特許第6656421号(P6656421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6656421煙突構造体によって覆われたフランジを備えた生産ラインにおけるエチレン系不飽和単量体の高圧重合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656421
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】煙突構造体によって覆われたフランジを備えた生産ラインにおけるエチレン系不飽和単量体の高圧重合方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20200220BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
   C08F2/01
   C08F10/00 510
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-558731(P2018-558731)
(86)(22)【出願日】2017年5月9日
(65)【公表番号】特表2019-516003(P2019-516003A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2017060977
(87)【国際公開番号】WO2017194494
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2018年11月8日
(31)【優先権主張番号】16168992.2
(32)【優先日】2016年5月10日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・ゴーニオーク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・リットマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ−アルマンド・フィネッテ
(72)【発明者】
【氏名】スウェン・ウルフラム
【審査官】 中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0274424(US,A1)
【文献】 特表2004−501754(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/148758(WO,A1)
【文献】 特開平11−173971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00−2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のエチレン系不飽和単量体を100℃〜350℃の温度、および110MPa〜500MPa範囲の圧力で連続的に作動される重合反応器内で重合または共重合させる方法であって、
前記重合は、前記単量体が一連の圧縮段階において、互いに1つ以上の圧縮機によって重合圧力に至る生産ラインにおいて行われ、ここで圧縮ガス混合物は、各々の圧縮段階後に圧縮段階冷却器によって冷却され、前記圧縮された単量体は、選択的に予熱器または予冷器を通過し、冷却ジャケットによって選択的に冷却される重合反応器に移送され、前記重合によって得られた反応混合物は、圧力制御バルブを介して反応器から出て、選択的に後反応器冷却器(post reactor cooler)によって冷却され、前記反応混合物は、ポリマ成分およびガス成分に2段階以上に分離され、15〜50MPaの絶対圧力で第1段階において分離されたガス成分は、高圧ガス再循環ラインを介して1つ以上の圧縮機に再循環され、0.1〜0.5MPaの範囲の絶対圧力で第2段階において分離されたガス成分は、低圧ガス再循環ラインを介して一連の圧縮段階の第1段階に再循環され、前記重合によって得られた反応混合物は、ペレットに変換され、
予熱器、または予冷器、重合反応器および後反応器冷却器のうち少なくとも1つは、直接または屈曲を介してともにフランジ接続された長さ5m〜25mの管で構成され、フランジは、煙突構造体によって覆われ、そこで空気は、煙突構造体を通って移送され、煙突構造体を出る空気は、炭化水素濃度に関してモニタリングされる、方法。
【請求項2】
前記重合反応器は、管状反応器または管状反応器を含む反応器カスケードであり、前記生産ラインは、予熱器および後反応器冷却器を含み、
前記予熱器、重合反応器および後反応器冷却器は、直接または屈曲を介してともにフランジに接続された長さ5m〜25mの管で構成され、前記フランジは、煙突構造体によって覆われ、空気は、煙突構造体を介して移送され、煙突構造体を出る空気は、炭化水素濃度に関してモニタリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合反応器は、オートクレーブ反応器またはオートクレーブ反応器のカスケードであり、前記生産ラインが予冷器または後反応器冷却器、あるいは予冷器と後反応器冷却器を含み、
前記予冷器または後反応器冷却器、あるいは予冷器と後反応器冷却器は、直接または屈曲を介してともにフランジ接続された長さ5m〜25mの管で構成され、前記フランジは、煙突構造体によって覆われ、空気は、煙突構造体を介して移送され、煙突構造体を出る空気は、炭化水素濃度に関してモニタリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記煙突構造体は、底部と上部に開口部を有し、空気が自然対流によって移送される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
煙突構造体を出る前記空気は、一つ以上のIRオープンパス検出器によって、またはIRポイント検出器によってモニタリングされる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記煙突構造体を出る前記空気は、採決ロジックに従って作動するIRオープンパス検出器のアレイによってモニタリングされ、
前記採決ロジックでは、N個の検出器を有するIR検出器のグループを使用し、N個のIR検出器の少なくとも2つが炭化水素の存在を検出することで炭化水素の検出が確認される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生産ライン全体または前記生産ラインの一部を減圧するかまたは部分的に減圧する緊急圧力リリースプログラムは、煙突構造体を出る前記空気中から炭化水素が検出される際に自動的に開始される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生産ラインの周りで炭化水素の漏出を検出するために、更なる測定が行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
緊急圧力リリースプログラムは、煙突構造体を出る前記空気中から炭化水素が検出される際に、もしくは更なる測定により前記生産ラインの周りで炭化水素の漏出が検出される際に、自動的に開始される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記生産ラインの周りで炭化水素の漏出を検出するための更なる測定は、圧縮段階冷却器、重合反応器の冷却ジャケット、後反応器冷却器または高圧ガス再循環ライン内の冷却器を冷却させる冷却媒体中の少なくとも1つを、単量体または反応混合物の冷却媒体への漏出の発生に関してモニタリングすることを含む、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系不飽和単量体を連続作動される重合反応器において、100℃〜350℃の温度および110MPa〜500MPa範囲の圧力で重合または共重合させる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンは、最も広く使用される商業用ポリマであり、いくつかの異なるプロセスによって製造することができる。昇圧でフリーラジカル開始剤の存在下における重合は、ポリエチレンを得るために使用された最初の方法であり、低密度ポリエチレン(LDPE)の製造に商業的に関連する価値のあるプロセスとして続けて使用されている。
【0003】
低密度ポリエチレンを製造するための生産ラインの通常的な構成は、重合反応器を含み、この反応器は、オートクレーブまたは管状反応器、あるいはこのような反応器の組み合わせ、および追加の装置であり得る。反応構成成分を加圧するため、通常一次圧縮機および二次圧縮機の2つの圧縮機セットが使用される。重合順序の終わりに、高圧重合のための生産ラインは、通常的に生じたポリマをペレット化するための押出機および造粒機のような装置をさらに含む。さらに、このような生産ラインは、一般的に単量体および共単量体、フリーラジカル開始剤、改質剤または他の物質を1つ以上の位置で重合反応に供給する手段も含む。
【0004】
高圧下におけるエチレン系不飽和単量体のラジカル開始重合の特徴は、単量体の転換がまだ完全ではないことである。反応器または反応器の組み合わせを通過するたびに、管状反応器中の重合反応においては、添加された単量体の約10%〜50%のみが転換され、オートクレーブ反応器中の重合反応においては、添加された単量体の8%〜30%が転換される。生じた反応混合物は、一般的に圧力制御バルブを通って反応器を出た後、未反応単量体が再循環されるポリマおよびガス成分に分離される。不必要な減圧および圧縮段階を回避するため、ポリマ成分およびガス成分への分離は、一般的に少なくとも2段階で行われる。反応器を出る単量体−ポリマ混合物は、しばしば高圧生成物分離器と呼ばれる第1分離容器に移送され、ここで高分子およびガス成分の分離は、一次圧縮機と二次圧縮機との間の位置で単量体−ポリマ混合物から分離されたエチレンおよび共単量体を反応混合物に再循環させる圧力で行われる。第1分離容器を操作する条件においては、分離容器内のポリマ成分は、液体状態である。第1分離容器から得られた液相は、しばしば低圧生成物分離器と呼ばれる第2分離容器に移送され、ここで重合成分およびガス成分へのさらなる分離が低圧で行われる。第2分離容器内の混合物から分離されたエチレンおよび共単量体は、一次圧縮機に供給され、ここでこれらは、新鮮なエチレン供給の圧力に圧縮され、新鮮なエチレン供給と組み合わされ、組み合わされたストリームは、高圧ガス再循環ストリームの圧力にさらに加圧される。
【0005】
LDPE反応器における重合プロセスは、350MPaに到達することのできる高圧で行われる。このような高圧は、プロセスを安全かつ確実に処理するための特殊な技術を必要とする。高圧でエチレンを処理する際の技術的な問題点は、例えば、Chem.Ing.Tech.67(1995)、862〜864頁に記載されている。エチレンは、特定の温度および圧力条件下で爆発的に急速に分解して、煤、メタンおよび水素を生成すると言及されている。このような望ましくない反応は、エチレンの高圧重合において繰り返し起こる。これに関連する圧力および温度の急激な上昇は、製造プラントの運転上の安全性に対して相当な潜在的危険を表している。
【0006】
このような類型の圧力および温度の急激な上昇を防止するための可能な解決策は、破裂ディスクまたは緊急圧力リリーフバルブを設置することを包含する。例えば、国際特許公開02/01308A2は、圧力または温度の急激な変化の場合に圧力リリーフバルブの特に迅速な開放を可能とする特定の油圧制御式圧力リリープバルブを開示している。エチレンのこのような熱暴走(thermal runaways)または爆発的分解を重合反応器内で処理することが技術的に可能であるが、これらの状況は、重合反応器内でエチレンの熱暴走または爆発的分解がエチレンを環境中に頻繁に放出し、生産量を低下させて重合プラントの停止をもたらすため、極めて望ましくない。
【0007】
高圧重合プラントの運転上の安全性に対するさらなる脅威は、漏出の発生である。重合反応器の内部と周りとの間の高い圧力差によって、高圧装置の壁に小さな亀裂であれ、非常に多量の反応器内容物の排出をもたらすことができ、その結果、短期間で可燃性炭化水素の濃縮が局所的に高まる可能性がある。他方で、より大きい漏出の場合、反応するための利用可能な時間は、極めて短い。
【0008】
110MPa〜500MPa範囲の圧力でエチレン系不飽和単量体を重合または共重合させる方法は、重合装置から漏出され得る可燃性または爆発性ガスの確実な検出に対する特定の要求を課する。漏出の大きさと位置によっては、漏出率が極めて高いか比較的低いことがあり得、漏出した物質の蓄積の危険性がある。漏出した物質は、100℃〜350℃範囲の温度を有していてもよいが、冷たくなり得るため、地面に侵入してそこに蓄積する可能性がある。重合プラント付近の特定の体積要素中の漏出ガスの濃度は、実質的に純粋な炭化水素から空気中の可燃性ガスの極めて低い濃度まで多様であってもよい。さらに、漏出は、大気に向かって発生し得るのみならず、漏出は、冷却または加熱ジャケットで覆われた装置の部分においても発生し得る。さらに、このようなプロセスが完全に閉鎖されたハウジングにおいては行われないため、風および雨のような気象現象も漏出されたガスの検出に影響をおよぼし得る。
【0009】
高圧でエチレンポリマを製造する方法に関するさらなる難点は、反応混合物が単量体およびポリマを含む超臨界組成物ということである。このような反応混合物が大気中に漏出した後、小さなポリマ粒子が形成され、静電気帯電を行う。その結果、反応混合物の漏出後に爆発性ガス雲が展開された後、点火可能性が高まる。
【0010】
国際特許公開2008/148758A1は、冷却ジャケットを具備した管状反応器を含む高圧エチレン重合ユニットを作動する方法を開示しており、上記の方法において、反応混合物の冷却ジャケット内への漏出は、水性冷却媒体の電気伝導度をモニタリングすることによって制御される。しかしながら、このような方法は、反応混合物中の化学物質の少なくとも1つが水性冷却媒体の電気伝導度を変化させることを必要とし、この方法は、冷却ジャケットで覆われた重合装置の位置で漏出を検出することができるのみである。
【0011】
110MPa〜500MPa範囲の圧力におけるエチレン系不飽和単量体の重合は、管状重合反応器内で行われることが多いが、これら反応器が発散した重合熱を除去するための高表面を有するからである。通常の管状反応器は、約0.5km〜5kmの範囲の長さを有し、長さ5m〜25mの厚い壁の管で構成される。管状反応器の個々の管は、直接、または屈曲を介してともにフランジ接続される。低密度ポリエチレン製造用の生産ライン内の予熱器または予冷器または後反応器冷却器は、ともにフランジ接続された長さ5m〜25mの厚い壁の管で構成されることが多い。低密度ポリエチレン生産ラインの部分の中で漏出の可能性が相対的に高いのが、特にこれらフランジ連結部だが、メンテナンスを理由に時々これらを緩めて、再度締め付ける必要があるからである。しかし、フランジ連結部における漏出に対する漏出量は相対的に少量であり得て、かかる漏出の発生を迅速に認知しにくくする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、従来技術の短所を克服し、110MPa〜500MPaの範囲の圧力においてエチレン系不飽和単量体を重合させるための生産ラインのフランジにおける漏出を迅速に認知することを可能とする方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、1つ以上のエチレン系不飽和単量体を100℃〜350℃の温度および110MPa〜500MPa範囲の圧力で連続的に作動される重合反応器内で重合または共重合させる方法であって、
上記の重合は、上記の単量体が一連の圧縮段階において、互いに1つ以上の圧縮機によって重合圧力に至る生産ラインにおいて行われ、ここで圧縮ガス混合物は、各々の圧縮段階後に圧縮段階冷却器によって冷却され、上記の圧縮された単量体は、選択的に予熱器または予冷器を通過し、冷却ジャケットによって選択的に冷却される重合反応器に移送され、上記の重合によって得られた反応混合物は、圧力制御バルブを介して反応器から出て、選択的に後反応器冷却器(post reactor cooler)によって冷却され、上記の反応混合物は、ポリマ成分およびガス成分に2段階以上に分離され、15MPa〜50MPaの絶対圧力で第1段階において分離されたガス成分は、高圧ガス再循環ラインを介して1つ以上の圧縮機に再循環され、0.1〜0.5MPa範囲の絶対圧力で第2段階において分離されたガス成分は、低圧ガス再循環ラインを介して一連の圧縮段階の第
1段階に再循環され、上記の重合によって得られた反応混合物は、ペレットに変換され、
予熱器、または予冷器、重合反応器および後反応器冷却器のうち少なくとも1つは、直接または屈曲を介してともにフランジ接続された長さ5m〜25mの管で構成され、フランジは、煙突構造体によって覆われ、そこで空気は、煙突構造体を通って移送され、煙突構造体を出る空気は、炭化水素濃度に関してモニタリングされる、方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態において、重合反応器は、管状反応器または管状反応器を含む反応器カスケードであり、生産ラインは、予熱器および後反応器冷却器を含み、
予熱器、重合反応器および後反応器冷却器は、直接または屈曲を介してともにフランジに接続された長さ5m〜25mの管で構成され、フランジは、煙突構造体によって覆われ、空気は、煙突構造体を介して移送され、煙突構造体を出る空気は、炭化水素濃度に関してモニタリングされる。
【0015】
いくつかの実施形態において、重合反応器は、オートクレーブ反応器またはオートクレーブ反応器のカスケードであり、生産ラインが予冷器または後反応器冷却器、あるいは予冷器と後反応器冷却器を含み、
予冷器または後反応器冷却器、あるいは予冷器と後反応器冷却器は、直接または屈曲を介してともにフランジ接続された長さ5m〜25mの管で構成され、フランジは、煙突構造体によって覆われ、空気は、煙突構造体を介して移送され、煙突構造体を出る空気は、炭化水素濃度に関してモニタリングされる。
【0016】
いくつかの実施形態において、煙突構造体の少なくとも50%は、2つ以上のフランジを覆う。
【0017】
いくつかの実施形態において、煙突構造体は、底部と上部に開口部を有し、空気は、自然対流によって移送される。
【0018】
いくつかの実施形態において、煙突構造体を出る空気は、一つ以上のIRオープンパス検出器によって、またはIRポイント検出器によってモニタリングされる。
【0019】
いくつかの実施形態において、煙突構造体を出る空気は、採決ロジックに従って作動するIRオープンパス検出器のアレイによってモニタリングされる。
【0020】
いくつかの実施形態において、緊急圧力リリースプログラムは、煙突構造体を出る空気中から炭化水素が検出される際に自動的に開始される。
【0021】
いくつかの実施形態において、生産ラインの周りで炭化水素の漏出を検出するために、更なる測定が行われる。
【0022】
いくつかの実施形態において、緊急圧力リリースプログラムは、煙突構造体を出る空気中から炭化水素が検出される際に、もしくは更なる測定により生産ラインの周りで炭化水素の漏出が検出される際に、自動的に開始される。
【0023】
いくつかの実施形態において、生産ラインの周りで炭化水素の漏出を検出するための更なる測定は、IRオープンパス検出器、IRポイント検出器、または超音波検出器、またはそれらの組み合わせによって行われる。
【0024】
いくつかの実施形態において、生産ラインの周りで炭化水素の漏出を検出するための更なる測定は、圧縮段階冷却器、重合反応器の冷却ジャケット、後反応器冷却器または高圧ガス再循環ライン内の冷却器を冷却させる冷却媒体中の少なくとも1つを、単量体または反応混合物の冷却媒体への漏出の発生に関してモニタリングすることを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、空気は、冷却媒体を通過して、それから炭化水素を検出することのできるIRポイント検出器に移送される。
【0026】
いくつかの実施形態において、重合反応器および選択的に生産ラインの他の部分は保護エンクロージャ内に設置され、水ベースの散水システムは、緊急圧力リリースプログラムと並行して自動的に開始され、水ベースの散水システムは、単量体または反応混合物の漏出が検出される際に、密閉領域に25μm〜20mm範囲の直径の液滴を提供し、液滴は密閉領域のm当たり、10L/分の最小流速で提供される。
【0027】
いくつかの実施形態において、蒸気ベースの散水システムは、緊急圧力リリースプログラムと並行して自動的に開始される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の方法を遂行するための構成を概略的に示す。
図2】管状反応器の断面における煙突構造体の配置を概略的に示す。
図3】管状反応器の1つのフランジを覆う煙突構造体要素を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
110MPa〜500MPaの範囲の圧力においてエチレン系不飽和単量体を重合させるための生産ラインのフランジを煙突構造体によって覆うことは、フランジを通しての炭化水素漏出の迅速かつ確実たる検出を可能とするが、これは漏出ガスが煙突構造体内部の容積に制限され、煙突構造体を用いないよりも検出限界を上回る濃度へとより迅速に到達することであるからである。
【0030】
本発明は、重合反応器の組み合わせであり得る、連続作動される重合反応器内において、100℃〜350℃の温度および110MPa〜500MPa範囲の圧力でエチレン系不飽和単量体を重合または共重合させる方法に関する。本発明は特に、重合は上記の単量体が一連の圧縮段階において、互いに1つ以上の圧縮機によって重合圧力に至る生産ラインにおいて行われ、ここで圧縮ガス混合物は、各々の圧縮段階後に圧縮段階冷却器によって冷却され、上記の圧縮された単量体は、選択的に予熱器または予冷器を通過し、冷却ジャケットによって選択的に冷却される重合反応器に移送され、上記の重合によって得られた反応混合物は、圧力制御バルブを介して反応器から出て、選択的に後反応器冷却器(post reactor cooler)によって冷却され、上記の反応混合物は、ポリマ成分およびガス成分に2段階以上に分離され、15MPa〜50MPaの絶対圧力で第1段階において分離されたガス成分は、高圧ガス再循環ラインを介して1つ以上の圧縮機に再循環され、0.1〜0.5MPa範囲の絶対圧力で第2段階において分離されたガス成分は、低圧ガス再循環ラインを介して一連の圧縮段階の第1段階に再循環され、上記の重合によって得られた反応混合物は、ペレットに変換される、このような方法に関する。
【0031】
高圧重合は、望ましくは、エチレンの単独重合またはエチレンと1つ以上の他の単量体との共重合であり、ただこれらの単量体は、高圧下でエチレンとフリーラジカル共重合することができる。本技術に使用するためのこれらの共重合可能な単量体の例としては、α,β−不飽和C−C−カルボン酸、特に、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸、α,β−不飽和C−C−カルボン酸、例えば不飽和C−C15−カルボン酸エステル、特に、C−C−アルカノールのエステル、または無水物、特にメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートまたはtert−ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、無水メタクリル酸、無水マレイン酸または無水イタコン酸、およびプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたは1−デセンなどの1−オレフィンが挙げられる。さらに、カルボン酸ビニル、特に望ましくは、酢酸ビニルを共単量体として使用され得る。プロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、アクリル酸、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニルが共単量体として特に好適である。
【0032】
共重合の場合、反応混合物中の共単量体または共単量体の割合は、単量体の量、すなわち、エチレンと他の単量体の合計を基準に、1〜50重量%、望ましくは、3〜40重量%である。共単量体の類型によって、反応器セットアップに一つ超過の地点で共単量体を供給することが望ましい場合がある。望ましくは、共単量体は、二次圧縮機の吸入側に供給される。
【0033】
本発明の目的のために、ポリマまたはポリマ材料は、少なくとも2つの単量体単位から構成される物質である。ポリマまたはポリマ材料は、望ましくは、20000g/モル超過の平均分子量Mを有する低密度ポリエチレンである。用語「低密度ポリエチレン」は、エチレンホモポリマおよびエチレン共重合体を含む。本発明の方法はまた、20000g/モル未満の分子量Mを有するオリゴマ、ワックスおよびポリマの製造に有利に使用することができる。
【0034】
本発明の方法は、望ましくは、フリーラジカル重合開始剤の存在下で行われるラジカル重合である。各々の反応領域において重合を開始するための可能な開始剤は、一般的に、重合反応器中の条件、例えば、酸素、空気、アゾ化合物または過酸化重合開始剤の条件下でラジカル種を生成することのできる任意の物質である。本発明の望ましい実施形態において、重合は、純粋なOの形態で供給されるか、空気として供給される酸素を使用することによって行われる。酸素で重合を開始する場合、開始剤は、通常、エチレン供給原料と最初に混合され、次いで反応器に供給される。このような場合、単量体および酸素を含むストリームを重合反応器の初期に供給することができるのみならず、2つ以上の反応領域を生成する反応器に沿って1つ以上の地点に供給することができる。有機過酸化物またはアゾ化合物を使用した開始も、本発明の望ましい実施形態である。本技術で使用するための有機過酸化物の例としては、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ペルオキシケトンおよびペルオキシカーボネート、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジアセチルペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジ−tert−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサ−3−イン、1,3−ジイソプロピルモノヒドロペルオキシドまたはtert−ブチルヒドロペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、過酸化ジベンゾイル、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert−ブチルペルオキシジエチルイソブチレート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシアセテート、クミルペルオキシネオデカノエート、tert−アミルペルオキシネオデカノエート、tert−アミルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーマレエート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソノナノエート、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、メチルイソブチルケトンヒドロペルオキシド、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−トリペルオキシシクロノナンおよび2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタンが挙げられる。アゾアルカン(ジアゼン)、アゾジカルボン酸エステル、アゾジカルボン酸ジニトリル、例えば、アゾビスイソブチロニトリルおよびフリーラジカルに分解され、C−C開始剤と称される炭化水素、例えば、1,2−ジフェニル−1,2−ジメチルエタン誘導体および1,1,2,2−テトラメチルエタン誘導体をさらに使用してもよい。個々の開始剤または望ましくは、様々な開始剤の混合物を使用することが可能である。広範囲の開始剤、特に、過酸化物としては、例えば、Trigonox(登録商標またはPerkadox(登録商標)の商品名で提供されるAkzo Nobelの製品が商業的に市販されている。
【0035】
望ましい過酸化物系重合開始剤は、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシドおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサ−3−インであり、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネートまたはtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートを使用することが特に望ましい。
【0036】
開始剤は、生成されたポリエチレンの濃度0.1mol/t〜50mol/t、特に0.2mol/t〜20mol/tで、各々の反応領域において個別的に、または混合物として使用することができる。本発明の望ましい実施形態において、反応領域に供給されるフリーラジカル重合開始剤は、2つ以上の異なるアゾ化合物または有機過酸化物の混合物である。このような開始剤混合物が使用される場合、すべての反応領域に供給されることが望ましい。このような混合物中の異なる開始剤の数には制限がないが、望ましくは、混合物は2〜6つ、特に2つ、3つまたは4つの異なる開始剤からなる。異なる分解温度を有する開始剤の混合物を使用することが特に望ましい。
【0037】
溶解された状態で開始剤を使用することがしばしば有利である。本発明において使用するための溶媒の例としては、ケトンおよび脂肪族炭化水素、特にオクタン、デカンおよびイソドデカン、ならびに他の飽和C−C25−炭化水素が挙げられる。溶液は、開始剤または開始剤混合物を2〜65重量%、望ましくは、5〜40重量%、特に望ましくは、8〜30重量%の割合で含む。
【0038】
高圧重合において、製造されるポリマの分子量は、通常的に連鎖移動剤として作用する改質剤の添加によって変更され得る。本技術で使用するための改質剤の例としては、水素、脂肪族およびオレフィン系炭化水素、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテンまたは1−ヘキセン、アセトン、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトンまたはジアミルケトンなどのケトン類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはプロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類、およびメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはブタノールなどの飽和脂肪族アルコール類が挙げられる。飽和脂肪族アルデヒド、特にプロペン、1−ブテンまたは1−ヘキセンなどの1−オレフィン、またはプロパンなどの脂肪族炭化水素を使用することが特に望ましい。
【0039】
高圧重合は、110MPa〜500MPaの圧力で行われ、ここで管状反応器中における重合のためには、160MPa〜350MPaの圧力が望ましく、200MPa〜330MPaの圧力が特に望ましく、オートクレーブ反応器中における重合のためには、110MPa〜300MPaの圧力が望ましく、120MPa〜280MPaの圧力が特に望ましい。重合温度は、管状反応器中における重合のためには、100℃〜350℃の範囲、望ましくは、180℃〜340℃の範囲、より望ましくは、200℃〜330℃の範囲であり、オートクレーブ反応器中における重合のためには、望ましくは、110℃〜320℃の範囲、より望ましくは、120℃〜310℃である。
【0040】
重合は、高圧重合に適したすべての類型の高圧反応器で行うことができる。本技術で使用するための高圧反応器は、例えば、管状反応器またはオートクレーブ反応器である。望ましくは、重合は、1つ以上の管状反応器、または1つ以上のオートクレーブ反応器、あるいはこのような反応器の組み合わせで行われる。本発明の特に望ましい実施形態において、重合反応器は、管状反応器である。
【0041】
一般的な高圧オートクレーブ反応器は、撹拌反応器であり、長さ対直径の比は、2〜30、望ましくは、2〜20である。このようなオートクレーブ反応器は、1つ以上の反応領域、望ましくは、1〜6つの反応領域、より好ましくは、1〜4つの反応領域を有する。反応領域の数は、オートクレーブ反応器内の個々の混合領域を分離する攪拌器バッフルの数に依存する。重合または第1重合がオートクレーブ反応器において、すなわち、唯一の重合反応器がオートクレーブ反応器である生産ラインまたは反応器カスケードの第1反応器がオートクレーブ反応器である生産ラインにおいては、圧縮機から出る反応混合物が通常的にオートクレーブ反応器に入る前に、予冷器に最初に通過される。
【0042】
適切な管状反応器は、基本的に長さが、約0.5km〜4km、望ましくは、1km〜3km、特に1.5km〜2.5kmの長くて厚い壁の管である。パイプの内径は、一般的に、約30mm〜120mm、望ましくは60mm〜100mmの範囲である。このような管状反応器は、長さ対直径比が望ましくは、1000超過、望ましくは、10000〜40000、特に25000〜35000である。望ましくは、管状反応器は、長さが5m〜25m、より望ましくは、長さ10m〜22m、特に長さ15m〜20mの管からなる。管状反応器の個々の管は、望ましくは、ともにフランジ接続される。管はまた、屈曲、好ましくは180°屈曲でフランジ接続され得る。このような180°屈曲は、望ましくは、小さな半径を有し、すなわち、4以下のR/d比を有し、「R」は、屈曲の曲率半径であり、「d」は、スペースを節約するための管の外径である。本発明の望ましい実施形態において、上記のフランジは、このようなフランジのグループが互いに上下に重ねて整列するように配置される。望ましくは、このようなフランジのグループは、他のフランジと上下に重ねて配置され、少なくとも2つのフランジ、より望ましくは、3〜100フランジ、最も望ましくは、5〜60フランジを有する。
【0043】
望ましい管状反応器は、2つ以上の反応領域、望ましくは、2〜6つの反応領域、より望ましくは、2〜5つの反応領域を有する。反応領域の数は、開始剤に対する供給地点の数によって与えられる。このような供給地点は、例えば、アゾ化合物または有機過酸化物の溶液の注入地点であり得る。新鮮な開始剤が反応器に添加され、ここで開始剤は、フリーラジカルに分解され、さらなる重合を開始する。生成された反応熱は、管状反応器の壁を通って除去されるよりも、より多くの熱が発生するため、反応混合物の温度を上昇させる。温度が上昇すると、フリーラジカル開始剤の分解速度が高まり、本質的にすべてのフリーラジカル開始剤が消費されるまで重合が促進される。その後、それ以上の熱が発生せず、反応器壁の温度が反応混合物の温度より低いため、温度が再び減少する。したがって、温度が上昇する開始剤供給地点の下流にある管状反応器の部分は、反応領域であり、温度が再び下降するそれ以降の部分は、主に冷却領域である。添加されたフリーラジカル開始剤の量および性質は温度がどの位上昇するかを決定し、これにより、その値を調整することを可能とする。通常的に、温度上昇は、第1反応領域において、70℃〜170℃の範囲で設定され、生成物の仕様および反応器構成によって後続の反応領域に対して50℃〜130℃の範囲で設定される。望ましくは、管状反応器は、反応熱を除去するための冷却ジャケットが装備されている。より望ましくは、管状反応器のすべての反応領域は、冷却ジャケットによって冷却される。
【0044】
反応ガス組成物の重合圧力への圧縮は、一連の圧縮段階の1つ以上の圧縮機によって行われ、ここで望ましくは、一次圧縮機は、反応ガス組成物を最初に10MPa〜50MPaの圧力に圧縮し、時々、ハイパー圧縮機と呼ばれる二次圧縮機は、反応ガス組成物を110MPa〜500MPaの重合圧力にさらに圧縮させる。望ましくは、上記の一次圧縮機および二次圧縮機は、多段圧縮機である。これらの圧縮機中、一方または両方の1つまたは複数の段階を分離し、上記の段階を分離した圧縮機に分割することがさらに可能である。しかしながら、通常的に、一連の1つの一次圧縮機および1つの二次圧縮機は、反応ガス組成物を重合圧力に圧縮するために使用される。この場合、時々一次圧縮機全体が一次圧縮機として指定される。しかし、低圧生成物分離器からの再循環ガスを新鮮なエチレン供給の圧力に圧縮する1つ以上の第1段階の一次圧縮機をブースター圧縮機として指定し、次いでブースター圧縮機および後続段階がすべて1つの装置の一部であるが、1つ以上の後続段階を一次圧縮機として指定することも一般的である。各々の圧縮段階後に、圧縮ガス混合物は、圧縮段階冷却器によって冷却されて圧縮熱を除去する。一般的に圧縮段階冷却器は、圧縮ガス混合物の温度が130℃未満になるように作動される。
【0045】
本発明の望ましい実施形態において、生産ラインは、反応ガス組成物を、重合を開始することのできる温度に加熱するための管状反応器の上流にある予熱器を含む。予熱器は、望ましくは、長さ5m〜25m、より望ましくは、長さ10m〜22m、特に、長さ15m〜20mの管からなる。予熱器の個々の管は、望ましくは、ともにフランジ接続される。管はまた、屈曲、好ましくは180°屈曲でフランジ接続され得る。このような180°屈曲は、望ましくは、小さい半径を有し、すなわち、望ましくは、R/dの比が4以下である。本発明の望ましい実施形態において、フランジは、かかるフランジのグループが互いに上下に重ねて整列するよう配置される。望ましくは、このようなフランジのグループは、他のフランジと上下に重ねて配置され、少なくとも2つのフランジ、より望ましくは、3〜50個のフランジ、最も望ましくは、5〜30個のフランジを有する。
【0046】
本発明の望ましい実施形態において、二次圧縮機によって提供された全体反応ガス組成物は、予熱器を介して管状反応器の入口に供給される。本発明の他の望ましい実施形態において、二次圧縮機によって圧縮された反応ガス組成物の一部のみが予熱器を介して管状反応器の入口に供給され、また二次圧縮機によって圧縮された反応ガス組成物の残りは、1つ以上の側面ストリームとして管状反応器の入口下流に管状反応器に供給される。このような構成においては、二次圧縮機によって提供された反応ガス組成物の望ましくは、30〜90重量%、より望ましくは、40〜70重量%が管状反応器の入口に供給され、二次圧縮機によって提供された反応ガス組成物の10〜70重量%、より望ましくは、30〜60重量%が1つ以上の側面ストリームとして管状反応器の入口下流にある管状反応器に供給される。
【0047】
本発明の重合を行うための生産ラインは、重合反応器の外に、未反応単量体を重合工程に再循環させるための2つ以上のガス再循環ラインを含む。重合反応器で得られた反応混合物は、高圧生成物分離器と呼ばれる第1分離容器に移送され、15MPa〜50MPaの絶対圧力でガス分画および液体分画に分離される。第1分離容器から回収されたガス分画は、高圧ガス再循環ラインを介して二次圧縮機の吸入側に供給される。高圧ガス再循環ラインにおいて、ガスは、通常的に飛沫同伴するポリマまたはオリゴマのような望ましくない成分を除去するための精製段階によって精製される。通常、エチレンおよび共単量体のような溶解された単量体を、依然として20〜40重量%の量で含む、第1分離容器から排出された液体分画は、しばしば低圧生成物分離器と呼ばれる第2分離容器に移送され、さらにポリマおよびガス成分中の減圧下に、通常、0.1〜0.5MPaの範囲内の絶対圧力で分離させる。第2分離容器から排出されたガス分画は、いわゆる低圧ガス再循環ラインを介して一次圧縮機に、望ましくは、第1の段階に供給される。また、低圧ガス再循環ラインは、通常的に、望ましくない構成成分からガスを精製するための様々な精製段階を含む。生産ラインは、例えば、中間圧力で作動される第1分離段階と第2分離段階との間に、追加のガス分画を反応混合物から分離するための追加の分離段階および反応しない単量体を含む追加のガス分画を圧縮機のうち1つに供給するための追加のガス再循環ラインを追加で含む。
【0048】
望ましくは、低圧ガス再循環ラインから出る再循環ガスは、一次圧縮機の第1段階によってエチレン系不飽和単量体、望ましくは、エチレンの新鮮な供給の圧力に圧縮され、その後、新鮮なガス供給と組み合わされ、組み合わされたガスは、一次圧縮機で10MPa〜50MPaの圧力にさらに圧縮される。望ましくは、一次圧縮機は、新鮮なガスを添加する前に2つまたは3つの圧縮段階を含み、新鮮なガスを添加した後に2つまたは3つの圧縮段階を含む。二次圧縮機は、望ましくは、2つの段階、すなわち、約30MPa〜約120MPaでガスを圧縮する第1段階および約120MPaで最終重合圧力にガスをさらに圧縮する第2段階を含む。
【0049】
重合反応器内の圧力は、重合反応器の出口に配置され、これを通じて反応混合物が反応器を出る圧力制御バルブによって制御することが望ましい。圧力制御バルブは、反応器を出る反応混合物の圧力を第1分離容器内の圧力に減少させるのに適した任意のバルブ装置であり得る。
【0050】
本発明の望ましい実施形態において、生産ラインは、反応混合物を冷却させるため、重合反応器の下流にある後反応器冷却器を含む。後反応器冷却器は、圧力制御バルブの上流に配置され得るか、後反応器冷却器は、圧力制御バルブの下流に配置され得る。望ましくは、後反応器冷却器は、圧力制御バルブの下流に配置される。後反応器冷却器は、望ましくは、長さ5m〜25m、より望ましくは、10m〜22m、特に、長さ15m〜20mの管からなる。管状反応器の個々の管は、望ましくは、ともにフランジ接続される。管はまた、屈曲、好ましくは180°屈曲でフランジ接続され得る。このような180°屈曲は、望ましくは、小さい半径を有し、すなわち、望ましくは、R/dの比が4以下である。本発明の望ましい実施形態において、フランジは、かかるフランジのグループが互いに上下に重ねて整列するよう配置される。望ましくは、このようなフランジのグループは、他のフランジと上下に重ねて配置され、少なくとも2つのフランジ、より望ましくは、3〜80個のフランジ、最も望ましくは、5〜60個のフランジを有する。
【0051】
重合によって得られたポリマ成分は、最終的に通常、押出機または造粒機のような装置によってペレットに変換される。
【0052】
図1は、連続作動される管状重合反応器を含む生産ラインにおいて、エチレン系不飽和単量体を重合させる生産ラインの構成を概略的に示す。
【0053】
一般的に1.7MPaの圧力下にある新鮮なエチレンは、一次圧縮機(1)によって約30MPaの圧力に最初に圧縮された後、二次圧縮機(2)を使用し、約300MPaの反応圧力に圧縮される。連鎖移動剤(CTA)は、新鮮なエチレンとともに一次圧縮機(1)に添加されてもよい。共単量体は、ライン(3)を介して二次圧縮機(2)の上流に添加されてもよい。一次圧縮機(2)を出る反応混合物は、予熱器(4)に供給され、ここで反応混合物は、約120℃〜220℃の反応開始温度に予熱された後、管状反応器(6)の入口(5)に移送される。
【0054】
管状反応器(6)は、冷却回路(図示せず)によって反応混合物から発散した反応熱を除去するための冷却ジャケットを具備した基本的に長くて厚い壁の管である。
【0055】
図1に示す管状反応器(6)は、開始剤または開始剤混合物PX1、PX2、PX3およびPX4を反応器に供給し、これによって4つの反応領域に供給するための4つの空間的に分離された開始剤注入地点(7a)、(7b)、(7c)および(7d)を有する。反応混合物の温度で分解される適切なフリーラジカル開始剤を管状反応器に供給することによって、重合反応が開始される。
【0056】
反応混合物は、圧力制御バルブ(8)を通って管状反応器(6)から出て、後反応器冷却器(9)を通過する。その後、生成されたポリマを第1分離容器(10)および第2分離容器(11)によって、未反応エチレンおよび他の低分子量化合物(単量体、オリゴマ、ポリマ、添加剤、溶媒など)から分離され、押出機および造粒機(12)を介して排出されてペレット化される。
【0057】
第1分離容器(10)で分離されたエチレンおよび共単量体は、30MPaの高圧回路(13)で管状反応器(6)の入口端部にフィードバックされる。高圧回路(13)において、反応混合物から分離されたガス状物質は、最初に少なくとも1つの精製段階で他の成分から遊離された後、一次圧縮機(1)と二次圧縮機(2)との間の単量体ストリームに添加される。図1は、熱交換器(14)および分離器(15)からなる1つの精製段階を示す。しかし、複数の精製段階を使用することも可能である。高圧回路(13)は、一般的にワックスを分離する。
【0058】
特に、重合の低分子量生成物(オリゴマ)および溶媒の大部分をさらに含む第2分離容器(11)で分離されたエチレンは、各々の分離器の間に設置されている熱交換器を有する複数の分離器に約0.1〜0.5MPaの絶対圧力で低圧回路(16)で後処理される。図1は、熱交換器(17)と(19)ならびに分離器(18)と(20)からなる2つの精製段階を示す。しかしながら、ただ1回の精製段階、または望ましくは、2回以上の精製段階を使用することも可能である。低圧回路(16)は、通常的にオイルとワックスを分離する。
【0059】
低圧回路(16)を通過したエチレンは、ブースター圧縮機(21)に供給され、約4MPaの圧力に圧縮された後、一次圧縮機(1)に移送される。ブースター圧縮機(21)および一次圧縮機(1)は、望ましくは、1つの低圧圧縮機、すなわち、1つのモータによって動力供給される1つの装置の一部である。ブースター圧縮機(21)、一次圧縮機(1)および二次圧縮機(2)の個々の段階で圧縮されたガス混合物は、熱交換器(22)、(23)、(24)、(25)、(26)、(27)および(28)によって各段階後に冷却される。
【0060】
本発明による管状重合反応器の異なる構成も勿論可能である。単量体を反応器管の入口で添加するのみならず、単量体を望ましくは、冷却された複数の異なる地点で反応器に供給することが有利であり得る。これは、特に望ましくは、さらなる反応領域の開始時に行われ、特に、酸素または空気が開始剤として使用され、一次圧縮機中の単量体供給に添加される場合に行われる。
【0061】
本発明の方法は、予熱器、または予冷器、重合反応器および後反応器冷却器のうち少なくとも1つは、直接または屈曲を介してともにフランジ接続された長さ5m〜25mの管で構成され、フランジは、煙突構造体によって覆われ、そこで空気は、煙突構造体を通って移送され、煙突構造体を出る空気は、炭化水素濃度に関してモニタリングされることを
特徴とする。
【0062】
本発明の望ましい実施形態において、重合反応器は、管状反応器または管状反応器を含む反応器カスケードであり、上記の生産ラインは、予熱器および後反応器冷却器を含み、上記の予熱器、重合反応器および後反応器冷却器は、直接または屈曲を介してともにフランジ接続された長さ5m〜25mの管で構成され、上記のフランジは、煙突構造体によって覆われ、空気は、煙突構造体を通って移送され、上記の煙突構造体を出る空気は、炭化水素濃度に関してモニタリングされる。
【0063】
本発明の望ましい実施形態において、重合反応器がオートクレーブ反応器またはオートクレーブ反応器のカスケードであり、生産ラインが予冷器または後反応器冷却器、あるいは予冷器と後反応器冷却器を含み、上記の予冷器または後反応器冷却器、あるいは予冷器と後反応器冷却器は、直接または屈曲を介してともにフランジ接続された長さ5m〜25mの管で構成され、フランジは、煙突構造体によって覆われ、空気は、煙突構造体を通って移送され、煙突構造体を出る空気は、炭化水素濃度に関してモニタリングされる。
【0064】
望ましくは、生産ラインのすべてのフランジは、煙突構造体によって覆われる。フランジの各々は、別個の煙突構造体によって覆われることが可能である。望ましくは、煙突構造体の少なくとも50%は、2つ以上のフランジを覆い、より望ましくは、各々の煙突構造体は、2つ以上のフランジを覆う。各々の煙突構造体は、2〜100個のフランジ、より望ましくは、3〜80個のフランジ、特に、5〜60個のフランジを覆うことが特に望ましい。他のフランジと上下に重ねて配置される、フランジのグループは、望ましくは、1つの煙突構造体によって覆われる。望ましくは、煙突構造体は、低部と上部に開口部を有する垂直に配置され、高温フランジによって加熱される空気は、自然的な習慣によって上昇し、上部の煙突構造体を出ることができる。また、1つの煙突構造体に垂直に配列されたフランジのグループを覆う2つ以上の「脚部(leg)」を有し、覆われたフランジ中、最も高いものの上に「脚部」が1つの煙突に収斂することも可能である。
【0065】
煙突構造体は、フランジを囲み、構造を通るガスの輸送を可能とする任意の適切な形態を有することができる。望ましくは、煙突構造体の煙突は、閉鎖構造であり、しかしながら、煙突構造体は、空気が入るための1つの開口部のみならず、煙突構造体を出る空気のための1つの開口部を有することもでき、しかし、煙突構造体はまた、片側で閉鎖されず、例えば、U字型を有し、フランジがこの壁に隣接して配置されると、隣接した壁に対して開放される。
【0066】
生産ラインのフランジは、環境から来る空気よりも高い温度を有するため、空気は、自然対流によって加熱されて上昇する。漏出されたガスが検出器により早く到達すると、漏出を検出する時間がさらに短くなる。本発明の望ましい実施形態において、外部への熱損失を最小化し、空気の上昇速度を最大化するため、煙突構造体の壁を隔離する。
【0067】
閉鎖構造を介してガスを移送し得るさらなる可能性は、ファンまたは送風機を使用することである。これは、垂直に向けられていない煙突構造体を設置することを可能とする。しかし、望ましくは、煙突構造体と煙突構造体が垂直に向かっていても、自然対流またはファンおよび送風機と組み合わせた自然対流が空気を移送するために使用される。空気を移送するか、自然対流を支持するために、ファンまたは送風機を使用する場合、煙突構造体を介して送風される空気の量が極めて多く、漏出されたガスが希釈されて濃度が検出限界以下になる状況は、避けるべきである。
【0068】
図2は、管状反応器のセクション(50)において、5対の管(51)が互いに上下に重ねて配置され、屈曲部(52)によって接続されている煙突構造体の望ましい配置を示す。管状反応器のセクション(50)は、管(53)によって反応器の他の部分に接続されている。フランジ(54)は、互いに上下に重ねて配置され、底部(56)と上部(57)で開放されている3つの煙突構造体(55)によって覆わされ、空気は、自然対流によって移送されて上部(57)で煙突構造体(55)を出る。
【0069】
煙突構造体は、漏出されたガスをガス検出システムに案内し、漏出されたガス雲の希釈を最小化するための目的を有する。したがって、フランジと煙突壁との間の空間が小さいほど、エチレン濃度が上昇空気中でさらに高くなる。検出閾値がより希薄化したガス雲よりも迅速に超過するため、検出されるガスの濃度が高いことが望ましい。したがって、上向流動を妨げないながら、フランジを極めて密接に一致させる煙突設計が望ましい。
【0070】
図3は、最小限の内部容積を有する1つのフランジに対する煙突構造体要素(60)の望ましい設計を示す。煙突構造体要素(60)は、円筒形であり、2つの管(62)を接続するためのフランジ(61)を覆う。煙突構造体要素(60)は、管(62)が通過するための管(62)の直径の円形開口部を各々有する2つの側壁(63)を有する。煙突構造体要素(60)は、さらに底部に矩形開口部(64)および上部に矩形開口部(65)を有する。煙突構造体要素(60)は、開口部(64)および(65)に嵌合する矩形接続要素(66)によって、上部または下部に配置された同一の構成要素に接続され得る。空気は、下方から煙突構造体要素(60)に入ることができ、開口部(64)を通って煙突構造体要素(60)を出て、接続要素(66)を介して自然対流によって上方に設置される可能性のあるさらなる煙突構造体要素に移送され得る。
【0071】
煙突構造体を出る空気をモニタリングすることは、炭化水素を検出するためのあらゆる適切な検出器を用いて行うことができる。望ましくは、煙突構造体を出る空気はIRポイント検出器またはIRオープンパス検出器のようなIR検出器によってモニタリングすることができる。
【0072】
IR検出器は、ガス検出器としてしばしば使用される分光センサである。IR検出器は、特定波長の赤外線(IR)放射が異なるガスのような異なる材料によって、異なって吸収されるという原理に則って作動する。炭化水素ガスは、特に、3000〜2750cm−1範囲の波長で強力なIR吸収があるため、IR測定によってモニタリングするのに適している。IR検出器は、一般的に赤外線源(ランプ)、複数の波長のIR放射線を選択的に透過する光学フィルタおよび赤外線検出器を含む。検出される材料に特異的な波長のIR放射線は、サンプルを通って検出器に向けられ、これは、吸収無しに基準ビームに関する減衰を測定する。このようなIR検出器は、ガス濃度を測定するために頻繁に使用される。可燃性ガスを検出するため、2つの類型のIR検出器、IRポイント検出器およびIRオープンパス検出器が一般的に使用される。IRポイント検出器は、IRポイント検出器内に配置されているサンプルチャンバ内のIR放射線の減衰を測定する。IRオープンパス検出器は、赤外線源および検出器を分離し、IR放射線ビームは、典型的に数メートルから数百メートルまで移動してIR検出器に到達する。
【0073】
炭化水素濃度に関して煙突構造体を出る空気をモニタリングするためには、1つ以上のIRオープンパス検出器またはIRポイント検出器によって空気をモニタリングすることが望ましい。
【0074】
煙突構造体を出る空気をモニタリングするためにIRオープンパス検出器を使用する場合、各煙突構造体には、1つの煙突構造体を出る空気のみをモニタリングするために指定された1つ以上のIRオープンパス検出器が装備されることが可能である。望ましくは、IRオープンパス検出器は、各IRオープンパス検出器が1つ以上の煙突構造体を出る空気をモニタリングするように配置される。より望ましくは、IRオープンパス検出器は、
IRオープンパス検出器の少なくとも50%が2つ以上の煙突構造体を出る空気をモニタリングし、煙突構造体を出る空気の各ストリームが少なくとも3つのIRオープンパス検出器によってモニタリングされるマトリックス配列に配置される。これは、採決ロジックに従って1つの煙突構造体をモニタリングするIRオープンパス検出器を作動することを可能とする。
【0075】
採決ロジックに従ってIR検出器のグループを作動することは、本発明の文脈において、炭化水素の確認された検出を有するために、IR検出器の各グループの少なくとも所定の数のIR検出器は、炭化水素を検出すべきであることを意味する。望ましくは、このような所定の数は、2である。これは、2つの検出器を有するIR検出器のグループの場合、両方のIR検出器が炭化水素の確認された検出を有するためには炭化水素の存在を検出すべきであり;このようなグループは、結果的に2つのうち2つ(2oo2)のロジックに従って作動する。2oo2ロジックに従って作動するIRポイント検出器のグループの場合、IRポイント検出器は2つのIRポイント検出器の間の距離が最大3メートルになるように、互いに近接して配置することが望ましい。3つの検出器を有するIR検出器のグループの場合、これは、3つのIR検知器のうち少なくとも2つが炭化水素の確認された検出を有するために炭化水素の存在を検出すべきであり;このようなグループは、結果的に3つのうち2つ(2oo3)のロジックに従って作動することを意味する。N個の検出器を有するIR検出器のグループの場合、これは、N個のIR検出器の少なくとも2つが炭化水素の確認された検出を有するために炭化水素の存在を検出しすべきであり;その結果、上記のグループはNつのうち2つ(2ooN)ロジックに従って作動することを意味する。IRポイント検出器のより大きなグループの場合、3ooN、4ooNまたはXooNロジックに従って作動することがさらに可能である。
【0076】
煙突構造体を出る空気をモニタリングするためにIRオープンパス検出器を使用すると、煙突が高速に出るガスの大型漏出によって損傷されても、漏出が検出される可能性が極めて大きいという利点がある。これは、IRオープンパス検出器が煙突構造体の出口上方の領域を測定するのみならず、検出パス全体に沿って領域を測定し、損傷された煙突構造体を出る大型ガス雲がそのようなパスを横断する可能性が高いからである。
【0077】
煙突構造体を出る空気をモニタリングするための別のオプションは、IRポイント検出器を使用することである。望ましくは、IRポイント検出器は、空気が煙突構造体を出る開口部の近くの位置から出る空気とともに、吸引ラインによって供給される。吸引ラインは、特定の位置からIRポイント検出器のような検出器に空気を移送する装置である。望ましくは、空気は、エジェクタまたは任意の他の種類の適切なポンプによって吸引ラインを通って移送される。2つ以上の煙突構造体をモニタリングするために1つのIRポイント検出器を使用することも可能である。2つ以上の吸引ラインを組み合わせて、混合空気を炭化水素濃度に関してモニタリングすることが可能である。その後、2つ以上の吸引ラインから出る空気をモニタリングすることもさらに可能である。次いで、異なる煙突構造体から出る吸引ライン間の所定の間隔で切り替わるマルチプレクサを使用することができる。煙突構造体から出る空気をIRポイント検出器に供給するための吸引ラインを使用すると、空気がIRポイント検出器に到達する前に冷却されるという利点がある。本発明の望ましい実施形態において、吸引ラインは、空気がIRポイント検出器に到達する前に空気から凝縮または冷却水の漏出によって導入されている可能性がある水を除去するためのウォータートラップ(water trap)が装備される。
【0078】
煙突構造体を出る空気を炭化水素濃度に関してモニタリングすることが、フランジのうちいずれかを通しての漏出の発生があってから、この空気中から炭化水素の存在を検出するために行われる。炭化水素の存在を検出することは、本発明の文脈において、測定された炭化水素の濃度が所定の閾値以上に上昇することを意味する。このような閾値は、望ま
しくは、下限爆発限界(LEL)の特定比率、すなわち、発火源の存在下で火災を発生させることのできる空気中、ガスまたは蒸気の最も低い濃度であり得る。適切な閾値は、例えば、20%LELであり得る。すなわち、2ooN採決ロジックに従って作動するIRポイント検出器のグループの場合、IRポイント検出器のグループの第2IRポイント検出器が20%LELを超過する炭化水素濃度を測定する際に、炭化水素の検出が確認される。
【0079】
煙突構造体を出る空気中から炭化水素の存在を検出する場合、警報を与えるためにひとつの可能な反応があり得る。望ましくは、緊急圧力リリースプログラムは、煙突構造体を出る空気中から炭化水素が検出される際に自動的に開始される。緊急圧力リリースプログラムは、望ましくは、事前に行われた手順であり、ここで重合プラントの全体または重合プラントの一部のみが減圧されるか、部分的に減圧され、重合プロセスが中断される。予熱器および後反応器冷却器を含む反応器の内容物および高圧ガス再循環ライン、ならびに高圧生成物分離器を含む二次圧縮機の内容物を大気に放出するため、生産ラインには、1つ以上の緊急圧力リリースバルブが装備されている。これらの緊急圧力リリースバルブは、望ましくは、管状反応器に沿って、または高圧ガス再循環ラインに、あるいは管状反応器に沿って、そして高圧ガス再循環ラインに設置される。重合反応器の減圧は、1つ以上の緊急圧力リリースバルブを介して、または圧力制御バルブ、あるいは緊急圧力リリースバルブおよび圧力制御バルブの組み合わせを介して発生し得る。望ましくは、重合反応器の減圧は、1つ以上の緊急圧力リリースバルブを介して発生する。
【0080】
本発明の望ましい実施形態において、重合反応器および選択的に生産ラインの別の部分が保護エンクロージャ内に設置される。一般的に、コンクリートで構成され、通常「反応器ベイ」(reactor bay)と呼ばれる保護エンクロージャは、安全上の理由から高圧にさらされる重合反応器および生産ラインの他の部分を取り囲む。保護エンクロージャは、特に、エチレンまたは他の炭化水素の偶発的な放出の発火の場合に、過圧、放射線およびミサイル効果に備え、周りの領域を保護する。このような保護エンクロージャは、望ましくは、空に向かって開放されている。望ましくは、重合反応器だけではなく圧力制御バルブ、高圧生成物分離器、そして、存在する場合、予熱器または予冷器および後反応器冷却器がまた保護エンクロージャ内に設置される。
【0081】
単量体または反応混合物の漏出が検出される際に望ましくは、保護エンクロージャによって囲まれた領域内において水ベースの散水システムが自動的に開始される。水ベースの散水システムは、25μm〜20mm範囲の直径を有する液滴を密閉領域のm当たり最小流速10L/分で密閉領域に提供する。これは、25μm〜20mm範囲の直径を有するこれらの液滴によって提供される液体の量は、閉鎖領域のm当たり10L/分以上であることを意味する。望ましくは、水ベースの散水システムは、200μm〜5mm範囲の直径を有する有効水滴(water droplet)、およびより望ましくは、300μm〜4mm範囲の直径を有する有効水滴を提供する。
【0082】
望ましくは、有効水滴の最小流速は、密閉領域のm当たり14L/分、より望ましくは、密閉領域のm当たり18L/分である。
【0083】
保護エンクロージャ内で液滴の均一な分布を達成するため、液滴は、密閉領域の少なくとも10%、望ましくは、密閉領域の少なくとも50%、より望ましくは、密閉領域の少なくとも90%で提供される。液滴は、密閉領域10m当たり、少なくとも1つのノズル、より望ましくは、密閉領域10m当たり、少なくとも3つのノズルを介して、特に、密閉領域10m当たり、少なくとも5つのノズルを介して保護エンクロージャ内に噴霧することによって生成され得る。
【0084】
保護エンクロージャによって囲まれた領域に提供される液滴の直径は、例えば、消光の原理に則って作動するレーザベースのディストロメータ(disdrometer)によって測定することができる。選択された範囲の直径を有する液滴の流量を計算するために全液体流量が決定され、保護エンクロージャ内に液体を噴霧することによって生成されたすべての液滴の体積に関して選択された範囲の直径を有する液滴の生成体積の比で乗算する。
【0085】
本発明の方法によって提供される液滴のカーテンは、爆発の場合に過圧を効果的に減少させることができる。本発明者の見解としては、25μm〜200μmの範囲、より望ましくは、25μm〜100μmの範囲の直径を有する液滴は、爆発効果を緩和させるのに特に適している。これらの小さな液滴は、表面対体積比が大きい。したがって、これらの小さな液滴は、爆発の温度波に露出される場合、直ちに蒸発するであろう。水の蒸発は、相当量のエネルギーを必要とし、これによって爆発から吸収され、危険可能性が減少する。保護エンクロージャ内の過圧、およびそれによるエンクロージャ壁に作用する圧力が低減する。
【0086】
したがって、本発明の望ましい実施形態によれば、25μm〜200μm範囲の直径を有する液滴が生成され、密閉領域に提供される。建物の火災防止のため、高水圧ミストシステムが利用可能である。これらのシステムは、圧力発生装置、例えば、特殊に設計されたノズルに一般的に3.5MPa以上の圧力に水を供給するためのポンプを必要とする。これらのノズルは、極めて小さな液滴、一般的に、直径25μm〜200μmの液滴が生成されるように設計される。
【0087】
本発明の他の望ましい実施形態によれば、密閉領域には、200μm〜20mm範囲の直径を有する液滴が提供される。本発明者らは、このような液滴が爆発の結果を緩和し、過圧のエネルギーを吸収することができると考えている。爆発の場合、直径が200μmを超過する液滴は、圧力波によって液滴が壊れるほど変形し、これによって100μmより小さい直径を有する多数の液滴が生成される。これらの小さな液滴は、爆発による結果を効果的に緩和する能力を有する。
【0088】
本発明の望ましい実施形態によれば、水ベースの散水システムは、水を供給することによって作動する。したがって、25μm〜20mm範囲の直径を有する水滴が密閉領域に噴霧される。水を噴霧することによって水ベースの散水システムを作動させることは、原則的に、システムを設置するために単に水の接続が必要であるという利点がある。さらに、水を使用すると、生産ラインが望ましくない物質によって汚染されることを防止することができる。
【0089】
本発明の他の望ましい実施形態によれば、水ベースの散水システムは、ラジカル捕捉塩の溶液を提供することによって作動する。したがって、25μm〜20mm範囲の直径を有するこのような溶液の液滴は、密閉領域に噴霧される。適切なラジカル捕捉塩の例は、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムである。望ましくは、ラジカル捕捉塩の溶液は、重炭酸カリウムの水溶液または重炭酸ナトリウムの水溶液である。当該溶液が液滴を提供するための標準システムによって供給されることができること、爆発による液滴の蒸発時に、ラジカル捕捉塩の微粉末が形成されることが有利である。これは、2つの有利な効果を組み合わせており、すなわち、a)液滴の蒸発は、爆発熱を除去し、それによってラジカル連鎖反応の反応速度を減少させ、b)ラジカル捕捉塩の粉末が生成され、ラジカル連鎖反応をさらに遅くする。さらに、粉末の大きさは、適切なノズルおよび水溶液でラジカル捕捉塩の質量分率を選択することによって、液滴の大きさによって便利に制御できることが有利である。さらに、ラジカル捕捉塩の溶液を使用することは、このような塩を微粒子として使用することよりさらなる利点を有し、すなわち、粒子の大きさの増加、または最悪の場合、完全にブロックされた投与システムによって有効性を減少させ得る凝集が起こらない。
【0090】
望ましくは、単量体または反応混合物の漏出を検出した後、30秒以内に液滴の最小流速が達成される。より望ましくは、有効な水滴の最小流速は、単量体または反応混合物の漏出を検出した後、20秒以内に達成される。
【0091】
また、完全に展開した噴霧パターンを確立するために、水ベースの散水システムは、配管内に水圧が形成され、液滴カーテンが形成される約10〜15秒を必要とする。したがって、水ベースの散水システムは、漏出されたガス雲が爆発する可能性を最小化し、可能性のある爆発の否定的な影響を最小化にするため、より速い始動システムと組み合わせることが望ましい。このようなより速い始動システムは、望ましくは、蒸気ベースの散水システムである。したがって、本発明の望ましい実施形態によれば、蒸気ベースの散水システムは、水ベースの散水システムと並行して自動的に開始される。
【0092】
蒸気ベースの散水システムは、0.3〜4MPa、望ましくは、0.4〜3MPaの圧力を有する蒸気を供給することによって作動することができる。保護エンクロージャに注入された後、加圧水蒸気は、膨張し、酸素含有空気を置換し、爆発可能性のあるガス雲を希釈させる。
【0093】
望ましくは、蒸気ベースの散水システムは、140℃〜220℃、より望ましくは、160℃〜200℃の温度を有する加圧された水を保護エンクロージャ内に供給することによって作動される。加圧された水は、大気状態で沸点以上であり、放出される際に瞬間的に蒸発する。
【0094】
望ましくは、蒸気ベースの散水システムは、例えば、冷却ジャケットを通って循環することによって、反応混合物から重合熱を除去するための冷却媒体として使用される保護エンクロージャ内に加圧された水を供給する。この水は、エチレン系不飽和単量体の重合のための生産ラインにおいて十分な量で利用可能であり、ここで加圧された水は、発散した重合熱を除去するために使用される。
【0095】
本発明の望ましい実施形態において、加圧された水は、140℃〜220℃の温度を有する水をパイプラインを通して閉鎖ループ内で永久的に循環させることによって提供される。ここでパイプラインは、保護エンクロージャの床上2m〜20mに設置され、単量体または反応混合物の漏出が検出される際に、水を放出するためのノズルが装備されている。このような閉鎖サイクルは、望ましくは、異なる高さ、例えば、高さ2mのループ1つおよび高さ6mのループ1つに設置されてもよい。あるいは、重合反応器の冷却ジャケットを接続する配管には、冷却媒体を放出するための高速開口バルブが設置され得る。
【0096】
本発明の望ましい実施形態において、水ベースの散水システムが完全に活性化された後、15秒間蒸気ベースの散水システムが停止される。このような脈絡において、完全に活性化されたということは、水ベースの散水システムが最小流速に到達した後、少なくとも20秒、望ましくは、少なくとも15秒、より望ましくは、少なくとも10秒間に最小流速を液滴に提供することを意味する。水ベースの散水システムが完全に活性化された後、蒸気ベースの散水システムを停止すると、蒸気または熱い加圧水の量を制限する必要があり、加圧された水が冷却システムから出る場合には、適時に生産ラインの再始動のための資源を節約する。
【0097】
本発明の望ましい実施形態によれば、煙突構造体を出る空気が炭化水素濃度に関してモニタリングされるだけではなく、生産ラインの周りで炭化水素の漏出を検出するための更なる測定がまた行われる。望ましくは、緊急圧力リリースプログラムは、煙突構造体を出る空気中から炭化水素が検出される際に、もしくは更なる測定により生産ラインの周りで炭化水素の漏出が検出される際に、自動的に開始される。
【0098】
生産ラインの周りで炭化水素の漏出を検出するための更なる測定は、IRオープンパス検出器、IRポイント検出器、または超音波検出器、またはそれらの組み合わせによって行われることができる。
【0099】
超音波検出器は、加圧ガスの漏出によって放出される音を測定するセンサである。このような騒音は、一般的に、加圧ガスと周りの圧力差が0.7MPaを超過する際に発生する。超音波検出器は、測定された信号が音の速度によって移動するため、極めて早いという利点がある。しかし、超音波音は、他の音源のために生成されることもあり得る。したがって、本発明の望ましい実施形態によれば、IRポイント検出器は、超音波検出器が警報信号を与えるために使用される間に、緊急圧力リリースプログラムを自動的に開始するために使用される。しかしながら、超音波検出器は、可燃性ガスの漏出を確実に示すように生産ラインに設置してもよい。したがって、本発明の他の望ましい実施形態によれば、IRポイント検出器が炭化水素の存在を検出する際に、もしくは超音波検出器がガス漏出を検出する際に緊急圧力リリースプログラムが自動的に開始される。超音波検出器は、特に、圧縮機の周りをモニタリングするか、エチレンを生産ラインに送るための供給ラインなどの非ジャケットパイプラインをモニタリングするために使用されてもよい。
【0100】
本発明のより望ましい実施形態によれば、生産ラインの周りで炭化水素の漏出を検出するための更なる測定は、圧縮段階冷却器、重合反応器の冷却ジャケット、後反応器冷却器または高圧または低圧ガス再循環ライン内の冷却器を冷却させる冷却媒体中の少なくとも1つをモニタリングすることを含み、これらは単量体または反応混合物の冷却媒体への漏出の発生に関してモニタリングされる。望ましくは、これらの冷却媒体のすべては、単量体または反応混合物の冷却媒体への漏出の発生に関してモニタリングされる。望ましくは、冷却媒体のモニタリングは、冷却媒体を通し、空気を通過させた後、炭化水素を検出することのできるIRポイント検出器に空気を移送することによって発生する。
【0101】
水に対するエチレンの溶解度が極めて低いため、冷却媒体への漏出は、冷却ストリーム内に小さな気泡を形成するであろう。望ましくは、冷却媒体システムは、このような気泡が指定された領域に収集されるように設計される。例えば、水平冷却配管部には、取付部の一方の腕部が上方に向かうように導入され、気泡がこの部分に入るようにするT−取付部が装備される。このような領域からの冷却媒体は、望ましくは、冷却媒体、例えば、小型フラッシュカラムを通る空気の通過を可能とする装置に移送される。冷却媒体を通過する空気は、冷却媒体からエチレンを移送し、空気サンプルは、IRポイント検出器に誘導される。本発明の望ましい実施形態において、冷却媒体のサンプリング、空気サンプリングおよびモニタリングは、重複して行われ、すなわち、1つ以上の冷却媒体のサンプルが取られて空気によって通過され、これらの空気サンプルの各々は、異なるIRポイント検出器に移送される。サンプリングが重複して行われる場合、空気サンプルをモニタリングするためのIRポイント検出器は、採決ロジックに従って作動することが望ましい。
【0102】
開放冷却媒体戻り管路(return line)のような冷却システムの開放部分の上にヒュームフード(fume hood)構造を使用することによって、大気圧で作動する冷却システムの冷却媒体をモニタすることがさらに可能である。漏出したエチレンを含んでいてもよい冷却システムの開放部位の上方の空気は、望ましくは、自然対流によって検出器に移送されることが望ましい。空気中のエチレン希釈によって、この検出器は、IRポイント検出器または水素炎イオン化検出器(FID)であり得る。
【0103】
本発明の最も望ましい実施形態においては、
− 重合反応器は、ともにフランジ接続された管で構成される管状反応器であり、各フランジは、煙突構造体によって覆われ、煙突構造体を出る空気は、1つ以上のIRオープンパス検出器によって、または煙突構造体を出る空気が供給されるIRポイント検出器によって、炭化水素濃度に関してモニタリングし;
− 予熱器、重合反応器、圧力制御バルブ、後反応器冷却器および高圧生成物分離器を保護エンクロージャ内側に設置し、保護エンクロージャ内の領域をIRポイント検出器、1つ以上のIRオープンパス検出器、またはそれらの組み合わせによって、モニタリングし;
− 圧縮機の周りを1つ以上の超音波検出器またはそれらの組み合わせによってモニタリングし;
− 圧縮段階冷却器、重合反応器の冷却ジャケット、後反応器冷却器および高圧ガス再循環ライン内の冷却器を冷却させる冷却媒体は、空気を冷却媒体に通過させ、その後、IRポイント検出器への空気を移送することによって検出され;および
− 圧力制御バルブは、ハウジング内に設置され、ハウジング内の空気は、吸引ラインによってハウジング内部から空気が供給されるIRポイント検出器によって炭化水素濃度に関してモニタリングされ;
そして緊急圧力リリースプログラムは煙突構造体を出る空気中から炭化水素が検出される際に、もしくは生産ラインの周りで炭化水素の漏出が検出される際に自動的に開始される。
図1
図2
図3