【実施例1】
【0026】
本発明に係る第1実施例の電磁的駆動コイル装置1は、
図1に示されるように、先に成形したコネクタ枠部材30に対して給電端子122,142(
図2)を挿入した後に樹脂モールド20が成形される。それにより、複雑な構造を備えたステータ組立体と精密なモールドが要求されるコネクタ枠部材とを別々のモールドにより構成することができる。
【0027】
より詳細には
図2に部品構造を示すように、ステータ組立体100に対してコネクタ枠部材30は、先に別工程で成形された別体の部材として用意される。
【0028】
先に別工程で成形されたコネクタ枠部材30は、樹脂製の部材であって、コネクタ部31と結合部32を有し、結合部32は後述するステータ組立体100の上側ヨーク110と下側ヨーク130の外周部に密着する端縁部32aを有する。結合部32の外周部には、後工程でのモールド樹脂との接合性を向上するためのリブ33が設けられている。
【0029】
コネクタ部31には相手のコネクタ(図示なし)に係合される外側ガイド部34、内側ガイド部36やストッパ用突起37が設けられる。このコネクタ部31は、相手のコネクタに対して高い精度が要求されている。
【0030】
ステータ組立体100は、対向して配設される円筒形状の上側ヨーク110と下側ヨーク130を有する。
【0031】
上側ヨーク110は、内周部に配設される磁極歯112,114を備え、上側ヨーク110内に配設される図示しないステータコイルにより磁界を発生させる。
【0032】
下側ヨーク130も上側ヨーク110と同様の構造を備えており、内周部にステータコイルにより磁界を発生させる磁極歯132、134を備えている。
【0033】
上側ヨーク110と下側ヨーク130の外周部には樹脂を内部に導入する導入穴116,136が対向して数か所に設けられており、上側ヨーク110と下側ヨーク130の内側及び内部は複雑な構成を備えている。本実施例では特に図示しないが外周部の4か所に設けられている。
【0034】
また、上側ヨーク110と下側ヨーク130の外周部には、横長の切欠き口部118,138が形成され、この切欠き口部118,138が上下に合わされて開口部が形成されて、ステータ組立体100内部からボビン端部126,146が延伸する。
【0035】
ボビン端部126,146は端子支持部材150を介して上下ステータコイルからの給電端子122,142を支持する。
【0036】
コネクタ枠部材30の結合部32の端縁部32aは、切欠き口部118,138による開口部周囲の円筒外面110a,130aと同一円弧形状となっており、切欠き口部118,138による開口部周囲の円筒外面110a,130aに、円弧状の端縁部32aが当接される構成となっている。
【0037】
電磁的駆動コイル装置全体の樹脂モールド成形を行う際には、
図3に示すように、先に成形されたコネクタ枠部材30を複雑な構造体のステータ組立体100に対して連結した上で全体を後工程としてモールド成形する。
【0038】
次に射出成形と成形手法について説明する。
図3で示した先に成形されたコネクタ枠部材30は、複雑な構造体のステータ組立体100に挿入されて連結体が構成され、
図4に示されるように、射出成形機(図示せず)の金型200内に配設される。この図にあっては、上側ヨーク110内に装備されるステータコイル120、ボビン124及び下側ヨーク130内に装備されるステータコイル140、ボビン144、コネクタ枠部材30が断面図により示されている。
【0039】
射出成形機の金型200は下金型210と上金型220を備え、上金型220は樹脂注入口240を有する。
【0040】
下金型210はステータ組立体100の内周部が挿入される中子212を有し、下金型210と上金型220はコネクタ枠部材30とステータ組立体100の外周部に樹脂層を形成するためのキャビティー230を形成する。
【0041】
コネクタ枠部材30が、下金型210のゲート部214と上金型220のゲート部224により挟持された状態で、樹脂注入口240からモールド樹脂Pを注入して、キャビティー230内に樹脂が注入されることにより
図1に示すステータ組立体100の外周部に樹脂層が形成されるとともに、この樹脂層とコネクタ枠部材30とが接合された電磁的駆動コイル装置1を成形する。
【0042】
また、注入されたモールド樹脂Pは、上側ヨーク110と下側ヨーク130の外周部に設けられた導入穴116、136から導入され、複雑な構造を備えた上側ヨーク110内に装備されるステータコイル120、ボビン124及び下側ヨーク130内に装備されるステータコイル140、ボビン144がモールド樹脂Pで封入される。
【0043】
本発明に係る電磁的駆動コイル装置の第1実施例の別形態としては、
図5に示されるように、
図1乃至3で示したコネクタ枠部材30とは別のコネクタ枠部材30aと樹脂モールド20とが接合して成形される。
【0044】
コネクタ枠部材30aは、先に示したコネクタ枠部材30に比べて小型の外観を有する点が異なるが、同様にガイド部34aやストッパ用突起37aを有し、相手側のコネクタに係合される。
【0045】
図3に示した先に成形したコネクタ枠部材30をコネクタ枠部材30aに変えてステータ組立体100と連結し、
図4に示す射出成形機の金型200内に配設し、樹脂注入口240からモールド樹脂Pを注入することで、電磁的駆動コイル装置1とは別種のコネクタ枠部材30aを有する電磁的駆動コイル装置1aを成形する。
【0046】
第1実施例の電磁的駆動コイル装置及び第1実施例の別形態で示したように、相手側のコネクタの種類に合わせて複数種類のコネクタ枠部材を先に成形して用意しておくことにより、適切なコネクタ枠部材をステータ組立体に連結した状態でステータ組立体の外周部を樹脂でモールドすることができる。それには、下金型210のゲート部214と上金型220のゲート部224により挟持されるコネクタ枠部材30及び30aの寸法を同一寸法にする必要がある。それによって、コネクタ枠部材が変更された場合においても射出成形用の金型を変更せずに電磁的駆動コイル装置を製造することができる。ここにおいても、複雑な構造を備えたステータ組立体と精密なモールドが要求されるコネクタ枠部材とを別々のモールドにより構成することができる。
【0047】
このように本発明の第1実施例にあっては、樹脂モールド20に接合する相手コネクタの種類に応じたコネクタ枠部材を先の成形工程により用意しておくことにより、そのコネクタ枠部材を複雑な構造体のステータ組立体100と組合せて種々の電磁的駆動コイル装置を効率的に製造することができる。
【0048】
ステータコイルを覆う樹脂とコネクタ枠部材の材料である樹脂は、別の成形工程により生産することから、別の種類の樹脂であってもよいが、製品全体の統一性や樹脂同士の接合性を考慮すると、同一の樹脂を用いることが望ましい。その際はコネクタ枠部材とステータ組立体の成形圧等の成形条件を変化させるのが望ましい。成形圧を変化させる場合は、コネクタ枠部材の成形圧力を高圧とするのが好ましい。
【実施例2】
【0049】
本発明に係る第2実施例の電磁的駆動コイル装置1b(
図8)は、ステータ組立体300と、給電端子303を包み込むコネクタ部304とから構成されており、図示しないプラグが着脱されるコネクタ部304の外周面には、プラグを係止するための外側ガイド部305、ストッパ用突起306が形成される。
【0050】
図7に示すように、ステータ組立体300には、対向して配設される円筒形状の上側ヨーク307と下側ヨーク308とを備え、これら上側ヨーク307と下側ヨーク308とに対応して、ステータコイル309(
図6)を巻いた上側ボビン310とステータコイル311を巻いた下側ボビン312とを備える。なお、上側ヨーク307と下側ヨーク308とは同形状であり、また、上側ボビン310と下側ボビン312とも同形状であり、それぞれに設けられた内ヨーク321(後述)が互いに対向して配置されたものであるため、下側ヨーク308と下側ボビン312の説明は省略し、上側ヨーク307と上側ボビン310について以下に説明する。
【0051】
上側ヨーク307は、磁極歯320を備えた内ヨーク321と磁極歯322を備えた外ヨーク323とが組合せされて構成されており、上側ボビン310に巻回されたステータコイル309に通電させることにより磁界を発生させる。
【0052】
上側ヨーク307の外周には、射出成形機で射出された樹脂を内部に導入する導入穴324(
図7)が形成されている。当該導入穴324は、外ヨーク323の外周に対して複数、具体的には4か所に設けられている。
【0053】
また、上側ヨーク307と下側ヨーク308との外周部には、横長の切欠き口部325,326が形成されている。この切欠き口部325,326には、ステータ組立体300内部からボビン310,312のボビン端部327,328が外側へ延伸するようにして設けられている。ボビン端部327,328は端子支持部材330を介して給電端子303を支持する。
【0054】
そして、後述するモールド成形を行う前には、ボビン端部327,328にあるステータコイル309,311の端部と給電端子303とは連結される。
【0055】
ここで、射出成形機により、樹脂材を用いて、電磁的駆動コイル装置1bをインナーモールドとアウターモールドの2回の工程によりモールド成形する方法について説明する。
【0056】
給電端子303がボビン端部327,328にあるステータコイル309,311の端部に連結された状態で、最初の成型工程として、低温・低圧な保圧工程により、上下ヨーク307,308の内側にインナーモールド成形を行う。それにより、上下ヨーク307,308の側壁に設けた導入穴324を通じて上下ヨーク307,308の内側に樹脂材Pが導入されることで、当該上下ヨーク307,308の内側にインナーモールド成形部331が封入される。それと共に、当該インナーモールド成形するときに供給された樹脂材Pにより、
図6に示すように、給電端子303の外周部を封入するようにインナーモールド成形部332が形成される。インナーモールド成形部332は、内側に形成されたインナーモールド成形部331と一体となって形成される。なお、インナーモールド成形における保圧工程を、低温・低圧で行う理由としては、ボビン310,312に巻いたステータコイル309,311が断線等により破損することを防止するためである。
【0057】
次に、
図8に示すように、インナーモールド成形を行ったときの樹脂材と、同種の樹脂材料である樹脂材を用いて、高温・高圧な保圧工程により、アウターモールド成形を行う。それにより、インナーモールド成形部331を有するステータ組立体300の外周部、及び、給電端子303の外周部を封入したインナーモールド成形部332の外周部が、アウターモールド成形部333により封入される。それと同時に、
図8及び
図9に示すように、給電端子303の先端側に位置する部分(インナーモールド成形部332)は、アウターモールド成形部333により、プラグを接続可能なコネクタ部304として形成される。
【0058】
なお、アウターモールド成形における保圧工程を、高温・高圧で行う理由としては、樹脂材にボイドが発生することがないよう防止するためであり、それにより、アウターモールド成形部333やこれにより覆われた部分の十分な強度を確保し、かつ、コネクタ部304の寸法精度を向上させるためである。また、インナーモールド成形を行うときの樹脂材と、アウターモールド成形を行うときの樹脂材とは、別の種類の樹脂材料であってもよいが、製品全体の統一性や樹脂同士の接合性を考慮し、同一の樹脂を用いている。
【0059】
以上のように本発明に係る第2実施例の電磁的駆動コイル装置1bの成形方法によれば、電磁的駆動コイル装置1bの外周部等が高圧な保圧工程でアウターモールド成形にて封入されることにより、電磁的駆動コイル装置1b内に水などの液体が侵入することがないようモールド成形部で阻止することができると共に、当該モールド成形部にボイドが発生してしまうことを防止することができる。従って、防水性と強度とを確保した電磁的駆動コイル装置1bを提供することができる。
【0060】
さらに、上下ヨーク307,308の内側に樹脂材を導入するなどして、インナーモールド成形を行うとき、低圧な保圧工程で行われることから、ステータ組立体300に備えた、外圧により比較的簡単に破損等してしまうようなステータコイル309,311の断線を防止することができる。
【0061】
その一方で、インナーモールド成形されたインナーモールド成形部331は、ステータコイル309,311の断線等の影響を考慮し、低圧な保圧工程で行われるため、ボイド等の発生により、十分な強度を確保することが困難な懸念があるが、こうしたインナーモールド成形部331を有するステータ組立体300の外周部、及び、インナーモールド成形を行うときに供給される樹脂材によりモールド成形された、給電端子303の外周部のインナーモールド成形されたインナーモールド成形部332は、アウターモールド成形部333により覆われることから、インナーモールド成形部331,332は、アウターモールド成形部333により覆われた2重のモールド構造となり、特に、低圧な保圧工程でモールド成形された部分の強度を十分に高めることができる。
【0062】
さらに、コネクタ部304は、アウターモールド成形部333の一部として形成されたものであり、樹脂材の充填精度を高めることが可能な高温・高圧な保圧工程により成形されたものであることから、該コネクタ部304の品質のばらつきを防止でき、それにより、プラグとの接続部の密着度を高めることが可能となり、ひいては防水性を高めることが可能となる。
【0063】
以上、実施例1及び実施例2について説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例2の変形例として、サイズは大きくなるものの、インナーモールド成形部331を上下ヨーク307,308の外側まで形成するようにしてもよく、また、成形性や、射出成形機の金型の構成等を考慮し、上下ヨーク307,308は、ステータ組立体300に対し、インナーモールド成形後に装着するようにしてもよい。
【0064】
さらに、
図6に示したステータ組立体300から上下2つの外ヨーク323を取り外した状態でインナーモールドを行い、その後、前記2つの外ヨーク323を装着し、この状態でアウターモータ成形を行ってもよい。この場合、ステータ組立体300から2つの外ヨーク323を除外したものであってもステータ組立体とすることができる。
【0065】
また、実施例2における電磁的駆動コイル装置1bの成形方法においては、インナーモールド成形を行うときには、複数の導入穴324を通じてヨーク307,308の内側に樹脂材が導入され、アウターモールド成形を行うときには、
図4に示されるような、複数ではなく1箇所の樹脂注入口240から樹脂材が導入される。その理由としては、インナーモールド成形の場合は、ステータ組立体300の内部は複雑な構造であり、かつ樹脂材導入時のステータコイル309,311の損傷を防止するため、樹脂材の導入は低圧で行うと良いことから、インナーモールド成形を行うときに導入される樹脂材は複数の導入穴324から導入するが、もちろん1箇所の導入穴からの導入でも良い。
【0066】
また、アウターモールド成形を行う場合は、樹脂注入口240は複数箇所でも良いが、樹脂導入を複数の樹脂注入口240から行うと、各注入口から流れる樹脂の合流部分においていわゆるウェルドラインが生じ、その部分における強度が弱くなり、温度変化により該ウェルドラインに亀裂が生じて水分が侵入する懸念がある。したがって、ウェルドラインの発生を防止すべく樹脂注入口240は1箇所(例えば電磁的駆動コイル装置1bの天井部分一か所)とするのが望ましい。もちろん、ウェルドラインの形成を許容すれば複数箇所でも良い。