特許第6656331号(P6656331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6656331シミュレーションの正確度および性能に対する画質評価
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656331
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】シミュレーションの正確度および性能に対する画質評価
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   A61B5/00 G
【請求項の数】17
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-178762(P2018-178762)
(22)【出願日】2018年9月25日
(62)【分割の表示】特願2017-134438(P2017-134438)の分割
【原出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2019-48060(P2019-48060A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】14/163,589
(32)【優先日】2014年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/793,162
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513030879
【氏名又は名称】ハートフロー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー エー. フォンテ
(72)【発明者】
【氏名】レオ ジェイ. グラディー
(72)【発明者】
【氏名】ゾンリ ウー
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル シャープ
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー シー. ハンリー
(72)【発明者】
【氏名】ソーマ セングプタ
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/021307(WO,A2)
【文献】 特開2011−189042(JP,A)
【文献】 特開2012−070814(JP,A)
【文献】 特開2012−179252(JP,A)
【文献】 特開2010−193940(JP,A)
【文献】 特開2012−024582(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0022843(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101193593(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/01
A61B 5/02 − 5/03
A61B 5/055
A61B 6/00 − 6/14
A61B 8/00 − 8/15
G06T 1/00
G06T 7/00 − 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムを使用して、患者固有の血流のシミュレーションのためのモデルを生成するための画像を自動的に選択するための方法であって、前記方法は、
患者の血流のシミュレーションのための正確度、精度、または性能のうちの1つ以上の特性を受信することと、
患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の1つ以上の画像を受信することと、
集合的に前記1つ以上の画像の全体的品質評価を実施し、かつ前記1つ以上の画像のうちの1つの画像の一部分の局所的品質評価を実施することと、
前記1つ以上の画像と関連付けられた画質点数を受信することであって、前記画質点数は、前記全体的品質評価および前記局所的品質評価に基づく、ことと、
前記受信された画質点数と、前記シミュレーションを実施する際の正確度、精度、または性能のうちの前記受信された1つ以上の特性とに基づいて前記1つ以上の受信された画像のうちのある画像を選択して、前記患者の血流のシミュレーションにおいて使用するためのモデルを生成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記受信された画質点数を使用して、1つ以上の性能メトリックを推定することであって、前記1つ以上の性能メトリックは、前記シミュレーションの少なくとも一部分を完了するためのメトリック測定時間、前記シミュレーションの少なくとも一部分の費用、前記シミュレーションの誤差、前記シミュレーションの信頼度パーセントまたは信頼区間、またはそれらの組み合わせを含む、ことと、
前記推定された性能メトリックに基づいて前記画像を選択することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択された画像を補正、再撮影、または更新するためのプロンプトを生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記選択された画像の補正、再撮影、または更新されたバージョンとして生成される改良された画像を受信することと、
前記改良された画像に基づいて前記シミュレーションを実施することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の画像と関連付けられた前記画質点数を改善するようにイメージングデータの1つ以上のピースを組み合わせることによって、前記改良された画像を生成することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記受信された画質点数を使用して、前記選択された画像を使用して実施されたシミュレーション結果における正確度または信頼度を推定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選択された画像に基づいて、前記患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の解剖学的モデルを生成することと、
前記生成された解剖学的モデルに基づいて前記シミュレーションを実施することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
患者固有の血流のシミュレーションのためのモデルを生成するための画像を自動的に選択するためのシステムであって、前記システムは、
患者固有の血流のシミュレーションのためのモデルを生成するための画像を自動的に選択するための命令を格納するデジタルストレージデバイスと、
プロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、前記命令を実行して、
患者の血流のシミュレーションのための正確度、精度、または性能のうちの1つ以上の特性を受信することと、
患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の1つ以上の画像を受信することと、
集合的に前記1つ以上の画像の全体的品質評価を実施し、かつ前記1つ以上の画像のうちの1つの画像の一部分の局所的品質評価を実施することと、
前記1つ以上の画像と関連付けられた画質点数を受信することであって、前記画質点数は、前記全体的品質評価および前記局所的品質評価に基づく、ことと、
前記受信された画質点数と、前記シミュレーションを実施する際の正確度、精度、または性能のうちの前記受信された1つ以上の特性とに基づいて前記1つ以上の受信された画像のうちのある画像を選択して、前記患者の血流のシミュレーションにおいて使用するためのモデルを生成することと
を含む方法を実施するように構成されている、システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記受信された画質点数を使用して、1つ以上の性能メトリックを推定することであって、前記1つ以上の性能メトリックは、前記シミュレーションの少なくとも一部分を完了するためのメトリック測定時間、前記シミュレーションの少なくとも一部分の費用、前記シミュレーションの誤差、前記シミュレーションの信頼度パーセントまたは信頼区間、またはそれらの組み合わせを含む、ことと、
前記推定された性能メトリックに基づいて前記画像を選択することと
を行うためにさらに構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記選択された画像を補正、再撮影、または更新するためのプロンプトを生成するためにさらに構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記選択された画像の補正、再撮影、または更新されたバージョンとして生成される改良された画像を受信することと、
前記改良された画像に基づいて前記シミュレーションを実施することと
を行うためにさらに構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記1つ以上の画像と関連付けられた前記画質点数を改善するようにイメージングデータの1つ以上のピースを組み合わせることによって、前記改良された画像を生成するためにさらに構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記受信された画質点数を使用して、前記選択された画像を使用して実施されたシミュレーション結果における正確度または信頼度を推定するためにさらに構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、
前記選択された画像に基づいて、前記患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の解剖学的モデルを生成することと、
前記生成された解剖学的モデルに基づいて前記シミュレーションを実施することと
を行うためにさらに構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項15】
患者固有の血流のシミュレーションのためのモデルを生成するための画像を自動的に選択するためのコンピュータで実行可能なプログラミング命令を含む少なくとも1つのコンピュータシステム上での使用ための非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令が前記少なくとも1つのコンピュータシステムによって実行されたときに、
患者の血流のシミュレーションのための正確度、精度、または性能のうちの1つ以上の特性を受信することと、
患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の1つ以上の画像を受信することと、
集合的に前記1つ以上の画像の全体的品質評価を実施し、かつ前記1つ以上の画像のうちの1つの画像の一部分の局所的品質評価を実施することと、
前記1つ以上の画像と関連付けられた画質点数を受信することであって、前記画質点数は、前記全体的品質評価および前記局所的品質評価に基づく、ことと、
前記受信された画質点数と、前記シミュレーションを実施する際の正確度、精度、または性能のうちの前記受信された1つ以上の特性とに基づいて前記1つ以上の受信された画像のうちのある画像を選択して、前記患者の血流のシミュレーションにおいて使用するためのモデルを生成することと
を含む方法の実施をさせる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記方法は、
前記受信された画質点数を使用して、1つ以上の性能メトリックを推定することであって、前記1つ以上の性能メトリックは、前記シミュレーションの少なくとも一部分を完了するためのメトリック測定時間、前記シミュレーションの少なくとも一部分の費用、前記シミュレーションの誤差、前記シミュレーションの信頼度パーセントまたは信頼区間、またはそれらの組み合わせを含む、ことと、
前記推定された性能メトリックに基づいて前記画像を選択することと
をさらに含む、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記方法は、前記選択された画像を補正、再撮影、または更新するためのプロンプトを生成することをさらに含む、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2013年3月15日出願の米国仮出願第61/793,162号からの優先
権の利益を主張する2014年1月24日出願の米国出願第14/163,589号への
優先権を主張し、これらの出願はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示の実施形態は、医用画像の画質を評価するための方法およびシステムに関し、よ
り具体的には、解剖学的形態および/または血流の患者固有のモデル化に関して医用画像
の画質を評価するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
医用画像は、臨床診断および治療計画のため、患者の身体、臓器、組織またはその部分
に関する解剖学的・生理学データを取得するために使用される重要な技術である。医用画
像には、放射線写真術、コンピュータ断層撮影(CT)、核磁気共鳴映像法(MRI)、
透視撮影、単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放射断層撮影(P
ET)、シンチグラフィ、超音波検査および心エコー検査、乳房X線造影法、血管内超音
波法および血管造影法などの特有の技術等、様々なものがある。画像データは非侵襲的ま
たは侵襲的な方法によって取得できる。心臓学、神経科学、腫瘍学、整形外科および他の
多くの分野では、医用画像から得られる情報から利益を得ている。
【0004】
心臓学の分野では特に、冠動脈疾患により心臓に血液を供給する血管に狭窄(血管の異
常に狭くなること)などの病変が生じことがあることがよく知られている。その結果、心
臓への血流が制限される場合がある。冠動脈疾患に罹患した患者は運動中の慢性安定狭心
症、または、安静時の不安定狭心症と呼ばれ呼ばれる胸痛を訴える場合がある。疾病の症
状がより重症になると、心筋梗塞または心臓発作に繋がる。冠状動脈の病変、例えば大き
さ、形、位置、機能的意義(例えば、病変が血流に衝突するか否か)に関連した、より正
確なデータの提供が求められている。胸痛を訴える、および/または冠動脈疾患の症状を
示す患者は、医用画像をベースとした1以上の検査を受け、この検査により冠状動脈病変
に関連するある間接的な証拠が提示され得る。
【0005】
CT、SPECTおよびPTに加えて、非侵襲的な冠状動脈の評価に使用される医用画
像には、心電図、血液検査によるバイオマーカー評価、トレッドミル検査および心エコー
検査がある。しかしながら、これら非侵襲的検査では通常、冠状動脈病変の直接的な評価
は提供されず、血流量を評価しない。非侵襲的検査では、心臓の電気的な活性(例えば、
心電図記録法(ECG)を使用)、心筋の運動(例えば、負荷心臓図検査を使用)、心筋
の灌流(例えば、PETまたはSPECTを使用)、または物質代謝(例えば、バイオマ
ーカーを使用)における変化を観察することにより、冠状動脈病変の間接的な証拠を提供
し得る。
【0006】
例えば、解剖学的データは冠状動脈コンピュータ断層撮影血管造影法(CCTA)を使
用して非侵襲的に取得し得る。CCTAは胸痛を有する患者のイメージングに使用でき、
造影剤を静脈注射した後、心臓および冠状動脈を画像化するCT技術を使用する。しかし
ながら、CCTAも冠状動脈の病変の機能的意義、例えば病変が血流に影響しているか否
かについての直接的な情報を提供できない。加えて、CCTAは純粋な診断検査であるた
め、他の生理学的状態(例えば運動中)の冠血流、冠動脈圧または心筋灌流の変化の予測
、および介入の結果の予測には使用できない。
【0007】
したがって、患者に、冠状動脈の病変を視覚化するため、診断的心臓カテーテル検査な
どの侵襲的な検査が必要となる場合がある。診断的心臓カテーテル検査は、従来の冠動脈
造影(CCA)を実行して、医師に動脈の太ささおよび形状の画像を提供することにより
、冠状動脈の病変に関する解剖学的なデータを収集することを含む。しかしながら、CC
Aでは冠状動脈の病変の機能的意義を評価するためのデータは提供されない。例えば、病
変が機能的に重要かどうか判断せずに、冠状動脈の病変が有害であるかどうかを、医師が
診断できない可能性がある。このようにして、CCAは、病変が機能的に重要であるか否
かにかかわらず、介入心臓専門医がCCAで発見されたあらゆる病変にステントを挿入す
る、「oculostenotic reflex(発見した狭窄に対する反射)」と呼
ばれる手順をもたらしている。この結果、CCAは、患者に対する不必要な手術につなが
る可能性があり、これは患者に副次的なリスクを与える可能性があるほか、患者に不必要
な医療費を発生させ得る。
【0008】
診断的心臓カテーテル検査中に、観察病変の血流予備量比(FFR)の測定により冠状
動脈病変の機能的重要性を侵襲的に評価することができる。FFRは、例えばアデノシン
の静脈内投与によって誘発される冠動脈血流増加条件下での、病変下流の平均血圧を病変
上流の平均血圧、例えば大動脈圧で除算した比として定義される。血圧は患者にプレッシ
ャーワイヤーを挿入して測定できる。したがって、特定されたFFRに基づく病変の治療
の決定は初期費用後になされ、また診断的心臓カテーテル検査のリスクは既に生じている
【0009】
単なる医用画像と上述の侵襲的処置とにより埋まらないギャップを解消するため、He
artFlow,Inc.は、患者固有の画像データに基づいたシミュレーションおよび
モデル化技術を開発した。例えば、各種シミュレーション、モデル化および計算技術とし
ては、限定するものではないが、コンピュータ力学、計算流体力学(CFD)、数値シミ
ュレーション、マルチスケールモデル化、モンテカルロシミュレーション、機械学習、人
工知能および数学モデルを解く様々な他の計算法等が挙げられる。これらの技術は特にバ
イオメカニクス、流体力学、経時的解剖学および生理学変化、電気生理現象、組織に対す
る圧力および負荷、臓器機能、および神経機能、に対する情報を提供し得る。この情報は
、イメージング試験時、または医学的処置または時間経過と疾病進行の結果として、経時
的変化の予測時に提供されてよい。
【0010】
計算シミュレーションおよびモデル化の例示説明となる適用が、HeartFlow,
Inc.により、様々な治療、介入治療、または外科治療の影響を評価することを含む、
非侵襲性の画像データからの血管血流のモデル化のために記載されている(例えば米国特
許第8,386,188、8,321,150、8,315,814、8,315,81
3、8,315,812、8,311,750、8,311,748、8,311,74
7、および8,157,742号を参照のこと)。特に、HeartFlow,Inc.
は、侵襲性のFFR測定に関する上述の不利益を減少させるため、冠状動脈の解剖学、心
筋の灌流および冠状動脈流を非侵襲的に評価するための方法を開発した。具体的には、C
FDシミュレーションは流速の空間および時間の変動、およびFFRを含む動脈の血圧予
測に使用され成果を挙げている。このような方法およびシステムは冠動脈疾患が疑われる
患者を診断し治療計画を作成する循環内科医に利益をもたらし、直接測定できない状態、
例えば運動中などの冠状動脈流および心筋の灌流を予測し、冠状動脈血流および心筋の灌
流における治療、介入治療、または外科治療の結果を予測する
【0011】
上記技術、および画像に基づくモデル化およびシミュレーションの多数の応用において
、画像データの特性および品質が重要である。医用画像データの取得の間、画像の品質に
影響する各種アーチファクトまたは制限が存在し得る。例えば、空間・時間の分解能の設
定および性能、エネルギーと組織の相互作用、患者または臓器の動き、再構成アルゴリズ
ム、ハードウェアの故障、タイミングまたは取得、検知器の感度、投与される薬物または
造影剤、患者の準備および様々な他の因子が、最終的な画質に影響する場合がある。これ
らの影響としては、限定するものではないが、低分解能、動きまたはぼけアーチファクト
、高ノイズ、組織の低コントラスト、低灌流、部分容積効果、歪み、構造の欠け、シェー
ディング等が挙げられる。これらの画質の問題が画像データに基づいたモデルおよびシミ
ュレーションの性能および正確度に影響する可能性があるので、画質が適切かどうかの判
断、またはモデル化およびシミュレーションの結果に対する画質の効果の特定に対するニ
ーズがある。
【0012】
この結果、医用画像の画質を評価し定量するための方法およびシステムに対するニーズ
があり、詳細には、血流の患者固有のモデル化に関連する医用画像の画質を評価し定量す
るための方法およびシステムに対するニーズが存在する。前述の一般的な説明および以下
の詳細な説明は一般的な、説明のための記載であり、本開示を限定するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第8,386,188号明細書
【特許文献2】米国特許第8,321,150号明細書
【特許文献3】米国特許第8,315,814号明細書
【特許文献4】米国特許第8,315,813号明細書
【特許文献5】米国特許第8,315,812号明細書
【特許文献6】米国特許第8,311,750号明細書
【特許文献7】米国特許第8,311,748号明細書
【特許文献8】米国特許第8,311,747号明細書
【特許文献9】米国特許第8,157,742号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態によれば、コンピュータシステムを使用した、患者の解剖学的形態の少なく
とも一部分の医用画像の品質を評価するための方法が開示される。一方法は、患者の解剖
学的形態の少なくとも一部分の1以上の画像を受信することと、コンピュータシステムの
プロセッサを使用して、受信画像の1以上の画像プロパティを決定することと、コンピュ
ータシステムのプロセッサを使用して、受信画像に基づいて患者の解剖学的形態の少なく
とも一部分の解剖学的局在の決定またはモデル化を実行することと、解剖学的局在の決定
またはモデル化に基づいて患者の解剖学的形態の解剖学的特徴に関連する1以上の画像特
性の特定を得ることと、コンピュータシステムのプロセッサを使用して、1以上の画像プ
ロパティおよび1以上の画像特性に基づいて画質得点を計算することとを有する。
【0015】
別の実施形態によれば、患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の医用画像の品質を評
価するためのシステムが開示される。一システムは、患者の解剖学的形態の少なくとも一
部分の医用画像の品質を評価するための命令を格納するデジタル記憶装置、ならびに患者
の解剖学的形態の少なくとも一部分の1以上の画像を受信することと、コンピュータシス
テムのプロセッサを使用して、受信画像の1以上の画像プロパティを決定することと、コ
ンピュータシステムのプロセッサを使用して、受信画像に基づいた患者の解剖学的形態の
少なくとも一部分の解剖学的局在の決定またはモデル化を実行することと、解剖学的局在
の決定またはモデル化に基づいて患者の解剖学的形態の解剖学的特徴に関連する1以上の
画像特性の特定を得ることと、コンピュータシステムのプロセッサを使用して、1以上の
画像プロパティおよび1以上の画像特性に基づいて画質得点を計算することとを含む方法
を実行するための命令を実行するように構成されたプロセッサを備える。
【0016】
別の実施形態によれば、患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の医用画像の画質を評
価するためのコンピュータで実行可能なプログラミング命令を含む少なくとも1つのコン
ピュータシステムにおいて使用するための非一時的コンピュータ可読媒体が開示され、当
該命令は、少なくとも1つのコンピュータシステムにより実行されるときに、患者の解剖
学的形態の少なくとも一部分の1以上の画像を受信することと、コンピュータシステムの
プロセッサを使用して、受信画像の1以上の画像プロパティを決定することと、コンピュ
ータシステムのプロセッサを使用して、受信画像に基づいて患者の解剖学的形態の少なく
とも一部分の解剖学的局在の決定またはモデル化を実行することと、解剖学的局在の決定
またはモデル化に基づいて患者の脈管構造の解剖学的特徴に関連する1以上の画像特性の
特定を得ることと、コンピュータシステムのプロセッサを使用して、1以上の画像プロパ
ティおよび1以上の画像特性に基づいて画質得点を計算することとを含む方法を実行させ
る。
本明細書は、少なくとも、以下の項目も提供する。
(項目1)
コンピュータシステムを使用した、患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の医用画像
の品質を評価するための方法であって、
前記患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の1以上の画像を受信することと、
前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して、前記受信画像の1以上の画像プ
ロパティを決定することと、
前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して、前記受信画像に基づいて、前記
患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の解剖学的局在の決定またはモデル化を実行する
ことと、
前記解剖学的局在の決定またはモデル化に基づいて、前記患者の解剖学的形態の解剖
学的特徴に関連する1以上の画像特性の特定を得ることと、
前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して、前記1以上の画像プロパティお
よび前記1以上の画像特性に基づいて、画質の得点を計算することと
を含む方法。
(項目2)
前記1以上の画像特性が使用者からの入力に基づいて特定される、項目1に記載の方法

(項目3)
前記1以上の画像特性が前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して特定される
、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記1以上の画像特性が、局所のコントラストレベル、局所のノイズレベル、位置ずれ
、芯ずれ、局所の動き異常、局所のぼけ異常、部分容積効果、ブルーミング効果およびア
ーチファクトの1以上を含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記1以上の画像プロパティが、画像分解能、臨床解剖的スライス厚、走査スライスの
数、薬物治療パラメーターおよび患者特性の1以上を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記1以上の画像特性の各々に関して局所の得点を計算することと、
前記1以上の画像特性の各々に関して計算した前記局所の得点に基づいて、さらに画質
得点を計算することと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記解剖学的局在の決定またはモデル化に基づいて、前記患者の解剖学的形態の少なく
とも一部分の解剖学的モデルを生成することと、
前記1以上の画像プロパティおよび前記1以上の画像特性に基づいて、前記解剖学的モ
デルの局所の不確定値を予測することと、
前記予測した局所の不確定値に基づいて、シミュレートされた血流計算の信頼区間を計
算することと、
前記1以上の画像の画質の定量的メトリックとして前記解剖学的モデルに関する不確定
値の合計を計算することと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記解剖学的局在の決定またはモデル化に基づいて、前記患者の解剖学的形態の少なく
とも一部分の解剖学的モデルを生成することと、
前記解剖学的モデルに基づいて、血流特性の計算モデルを作成することと、
前記解剖学的モデルにおよび前記患者の脈管構造の前記血流特性の前記計算モデルに基
づいて、前記患者の解剖学的形態における血流特性を決定することと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記患者の解剖学的形態が、前記患者の脈管構造の一部分を含み、
前記解剖学的局在の決定またはモデル化に基づいて、血流特性の計算モデルを作成する
ことと、
前記決定した血流特性に基づいて、前記患者の脈管構造の血管内での機能的に重大な狭
窄位置を決定することと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記血流特性が血流予備量比の値であり、
前記血流予備量比が、前記患者の脈管構造における第1の位置と第2の位置の圧力の比
を示し、
前記血流予備量比が前記患者の脈管構造内の複数の位置で決定される、
項目9に記載の方法。
(項目11)
患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の医用画像の画質を評価するためのシステムで
あって、
患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の医用画像の品質を評価するための命令を格
納するデジタル記憶装置、ならびに
前記患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の1以上の画像を受信することと、
前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して、前記受信画像の1以上の画像プ
ロパティを決定することと、
前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して、前記受信画像に基づいて、前記
患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の解剖学的局在の決定またはモデル化を実行する
ことと、
前記解剖学的局在の決定またはモデル化に基づいて、前記患者の解剖学的形態の解剖
学的特徴に関連する1以上の画像特性の特定を得ることと、
前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して、前記1以上の画像プロパティお
よび1以上の画像特性に基づいて、画質の得点を計算することと
を含む方法を実行するための命令を実行するように構成されたプロセッサ
を含むシステム。
(項目12)
前記1以上の画像特性が、使用者からの入力に基づいて特定される、項目11に記載の
システム。
(項目13)
前記1以上の画像特性が、前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して特定され
る、項目11に記載のシステム。
(項目14)
前記1以上の画像特性が、局所のコントラストレベル、局所のノイズレベル、位置ずれ
、芯ずれ、局所の動き異常、局所のぼけ異常、部分容積効果、ブルーミング効果およびア
ーチファクトの1以上を含む、項目11に記載のシステム。
(項目15)
前記1以上の画像プロパティが画像分解能、臨床解剖的スライス厚、走査スライスの数
、薬物治療パラメーターおよび患者特性の1以上を含む、項目11に記載のシステム。
(項目16)
前記プロセッサがさらに、
前記1以上の画像特性の各々に関して局所の得点を計算することと、
前記1以上の画像特性の各々に関して計算された前記局所の得点に基づいて、さらに
画質得点を計算することと
のために構成される、項目11に記載のシステム。
(項目17)
前記解剖学的局在の決定またはモデル化に基づいて、前記患者の解剖学的形態の少なく
とも一部分の解剖学的モデルを生成することと、
前記1以上の画像プロパティおよび前記1以上の画像特性に基づいて、前記解剖学的モ
デルの局所の不確定値を予測することと、
前記予測した局所の不確定値に基づいて、シミュレートされた血流計算の信頼区間を計
算することと、
前記1以上の画像の画質の定量的メトリックとして前記解剖学的モデルに関する不確定
値の合計を計算することと
のためにさらに構成される、項目11に記載のシステム。
(項目18)
前記患者の解剖学的形態が、前記患者の脈管構造の少なくとも一部分を含み、前記プロ
セッサが、
前記解剖学的局在の決定またはモデル化に基づいて、前記患者の脈管構造の少なくとも
一部分の解剖学的モデルを生成することと、
前記解剖学的モデルに基づいて、血流特性の計算モデルを作成することと、
前記解剖学的モデルおよび前記患者の脈管構造の前記血流特性の前記計算モデルに基づ
いて、前記患者の脈管構造における血流特性を決定することと
のためにさらに構成される、項目11に記載のシステム。
(項目19)
前記患者の解剖学的形態が、前記患者の脈管構造の少なくとも一部分を含み、前記プロ
セッサがさらに、
前記解剖学的局在の決定またはモデル化に基づいて、血流特性の計算モデルを作成する
ことと、
前記決定した血流特性に基づいて、前記患者の脈管構造の血管内での機能的に重大な狭
窄位置を決定することと
のためにさらに構成される、項目11に記載のシステム。
(項目20)
患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の医用画像の画質を評価するためのコンピュー
タで実行可能なプログラミング命令を含む少なくとも1つのコンピュータシステムにおい
て使用するための非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令が少なくとも1つの
コンピュータシステムにより実行されたときに、
前記患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の1以上の画像を受信することと、
前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して、前記受信画像の1以上の画像プ
ロパティを決定することと、
前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して、前記受信画像に基づいて、前記
患者の解剖学的形態の少なくとも一部分の解剖学的局在の決定またはモデル化を実行する
ことと、
前記解剖学的局在の決定またはモデル化に基づいて、前記患者の解剖学的形態の解剖
学的特徴に関連する1以上の画像特性の特定を得ることと、
前記コンピュータシステムのプロセッサを使用して、前記1以上の画像プロパティお
よび前記1以上の画像特性に基づいて、画質得点を計算することと
を含む方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【0017】
その他の実施形態および利点は、以下の説明に部分的に記載され、部分的にその説明か
ら明らかになるか、または本開示を実施することによって知ることができる。それらの実
施形態および利点は、以下に特に指摘される要素および組み合わせによって実現および達
成されるであろう。
【0018】
添付の図面は本明細書に組み込まれ本明細書の一部分を構成するが、それらはいくつか
の実施形態を図示し、説明と合わせて本開示の原理を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】典型的な実施形態による、特定の患者の冠血流量に関係する様々な情報を決定するためのシステムの概略図である。
図2】例示的な実施形態による、特定の患者における冠血流量に関連する様々な情報を決定する方法のフローチャートである。
図3】多様な例示的な実施形態による、医用画像の画質を評価し、画質メトリックを生成し、画質メトリックを使用するための典型的な方法を記載するフローチャートである。
図4】例示的な実施形態による、医用画像の画質の使用者主導の評価を可能とし実施するための例示的方法を記載するフローチャートである。
図5】多様な例示的な実施形態による、医用画像の画質のコンピュータによる自動評価を実施し、画質メトリックの生成し、画質メトリックを使用するための例示的方法を記載するフローチャートである。
図6】多様な例示的な実施形態による、冠状動脈の血流予備量比の値を推測するという文脈において、医用画像の画質を評価し、画質メトリックを生成し、画質メトリックを使用するための例示的プロセスを記載するフローチャートである。
図6-1】多様な例示的な実施形態による、冠状動脈の血流予備量比の値を推測するという文脈において、医用画像の画質を評価し、画質メトリックを生成し、画質メトリックを使用するための例示的プロセスを記載するフローチャートである。
図7A】多様な例示的な実施形態による、CT画質レビューに基づいた、血流予備量比誤差、受理または却下の例示的ボックスプロットである。
図7B】多様な例示的な実施形態による、CT画質レビューに基づいた、血流予備量比誤差、および採点の例示的ボックスプロットである。
図8】多様な例示的な実施形態による、画質に基づいた血流予備量比およびコンピュータ断層撮影の性能または正確度の間の比較を血管の数により表す典型的な棒グラフである。
図9】多様な例示的な実施形態による、心血管の内腔特徴に基づいて画像特性を採点するための例示的な採点基準を表す表である。
図10】多様な例示的な実施形態による、コンピュータ断層撮影の品質評価対基準性能を表示するための例示的インタフェースのスクリーンショットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、例示的な実施形態を詳細に参照するが、それらの例は添付の図面で図解する。可
能な限り、これらの図面を通して、同じ参照番号を使用して同じまたは類似する部分に言
及する。
【0021】
概要
本開示は医用画像の品質の評価および定量に関する。一実施形態において、本開示は、
医用画像のシミュレーションおよびモデル化の正確度および性能を予測または分析するた
めに画質を評価するシステムおよび方法を記載する。一実施形態において、医用画像の画
質を評価するための方法は画像データおよび場合によって患者情報を受信することと、コ
ンピュータにより自動化された方法、使用者主導による方法、またはこれら方法の組み合
わせによる、局所的および/または全体的なレベルでの画質の評価を行うことと、局所的
な(例えば血管に対して)または全データセットまたは複数のデータセットに対する画質
メトリックを生成することを含む。一実施形態において、医用画像の画質を評価する方法
は、(i)画像データが所望のシミュレーション正確度、精度および/または/性能を達
成するのに適切かどうか評価することと、(ii)シミュレーション結果の正確度、精度
または信頼度を推定することと、(iii)所望の正確度、精度および/または性能を達
成するのに最も適したシミュレーションまたはモデル化技術を誘導することと、/または
(iv)所望の正確度、精度および/または性能を達成するのに様々な受信データから最
良のデータを選択し、組み合わせる、または補正すること、の1以上に対して画質メトリ
ックを適用することとを含んでよい。
【0022】
一実施形態において、品質の問題または異常としては、限定するものではないが、低コ
ントラスト、ノイズ、動きまたはぼけ、位置ずれまたは芯ずれ、低分解能、部分容積効果
、ビーム硬化、走査から外れ欠損のある解剖学的形態、縞、走査装置の故障、欠測値、お
よび/または造影剤タイミングのずれが挙げられる。これらの問題が、冠状動脈の解剖学
的形態等の関心領域の情報に影響する場合、例えば血流モデルおよびシミュレーションの
品質、正確度または性能に影響する可能性がある場合、画質の問題を検出し採点すること
が望ましい場合がある。その後、画像データの品質が、患者の画像から所望の情報を抽出
する能力に与える影響に関して分析されてよい。
【0023】
例示的な一実施形態において、開示された方法およびシステムは、冠状動脈の脈管構造
の少なくともいくらかの部分を含む患者固有の画像データを受信するように構成された少
なくとも1つのコンピュータの使用を含む。画像データから冠血流量をモデル化するため
に、冠状動脈の解剖学的形態の少なくともいくらかの部分が測定され、モデル化され、セ
グメント化され、または推定されてよい。さらに、心臓、大動脈、心筋、心室、弁、静脈
および心臓の他の構造の少なくともいくらかの部分が測定され、モデル化され、セグメン
ト化され、または推定されてよい。解剖学的な表示に加えて、コントラストレベル、コン
トラスト勾配または他の画像解析メトリックに関する情報をモデルに加えるため抽出され
てよい。
【0024】
したがって、そのような例示的な実施形態では、血流のモデル化およびシミュレーショ
ンのための患者固有の画像データからの画質の決定のための方法およびシステムが開示さ
れる。そのような実施形態としては、さまざまな情報をシミュレートするために冠動脈コ
ンピュータ断層血管造影(cCTA)画像データの評価が挙げられ得る。それらの情報と
しては、限定するものではないが、冠血流量、速度、血圧、プラークおよび壁応力、およ
び血流予備量比(FFR)が挙げられる。本方法およびシステムは脈管構造の他の領域、
例えば頸動脈、末梢、腹部、腎臓、および脳、その他に採用されてもよい。また同様に、
MRI、PET、SPECT、超音波および血管造影法その他のイメージングモダリティ
に採用されてもよい。
【0025】
したがって以下に記載の特定の実施形態において、例示を目的として、画質を評価し定
量するためのシステムおよび方法が、冠状動脈の脈管構造の画像という文脈において記載
される。より具体的には、特定の実施形態において、例示を目的として、画質を評価し定
量するためのシステムおよび方法が、患者固有の冠状動脈の脈管構造のモデル化に使用さ
れる画像の品質の分析、および患者固有の冠状動脈の脈管構造における血流のシミュレー
トという文脈において記載される。しかしながら、画質を評価し定量するためのここで開
示される技術は、他の医用診断技術の中で、任意の解剖学的形態、または任意の心血管の
評価に関連した、医用画像の評価および操作に等しく適用可能であることが理解されるべ
きである。
【0026】
心血管における例示的な使用
一実施形態では、本開示は、患者から非侵襲的に取得した情報を使用した、特定の患者
における血流情報を決定する文脈において画質を評価するための方法およびシステムに関
する。このような方法およびシステムの各種実施形態は、2011年1月25日出願の、
「Method and System for Patient−Specific
Modeling of Blood Flow (血流の患者特異的なモデル化のため
の方法およびシステム)」と題する、米国特許第8,315,812号に詳述されており
、これは参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0027】
一部の実施形態では、本方法および本システムにより明らかとなる情報は、患者の冠状
動脈の脈管構造における血流に関連し得る。あるいは、明らかとなる情報は、患者の脈管
構造の他の部分、例えば頸動脈、末梢、腹部、腎臓、および脳の脈管構造における血流に
関連していてもよい。冠動脈の脈管構造は、大動脈から、細動脈、毛細血管、細静脈、静
脈などに及ぶ複雑な血管網を含む。冠動脈の脈管構造は、血液を心臓に、また心臓内で循
環させ、大動脈および主冠状動脈の下流の動脈の分枝または他の種類の血管にさらに分か
れ得る、複数の主冠状動脈(例えば、左前下行(LAD)枝、左回旋(LCX)枝、右冠
状(RCA)動脈など)に血液を供給する大動脈を含む。したがって、例示的な方法およ
びシステムは、大動脈、主冠状動脈、および/または主冠状動脈の下流の他の冠状動脈も
しくは血管内の血流に関連する様々な情報を明らかにしてもよい。下記において大動脈お
よび冠状動脈(ならびにそこから延びる分枝)について説明するが、開示される方法およ
びシステムは、他の種類の血管にも適用できる。
【0028】
例示的な実施形態において、開示される方法およびシステムによって明らかとなる情報
としては、限定するものではないが、大動脈、主冠状動脈、および/または主冠状動脈の
下流の他の冠状動脈または血管の様々な位置における様々な血流の特徴またはパラメータ
ー、例えば血流速度、圧力(またはその比)、流量、およびFFRが挙げられる。この情
報は、病変が機能的に重要かどうか、および/またはその病変を治療するかどうかを決定
するために使用できる。この情報は、患者から非侵襲的に取得した情報を用いて決定でき
る。その結果、侵襲的手法に付随する費用およびリスクを伴わずに、病変を治療するかど
うかの決定を下すことができる。
【0029】
図1は、例示的な実施形態による、特定の患者の冠血流量に関係する情報を提供するた
めのシステムの態様を示す。より詳細に後述するように、患者の解剖学的形態の3次元モ
デル10は患者から非侵襲的に取得されたデータを使用して生成され得る。他の患者固有
の情報も非侵襲的に取得し得る。一実施形態において、3次元モデル10が示す患者の解
剖学的形態の部分は、大動脈の一部分、および大動脈に連結した主な冠状動脈(およびそ
こから伸びる、または放射状に広がった血管)の近位の部分を少なくとも含む。
【0030】
より詳細に後述するように、冠血流量に関係する多様な生理学的法則または関係20が
、例えば実験データから導出され得る。より詳細に後述するように、3次元の解剖学的モ
デル10および導出された生理学的法則20を使用して、冠血流量に関係する複数の方程
式30が決定され得る。例えば、方程式30を、有限差分法、有限体積法、スペクトル法
、格子ボルツマン法、粒子ベース法、レベルセット法、有限要素法など任意の計算方法を
使用して決定し解いてもよい。方程式30を解いて、モデル10が示す解剖学的な各種地
点での患者の解剖学的形態における冠血流量に関する情報(例えば圧力、速度、FFRな
ど)を決定してもよい。
【0031】
方程式30はコンピュータシステム40を使用して解いてもよい。解いた方程式に基づ
いて、コンピュータシステム40は、モデル10により表わされる患者の解剖学的形態に
おける血流に関係する情報を示す1以上の画像またはシミュレーションを出力し得る。例
えば、画像は、より詳細に後述するように、シミュレートした血圧モデル50、シミュレ
ートした血流または速度モデル52、計算したFFR(cFFR)モデル54などを含ん
でよい。シミュレートした血圧モデル50、シミュレートした血流モデル52およびcF
FRモデル54は、モデル10により表わされる患者の解剖学的形態における3つの次元
に沿った様々な位置での圧力、速度およびcFFRそれぞれに関する情報を提供する。c
FFRは、例えばアデノシンの静脈内投与によって通常誘発される冠動脈血流が増加する
条件下で、モデル10の特定の位置の血圧を、大動脈の例えばモデル10の流入境界の血
圧で除算した比として算出することができる。
【0032】
例示的な実施形態において、コンピュータシステム40は、プロセッサやコンピュータ
システムなどによって実行されたときに、患者の血流に関連する様々な情報源を提供する
ための本明細書に記載される行為のいずれかを実施し得る命令を保存する1以上の非一時
的なコンピュータ可読記憶装置を備えてよい。コンピュータシステム40はデスクトップ
またはポータブルコンピュータ、ワークステーション、サーバー、携帯情報端末または他
のコンピュータシステムを含んでいてもよい。コンピュータシステム40はプロセッサ、
読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、周辺機器(例え
ば入力装置、出力装置、記憶装置など)を接続するための入力/出力(I/O)アダプタ
ー、キーボード、マウス、タッチスクリーン、音声入力、および/または他の入力装置を
接続するためのユーザーインタフェースアダプター、ネットワークにコンピュータシステ
ム40を接続するための通信アダプター、ディスプレイなどにコンピュータシステム40
を接続するためのディスプレイアダプターを含んでいてもよい。例えば、ディスプレイは
3次元モデル10、ならびに/またはシミュレートした血圧モデル50、シミュレートし
た血流モデル52および/もしくはcFFRモデル54などの方程式30を解くことによ
り生成される任意の画像を表示するために使用してもよい。
【0033】
図2は、別の実施形態による、特定の患者の血流に関係する情報の各種情報源を提供す
るための方法60の態様を示す。本方法は患者の解剖学的形態に関する情報などの患者固
有の解剖学的データ(例えば、大動脈の一部分、および大動脈に連結した主な冠状動脈(
およびそこから伸びている血管)の近位の部分)を取得すること、ならびにデータを前処
理すること(ステップ62)を含んでよい。患者固有の解剖学的データは、例えばCCT
Aにより非侵襲的に取得し得る。
【0034】
患者の解剖学的形態の3次元モデルは、取得された解剖学的データに基づいて生成され
てよい(ステップ64)。例えば、3次元モデルは、図1に関連して上述した患者の解剖
学的形態の3次元モデル10であってもよい。
【0035】
3次元モデルは分析のために準備され、境界条件が決定されてよい(ステップ66)。
例えば、図1に関連して上述した患者の解剖学的形態の3次元モデル10は、トリミング
および離散化して、体積メッシュ、例えば有限要素メッシュまたは有限体積メッシュにし
てもよい。体積メッシュは、図1に関連して上述した方程式30を生成するために使用さ
れてよい。
【0036】
また、境界条件を指定して、図1に関連して上述した方程式30に組み入れてもよい。
境界条件は3次元モデル10に関する、その境界、例えば流入境界、流出境界、血管壁境
界等の境界における情報を提供する。流入境界は、大動脈根の近傍の大動脈の端部など、
その境界を通って流れが3次元モデルの解剖学的形態内へと向かう境界を含んでもよい。
各流入境界に、例えば、心臓モデルおよび/または集中パラメータモデルをその境界に結
合することによって、速度、流量、圧力、または他の特性に対する規定の値またはフィー
ルドを指定してもよい。流出境界324は、大動脈弓の近傍の大動脈の端部、ならびに主
冠状動脈およびそこから延びる分枝の下流端部など、その境界を通って流れが3次元モデ
ルの解剖学的形態から外に向かう境界を含んでもよい。各流出境界は、例えば、詳細に後
述するように、集中パラメータモデルまたは分散(例えば、一次元波動伝播)モデルを結
合することによって指定することができる流入および/または流出境界条件の規定値は、
心拍出量(心臓からの血流の体積)、血圧、心筋質量などであるがこれらに限定されない
患者の生理学的特徴を非侵襲的に測定することによって明らかにすることができる。血管
壁境界は、3次元モデル10の大動脈、主冠状動脈、および/または他の冠状動脈もしく
は血管の物理的境界を含んでもよい。
【0037】
作製された3次元モデルおよび明らかにされた境界条件を用いて、コンピュータ分析を
実施して(ステップ68)、患者の血流情報を明らかにしてもよい。例えば、方程式30
を用いて、図1に関連して上記で説明したコンピュータシステム40を使用してコンピュ
ータ分析を実施し、図1に関連して上記で説明した画像、例えば模擬の血圧モデル50、
模擬の血流モデル52、および/またはcFFRモデル54を生成してもよい。
【0038】
また、本方法は、この結果を用いて、患者特有の治療選択肢を提供することも含む(ス
テップ70)。例えば、ステップ64で作成された3次元モデル10および/またはステ
ップ66で指定された境界条件を調整して、1以上の治療、例えば、3次元モデル10に
表される冠状動脈のうちの1つへの冠動脈ステントの設置、または他の治療選択肢をモデ
ル化してもよい。次いで、上記のステップ68で説明したようにコンピュータ分析を実施
して、新しい画像、例えば更新版の血圧モデル50、血流モデル52、および/またはc
FFRモデル54を生成してもよい。これらの新しい画像を用いて、その治療選択肢を採
用した場合の血流速度および血圧を明らかにすることができる。
【0039】
本明細書において開示されるシステムおよび方法は、医師がアクセスするソフトウェア
ツールに組込んで、冠状動脈内の血流を定量化し、冠動脈疾患の機能的重要性を評価する
ための非侵襲的手段を提供することができる。さらに、医師は、このソフトウェアツール
使用して、冠動脈血流に対する薬物治療、介入治療、および/または外科治療の効果を予
測することもできる。このソフトウェアツールは、頸部の動脈(例えば、頸動脈)、頭部
の動脈(例えば、大脳動脈)、胸部の動脈、腹部の動脈(例えば、腹部大動脈およびその
分枝)、腕の動脈、または脚の動脈(例えば、大腿動脈および膝窩動脈)を含む心血管系
の他の部分の疾患を予防、診断、管理、および/または治療することもできる。このソフ
トウェアツールは、医師が患者のための最適な個別療法を作成できるように対話式であっ
てもよい。
【0040】
例えば、このソフトウェアツールは、医師または他の使用者が使用する、コンピュータ
システム、例えば図1に示すコンピュータシステム40に、少なくとも部分的に組込まれ
ていてもよい。このコンピュータシステムは、患者から非侵襲的に取得したデータ(例え
ば、3次元モデル10を作成するために使用するデータ、境界条件を適用するため、また
はコンピュータ分析を実施するために使用するデータなど)を受信できる。例えば、デー
タは医師が入力してもよく、またはかかるデータにアクセスし、それを提供することがで
きる別の供給源、例えば放射線もしくは医学研究室から受信してもよい。データは、ネッ
トワークまたはデータを伝達するための他のシステムを介して、または直接コンピュータ
システムに送信してもよい。ソフトウェアツールは、このデータを使用して、3次元モデ
ル10もしくは他のモデル/メッシュ、および/または図1に関連して上記で説明した方
程式30を解くことによって特定された任意のシミュレーションもしくは他の結果、例え
ば模擬の血圧モデル50、模擬の血流モデル52、および/またはcFFRモデル54を
生成および表示してもよい。このように、ソフトウェアツールは、ステップ62から70
を実施することができる。ステップ70において、医師は、コンピュータシステムにさら
なる入力を提供して可能な治療選択肢を選択してもよく、またコンピュータシステムは、
選択された可能な治療選択肢に基づいて、新しいシミュレーションを医師に対して表示し
てもよい。さらに、図2に示す各ステップ62から70は、別々のソフトウェアパッケー
ジもしくはモジュールを用いて実施してもよい。
【0041】
あるいは、ソフトウェアツールは、ウェブベースのサービスまたは他のサービス、例え
ば医師とは別の実体が提供するサービスの一部として提供されてもよい。このサービス提
供者は、例えば、ウェブベースのサービスを運営していてもよく、またネットワークまた
はコンピュータシステム間でデータを伝達する他の方法を介して医師または他の使用者が
アクセスしやすいウェブポータルまたはウェブベースのアプリケーション(例えば、その
サービス提供者が運営するサーバーまたは他のコンピュータシステム上で実行される)を
提供してもよい。例えば、患者から非侵襲的に取得したデータは、サービス提供者に提供
されてもよく、サービス提供者はこのデータを用いて3次元モデル10もしくは他のモデ
ル/メッシュ、および/または図1に関連して上記で説明した方程式30を解くことによ
って明らかにされた任意のシミュレーションもしくは他の結果、例えば模擬の血圧モデル
50、模擬の血流モデル52、および/またはcFFRモデル54を生成してもよい。次
いで、ウェブベースのサービスは、3次元モデル10もしくは他のモデル/メッシュ、お
よび/またはシミュレーションに関連する情報を送信してもよく、それによって3次元モ
デル10および/またはシミュレーションを医師に対して、または医師のコンピュータシ
ステム上に表示してもよい。このようにして、ウェブベースのサービスは、ステップ62
から70および患者特有の情報を提供するための後述の任意の他のステップを実施するこ
とができる。ステップ70において、医師はさらなる入力を提供して、例えば、可能な治
療選択肢を選択しても、またはコンピュータ分析に他の調整を行ってもよく、この入力は
、サービス提供者によって運営されるコンピュータシステムに送信してもよい(例えば、
ウェブポータルを介して)。ウェブベースのサービスは、選択された可能な治療選択肢に
基づいて、新しいシミュレーションまたは他の結果を生成してもよく、またその新しいシ
ミュレーションに関連する情報を再び医師に伝達してもよく、それによってその新しいシ
ミュレーションが医師に対して表示されてもよい。
【0042】
画質評価
非侵襲的にFFRを計算する計算モデル化のための上記技術には、画質の評価も有益で
ある。したがって、本開示は、血流特性のシミュレートに使用される解剖学的および数学
モデルに対して利用可能なデータの画質の効果を定量し評価するための方法およびシステ
ムを記載する。さらに本開示は、局所的および全体的な画像プロパティに基づいた血管お
よび他の解剖学的モデルの不確実性を評価し、ならびに予測した不確定性に基づいてシミ
ュレートされた血流計算の信頼区間を計算する、ための方法およびシステムを記載する
【0043】
例示的な一実施形態において、方法およびシステムは、画質の問題を検出し採点するよ
うに構成された少なくとも1つのコンピュータを実装してもよい。例示的な一実施形態に
おいて、冠状動脈の画像データは少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、自
動化された方法および使用者主導方法の組み合わせにより分析される。以下に詳細に記載
するように、開示された方法およびシステムは完全に自動化されるか、完全に使用者主導
でるか、または自動および使用者主導の両方であってもよい。開示された方法およびシス
テムは、以下のリストにある1以上の潜在的な画質の問題の評価または定量を含んでよい
一評価を行うよう構成されてよい。
【0044】
−画像分解能
−スライス厚
−再構成カーネル
−走査スライスの数
−欠損スライスまたは欠損データ
−取得フェーズ
−取得時に示される薬物治療
−取得時の心拍数
−画像データにあると望ましいが、そこには含まれない解剖学的データ
−解剖学的異常の存在
−埋め込みデバイスまたは過去の手術の有無
−コントラストレベル
−ノイズレベル
−コントラストノイズ比
−位置ずれ、または芯ずれ
−動き、またはぼけ
−部分容積効果またはブルーミング
−ビーム硬化
−一般的に解釈不可能な、または定義が不十分な領域
【0045】
例示的な一実施形態において、これらの問題は、全体的なレベル、局所的なレベル、ま
たは全体的、局所的の両レベルで検出されてよい。全体的なレベルの問題は、画像ボリュ
ーム全体をベースに画質の問題を検出することを含んでいてもよく「画像プロパティ」と
呼ばれる場合がある。局所的なレベルの問題は、例えば、全または一部の冠状動脈の周囲
、冠状動脈のプラーク、1以上の血管の中心線に沿った領域等、特定の領域の検出空間を
含んでいてもよく、「画像特性」と呼ばれる場合がある。
【0046】
例示的な実施形態において、画質を決定し評価するためのシステムおよび方法は、上述
の品質に関する問題に基づく局所的および全体的な画質の問題に対する、自動化された、
および使用者主導の定量的および定性的評価を組み合わせて使用することができる。
【0047】
CT撮影におけるアーチファクト等の画質の問題には、複数の原因があるが、これらに
は(i)X線菅(kVP、mA)および光子(ゆらぎ、不足)、ビーム硬化(縞、ダーク
バンド等)、部分容積(ブルーミング)、アンダーサンプリング(ブルーミング)、およ
びガントリ回転速度;等の物理的原因、(ii)心拍、正常な調律(動き)、金属素材お
よびBMI(ビーム硬化)等の患者による原因、(iii)キャリブレーションから外れ
た検出器アレイ、または再構成カーネルおよび方法等の走査装置による原因、および/ま
たは(iv)ベータ遮断薬投与(HRを下げる)、造影剤投与(高濃度、流速、1相、2
相、3相)、造影剤のタイミング制御等、ECG同期および補正、ニトログリセリン(血
管拡張および不透明度の増加)、および左心対左心+右心不透明化等のプロトコルによる
原因、がある。
【0048】
図3は、多様な例示的な実施形態による、医用画像の画質を評価し、画質メトリックを
生成し、画質メトリックを使用するための典型的な方法100を記載するフローチャート
である。一実施形態において、方法100は患者の画像データを受信することを含む(ス
テップ102)。特に、一実施形態によれば、ステップ102は、患者の身体、臓器、組
織あるいはその部分に関する患者固有のデータを受信することにより、シミュレーション
およびモデル化の際の画質を決定するための少なくとも1つのコンピュータシステムを実
装することを含んでよい。例えば、ステップ102はコンピュータシステム40で、また
は他のコンピュータシステム(例えば、限定するものではないがコンピュータ、ラップト
ップ、携帯電話、モバイルタブレット、DSP、クラウドコンピューティングシステム、
サーバファーム等含んでよいが挙げられる)で患者固有のデータ10を取得することを含
んでよい。
【0049】
方法100は、受信画像データの局所的および/または全体的な品質に対する、自動化
された、使用者主導の、または自動化および使用者主導の両者を組み合わせた評価を実施
することを含んでよい。(ステップ104)例えば自動化された実施形態では、コンピュ
ータシステムは、全画像または画像群の全体的な品質評価、および単一の画像の特定部分
または画像化した患者の解剖学的形態の部分の局所的な品質評価の両方を自動的に決定し
得る。使用者主導の実施形態では、コンピュータシステムは、全画像または画像群の全体
的な品質評価を決定、入力するよう、ならびに単一の画像の特定部分または画像化された
患者の解剖学的形態の部分の局所的品質評価を決定するよう使用者を促してもよい。ある
特定の実施形態では、局所的および/または全体的な品質評価のある側面は、自動評価お
よび使用者主導評価の任意の組み合わせにより形成してもよい。
【0050】
少なくとも1つのコンピュータシステムおよび方法は、単一の画質の特徴、多様な画質
の特徴、または画質の特徴の組み合わせを評価しまたは採点して、関心領域、または画像
データセット全体に対して画質メトリックを生成し得る(ステップ106)。具体的には
、少なくとも1つのコンピュータシステムは、点数を使用し、評価された画質の特徴に基
づいて領域のまたはデータセットの画質メトリックを定式化し得る。少なくとも1つのコ
ンピュータシステムは、画質評価の結果を入力として使用し、患者固有のデータでモデル
化またはシミュレーションを実行し得る。しかしながら、血流などの患者固有のデータの
モデル化およびシミュレーションに加えて、画質メトリックを他の活動または評価に入力
として使用してもよい。
【0051】
一実施形態では、方法100は、画像データがシミュレーションの望ましい正確度を達
成するのに適切であるかどうか評価するために生成されたメトリックを使用することを含
んでよい(ステップ108)。例えば、方法100は、正確度、性能または他の要件に関
連する所定の基準に基づいて、モデル化またはシミュレーションに対して、画像データを
受理または却下するために画質評価の結果を使用することを含んでよい。さらに方法10
0は性能メトリック(例えば分析時間、分析費用)を推定するため画質評価の結果を使用
すること、または少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、患者固有のデータ
でモデル化またはシミュレーションを実行するか、しないことをこれらのメトリックに基
づいて決定することを含んでよい。例えば、コンピュータシステムは、画質評価の結果に
基づいて、分析を完了する時間を計算し表示してもよい。加えて、または代替的に、コン
ピュータシステムが画質評価の結果に基づき分析費用を計算し表示してもよい。加えて、
または代替的に、コンピュータシステムは画質評価の結果を基に、少なくとも1つのコン
ピュータシステムを使用して患者固有のデータでモデル化またはシミュレーションを実行
するかどうかの推奨または必要条件を表示しかつ/または送信し得る。分析を完了する時
間および分析費用、および/または、分析を実行する/しない等の計算情報はいずれも、
電子ディスプレイを通じて、および/または電子ネットワーク上で医師、技術者または他
の医療サービス提供者に表示されてよい。
【0052】
別の実施形態によれば、方法100は、シミュレーション結果の正確度または信頼度を
評価するために生成したメトリックを使用することを含んでよい(ステップ110)。例
えば、方法100は、モデル化またはシミュレーションを実行し、シミュレーション結果
に関連した信頼度メトリック(例えば誤差、信頼度パーセント、信頼区間、正確度または
精度の推定)を結果と一緒に出力するために画質評価の結果を使用することを含んでよい
【0053】
別の実施形態では、方法100は、所望のシミュレーション正確度を達成するのに最も
適したシミュレーション技術を誘導するため、生成されたメトリックを使用することを含
んでよい(ステップ112)。例えば、方法100は、画質評価の結果を使用して、全画
像データセットまたは関連する被影響部分において種々の技術またはアルゴリズムを画質
評価により使用して、モデル化またはシミュレートにおける所望の性能、正確度、精度、
または他の要件を高めるか達成してもよい。
【0054】
別の実施形態において、方法100は、入手可能な最良のデータを選択、組み合わせ、
または補正して、受信した複数個のオプションから所望のシミュレーション正確度の達成
するために、生成されたメトリックを使用することを含んでよい(ステップ114)。例
えばおよび方法100は、モデル化またはシミュレーションの実行前に画質の問題に関し
て修正を行い、所望の性能、正確度、精度または他の要件を高めまたは達成するために、
画質評価の結果を使用することを含んでよい。さらに、またはその代わりに、方法100
はモデル化またはシミュレーションの実行に最も適した、多数の入手可能なデータ(例え
ば代替のシリーズまたは再構成)からデータセットを選択して、所望の性能、正確度、精
度または他の要件を高めまたは達成するために、画質評価の結果を使用することを含んで
よい。さらに、またはその代わりに、方法100は、数個の異なる多様な画像データ(例
えば他のフェーズ、もしくは他の再構成またはモダリティ)を組み合わせ画質の問題の補
正し、少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、患者固有のデータでモデル化
またはシミュレーションを実行するために、所望の正確度、精度、または他の要件を高め
または達成するために、画質評価の結果を使用することを含んでよい。
【0055】
別の実施形態では、方法100は、よりよい画質を取得し所望のシミュレーションの正
確度を達成するためのフィードバックを行うため、生成されたメトリックを使用すること
を含んでよい(ステップ116)。例えば、方法100は、画像データを提供する担当者
にフィードバックできる時間枠内で、単一の画質の特徴、多様な画質の特徴、または画質
の特徴の組み合わせを評価し、または採点して、所定のいくつかの基準を満たし、所望の
性能、正確度、正確度または他の要件を高めまたは達成するため、画像データを補正、や
り直し、または更新できるよう、画質評価の結果を使用することを含んでよい。更新され
た画像データまたは訂正した画像データを使用して、少なくとも1つのコンピュータシス
テムおよび方法によってモデル化またはシミュレーションを1回または複数回追加で繰り
返してもよい。
【0056】
図4は例示的な実施形態による、医用画像の画質の使用者主導評価を可能とし実施する
ための例示的方法120を記載するフローチャートである。図4に示すように、一実施形
態において、方法120は患者の解剖学的画像データを受信することを含んでよい(ステ
ップ122)。例えば、ステップ122はコンピュータシステム40で画像データ10を
取得することを含んでよく、これは上述の図1および図2の開示と一致している。方法1
20は患者の脈管構造の1以上の中心線を決定することをさらに含んでよい(ステップ1
24)。例えば、ステップ124は、コンピュータシステム40のプロセッサを使用して
、上述の図1および図2の開示と一致して、患者の脈管構造の1以上の中心線を自動的に
特定し得る。一実施形態では、コンピュータシステム40のプロセッサは、主要な血管(
RCA、LADおよびLCX)、または直径2mmを超える他の血管に対する中心線を追
加し得る。
【0057】
方法120は使用者に、各センターラインに沿った画質の問題、画像異常、画像アーチ
ファクトまたは他の「解釈不可領域」を、ある視覚的な基準のセット(例えばぼけ、動き
、画像アーチファクト等)を使用して入力するよう促し得る(ステップ126)。例えば
、コンピュータシステム40のプロセッサは、1以上の画像および中心線の表示を開始し
て、画像をレビューおよび検査し、位置ずれアーチファクト、ぼけ、ステント不適当なコ
ントラストノイズ比、動きアーチファクト、ブルーミングアーチファクト、石灰化、走査
エラー、欠損スライス、不完全なデータ等を発見した場合、画質の問題に関する入力を行
うよう使用者を促し得る。例えば、コンピュータシステム40のプロセッサは、使用者が
、本明細書に記載された画質の問題のうちのいずれかを、それら問題の位置、量または程
度の一定の特性と共に特定することを示すために操作できるユーザーインタフェース要素
を生成し得る。一実施形態において、使用者またはコンピュータシステム40のプロセッ
サのいずれかは、各解釈不可領域を短い(例えば0−5mm)または長い(例えば5mm
以上)と特徴づけてもよい。
【0058】
一実施形態において、造影剤タイミングおよびノイズを、画像が高コントラストで、低
ノイズ、および中程度の正しいコントラストを示す場合、「良」;画像が中程度のコント
ラスト、ノイズ、および高過ぎるコントラストを示す場合、「許容限界良」;画像が低コ
ントラスト、高ノイズ、および高過ぎるコントラストを示す場合、「不良」のように識別
するよう使用者を促してもよい。一実施形態において、位置ずれを内腔形状に影響する位
置ずれを画像が示さない場合、「良」;血管にほとんど垂直で、補正可能な位置ずれアー
チファクトを画像が示す場合、「許容限界」;および補正できないか、疾病の領域に存在
し、内腔を特定できない位置ずれを画像が示す場合、「不良」のように識別するように使
用者を促してもよい。一実施形態において、動きを、動きが内腔やプラークに影響しない
場合、「良」;内腔は影響されるが、血管は推定で解釈しモデル化可能なことを画像が示
している場合、「許容限界」;および内腔の解釈可能性が、動きによって著しく影響を受
けていることを画像が示している場合、「不良」のように識別するように使用者を促して
もよい。一実施形態において、ブルーミングを、ブルーミングが内腔の解釈可能性に影響
しない場合、「良」;ブルーミングの程度が高く補正が必要とする場合があるが、内腔の
視認性は保持されている場合、「許容限界」;およびブルーミングアーチファクトがひど
く内腔が完全に覆われている場合、「不良」のように識別するように使用者を促してもよ
い。
【0059】
方法120は、領域の長さに基づいた各解釈不可領域の得点を受信または計算すること
をさらに含んでよい(ステップ128)。例示的な一実施形態において、画質の問題に関
する得点は、(定性的なスケール(例えばリッカート尺度)または定量的尺度のいずれを
問わず)モデル化およびシミュレーションの正確度、精度、および性能にどのように影響
し予測するかを決定され分析されてよい。画質評価は、データセットを受理不可と見なす
絶対的な不合格の判定基準を有しても良く、領域、血管または全データセット上で採点さ
れ、組み合わせられ、重み付けされる多様なメトリックを有しても良く、またはその両方
の組み合わせを有しても良い。例えば特定の実施形態において、(ノイズ、動き、ブルー
ミング、不十分なコントラスト、位置ずれ等を問わず)単一のまたは組み合わせられた画
質の問題により識別困難な動脈が25%以上となる場合は常に自動的に不合格としてもよ
い。
【0060】
例示的な一実施形態においてメトリックは、事前に記載した少なくともいくつかの画質
の問題に対する格付けに基づいて、画質採点システムおよび方法によって、領域(例えば
血管)またはデータセットのいずれかに関して生成されてよい。一実施形態において、各
解釈不可領域はそれぞれ、長さに基づいた得点を付けられる(例えば、一実施形態では短
い場合は1.5、長い場合は3)。一実施形態においては、患者の画像(つまり「症例」
)を却下する得点には、一本の主要な血管に対して6得点、全症例に対して8得点、およ
び/または、いわゆる「警告」の場合は10点、などがある。
【0061】
図9は、多様な例示的な実施形態による、心血管の内腔特徴に基づいて画像特性を採点
するための例示的な採点基準の表を示す。特に、図9は、解釈不可領域または他の画質の
問題に対する点数を割り当てる採点基準の例示的な一実施形態を示す。例えば、図9の例
示的な基準に示すように、異なる得点が各特性(つまり、(ノイズ、動き、コントラスト
)の組み合わせ、動き、芯ずれ、ノイズ、ブルーミング、コントラストまたは不透明性の
いずれか)に、以下の基準を元に、割り当てられ得る。基準は、影響を受けた領域の大き
さ(例えば、「完全に」もしくは「わずかに」または「長い」もしくは「短い」)および
確認された特性が、(i)内腔を完全に消去している、または情報を欠損させており、疾
病の識別を妨げている;(ii)正確な内腔境界の決定を妨げるが、存在する疾病の識別
が可能である(例えば、最小内腔径(「MLD」)がどこであるか示している);または
(iii)正確な内腔境界の決定を妨げる、かつ疾病の識別を妨げるかいずれかである。
図9の採点基準は単なる一例であり、別の採点メカニズムも本開示の範囲内に包含される
ことが理解されるべきである。例えば、採点システムは反転していてもよく、得点の低下
が画質の低下を示し、得点の上昇が画質の向上を示すようなものでもよい。あるいは、ま
たは追加で、採点システムは指数関数的、対数的、分数スケールをベースにしてもよい。
あるいは、または追加で、採点システムは色による分類および/またはレターグレードス
ケールに基づいて作成してもよい。これは、色および/または文字で、採点された画像の
ある品質レベルを示すものである。
【0062】
特定の実施形態において、画質得点は重み付けられ、他の要素と組み合わせられ得る。
この要素としては、限定するものではないが、影響の大きさ、問題箇所の大きさ、影響を
受けた領域、問題のタイプ(例えばノイズまたは動き)、疾病の有無、血管サイズ、心臓
内の位置、内腔定義における不確定度、視覚的な解釈可能性、アルゴリズム信頼度等の他
の問題との組み合わせが挙げられる。領域またはデータセットに対して関数が導出されて
よいが、これはいくつかの、すべての、または付加的な重み付け因子を使用する。そのよ
うな一例を以下に示す。
【0063】
品質領域=f(Σ血管問題×規模×タイプ×疾病×大きさ×血管径×位置×内腔不確
実度)
【0064】
品質データセット=f(Σデータセット問題×規模×タイプ×疾病×大きさ×血管径×
位置×内腔不確実度)
【0065】
例示的な一実施形態において、以下の基準に対して限界が定義されてよく、受理不可能
な得点により、冠血流量モデル化およびシミュレーション用データが却下される可能性が
ある。
【0066】
−画像分解能:ピクセルサイズ<0.5mm
−スライス厚≦1.0mm
−走査スライスの数≧64
−受理不可の欠損スライスまたは欠損データ
−CT撮影時に硝酸薬を舌下投与が必須である。
−冠状動脈と心筋は、データセットに完全に含まれなくてはならない。
−重度の先天性心臓疾患等の解剖的な異常がある
−ペースメーカー等の埋め込みデバイス、またはバイパス移植等の過去の手術がある
【0067】
例示的な一実施形態において、次の基準が局所的レベルで定義されてよい。例えば各画
質の問題については、影響の規模の点数が生成されてよい。問題の位置および大きさ等、
他の情報が下記に基づいて追加されてよい。
【0068】
−コントラストレベル
−ノイズレベル
−位置ずれ、または芯ずれ
−動き、またはぼけ
−部分容積効果、またはブルーミング
−一般的に解釈不可能な、または定義が不十分な領域
【0069】
方法120は、画質の定量的メトリックとして、画像に対して解釈不可領域の総得点を
計算し出力することをさらに含んでよい(ステップ130)。例えば一実施形態において
、大きさと部位によって重み付けられた各問題に関する点数は、各血管および症例に合算
されてよい。
【0070】
図5は、多様な例示的な実施形態による、医用画像の画質のコンピュータ自動評価を実
施し、画質メトリックを生成し、画質メトリックを使用するための例示的な方法150を
記載するフローチャートである。一実施形態において、方法150は患者の解剖学的画像
データを受信し患者の脈管構造の血管モデルを生成することを含んでよい(ステップ15
2)。方法150はさらに、プロセッサを使用して、1以上の全体的な画質プロパティを
決定することを含んでよい(ステップ154)。
【0071】
例示的な一実施形態において、開示されたシステムおよび方法は、画像分解能、スライ
ス厚、再構成カーネル、走査スライスの数、欠損スライスまたは欠損データおよび取得フ
ェーズ等を含む画像データから抽出可能な定量的な情報を自動的に評価することを含んで
よい。情報は、画像データの寸法またはタグ(例えばDICOMヘッダー)の解析により
抽出されてよい。これらカテゴリーの各々は単純な受理/却下基準を有する。例示的な仕
様として以下を使用する。
【0072】
−画像分解能:ピクセルサイズ<0.5mm
−スライス厚≦0.9mm
−製造業者独自のフィルターと等しい再構成カーネル
−走査スライスの数≧64
−受理不可の欠損スライスまたは欠損データ
−取得フェーズ>65%および≦80%
【0073】
例示的な一実施形態において、分解能、スライス、フェーズおよびデータの完全性が、
絶対的な受理/却下基準を有さないかもしれず、むしろデータセットに関する全体的な画
質メトリックに寄与する一連の得点を有してもよい。例えば、分解能およびスライス厚を
組み合わせてボクセル体積(例えば0.4mm×0.4mm×0.75mm)を取得して
もよい。高分解能または低分解能により全体のデータセットの得点が上昇する、または下
降する可能性がある。
【0074】
一実施形態において、画像診断中の投与薬物および心拍に関する情報は、コンピュータ
システムに検査と一緒に提出されてよい。コンピュータシステムはこの情報に基づいてデ
ータセットを受理/却下し得る。例えば、硝酸薬の舌下投与がない場合、データセットを
却下する必要がある場合がある。あるいは、薬物の有無もしくは投与量、HR、または他
の生理学的メトリックが総合得点に寄与してもよく、または、モデル化およびシミュレー
ションを異なる方法で実施するよう、方法およびコンピュータシステムに指示し得る。例
えば、硝酸薬の舌下投与がない場合、本来の血管のサイズを保証するために、代わりの冠
状動脈内腔分節アルゴリズムの使用を指示する場合がある。
【0075】
例示的な一実施形態において欠損した解剖学的データ、解剖学的異常の存在、および埋
め込みデバイスまたは過去の手術の存在が、コンピュータシステムの使用者によって検出
されてよい。これらの問題の有無は得点に付加され、データセットの受理/却下の決定を
もたらす。これらの評価は自動化されてもよい。
【0076】
方法150はさらに、プロセッサを使用して、血管モデルに基づいた患者の脈管構造の
1以上の中心線を決定することを含んでよい(ステップ156)。方法150はさらに、
複数の中心線の各々の位置で1以上の局所的画像プロパティ(例えば、ぼけ、動き、コン
トラスト等)を決定することを含んでよい(ステップ158)。一つの例となる実施形態
において、コンピュータシステムは、本明細書に記載された画質の問題の1以上に基づい
て、画質の完全に自動化された定量的評価を実施することにより、そのような局所的画像
プロパティ、または局所的もしくは全体的な画質を自動的に決定するよう構成されてもよ
い。例えば、コンピュータシステム40のプロセッサは自動的に1以上の局所的画像プロ
パティを、コンピュータシステム40が、以下に記載する例示的な概念によるいくつかの
症例において、アルゴリズムを実行すること等によって自動的に行うことを除いて、図4
の使用者主導方法に関して上で論じた方法のいずれかで決定し得る。
【0077】
例示的な一実施形態においてコントラストおよびノイズレベルは局所的に(例えば血管
のある部分で)、または全体的に(例えば、複数の血管、または大きく代表的な血管もし
くは構造に渡って)評価されてよい。この評価は、コントラストレベル(例えば関心領域
の平均コントラスト)およびノイズレベル(例えば関心領域のコントラストの標準偏差)
の測定値を取得することにより、実施されてよい。これらの測定値も組み合わせて、コン
トラストとノイズ測定値を除算することにより、S/N対を生成し得る。さらに、コント
ラストおよびノイズ測定値は背景または周辺組織のコントラストおよびノイズを考慮に入
れてもよく、関心領域(例えば冠状動脈)と背景データ(例えば心筋および心外膜脂肪)
との間の差を表わしてもよい。あるいは、コントラスト、ノイズおよびコントラストノイ
ズ比は、参照基準と比較してノイズの程度を格付けして(例えば、1=不良、2=許容限
界、3=良)、局所的または全体的なスケールで定性的に評価してもよい。一実施形態で
は、コンピュータシステム40のプロセッサは、あるCTボリュームデータおよび大動脈
のマスクデータを入力として受信し(例えばzhfファイルから)、大動脈の平均ハンス
フィールドユニット(「HU」)値、ノイズの標準偏差、周囲の平均HU値およびCNR
を出力するアルゴリズムに基づいてノイズを計算し得る。一実施形態において、コンピュ
ータシステム40のプロセッサは、あるCTボリュームおよび筋腫(長軸およびセグメン
ト化)を入力として受信し、LVの平均HU値およびRVの平均HU値を出力するアルゴ
リズムに基づいて、左心室と右心室の間のコントラストの差異を計算し得る。
【0078】
例示的な一実施形態において、位置ずれまたは芯ずれは、データを、またはデータセッ
ト全体を、または動脈の近くを局所的に検索し、隣接した画像間に生じたオフセットがど
こにあるかを特定することで検出されてよい。これらは使用者、またはコンピュータシス
テムによって検出されてよい。位置ずれの程度は、データがシフトした距離、影響を受け
た領域の量(例えば影響を受けた血管の長さ)により、または、影響を受けた領域の方向
(例えば、血管に対して垂直または平行)により分類し得る。あるいは、位置ずれは参照
標準と比較して位置ずれの程度を格付け(例えば、1=不良、2=許容限界、3=良)す
ることにより、局所的または全体的なスケールで定性的に評価されてよい。一実施形態に
おいて、コンピュータシステム40のプロセッサは、CT画像を受信し、ピーク位置を出
力し、値を採点するアルゴリズムに基づいてインデックススライスの位置ずれを計算し得
る。
【0079】
例示的な一実施形態において、動き、またはぼけによるアーチファクトは、全体的なデ
ータまたは動脈の近くの局所を走査して画像データがぼけている、またはぼやけた輪郭が
ある(例えば、血管の輪郭が鮮鋭でなく、ぼけている)領域を特定することで、検出され
てよい。これらは使用者、またはコンピュータシステムによって検出されてよい。動きの
程度は、データがぼけた距離、画像データの変化度または他の定量的な方法によって分類
されてよい。あるいは、動きは参照標準と比較して動きの程度を格付け(例えば、1=不
良、2=許容限界、3=良)することにより、局所的または全体的なスケールで定性的に
評価されてよい。
【0080】
例示的な一実施形態において、部分容積効果またはブルーミングアーチファクトは、全
体的なデータまたは動脈の近くの局所を走査して、画像データがデータの他の部分と干渉
する明るい特質を含んでいる領域を特定することで、検出されてよい。これらは使用者、
またはコンピュータシステムによって検出されてよい。ブルーミングの程度は強度、大き
さおよび/または、隣接する組織への拡張度合(例えば、ブルーミングが内腔をどれだけ
覆っているか)の測定値によって分類されてよい。あるいは、ブルーミングは参照標準と
比較してブルーミングの程度を格付け(例えば、1=不良、2=許容限界、3=良)する
ことにより、局所的または全体的なスケールで定性的に評価されてよい。
【0081】
例示的な一実施形態において、ビーム硬化は、全体的なデータまたは動脈の近くの局所
を走査して、画像データがデータの他の部分と干渉する暗点または縞を含んでいる領域を
特定することで、検出されてよい。これらは使用者、またはコンピュータシステムによっ
て検出されてよい。ビーム硬化の程度は強度、形態および/または、隣接する組織への干
渉度合(例えば、ビーム硬化により内腔がどれだけ不透明になっているか)の測定値によ
って分類されてよい。あるいは、ビーム硬化は参照標準と比較してビーム硬化の程度を格
付け(例えば、1=不良、2=許容限界、3=良)することにより、局所的または全体的
なスケールで定性的に評価されてよい。
【0082】
例示的な一実施形態において、画質に影響する他の一般的特性は、全体的なデータまた
は動脈の近くの局所を走査して、画像データが解釈できない、または内腔等の特徴の定義
が不十分である領域を特定することで、検出されてよい。この特性は使用者、またはコン
ピュータシステムによって検出されてよい。この特性は、隣接した領域と比較した、内腔
の画質への影響度、および影響を受けた量によって定量化されてよい。あるいは、この特
性は参照標準と比較して特性の程度を格付け(例えば、1=不良、2=許容限界、3=良
)することにより、局所的または全体的なスケールで定性的に評価されてよい。
【0083】
方法150はさらに、局所的および全体的な画像プロパティに基づいた血管モデルにお
いて局所的な不確定性を予測することを含んでよい(ステップ160)。例えば特定の実
施形態において、機械学習、回帰および他の統計的手法を、モデル化、シミュレーション
、および性能と画質とを関連づける関数またはモデルを導出すために使用してもよい。次
のセクションで記載するように、これらのメトリックは異なる必要に応じて調整されてよ
い。
【0084】
方法150はさらに、シミュレートした血液流量算定の信頼区間を計算するために、局
所的な不確定度予測を使用することを含んでよい(ステップ162)。方法150は画質
の定量的メトリックとして血管モデルに対する不確定度の合計を計算し出力することをさ
らに含んでよい(ステップ164)。
【0085】
シミュレートした血液流量算定の信頼区間の計算するため局所的な不確定度予測を使用
するステップ(ステップ162)の例示的な実施形態を詳細に記載する。例示的な一実施
形態において、メトリックは目的を達成するために調整され、関連する多様な相関または
基準を有し得る。目的としては、限定するものではないが、自動化モデル化用データが十
分かどうかを評価、使用者主導解釈および/またはモデル化用データが十分かどうかを評
価、データをモデル化するために使用する方法またはシステムに、画像データの受理/却
下を指示、受信データのどの群がモデル化に最適かの決定、(例えば別の相または再構成
)、画像データのフィードバックを行ない、改善または補正されたデータの取得、画質の
得点により異なる結果を分類、および画質の問題に関連した不確実性による信頼度に関す
る推定の提示が挙げられる。これらの目的はすべて、シミュレーションおよびモデル化の
正確度、精度、および性能を計測および予測する文脈上にある。
【0086】
例示的な一実施形態において、基準は、FFRシミュレーション結果対測定したFFR
の参照基準との誤差に画質メトリックを関連づけるために導出されてよい。基準をパスす
る冠状動脈の血管および/または完全データセットは、一定のレベルの正確度および解法
の精度を保証するために受理してもよい。基準に満たなかった血管または完全データセッ
トを、要求よりも大きな誤差を有していることと関連付けてもよい。あるいは基準に満た
なかった血管または完全データセットは、より高い正確度を達成できる他の方法およびま
たはシステムに送信されてよい。
【0087】
例示的な一実施形態において、基準は、画質メトリックを、様々な使用者に基づくシミ
ュレートしたFFRの結果の変動性に関連づけて導出されてよい。基準をパスした冠状動
脈の血管および/または完全データセットは、解の一定レベルの精度を保証するため、受
け入れて処理されてよい。基準に満たなかった血管または完全データセットを、要求より
も大きな不安定性を有していることと関連付けてもよい。あるいは基準に満たなかった血
管または完全データセットは、より高い精度を達成できる他の方法およびまたはシステム
に送信されてよい。
【0088】
例示的な一実施形態において、基準は、画質メトリックを、血流のモデル化およびシミ
ュレーションの性能効率に関連づけて導出されてよい。ある特定の得点を超えるデータセ
ットは特別の手数料に関連して却下されてよく、または所望の効率を獲得できるよう異な
るリソースに送られてもよい。あるいは、シミュレーション費用および/または時間の見
積もりは画質の点数に基づいて提示されてよい。例えば、画質がどんどん低下する場合、
画質特性または解剖学的な特性を手動で識別し修正すること関連づけて、より高額な費用
または価格を見積もる可能性がある。
【0089】
例示的な一実施形態において、基準は、冠状動脈の血管において実行されたFFRのシ
ミュレーション結果、および/または基準を満たさない低画質の領域を含む完全データセ
ットに標識を付けるために導出されてよい。そのような標識は、不確実性がモデルのその
領域の解にあるということを示す、および/または何が不確実性に照らしてモデル化され
たか(例えば仮定)説明する役割を果たす。
【0090】
例示的な一実施形態において、基準は、正確度を保証する特別な処理(例えば綿密な調
査、異なるアルゴリズム、専門家の調査)を必要とするモデル内の領域に標識を付けるた
めに導出されてよい。
【0091】
例示的な一実施形態において、基準は、一定の画質の問題が存在する状態で血管径を決
定する際にある方法を使用するよう設定されてよい。例えば、石灰化されたプラークまわ
りにブルーミングアーチファクトが存在する場合、アーチファクト近傍の内腔境界(続く
血流)を決定するための方法およびシステムは、アーチファクトが存在しない状態の方法
およびシステムとは異なる場合がある。
【0092】
例示的な一実施形態において、基準は冠状動脈の血管において実行されたFFRのシミ
ュレーション結果、および/または基準を満たさなかった低画質の領域を含む完全データ
セットに標識を付けるために導出されてよい。不確実性または信頼度は、画質の影響に基
づいた、信頼度%または信頼区間で報告されているFFRで表してもよい(例えば、FF
Rは0.87±0.05である。または、FFRは<0.80で76%の信頼度である)
【0093】
例示的な一実施形態において、基準は、画質メトリックを、FFRシミュレーション結
果対測定したFFRの参照基準との誤差に関連づけて導出されてよい。冠状動脈の血管お
よび/または完全データセットはこの基準に対して得点により格付けされ、多数のデータ
のどれがFFRの結果をシミュレートし、最も高い正確度を達成できるか決定してもよい
【0094】
例示的な一実施形態において、少なくとも1つのコンピュータシステムは画像データが
生成される場所に設置されても、またはそこから迅速にアクセス可能であってもよい。基
準はFFRシミュレーション結果に影響、または予測に関連するものとして、画質の評価
のために設定されてよい。冠状動脈の血管および/または完全データセットはこの基準に
対して得点により格付けされ、画像データを生成する現場で望ましい正確度の達成に必要
な基準を満たすまでデータを補正または更新できるよう即時にフィードバックしてもよい
。あるいは臨床的な利点がある場合、正確度に関連した推定または信頼度と合わせて、即
時にフィードバックを行い、正確度を下げた画像データを生成可能としてもよい。
【0095】
図6は、様々な例示的な実施形態による、冠状動脈の血流予備量比の値を推測するとい
う文脈において、医用画像の画質を評価し、画質メトリックを生成し、画質メトリックを
使用するための例示的方法200を記載するフローチャートである。例えば図6は、本明
細書に開示された画質評価技術、および米国特許第8,315,812号に記載されたF
FR計算技術に基づいて冠状動脈の血流予備量比(FFR)値を測定する方法を示す。
【0096】
図6に示すように、方法200は、特定の患者を選択し(ステップ202)、患者の画
像と生理学的データを受信する(ステップ204)ことから開始し得る。方法200は、
使用者認証または個人情報等の理由により、受信した画像および既知の患者情報を含むデ
ータを検証することを含んでよい(ステップ206)。方法200は受信データが受理可
能かどうか決定することを(ステップ208)含んでよい。例えば、ステップ208は、
本明細書に開示された画像評価および採点技術の1つまたは組み合わせに基づき、1以上
の受信画像それぞれを受理または却下することを含んでよい。もし1以上の画像が却下さ
れた場合、方法200は却下レポートを生成することを含んでもよい(ステップ210)
。例えば、本方法が、却下された画像を取得し、却下された画像のフィードバックを使用
者に提供し、使用者が受理可能な新しい画像を取得するのを支援することを含んでいても
良い。例えば、コンピュータシステムは、より高い画質得点の画像を取得できる画像取得
パラメーターの調整のための指針および/または推奨を加えた却下画像のレポートを技師
、医師または他の医療従事者に送信し得る。このようなレポート、却下された画像、指針
、および/または推奨は医師、技師または他の医療サービス提供者に、電子ディスプレイ
および/または電子ネットワーク上で示されてもよい。
【0097】
データが受理可能な場合、方法200はX線撮影ワークステーションのデータの前処理
および評価の実施を含んでよい(ステップ212)。方法200は、さらに、心筋量を計
算すること(ステップ214)、冠状動脈の血管および分枝の最初のツリーを生成するこ
と(ステップ216)、1以上の血管内腔のエッジを見つけること(ステップ218)、
主要な血管における閾値とエッジのセグメント化を適合させること(ステップ220)、
および任意のプラークまたは石灰化を検出し、セグメント化し、削除し、平滑化すること
(ステップ222)を含んでよい。その後、方法200は、アルゴリズムを使用して、セ
グメント化が成功したかどうか決定することを含んでよい(ステップ224)。そうでな
い場合、方法200はその後、手動でセグメント化するかセグメント化の補正を実施する
ことを含んでよい(ステップ226)。セグメント化が成功した場合、方法200は、セ
グメント化の個別検証が受理可能かどうか決定することを含んでよい(ステップ228)
。そうでなければ、方法200はその後、冠状動脈の血管および分枝の最初のツリーを生
成するステップ216に戻ってもよい。
【0098】
セグメント化が受理可能な場合(ステップ228;はい)、方法200は、ソリッドモ
デルを出力し平滑化すること(ステップ230)、1以上の血管の中心線を抽出すること
(ステップ232)、血管の断面領域を計算すること(ステップ234)、モデルをトリ
ミングすること(ステップ236)、ソリッドモデルを生成すること(ステップ238)
、充血状態に対して境界条件を設定すること(ステップ240)、および最終メッシュを
生成すること(ステップ242)を含んでよい。その後、方法200はメッシュと境界条
件が受理可能であるかどうか検証することを含んでよい(ステップ244)。そうでない
場合、方法200はその後、断面領域を計算するステップ234に戻っても良い。
【0099】
メッシュと境界条件が受理可能な場合(ステップ244;はい)、方法200は、充血
フローをシミュレートすること(ステップ246)および結果の解が受理可能かどうかを
検証すること(ステップ248)を含んでよい。そうでない場合、方法200は、境界条
件などを補正して、狭窄形状を改善することを含んでよい(ステップ258)。結果の解
が受理可能な場合(ステップ248;はい)、方法200はその後、レポートのため、c
FFRを抽出し、血管に沿って同様のことを文書化し、画像を生成する(ステップ250
)。その後、方法200は最終結果の個別検証が受理可能であるかどうか決定することを
含んでよい(ステップ252)。そうでなければ、方法200は、冠状動脈の血管および
分枝の最初のツリーを生成するステップ216に戻ることを含んでよい。
【0100】
最終結果の個別検証が受理可能であった場合(ステップ252;はい)、方法200は
その後、レポートを完成させて(ステップ254)、医師へ完成したレポートを転送する
ことを含んでよい(ステップ256)。
【0101】
図7Aは、多様な例示的な実施形態による、CT画質レビューに基づいた、血流予備量
比誤差、受理または却下の例示的ボックスプロットである。例えば図7Aのボックスプロ
ットは、却下症例には受理症例よりFFRct誤差の変動が多い可能性があることを説明
し得る。
【0102】
図7Bは、多様な例示的な実施形態による、CT画質レビューに基づいた、血流予備量
比誤差、および採点の例示的ボックスプロットである。例えば、図7Bのボックスプロッ
トは、画質ペナルティー得点が増加するとともにFFRct誤差の変動が増加する可能性
があることを説明し得る。言いかえれば、7から10の得点を有する症例は、0から1の
得点を有する症例よりFFRct誤差の変動がかなり高い可能性がある。
【0103】
図8は、多様な例示的な実施形態による、画質に基づいた血流予備量比およびコンピュ
ータ断層撮影の品質間の比較を血管の数により表す典型的な棒グラフである。具体的には
図8の棒グラフは、CT画像の解釈における血管固有の品質評価と相関のある性能を示
す可能性がある。
【0104】
図10は多様な例示的な実施形態による、コンピュータ断層撮影の品質評価対基準性能
を示す例示的スクリーンショットである。例えば、図10に示すように、コンピュータシ
ステム40のプロセッサは、撮影技師、医師または他の医療供給者等の使用者が、複数の
患者または「症例」の各々についてCT画像の品質評価をレビューし得るユーザーインタ
フェースを使用者に提供し得る。図10に示すように、一実施形態において、各症例はそ
れぞれ、「良」、「許容限界」、「不良」で表される画質の1つを有するように表示され
てよい。画質は棒または他の図表における表示等により、参考となる画質の基準性能と比
較されてもよい。インタフェースは品質レポートを生成し表示してもよく、かつ/または
、取得された品質の改善を推奨し得る。例として、高レベルのノイズが検出される場合、
ユーザーインタフェースは「mA/kV設定」を検討するよう提案し、ノイズに関するチ
ュートリアルへのリンクを提示し得る。当然、ユーザーインタフェースや指針は、本明細
書で論じられる画質の問題のいずれかに関連した画質の改善のための画質の評価と推奨を
使用者に提示し得る。
【0105】
ここで開示されるシステムおよび方法は、画質に関する問題の自動推定および補正を実
現できる、それによって画像データの品質維持レビューに関する、これまでの人的時間と
ばらつきを減少できる。さらに、ここで開示されたシステムおよび方法は、シミュレーシ
ョンおよびモデル化の正確度(例えばFFR誤差)と、画質得点との関連についてのより
よく理解されるのに役立つであろう。さらに、開示されたシステムおよび方法により、使
用者は、分析者レビューに対して画像の望ましい基礎段階を改善させ、自動的に選択し、
ある走査のさらなるレビューまたは却下に対して、より優れた「警告」を出すことが可能
となり得る。
【0106】
一実施形態において、ここで開示される技術は、2013年4月17日出願の米国特許
出願第13/864,996号に記載される技術により、入力された不確実性を定義し、
FFR分析感度を計算し、FFRにおける信頼区間を計算することを含んでよく、この出
願は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0107】
一実施形態において、ここで開示されるシステムおよび方法は2012年9月24日出
願の米国特許出願第13/625,628号に記載される様々な機械学習手法のうちの前
処理のいずれかを実行することを含み、これは参照によりその全体が本明細書に援用され
る。
【0108】
一実施形態において、FFR値は物理学ベースのシミュレーションではなく、予測学習
機械を使用して取得されてよい。言いかえれば、’812特許におけるように、各々の複
数の配列ポイントに対して冠状動脈の解法を実行する代わりに、開示されたシステムおよ
び方法は、他の多数の患者の血流分析から収集された知識に基づいて血流特性を効率的に
推定し得る。例えば、開示されるシステムおよび方法は2012年9月12日出願の米国
仮特許出願第61/700,213号に記載される様々な機械学習手法のうちのいずれか
を実行することを含み、これは参照によりその全体が本明細書に援用される。したがって
一実施形態では、FFR値は、患者の生理学的なパラメーターおよび測定した血流特性の
特徴ベクトルに基づいた患者の幾何学形状の様々なポイントに対して、FFR値を推定す
るための機械学習アルゴリズムを訓練することにより取得し、その後、特定の患者の形状
および生理学的なパラメーターに機械学習アルゴリズムを適用して予測FFR値を取得し
てもよい。
【0109】
本明細書に記載するステップのうちの1以上が、1人以上の人間のオペレータ(例えば
、心臓専門医または他の医師、患者、第三者によって提供されるウェブベースのサービス
または他のサービスを提供するサービス提供者の従業員、他の使用者など)、あるいはか
かる人間のオペレータによって使用される1以上のコンピュータシステム、例えばデスク
トップコンピュータもしくはポータブルコンピュータ、ワークステーション、サーバー、
携帯情報端末などによって実施されてもよい。コンピュータシステムは、ネットワークま
たはデータを伝達する他の方法を介して接続することができる。
【0110】
任意の実施形態において述べられる任意の態様を、本明細書に記載された他の実施形態
と一緒に使用してもよい。本明細書に示されたすべての装置および機器は、任意の適切な
医学的処置において使用されてもよく、任意の適切な管腔および体腔内で使用してもよく
、任意の適切な身体部分の画像化に対して使用されてもよい。
【0111】
本開示の範囲内で、開示されたシステムおよびプロセスの様々な改変および変更を行う
ことができる。他の実施形態は、明細書の考察および本明細書での開示を実行することか
ら当業者には明らかとなるであろう。仕様および例は単に例示的なものとされ、本開示の
真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲に示すことが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6-1】
図7A
図7B
図8
図9
図10