」(≧3000m
2/g)として記載し得る3000m
2/g BET比表面積値に非常に近いことを示す。
【0150】
表1〜6および
図2〜22に示すデータに基づいて、メタン微孔性カーボン吸着剤の一実施形態において、BET比表面積は、約2500m
2/g〜約3100m
2/gの範囲にある。吸着剤の一実施形態において、ミクロ細孔体積は、Dubinin−Radushkevich式によって決定されるように、0.95cm
3/g〜1.19cm
3/gの範囲にある。吸着剤の一実施形態において、ミクロ細孔対メソ細孔体積比は、4〜6の範囲である。吸着剤の一実施形態において、貯蔵メタン値は、172mg/g〜192mg/gの範囲にある。吸着剤の一実施形態において、メタン送達値は、1バール〜40バールの圧力範囲において、152mg/g〜171mg/gの範囲にある。
【0151】
図21および22は、表6に示されたメタン微孔性カーボン吸着剤の両種類の分析を示す。
図21は、CaXおよびNaXゼオライトから形成されたメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。両メタン微孔性カーボン吸着剤は、I型N
2吸着−脱着等温線を示す。
図22は、
図21に示される窒素吸着−脱着等温線データにおいて非局在密度関数理論(NLDFT)演算規則を使用して決定した細孔サイズ分布のトレースを示すグラフである。
図22中、明瞭性のため、NaX−823−4H2Hのトレースは、dV
pの固定値(cm
3/g)によってオフセットされることに留意されたい。実際、これらのトレースは、W=0において同様の値を有する。NaX−823−4H2Hのトレースは、0.25cm
3/gによってオフセットされる。実際、全トレースは、2θ=0において同一値を有する。
図22は、NaXゼオライトから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤が、約1nm〜約2nmの細孔幅の範囲で強いスパイクを有することを示す。NaXゼオライトを使用するメタン微孔性カーボン吸着剤のためのミクロ細孔:メソ細孔体積比は約5.13であり、これは、表3に示され、かつ上記されたCaXおよびLCaXから製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の範囲内にある。
【0152】
図23a〜bは、ナトリウムXゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図23aは、商用銘柄サイズのNaXゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のSEMである。
図23bは、LNaXゼオライトを使用して製造されたメタン微孔性カーボン吸着剤のSEMである。ゼオライト材料のサイズの差異は、八面体粒子形態学に影響を与えない。
図6a〜cと
図23a〜bとを比較することにおいて、サイズの変化が、八面体の形状、またはメタン微孔性カーボン吸着剤を形成するための有機前駆体の吸着能に影響を与えないことを観察することができる。
【0153】
商用銘柄サイズNaXゼオライトを使用する、メタン微孔性カーボン吸着剤の規模調整された合成
図2に示された回転式管状炉は、商用銘柄NaXゼオライトから1〜5グラムより多い量でメタン微孔性カーボン吸着剤の規模調整された合成を行なうために使用される。商用銘柄NaXゼオライトのサイズは、中央端の長さが約2μmである。約50グラムの商用銘柄サイズNaXゼオライトおよび約50グラムの浄化された海砂(脱イオン水で洗浄され、約15〜約20メッシュの粒子サイズ)を、管状炉の中心に位置する円筒状ステンレススチール容器中に導入する。海砂は、固体混合を補助するため、そしてNaXゼオライトが炭素蒸気析出および熱処理の間に密着することを阻止するために使用される。円筒状容器は、アルゴン(非反応性ガス)でパージされ、円筒状容器を回転させ、そして円筒状容器内の温度は823Kまで上昇する。容器を回転させると、NaXゼオライトおよび海砂粒子は、互いのみならず、円筒状容器の内部バッフルにも衝突し、数秒ごとに円筒状容器内に含有される雰囲気を通してゼオライト結晶を落下させる。823Kの第1のCVD温度に達すると、アルゴン(Ar)中4体積%のアセチレンの混合物である有機前駆体ガスは、約1000mL/分のフロー速度で円筒状ステンレススチール容器中に導入され、そして約7時間の第1のCVD期間維持される。第1のCVD期間が経過後、導入されたガスは、アセチレン/Arガス混合物から純粋なArに切り替えられ、これは、500mL/分の速度で導入される。温度を1123KのCVD後の熱処理温度まで上昇させ、そして約3時間、その熱処理条件に維持する。3時間のCVD後の熱処理後、円筒状容器を823Kに達するまで、Arフロー下、部分的に冷却させる。823Kの第2のCVD温度に達したら、Ar中4体積%のアセチレンの有機ガス混合物を約1000mL/分のフロー速度で円筒状ステンレススチール容器中に再導入し、そしてその速度で約4時間の第2のCVD期間維持する。第2のCVD期間が経過後、導入されたガスは、アセチレン/Arガス混合物の有機前駆体ガスから純粋なArに切り替えられ、これは、500mL/分の速度で導入される。温度を、第2のCVD後の熱処理のための1123Kの第2の熱処理温度まで上昇させ、そして3時間、その処理温度に維持する。3時間の第2のCVD後の熱処理後、円筒状容器を室温に達するまで、Arフロー下、冷却させる。室温に達したら、回転円筒を停止し、そして熱処理された炭素−ゼオライト複合材を回収する。熱処理された炭素−ゼオライト複合材を、ふるいを使用して海砂から分離し、そしてNaXゼオライトを、以前にHCl/HFを含有する水性強鉱酸混合物を使用して、熱処理された炭素−ゼオライト複合材から分離する。回収されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、表面および細孔特性、ならびに比較用等温情報に関して試験される。
【表7】
表7:商用銘柄サイズNaX(1グラム)および商用銘柄サイズNaXからの規模調整された合成(50グラム)からの2種のメタン微孔性カーボン吸着剤の細孔構造および表面積特性。Brunauer−Emmett−Teller(BET)比表面積。[2]D−R式を使用して計算されたミクロ細孔体積(V
micro)。
【0154】
図24は、NaXおよび大量生産されたNaXメタン微孔性カーボン吸着剤の窒素吸着−脱着等温線のトレースを示すグラフである。表7に示されるように、プラグフロー反応器において1gのNaXゼオライトを使用して合成されたメタン微孔性カーボン吸着剤(NaX−823−4H2H)に対し、規模調整された合成プロセス(50グラムのNaXゼオライト)において合成されたメタン微孔性カーボン吸着剤は、表面積およびミクロ細孔体積においてわずかな減少のみを示す。