特許第6656320号(P6656320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656320
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】工作機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20200220BHJP
   G05B 19/406 20060101ALI20200220BHJP
   G06F 16/11 20190101ALI20200220BHJP
   G06F 11/14 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   G05B19/18 X
   G05B19/406 Z
   G06F16/11
   G06F11/14 658
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-141331(P2018-141331)
(22)【出願日】2018年7月27日
(65)【公開番号】特開2020-17192(P2020-17192A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174942
【弁理士】
【氏名又は名称】平方 伸治
(72)【発明者】
【氏名】矢田 賢一
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−164002(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/008484(WO,A1)
【文献】 特開2007−018465(JP,A)
【文献】 特開2005−215955(JP,A)
【文献】 特開2005−327199(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/001073(WO,A1)
【文献】 特開2009−020748(JP,A)
【文献】 特開2010−015316(JP,A)
【文献】 特開2003−288277(JP,A)
【文献】 特開2006−260128(JP,A)
【文献】 特開2009−157819(JP,A)
【文献】 特開2011−090550(JP,A)
【文献】 特開2016−195300(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0249956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05−23/02
G06F 3/06−16/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NCプログラムによって工作機械の動作を制御する、工作機械の制御装置において、
前記NCプログラムを読み取り、前記工作機械の送り装置をサーボ制御する、NC装置と、
表示部及び操作部を有する操作盤であって、前記工作機械を運転させるための指令を受け付けて、前記指令に基づいた運転信号を送信するように構成された、操作盤と、
前記NCプログラム又は前記操作盤からの前記運転信号に応じて、前記工作機械のシーケンス制御を実行する、機械制御装置と、
前記NC装置に入力される前記NCプログラム及びNCパラメータのデータ、並びに、前記機械制御装置が使用するシーケンス制御プログラム及び機械パラメータのデータを記憶する、データ記憶装置と、
前記機械制御装置との通信を接続及び切離し可能なスイッチを介して、前記機械制御装置に接続される、外部記憶装置と、
を備え、
前記操作盤は、任意のバックアップ項目を予め選択するための複数のバックアップ項目ボタンと、バックアップのタイミングを予め設定するためのボックスと、前記ボックスで設定されたタイミングにバックアップを開始させるための開始ボタンと、を表示するように構成されており、
前記機械制御装置は、
前記操作盤の前記ボックスにおいて予め設定されたタイミングで前記スイッチを接続し、前記データ記憶装置のデータのなかから前記操作盤の前記バックアップ項目ボタンにおいて予め選択されたバックアップ項目を前記外部記憶装置にバックアップし、且つ、バックアップ後に前記スイッチを切離しする、バックアップ処理部と、
前記操作盤からデータのリストアが指令されたときに前記スイッチを接続し、前記外部記憶装置から前記データ記憶装置へデータをリストアし、且つ、リストア後に前記スイッチを切離しする、リストア処理部と、
を有することを特徴とした工作機械の制御装置。
【請求項2】
前記リストア処理部は、前記操作盤からリストアを指令した人の権限に応じて、予め決められたデータをリストアする、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項3】
前記予め設定されたタイミングは、指定された時刻、工作機械の電源オン時、及び、工作機械の電源オフ時の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、工作機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械に用いられるデータをバックアップするための様々な構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、メモリカード等の可搬の記憶媒体に、データをバックアップすることが可能な工作機械制御装置を開示している。この制御装置では、作業者が記憶媒体を記憶媒体ドライブ手段に装着すると、チェック手段が、特定ファイルが記憶媒体に存在するか否かをチェックする。この制御装置では、特定ファイルが記憶媒体に存在することが、バックアップ開始条件である。特定ファイルが記憶媒体に存在する場合、バックアップ動作が開始される。このような構成によって、特定ファイルを含んでいない記憶媒体が装着された場合に、バックアップ動作が開始されることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−260128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の制御装置では、作業者が記憶媒体を記憶媒体ドライブ手段に装着したときにデータがバックアップされるため、例えば作業者がバックアップ作業を失念した場合には、データがバックアップされない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決しつつ、制御装置内のデータを自動的に高いセキュリティでバックアップでき、かつ、データの復元時には高いセキュリティでデータをリストアできる、工作機械の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、NCプログラムによって工作機械の動作を制御する、工作機械の制御装置において、NCプログラムを読み取り、工作機械の送り装置をサーボ制御する、NC装置と、表示部及び操作部を有する操作盤であって、工作機械を運転させるための指令を受け付けて、指令に基づいた運転信号を送信するように構成された、操作盤と、NCプログラム又は操作盤からの運転信号に応じて、工作機械のシーケンス制御を実行する、機械制御装置と、NC装置に入力されるNCプログラム及びNCパラメータのデータ、並びに、機械制御装置が使用するシーケンス制御プログラム及び機械パラメータのデータを記憶する、データ記憶装置と、機械制御装置との通信を接続及び切離し可能なスイッチを介して機械制御装置に接続される、外部記憶装置と、を備え、機械制御装置は、予め設定されたタイミングでスイッチを接続し、データ記憶装置のデータを外部記憶装置にバックアップし、且つ、バックアップ後にスイッチを切離しする、バックアップ処理部と、操作盤からデータのリストアが指令されたときにスイッチを接続し、外部記憶装置からデータ記憶装置へデータをリストアし、且つ、リストア後にスイッチを切離しする、リストア処理部と、を有する、工作機械の制御装置である。
【0007】
本開示の一態様による工作機械の制御装置は、データ記憶装置に加えて、外部記憶装置を備えており、この外部記憶装置は、スイッチを介して機械制御装置に接続されている。そして、予め設定されたタイミングでスイッチが接続され、ひとたびデータが外部記憶装置にバックアップされるとスイッチは切離される。このような構成によれば、予め設定されたタイミングでデータが自動的にバックアップされ、かつ、バックアップ時以外にはスイッチは切り離されている。したがって、制御装置内のデータを自動的に高いセキュリティでバックアップできる。同様に、上記の制御装置では、データのリストアが指令されたときにスイッチが接続され、ひとたび外部記憶装置からデータがリストアされるとスイッチは切離される。このような構成によれば、リストア時以外には、スイッチは切り離されている。したがって、データの復元時には高いセキュリティでデータをリストアできる。
【0008】
リストア処理部は、操作盤からリストアを指令した人の権限に応じて、予め決められたデータをリストアしてもよい。例えば、リストアを指令した人が工作機械の作業者である場合、いくつかの情報は必要でない可能性がある。このような必要でない情報が表示部に表示された場合、作業者は困惑する可能性がある。上記の構成によれば、リストアを指令した人の権限に応じて予め決められたデータがリストアされるので、適切なデータのみをリストアすることができる。
【0009】
予め設定されたタイミングは、指定された時刻、工作機械の電源オン時、及び、工作機械の電源オフ時の少なくとも1つを含んでもよい。これらのタイミングの1つ又は複数でバックアップを行うことで、バックアップデータを新しいものに維持することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、制御装置内のデータを自動的に高いセキュリティでバックアップでき、データの復元時には高いセキュリティでデータをリストアできる、工作機械の制御装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る工作機械の制御装置を含むシステムを示す概略ブロック図である。
図2】操作盤に表示される画像の一例である。
図3】操作盤に表示されるバックアップの設定に関する画像の一例である。
図4】操作盤に表示される権限の選択に関する画像の一例である。
図5】操作盤に表示されるリストアの設定に関する画像の一例である。
図6】制御装置のバックアップの動作を示すフローチャートである。
図7】制御装置のリストアの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る工作機械の制御装置を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺は変更されている場合がある。
【0013】
図1は、実施形態に係る工作機械の制御装置を含むシステムを示す概略ブロック図である。システム100は、工作機械1と、制御装置2と、を具備している。工作機械1は、様々な種類のNC工作機械(例えば、マシニングセンタ、放電加工機又はレーザ加工機等)であることができ、NCプログラムに基づいてその動作が制御される。
【0014】
制御装置2は、NCプログラムを含む様々な種類のデータに基づいて、工作機械1の動作を制御する。制御装置2は、工作機械1の任意の構成要素(例えば、カバー又はベッド等)に取り付けられてもよく、又は、その周辺に配置されてもよい。制御装置2は、NC装置3と、操作盤4と、機械制御装置5と、データ記憶装置6と、外部記憶装置7と、を備えており、これらの構成要素は、例えばバス等によって接続されている。また、機械制御装置5及び外部記憶装置7は、セキュリティスイッチ8を介して接続されている。
【0015】
NC装置3は、外部から又は機械制御装置5から入力されたNCプログラムを読み取って、工作機械1の送り装置をサーボ制御する。NC装置3には、NCプログラムと、NCプログラム中で使用されるNCパラメータとが入力される。NC装置3は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)等の構成要素を含むことができる。
【0016】
操作盤4は、ユーザに対して情報を示すように構成された表示部41と、ユーザからの指令を受け付けるように構成された操作部42と、を含むことができる。操作盤4は、例えば、タッチパネルを含むことができる。また、操作盤4は、液晶ディスプレイ等の表示装置、並びに、キーボード、マウス及び/又はボタン等の入力装置を含んでもよい。操作盤4は、例えば、工作機械1の電源をオン及びオフするためのボタン、及び、工作機械1のサイクル動作をスタートさせるためのボタン等、様々なボタンを含んでいてもよい。ユーザは、操作部42を通して、工作機械1の運転及び制御装置2の動作に関する様々な指令を制御装置2に入力することができる。操作盤4は、入力された指令に基づいて、工作機械1の運転信号及び制御装置2の動作信号を機械制御装置5に送信する。
【0017】
機械制御装置5は、工作機械1のシーケンス制御を含む処理を実行する。機械制御装置5は、例えば、CPU等のプロセッサ、ROM及びRAM等の構成要素を含むことができる。機械制御装置5は、汎用処理部51と、PLC(Programmable Logic Control)処理部52と、バックアップ処理部53と、リストア処理部54と、を有しており、これらの処理部は、例えば、データ記憶装置6に記憶されているプログラムをプロセッサによって実行することで実現されることができる。
【0018】
汎用処理部51は、例えば、データの入力及び出力に関する制御、表示部41に示される画像に関する制御、並びに、データ記憶装置6に対するデータの書き込み及び読み出しに関する制御を実行する。汎用処理部51は、これら以外の制御を実行してもよい。
【0019】
PLC処理部52は、NCプログラム又は操作盤4からの運転信号に応じて、工作機械1のシーケンス制御を実行する。このようなシーケンス制御は、例えば、自動工具交換装置の動作に関する制御、及び/又は、自動パレット交換装置の動作に関する制御等を含む。PLC処理部52は、これら以外の制御を実行してもよい。PLC処理部52が使用するシーケンス制御プログラム(本開示において、PLCラダーとも称され得る)は、データ記憶装置6に記憶されることができる。
【0020】
バックアップ処理部53は、予め設定されたタイミングでセキュリティスイッチ8を接続し、データ記憶装置6のデータを外部記憶装置7にバックアップし、且つ、バックアップ後にセキュリティスイッチ8を切離しする(バックアップ処理部53の詳しい動作は、後述)。「予め設定されたタイミング」は、指定された時刻、工作機械の電源オン時、及び、工作機械の電源オフ時の少なくとも1つを含むことができ、操作盤4を通じてユーザによって設定されることができる(詳しくは、後述)。
【0021】
リストア処理部54は、操作盤4からデータのリストアが指令されたときに、セキュリティスイッチ8を接続し、外部記憶装置7からデータ記憶装置6へデータをリストアし、且つ、リストア後にセキュリティスイッチ8を切離しする(リストア処理部54の詳しい動作は、後述)。
【0022】
データ記憶装置(本開示において、「第1の記憶装置」とも称され得る)6は、工作機械1及び制御装置2に関する様々な種類のデータを記憶する。データ記憶装置6は、例えば、1つ又は複数のハードディスク等の補助記憶装置を含むことができる。データ記憶装置6は、例えば、NC装置3に入力されるNCプログラム及びNCパラメータ、機械制御装置5が使用するシーケンス制御プログラム及び機械パラメータ、機械制御装置5が有する処理部を実現するためのプログラム、NC装置3及び機械制御装置5をウィルス感染から保護するためのプログラム(例えば、ホワイトリスト方式又はブラックリスト方式のプログラム)、並びに、工作機械1及び制御装置2に関する他のデータ等を記憶することができる。
【0023】
外部記憶装置7は、データ記憶装置6に記憶されているデータをバックアップする。また、外部記憶装置7にバックアップされたデータは、必要な時に(例えば、データ記憶装置6内のデータが消失した時に)データ記憶装置6にリストアされることができる。外部記憶装置7は、例えば、ハードディスクドライブ、並びに、USBフラッシュメモリ及びCFカード等の補助記憶装置を含むことができる。
【0024】
セキュリティスイッチ8は、機械制御装置5と外部記憶装置7との間の通信を接続及び切離し可能に構成されている。セキュリティスイッチ8は、例えば、機械制御装置5から接続信号を受信するまでは、常時切り離されていることができる。セキュリティスイッチ8は、例えば、接続時には機械制御装置5が外部記憶装置7を認識できるように構成されており、且つ、切離し時には外部記憶装置7が物理的に機械制御装置5と接続されていても機械制御装置5が外部記憶装置7を認識できないように構成された、プログラムによるソフトウェアベースのスイッチであることができる。代替的に、セキュリティスイッチ8は、機械制御装置5と外部記憶装置7との間の回路に設けられた電子部品としての任意のスイッチであってもよく、機械制御装置5からの信号にしたがって接続及び切離しを切り換えることができる。また、代替的に、セキュリティスイッチ8は、機械制御装置5から接続信号を受信するまでは、外部記憶装置7を物理的にハードウェアインタフェースから切離し、機械制御装置5から接続信号を受信したときに、外部記憶装置7をハードウェアインタフェースに挿入する、例えばシリンダ等を含む機械的な直動機構であってもよい。
【0025】
本実施形態に係るシステム100では、機械制御装置5は、ユーザLANサーバ101、クラウドサーバ102及び工作機械保守会社のサーバ103とそれぞれネットワークN1,N2及びN3によって接続されている。ユーザLANサーバ101は、例えば、工作機械1を使用する会社のサーバであることができ、ネットワークN1は、社内ネットワークであることができる。ネットワークN2及びN3は、例えば、インターネットであることができる。ユーザLANサーバ101、クラウドサーバ102及び工作機械保守会社のサーバ103は、セキュリティスイッチ8を介して機械制御装置5と接続されており、機械制御装置5は、外部記憶装置7に加えて、これらのサーバにデータ記憶装置6に記憶されているデータをバックアップすることができる。本開示において、外部記憶装置7、ユーザLANサーバ101、クラウドサーバ102及び工作機械保守会社のサーバ103のうちの任意の1つ又は任意の組合せが、「第2の記憶装置」と称され得る。
【0026】
上記のような機械制御装置5は、NC装置3又は機械制御装置5がウィルスに感染した場合に、セキュリティスイッチ8の接続を禁止することができる。例えば、制御装置2がウィルス感染から保護するためのプログラムを有している場合、制御装置2は、NC装置3又は機械制御装置5がウィルスに感染したか否かを判定することができる。また、例えば、作業者が異常に気付いたときに、ウィルス感染が発見され得る。ウィルス感染が見つかった場合、機械制御装置5は、例えば、接続禁止指令のフラグをオンにすることによって、セキュリティスイッチ8に接続信号が送信されることを禁止することができる。このような構成によって、NC装置3又は機械制御装置5がウィルスに感染した場合、セキュリティスイッチ8の接続が禁止され、外部記憶装置7(又は、第2の記憶装置)の安全が保たれる。この場合、データ記憶装置6は初期化されてデータ記憶装置6内の全てのデータは消去され、OS(Operating System)は再インストールされる。そして、外部記憶装置7に記憶されているバックアップデータがデータ記憶装置6にリストアされ、NC装置3及び機械制御装置5を再び使用することができる。以上のような構成によって、セキュリティスイッチ8は、外部記憶装置7(又は、第2の記憶装置)がウィルス感染するリスクを低減することができる。
【0027】
次に、操作盤4の表示部41に表示される画面の例について説明する。
【0028】
図2は、操作盤に表示される画像の一例であり、バックアップ・リストアが選択されたときの初期画面であることができる。画像は、左側の領域DLと右側の領域DRとを含んでいる。左側の領域DLには、様々なボタンが含まれている。例えば、左側の領域DLの上部にある「設定」ボタンを押すと、左側の領域DLに、「バックアップ・リストア」を含む、設定に関する様々なボタンが表示される。「バックアップ・リストア」ボタンを押すと、右側の領域DRに「バックアップ」ボタン及び「リストア」ボタンが表示され、ユーザは「バックアップ」ボタン及び「リストア」ボタンのいずれかを押すことができる。
【0029】
続いて、バックアップの設定に関する画像について説明する。図3は、操作盤に表示されるバックアップの設定に関する画像の一例である。図2において右側の領域DRの「バックアップ」ボタンが押されると、図3に示される画像が表示される。
【0030】
左側の領域DLには、既に外部記憶装置7(又は、第2の記憶装置)にバックアップされているデータが格納されたフォルダが表示されている。後述されるように、フォルダ名はバックアップが実行される年月日及び時刻であってもよく、図3の例では、左側の領域DLに示されるように、2018年7月2日〜6日の各日の12時にデータがバックアップされている(計5回)。
【0031】
各タイミングのバックアップは、差分バックアップであってもよく、又は、フルバックアップであってもよい。差分バックアップが実行される場合、例えば、図3の例では、初回の2018年7月2日のフォルダは、このバックアップ時に選択された全てのデータ項目の全てのデータを含んでもよい。2回目の2018年7月3日のフォルダは、初回のデータに対する追加、更新及び変更のみを含んでもよい。同様に、3,4,5回目の2018年7月4,5,6日のフォルダは、それぞれ、2,3,4回目のデータに対する追加、更新及び変更のみを含んでもよい。
【0032】
右側の領域DRの上部には、バックアップを実行するタイミングを予め設定するためのボックスB1が表示されている。ボックスB1を使用することによって、ユーザは、「指定された時刻」、「工作機械の電源オン時」、及び、「工作機械の電源オフ時」の少なくとも1つを選択することができる。「指定された時刻」が選択された場合には、ユーザは、例えば、毎日の決まった時刻、又は、毎週の決まった曜日の決まった時刻等を指定することができる。
【0033】
右側の領域DRにおいてボックスB1の下方には、バックアップされるデータの名前(例えば、バックアップされるデータが格納されるフォルダ名)を指定するためのボックスB2が表示されている。例えば、ボックスB2に何も指定しない場合には、バックアップが実行される年月日及び時刻がフォルダ名に指定されてもよい。また、例えば、既に外部記憶装置7(又は、第2の記憶装置)に存在するフォルダ名がボックスB2に指定されてもよい。
【0034】
右側の領域DRにおいてボックスB2の下方には、バックアップされるデータのパスを指定するためのボックスB3が表示されている。ボックスB3を使用することによって、ユーザは、外部記憶装置7(又は、第2の記憶装置)内でバックアップされるデータの保存場所を指定することができる。
【0035】
右側の領域DRにおいてボックスB3の下方には、バックアップ項目の複数のボタンBDが列挙されている。例えば、ユーザは、各項目のボタンBDを押すことによって、バックアップされる項目を選択することができる。また、例えば、ユーザは、全選択ボタンBT1を押すことによって、全ての項目を選択してもよい。代替的に、図3の画像が表示されたときに、全ての項目が予め選択されていてもよい。この場合、ユーザは、各項目のボタンを押すことによって、バックアップしない項目を選択解除することができ、また、全選択ボタンBT1を押すことによって、全ての項目を選択解除することができる。
【0036】
図3に示されるように、バックアップ項目は、例えば、NCプログラム、加工条件グループ、ワークオフセット、マクロ変数、マクロプログラム、機械パラメータ、NCパラメータ、PLCラダー、機能操作、カスタムビュー、及び、外部処理呼び出し等を含むことができる。バックアップされるデータには、他の項目が含まれてもよい。
【0037】
加工条件グループは、加工条件に関する値であり、例えば、工作機械1が放電加工機である場合、加工条件グループは、電流、電圧、オンタイム、オフタイム等を含むことができ、工作機械1がレーザ加工機である場合、加工条件グループは、レーザ出力値及びパルス周波数等を含むことができ、工作機械1がマシニングセンタ、NCフライス盤、NC旋盤、NC研削盤等の機械加工機である場合、加工条件グループは、工具のタイプ及びオフセット量等を含むことができる。ワークオフセットは、加工されるワークに固有の座標系であり、例えばCAD(Computer Aided Designing)又はCAM(Computer Aided Manufacturing)等で設定可能である。機械パラメータは、機械に固有な固定パラメータであり、例えば、工作機械1におけるソフトリミット等を含むことができる。NCパラメータは、NCプログラムで使用されるパラメータである。PLCラダーは、シーケンス制御を実行するために使用されるプログラムである。機能操作は、表示部41に表示される機能操作ボタンを使用するために必要なプログラムを含むことができる。カスタムビューは、工作機械1におけるモニタリングのためのプログラムを含むことができる。外部処理呼び出しは、外部機器と通信するために必要なプログラムを含むことができる。以上で説明されていないデータ項目を含め、これらのデータ項目は、当業者にはよく知られていることに留意されたい。
【0038】
右側の領域DRにおいてボタンBDの下方には、上記の設定にしたがってバックアップを開始するための開始ボタンBT2が表示されている。開始ボタンBT2が押されることによって、ボックスB1で設定されたタイミングにバックアップが開始される。
【0039】
続いて、リストアの設定に関する画像について説明する。図4は、操作盤に表示される権限の選択に関する画像の一例であり、図5は、操作盤に表示されるリストアの設定に関する画像の一例である。例えば、図2において右側の領域DRの「リストア」ボタンが押されると、図4に示される画面が表示される。
【0040】
ユーザは、ユーザの権限に応じて、ボタンBT3,BT4,BT5のいずれかを押す。ボタンBT3は、リストアできるデータ項目が最も制限されている権限を示し、例えば工作機械1の作業者によって押され得る。ボタンBT4は、リストアできるデータ項目のいくつが制限されている権限を示し、例えば工作機械1の保守者(例えば、工作機械保守会社からの保守者)によって押され得る。ボタンBT5は、全てのデータをリストアすることができる権限を示し、例えば工作機械1の管理者(例えば、工作機械1を使用する会社の工作機械1の管理に関する責任者)によって押され得る。
【0041】
ボタンBT3,BT4,BT5のいずれかが押されると、機械制御装置5は、パスワードを入力するための画面(不図示)を操作盤4の表示部41(図1参照)に表示することができる。各権限に対応するパスワードが、例えばデータ記憶装置6に記憶されていることができる。操作部42を通じてユーザから入力されたパスワードが、記憶されているパスワードに対応する場合、機械制御装置5は、図5に示される画像を表示することができる。
【0042】
左側の領域DLには、既に外部記憶装置7(又は、第2の記憶装置)にバックアップされているデータが格納されたフォルダが表示されている。ユーザは、チェックボックスにチェックを入れることによって、表示されているフォルダの中から、ユーザがリストアしたいデータが格納されているフォルダを選択することができる。
【0043】
右側の領域DRの上部には、ユーザがリストアしたい外部記憶装置7(又は、第2の記憶装置)内のバックアップデータ名(又は、バックアップデータが格納されたフォルダ名)を指定するためのボックスB4が表示されている。ユーザは、上記のように、左側の領域DLに表示されているフォルダのチェックボックスにチェックを入れることによってフォルダ名を指定してもよく、又は、ボックスB4に直接的にフォルダ名を入力してもよい。
【0044】
右側の領域DRにおいてボックスB4の下方には、リストア項目の複数のボタンRDが列挙されている。ボタンRDは、操作部42を通じて入力されたパスワードに対応する権限に応じて、表示されている。例えば、図5の例は、ボタンBT4(保守者用のボタン)(図4参照)が押されて、対応するパスワードが入力されたときの画像を示している。図5のリストア項目のボタンRDと、図3のバックアップ項目のボタンBDと、を比較すると、図5では、「マクロ変数」が表示されていない。「マクロ変数」は、管理者には必要であり得るが保守者には必要でないため、保守者がリストアできるデータ項目からは除外されている。
【0045】
例えば、ユーザは、各項目のボタンRDを押すことによって、表示されているデータ項目の中から、リストアされる項目を選択することができる。また、例えば、ユーザは、全選択ボタンBT6を押すことによって、全ての項目を選択してもよい。代替的に、図5の画像が表示されたときに、全ての項目が予め選択されていてもよい。この場合、ユーザは、各項目のボタンを押すことによって、リストアしない項目を選択解除することができ、また、全選択ボタンBT6を押すことによって、全ての項目を選択解除することができる。
【0046】
右側の領域DRの下部には、上記の設定にしたがってリストアを開始するための開始ボタンBT7が表示されている。開始ボタンBT7が押されることによって、リストアが開始される。
【0047】
リストアは、初回のバックアップ時のバックアップデータと、2回目以降のバックアップ時の差分データとを用い、これによって、指定されたバックアップデータ名のバックアップ時にデータ記憶装置6内に保存されていたデータを復元することができる。
【0048】
次に、制御装置2の動作について説明する。先ず、バックアップの動作について説明する。図6は、制御装置のバックアップの動作を示すフローチャートである。
【0049】
バックアップ処理部53は、上記のバックアップの開始ボタンBT2(図3参照)が押されることによって、図6に示されるように、バックアップ実施タイミングを読み込む(ステップS100)。続いて、バックアップ処理部53は、現在の時刻がバックアップ開始時刻になったか否かを判定する(ステップS102)。ステップS102において現在の時刻がバックアップ開始時刻になっていないと判定された場合、バックアップ処理部53は、ステップS102を例えば所定の時間後に再び実行する。
【0050】
ステップS102において現在の時刻がバックアップ開始時刻になったと判定された場合、バックアップ処理部53は、セキュリティスイッチ8の接続禁止指令が出ているか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104においてセキュリティスイッチ8の接続禁止指令が出ていると判定された場合、バックアップ処理部53は、バックアップを実行せずに一連の動作を終了する。
【0051】
ステップS104においてセキュリティスイッチ8の接続禁止指令が出ていないと判定された場合、バックアップ処理部53は、セキュリティスイッチ8を接続する(ステップS106)。続いて、バックアップ処理部53は、今回が初回のバックアップであるか否かを判定する(ステップS108)。ステップS108において今回が初回のバックアップであると判定された場合、バックアップ処理部53は、フルバックアップを実行する(ステップS110)。続いて、バックアップ処理部53は、セキュリティスイッチ8を切り離し(ステップS112)、一連の動作を終了する。
【0052】
ステップS108において今回が初回のバックアップではないと判定された場合、バックアップ処理部53は、差分バックアップを実行する(ステップS114)。続いて、バックアップ処理部53は、セキュリティスイッチ8を切り離し(ステップS112)、一連の動作を終了する。
【0053】
続いて、リストアの動作について説明する。図7は、制御装置のリストアの動作を示すフローチャートである。
【0054】
リストア処理部54は、上記のボタンBT3,BT4,BT5(図4参照)のいずれかが押されることによって、図7に示されるように、リストアの権限を読み込む(ステップS200)。続いて、リストア処理部54は、操作部42を通じて入力されたパスワードが正しいか否かを判定する(ステップS202)。ステップS202においてパスワードが正しくないと判定された場合、リストア処理部54は、ステップS200〜ステップS202を再び実行する。
【0055】
ステップS202においてパスワードが正しいと判定された場合、リストア処理部54は、権限に応じたリストア項目を表示する(ステップS204)。続いて、リストア処理部54は、指定されたリストア項目及びバックアップデータのファイル名を認識する(ステップS206)。続いて、リストア処理部54は、セキュリティスイッチ8の接続禁止指令が出ているか否かを判定する(ステップS208)。ステップS208においてセキュリティスイッチ8の接続禁止指令が出ていると判定された場合、リストア処理部54は、リストアを実行せずに一連の動作を終了する。
【0056】
ステップS208においてセキュリティスイッチ8の接続禁止指令が出ていないと判定された場合、リストア処理部54は、セキュリティスイッチ8を接続する(ステップS210)。続いて、リストア処理部54は、外部記憶装置7内のバックアップデータをデータ記憶装置6にリストアする(ステップS212)。続いて、リストア処理部54は、セキュリティスイッチ8を切離し(ステップS214)、一連の動作を終了する。
【0057】
以上のような本実施形態に係る工作機械1の制御装置2は、データ記憶装置6に加えて、外部記憶装置7を備えており、この外部記憶装置7は、セキュリティスイッチ8を介して機械制御装置5に接続されている。そして、予め設定されたタイミングでセキュリティスイッチ8が接続され、ひとたびデータが外部記憶装置7にバックアップされるとセキュリティスイッチ8は切離される。このような構成によれば、予め設定されたタイミングでデータが自動的にバックアップされ、かつ、バックアップ時以外にはセキュリティスイッチ8は切り離されている。したがって、データ記憶装置6内のデータを自動的に高いセキュリティでバックアップできる。同様に、制御装置2では、データのリストアが指令されたときにセキュリティスイッチ8が接続され、ひとたび外部記憶装置7からデータがリストアされるとセキュリティスイッチ8は切離される。このような構成によれば、リストア時以外には、セキュリティスイッチ8は切り離されている。したがって、データの復元時には高いセキュリティでデータをリストアできる。
【0058】
また、本実施形態に係る制御装置2では、リストア処理部54は、操作盤4からリストアを指令した人の権限に応じて、予め決められたデータをリストアする。例えば、リストアを指令した人が工作機械1の作業者である場合、いくつかの情報は必要でない可能性がある。このような必要でない情報が表示部41に表示された場合、作業者は困惑する可能性がある。本実施形態の構成によれば、リストアを指令した人の権限に応じて予め決められたデータがリストアされるので、適切なデータのみをリストアすることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る制御装置2では、予め設定されたタイミングは、指定された時刻、工作機械の電源オン時、及び、工作機械の電源オフ時の少なくとも1つを含んでいる。これらのタイミングの1つ又は複数でバックアップを行うことで、バックアップデータを新しいものに維持することができる。
【0060】
また、本実施形態に係るシステム100は、工作機械1と、制御装置2であって、NC装置3と、操作盤4と、機械制御装置5と、第1の記憶装置6と、を有する、制御装置2と、を備え、当該システム100は、制御装置2内の外部記憶装置7及び制御装置2外の外部サーバ(ユーザLANサーバ101、クラウドサーバ102、工作機械保守会社のサーバ103)の少なくとも1つを含む、第2の記憶装置を更に備えており、機械制御装置5は、接続及び切離し可能なセキュリティスイッチ8を介して第2の記憶装置に接続されており、機械制御装置5は、予め設定されたタイミングでセキュリティスイッチ8を接続し、第1の記憶装置6のデータを第2の記憶装置にバックアップし、且つ、バックアップ後にセキュリティスイッチ8を切離しする、バックアップ処理部53と、操作盤4からデータのリストアが指令されたときにセキュリティスイッチ8を接続し、第2の記憶装置から第1の記憶装置6へデータをリストアし、且つ、リストア後にセキュリティスイッチ8を切離しする、リストア処理部54と、を有している。システム100では、データ記憶装置6内のデータを自動的に高いセキュリティで制御装置2内の外部記憶装置7及び制御装置2外の外部サーバの少なくとも1つにバックアップでき、かつ、データの復元時には高いセキュリティでデータをリストアできる。
【0061】
工作機械1の設置された工場現場において、決められたタイミングでオペレータの介入がなくても、自動的に、確実にデータのバックアップが行われ、機械の不具合や故障などのまさかの時に備えることができる。例えば、制御装置2や周辺装置のどこかに不具合、故障が発生し、機器を交換後、リストア作業を行うことで、工作機械1を設置した加工現場において、短時間で不具合、故障発生前の状態に戻すことができる。
【0062】
また、過去に実施した加工のNCプログラムや加工条件がデータ記憶装置6に存在しない場合、操作盤4の表示部41の指示に従ってリストア作業を行うことで、過去に実施した加工と同じ形状、精度の加工を容易に再現することができる。
【0063】
ユーザLANサーバ101を介して工作機械1を設置している工場の生産管理システムで、各工作機械1のデータのバックアップ、リストアの管理を行うことができる。また、クラウドサーバ102を介して社外の外部記憶装置にデータのバックアップができ、火災などの災害に強いデータの保護が行える。更に、工作機械保守会社のサーバ103を介して遠隔操作による工作機械データのバックアップ、リストアを行うことにより、専門家により最短、最小限の工数で機械を復旧させることが可能になる。
【0064】
工作機械の制御装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解するだろう。また、当業者であれば、1つの実施形態に含まれる特徴は、矛盾が生じない限り、他の実施形態に組み込むことができる、又は、他の実施形態に含まれる特徴と交換可能であることを理解するだろう。
【符号の説明】
【0065】
1 工作機械
2 制御装置
3 NC装置
4 操作盤
5 機械制御装置
6 データ記憶装置
7 外部記憶装置
8 セキュリティスイッチ
41 表示部
42 操作部
53 バックアップ処理部
54 リストア処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7