【文献】
渡邉 真也,護師勤務表作成問題に対するヒューリスティクスおよび厳密解法に基づくアプローチの現在,オペレーションズ・リサーチ,公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会,2017年 3月 1日,第62巻第3号,第178−184頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記探索不要なノードは、患者との組み合わせが不可である看護師のノード、訪問履歴がない看護師のノード、業務時間が看護師の基本勤務時間に適合しない看護師のノードのうちの1つまたは複数のノードである、請求項3に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。複数の図面において同一の符号は同一の要素を表し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る生体情報・業務管理システムの構成を例示する図である。
図1は概略的に、生体情報取得デバイス100、ユーザデバイス110、ネットワーク120、生体情報システム130、および業務管理システム140を例示する。
図1はまた、生体情報システム130が生体情報管理サーバ131、生体情報DB132を含む構成を例示する。
図1はさらに、業務管理システム140が業務管理サーバ141、看護師情報DB142、患者情報DB143、担当不可情報DB144、および訪問履歴情報DB145を含む構成を例示する。
【0013】
生体情報取得デバイス100は、例えば、パルスオキシメータ、血圧計、活動量計、体組成計、血糖値計等、またはそれらを複合した測定機器等であり、患者の生体情報を取得することができる。生体情報は、脈拍、不整脈、SPO2(経皮的動脈血酸素飽和度)、血圧、体温、血糖値、心拍、心電、体重、歩数、走行数、活動エネルギー量等とすることができるが、これらに限られず、疾患ごとに取得する情報が異なり得る。生体情報取得デバイス100は、患者が取得開始操作を行う都度測定、または寝たきり患者等を想定した定期的・連続的な自動測定を選択するように構成されてもよい。生体情報取得デバイス100は、無線通信または有線通信を介して、取得した生体情報をユーザデバイス110に送信することができる。
【0014】
ユーザデバイス110は、患者によって操作されるデバイスであり、例えば、スマートフォン、タブレット、PC等とすることができる。ユーザデバイス110はまた、患者の服薬(回数)の入力を受け付けることができ、生体情報取得デバイス100から受信した生体情報および服薬(回数)を生体情報管理サーバ131に送信することができる。ユーザデバイス110は、生体情報取得デバイス100と無線通信または有線通信を行うこと、および生体情報の取得スケジュール管理等を行うことができるアプリケーションをインストールしてもよい。
【0015】
ネットワーク120は、ユーザデバイス110と生体情報管理サーバ131との間で相互通信可能な周知のネットワークとすることができ、特に限定されることはない。
【0016】
生体情報管理サーバ131は、受信した生体情報に基づいて、患者ごとおよび疾患ごとに重症化予測を行うサーバである。生体情報管理サーバ131は、ユーザデバイス110から受信した生体情報を生体情報DB132に格納する。生体情報管理サーバ131は、患者の生体情報について、医師、看護師等(以下、「医療従事者」という。)が閲覧可能なGUIを提供してもよい。
【0017】
生体情報DB132は、患者の生体情報を格納するデータベースである。生体情報は、例えば直近1ヶ月分を格納するように構成されてもよい。
【0018】
生体情報は、例えば1日2回かつ1回あたり2回連続測定を行うと、1週間で全28個のデータが取得できる。生体情報管理サーバ131は、直近1週間分の全28個のデータに対して最大値および最小値からそれぞれ2個のデータを除く10%トリム平均を行い、24個のデータから平均値を算出する。平均値は経時変化を考慮するため、前々週の平均値、前週の平均値、今週の平均値の3週間分のデータを利用して、1週間ごとの移動平均を算出する。
【0019】
生体情報管理サーバ131は、算出した生体情報の平均値に基づいて、患者ごとおよび疾患ごとに重症化予測を行うことができる。以下、重症化予測の疾患の種類の例としてターミナルケア、糖尿病重症化低血糖症、慢性心不全、および狭心症・心筋梗塞を記載するが、疾患の種類はこれらに限られない。
【0020】
(ターミナルケア)
生体情報管理サーバ131は、ターミナルケアにおける重症化予測として、次に示す判別分析の式(1)により判定する。
【0022】
ここで、a、b、c、d、eは定数であり、yは臨終48時間前の判定値、x
1は脈拍、x
2は血圧、x
3はSPO2、x
4は体温、eは定数項(例えば、多数患者の平均値)である。生体情報管理サーバ131は、y>0の場合に臨終48時間前と判定する。
【0023】
(糖尿病重症化低血糖症)
生体情報管理サーバ131は、糖尿病重症化低血糖症の重症化予測として、次に示す判別分析の式(2)により判定する。
【0025】
ここで、a、b、c、d、eは定数であり、yは重症化低血糖症の判定値、x
1は血糖値、x
2は血圧、x
3は心拍、x
4は体温、eは定数項(例えば、多数患者の平均値)である。生体情報管理サーバ131は、y>0の場合に重症化低血糖症(緊急患者)と判定する。
【0026】
(慢性心不全)
生体情報管理サーバ131は、慢性心不全の増悪期の重症化予測として、次に示す判別分析の式(3)により判定する。
【0028】
ここで、a、b、c、d、e、f、gは定数であり、yは慢性心不全の増悪期の判定値、x
1は血圧、x
2は脈拍、x
3は心電、x
4は体重、x
4はSPO2、x
6は服薬、gは定数項(例えば、多数患者の平均値)である。生体情報管理サーバ131は、y>0の場合に慢性心不全の増悪期(緊急患者)と判定する。
【0029】
(狭心症・心筋梗塞)
生体情報管理サーバ131は、狭心症・心筋梗塞の重症化予測として次に示す判別分析の式(4)により判定する。
【0031】
ここで、a、b、c、d、eは定数であり、yは狭心症・心筋梗塞の判定値、x
1は血圧、x
2は脈拍、x
3は心電、x
4は服薬、eは定数項(例えば、多数患者の平均値)である。生体情報管理サーバ131は、y>0の場合に狭心症・心筋梗塞(緊急患者)と判定する。
【0032】
生体情報管理サーバ131は、上記の疾患ごとの重症化予測において、緊急患者(y>0)であるか、または緊急性の低いオンコールリスク患者(y≦0)であるかを区分した重症化予測の判定結果を業務管理サーバ141に送信する。重症化予測の判定結果において緊急患者であると判定された場合、医療従事者が扱うPC、スマートフォン等のデバイス、または外部の医療システムにアラート、メール等を送信してもよい。判定結果のオンコールリスク患者は、重症化予測の程度(乖離度)に基づいて、例えば緊急性が最も低く安定期にある段階、要経過観察にある段階等のように区分してもよい。
【0033】
生体情報管理サーバ131は、医療従事者によって診断された実際の症状について、診断データを受信することができる。診断データは、例えば狭心症・心筋梗塞の患者の血圧が低下しているが緊急性が認められない等の情報を含むデータであり、医療従事者が扱うPC、スマートフォン等から生体情報管理サーバ131に送信される。生体情報管理サーバ131は、疾患の重症化予測の判定結果と診断データとを比較し、患者ごとに適用する判別分析の式(1)から(4)において補正が必要なパラメータを抽出し、診断データに基づいて補正する。パラメータの補正は、患者の年齢、性別等の個人差による判定誤りを解消し、重症化予測の精度を向上させることができる。パラメータの補正はまた、補正が必要となった過去の事例を集積し、例えば疾患、患者、気温、時間等の情報と関連付けて学習する人工知能を活用することができる。人工知能はまた、各患者の多量の生体情報を解析し、患者の年齢、性別等の個人差を継続的に学習し、パラメータの補正に活用することができる。
【0034】
生体情報管理サーバ131は、同じ疾患、同性、同年代等の共通する特徴によってグループ化された複数の患者の生体情報から平均値を算出し、パラメータの補正を行ってもよい。
【0035】
生体情報管理サーバ131は、複数疾患の患者の重症化予測について、副次的な他疾患への移行予測を行ってもよい。例えば、慢性心不全と狭心症・心筋梗塞を罹患している患者は、重症化予測で狭心症・心筋梗塞の緊急患者と判定される一方で、慢性心不全のオンコールリスク患者と判定される場合があり得る。生体情報管理サーバ131は、複数疾患の患者に適用する判別分析の式と、単一の疾患の患者に適用する重症化予測の式とが異なるパラメータを使用するように補正を行ってもよく、過去の他疾患への移行統計に基づきパラメータの補正を行ってもよい。
【0036】
生体情報管理サーバ131は、患者ごとおよび疾患ごとに生体情報の取得時間帯別(例えば、朝、昼、夕)に集計を行い、最頻値等により緊急患者と判定されやすい時間帯を解析してもよい。緊急患者と判定されやすい時間帯の解析結果は、重症化予測の判定結果に含まれて、または別個に業務管理サーバ141に送信される。
【0037】
業務管理サーバ141は、患者の契約内容、看護師の基本勤務時間、重症化予測の判定結果等に基づいて看護師のスケジュール管理を行うサーバである。業務管理サーバ141は、スケジュールに空き時間のある看護師のリスト、オンコールリスク患者のリストを作成することができる。業務管理サーバ141は、管理者によって、看護師の基本情報、患者の基本情報、および担当不可情報等が入力可能なGUIを提供してもよい。入力された情報は、それぞれ、看護師情報DB142、患者情報DB143、担当不可情報DB144に格納される。
【0038】
看護師情報DB142は、看護師の基本情報を格納するデータベースである。看護師の基本情報は、例えば、看護師ID、氏名、住所、エリア、電話番号、基本勤務時間等を含むことができるが、これらに限られない。
【0039】
患者情報DB143は、患者の基本情報を格納するデータベースである。患者の基本情報は、例えば、患者ID、氏名、住所、エリア、電話番号、契約内容、要介護度等の情報を含むことができるが、これらに限られない。契約内容は、曜日、時間帯、作業内容、契約期間等の情報が含まれる。
【0040】
担当不可情報DB144は、看護師が患者を担当することができない組み合わせの情報を格納するデータベースである。組み合わせの情報は、例えば、看護師ID、患者ID、精神的負担(看護師に対するクレーム、セクシュアル・ハラスメント、暴力・暴言、助言・指導が多く時間延長が必要)等の情報を含むことができるが、これらに限られない。組み合わせの情報は、看護師または管理者により登録され得る。
【0041】
訪問履歴情報DB145は、看護師が患者を訪問した履歴情報を格納するデータベースである。履歴情報は、例えば、看護師ID、患者ID、日時、作業内容、所要時間等の情報を含むことができるが、これらに限られない。履歴情報は、公知の勤怠情報システム、勤務報告のデータ等から登録され得る。
【0042】
業務管理サーバ141は、所定の作業を行う業務に対し、担当候補の看護師の組み合わせのノードを有する探索木を作成することができる。業務は、看護師が患者の自宅を訪問して行う看護作業であり、看護師情報DB142のエリア、基本勤務時間、患者情報DB143のエリア、住所、契約内容、要介護度等に基づいて決定する。ノードは例えば
図2(a)を参照すると、業務X、Y、Z・・・に対し、担当候補の看護師A、B・・・という組み合わせにより決定することが例示される。
【0043】
業務管理サーバ141は、作成した探索木を、分枝限定法(例えば、アルファ・ベータ法等)により業務の担当候補の看護師について最適解を探索することにより、看護師のスケジュールを決定することができる。
【0044】
業務管理サーバ141は、探索の条件に使用するため、看護師の負担度を点数化することができる。点数化は、例えば看護師の身体的負担度として(a)要介護認定区分の要介護度1〜5に×3点を掛け合わせた3〜15点、(b)週4回以上の訪問回数×1点等とする。要介護度は患者情報DB143に格納されており、訪問回数は訪問履歴情報DB145の集計により得られる。点数化はさらに、例えば看護師の精神的負担度として(c)看護師に対するクレーム×1点、(d)セクシュアル・ハラスメント×1点、(e)暴力/暴言×1点、(f)助言・指導が多く時間延長が必要×1点等とする。精神的負担度は担当不可情報DB144に格納されている。点数化は、(a)から(f)を合計することによって患者あたり3〜20点で評価する。患者は、点数が高いほど看護師への負担が大きいと評価される。
【0045】
業務管理サーバ141は、探索木から探索不要なノードを削除する。業務管理サーバ141は、担当不可情報DB144の組み合わせの情報に基づいて、患者との組み合わせが不可である看護師のノードを削除する。業務管理サーバ141はまた、訪問履歴情報DB145の履歴情報に基づいて、訪問履歴がない看護師のノードを削除する。業務管理サーバ141はさらに、看護師情報DB142の基本勤務時間に基づいて、業務時間が看護師の基本勤務時間に適合しない看護師のノードを削除する。ノードの削除は、例えば
図2(b)を参照すると、業務Yに対して看護師Aが担当不可であり、業務Zに対して看護師Bが担当不可であるという条件の場合、条件に適合しないノードを削除する。分枝限定法は、削除された看護師のノード以降の探索が行われない。
【0046】
業務管理サーバ141は、分枝限定法により探索木の最適解を探索する。探索は、業務間隔が所定の時間以上空いているか、移動距離が所定の距離以下であるか、看護師の負担度が所定の点数(例えば、40点)未満であるか、特定の患者に対して連続で担当する(担当の偏りがある)か、等の条件を含めて実行することができる。探索は、一日の訪問看護あたりの業務間隔、移動距離、合計点数、担当の偏り等を条件に含めることによって、看護師の負担を軽減させることができる。分枝限定法は、探索の最適解ではないノード以降の探索が行われない。すなわち、探索中に最も条件に適合するノードがあれば、条件に適合しないノード以降の探索は行われない。
【0047】
業務管理サーバ141は、探索した最適解に基づいて看護師のスケジュールを作成する。業務管理サーバ141はまた、空き時間のある看護師のリストを作成してもよい。空き時間のある看護師のリストの作成は、業務間隔が所定の時間以上空いているか、移動距離が所定の距離以下であるか、看護師の負担度が所定の点数(例えば、40点)未満であるか、特定の患者に対して連続で担当するか、等の条件を含んでもよい。
【0048】
業務管理サーバ141は、空き時間のある看護師のリストおよび生体情報管理サーバ131から受信した重症化予測の判定結果を使用して、緊急患者と判定された患者を空き時間のある看護師のスケジュールに割り当てることができる。
【0049】
業務管理サーバ141は、生体情報管理サーバ131から受信した緊急患者と判定されやすい時間帯の解析結果に基づいて、看護師のスケジュールを決定するときの条件として追加してもよい。例えば、患者の契約内容は「昼」に訪問する内容であるが、緊急患者と判定されやすい時間帯が「朝」である場合があり得る。業務管理サーバ141は、業務の担当候補の探索において「朝」の時間帯を条件に追加してもよい。緊急患者と判定されやすい時間帯に訪問することで、患者および看護師は訪問看護の時間を最適化することができる。
【0050】
業務管理サーバ141は、生体情報管理サーバ131から受信した重症化予測の判定結果に基づいて、オンコールリスク患者のリストを作成することができる。オンコールリスク患者のリストは、例えば緊急性の段階の区分に応じて優先順位付けされてもよい。業務管理サーバ141は、オンコールリスク患者のリストと空き時間のある看護師のリストを突き合わせることによって、オンコールが発生した当日、時間経過ごとに看護師に連絡可能なデータを作成することができる。
【0051】
図2は、本発明の一実施形態に係る探索木を例示する図である。
図2(a)は、例えば業務Xに対する担当候補が看護師Aであるノードをルートノードとし、業務Y、Zに対する看護師A、B、担当看護師なしの組み合わせをノードとした探索木を例示する。
図2(a)は探索木の一部であるため、ルートノードが業務Xに対する担当候補が看護師B、担当看護師なしのノードとする組み合わせ等は省略している。
図2(b)は、探索不要なノードを削除した状態の探索木を例示する。
図2(b)は、業務Yに対して看護師Aが担当不可であり、業務Zに対して看護師Bが担当不可であるという条件の場合、条件に適合しないノードが削除されたことを×印で示している。
図2(b)はまた、分枝限定法により削除された看護師のノード以降の探索が行われないため、×印以降のノードがすべて削除されることを示している。
【0052】
図3は、本発明の一実施形態に係る生体情報に基づく重症化予測の処理フローを例示する図である。以下、患者が自宅で生体情報取得デバイス100およびユーザデバイス110を使用して、生体情報を取得する場面について説明する。
【0053】
S301:生体情報取得デバイス100は、患者の生体情報を取得する。例えば、生体情報取得デバイス100は、狭心症・心筋梗塞の患者の血圧、脈拍、心電を取得する。生体情報取得デバイス100は、無線通信または有線通信を介して、取得した生体情報をユーザデバイス110に送信する。
【0054】
S302:患者は、ユーザデバイス110を使用して、必要に応じて服薬(回数)を入力する。例えば、狭心症・心筋梗塞の患者は、ユーザデバイス110を使用して、所定の薬を服用したことを示す服薬(回数)を入力する。患者は、判別式の判定に服薬(回数)が使用されない疾患(例えば、糖尿病重症化低血糖症)である場合、服薬(回数)の入力を省略してもよい。
【0055】
S303:ユーザデバイス110は、ネットワーク120を介して、生体情報および服薬(回数)を生体情報管理サーバ131に送信する。
【0056】
S304:生体情報管理サーバ131は、生体情報に基づいて、患者ごとおよび疾患ごとに重症化予測を行う。生体情報は、例えば3週間分のデータから1週間ごとの移動平均を算出した値を使用してもよい。重症化予測は、疾患ごとに定義された多変量解析の判別分析の式により、緊急患者であるか(y>0)、または緊急性の低いオンコールリスク患者(y≦0)であるかを判定することができる。例えば、狭心症・心筋梗塞の患者の重症化予測は、前述の式(4)により求めることができる。
【0057】
S305:生体情報管理サーバ131は、疾患後との重症化予測において、緊急患者とオンコールリスク患者とを区分した重症化予測の判定結果を業務管理サーバ141に送信する。重症化予測の判定結果において緊急患者であると判定された場合、医療従事者が扱うPC、スマートフォン等のデバイス、または外部の医療システムにアラート、メール等を送信してもよい。
【0058】
S306:生体情報管理サーバ131は、医療従事者によって診断された実際の症状について、診断データを受信する。診断データは、例えば狭心症・心筋梗塞の患者の血圧が低下しているが緊急性が認められない等の情報を含むデータであり、医療従事者が扱うPC、スマートフォン等から生体情報管理サーバ131に送信される。
【0059】
S307:生体情報管理サーバ131は、疾患の重症化予測の判定結果と診断データとを比較し、患者ごとに適用する判別分析の式(1)から(4)において補正が必要なパラメータを抽出し、診断データに基づいて補正する。パラメータの補正は、患者の年齢、性別等の個人差による判定誤りを解消し、重症化予測の精度を向上させることができる。
【0060】
このようにすることで、患者の生体情報に基づいて緊急患者を早期に把握し、措置する体制をとることにより、看護師は緊急対応等にかかる作業負担を軽減することができる。また、生体情報の取得を患者の側で行うことにより、看護師は訪問時の作業負担を軽減することができる。
【0061】
図4は、本発明の一実施形態に係る訪問看護業務のスケジュール管理の処理フローを例示する図である。以下、訪問看護業務における看護師の訪問スケジュールを作成する場面について説明する。
【0062】
S401:業務管理サーバ141は、所定の作業を行う業務に対し、担当候補の看護師の組み合わせのノードを有する探索木を作成する。業務は、看護師が患者の自宅を訪問して行う看護作業であり、看護師情報DB142のエリア、基本勤務時間、患者情報DB143のエリア、住所、契約内容、契約期間、要介護度等に基づいて決定する。
【0063】
S402:業務管理サーバ141は、探索木から探索不要なノードを削除する。業務管理サーバ141は、例えば、患者との組み合わせが不可である看護師のノード、患者を担当したことがない(訪問履歴がない)看護師のノード、業務時間が看護師の基本勤務時間に適合しない看護師のノード等を削除する。
【0064】
S403:業務管理サーバ141は、分枝限定法により探索木の最適解を探索する。探索は、業務間隔が所定の時間以上空いているか、移動距離が所定の距離以下であるか、看護師の負担度が所定の点数(例えば、40点)未満であるか、特定の患者に対して連続で担当する(担当の偏りがある)か、等の条件を含めて実行する。看護師の負担度は、身体的負担および精神的負担について、事前に点数化を行う。
【0065】
S404:業務管理サーバ141は、探索した最適解に基づいて看護師のスケジュールを作成する。業務管理サーバ141は、空き時間のある看護師のリストを作成してもよい。空き時間のある看護師のリストの作成は、業務間隔が所定の時間以上空いているか、移動距離が所定の距離以下であるか、看護師の負担度が所定の点数(例えば、40点)未満であるか、特定の患者に対して連続で担当するか、等の条件を含んでもよい。
【0066】
このようにすることで、自動で様々な要件に基づくスケジュールが作成されるため、管理者は看護師のスケジュール管理にかかる作業負担を軽減することができる。
【0067】
別の実施形態において、重症化予測は判別分析の式に代えて、または判別分析の式の解と組み合わせて、閾値による判定を行ってもよい。生体情報管理サーバ131は、例えば、SPO2の平均値が10%以上低下、拡張期血圧値および収縮期血圧値の平均値が10%以上低下等の条件に基づいて、ターミナルケアにおける臨終48時間前と判定してもよい。生体情報管理サーバ131は、例えば、血糖値の平均値が24〜42mg/dLの範囲に低下、拡張期血圧値の平均値が180以上、かつ収縮期血圧値の平均値が120以上に上昇等の条件に基づいて、糖尿病重症化低血糖症(緊急患者)と判定する。生体情報管理サーバ131は、例えば、脈拍の平均値が不整脈または頻脈(100bpm以上)、心電のST上昇、SPO2が95以下に低下等の条件に基づいて、慢性心不全の増悪期(緊急患者)と判定する。生体情報管理サーバ131は、例えば、脈拍増加、脈拍リズム不整、脈拍欠損、心電のST上昇、心電のST低下等の条件に基づいて、狭心症・心筋梗塞(緊急患者)と判定する。閾値は、判別分析の式のパラメータと同様に診断データに基づいて補正されてもよい。
【0068】
また、別の実施形態において、業務管理サーバ141は、空き時間のある看護師のリストおよび生体情報管理サーバ131から受信した重症化予測の判定結果を使用して、緊急患者と判定された患者を空き時間のある看護師のスケジュールに割り当ててもよい。業務管理サーバ141はさらに、生体情報管理サーバ131から受信した重症化予測の判定結果に基づいて、オンコールリスク患者のリストを作成してもよい。オンコールリスク患者のリストは、例えば緊急性の段階の区分に応じて優先順位付けされてもよい。業務管理サーバ141は、オンコールリスク患者のリストと空き時間のある看護師のリストを突き合わせることによって、オンコールが発生した当日、時間経過ごとに看護師に連絡可能なデータを作成することができる。このようにすることで、空き時間のある看護師は、緊急患者およびオンコールリスク患者に対応可能な体制をとることができる。
【0069】
図5は、本発明の一実施形態に係る生体情報管理サーバ131の構成を例示する図である。
図5に例示するように、制御部501、主記憶部502、補助記憶部503、操作部504、IF部505、および表示部506がバス507等によって接続される。また、業務管理サーバ141は、
図5で例示する構成と同様に構成することができる。
【0070】
制御部501は中央処理装置(CPU)であり、生体情報管理サーバ131の各構成要素の制御やデータの演算を行うことができる。主記憶部502はメインメモリであり、入力された各種データ、コンピュータ実行可能な命令および当該命令による演算処理後のデータ等を記憶することができる。補助記憶部503はハードディスク(HDD)等の記憶装置であり、データやプログラムを長期的に保存する際に使用される。制御部501は補助記憶部503に格納されているプログラムを主記憶部502に読み出して実行することができる。操作部504はキーボード、マウス等により構成され、アプリケーションの各種操作や入力データを受け付けることができる。IF部505は他のシステムまたは装置との間でデータを送受信する際のインタフェースである。表示部506はディスプレイ等により構成され、アプリケーションの各種画面等を提供することができる。
【0071】
図6は、本発明の一実施形態に係る生体情報管理サーバ131の機能を例示する図である。受信部601は、生体情報および医療従事者による実際の診断データを受信することができる。重症化予測実行部602は、生体情報に基づいて、患者ごとおよび疾患ごとに重症化予測を行い、緊急患者(y>0)であるか、または緊急性の低いオンコールリスク患者(y≦0)であるかを区分した重症化予測の判定結果を作成することができる。解析部603は、患者ごとおよび疾患ごとに生体情報の取得時間帯別に集計を行い、重症化予測で緊急患者と判定されやすい時間帯を解析することができる。パラメータ補正部604は、重症化予測の結果と診断データとを比較して、重症化予測のパラメータを補正することができる。
【0072】
図7は、本発明の一実施形態に係る業務管理サーバ141の機能を例示する図である。探索木作成部701は、訪問看護における業務と担当候補の看護師の組み合わせについて探索木を作成することができる。ノード削除部702は、作成した探索木から探索不要なノードを削除することができる。探索実行部703は、分枝限定法により探索木の最適解を探索することができる。スケジュール作成部704は、最適解に基づいて看護師のスケジュールを作成することができる。リスト作成部705は、スケジュールに空き時間のある看護師のリスト、オンコールリスク患者のリストを作成することができる。スケジュール割り当て部706は、緊急患者とオンコールリスク患者に区分した判定結果および空き時間のある看護師のリストに基づいて、緊急患者を空き時間のある看護師のスケジュールに割り当てることができる。
【0073】
さらに、生体情報システム130と業務管理システム140との間で処理の委譲、情報の連携等を行ってもよい。説明のため各処理を分けて記載したが、各処理を統合、連携させ、それぞれが有する処理の一部または全部を他方が行うように実装されてもよい。
【0074】
以上、例示的な実施形態を参照しながら本発明の原理を説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく、構成および細部において変更する様々な実施形態を実現可能である。すなわち、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様を採用することが可能である。