(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極と、負極と、セパレータとを含む積層体、非水電解液、端子および封入体を含むリチウムイオン二次電池であって、前記負極が、チタン含有酸化物を含む負極活物質と、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン系材料、スズ系材料、およびビスマス系材料から選ばれる少なくとも一つの負極添加剤とを含み、
前記負極添加剤の比表面積が1m2/g以上25m2/g以下であり、
前記負極添加剤の重量(Ma)と前記負極活物質の重量(Mt)との関係が、1.0<Mt/Ma<30.0であって、
前記正極における正極活物質層の面積(Sp)が前記負極における負極活物質層の面積(Sn)より小さく、
正極容量(Qp)が負極容量(Qn)より小さいことを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るリチウムイオン二次電池について、理解の容易のために一実施形態である
図1を用いて説明する。
【0011】
<リチウムイオン二次電池>
図1のリチウムイオン二次電池10は、正極1と、負極2と、セパレータ3とからなる積層体、非水電解液6、端子7、および封入体8を含む。
【0012】
<正極および負極>
電極(正極及び負極)は、金属イオンの挿入及び脱離、すなわち電極反応をする機能を有し、当該電極反応により、リチウムイオン二次電池の充電及び放電が為される。
【0013】
正極には、集電体の両面に、正極活物質を含む正極活物質層が形成されている。負極には、集電体の両面に、負極活物質としてチタン含有酸化物と、負極添加剤として炭素材料、シリコン系材料、スズ系材料、およびビスマス系材料よりなる群から選ばれる少なくとも一つと、を含む負極活物質層が形成されている。
【0014】
集電体は、活物質層から集電をする部材である。
【0015】
正極の集電体としては、導電性材料であれば特に限定されず、アルミニウムおよびその合金、またはアルミニウム以外の金属(銅、SUS、ニッケル、チタン、およびそれらの合金)の表面にアルミニウムを被覆したものが好適に用いられる。
【0016】
正極集電体に用いられるアルミニウムとしては、正極反応雰囲気下で安定であることから、JIS規格1030、1050、1085、1N90、1N99等に代表される高純度アルミニウムが好ましい。
【0017】
正極の集電体の厚みは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0018】
負極の集電体としては、導電性材料であれば特に限定されず、アルミニウムおよびその合金、またはアルミニウム以外の金属(銅、SUS、ニッケル、チタン、およびそれらの合金)の表面にアルミニウムを被覆したものが好適に用いられる。
【0019】
負極の集電体の厚みは、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0020】
活物質は、電極反応に寄与する物質である。
【0021】
正極活物質としては、金属酸化物またはリチウム遷移金属複合酸化物などが好適に用いられる。
【0022】
リチウム遷移金属複合酸化物としては、高いエネルギー密度を有することから、Li
aNi
bCo
cMn
dXeO
2(但し、Xは、B、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Zr、Nb、Mo、In、Snからなる群から選択される少なくとも1種、0<a≦1.2、0≦b、c、d、e≦1、およびb+c+d+e=1)で表される層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物、またはこれらLi
aNi
bCo
cMn
dXeO
2のaが1より大きい、いわゆるリチウムリッチ系層状岩塩型リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。
【0023】
層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物としては、エネルギー密度やサイクル特性の観点から、
Li
aCo
1−x−yNi
xMn
yO
2(但し、0.9≦a≦1.2、x≧0、y≧0、0≦x+y≦1)、
またはLi
aNi
1−b−cCo
bAl
cO
2(但し、0.9≦a≦1.2、b≧0、c≧0、0≦b+c≦0.3)が好ましく、
LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2、
LiNi
0.5Mn
0.5O
2、LiNi
0.4Co
0.2Mn
0.4O
2、
LiNi
0.1Co
0.8Mn
0.1O
2、LiNi
0.8Co
0.16Al
0.04O
2、
LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、LiNiO
2、LiMnO
2、
およびLiCoO
2よりなる群から選ばれる1種がより好ましく、出力特性やガス発生抑制効果の観点から、
LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2、
LiNi
0.4Co
0.2Mn
0.4O
2、LiNi
0.1Co
0.8Mn
0.1O
2、
LiNi
0.8Co
0.16Al
0.04O
2、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、LiCoO
2がさらに好ましく、
LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2、LiNi
0.4Co
0.2Mn
0.4O
2が特に好ましい。
【0024】
また、正極は正極活物質としてLi
1+xM
yMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.2、0<y≦0.6、Mは2〜13族でかつ第3〜4周期に属する元素(但し、Mnは除く)で表されるスピネル型マンガン酸リチウムを含んでいても良い。正極がスピネル型マンガン酸リチウムを含むことで、正極の安全性とサイクル安定性が向上する。
【0025】
スピネル型マンガン酸リチウムとしては、
Li
1+xAl
yMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.1、0<y≦0.1)、
Li
1+xMg
yMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.1、0<y≦0.1)、
Li
1+xZn
yMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.1、0<y≦0.1)、
Li
1+xCr
yMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.1、0<y≦0.1)、
Li
1+xNi
yMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.05、0.45≦y≦0.5)、
Li
1+xNi
y−zAl
zMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.05、0.45≦y≦0.5、0.005≦z≦0.03)、
およびLi
1+xNi
y−zTi
zMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.05、0.45≦y≦0.5、0.005≦z≦0.03)よりなる群から選ばれる1種が好ましく、
ガス発生の減少および安全性の向上の効果がより得られる点から、
Li
1+xAl
yMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.1、0<y≦0.1)、
Li
1+xMg
yMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.1、0<y≦0.1)、
Li
1+xNiyMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.05、0.45≦y≦0.5)、
およびLi
1+xNi
y−zTi
zMn
2−x−yO
4(0≦x≦0.05、0.45≦y≦0.5、0.005≦z≦0.03)がより好ましい。
【0026】
これら正極活物質の中から、1種類を用いても良いし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
また、正極活物質の表面を、導電性向上、および安定性向上のため、炭素材料、金属酸化物、または高分子で覆ってもよい。
【0028】
負極活物質はチタン含有酸化物を含むことを要する。チタン含有酸化物としては、チタン酸リチウムおよび/または二酸化チタンが好ましく、材料自身の安定性が高いことから、チタン酸リチウムがより好ましく、リチウムイオンの挿入・脱離の反応における活物質の膨張収縮が小さい点から、スピネル構造のチタン酸リチウムがさら好ましい。
【0029】
チタン酸リチウムには、たとえばNbなどのリチウム、チタン以外の元素が微量含まれていてもよい。
【0030】
二酸化チタンとしては、B型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、ラムズデライト型二酸化チタン等が例示されるが、不可逆容量が小さいこと、およびサイクル安定性に優れることから、B型二酸化チタンが好ましい。
【0031】
これら負極活物質の表面は、導電性向上、あるいは安定性向上のため、炭素材料、金属酸化物、あるいは高分子等で覆われてもよい。
【0032】
負極活物質の平均粒子径は、副反応の抑制の観点から1μm以上20μm以下が好ましく、サイクル特性の観点から2μm以上15μm以下がより好ましく、さらに好ましくは、3μm以上10μm以下である。
【0033】
負極活物質の比表面積は、1m
2/g以上25m
2/g以下であれば好適に用いられ、より良好なサイクル特性を示すことから、1.5m
2/g以上20m
2/g以下がより好ましく、副反応の抑制が良好となる点から、2m
2/g以上15m
2/g以下がさらに好ましい。
【0034】
負極添加剤は、電極反応に寄与する一方で、電池を過充電した際に、正極活物質から放出される過剰のLiイオンを受容することで、負極におけるLi金属の析出を抑制する働きをもつ。
【0035】
負極添加剤としては、炭素材料、シリコン系材料、スズ系材料、およびビスマス系材料から選ばれる少なくとも一つであることを要し、炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどが挙げられ、シリコン系材料としては、シリカ単体、SiO、SiO
2、Siと遷移金属との合金などが挙げられ、スズ系材料としては、スズ単体、SnO、SnO
2、Snと遷移金属との合金などが挙げられ、ビスマス系材料としては、ビスマス単体、Bi
2O
3、などが挙げられる。
【0036】
負極添加剤としては、電池の安全性が向上する点から、炭素材料、Si単体、SiO、Sn単体、Bi単体が好ましく、安全性とサイクル特性とのバランスが良いことから、グラファイト、ハードカーボン、またはソフトカーボンが特に好ましい。
【0037】
負極添加剤の比表面積は、1m
2/g以上25m
2/g以下であれば好適に用いられ、より良好なサイクル特性を示すことから、1.5m
2/g以上20m
2/g以下がより好ましく、副反応の抑制が良好となる点から、2m
2/g以上15m
2/g以下がさらに好ましい。
【0038】
負極活物質層に含まれる負極添加剤の重量(Ma)と該負極活物質の重量(Mt)との関係は、1.0<Mt/Ma<30.0であることを要し、サイクル特性の安定性、安全性、およびエネルギー密度のバランスが良好である点から、1.0<Mt/Ma≦10.0が好ましく、1.0<Mt/Ma<10.0がより好ましく、1.5<Mt/Ma<10.0がさらに好ましい。
【0039】
正極における正極活物質層の面積(Sp)は、負極における負極活物質層の面積(Sn)より小さいことを要し、サイクル特性の安定性、安全性、およびエネルギー密度のバランスが良好である点から、0.9<(Sp/Sn)<1.0が好ましい。
【0040】
活物質層の面積は、電極における活物質層部分の表面積を指す。活物質層に厚みがある場合、厚み分の面積も表面積に含まれる。
【0041】
正極および負極の厚みは、特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0042】
正極活物質層の密度は、1.0g/cm
3以上4.0g/cm
3以下であることが好ましく、正極活物質、導電助材との接触が十分にあり、かつ後述の非水電解液が正極内に浸透しやすいことから、1.5g/cm
3以上、3.5g/cm
3以下がより好ましく、正極活物質、導電助材との接触と、非水電解液の正極内への浸透しやすさのバランスが最も取れている、2.0g/cm
3以上、3.0g/cm
3以下がさらに好ましい。
【0043】
負極活物質層の密度は、0.8g/cm
3以上3.0g/cm
3以下であることが好ましく、負極活物質、導電助材との接触が十分にあり、かつ後述の非水電解液が負極内に浸透しやすいことから、0.9g/cm
3以上、2.7g/cm
3以下がさらに好ましく、負極活物質、導電助材との接触と、非水電解液の負極内へ浸透しやすさのバランスが最も取れている、1.0g/cm
3以上、2.5g/cm
3以下が特に好ましい。
【0044】
正極活物質層および負極活物質層の密度は、所望の厚みまで電極を圧縮することによって制御してもよい。圧縮方法は、特に限定されないが、例えば、ロールプレス、油圧プレス等を用いて行うことができる。
【0045】
正極活物質層および負極活物質層の密度は、正極活物質層の厚みおよび重量から算出される。
【0046】
正極容量(Qp)は負極容量(Qn)より小さいことを要し、0.9<Qp/Qn<1.0となることが好ましい。
【0047】
Qpの測定方法としては、例えば対極Li金属と正極とを対向させた半電池を充放電し、かつ対極Li金属の電位を、放電時の終止電圧3.0Vおよび充電時の終止電圧4.3Vとした場合の、正極1cm
2あたりの容量とする方法が挙げられる。上記の電圧値は、全てリチウムを基準とする値である。
【0048】
Qnの測定方法としては、例えば対極Li金属と負極とを対向させた半電池を充放電し、かつ対極Li金属の電位を、放電時の終止電圧1.2Vおよび充電時の終止電圧3.0Vとした場合の、負極1cm
2あたりの容量とする方法が挙げられる。上記の電圧値は、全てリチウムを基準とする値である。
【0049】
正極および負極は、さらに導電助材を含んでいてもよい。導電助材とは、電極の導電性を補助する働きを有する、導電性の物質である。
【0050】
正極の導電助材としては、導電体であれば特に限定されないが、炭素材料が好ましい。炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、またはファーネスブラックなどが挙げられる。これら炭素材料は1種類でもよいし、2種類以上用いてもよい。
【0051】
正極の導電助材の量は、正極活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。このような範囲であれば、正極の導電性が十分に確保される。
【0052】
負極の導電助材としては、銅もしくはニッケルなどの金属材料、または天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、もしくはファーネスブラックなどの炭素材料が好適に用いられる。これら導電助材は1種類でもよいし、2種類以上用いてもよい。
【0053】
負極の導電助材の量は、負極活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。このような量であれば、負極の導電性が十分に確保される。
【0054】
正極および負極は、さらにバインダーを含んでいてもよい。バインダーとは、活物質層内の材料同士の結着性、および活物質層と集電体との結着性を高める材料である。
【0055】
バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイミド、およびそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0056】
正極のバインダーの量は、正極活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。このような量であれば、正極活物質と導電助材との接着性が維持され、集電体との接着性を十分に得ることができる。
【0057】
負極のバインダーの量は、負極活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは2重量部以上15重量部以下である。このような量であれば、負極活物質と導電助材との接着性が維持され、集電体との接着性を十分に得ることができる。
【0058】
正極の作製方法としては、作製の容易さから、活物質および溶媒を含むスラリーを作製し、その後、スラリーを集電体上に塗工した、そして溶媒を除去することによって作製する方法が好ましい。
【0059】
負極の作製方法としては、負極活物質、負極添加剤、導電助材、およびバインダーの混合物を集電体上に形成する方法が好適に用いられ、作製の容易さから、該混合物および溶媒でスラリーを作製し、その後、スラリーを集電体上に塗工し、そして溶媒を除去する方法がより好ましい。
【0060】
スラリーの塗工および溶媒除去の方法は従来公知の条件、方法を適宜使用してよい。
【0061】
スラリーの溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、またはテトラヒドロフランなどを挙げることができる。
【0062】
<セパレータ>
セパレータは、正極と負極との間に設置され、これらの間の電子やホールの伝導を阻止しつつ、これらの間のリチウムイオンの伝導を仲介する媒体としての機能を有し、少なくとも電子やホールの伝導性を有さないものである。
【0063】
セパレータとしては、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート、及びそれらを2種類以上複合したものであれば好適に用いられる。
【0064】
セパレータの形状としては、正極と負極との間に設置され、絶縁性かつ非水電解液を含むことが出来る構造であればよく、織布、不織布または微多孔膜などが好適に用いられる。
【0065】
セパレータは、可塑剤、酸化防止剤または難燃剤を含んでもよいし、金属酸化物等が被覆されてもよい。
【0066】
セパレータの厚みは、10μm以上100μm以下が好ましく、15μm以上50μm以下がよりに好ましい。
【0067】
セパレータの空隙率は、30%以上90%以下であることが好ましく、リチウムイオン拡散性および短絡防止性のバランスがよい点から、35%以上85%以下がより好ましく、前記バランスが特に優れていることから、40%以上80%以下がさらに好ましい。
【0068】
<積層体>
積層体は、正極と負極との間にセパレータを配置したものを倦回または積層してなる。積層体の積層数は、所望の電圧値および電池容量を得る目的で、適宜調整してよい。
【0069】
<非水電解液>
非水電解液は、負極と正極との間のイオン伝達を媒介する機能を有し、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液、または非水溶媒に溶質を溶解させた電解液を高分子に含浸させたゲル電解質などを用いることができる。
【0070】
非水電解液の非水溶媒としては、環状および/または鎖状非プロトン性極性溶媒が好ましい。
【0071】
環状の非プロトン性極性溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、環状スルホン及び環状エーテルなどが例示される。
【0072】
鎖状の非プロトン性極性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル及び鎖状エーテルなどが例示される。
【0073】
環状または鎖状の非プロトン性極性溶媒として、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジオキソラン、またはプロピオン酸メチルなどの環状化合物または鎖状化合物を用いることができる。これら溶媒は1種類で用いてもよいし、2種類以上混合しても用いてもよい。
【0074】
環状および鎖状非プロトン性極性溶媒の混合溶媒における、鎖状非プロトン性極性溶媒の割合は、粘度および溶解性のバランスが良好であることから5体積%〜95体積%が好ましく、当該バランスが特に良好であることから10体積%〜90体積%より好ましく、20体積%〜80体積%がさらに好ましく、50体積%〜80体積%が特に好ましい。
【0075】
また、これら非水溶媒に加え、アセトニトリルなどの一般的に非水電解液の溶媒として用いられる溶媒をさらに用いても良いし、さらに難燃剤などの添加剤を含んでもよい。
【0076】
非水電解液の溶質としては、リチウム塩であれば特に限定されず、LiClO
4、LiBF
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiBOB(LithiumBis(Oxalato)Borate)、Li[N(SO
2CF
3)
2]、Li[N(SO
2C
2F
5)
2]、Li[N(SO
2F)
2]、またはLi[N(CN)
2]が好適に用いられ、溶解度が高く、電池のサイクル特性が良好となることから、LiClO
4、LiBF
4、LiPF
6、Li[N(SO
2F)
2]、またはLi[N(CN)
2]、がより好ましい。
【0077】
リチウム塩の濃度としては、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることが好ましい。
【0078】
非水電解液は、あらかじめ正極、負極およびセパレータに含ませてもよいし、正極と負極との間にセパレータを配置したものを積層した後に添加してもよい。
【0079】
非水電解液の量は、正極、負極およびセパレータの面積、活物質の量、ならびに電池の容積に合わせて適宜調整される。
【0080】
<封入体>
封入体は、正極、負極およびセパレータを交互に積層または捲回してなる積層体、ならびに積層体を電気的に接続する端子を封入する部材である。
【0081】
封入体としては、金属箔にヒートシール用の熱可塑性樹脂層を設けた複合フィルム、蒸着やスパッタリングによって形成された金属層、または角形、楕円形、円筒形、コイン形、ボタン形もしくはシート形の金属缶が好適に用いられ、複合フィルムがより好ましい。
【0082】
複合フィルムの金属箔としては、水分遮断性、重量およびコストのバランスが良好な点から、アルミ箔が好適に用いられ得る。
【0083】
複合フィルムの熱可塑性樹脂層としては、ヒートシール温度範囲および非水電解液の遮断性が良好である点から、ポリエチレンまたはポリプロピレンが好適に用いられる。
【0084】
<組電池>
リチウムイオン二次電池を、複数接続することによって組電池としてもよい。
【0085】
組電池は、所望の大きさ、容量または電圧によって適宜に複数の電池を直列接続および/または並列接続してよい。
【0086】
組電池は、各電池の充電状態の確認および安全性向上のため、制御回路が付属されていることが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により具体的に説明するが、これら実施例により限定されるものではない。
【0088】
電極の正極容量(Qp)及び負極容量(Qn)は充放電試験で測定した。
【0089】
(充放電試験)
まず、集電体の片面のみに活物質層が形成された、正極または負極を、直径16mmの円盤状に成型して、動作極を得た。
【0090】
次にLi金属を直径16mmの円盤状に打ち抜き、対極を得た。
【0091】
次に、動作極(片面塗工の塗工面が内側)/セルロース製のセパレータ/Li金属の順に試験セル(HSセル、宝泉社製)内に積層した。その後、溶媒の体積比が(エチレンカーボネート):(ジメチルカーボネート)=3:7であって、リチウム塩がLiPF
6である、濃度1mol/Lの非水電解質を0.15mL入れ、半電池を得た。
【0092】
次に、半電池を25℃で一日放置した後、充放電試験装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続した。
【0093】
その後、半電池を25℃、0.4mAで定電流充電(正極の場合の終止電圧:4.3V、負極の場合の終止電圧:3.0V)および定電流放電(正極の場合の終止電圧:3.0V、負極の場合の終止電圧:1.2V)を5回繰り返した。上記の電圧値は、全てリチウムを基準とする値である。
【0094】
そして、5回目の定電流放電における半電池の容量を、QpまたはQnとした。
【0095】
(実施例1)
まず、正極活物質として層状岩塩型のリチウム遷移金属複合酸化物(LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2;以下、NCM)、導電助材としてアセチレンブラック、およびバインダーとしてPVdFのそれぞれを固形分濃度で100重量部、5重量部、および5重量部となるように混合し、正極スラリーを作製した。なお、バインダーは5wt%のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液に調整したものを使用した。
【0096】
その後、正極スラリーをNMPで希釈したものを、厚さ20μmのアルミニウム箔に片面塗工し、その後120℃のオーブンで乾燥した。その後、裏面も同様に塗工・乾燥を行い、さらに170℃で真空乾燥した。
【0097】
以上の工程を経て、集電体に正極活物質層を有する正極を得た。このとき正極の容量Qpを1.0mAh/cm
2とし、正極活物質層の面積(Sp)を片面50cm
2とした。
【0098】
次に、負極活物質として、平均粒子径が5μm、比表面積が4m
2/gのスピネル型のチタン酸リチウム(Li
4/3Ti
5/3O
4)、負極添加剤として平均粒子径が9μm、比表面積が6m
2/gのハードカーボン、導電助材としてアセチレンブラック、及びバインダーとしてPVdFを、それぞれ固形分濃度で90重量部、9重量部、5重量部、及び5重量部となるように混合し、負極スラリーを作製した。なお、バインダーは5wt%のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液に調整したものを使用した。
【0099】
その後、負極スラリーをNMPで希釈したものを、厚さ20μmのアルミニウム箔に片面塗工し、その後120℃のオーブンで乾燥した。その後、裏面も同様に塗工・乾燥を行い、さらに170℃で真空乾燥した。
【0100】
以上の工程を経て、集電体に負極活物質層を有する負極を得た。負極の容量Qnは1.1mAh/cm
2とし、負極活物質層の面積(Sn)を片面55cm
2とした。
【0101】
次に、正極13枚、負極14枚、およびセルロース不職布のセパレータ28枚を、セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極/セパレータの順に積層した。なおセパレータは厚さが25μm、面積が60cm
2であった。以上の工程を経て、積層体を得た。
【0102】
次に、正極および負極それぞれに端子を取り付け、二枚のアルミラミネートフィルムで積層体を挟み、180℃、7秒間、2回の熱溶着工程をアルミラミネートフィルムに施して、袋状の封入体を作製した。
【0103】
その後、リチウム塩としてLiPF
6を1.0Mとなるようにエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7の体積比である混合溶媒に溶解させた非水電解液12mLを積層体に含ませた。
【0104】
そして、減圧しながら残りの辺を180℃×7秒、2回の熱溶着工程によって封入体を封止し、積層体および非水電解液を封入したリチウムイオン二次電池を得た。このとき、Mt/Ma=10、Sp/Sn=0.91、Qp/Qn=0.91であった。
【0105】
(実施例2)
負極添加剤をケイ素とした以外は、実施例1と同じとした。
【0106】
(実施例3)
負極添加剤をビスマスとした以外は、実施例1と同じとした。
【0107】
(実施例4)
負極添加剤をスズとした以外は、実施例1と同じとした。
【0108】
(実施例5)
正極活物質として、NCMの代わりにスピネル型マンガン酸リチウム(Li
1.1Al
0.1Mn
1.8O
4;以下、LMO)を用いた以外は、実施例1と同じとした。
【0109】
(実施例6)
負極における負極活物質を80重量部とし、負極添加剤を20重量部とした以外は、実施例1と同じとした。このとき、Mt/Ma=4であった。
【0110】
(実施例7)
負極における負極活物質を60重量部とし、負極添加剤を40重量部とした以外は、実施例1と同じとした。このとき、Mt/Ma=1.5であった。
【0111】
(実施例8)
負極における負極活物質を90重量部とし、負極添加剤を6重量部とした以外は、実施例1と同じとした。このとき、Mt/Ma=15であった。
【0112】
(実施例9)
負極における負極活物質を100重量部とし、負極添加剤を4重量部とした以外は、実施例1と同じとした。このとき、Mt/Ma=25であった。
【0113】
(比較例1)
Spを片面55cm
2とし、Snを片面50cm
2とした以外は、実施例1と同じとした。このとき、Mt/Ma=10、Sp/Sn=1.10、であった。Qp/Qn=0.91であった。
【0114】
(比較例2)
正極スラリーを実施例1より厚く塗ることでQpを1.1とし、負極スラリーを実施例1より薄く塗ることでQnを1.0とした以外は、実施例1と同じとした。このとき、Sp/Sn=0.91、Qp/Qn=1.10であった。
【0115】
(比較例3)
負極における負極活物質を99重量部とし、負極添加剤を3.3重量部とした以外は、実施例1と同じとした。このとき、Mt/Ma=30、Qp/Qn=0.91であった。
【0116】
(リチウムイオン二次電池のサイクル特性評価)
実施例および比較例のリチウムイオン二次電池を、充放電装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続し、エージング工程を経た後に充放電サイクル運転を行った。
【0117】
エージング工程では、まず各リチウムイオン二次電池を満充電(2.7V)にし、その後、電池を温度60℃で168時間放置し、そして、電池が25℃となるまで徐冷した。なお、上記の電圧は、リチウム基準ではなく、リチウムイオン二次電池の電圧である。
【0118】
充放電サイクル運転では、エージング工程後の電池に対し、60℃の環境下で、250mA定電流充電および500mA定電流放電を500回繰り返した。このときの充電終止電圧および放電終止電圧はそれぞれ2.7Vおよび2.0Vとした。なお、上記の電圧は、リチウム基準ではなく、リチウムイオン二次電池の電圧である。
【0119】
1回目の放電容量に対する、500回目の放電容量の割合を容量維持率とした。例えば、1回目の放電容量を100としたとき、500回目の放電容量が80であれば容量維持率は80%となる。容量維持率が80%以上である電池はサイクル特性が良好(表1中、「A」と表記する)であるとし、80%未満を不良(表1中、「B」と表記する)とした。
【0120】
(リチウムイオン二次電池の安全性評価)
電池にエージング工程を実施し、その後3.8Vとなるまで過充電し、その後電池を解体して、負極上を観察した。負極上にLi金属が析出していないものを安全性良好(表1中、「A」と表記する)とし、析出しているものを不良(表1中、「B」と表記する)とした。
【0121】
【表1】
【0122】
(表1の総評)
実施例1〜9は、容量維持率80%以上と、優れたサイクル特性を有しつつ、安全性が良好な電池が得られた。これに対して、比較例1〜3は良好なサイクル特性と安全性とが両立されなかった。