(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656300
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】3Dプリンタ及びその液面感知方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/255 20170101AFI20200220BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20200220BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20200220BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20200220BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20200220BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20200220BHJP
【FI】
B29C64/255
B29C64/124
B29C64/241
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y30/00
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-92177(P2018-92177)
(22)【出願日】2018年5月11日
(65)【公開番号】特開2019-18555(P2019-18555A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2018年5月11日
(31)【優先権主張番号】201710573504.6
(32)【優先日】2017年7月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514008930
【氏名又は名称】三緯國際立體列印科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】XYZprinting, Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】511067204
【氏名又は名称】金▲宝▼電子工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】丁 明雄
(72)【発明者】
【氏名】郭 宗樺
(72)【発明者】
【氏名】葛 昌▲彦▼
【審査官】
今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2017/0057174(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0040311(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0191861(US,A1)
【文献】
特開2014−185924(JP,A)
【文献】
特開2001−194208(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0224710(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の形成材料を収容するよう構成されたタンクと、
制御モジュールと、
前記タンク内の前記液体の形成材料の液面を感知するよう構成され、前記タンクの横に配置された第1の電極ペアおよび第2の電極ペアを備えた少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールを備え、
前記第1の電極ペアは、前記液体の形成材料を通過する電界を生成するために用いられ、
前記第2の電極ペアは液体の形成材料の所定の液面より上に位置し、前記第1の電極ペアおよび前記第2の電極ペアはそれぞれ前記制御モジュールに電気的に接続され、
前記第2の電極ペアは、周囲環境のバックグラウンドキャパシタンスを感知し、
前記制御モジュールは、前記第1の電極ペアおよび前記第2の電極ペアを同時に使用して校正することにより液面のキャパシタンスを取得することを特徴とする3Dプリンタ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールは、絶縁体をさらに備え、前記第1の電極ペアは、感知電極とグランド電極とを備え、前記感知電極と前記グランド電極とは前記絶縁体の同一の側に配置されて前記液体の形成材料に対向し、前記絶縁体は前記感知電極を前記グランド電極から電気的に分離する、ことを特徴とする請求項1に記載の3Dプリンタ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールは、前記絶縁体上に前記第1の電極ペアの反対の側に配置される少なくとも1つのシールド部材をさらに備え、前記少なくとも1つのシールド部材は、前記第1の電極ペアに対して周囲環境の信号干渉をシールドするために用いられ、前記絶縁体は、前記少なくとも1つのシールド部材を前記第1の電極ペアとから電気的に分離する、ことを特徴とする請求項2に記載の3Dプリンタ。
【請求項4】
前記絶縁体上に前記第1の電極ペアと反対の側に、それぞれ配置される2つのシールド部材を備え、前記2つのシールド部材の一方は、前記感知電極に対応し、前記2つのシールド部材の他方は、前記グランド電極に対応し、前記2つのシールド部材は、前記絶縁体により、前記感知電極及び前記グランド電極から電気的に分離される、ことを特徴とする請求項3に記載の3Dプリンタ。
【請求項5】
前記タンクは導電性の基部に取り付けられ、前記導電性の基部は、前記グランド電極に電気的に接続される、ことを特徴とする請求項2に記載の3Dプリンタ。
【請求項6】
複数のキャパシタンス感知モジュールと制御モジュールとを備え、前記複数のキャパシタンス感知モジュールは、前記タンクを包囲し、前記制御モジュールは、前記複数のキャパシタンス感知モジュールに電気的に接続され、前記制御モジュールは、前記複数のキャパシタンス感知モジュールを介して前記タンク内の前記液体の形成材料の液面の複数の高さを感知して前記タンク内の前記液体の形成材料の液面を判別する、ことを特徴とする請求項1に記載の3Dプリンタ。
【請求項7】
前記キャパシタンス感知モジュールは、前記タンクの中央を等しい角度の配置で包囲する、ことを特徴とする請求項6に記載の3Dプリンタ。
【請求項8】
前記複数のキャパシタンス感知モジュールは、前記タンクの中央に対して等しい距離の配置で配置される、ことを特徴とする請求項6に記載の3Dプリンタ。
【請求項9】
前記複数のキャパシタンス感知モジュールは、同一平面上に提供される、ことを特徴とする請求項6に記載の3Dプリンタ。
【請求項10】
導電性の基部をさらに備え、前記タンクは前記導電性の基部に組み立てられ、前記複数のキャパシタンス感知モジュールは、それぞれグランド電極を備え、前記グランド電極は、前記導電性の基部に電気的に接続される、ことを特徴とする請求項6に記載の3Dプリンタ。
【請求項11】
前記少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールは、前記タンクに対して距離を維持する、ことを特徴とする請求項1に記載の3Dプリンタ。
【請求項12】
前記少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールは、前記タンクの外側に取り付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の3Dプリンタ。
【請求項13】
制御モジュールをさらに備え、前記少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールは、第2の電極ペアを備え、前記第2の電極ペアは、前記タンクの横に配置され、また前記液体の形成材料の所定の液面上に位置し、前記第1の電極ペア及び前記第2の電極ペアは、それぞれ、前記制御モジュールに電気的に接続され、前記第2の電極ペアは、周囲環境のバックグラウンドキャパシタンスを感知して前記制御部に提供するために用いられて前記第1の電極ペアを校正する、ことを特徴とする請求項1に記載の3Dプリンタ。
【請求項14】
前記少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールは、絶縁体をさらに備え、前記第1の電極ペア及び前記第2の電極ペアは、前記絶縁体の同じ側に配置され、前記絶縁体によって互いに電気的に分離される、ことを特徴とする請求項13に記載の3Dプリンタ。
【請求項15】
前記タンクは、満充填時の液面と、空の時の液面とを有し、前記第1の電極ペアは、前記液体の形成材料の一の液面に対応し、前記満充填時の液面と前記空の時の液面とをカバーする、ことを特徴とする請求項1に記載の3Dプリンタ。
【請求項16】
前記タンクそのものが、回転軸に対して回転する、ことを特徴とする請求項1に記載の3Dプリンタ。
【請求項17】
3Dプリンタに適用される液面感知方法であって、前記3Dプリンタは、タンクと、複数のキャパシタンス感知モジュールと、制御モジュールとを備え、前記タンクは、液体の形成材料を収容するよう構成され、前記キャパシタンス感知モジュールは、前記タンクの周囲に配置され、前記制御モジュールは、前記複数のキャパシタンス感知モジュールのそれぞれに電気的に接続され、
前記制御モジュールを用いて、前記複数のキャパシタンス感知モジュールの読み値を取得し、
前記複数のキャパシタンス感知モジュールのそれぞれの前記読み値が、前記タンクの低い液面における前記液体の形成材料の読み値未満かを判別して、前記タンク内の前記液体の形成材料の液面を判別し、
各キャパシタンス感知モジュールの読み値が同一かその許容範囲内にあるかを判別し、
各キャパシタンス感知モジュールの読み値が同一でないか、特定の許容範囲内にない場合、所定の時間待機した後、各キャパシタンス感知モジュールの読み値を再度取得し、
前記判別結果に基づいて、3Dプリンティングを実行し、あるいは、信号を送出して前記タンク内へ前記液体の形成材料の充填を要求する、
ことを含む液面感知方法。
【請求項18】
前記複数のキャパシタンス感知モジュールのそれぞれの前記読み値が、同一であるか判別し、
前記複数のキャパシタンス感知モジュールのそれぞれの前記読み値が同一でない場合、所定の時間待機した後、判別のために前記複数のキャパシタンス感知モジュールのそれぞれの読み値を再度取得する、
ことをさらに含む請求項17に記載の液面感知方法。
【請求項19】
前記複数のキャパシタンス感知モジュールのそれぞれの前記読み値が同一で、前記タンクの前記低い液面における前記液体の形成材料の読み値より大きい場合、前記3Dプリンティングを実行し、前記複数のキャパシタンス感知モジュールのそれぞれの前記読み値が同一でなく、前記所定の時間後の判別においても前記複数のキャパシタンス感知モジュールのそれぞれの前記読み値が同一でない場合、前記信号を送出して前記タンク内へ前記液体の形成材料の充填を要求する、ことを特徴とする請求項18に記載の液面感知方法。
【請求項20】
前記キャパシタンス感知モジュールは、前記タンク内の前記液体の形成材料を感知するための第1の電極ペアを備え、前記キャパシタンス感知モジュールは、前記タンクの横に配置されて前記制御モジュールに電気的に接続される第2の電極ペアをさらに備え、前記第2の電極ペアは、前記液体の形成材料の所定の液面上に位置し、
前記第2の電極ペアを用いて、周囲環境のバックグラウンドキャパシタンスを感知し、
前記バックグラウンドキャパシタンスを、前記第1の電極ペアによって得られた前記液体の形成材料の感知キャパシタンスと比較して前記第1の電極ペアを校正する、
ことをさらに含む請求項17に記載の液面感知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元(3D)プリンタ及び3Dプリンタの液面感知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において三次元(3D)プリンタが広く使用されており、様々な3Dプリンティング技術が急速に発展し、全てがプリントできる時代に入った。フォトポリマは、ほとんどの3Dプリンタで用いられる液体の形成材料であり、ステレオリソグラフィ装置(SLA)、デジタル光処理(DLP)及び連続液界面製造(CLIP)等の技術は、全て、プリンティング材料としてフォトポリマを採用する。しかしながら、フォトポリマは高値であり、その使用量がユーザにとって主な関心事になっている。プリンティングのために提供される材料の量が、最終的な硬化に必要とされる材料の量より多い場合、コストの浪費につながる。また、プリンティングのために提供される材料の量が、最終的な硬化に必要とされる材料の量より少ない場合、プリンティングプロセスの間にフォトポリマを追加する必要があり、プリンティングの失敗のリスクを高めることになる。また、フォトポリマは、環境の影響を受け易く、時間の通過とともに徐々に硬化して使用できなくなってしまう。
【0003】
従って、最も消費される材料であるフォトポリマの使用量は、正確な制御を要し、これによって供給量の最適化、生産性の安定化やコスト等の向上が図れるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、三次元(3D)プリンタに関連し、キャパシタンス感知モジュールがタンクの外部に配置され、当該キャパシタンス感知モジュールによって生成された電界がタンク内の液体の形成材料を通過して当該タンク内の液体の形成材料の変化を感知する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の実施の形態は、タンクと少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールとを備える3Dプリンタを提供する。前記タンクは、液体の形成材料を収容するよう構成される。前記少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールは、前記タンク内の前記液体の形成材料の液面を感知するよう構成される。前記少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールは、前記タンクの横に配置された第1の電極ペアであって前記液体の形成材料を通過する電界を生成するために用いられる第1の電極ペアを備える。
【0006】
本開示の一の実施の形態は、3Dプリンタに適用される液面感知方法を提供し、前記3Dプリンタは、タンクと、複数のキャパシタンス感知モジュールと、制御モジュールとを備える。前記タンクは、液体の形成材料を収容するよう構成される。前記キャパシタンス感知モジュールは、前記タンクの周囲に配置される。前記制御モジュールは、前記複数のキャパシタンス感知モジュールのそれぞれに電気的に接続される。液面感知方法は、前記制御モジュールを用いて、前記複数のキャパシタンス感知モジュールの読み値を取得し、前記複数のキャパシタンス感知モジュールのそれぞれの前記読み値が、前記タンクの低い液面における前記液体の形成材料の読み値未満か判別して前記タンク内の前記液体の形成材料の液面を判別し、前記判別の結果に基づいて、3Dプリンティングを実行し、あるいは、信号を送出して前記タンク内へ前記液体の形成材料の充填を要求する、ことを含む。
【発明の効果】
【0007】
要約すると、3Dプリンタにおいて、タンクの外部の少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールの設定により、第1の電極ペアによって生成された電界が、タンク内の液体の形成材料を通過して、当該液体の形成材料の液面変化が感知され、3Dプリンティングを行う前の液体の形成材料が十分か判別され、第1の電極ペアは、液体の形成材料に対向し、使用プロセスにおけるタンク内の液体の形成材料の満充填時の液面、低い液面並びに空の時の液面をカバーし、これによってキャパシタンス感知モジュールは、液体の形成材料の様々な変化に対応することが可能となる。なお、第2の電極ペアの設定により、周囲環境のキャパシタンスが感知され、これが第1の電極ペアの感知基準となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】3Dプリンタのアセンブリを示す概略図である。
【0009】
【0010】
【
図3A】別の実施の形態に係る3Dプリンタの側面図である。
【0011】
【
図3B】別の実施の形態に係る3Dプリンタの側面図である。
【0012】
【
図4】3Dプリンタによって実行される液面感知方法を説明するフローチャートである。
【0013】
【
図5A】別の実施の形態に係る3Dプリンタの上面図である。
【0014】
【
図5B】別の実施の形態に係る3Dプリンタの上面図である。
【0015】
【0016】
【
図6A】別の実施の形態に係る3Dプリンタの部分拡大図である。
【0017】
【
図6B】別の実施の形態に係る3Dプリンタの部分拡大図である。
【0018】
【
図6C】別の実施の形態に係る3Dプリンタの部分拡大図である。
【0019】
【
図7】別の実施の形態に係る3Dプリンタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の好適な実施の形態を詳細に参照し、それらの例を添付の図面に示す。可能な限り、同一あるいは類似の部分については図面及び詳細な説明において同一の参照番号を付す。
【0021】
図1は、3Dプリンタのアセンブリを示す概略図である。
図2は、3Dプリンタの部分拡大図である。
図3A及び3Bは、異なる実施の形態に係る3Dプリンタの側面図である。
図1及び
図2を参照すると、本実施の形態では、3Dプリンタ100は、タンク110と、キャパシタンス感知モジュール120と、成形プラットフォーム130と、制御モジュール160と、光源150と、基部140とを備える。3Dプリンタ100は、プルアップ式のステレオリソグラフィ(SL)プリンタであり、タンク110は、液体の形成材料200を収容するために用いられ、コンピュータ支援デザイン(CAD)等のソフトウェアによって構築された3Dモデルのデザインデータを、複数の連続的に積層された薄い(疑似二次元の)断面層に変換することにより、制御モジュール160は、成形プラットフォーム130を駆動して液体の形成材料200に浸し、光源150を駆動して断面層の情報に従って液体の形成材料200に光を照射し、これによって液体の形成材料200を硬化させて成形プラットフォーム130上に適切な断面層を形成する。次に、成形プラットフォーム130が軸C1に沿って徐々に上昇されることで、硬化及び層毎の積層(
図3Aに示す)によって液体の形成材料200が3Dオブジェクト500Aを形成し得る。
【0022】
本実施の形態においては、成形プラットフォーム130及びタンク110は、すべて、軸C1を中心にして回転し、軸C1を中心とした回転(形成プラットフォーム130のみの回転に関わらず、タンク110のみ、あるいは形成プラットフォーム130及びタンク110の両方)の効果が得られ、これによって3Dプリンティングプロセスにおける成形プラットフォーム130上への3Dオブジェクト500Aの適用可能な範囲が改善され、また、相対的な回転によってタンク110の底面から断面層あるいは3Dオブジェクト500Aを分離する効果が得られる。一の実施の形態においては、タンク110のみ回転し、成形プラットフォーム130は、単に上下動する動作を実行する。
【0023】
上記のように、タンク110内の液体の形成材料200の量を正確に把握するため、本実施の形態の3Dプリンタ100においては、タンク110内の液体の形成材料200の液面を感知するため、タンク110の横にキャパシタンス感知モジュール120が配置され、それによって制御モジュール160あるいはユーザは、3Dプリンティングを実行する前に液体の形成材料200が十分か、把握あるいは判断し得る。
【0024】
詳細には、
図2に示すように、キャパシタンス感知モジュール120は、第1の電極ペア121と、絶縁体122と、シールド部材123とを備え、第1の電極ペア121は、感知電極121Aと、グランド電極121Bとを備え、感知電極121A及びグランド電極121Bは、絶縁体122の同じ側において配置されて液体の形成材料200に対向し、絶縁体122は、感知電極121A及びグランド電極121Bを電気的に分離する。シールド部材123は、絶縁体122の別の側であって第1の電極ペア121の反対の側に配置され、シールド部材123は、第1の電極ペア121の周囲環境の信号干渉をシールドするために用いられ、その材料は、例えば金属であってよく、また、絶縁体122は、シールド部材123及び第1の電極ペア121を電気的に分離する。このようにして、第1の電極ペア121に電力を供給することで、感知電極121Aとグランド電極121Bとの間に電界が発生し、
図2の矢印で示すように、電界はタンク110の液体の形成材料200を通過する。
【0025】
当業者に明らかなように、物質の誘電率は異なるので、キャパシタ構造の電界は、当該電界が異なる媒体を通過することで影響を受ける。従って、液体の形成材料200の量が変化する場合、それによって第1の電極ペア121のキャパシタンスが変化する。つまり、タンク110内の液体の形成材料200の液面の変化は、キャパシタンスに影響を与える誘電体の変化を示し、液面の変化は、キャパシタンスの読み値の変化を生じさせる。
【0026】
図3Aを参照すると、本実施の形態では、キャパシタンス感知モジュールは、さらに、第2の電極ペア320を備え、第2の電極ペア320及び第1の電極ペア121は、すべて、基板310上に配置されて電気的に制御モジュール160に接続される。この場合、第2の電極ペア320の構造は、第1の電極ペア121(
図2に示す)と同じであり、基板310は、
図2の絶縁体122及びシールド部材123の構成と類似するので、その詳細な説明については繰り返さない。2つの電極ペア間の違いは、本実施の形態の第2の電極ペア320がタンク110の横に位置され、液体の形成材料200の所定の液面上に配置される点である。換言すると、液体の形成材料200の液面が、所定の液面あるいはその特定の誤差範囲内に制御する場合、第2の電極ペア320によって生じた電界は、タンク110内の液体の形成材料200を通過しない。つまり、第2の電極ペア320は、周囲環境のキャパシタンスを感知するために用いられ、第1の電極ペア121の感知基準としてもちいられる。
【0027】
図3Aに示すように、タンク110内の液体の形成材料200の液面の変化は、空の液面LV0と、低い液面LV1と、満充填時の液面LV2とを実質的に含み、一の実施の形態では、第1の電極ペア121は、上述した液面の範囲を同時にカバーするため、液体の形成材料200に略対向する。換言すると、タンク110内の液体の形成材料200が、上述した液面を有すると定義される場合、それは、キャパシタンス感知モジュール120が、異なる液面に対応するキャパシタンスを把握したことを示す。従って、液面が変化した場合、上述した液面に対応するキャパシタンスと、現在感知されたキャパシタンスとが比較され、液体の形成材料200の現在の液面が判別される。
【0028】
図3Bは、本開示の別の実施の形態に係る3Dプリンタの側面図である。
図3Bを参照すると、第1の電極ペア121のサイズは、実際の用途に応じて調整可能であり、これによってタンク110内の液体の形成材料200の液面に対応あるいはカバーすることができる。
【0029】
図4は、3Dプリンタによって実行される液面感知方法を示すフローチャートである。
図5A及び5Bは、それぞれ、異なる実施の形態に係る3Dプリンタの平面図である。
図5Cは、3Dプリンタの状態を示す概略図である。
図4及び5Aを参照すると、本実施の形態では、3Dプリンタは、等しい角度、つまり、軸C2に対して、タンク110を囲むように複数のキャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cを備え、キャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cは、120度の中心角の構成を示すものである。キャパシタンス感知モジュールの動作タイミングについては、
図4に示す。一般に、3Dプリンティングを実行する前に、ステップS01が実行されてキャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cがタンク110内の液体の形成材料200の状態の感知を開始する。次に、ステップS02で、各キャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cの読み値が同一か判別され、当該ステップは、タンク110内の液体の形成材料200の平坦度を参照する。つまり、液体の形成材料200は、実質的に高い粘性を有するフォトポリマであるので、その流動性は低く、従ってステップS02は液体の形成材料200が安定状態にあるかを判別するために適用される。従って、キャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cの読み値が異なる場合、これは、
図5Cに示すように、液体の形成材料200が未だ不安定な状態であることを示す。この場合、ステップS04を実行することを要し、これは、液体の形成材料200が安定するのを待つための所定の時間を要する。キャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cの読み値が同じであった後、ステップS03が実行され、キャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cの読み値が、低い液面LV1の読み値未満であるか判別され、そうでない場合、これは、タンク110内の液体の形成材料200が、ステップS06での3Dプリンティングの実行において十分であることを示す。イエスの場合、ステップS05を実行し、これは、タンク110内に液体の形成材料200が補充され、その補充量がステップS03で感知された液面に従って判別され得る。一の実施の形態では、液体の形成材料200の補充は、ステップS03において感知された液面に従って、自動制御システムによって制御されてよく、これによって自動的な補充が具体化され得る。別の実施の形態では、ステップS03において感知された液面は、制御モジュール160によって変換され、形成材料200の求められる補充量を直接ユーザに通知してもよい。補充が完了した後、更なる確認のためにステップS01からS03が再度実行される。読み値が同じであるかは、キャパシタンス感知モジュールの感知精度の考慮を依然必要とし、可能性のある公差エラーが許容される。また、
図5Cに示す(キャパシタンス感知モジュール120A、120Bのみ示す)ように、キャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cは、同一の高さの平面S1に略配置され、これによって液体の形成材料200の平坦度が判別される。
【0030】
図5Bを参照すると、上記の実施の形態と異なり、本実施の形態のタンク330は、長方形輪郭を示し、本実施の形態のキャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cは、同一距離構成で軸C3(タンク330の中心)に対して配置される。
【0031】
また、別の実施の形態では、
図4のステップS03が、ステップS02の実行の前に実行される、つまり、タンク110内の液体の形成材料200が十分か判別するため、最初にステップS03を実行し、液体の形成材料200の補充を要すると判別されると、ステップS05が実行され、これによって、ステップS04の不必要な待ち時間は、液体の形成材料200が不十分である場合に省略される。
【0032】
図6Aから6Cは、本開示の異なる実施の形態に係る3Dプリンタの部分拡大図である。
図6Aを参照すると、本実施の形態では、感知電極421A及びグランド電極421Bは、それぞれ、絶縁体422の同じ側に配置され、感知電極421A及びグランド電極421Bは、タンク110の外壁に実質的に取り付けられ、シールド部材423は絶縁体422の別の側であって感知電極421A及びグランド電極421Bと反対の側に配置される。
図6Bを参照すると、上記の実施の形態と異なり、本実施の形態の3Dプリンタは、2つのシールド部材423A及び423Bを備え、シールド部材423Aは、感知電極421Aに対応し、シールド部材423Bは、グランド電極421Bに対応する。
図6Cを参照し、本実施の形態の3Dプリンタは、3つのシールド部材423C、423D及び423Eを備え、シールド部材423Cは、上記のシールド部材423に類似し、シールド部材423D及びシールド部材423Eは、それぞれ、感知電極421A及びグランド電極421Bの2つの対向する側に配置され、感知電極421A及びグランド電極421Bを包囲し、これによって外部環境の干渉を低下し、効果的にノイズを低減する。
図6Aから
図6Cの実施の形態に係るキャパシタンス感知モジュールは、単に、タンク110の外壁に取り付けられており、そのため、キャパシタンス感知モジュールは、タンク110と共に回転してもよいし、あるいは取り外されてもよい、つまり、タンク110を交換する場合、キャパシタンス感知モジュールを古いタンクから容易に取り外すことができ、新しいタンクに取り付けることができる。
図6Aから
図6Cの実施の形態に係るキャパシタンス感知モジュールは、また、
図1から
図5Cの実施の形態、つまり、キャパシタンス感知モジュールがタンクに対して距離を維持し、タンクの交換に伴って分解されない実施の形態にも適用可能である。
【0033】
図7は、本開示の別の実施の形態に係る3Dプリンタの概略図である。
図7を参照すると、キャパシタンス感知モジュール120は、シンク型のSLプリンタに適用され、タンク110上に光源150が配置され、成形プラットフォーム530は、徐々に下降するように駆動され、それによって3Dオブジェクト500Bが層毎に積層されて成形プラットフォーム530上に形成される。この場合、液体の形成材料200の制御については、タンク110の横にキャパシタンス感知モジュール120を配置することで達成される。
【0034】
図1を参照すると、本実施の形態では、基部140は、導電性を実質的に有し、導電性を有する固定部材142は、その上に配置され、基部140上に配置されるタンク110は、固定部材142を介して基部140に固定されてもよい。なお、キャパシタンス感知モジュール120のグランド電極121Bは、基部140に電気的に接続されて接地される。基部140は、例えば、導電性を有する金属素材から形成され、それは上述した接地効果をもたらすのみならず、タンク110の構造上の強度を改善する。
図1に示すように、タンク110は、主に、透明なプラスチック材料から形成され、光源150によって出力された光を透過させ、タンク110が液体の形成材料で満たされるとタンク110には圧力が加わる。従って、タンク110がさらに基部140上に取り付けられることで、上記の圧力に対するタンク110の耐久性が効果的に改善される。
【0035】
図5Aを参照すると、本実施の形態の3Dプリンタは、それぞれ、3つのキャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cに対応する3つの固定部材142A、142B及び142Cを備え、対応する固定部材142A、142B及び142C並びにキャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cは、互いの間に電気的接続関係がある(例えば、キャパシタンス感知モジュール120Aのグランド電極は、固定部材142Aに接続される)。このようにして、制御モジュール160(
図1に示す)は、さらに、タンク110が基部140に問題なく固定されたか、あるいは、タンク110の取付が傾斜あるいは軸に対するずれを含むものか、判別してよい。つまり、タンク110が完全に基部140に固定されるか、あるいは、タンク110の取付が傾斜や軸に対するずれなしの適切な場合、キャパシタンス感知モジュールの各キャパシタンスの読み値は、一定の差を有し、例えば、タンク110が固定部材に適切に結合されなかったり、タンク110の取付が傾斜あるいは軸に対するずれを含む場合、上述した一定の差は、異常値を有したり、異なるキャパシタンス感知モジュール120A、120B及び120Cの読み値には差異が生じうる。
【0036】
要約すると、3Dプリンタにおいて、タンクの外側の少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールの設定により、第1の電極ペアによって生成された電界は、タンク内の液体の形成材料を通過して、液体の形成材料の液面の変化を感知し、3Dプリンティングの前に液体の形成材料が十分か判別し、第1の電極ペアは、液体の形成材料に対向し、使用プロセスにおけるタンク内での液体の形成材料の満充填時の液面、低い液面並びに空の時の液面をカバーし、これによってキャパシタンス感知モジュールは、液体の形成材料の様々な変化に対応することが可能となる。なお、第2の電極ペアの設定により、周囲環境のキャパシタンスが感知され、これが第1の電極ペアの感知基準となる。
【0037】
加えて、タンクの周囲の複数のキャパシタンス感知モジュールの設定により、さらに、単一のキャパシタンス感知モジュールが液体の形成材料の液面を感知することに加えて、タンク内の液体の形成材料の平坦度が、キャパシタンス感知モジュールのキャパシタンス読み値から判別される。
【0038】
さらに、各キャパシタンス感知モジュールにおいてシールド部材を構成することで、シールド効果が感知電極及びグランド電極に与えられ、これによって周辺環境の干渉が効果的に回避され、ノイズの影響を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示は、3Dプリンタ及びその液面感知方法に関し、タンクの外側に少なくとも1つのキャパシタンス感知モジュールを設け、キャパシタンス感知モジュールの第1の電極ペアによって生成された電界がタンク内の液体の形成材料を通過して、液体の形成材料の液面の変化を感知し、3Dプリンティングの前に液体の形成材料が十分か判別し、第1の電極ペアは、液体の形成材料に対向し、使用プロセスにおけるタンク内での液体の形成材料の満充填時の液面、低い液面並びに空の時の液面をカバーし、これによってキャパシタンス感知モジュールは、液体の形成材料の様々な変化に対応することが可能となる。なお、第2の電極ペアの設定により、周囲環境のキャパシタンスが感知され、これが第1の電極ペアの感知基準となる。
【符号の説明】
【0040】
100 3Dプリンタ
110、330 タンク
120 キャパシタンス感知モジュール
121 第1の電極ペア
121A 感知電極
121B グランド電極
122 絶縁体
123 シールド部材
120A、120B、120C キャパシタンス感知モジュール
130、530 成形プラットフォーム
140 基部
142、142A、142B、142C 固定部材
150 光源
160 制御モジュール
200 形成材料
310 基板
320 第2の電極ペア
421A 感知電極
421B グランド電極
422 絶縁体
423、423A、423B、423C、423D、423E シールド部材
500A、500B 3Dオブジェクト
C1、C2、C3 軸
LV0 空の時の液面
LV1 低い液面
LV2 満充填時の液面
S01、S02、S03、S04、S05、S06 ステップ