(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのプロセスパラメータが、前記医療冷却装置(10)から前記患者へ出る冷却流体の温度と、前記患者から前記医療冷却装置(10)に戻る前記冷却流体の前記温度と、の温度差に関し、
温度差基準発現レベルより低い前記温度差が、前記患者が震えの状態にあることを示す、請求項1に記載の制御ユニット(15)。
前記少なくとも1つのプロセスパラメータが、前記医療冷却装置(10)から前記患者へ出る冷却流体の温度と、前記患者から前記医療冷却装置(10)に戻る前記冷却流体の前記温度と、の温度差に関し、
温度差基準発現レベルより低い2つの連続する温度差が、前記患者が震えの状態にあることを示す、請求項3に記載の制御ユニット(15)。
前記少なくとも1つのプロセスパラメータが、前記医療冷却装置(10)から前記患者へ出る冷却流体の温度と、前記患者から前記医療冷却装置(10)に戻る前記冷却流体の前記温度と、の温度差に関する、請求項1,3および5のいずれかに記載の制御ユニット(15)。
前記冷却プロセスの現在の段階に応じて、監視される前記患者の震えの状態に関する少なくとも1つのプロセスパラメータを選択するようにさらに構成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の制御ユニット(15)。
前記冷却プロセスの第1段階で監視される前記患者の震えの状態に関する前記少なくとも1つのプロセスパラメータが、前記冷却プロセスの第2段階で監視される前記患者の震えの状態に関する前記少なくとも1つのプロセスパラメータとは異なる、請求項1から14のいずれか一項に記載の制御ユニット(15)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の提案は、低体温治療の医療冷却プロセスに対する震えの影響を考慮することである。特に、提案は、医療冷却プロセス中の患者の震えの状態または程度に関する特定のパラメータを特定することである。特定された震えの状態に基づいて、医療冷却治療プロセスは、患者への利益および治療結果を最適化するように適合させてもよく、このようにして、冷却プロセスに対抗して作用する患者の悪影響が軽減される。したがって、適合された冷却処理プロセスの目的は、震えが検出される温度のすぐ上で患者の体温を維持することである。
【0016】
体温を上昇させることを目的とした患者の震えの活動は、患者の身体部分を冷却するための医療冷却プロセスの目的に反する。本発明の解決策は、これを考慮して医療冷却プロセスを最適化する。
【0017】
定義上、震えは、急迫な低体温に対抗するために代謝熱生成を大きく増加させる、不随意で振動性の筋肉活動である。強力な震えは、熱の生産を数倍増加させることがある。震えは、通常のケアで脳温度を測定する方法がない中で、35℃以下の温度に対する生物学的防護措置として作用している。同時に、震えは、神経保護を得るのに十分な低さに脳温度が達するのを妨げる可能性がある。しかしながら、震えの閾値を低下させる薬理学的手段がある。例えば、ブスピロンおよびデクスメデトミジンの併用投与は、震えの閾値を34℃に低下させることが示されている。
【0018】
一実施形態では、
図1によれば、医療冷却装置10が供給される。医療冷却装置10は、冷却流体供給源11(
図1において点線で概略的に示す)を含む。医療冷却装置10は、冷却流体供給源から患者に冷却流体の流れを供給するための供給ライン12を含む。戻りライン14は、冷却流体分配装置13と冷却流体供給源との間に接続されている。供給ラインおよび戻りラインは、冷却回路の一部を形成し、チューブを含んでいてもよい。
【0019】
冷却回路は、供給される冷却流体を冷却すべき身体の身体部分の周りに分配する、着用可能な衣類のような、少なくとも1つの冷却流体分配装置13をさらに備えていてもよい。少なくとも1つの分配装置は、冷却効率を改善するためのチャネルパターンを含んでいてもよい。冷却流体分配装置は、一端が供給ライン12に接続され、他端が戻りライン14に接続される。冷却流体分配装置13は、好ましくは、冷却すべき患者の身体部分を包囲してしっかりと適合するように構成される形状を有する。したがって、患者の身体部分の冷却は、分配装置13内の冷却流体と冷却すべき患者の身体部分との間の伝導熱伝達手段によって支配される。したがって、患者の身体部分の冷却は、好ましくは、冷却流体と冷却すべき患者の身体部分との間に直接の接触がないように、体外で行われる。
【0020】
冷却流体分配装置13は非侵襲的である。通常、体外から中核体温を冷却するために、患者の皮膚に適用される。
【0021】
理想的には液体冷却分配装置は、好ましくは、良好な熱伝導特性および使用時の快適な適合性を示す材料で作られる。金属は非常に良好な熱伝導特性を有するが、身体部分に快適な適合をもたらすにはあまり適していない。一実施形態によれば、少なくとも1つの冷却流体分配装置は、金属よりも熱伝導特性は低いが非常に快適な適合を可能にするシリコン材料で作られる。
【0022】
材料のタイプに応じて、冷却流体供給源の冷却流体の温度を変更してもよい。例えば、分配装置がシリコン材料で作られているときの供給源中の冷却流体の温度は、−7℃のような、−9℃〜−6℃の間であってもよい。(シリコンと比較して)より良好な熱伝導特性を有する分配装置材料の場合、供給源中の冷却流体の温度は、−2℃などのように−6℃より高いか、4℃〜5℃などのようにより高い温度であってもよい。患者の状態のタイプに応じて、複数の分配装置を医療冷却装置に接続してもよい。各分配装置は、別個の冷却回路、すなわち別個の供給ラインおよび別個の戻りラインを使用して供給される。
【0023】
本発明は、供給源において−9℃〜−6℃の冷却流体温度に限定されないことを理解されたい。例えば冷却が連続的に実行される場合のような一部の用途について、冷却流体供給源における設定流体温度は、+4℃などの+3℃と+6℃との間であってもよい。冷却流体供給源における高めの設定流体温度は、長期連続冷却中の凍結損傷の任意のリスクを軽減することができる。
【0024】
一実施形態では、1つの非侵襲的分配装置13は患者の頭皮に接続されるように構成され、さらなる非侵襲的分配装置13は患者の首領域に接続されるように構成され、さらなる別の非侵襲的分配装置は、鼠径部または腰部および腹部の筋肉と組み合わせた鼠径部などの大きな筋肉群を有する1つ以上の身体部分に接続されるように構成されている。このようなシステムは3つの別個の冷却回路を有し、それぞれが独立した供給ラインおよび戻りラインを有する。したがって、医療冷却装置は、別個の供給ラインへの接続のための3つの別個の出口と、別個の戻りラインへの接続のための3つの別個の入口とを有する。
【0025】
一実施形態では、医療冷却装置は半携帯可能であり、ソケットにアクセスすることなく冷却システムを2〜3時間稼動させるためのバッテリを含む。これにより、救命室(またはすでに救急車内)で冷却を開始し、例えば脳卒中の患者がソケットにアクセスできる病棟のベッドに配置されるまで病院内を移動する数時間の間冷却を継続することができる。
【0026】
冷却流体供給源11は、冷却流体を所定の設定温度に冷却するための冷却ユニット(図示せず)と一体であってもよいし、これに接続されていてもよい。
【0027】
患者冷却回路内の冷却流体、すなわち、医療冷却装置から供給ライン、分配装置、戻りラインを通って医療冷却装置に戻る冷却流体は、グリコール系溶液または場合により水などの従来の冷却液体であってもよい。冷却ユニットが供給源内の冷却流体を冷却するために圧縮機を使用する場合、患者冷却回路から分離された圧縮機冷却回路は、従来の圧縮機冷媒を使用してもよい。
【0028】
医療冷却装置10は、要求に応じて冷却回路内の冷却流体の流量を供給するための流れポンプをさらに備えてもよい。
【0029】
一実施形態では、流れポンプは定量流れポンプである。ここでは、1つ以上の流量制御弁を使用して流れを制御してもよい。
【0030】
一実施形態では、流量制御弁はオン/オフタイプであり、例えばソレノイドは流れポンプの下流に設けられている。オン位置では、冷却回路の流れは、流れポンプの定流量が供給ラインに供給されることを可能にする。オフ位置では、供給ラインに流れが供給されず、供給ラインと戻りラインとの間の冷却流体は静止している。制御ユニットに記憶される正確なタイミングスケジュールを使用することによって、平均流量が得られる。
【0031】
一実施形態では、流量制御弁は、弁の位置に応じて異なる流量を通過させるために、3つ以上の位置に設定され得る比例弁であってもよい。
【0032】
患者の身体部分の冷却効率に影響を及ぼす2つの主な要因は、流体流速と供給ライン12を介して医療冷却装置を出る冷却流体の温度である。患者の身体部分の温度よりも低い温度の冷却流体の流量が増加すると、冷却速度がより速くなる。同様に、一定流量の場合、医療冷却装置から出る冷却流体の温度が低下すると、身体部分の冷却速度がより速くなる。
【0033】
医療冷却装置10は、制御ユニット15(
図1において点線で概略的に示す)をさらに備える。
【0034】
制御ユニットは、流量制御弁を制御することによって、供給ライン内の正確な流れを可能にするように構成することができる。例えば、流量ポンプが6000ml〜8000ml/分の定流量を供給し、制御ユニットが2000ml/分の流量の流量を供給ラインに供給するように構成されている場合、流量制御弁は、1分につき20秒間オフ位置にある必要がある。例えば、タイミングスケジュールは、1分につき10回、毎回2秒間流量制御弁をオフにするように規定することができる。あるいは、流量制御弁は、1分につき5回、毎回4秒間オフ位置にあってもよい。あるいは、制御弁は、1分につき1回、20秒間オフに設定されてもよい。
【0035】
一実施形態では、オン/オフ弁のタイミングスケジュールは、予想される震え状態の開始の接近に応じて変更されてもよい。例えば、オン/オフ弁は、冷却流体が要求された冷却流体温度、例えば−7℃に低下するまで、および要求された冷却温度に達した後の所定期間開かれてもよく、その後、タイミングスケジュールによって管理される頻度/持続時間に従ってオン/オフ弁を閉じることによって流れが低減される。別の所定期間の後、所望により、閉鎖頻度/持続時間をさらに変更してもよい。
【0036】
プロセスパラメータの監視
制御ユニットは、患者の震えの状態または程度に関する少なくとも1つのプロセスパラメータを監視するように構成される。制御ユニットは、プロセッサおよびメモリを備えているので、コンピュータ処理能力を有することができる。
【0037】
本発明の状況において、少なくとも1つのプロセスパラメータは、ポンプの流量、供給ライン流体温度、戻りライン流体温度、供給ライン流体温度と戻りライン流体温度との温度差、冷却流体供給源の瞬間および/または要求冷却流体温度、または冷却流体供給源のエネルギー消費のうちの1つまたはこれらの組み合わせに関する。
【0038】
実際には、例えば、個々のプロセスパラメータの大きさまたは値の形の瞬間発現レベルは、例えば供給ライン12、戻りライン14、および/または冷却流体供給源の中または近傍に接続されている、少なくとも1つの温度センサを使用して測定することができる。
【0039】
流量計を使用して、供給ライン内の冷却流体流量を測定することができる。
【0040】
あるいは、オン/オフ弁および定量流れポンプが使用される場合、平均流量は、ポンプの定流量(例えば、2l/分)および弁がオンおよびオフ状態にある期間それぞれに基づいて計算されてもよい。オン/オフ流量制御弁がオフに設定されている場合、冷却流体は冷却回路内で静止している可能性がある。これは、供給ラインと戻りラインとの間の温度が、分配装置によって体熱によって加熱されることを意味する。したがって、この場合、制御ユニットは、供給ライン、分配装置および戻りラインで静止中の冷却流体の容量が動き出してオン/オフ弁を再びオンにするまで、戻りライン温度の上昇を示す供給ライン温度および戻りライン温度からの温度指示を無視するように構成される。
【0041】
エネルギー消費は、例えば、冷却ユニットに直列に接続された電流計のような従来の電力消費測定装置等によって測定することができる。
【0042】
通常の場合、医療冷却処理は、例えば約20℃の周囲温度に対応する冷却流体供給源内の冷却流体の温度で開始することができる。したがって、冷却ユニットを含む供給源は、冷却液を−9℃〜−6℃の設定要求温度まで冷却するために最初に最大の電力を必要とする。この間、エネルギー消費はそれ故に高くなる。したがって、制御ユニットは、冷却流体供給源の温度が設定要求温度に達すると、冷却ユニットのエネルギー消費を監視するように構成されてもよい。したがって、冷却ユニットのエネルギー消費を監視する際、制御ユニットは、震えの発生によるエネルギー消費の増加を決定するために、供給液体内の温度も監視する。
【0043】
一実施形態では、冷却流体供給源に2つの温度センサが設けられている。
【0044】
さらに、制御ユニットは、瞬間発現レベルをそのメモリに記憶して、少なくとも2つの瞬間発現レベルに基づいて、例えば一次導関数、二次導関数を含む変化率を導出するように構成することができる。
【0045】
一実施形態では、少なくとも1つのプロセスパラメータは、医療冷却装置10から患者へ出る冷却流体の温度と、患者から医療冷却装置10に戻る冷却流体の温度との間の瞬間温度差に関する。瞬間温度差が所定の閾値未満であることは、患者が震えの状態にあることを示すとみなすことができる。
【0046】
別の実施形態では、2つ以上の連続した瞬間温度差が所定の閾値未満であることは、患者が震えの状態にあることを示してもよい。
【0047】
一実施形態では、少なくとも1つのプロセスパラメータは、医療冷却装置10から患者へ出る冷却流体の温度と、患者から医療冷却装置10に戻る冷却流体の温度との間の温度差の比率に関する。出る冷却流体と戻る冷却流体との間の温度差がどんどん小さくなっていくのを示す2つ以上の連続して監視される比率は、患者が震えの状態にあることを示すとみなすことができる。
【0048】
一実施形態では、少なくとも1つのプロセスパラメータは、予め定められた患者温度を維持するために必要とされる医療冷却装置の瞬間エネルギー消費に関しており、閾値を超える瞬間エネルギー消費は、患者が震えの状態にあることを示すとみなされる。
【0049】
一実施形態では、少なくとも1つのプロセスパラメータは、予め設定された患者温度を維持するために必要とされる医療冷却装置のエネルギー消費率に関する。エネルギー消費率が所定の閾値を超えて増加することは、患者が震えの状態にあることを示すとみなされる。
【0050】
一実施形態では、冷却流体供給源の瞬間エネルギー消費またはエネルギー消費率は、熱力学の第1の法則に関する式、
【0051】
【数1】
を使用して計算され、
ここでQはエネルギー、
【数2】
は供給ライン内の冷却流体の質量流量、CPは一定圧力における冷却流体の比熱定数、T1は出る冷却流体の温度、T2は戻る冷却流体の温度である。したがって、冷却流体供給源のエネルギー消費を能動的に測定する代わりに、これを上記の式を使用して計算することができる。
【0052】
一実施形態では、少なくとも1つのプロセスパラメータは、医療冷却装置を出る冷却流体の流れに関する。
【0053】
判断プロセス
制御ユニットは、少なくとも1つの監視されたプロセスパラメータに基づいて、患者の震えの状態または程度に関する判断を行うように構成される。
【0054】
一実施形態では、医療冷却装置においてオン/オフ弁が使用される場合、制御ユニットは、供給ラインに流れがある場合に、震えを判断するようにのみ構成されている。したがって、流量制御弁がオフに設定されている場合、震えに関する判断は行われない。
【0055】
判断するために、制御ユニットは、少なくとも1つの監視されたプロセスパラメータの大きさまたは値のような瞬間発現レベルを前記プロセスパラメータの基準と比較するように構成されてもよい。基準は、監視されたプロセスパラメータの予測される発現レベルに関していてもよい。あるいは、基準は、プロセスパラメータの予め設定された発現レベル閾値に関してもよい。
【0056】
代替的に、または瞬間発現レベルを比較することと組み合わせて、制御ユニットは、監視されたプロセスパラメータの瞬間発現レベルの第1または第2の導関数のような発現レベル率を、発現レベル基準率の形の基準と比較することができる。例えば、冷却ユニットのエネルギー消費の突然の加速度的な増加は、震えの開始の強力な指標であってもよい。震えの別の重要な指標は、戻り温度が上昇し始める、換言すれば戻りライン温度T2と供給ライン温度T1との間の差が増加し始める場合である。
【0057】
発現レベル基準率を基準として利用するために、制御ユニットは、少なくとも2つの連続する瞬間発現レベルに基づいて発現レベル率を導出するように構成されている。
【0058】
一実施形態では、発現レベルと基準発現レベルとの少なくとも1つの比較、または発現レベル率と発現レベル基準率との比較が震えの状態を示す限り、制御ユニットは、患者が震えの状態にあると判断するように構成されている。
【0059】
別の実施形態では、発現レベルまたは発現レベル率の観点からの少なくとも2つの比較が震えの状態を示す場合、制御ユニットは、患者が震えの状態にあると判断する必要がある。
【0060】
例1
以下の表において、制御ユニットが患者が震えの状態にあるという肯定的な判断を下すのに関連する情報の一例が示されている。簡略化のために、この例は、1つの分配装置のみを備える1つの冷却回路のみを指す。しかしながら、本明細書で定義される範囲内で、複数の冷却回路および/または複数の分配装置も可能である。この例では、流体供給源の流体温度は−7℃に設定されている。
【0062】
表に見られるように、最初の100分間は、震えの兆候はない。100分の冷却処置の後、患者の中核体温は37℃から35.5℃に低下し、戻り流れ温度は約−4.9℃で安定している。処置の開始から120分後に状況が変化した。戻り温度が−1℃に上昇し、消費電力が大幅に増加した。この情報に基づいて、制御ユニットは、患者が震えの状態にあると判断するように構成される。この例では、震えの状態は140分後も残っている。処置開始から140分後の震えの第2の兆候は、震えの第1の兆候が正しいことも実証する。震えの肯定的な判断に基づいて、制御ユニットは、冷却回路内の流量を0.031kg/秒から0.015kg/秒に減少させるように構成される。処置開始から160分後には、消費電力が震えのないレベルに戻ったので、それ以上の震えの兆候はない。戻り温度は、冷却処置中、−2℃〜−1℃の間で比較的一定である一方で、流量は0.011〜0.015kg/秒の間で維持されるが、これは、消費電力が震えのないレベルにとどまるためである。これは、患者が震えが軽減した状態または震えのない状態に置かれ、それによって冷却処置中の患者による不必要なエネルギーの浪費を回避することを意味する。
【0063】
例2
震えは、冷却プロセスの段階に応じて異なる制御プロセスパラメータを監視することに基づいて検出することができる。
図3に示すように、冷却プロセスは3つの主な段階に分割することができ、体温が正常から一定の低下した体温に低下する第1段階S1と、体温が一定の低下した中核体温で維持される第2段階S2と、体温が一定の低下した体温から正常な体温に戻る第3段階すなわち再加熱段階S3とである。
図3に示す立体中核体温曲線は、一般に、一般的な低体温治療冷却プロセスの外観を表す。点線で示す基準曲線は、医療冷却装置の目標温度として使用される。一般に知られているシステムでは、医療冷却装置は、第1段階S1中の時間1と3との間の35度をちょうど上回る平坦な中核体温曲線によって示されるように、発生する震えにかかわらず、基準温度まで温度を低下させるように作用する。
【0064】
上記のように、第1段階は、冷却プロセスが開始されて体温が一定レベルまで冷却される段階に関連していてもよい。第1段階において、監視された制御プロセスパラメータは、経時的な体温であってもよい。第1段階における震えの状態または程度に関する判断は、経時的な体温を表す体温曲線と予想される基準曲線との比較に基づいて行ってもよい。特に、前記2つの曲線の導関数を比較してもよい。体温曲線の導関数が期待される基準曲線の導関数とある程度異なる場合、震えの状態が検出されている。最初に震えが発生したときに体温低下速度が減少する傾向があるので、このようにして震えの状態を検出することができる。
【0065】
震えの状態であると判断されると、冷却プロセスの第2段階が開始される。冷却プロセスの第2段階の間、体温は、震え温度に近い温度で維持される。この段階では、患者から引き出されるエネルギーを計算することによって、震えの状態または程度を決定することができる。換言すれば、第2段階において、制御ユニットは、震えの状態または程度を検出するために、冷却流体供給源のエネルギー消費量またはその流量を監視してもよい。体温を上昇させる震えを相殺するために、より多くの冷却流体供給源が液体を冷却する必要があるので、エネルギー消費量が増加することは、震えの状態を示している。したがって、第2段階では、体温自体は震えの状態とは関係ないので、体温を監視する必要はなくてもよい。
【0066】
第1段階と同様に、体温曲線を監視し、それを期待される基準曲線と比較することによって、第3段階、すなわち再加熱段階中に震えを検出することができる。したがって、震えが発生したときに体温上昇速度が上昇する傾向があるため、第3段階で震えの状態が検出されることがある。
【0067】
制御プロセスパラメータの適合
患者が震えの状態にあるという判断に基づいて、制御ユニット15は、少なくとも1つの制御プロセスパラメータを適合させるように構成され、適合された制御プロセスパラメータに従って医療冷却プロセスを再開し、それによって、患者の震えの程度を軽減するか、または震えの状態を完全に回避する。
【0068】
震えの程度を軽減するか、または震えを完全に回避することの重要な側面は、震えがほとんどまたは全く検出されないレベルに体温を上昇させることである。これは、1つ以上の制御プロセスパラメータを適合させることによって達成されてもよい。
【0069】
低体温冷却装置の通常の慣例は、
図3に示すように、患者が震えの状態にある場合に直ちに冷却力を上げることである。震えが検出されたとき、システムは患者の中核体温を例えば1時間で0.5℃上昇させることができるので、本発明は慣例とは反対のことを行う。これにより、患者の震えに伴う痛みが最小限に抑えられる。
【0070】
制御プロセスパラメータは、
ポンプの流量、
冷却流体供給源の要求される冷却流体温度、
冷却流体供給源に供給される電力の制限、供給ラインへの冷却流体の流れを許容または制限する流量制御弁の動作状態およびタイミングのいずれか1つまたは組み合わせに関してしてもよい。
【0071】
一実施形態では、制御プロセスパラメータは、
冷却流体の流量を減少させる(例えば、流量を減少させるようにポンプに要求することによる)、
医療冷却装置を出る冷却流体の温度が上昇する、
医療冷却装置の冷却装置への電力が低減または制限される、
のいずれか1つに従って適合されてもよい。
【0072】
定量流れポンプおよび1つ以上のオン/オフ弁を使用して流れを制御する場合、制御ユニットは、冷却回路内の流れを変更するなどの、1つ以上のオン/オフ弁の動作状態に適合するように構成されてもよい。制御ユニットは、所定の期間と比較してオフ状態の持続時間を延長するなどのように、タイミングスケジュールに適合するようにさらに構成することができる。
【0073】
医療冷却装置を出る冷却流体の温度は、新たなより高い制御要求温度を冷却ユニットに設定することによって、制御ユニットによって適合させることができる。次いで、冷却ユニットは、供給源の新たな制御要求温度に従って冷却流体を加熱する。
【0074】
アラーム信号
一実施形態では、制御ユニット15は、患者が震えの状態にあるという判断に応答してアラーム信号を作動させるようにさらに構成されている。アラーム信号は、医療冷却装置内の聴覚的、触覚的および/または視覚的アラームを起動してもよい。例えば、視覚的アラームは、医療冷却装置のディスプレイ装置上に表示されてもよい。聴覚的アラーム信号は、医療冷却装置に設けられたオプションのスピーカを介して提示されてもよい。制御ユニットは、医療電気機器および医療電気システム(例えば、IEC規格IEC 60601−1−8)におけるアラームシステムのためのガイダンスに従ってアラーム信号を供給するように構成されてもよい。
【0075】
代替的に、または組み合わせて、制御ユニットは、アラーム信号を外部装置、例えば携帯端末に送信して、患者が震えの状態にあることを医療従事者に遠隔で示すことができるように構成されてもよい。
【0076】
一実施形態では、
図2によって、患者の身体部分を冷却するための医療冷却プロセスを実施する医療冷却装置10の動作を制御するための方法が供給される。医療冷却装置10の動作は、いくつかのプロセスパラメータに基づいている。この方法は、
患者の震えの状態に関連する少なくとも1つのプロセスパラメータを監視するステップ21と、
少なくとも1つの監視されたプロセスパラメータに基づいて患者の震えの状態または程度に関する判断を行うステップ22と、
少なくとも1つの監視されたプロセスパラメータおよび判断に基づいて制御プロセスパラメータを適合させるステップ23と、
適合された制御プロセスパラメータに従って医療冷却プロセスを再開するステップ24と
を含む。
【0077】
適用範囲
特に重要な身体部分は患者の頭皮であり、ここでは分配装置はキャップまたはヘルメットのような形状であってもよい。頭皮の冷却は、急性脳卒中に罹患した患者の脳の温度を下げるだけでなく、化学療法を受けている患者の脱毛を減少させるために特に有効である。
【0078】
しかしながら、脳の冷却は、心停止後、新生児低酸素虚血、不眠症または外傷性脳損傷においても有利であり得る。
【0079】
本明細書に提示する実施形態による医療冷却装置、制御ユニット、および方法は、冷生理食塩水の注入またはパラセタモールなどの解熱薬による薬理学的冷却などの脳冷却のための他の方法と組み合わせて使用されてもよいことを理解されたい。虚血性脳卒中の場合、本明細書に提示する実施形態による医療冷却装置、制御ユニット、および方法は、脳灌流の再確立と併せて使用されてもよい。
【0080】
低下させた脳温度での低体温は、種々の脳損傷に対する強力な神経保護剤であることが示されている。最近、無作為化された交差研究により、頭皮冷却装置による前頭葉の冷却が不眠症を有意に減少させることが示された。
【0081】
通常のケアでは、最適な目標脳温度は35.0℃〜35.5℃と思われる。深部脳組織におけるこのような低温は、頭皮冷却のみでは達成できない。しかしながら、頸動脈上から頚部を冷却することにより、最適な脳温度に到達することが可能である。一部の実施形態による分配装置は、このような頸動脈上からの頚部の追加の冷却を含んでもよい。
【0082】
一実施形態では、頭皮シリコンキャップに加えて、温度センサを備えた別個のネックバンドが供給される。ネックバンドは、キャップと同じ冷却流体供給源からの液体冷却剤によって冷却される。
【0083】
脳冷却は、少なくとも脳の温度が34℃以上であれば安全であることが示されている。
【0084】
脳冷却処置の持続時間は、30分から24時間以上の任意の時間であってもよい。脳卒中に適用する場合は、少なくとも72時間までの治療期間が有利な結果をもたらすようである。しかしながら、患者の状態のタイプに応じて、11日〜14日またはそれ以上までの冷却処置を供給するという一部の提案がなされている。
【0085】
上記の実施形態の一部は、脳冷却が有利である脳卒中の適用に関連して記載されている。しかし、本発明の実施形態は、心停止の場合にも等しく有用であることに留意されたい。急激な心停止に罹患した患者にとって、低体温をもたらす体温制御および冷却処置は、命を救う介入となり得る。これは、酸素欠乏による組織の損傷を軽減するために患者の体温を低下させることを意味する。冷却処置を受けた心停止に罹患した患者は、より高い生存率を示し、脳損傷などの恒久的な傷害のリスクもより低い。心停止時の冷却処理はまた、それぞれが虚血に対して異なる感度を有する身体器官のすべてを保護する。例えば、筋肉組織は数時間にわたって虚血に対処することができるが、脳は数分以内でも大きな損傷を被る可能性がある。心停止に罹患した患者の冷却処置の間、体温をより低い温度に低下させることが有利であり得る。一実施形態によれば、分配装置には、それぞれが1つ以上の冷却回路に接続された1つ以上の衣類が供給されてもよい。心停止の場合、身体のより大きな部分が冷却されてもよいので、分配装置は、脚部、腹部領域、腕、頭皮および頸部のような身体のより大きな部分を覆ってもよい。一実施形態では、このような衣類には、衣類をつけたままの任意の心臓手術を容易にするように、心臓の位置に開口部を設けてもよい。